(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】排ガス処理装置および焼却設備
(51)【国際特許分類】
F23C 9/00 20060101AFI20220926BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20220926BHJP
F23J 15/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
F23C9/00
F23G7/06 E
F23J15/00 B
F23J15/00 A
(21)【出願番号】P 2021187119
(22)【出願日】2021-11-17
(62)【分割の表示】P 2018553754の分割
【原出願日】2017-11-14
【審査請求日】2021-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2016235139
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】古林 通孝
(72)【発明者】
【氏名】前田 優佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 睦史
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-137656(JP,A)
【文献】特開2003-053310(JP,A)
【文献】特開2002-273164(JP,A)
【文献】特開平09-225431(JP,A)
【文献】特開2014-024052(JP,A)
【文献】特開平11-076991(JP,A)
【文献】特開平11-077017(JP,A)
【文献】特開2003-118792(JP,A)
【文献】特開昭62-218332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 9/00
F23G 7/06
F23J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス処理装置であって、
排ガスが流れる煙道に設けられる集塵機と、
前記煙道において前記排ガスの発生源と前記集塵機との間の薬剤供給位置に、排ガス処理薬剤を供給する薬剤供給部と、
前記集塵機にて捕集された集塵灰を、前記煙道とは異なる補助経路に沿って、前記煙道における前記発生源と前記集塵機との間の集塵灰供給位置へとコンベアにより搬送する集塵灰搬送部と、
前記補助経路に設けられ、前記集塵灰を加熱する集塵灰加熱部と、
を備え、
前記集塵灰搬送部が、前記補助経路に設けられるとともに、前記集塵灰を貯留する集塵灰貯留部を備え、
前記集塵灰貯留部から、定量供給部により単位時間当たりに設定量の前記集塵灰が取り出されて前記コンベア内に供給され、前記集塵灰が塊となった状態で前記コンベアにより搬送される。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス処理装置であって、
前記排ガス処理薬剤がカルシウム系薬剤を含み、
前記集塵灰加熱部がヒータにより前記集塵灰を60℃~170℃に加熱する。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排ガス処理装置であって、
前記コンベアが、前記補助経路に沿って設けられる複数の保持部を有し、
前記コンベアが、前記集塵灰を収容する前記複数の保持部を、前記補助経路に沿って搬送する。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス処理装置であって、
前記集塵灰搬送部が、各保持部内に収容された前記集塵灰が投下されるシュート部をさらに備え、
前記シュート部が、前記コンベアのハウジングの出口開口に接続されるとともに、前記煙道に開口する。
【請求項5】
請求項4に記載の排ガス処理装置であって、
前記集塵灰搬送部が、
前記シュート部内において、投下された前記集塵灰と衝突することにより、前記集塵灰を砕く破砕部と、
前記シュート部内に設けられ、開閉可能なゲートと、
をさらに備える。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の排ガス処理装置であって、
前記集塵灰加熱部が、前記集塵灰貯留部において前記集塵灰を加熱する。
【請求項7】
請求項6に記載の排ガス処理装置であって、
前記集塵灰貯留部において前記集塵灰加熱部により加熱される部位近傍を振動させる集塵灰振動部をさらに備える。
【請求項8】
焼却設備であって、
廃棄物を燃焼させる燃焼室と、
前記燃焼室にて発生する排ガスを前記燃焼室から排出する煙道と、
前記煙道に設けられる請求項1ないし7のいずれか1つに記載の排ガス処理装置と、
を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理装置および焼却設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等の一般廃棄物は、ごみ焼却設備により焼却処理される。焼却処理により発生する排ガスには、煤塵、塩化水素(HCl)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、重金属(Pb、Hg等)等の有害物質が含まれている。そこで、これらの有害物質を排ガスから除去する処理が排ガス処理装置により行われ、処理済みの排ガスが大気に排出される。
【0003】
例えば、特開昭59-150525号公報(文献1)では、排ガス中に消石灰の粉を吹き込んで排ガスから塩化水素等の有害な酸性ガス成分を除去するプロセスにおいて、集塵器により捕集された集塵灰の一部を粉砕し、空気ブロワにより煙道内に送ることにより、酸性ガスの除去に再利用する手法が開示されている。また、特開2014-24052号公報(文献2)では、処理済み排ガスの一部をキャリアガスとして、集塵器により捕集された集塵灰の一部を、集塵器入口側の煙道に戻す手法が開示されている。
【0004】
ところで、文献1および2の手法では、集塵灰を煙道へと戻す配管において、キャリアガスにより集塵灰が冷却されてしまい、集塵灰(特に塩化カルシウム等)がキャリアガス中の水分を吸湿して液状となる(すなわち、潮解する)。これにより、集塵灰が配管の内面に固着してしまう。通常、当該配管の直径はあまり大きくなく、集塵灰の固着により、集塵灰を適切に煙道へと戻すことができなくなる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、排ガス処理装置に向けられており、集塵灰を煙道へと戻す経路における集塵灰の固着を抑制することを目的としている。
【0006】
本発明に係る排ガス処理装置は、排ガスが流れる煙道に設けられる集塵機と、前記煙道において前記排ガスの発生源と前記集塵機との間の薬剤供給位置に、排ガス処理薬剤を供給する薬剤供給部と、前記集塵機にて捕集された集塵灰を、前記煙道とは異なる補助経路に沿って、前記煙道における前記発生源と前記集塵機との間の集塵灰供給位置へとコンベアにより搬送する集塵灰搬送部と、前記補助経路に設けられ、前記集塵灰を加熱する集塵灰加熱部とを備え、前記集塵灰搬送部が、前記補助経路に設けられるとともに、前記集塵灰を貯留する集塵灰貯留部を備え、前記集塵灰貯留部から、定量供給部により単位時間当たりに設定量の前記集塵灰が取り出されて前記コンベア内に供給され、前記集塵灰が塊となった状態で前記コンベアにより搬送される。
【0007】
本発明によれば、集塵灰を煙道へと戻す補助経路における集塵灰の固着を抑制することができる。
【0008】
本発明の一の好ましい形態では、前記排ガス処理薬剤がカルシウム系薬剤を含み、前記集塵灰加熱部がヒータにより前記集塵灰を60℃~170℃に加熱する。
【0009】
本発明の他の好ましい形態では、前記コンベアが、前記補助経路に沿って設けられる複数の保持部を有し、前記コンベアが、前記集塵灰を収容する前記複数の保持部を、前記補助経路に沿って搬送する。
【0010】
この場合に、好ましくは、前記集塵灰搬送部が、各保持部内に収容された前記集塵灰が投下されるシュート部をさらに備え、前記シュート部が、前記コンベアのハウジングの出口開口に接続されるとともに、前記煙道に開口する。
【0011】
より好ましくは、前記集塵灰搬送部が、前記シュート部内において、投下された前記集塵灰と衝突することにより、前記集塵灰を砕く破砕部と、前記シュート部内に設けられ、開閉可能なゲートとをさらに備える。
【0012】
本発明のさらに他の好ましい形態では、前記集塵灰加熱部が、前記集塵灰貯留部において前記集塵灰を加熱する。
【0013】
この場合に、好ましくは、排ガス処理装置が、前記集塵灰貯留部において前記集塵灰加熱部により加熱される部位近傍を振動させる集塵灰振動部をさらに備える。
【0014】
本発明は、焼却設備にも向けられている。本発明に係る焼却設備は、廃棄物を燃焼させる燃焼室と、前記燃焼室にて発生する排ガスを前記燃焼室から排出する煙道と、前記煙道に設けられる上記の排ガス処理装置とを備える。
【0015】
上述の目的および他の目的、特徴、態様および利点は、添付した図面を参照して以下に行うこの発明の詳細な説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る焼却設備1の構成を示す図である。焼却設備1は、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する設備である。焼却設備1は、燃焼室2と、煙道3と、排ガス処理装置4と、誘引通風機51と、煙突52とを備える。燃焼室2では、ごみの燃焼と、ごみから発生した可燃性ガスの燃焼とが行われる。煙道3は、燃焼室2と煙突52とを接続する。排ガス処理装置4および誘引通風機51は、煙道3に設けられる。誘引通風機51は、燃焼室2にて発生する排ガス(燃焼ガス)を煙道3へと排出し、排ガス処理装置4を介して煙突52へと導く。すなわち、燃焼室2を発生源とする排ガスは、燃焼室2から煙突52に向かって煙道3内を流れつつ、排ガス処理装置4により排ガスに対して所定の処理が行われる。煙突52は、排ガスを大気に放出する。
図1では、煙道3を太い実線にて示している。
【0018】
図2は、排ガス処理装置4の構成を示す図である。排ガス処理装置4は、減温塔41と、薬剤供給部42と、集塵機43と、集塵灰搬送部44とを備える。煙道3において、燃焼室2から煙突52に向かって、すなわち、排ガスの流れ方向における上流側から下流側に向かって、減温塔41、薬剤供給部42、集塵機43が順に設けられる。実際には、集塵機43と煙突52との間には、脱硝装置等も設けられても良い。
【0019】
減温塔41は、燃焼室2から流入する排ガス中に水を噴霧して排ガスの温度を低下させる。減温塔41から排出される排ガスの温度は、例えば約170℃である。薬剤供給部42は、消石灰貯留部421と、特殊助剤貯留部422と、薬剤圧送部423と、薬剤供給ライン424と、定量供給部425,426とを備える。薬剤供給ライン424の一端は、薬剤圧送部423に接続され、他端は、煙道3における減温塔41と集塵機43との間の位置P1(以下、「薬剤供給位置P1」という。)に接続される。薬剤圧送部423は、送風機であり、薬剤供給ライン424内において空気を煙道3に向かって送る。消石灰貯留部421は、粉状の消石灰(水酸化カルシウム(Ca(OH)2))をカルシウム(Ca)系薬剤として貯留する。消石灰は、脱塩および脱硫用の薬剤である。消石灰貯留部421の下部には、定量供給部425が取り付けられる。定量供給部425は、例えばテーブルフィーダであり、単位時間当たりに設定量の消石灰を消石灰貯留部421から取り出す(切り出す)。定量供給部425は、薬剤供給ライン424に接続され、消石灰貯留部421から取り出された消石灰は、薬剤供給ライン424内に供給される。
【0020】
特殊助剤貯留部422は、粉状の薬剤(例えば、日立造船株式会社製のバグエース(登録商標)や活性炭であり、以下、「特殊助剤」という。)を貯留する。特殊助剤貯留部422の下部には、定量供給部426が取り付けられ、単位時間当たりに設定量の特殊助剤を特殊助剤貯留部422から取り出す。定量供給部426は、薬剤供給ライン424に接続され、特殊助剤貯留部422から取り出された特殊助剤は、薬剤供給ライン424内に供給される。このような構成の薬剤供給部42により、消石灰および特殊助剤(以下、「排ガス処理薬剤」と総称する。)が、薬剤供給位置P1にて煙道3内に供給される(吹き込まれる)。排ガス処理薬剤は、消石灰に代えて、または、消石灰と共に、水酸化ドロマイト[Ca(OH)2・Mg(OH)2]等の他のカルシウム系薬剤(カルシウム含有薬剤)を含んでもよい。
【0021】
集塵機43は、例えば、ろ過式であり、排ガスに含まれる飛灰をろ布により除去する。集塵機43は、バグフィルタとも呼ばれる。薬剤供給部42により供給される排ガス処理薬剤は、当該ろ布に堆積する。集塵機43の内部において、排ガスが当該ろ布を通過する際に、排ガスに含まれる有害物質と、排ガス処理薬剤との反応が生じ、当該有害物質が除去される。排ガスと排ガス処理薬剤との反応は、煙道3においても生じる。排ガス処理薬剤により除去される有害物質は、例えば、塩化水素、硫黄酸化物、ダイオキシン類、水銀化合物等である。集塵機43では、所定時間毎に、ろ布に堆積した飛灰および排ガス処理薬剤(有害物質との反応物を含む。)が圧縮空気を利用した逆洗により、払い落とされる。以下の説明では、ろ布から払い落とされた飛灰および排ガス処理薬剤を「集塵灰」と総称する。集塵灰は、集塵機43における捕集物である。薬剤供給部42では、重曹(NaHCO3)、活性炭等の他の種類の薬剤が供給されてもよく、この場合、当該他の種類の薬剤も、集塵灰に含まれる。
【0022】
集塵灰搬送部44は、補助経路441と、集塵灰分配部45と、集塵灰貯留部442と、定量供給部443と、供給コンベア46と、シュート部444と、を備える。補助経路441は、集塵機43の下部と、煙道3における減温塔41と集塵機43との間の位置(以下、「集塵灰供給位置P2」という。)とを接続する。
図1では、補助経路441を細い実線にて示している。補助経路441は、煙道3とは異なる経路である。補助経路441において、集塵機43から集塵灰供給位置P2に向かって順に、集塵灰分配部45、集塵灰貯留部442、定量供給部443、供給コンベア46、シュート部444が設けられる。
【0023】
集塵灰分配部45は、集塵機43において、ろ布から払い落とされた集塵灰を、集塵灰貯留部442と、集塵灰処理部49とに分配供給する。詳細には、集塵灰分配部45は、コンベア451と、ゲート452とを有する。コンベア451は、例えばフライトコンベアであり、後述する供給コンベア46の構造と同様である。ゲート452は、コンベア451による集塵灰の搬送経路に設けられる。集塵灰貯留部442におけるレベル計(図示省略)により取得される集塵灰の貯留量が所定量未満である場合に、ゲート452が開かれ、集塵灰貯留部442に集塵灰が供給される。集塵灰貯留部442における集塵灰の貯留量が所定量以上である場合に、ゲート452が閉じられ、集塵灰処理部49に集塵灰が供給される。このように、集塵灰分配部45では、集塵灰貯留部442における集塵灰の貯留量がおよそ一定となるように、集塵機43からの集塵灰が、ゲート452の開閉により集塵灰貯留部442と集塵灰処理部49とに分配される。集塵灰処理部49に供給された集塵灰は、例えばキレート剤(重金属安定剤)により処理される。ゲート452と集塵灰貯留部442との間に、他のコンベア等が設けられてもよい。
【0024】
図3は、集塵灰貯留部442の下部を示す図である。排ガス処理装置4は、集塵灰加熱部47と、集塵灰振動部48とをさらに備える。集塵灰加熱部47は、複数のヒータ471を有し、複数のヒータ471は、集塵灰貯留部442の下部の外側面に取り付けられる。各ヒータ471は、電気を利用して集塵灰貯留部442の外側面を加熱する。本処理例では、集塵灰加熱部47により、集塵灰貯留部442内に貯留される集塵灰が、例えば60℃以上に加熱される。集塵灰の加熱温度は、好ましくは70℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。典型的には、集塵灰の加熱温度は、集塵機43における排ガスの温度(例えば、170℃)以下である。集塵灰加熱部47では、燃焼室2の上方に設けられたボイラからの蒸気等を利用して、集塵灰が加熱されてもよい。
【0025】
集塵灰振動部48は、集塵灰加熱部47と同様に、集塵灰貯留部442の下部に取り付けられる。集塵灰振動部48は、集塵灰貯留部442において集塵灰加熱部47により加熱される部位近傍を、断続的または連続的に振動させる。これにより、集塵灰貯留部442の下部において内側面近傍に位置する集塵灰を入れ替えることができ、集塵灰貯留部442内の集塵灰の加熱が効率よく行われる。
【0026】
図2に示すように、集塵灰貯留部442の下部には、定量供給部443が取り付けられる。定量供給部443は、例えばテーブルフィーダであり、単位時間当たりに設定量の集塵灰を集塵灰貯留部442から取り出す。定量供給部443は、供給コンベア46に接続され、集塵灰貯留部442から取り出された集塵灰は、供給コンベア46内に供給される。
【0027】
図4は、供給コンベア46を示す断面図である。供給コンベア46は、例えばフライトコンベア(スクレーパコンベアとも呼ばれる。)であり、集塵灰貯留部442の下方から煙道3における集塵灰供給位置P2の上方までのコンベア搬送経路に沿って集塵灰を搬送する。コンベア搬送経路は、既述の補助経路441の一部である。供給コンベア46は、ハウジング461と、一対の無端チェーン462と、複数のフライト(スクレーパ)463と、複数のスプロケット464(
図2参照)とを備える。ハウジング461は、コンベア搬送経路に沿って設けられる。一対の無端チェーン462は、
図4の紙面に垂直な方向(以下、「幅方向」という。)に関して、互いに所定距離だけ離れて配置される。各無端チェーン462は、ハウジング461内において、集塵灰貯留部442の下方に配置されたスプロケット464と、集塵灰供給位置P2の上方近傍に配置されたスプロケット464とに噛み合う。駆動部(図示省略)によるスプロケット464の回転により、一対の無端チェーン462がハウジング461内において連続的に回転(循環移動)する。実際には、コンベア搬送経路の方向が変化する位置等にもスプロケットが設けられる。
【0028】
一対の無端チェーン462には、複数のフライト463が所定の間隔で固定される。各フライト463は、略矩形の板部材であり、幅方向に沿う一辺の両端が一対の無端チェーン462にそれぞれ固定される。集塵灰貯留部442の下方から集塵灰供給位置P2の上方へと向かう往路において、各フライト463の先端(無端チェーン462との固定部とは反対側の辺)は、ハウジング461の底面部と摺動する。また、フライト463の残りの2辺は、ハウジング461の両側面部(幅方向に垂直な側面部)に近接する。したがって、供給コンベア46では、コンベア搬送経路に沿って互いに隣接する2つのフライト463の間の空間が、集塵灰の収容が可能な保持部465となる。このように、供給コンベア46は、補助経路441に沿って設けられる複数の保持部465を有する。
【0029】
ハウジング461の上面部において、定量供給部443に対向する位置には入口開口が設けられており、定量供給部443から落下した集塵灰が、入口開口を介して供給コンベア46内に供給される。集塵灰は、保持部465内にて塊9となった状態で収容され、煙道3における集塵灰供給位置P2の上方へと搬送される。ハウジング461の底面部において、集塵灰供給位置P2に対向する位置には出口開口が設けられており、出口開口を介して集塵灰が供給コンベア46外に排出される。シュート部444は、煙道3における集塵灰供給位置P2の上方に設けられ、出口開口に接続される。これにより、各保持部465内に収容された集塵灰が、出口開口から鉛直下方に延びるシュート部444に投下される。
【0030】
図2に示すように、シュート部444内には、ゲート446および破砕部445が設けられることが好ましい。破砕部445は、例えば、金網や、格子状に設けられた金属部材であり、供給コンベア46から投下された集塵灰と衝突することにより、集塵灰を砕く。シュート部444は、煙道3の集塵灰供給位置P2に開口しており、破砕された集塵灰が、煙道3を流れる排ガス中に集塵灰供給位置P2において分散する。補助経路441に沿って集塵灰を搬送している間、原則として、ゲート446は開いた状態である。ハウジング461内の圧力は、煙道3内の圧力よりも高く、排ガスがハウジング461内へと流入することが防止される。なお、集塵灰の搬送を停止する場合等には、ゲート446が閉じられてもよい。
【0031】
集塵灰搬送部44において、集塵灰貯留部442の下部に接続される定量供給部443は、周囲が囲まれた構造である。また、定量供給部443とハウジング461の入口開口とを接続する接続部も、周囲が囲まれた構造である。ハウジング461は、入口開口および出口開口を除いて密閉されており、ハウジング461の出口開口と煙道3とを接続するシュート部444も、周囲が囲まれた構造である。このように、補助経路441において、集塵灰貯留部442と煙道3との間の部分は、外部の空気がほとんど入り込まない密閉された空間である。
【0032】
また、集塵灰貯留部442と集塵灰分配部45とを接続する接続部は、周囲が囲まれた構造であり、集塵機43の下部に接続される集塵灰分配部45も、同様である。したがって、補助経路441において、集塵機43と集塵灰貯留部442との間の部分も、外部の空気がほとんど入り込まない密閉された空間である。なお、集塵灰搬送部44の構造によっては、集塵灰が順次供給される集塵灰貯留部442内の圧力が大気圧よりも高い正圧となる。この場合、集塵灰貯留部442内のガスを、所定のフィルタを介して外部に排出する機構が設けられてもよい。この場合も、集塵灰貯留部442内が正圧であるため、外部の空気が集塵灰貯留部442内に入り込むことはない。
【0033】
ここで、集塵灰には、排ガス中の塩化水素と、排ガス処理薬剤に含まれる消石灰との反応生成物である塩化カルシウムが含まれる。排ガス処理薬剤が、水酸化ドロマイト等の他のカルシウム系薬剤を含む場合も同様に、集塵灰に塩化カルシウムが含まれる。
図5は、排ガス中の塩化カルシウムの潮解条件を示す図である。
図5では、線L1よりも上側の領域が、潮解が生じない乾燥領域であり、2つの線L1,L2の間の領域が、一部に潮解が生じる一部潮解領域であり、線L2よりも下側の領域が、およそ全体に潮解が生じる潮解領域である。
図5から、温度が低くなるに従って塩化カルシウムの潮解が生じやすくなることが判る。
【0034】
続いて、集塵灰を外部の空気や処理済み排ガスを利用して煙道3へと戻す比較例の排ガス処理装置について述べる。比較例の排ガス処理装置では、外部の空気または処理済み排ガスであるキャリアガスにより、集塵灰が冷却されてしまい、集塵灰に含まれる塩化カルシウムが潮解する。これにより、集塵灰を煙道3へと戻す配管の内面に、集塵灰が固着してしまう。その結果、当該配管の直径が小さい場合には、集塵灰を適切に煙道3へと戻すことができなくなる。
【0035】
これに対し、
図2の排ガス処理装置4では、集塵灰を煙道3へと戻す補助経路441において集塵灰搬送部44および集塵灰加熱部47が設けられる。集塵灰搬送部44により、集塵機43にて捕集された集塵灰が、外部の空気や処理済み排ガス等を利用することなく、補助経路441に沿って煙道3における集塵灰供給位置P2へと搬送される。また、集塵灰加熱部47により、補助経路441において集塵灰が加熱される。これにより、集塵灰に含まれる塩化カルシウムの潮解を抑制することができ、補助経路441における集塵灰の固着を抑制することができる。また、比較例の排ガス処理装置におけるキャリアガス用のブロワ等も省略することができる。ブロワは高価であるため、ブロワを省略することにより、排ガス処理装置4の製造コストを削減することができる。排ガス処理装置4を有する焼却設備1では、集塵灰に含まれる排ガス処理薬剤の再利用によりランニングコストを削減しつつ、安定した稼働を実現することができる。
【0036】
また、集塵灰搬送部44の供給コンベア46が、集塵灰を収容する複数の保持部465を、補助経路441に沿って搬送することにより、集塵灰供給位置P2に集塵灰が供給される。集塵灰を保持部465内に収容する供給コンベア46では、集塵灰を攪拌しつつ搬送するスクリューコンベア等に比べて、搬送途上における集塵灰の温度低下を抑制することができる。その結果、補助経路441における集塵灰の固着をさらに抑制することができる。集塵灰搬送部44では、補助経路441が外部の空気が入り込まない構造の経路であることにより、搬送途上における集塵灰の温度低下の一層の抑制や、周囲のガスの水分濃度の増大防止を実現することができ、補助経路441における集塵灰の固着をさらに抑制することができる。集塵灰搬送部44では、集塵灰の攪拌を伴わない他の種類のコンベアが、供給コンベア46として用いられてもよい。また、集塵灰加熱部47による加熱温度等によっては、集塵灰の攪拌を伴うスクリューコンベア等が、供給コンベア46として利用されてもよい。
【0037】
供給コンベア46から集塵灰が投下されるシュート部444内において、集塵灰と衝突することにより当該集塵灰を砕く破砕部445が設けられることにより、集塵灰を煙道3内にて容易に分散させることができる。これにより、排ガスの処理性能を向上することができる。
【0038】
集塵灰加熱部47が、集塵灰が貯留される集塵灰貯留部442を加熱することにより、集塵灰を効率よく加熱することができる。また、集塵灰振動部48が、集塵灰貯留部442において集塵灰加熱部47により加熱される部位近傍を振動させることにより、集塵灰貯留部442内における集塵灰の固着を抑制するとともに、集塵灰貯留部442内の広範囲の集塵灰を効率よく加熱することができる。排ガス処理装置4の設計によっては、補助経路441において、集塵灰加熱部47が、集塵灰貯留部442以外の位置に設けられてもよい。
【0039】
図6は、排ガス処理装置の他の例を示す図である。
図6の排ガス処理装置4aでは、
図2の排ガス処理装置4に対して、もう1つの供給コンベア46aが追加され、煙道3において燃焼室2と減温塔41との間の位置P2a(以下、「第2集塵灰供給位置P2a」という。)に、集塵灰が供給可能である。供給コンベア46aは、供給コンベア46と同様の構造を有する。他の構成は、
図2と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0040】
排ガス処理装置4aでは、供給コンベア46における水平方向に延びる搬送経路の途中において、ハウジング461の底面部に第2出口開口が設けられる。第2出口開口には、ゲート469を有する接続部が設けられ、ゲート469が開いた状態において、保持部465(
図4参照)内の集塵灰が、当該接続部を介して供給コンベア46外に排出される。供給コンベア46aのハウジング461の上面部において、上記接続部に対向する位置には入口開口が設けられており、供給コンベア46から排出された集塵灰が入口開口を介して供給コンベア46a内に供給される。
【0041】
集塵灰は、供給コンベア46aの保持部465(
図4参照)内に収容された状態で、煙道3における第2集塵灰供給位置P2aの上方へと搬送される。ハウジング461の底面部において、第2集塵灰供給位置P2aに対向する位置には出口開口が設けられており、出口開口を介して集塵灰が供給コンベア46a外に排出される。出口開口には、鉛直下方に延びるシュート部444が接続され、シュート部444を介して、煙道3における第2集塵灰供給位置P2aに集塵灰が供給される。
【0042】
以上のように、排ガス処理装置4aでは、集塵灰供給位置P2に加えて、第2集塵灰供給位置P2aに集塵灰が供給可能である。ここで、消石灰の表面に形成される塩化水素との反応物は水への溶解度が大きく、減温塔41内に消石灰を供給する場合、減温塔41内に噴霧される水に当該反応物が溶解して流される、すなわち、消石灰の表面から当該反応物が除去される。これにより、未反応の消石灰が表面に表れ、消石灰における反応物による反応速度の低下が抑制される。したがって、煙道3において燃焼室2と減温塔41との間の位置(第2集塵灰供給位置P2a)に集塵灰を供給する排ガス処理装置4aでは、脱塩反応の効率を向上することができる。排ガス処理薬剤が、水酸化ドロマイト等の他のカルシウム系薬剤を含む場合も同様に、当該他のカルシウム系薬剤の表面に形成される塩化水素との反応物は、減温塔41内に噴霧される水により除去され、当該他のカルシウム系薬剤における反応速度の低下が抑制される。なお、
図2の排ガス処理装置4において、集塵灰供給位置P2を煙道3における燃焼室2と減温塔41との間の位置に設定する場合も同様である。
【0043】
上記焼却設備1および排ガス処理装置4,4aでは様々な変形が可能である。
【0044】
排ガス処理装置4,4aでは、薬剤供給位置P1における排ガス処理薬剤の供給と、集塵灰供給位置P2,P2aにおける集塵灰の供給との双方が、必ずしも常時行われる必要はなく、一方が一時的に停止されてもよい。
【0045】
薬剤供給位置P1は、例えば、燃焼室2と減温塔41との間に設定されてもよい。すなわち、薬剤供給位置P1は、煙道3において燃焼室2と集塵機43との間に設定されればよい。
【0046】
排ガス処理装置4,4aは、焼却設備1以外の設備において用いられてもよい。
【0047】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【0048】
発明を詳細に描写して説明したが、既述の説明は例示的であって限定的なものではない。したがって、本発明の範囲を逸脱しない限り、多数の変形や態様が可能であるといえる。
【符号の説明】
【0049】
1 焼却設備
2 燃焼室
3 煙道
4,4a 排ガス処理装置
42 薬剤供給部
43 集塵機
44 集塵灰搬送部
46,46a 供給コンベア
47 集塵灰加熱部
48 集塵灰振動部
441 補助経路
442 集塵灰貯留部
444 シュート部
445 破砕部
465 保持部
P1 薬剤供給位置
P2,P2a 集塵灰供給位置