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特許7146055抵抗加熱を利用した糖の熱分解フラグメンテーション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】抵抗加熱を利用した糖の熱分解フラグメンテーション
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/55 20060101AFI20220926BHJP
   C07C 45/59 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 45/60 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 47/04 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 47/127 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 47/19 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 49/17 20060101ALI20220926BHJP
   C07C 49/185 20060101ALI20220926BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C07C45/55
C07C45/59
C07C45/60
C07C47/04
C07C47/127
C07C47/19
C07C49/17 A
C07C49/185
H05B3/40 Z
【請求項の数】 43
(21)【出願番号】P 2021501033
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 EP2019069073
(87)【国際公開番号】W WO2020016209
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】PA201800393
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】トプソー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ピーダスン・ラース・ストーム
(72)【発明者】
【氏名】ラーセン・モアテン・ボーベア
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/216311(WO,A1)
【文献】特開2015-105344(JP,A)
【文献】特開昭48-097861(JP,A)
【文献】特表2011-506072(JP,A)
【文献】特表平06-506361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
H05B
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-C-C含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーション(断片化)のための熱を供給する熱伝達粒子を含むフラグメンテーション反応器、ここでフラグメンテーション反応器は加熱された熱伝達粒子を該フラグメンテーション反応器中に導入するためのフラグメンテーション粒子入口、フラグメンテーション反応器からの使用済み熱伝達粒子を収集するためのフラグメンテーション粒子出口、フラグメンテーション反応器に糖を導入するための供給原料入口、フラグメンテーションゾーンを含み糖の熱分解フラグメンテーションを可能にするフラグメンテーションライザー、およびC-C含酸素化合物を回収するための生成物出口を備える;
-再加熱器、ここで前記再加熱器は、
○第1の再加熱器ガス入口
○再加熱器粒子入口
○再加熱器粒子出口
○再加熱器ガス出口
○抵抗加熱システム
を含み;
-フラグメンテーション粒子出口から再加熱器粒子入口へ使用済み熱伝達粒子を運搬するための第一の流動手段;
-再加熱器粒子出口からフラグメンテーション粒子入口まで加熱された熱伝達粒子を運搬するための第二の流動手段;
を含むC-C含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーションのための反応器システムであって、
ここで、前記抵抗加熱システムが、電気伝導性材料の加熱構造を含み、前記加熱構造が、前記再加熱器内の加熱ゾーン内に配置されて、前記再加熱器内の熱伝達粒子に熱を供給する、前記反応器システム。
【請求項2】
電気伝導性材料の加熱構造は、電力供給源に接続されており、ここで、前記電力供給源は、熱伝達粒子を少なくとも300℃の再加熱器出口温度まで加熱するように構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【請求項3】
加熱構造の電気伝導性材料が、20℃において10-7Ω・m~10-5Ω・mの範囲の電気抵抗を有する材料である、請求項1または2に記載の反応器システム。
【請求項4】
加熱構造の電気伝導性材料が、加熱構造から熱伝達粒子に500~500,000W/mの範囲の熱流束を提供する材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項5】
加熱構造の電気伝導性材料が、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄およびニッケルの1つ以上を含む電気伝導性金属または金属合金である、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項6】
加熱構造の電気伝導性材料が、炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化タングステン(ウォルフラムカーバイド)、窒化チタン、二ケイ化モリブデン、二ケイ化タングステン(ウォルフラムジシリド)の一つ以上;またはその混合物を含む材料から選択される電気伝導性セラミック材料である、請求項1~4のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項7】
前記抵抗加熱システムが、加熱構造の表面の少なくとも50%を覆う保護層をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項8】
前記保護層が、20℃で10Ω・mを超える電気抵抗率を有する材料を含む、請求項7に記載の反応器システム。
【請求項9】
前記保護層が、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素から選択されるセラミック材料および/または耐火性ライニングを含む、請求項7または8に記載の反応器システム。
【請求項10】
前記熱伝達粒子が、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼、および炭化ケイ素からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項11】
熱伝達粒子のSauter平均粒径が、20~400μmの範囲にある、請求項1~10のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項12】
再加熱器が反応器壁を有し、反応器壁から加熱構造を電気的に絶縁するフィッティング中において、前記反応器壁を通じ前記加熱構造が電力供給源に接続されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項13】
前記加熱ゾーンが、前記再加熱器ガス出口の下方に垂直に配置される、請求項12に記載の反応器システム。
【請求項14】
前記フィッティングが、前記再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される、請求項12~13のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項15】
再加熱器粒子出口が前記フラグメンテーション粒子入口の上方に垂直に配置されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項16】
前記第1および/または第2流動手段が流体制御手段を備えている、請求項1~15のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項17】
前記フラグメンテーション反応器が
・流動化ガスを導入するための流動化ガス入口;および/または
・使用済み熱伝達粒子の一部をC-C含酸素化合物から分離するための第1のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・C-C含酸素化合物を急冷するための冷却部;および/または
・残りの使用済み熱伝達粒子をC-C含酸素化合物から分離するための第2のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・通過する液体の混合を改善するフラグメンテーションストリッピングゾーン
をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項18】
第1のフラグメンテーション粒子分離器が分離器容器内に配置され、前記分離器容器がさらに、それを通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えたフラグメンテーションストリッピングゾーンおよび分離器流動化ガス入口を含み;ここで、ストリッピングゾーンは第1のフラグメンテーション粒子分離器の下方に垂直に配置され、分離器流動化ガス入口は分離器ストリッピングゾーンの下方に垂直に配置される、請求項17に記載の反応器システム。
【請求項19】
前記フラグメンテーション粒子出口が、前記フラグメンテーションストリッピングゾーンの下方に垂直に、かつ前記再加熱器粒子入口の上方に垂直に配置される、請求項18に記載の反応器システム。
【請求項20】
前記再加熱器が、
・通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えた再加熱器ストリッピングゾーン;および/または
・再加熱器のストリッピングゾーンに酸化ガスを供給するための第2の再加熱器ガス入口;および/または
・再加熱器粒子分離器;および/または
・再加熱器コンプレッサー
をさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の反応器システム。
【請求項21】
前記再加熱器ストリッピングゾーンが、前記加熱ゾーンの下方に垂直に、かつ、前記再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される、請求項20に記載の反応器システム。
【請求項22】
-C含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーションを実施するための方法であって、
a.流動化に適した加熱された熱伝達粒子を提供する工程;
b.フラグメンテーション反応器のフラグメンテーションライザーにおける粒子の流動化流を生成するために、フラグメンテーション粒子入口を通して、前記加熱された熱伝達粒子をフラグメンテーション反応器に導入する工程であり、ここで前記ライザーはフラグメンテーションゾーンを含む工程;
c.糖を含む供給原料を提供する工程;
d.粒子の流動化流へ供給原料を導入する工程;
e.糖が熱分解フラグメンテーションを受けて、C-C含酸素化合物を含む粒子濃度が濃いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
f.粒子濃度の濃いフラグメンテーション生成物から熱伝達粒子の一部を分離して使用済みの熱伝達粒子、および形成されたC-C含酸素化合物を含む粒子濃度が薄いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
g.C-C含酸素化合物を回収する工程;
h.工程f)で分離された使用済み熱伝達粒子を、熱伝達粒子の第1の流れの形態でフラグメンテーション粒子出口から引き出し、第1の流動手段を介して、熱伝達粒子のこの第1の流れを運び、続いて、再加熱器粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第1の流れを再加熱器に供給する工程;
i.加熱ゾーン中の再加熱器内で熱伝達粒子に熱を吸収させて、加熱された熱伝達粒子を生成する工程;
j.工程i)で生成された加熱された熱伝達粒子を熱伝達粒子の第2の流れの形態で再加熱器粒子出口から引き出し、第2の流動手段を介して熱伝達粒子のこの第2の流れを運び、続いて、フラグメンテーション粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第2の流れをフラグメンテーション反応器に供給する工程;
k.c)~k)の工程を繰り返す工程;
を含み、
当該方法が請求項1~21のいずれか一項に記載の反応器システムにより実施される方法。
【請求項23】
熱伝達粒子が、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼、および炭化ケイ素からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱伝達粒子のSauter平均粒径が、20~400μmの範囲にある、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記熱伝達粒子が、再加熱器の加熱ゾーンにおける断面積当たり、5~10.000kg/m/sの範囲の流束を有する、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記再加熱器の加熱ゾーン内の空塔ガス速度が0.01m/s~2m/sの範囲である、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程i)において、使用済みの熱伝達粒子を酸化ガス流と混合して、再加熱器の加熱ゾーンにおける使用済み熱伝達粒子の表面上に存在するコークスを酸化し、ここで、酸化ガスが3~21vol%(体積%)の範囲の酸素を含む、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記熱伝達粒子が、再加熱器流動化ガスを用いて再加熱器内で流動化される、請求項22~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時)に対する再加熱器に供給される再加熱器流動化ガス(Nm/時)の比率が、10~1000の範囲にある、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
再加熱器流動化ガスが、1~103ppmの範囲の酸素を含む、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
工程j)で引き出した熱伝達粒子の温度が、300~800℃の範囲にある、請求項22~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
工程j)の前に、再加熱器ストリッピングゾーンにおいて、過剰な酸素が熱伝達粒子から除去される、請求項22~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記再加熱器流動化ガスが窒素を含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
工程e)の熱分解フラグメンテーションが行われた後に、少なくとも250℃の温度を維持するのに十分な速度で、工程b)において加熱された熱伝達粒子を導入し、ここで前記速度は粒子の流動化流を得るのに十分である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記供給原料が粒子の流動化流に導入された瞬間から急冷が行われるまでに、ガスの平均滞留時間が最大5秒となるように、前記工程f)の粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を少なくとも50℃の温度に急冷する工程をさらに含む、請求項22~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
-C含酸素化合物を含む粗フラグメンテーション生成物を生成するために、粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を第2の分離に供することをさらに含む、請求項22~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記供給原料が、スクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース、タガトース、ガラクトース、グルコースおよびフルクトース;またはこれらの混合物からなる群より選択される糖の水溶液を含む、請求項22~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記供給原料中の糖の濃度が10~90質量%の間である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記加熱された熱伝達粒子に供給されるエネルギー(kW)に対する抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の割合として測定されるエネルギー効率が、少なくとも80%である、請求項22~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時間)に対する抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の比が、800~2500の範囲にある、請求項22~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
請求項22~40のいずれか一項に記載の方法を実施する工程;
次いで
-C含酸素化合物を水素化処理して、対応するC-Cヒドロキシ化合物を得る工程
を含む、糖からC-Cヒドロキシ化合物を製造するための方法。
【請求項42】
工程e)の熱分解フラグメンテーションが行われた後に、少なくとも300℃の温度を維持するのに十分な速度で、工程b)において加熱された熱伝達粒子を導入し、ここで前記速度は粒子の流動化流を得るのに十分である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
工程e)の熱分解フラグメンテーションが行われた後に、少なくとも350℃の温度を維持するのに十分な速度で、工程b)において加熱された熱伝達粒子を導入し、ここで前記速度は粒子の流動化流を得るのに十分である、請求項22~33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、糖供給原料をC-C含酸素化合物に変換する工程(プロセス)およびその方法を実施するのに適したシステムに関するものであり、ここでは、熱伝達粒子は糖の熱分解フラグメンテーション(断片化)に熱を提供するために使用され、使用済みの熱伝達粒子は抵抗加熱システムを備えた再加熱器で再加熱される。当該方法とシステムは工業的応用に適しており、工程は大規模で連続的な工程として行われることができる。
【背景技術】
【0002】
背景
バイオマスは、市販の化学製品の調製のための原料として石油を補充し、おそらく代替する可能性があるため、原料として特に興味深い。近年、バイオマスを利用するための様々な技術が調査されている。バイオマスの中でも炭水化物は大きな割合を占めており、市販の化学製品の原料として効率的に利用するために多くの戦略が確立されている。これらの戦略には、様々な発酵ベースの工程、熱分解、および水素化分解、ヒドロホルミル化または酸触媒脱水などの他の工程が含まれる。
【0003】
バイオマスから製造される化学物質の例には、代替天然ガス、エタノールやバイオディーゼルなどのバイオ燃料、食品褐変材料、ジオール(エチレングリコールやプロピレングリコール)、酸(乳酸、アクリル酸、レブリン酸)などの市販の化学物質、および広範囲の他の重要な化学中間体(エピクロロヒドリン、イソプレン、フルフラール、および合成ガス)が含まれる。
【0004】
そのため、C-C含酸素生成物の新規用途が開発されており、これらの製品に対する需要の増大が期待されている。このような含酸素生成物は、例えば、含酸素生成物を水素化にかけることによりエチレングリコールおよびプロピレングリコールを生産するために(例えば、WO2016/001169参照)使用されてもよく、またはWO2017/064267に記載されている硫化水素を除去するために使用され得る。しかし、他にも多くの使用が想定される。
【0005】
熱分解(糖の分解または糖の熱分解フラグメンテーションとも呼ばれる)により、糖をC-C含酸素化合物に変換するためのいくつかのシステムが提案されている。
【0006】
WO92/17076では、電気オーブンを用いて間接的に、又は天然ガス又はプロパンの燃焼によって直接的に熱を提供することが示唆されている。熱源としては、加熱された砂が例示されている。この例では、熱は砂を用いて供給され、熱分解反応器内でガスの燃焼が起こり、加熱された砂粒子が得られると思われる。
【0007】
US7,094,932では熱分解反応器の壁を介した電気加熱によって熱が供給されている。実施例6では、工程はスケールアップされているが、工業レベルではない。
【0008】
WO2017/216311においては、再加熱器に接続した別個の熱分解反応器からなる反応器システムを開示し、循環流動反応器システムを提供している。このシステムでは、外部燃焼チャンバーからの燃焼ガスを再加熱器に運ぶことにより、熱伝達粒子が再加熱器内で所望の温度まで加熱される。次に、加熱された熱伝達粒子を熱分解反応器に再循環させて、糖の熱分解フラグメンテーションのための熱を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2016/001169
【文献】WO2017/064267
【文献】WO92/17076
【文献】US7,094,932
【文献】WO2017/216311
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、大規模製造に適し持続可能な、糖からC-C含酸素化合物を製造するための、より高収率でよりエネルギー効率の良い反応器システムおよび工程が依然として必要とされている。
【0011】
要約
持続可能なC-C含酸素化合物を生産するための工業的に適用可能な手法の開発を所望し、本発明者は、電気的に加熱された反応器壁を通して熱を供給する熱分解フラグメンテーション反応器が、単に工業的適用には適していないことを見出した。反応器蒸気への限定された熱流束は、長時間の滞留が必要となり、これは特に糖をC-C含酸素化合物に変換する工業的用途には非常に不利である。また、本発明者らは、ライザー再加熱器内で熱伝達粒子を加熱するための排ガスを発生させるためにメタンを燃焼させるための外部燃焼チャンバーを有することが、システムに十分な熱を送達するために大量の排ガス流が必要であったため、いくつかの欠点を有することを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、熱分解フラグメンテーションによる糖からC-C含酸素化合物を生成するための反応器システムにおいて、使用済みの熱伝達粒子を加熱するための熱源として、抵抗加熱を熱源とする再加熱器を含む反応器システムを提供することにより、多くの重要な長所が得られることを見出した。工業的応用のためには、収率、選択性および/または転換率のわずかな増加でさえも、大きな節約をもたらす可能性があることに注目する価値がある。
【0012】
本発明者らは、ここで、熱分解フラグメンテーション反応器(フラグメンテーション反応器とも呼ばれる)と、再加熱器内で熱を伝導する粒子を加熱するための抵抗加熱を採用した加熱システムを備えた再加熱器とを含む、改良された循環流動反応器システムを開発した。
【0013】
したがって、C-C含酸素化合物への糖の熱分解のための反応器システムが提供され:
反応器システムは、
-C-C含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーションのための熱を供給する熱伝達粒子を含む
フラグメンテーション反応器、
ここでフラグメンテーション反応器は加熱された熱伝達粒子を導入するためのフラグメンテーション粒子入口、フラグメンテーション反応器からの使用済み熱伝達粒子を収集するためのフラグメンテーション粒子出口、フラグメンテーション反応器に糖を導入するための供給原料入口、フラグメンテーションゾーンを含み糖の熱分解フラグメンテーションを可能にするフラグメンテーションライザー、およびC-C含酸素化合物を回収するための生成物出口を備え;
-再加熱器、ここで前記再加熱器は、
○第1の再加熱器ガス入口
○再加熱器粒子入口
○再加熱器粒子出口
○再加熱器ガス出口
○抵抗加熱システム
を含み、
-フラグメンテーション粒子出口から再加熱器粒子入口へ使用済み熱伝達粒子を運搬するための第一の流動手段;
-再加熱器粒子出口からフラグメンテーション粒子入口まで加熱された熱伝達粒子を運搬するための第二の流動手段;を含み、
前記抵抗加熱システムは、電気伝導性材料の加熱構造を含み、前記加熱構造が、前記再加熱器内の加熱ゾーン内に配置されて、前記再加熱器内の熱伝達粒子に熱を供給する。
【0014】
本文脈において、「加熱ゾーン」とは、再加熱器の加熱ゾーンを指すことを意味する。ただし、本発明から逸脱することなく、反応器システムの他の部分に熱が提供されてもよい。例えば、加熱された熱伝達粒子は、フラグメンテーションライザー内のフラグメンテーションゾーンにおいて供給原料に熱を運搬する。
【0015】
前記第1および第2の流動手段(フロー手段)は、それぞれ、フラグメンテーション粒子出口から再加熱器粒子入口および再加熱器粒子出口からフラグメンテーション粒子入口への流体接続を確立すべきである。流動手段の実施形態は、パイプまたはチューブを含み、粒子は流動化される。熱伝達粒子の流動化を容易にするために、第一および第二の流動手段の大きさと角度を選択すべきである。循環流動反応器システムを維持するために、熱伝達粒子の流れが流体の挙動を示し循環されるためには、熱伝達粒子は流動状態に保たれるべきである。一般に、垂直に近い第1および第2の流動手段を用いることが好ましい。また、120°~240°の角度を有することが好ましい。一般に、1~2000kg/m2/sの床材料の流束を得るために、第1および第2の流動手段の直径を選択すべきである。第1および/または第2の流動手段に追加の流動化ガス入口を加えてもよい。好ましくは、第1および/または第2の流動手段は、第1および/または第2の流動手段における流体の流れを制御する弁などの流体制御手段を備えている。
【0016】
反応器システムの材料は、熱および腐食に対して耐性がある必要がある。
【0017】
反応器システムの実施形態においては、電気伝導性材料の加熱構造は、電力供給源に接続されており、ここで、前記電力供給源は、熱伝達粒子を少なくとも300℃の再加熱器の出口温度まで、例えば300~800℃、400~700℃、または500~650℃など、最大900℃まで加熱するように構成されている。加熱システムの正確な構成は、所望の量のエネルギーを生成するための加熱構造において所望の抵抗を得るために、加熱構造の寸法(断面および長さ)に依存するであろう。加熱された熱伝達粒子の出口温度は、加熱ゾーン内の熱伝達粒子の滞留時間と合わせて加熱構造から熱伝達粒子への熱流束に依存する。
【0018】
熱伝達粒子は、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼鉄、炭化ケイ素からなる群から選択され、熱伝達粒子のSauter平均粒径は、20~400μmの範囲、例えば、20~300μm、20~200μm、20~100μmで範囲である。Sauter平均粒径は、対象粒子と同じ体積/表面積比を有する球の直径として定義される粒径の平均である。
【0019】
このようなシステムは、既知の手段と比較していくつかの利点を伴う。この方式は、糖からC-C含酸素化合物を工業的に持続可能に製造する際に適用可能であり、得られる製品当たりの費用を削減する可能性を提供する。このシステムは、再加熱器の大きさと複雑さを減らしながら、同じ量の熱を工程に供給し、コスト削減をもたらすC-Cの含酸素化合物への熱分解フラグメンテーションを実行する工程を単純化する可能性を提供する。反応器システムの実施形態においては、再加熱器の加熱ゾーンにおける直径とフラグメンテーションライザーのフラグメンテーションゾーンにおける直径との比は、1:1~30:1の範囲内とすることができる。本出願による反応器システムは、反応器システムへの空気の必要となる圧縮の低減を可能にする。従って、既知のシステムよりも必要となるのは小さなコンプレッサーでよい。再加熱器内で蒸気が使用される場合には、コンプレッサは、水の蒸発を可能にして、再加熱器流動化ガスをその場で生成するために、さらに、分配されてもよい。
【0020】
再加熱器は、再加熱器の内部と周囲との間の区切りを構成する反応器壁を有する反応器である。適切な反応器壁材料は鋼である。
【0021】
本発明の実施形態による反応器システムの再加熱器は、抵抗加熱により熱を提供する加熱システムを含む。熱の主な部分、例えば、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%の部分は、電気伝導性材料からなる加熱構造によって提供される。加熱構造の二点間に電流が流され、その結果、抵抗熱が二点間に供給される。
【0022】
加熱構造の電気伝導性材料は、本発明による実施形態において、20℃において10-7Ω・m~10-5Ω・mの範囲で電気抵抗を有する材料からなることができる。加熱構造の電気伝導性材料は、加熱構造から500~500,000W/mの範囲の熱伝達粒子に熱流束を提供する材料から構成されてもよい。熱流束は、電流および加熱構造に印加される電圧を調節することによって制御されてもよい。電気伝導性材料は、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄およびニッケルの1つ以上を含む金属または金属合金を含み得る。代わりに、または、加熱構造の電気伝導性材料が、1つ以上の炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化タングステン(ウォルフラムカーバイド)、窒化チタン、二ケイ化モリブデン、二ケイ化タングステン(ウォルフラムジシリド);またはその混合物を含む材料などの電気伝導性セラミック材料を含むことができる。
【0023】
抵抗加熱システムは、さらに、加熱構造の表面の少なくとも50%を覆う;例えば、加熱構造の表面の少なくとも70、少なくとも80または少なくとも90%を覆う保護層を含み得る。したがって、保護層は、20℃で10Ω・mを超える、例えば、20℃で10~1025Ω・mの範囲の電気抵抗率を有する材料を含むことができ、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素および/または耐火性ライニングからなる群から選択されるセラミック材料である。
【0024】
加熱構造は、任意の形状を有し得る。しかしながら、機械的及び電気的安定性を提供する形状と、再加熱器の加熱ゾーンに熱を供給するためのかなり高い表面積とが好ましい。加熱構造は、1つ以上の棒状、円筒状又はプレート状であってもよく、加熱ゾーン内の任意の方向に配置されてもよい。いくつかの棒状、円筒状又はプレート状または他の形状を用いる場合、それらは並列にまたは直列に接続され、異なる方向に配置され得る。加熱構造は、別個の導体を介して電源に接続されてもよいし、または加熱構造自体が電源に直接接続されてもよい。
【0025】
電源は、再加熱器内に、又は再加熱器の反応器壁の外側に配置することができる。
【0026】
電力供給源が反応器壁の外側に配置される場合、加熱構造はコネクタで電源に接続される。加熱構造は、その場合、コネクタが加熱構造と一体であるか、または任意の中間導体のコネクタが、加熱構造を電力供給源に電気的に接続するために、反応器壁を通過してもよい。一実施形態によると、加熱構造体または任意の中間導体の端部は、反応器壁の上部を通じて導かれる。この利点は、反応器を閉じたり、さもなければ熱伝達粒子の流動流を止めたりする場合には、熱伝達粒子がコネクタを覆わないことである。
【0027】
加熱構造体または任意の中間導体の端部が反応器壁を通じて導かれる場合、それらは好ましくは反応器壁から電気的に絶縁されている。それらは、例えば、電気的に絶縁された材料からなるフィッティング内に配置されていてもよい。フィッティングは、部分的には、プラスチックおよび/またはセラミック材料であってもよい。「フィッティング」という用語は、2つのハードウェアを機械的に接続することを可能にする装置を意味する。これにより、再加熱器の内部と周囲との間の圧力差は、反応器壁の穿孔にもかかわらず維持され得る。フィッティングのこれに限定されない例は、電気的に絶縁性のフィッティング、誘電体のフィッティング、電力圧縮シール、圧縮フィッティングまたはフランジであってもよい。
【0028】
本発明の実施形態によれば、再加熱器は、反応器壁を有し、加熱構造体は、反応器壁から加熱構造体を電気的に絶縁するフィッティングにおいて、前記反応器壁を介して電源に接続される。好ましくは、加熱ゾーンは、再加熱器ガス出口の下方に垂直に配置される。好ましくは、フィッティングは、再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される。好ましくは、再加熱器粒子出口は、フラグメンテーション粒子入口の上方に垂直に配置される。
【0029】
第1の位置が第2の位置の上方で垂直に配置されていることに言及する場合、第1の位置および第2の位置を重心に向けた垂直軸上に投影する場合、第1の位置の投影が第2の位置の投影よりも垂直軸上で高い場合、第1の位置は第2の位置の上方に垂直に配置されているとみなされることが理解されるべきである。同様に、「下方に垂直」についても同様である。
【0030】
本発明の実施形態によれば、前記フラグメンテーション反応器が
・流動化ガスを導入するための流動化ガス入口;および/または
・使用済み熱伝達粒子の一部をC-C含酸素化合物から分離するための第1のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・C-C含酸素化合物を冷却するための冷却部;および/または
・残りの使用済み熱伝達粒子をC-C含酸素化合物から分離するための第2のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・通過する液体の混合を改善するフラグメンテーションストリッピングゾーン
をさらに含むことができる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、第1のフラグメンテーション粒子分離器が分離器容器内に配置され、前記分離器容器がさらに、それを通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えたフラグメンテーションストリッピングゾーンおよび分離器流動化ガス入口を含み;
ここで、ストリッピングゾーンは第1のフラグメンテーション粒子分離器の下方に垂直に配置され、分離器流動化ガス入口は分離器ストリッピングゾーンの下方に垂直に配置される。
【0032】
一実施形態によれば、フラグメンテーション粒子出口は、フラグメンテーションストリッピングゾーンの下方に垂直に、再加熱器粒子入口の上方に垂直に配置される。
【0033】
前記再加熱器が、
・それを通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えた再加熱器ストリッピングゾーン;および/または
・再加熱器のストリッピングゾーンに酸化ガスを供給するための第2の再加熱器ガス入口;および/または
・再加熱器粒子分離器;および/または
・再加熱器コンプレッサー
をさらに含むことができる。
【0034】
一実施形態によると、再加熱器ストリッピングゾーンは、加熱ゾーンの下方に垂直に、再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される。
【0035】
本発明による反応器システムは、糖のC-C含酸素化合物への熱分解フラグメンテーションを実施する方法において有利に使用されることができ、この方法は以下の工程を含む:
a.流動化に適した加熱された熱伝達粒子を提供する工程;
b.フラグメンテーション反応器のフラグメンテーションライザーにおける粒子の流動化流を生成するために、フラグメンテーション粒子入口を通して、前記加熱された熱伝達粒子をフラグメンテーション反応器に導入する工程であり、ここで前記ライザーはフラグメンテーションゾーンを含み;
c.糖を含む供給原料を提供する工程;
d.粒子の流動化流へ供給原料を導入する工程;
e.糖が熱分解フラグメンテーションを受けて、C-C含酸素化合物を含む粒子濃度が濃いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
f.粒子濃度が濃いフラグメンテーション生成物から熱伝達粒子の部分を分離して使用済みの熱伝達粒子および形成されたC-C含酸素化合物を含む粒子濃度が薄いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
g.C-C含酸素化合物を回収する工程
h.工程f)で分離された使用済み熱伝達粒子を、熱伝達粒子の第1の流れの形態でフラグメンテーション粒子出口から引き出し、第1の流動手段を介して、熱伝達粒子のこの第1の流れを運び、続いて、再加熱器粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第1の流れを再加熱器に供給する工程;
i.熱伝達粒子が加熱ゾーン中の再加熱器内で熱を吸収して加熱された熱伝達粒子を生成することを可能にする工程;
j.工程i)で生成された加熱された熱伝達粒子を熱伝達粒子の第2の流れの形態で再加熱器粒子出口から引き出し、第2の流動手段を介して熱伝達粒子のこの第2の流れを運び、続いて、フラグメンテーション粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第2の流れをフラグメンテーション反応器に供給する工程;
k.c)~k)の工程を繰り返す工程。
【0036】
熱伝達粒子は、フラグメンテーション反応器と再加熱器の両方で流動化される。好ましくは、熱伝達粒子はまた、第1および第2の流動手段において流動化される。このようなシステムは、循環流動床反応器システム(CFB)と呼ばれることがある。ある実施形態例においては、反応装置は循環流動層反応装置システムである。各反応器の空塔(表層)ガス速度は個別に調節するか、または各反応器の空塔ガス速度は協調して調節することができる。1つの実施形態において、空塔ガス速度は、再加熱器よりもフラグメンテーション反応器において少なくとも3倍速い、例えば、少なくとも5倍または10倍速い。一般に、流体化ガスおよび/または反応器内で形成された任意のガス、例えば、水が加熱され、気相に蒸発することによって流動化されることによって導入される。ある実施形態において、再加熱器の空塔ガス速度は、0.01m/s~2m/sの範囲内である。一実施形態によると、フラグメンテーション反応器のフラグメンテーションライザーのフラグメンテーションゾーン内の空塔ガス速度は、3m/s~22m/sの範囲内にある。
【0037】
フラグメンテーション反応器のさらなる形態はWO2017/064267に開示されており、これはUS2018/0312410としても刊行されている。US2018/0312410のフラグメンテーション反応器と関連する方法の形態は、ここに引用して組み込まれる。
【0038】
例えば天然ガスの外燃焼によって熱を発生させるWO2017/064267に開示されている再加熱器と比較すると、本用途に従った反応器システムの再加熱器は、産業用途にとってはるかに魅力的である。燃焼ガスが避けられが、これは再加熱器から除去する必要がある汚染物質の量が非常に限られていることを意味する。さらに、局在的にのCOの放出を減少させることができる。もう一つの利点は、酸素のような酸化剤を含むガスが、調剤されるか、または大幅に減少されることができる点である。装置がシンプルになり、再加熱器のサイズが大幅に小さくすることができる。例えば、空気コンプレッサー、熱交換器、空気フィルタ、及び排ガス洗浄等に対する必要性が低減される。排ガス流量が著しく小さく、したがって空気圧縮機が小さく、排ガス熱損失が少ないので、エネルギー効率ははるかに良好である。排ガスは、下流蒸留工程の蒸留カラムでも使用することができる。
【0039】
さらに、再加熱器に熱を供給するために使用される電力は、最終製品の持続可能性の程度を向上させる風力発電所のエネルギーまたは太陽エネルギーなどの持続可能な供給源から得られてもよい。本発明の一実施形態に従った方法のさらなる利点は、空気の必要性が低減されることである。
【0040】
フラグメンテーション反応器とは別の再加熱器において、熱伝達粒子を加熱または再加熱する利点は、フラグメンテーション生成物を汚染することなく燃焼によって、熱伝達粒子の表面に形成されたいずれかの有機物質、例えばコークが除去され、フラグメンテーション反応器への酸素の添加が回避され得ることである。
【0041】
反応器システムが2つの別々の反応器として記述されているとしても、2つの反応器は、各反応器が反応器壁によって区切られているならば、様々な方法で一体化され得る。しかし、そのうちの1つの反応器壁の一部または全部は、もう1つの反応器壁と共有されている可能性がある。後者の場合、第1および/または第2の流動手段は、2つの反応器間の流体接続を提供する共有する反応器壁中の第1および/または第2の開口部を単に構成することができる。本発明による実施形態においては、フラグメンテーション反応器は再加熱器の上に垂直に配置され、2つの反応器は、第1および第2の流動手段を構成する開口部を有する反応器壁を共有する。
【0042】
本発明による反応器システムの利点は、熱伝達粒子への熱移動が流動化ガス流とは無関係に調整され得ることである。天然ガスを熱源として使用する場合、燃焼ガス流は一定のレベルでなければならず、より多くの熱は増加した空塔ガス速度を必要とする。また、抵抗加熱式再加熱器では、NOxを発生させず、環境上の利点となる。
【0043】
本発明による方法で製造されるC1-C3含酸素化合物は、主としてホルムアルデヒド(C1)、グリコールアルデヒド(C2)、グリオキサール(C2)、ピルバルデヒド(C3)(pyruvaldehyde)およびアセトール(C3)からなる。しかし、ほとんどの場合、C2-とC3-の含酸素化合物が最も価値のある生成物である。本発明による方法から回収される粗フラグメンテーション生成物は、それらのC1-C3含酸素化合物の混合物を含む。これは互換的に、C1-C3含酸素化合物混合物、C1-C3含酸素化合物生成物、およびC1-C3含酸素化合物と呼ばれることがある。本発明の態様において、フラグメンテーション生成物は、グリコールアルデヒドに富み、これは、C1~C3含酸素化合物混合物の少なくとも50質量%、例えば少なくとも60質量%または少なくとも70質量%がグリコールアルデヒドである。本発明の別の実施形態においては、C1~C3含酸素化合物混合物の少なくとも50質量%、例えば少なくとも60質量%、少なくとも70質量%または少なくとも80質量%は、グリコールアルデヒドまたはグリオキサールである。本発明のさらに別の実施形態において、C1~C3含酸素化合物混合物の少なくとも3質量%、例えば少なくとも5質量%または少なくとも7質量%は、ピルバルデヒドである。本発明のさらに他の実施形態において、C1~C3含酸素化合物混合物の少なくとも3質量%、例えば少なくとも5質量%または少なくとも7質量%は、ピルバルデヒドまたはアセトールである。
【0044】
本発明による方法は、C1-C3含酸素化合物の大量生産に適している。したがって、乾燥砂糖の重量に基づくと、フラグメンテーション反応器当たり年間1000トン以上、例えば、5,000トン、10,000トン、50,000,100,000トンまたは1000,000トン以上の砂糖の加工量に適している。
【0045】
一実施形態によると、熱伝達粒子は、5~10.000kg/m2/sの範囲の再加熱器の加熱ゾーン内の断面積あたりの流束を有する。別の実施形態によれば、再加熱器の加熱ゾーン内の空塔ガス速度は、0.01m/s~2m/sの範囲内にある。
【0046】
使用済みの熱伝達粒子を酸化ガス流と混合して、再加熱器の加熱ゾーンにおける使用済みの熱伝達粒子の表面に存在するコークを酸化することができ、ここで、酸化ガスは3~21vol.%(体積%)の範囲の酸素を含む(例えば、第2の再加熱器ガス流入口を通して供給される)。熱伝達粒子は、再加熱器流動化ガス(例えば、第1の再加熱器ガス入口を通って供給される)を使用して、再加熱器内で流動化されることができる。再加熱器の流動化ガスは、好ましくは、窒素のような不活性ガスであるが、酸化ガスのような他の成分を含み得る。再加熱器の流動化ガスは、例えば、酸素1~103ppmの範囲で構成され得る。再加熱器流動化ガスは、80~99.9vol%の窒素を含み得る。
【0047】
本発明による実施形態においては、フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時)に対する再加熱器に供給される再加熱器流動化ガスの比率(Nm/時)が、10~1000、例えば100~300の範囲にある。
【0048】
一実施形態においては、工程j)で引き出した熱伝達粒子の温度は、300~800℃の範囲、例えば、400~800℃、400~700℃、または500~700℃の範囲にある。ステップj)の前に、再加熱器ストリッピングゾーンにおいて、過剰な酸素が熱伝達粒子から除去されることができる。
【0049】
工程e)の熱分解フラグメンテーションが行われた後に、少なくとも250℃の温度、例えば、少なくとも300℃、少なくとも350℃、少なくとも400℃または少なくとも450℃の温度を維持するのに十分な速度で、工程b)において加熱された熱伝達粒子を導入し、ここで前記速度は粒子の流動流を得るのに十分である、
【0050】
本発明の方法は、前記供給原料が粒子の流動化流に導入された瞬間から急冷が行われるまでに、ガスの平均滞留時間が最大5秒、例えば、最大3秒、最大2秒、最大1秒、最大0.8秒または最大0.6秒となるように、前記工程f)の粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を少なくとも50℃の温度に急冷する工程を好ましくはさらに含む。好ましくは、粒子濃度が薄いフラグメンテーション生成物を第2の分離にかけて、C1-C3含酸素化合物を含む粗フラグメンテーション生成物を生成する。
【0051】
好ましくは、原料は、スクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース、タガトース、ガラクトース、グルコースおよびフルクトースからなる群より選択される糖の水溶液;またはこれらの混合物を含む。好ましくは、原料中の糖の濃度は10~90質量%の間である。
【0052】
本発明による実施形態においては、前記加熱された熱伝達粒子に供給されるエネルギー(kW)に対する前記抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の割合として測定されるエネルギー効率が、少なくとも80%、例えば、少なくとも82~99%、または90~98%である。別の実施形態においては、フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時間)に対する前記抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の比が、800~2500の範囲、例えば1100~2000の範囲にある。
【0053】
本発明によれば、以下の工程を含む糖からC1-C3ヒドロキシ化合物を製造するための方法が提供される:
請求項22~40のいずれか一項に記載の方法を実施する工程;
次いで
-C含酸素化合物を水素化処理して、対応するC-Cヒドロキシ化合物を得る工程。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面
図1は、本発明の実施形態による反応器システムの模式図である。
図2は、加熱ゾーンおよびストリッピングゾーンを含む再加熱器の1つの実施形態を例示する。
図3Aおよび図3Bは、再加熱器壁を通して加熱構造を導くための2つの異なる実施形態のフィッティングを示す図である。
図4は、循環流動床反応器システムとして適している、本発明の反応器システムの実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
詳細な説明
定義
x%以上の基準を用いる場合、特に断りのない限り、これは本質的にx~100%の範囲を定義する。同様に、y%以下の基準を用いる場合、特に断りのない限り、これは本質的に0~y%の範囲を定義する。
【0056】
パーセンテージで単位が与えられていない場合、特に明記しない限り、基準は質量(重量)ベース当たりであると理解される。
【0057】
面積当たりの粒子熱流束を参照する場合、特に記載がない限り、面積は利用可能な面積と定義される。
【0058】
「電気伝導性」という用語は、20℃において10-7-10-5Ω・mの範囲で電気抵抗を有する材料を意味する。したがって、電気的に伝導性である材料は、例えば、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄、ニッケル、またはそのような金属を含む鉄のような金属である。
【0059】
「電気絶縁性」とは、20℃において10Ω・mを超える電気抵抗率を有する物質、例えば、20℃において10~1025Ω・mの範囲内の電気抵抗率を有する物質を意味する。
【0060】
位置番号
1.フラグメンテーション反応器
2.フラグメンテーションライザー
3.第1のフラグメンテーション粒子分離器
4.第2のフラグメンテーション粒子分離器
5.冷却部
6.流動化ガス入口
7.フラグメンテーション粒子入口
8.供給原料投入口
9.生成物出口
10.フラグメンテーション粒子出口
11.再加熱器
12.第1の再加熱器ガス入口
13.第2の再加熱器ガス入口
14.再加熱器粒子入口
15.再加熱器粒子出口
16.再加熱器ガス出口
17.再加熱器ストリッピングゾーン
18.再加熱器粒子分離器
19.第1の流動手段
20.第2の流動手段
21.加熱ゾーン
22.第1の流動手段制御装置
23.第2の流動手段制御装置
24.フラグメンテーションストリッピングゾーン
25.フラグメンテーションストリッピングガス入口
30.抵抗加熱システム
31.加熱構造
32.電源
33.フィッティング
34.コネクタ
35.絶縁材料
36.反応器壁
37.圧縮フィッティング
【0061】
本発明による反応器システムの実施形態においては、加熱構造の電気伝導性材料は、20℃で10-5Ω・mから10-7Ω・mの範囲の電気抵抗率を提供する材料である。一実施形態においては、加熱構造の電気伝導性材料は、500~500,000W/mの熱流束を提供する物質である。一実施形態においては、加熱構造の電気伝導性材料は、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄およびニッケルの1つまたは複数を含む電気伝導性金属または金属合金である。一実施形態によると、電気伝導性材料は、Fe-Cr-Al合金を含む。
【0062】
本発明による反応器システムの実施形態においては、抵抗加熱システムの電気伝導材料は、加熱構造の表面の少なくとも50%を覆う保護層;例えば、加熱構造の表面の少なくとも70、少なくとも80または少なくとも90%を覆う保護層を有する。一実施形態によると、前記保護層が、20℃で10Ω・mを超える、例えば、20℃で10~1025Ω・mの範囲の電気抵抗率を有する材料を含む。1つの実施形態において、保護層が、セラミック材料、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素および/または耐火性ライニングを含む。保護層は不活性物質であることが好ましい。保護層は抵抗加熱システムの加熱構造を保護する役割を果たす。保護層は、電流または機械的腐食またはその両方に対してバリアを形成することができる。
【0063】
本発明による反応器システムの実施例では、再加熱器は、反応器壁を有してもよく、加熱構造は、加熱構造が反応器壁から電気的に絶縁されるように、フィッティング内で、前記反応器壁を介して電力供給源に接続される。
【0064】
一実施形態においては、フラグメンテーション反応器は、流動化ガスを導入するための流動化ガス入口をさらに含むことができる。
【0065】
一実施形態においては、フラグメンテーション反応器は、フラグメンテーションゾーンを含み、フラグメンテーションを可能にするフラグメンテーションライザーをさらに含むことができる。
【0066】
一実施形態においては、フラグメンテーション反応器は、使用済みの熱伝達粒子の部分をC-Cの含酸素化合物から分離するための第1のフラグメンテーション粒子分離器をさらに含むことができる。
【0067】
一実施形態においては、フラグメンテーション反応器は、第1のフラグメンテーション粒子分離器では分離されなかったC-C含酸素化合物から使用済みの熱伝達粒子を分離するための第2のフラグメンテーション粒子分離器をさらに含むことができる。
【0068】
一実施形態においては、フラグメンテーション反応器は、C-C含酸素化合物を冷却するための冷却部をさらに含むことができる。
【0069】
一実施形態においては、再加熱器は、さらに、混合を改善するために、バッフルまたは他の内装品を装備した再加熱器ストリッピングゾーンを含むことができる。
【0070】
一実施形態においては、再加熱器は、再加熱器のストリッピングゾーンに酸化ガスを提供するための第2の再加熱器ガス入口をさらに含むことができる。
【0071】
本発明による方法の実施態様において、熱伝達粒子は、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼、および炭化ケイ素からなる群より選択され得る。一実施形態においては、熱伝達粒子のSauter平均粒径が、20~400μmの範囲、例えば、20~300、20~200または20~100μmの範囲にある。一実施形態においては、熱伝達粒子は5~10.000kg/m/sの範囲で断面積当たりの流束を有する。しかしながら、この用途から逸脱することなく、フラグメンテーション反応に対して触媒作用を有する材料内では、熱伝達粒子が選択される可能性がある。
【0072】
本発明の方法の実施形態において、工程は、再加熱器の空塔ガス速度が0.01m/sから2m/sの範囲にあるように、さらに定義され得る。
【0073】
一実施形態においては、再加熱器内の使用済み熱伝達粒子を酸化ガス流と混合して、使用済み熱伝達粒子の表面に存在するコークの少なくとも一部を酸化する。ここで、酸化ガスは3~21vol%の範囲の酸素を含む。
【0074】
一実施形態においては、熱伝達粒子は、1~103ppmの酸素の範囲を含む再加熱器流動化ガスを用いて再加熱器内で流動化される。
【0075】
一実施形態において、再加熱器粒子出口を出る熱伝達粒子の温度は、300~800℃の範囲内、例えば、400~800、400~700または500~700℃の範囲である。
【0076】
一実施形態においては、過剰な酸素は、再加熱器からフラグメンテーション反応器に移される前に、ストリッピングゾーンで粒子から除去される。
【0077】
一実施形態においては、粒子の流動化流は、窒素ガスなどの流動化ガスを導入することによって生成される。一実施形態においては、流動化ガスは不活性ガスである。
【0078】
一実施形態においては、熱伝達粒子は少なくとも250℃の温度、例えば、少なくとも300℃、少なくとも350℃、少なくとも400℃または少なくとも450℃の温度を維持するのに十分な速度で、フラグメンテーションライザーの上部に導入され、前記速度は、粒子の流動化された流れを得るのに十分である。
【0079】
一実施形態においては、当該方法は、前記供給原料が粒子の流動化流に導入された瞬間から急冷が行われるまでに、ガスの平均滞留時間が、最大5秒、例えば、最大3秒、最大2秒、最大1秒、最大0.8秒または最大0.6秒となるように、さらに、粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を、少なくとも50℃の温度に急冷する工程を含む。
【0080】
一実施形態においては、工程はさらに、C-C含酸素化合物を含む粗フラグメンテーション産物を生成するために、粒子濃度の薄いフラグメンテーション産物を生成物の分離に供することを含む。
【0081】
一実施形態においては、供給原料は、スクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース、タガトース、ガラクトース、グルコースおよびフルクトース;またはこれらの混合物からなる群より選択される糖の水溶液を含む。一実施形態においては、水溶液中の糖の濃度は10~90質量%である。
【0082】
生成されたC-C含酸素化合物は、上記の反応器システムにおいて糖をC-C含酸素化合物に熱分解する工程を実施し、次いでC-C含酸素化合物を水素化に付して対応するC-Cヒドロキシ化合物を得る工程によって、その後、ヒドロキシ化合物に変換され得る。
【0083】
糖をC-Cな含酸素化合物に変換する本発明による方法は、フラグメンテーション反応器へのガス流を制御するための制御装置、または弁などの再加熱器へのガス流を制御するための制御装置によって制御され得る。さらに、流動化ガスを再加熱器に圧縮するためのコンプレッサーの機能を制御するための制御装置が設けられてもよい。第1および/または第2の流動手段中の粒子の流動流は、弁などの制御装置によって制御され得る。
【0084】
糖のフラグメンテーションの再加熱器中において電気加熱を使用すると、再加熱器に必要となるガスは、容器内の熱伝達粒子を流動化するためのガスのみである。この流動化は、流動化に当業者に周知のガススパージャまたはガス分配プレートを用いて行うことができる。電気加熱再加熱器を約6cm/sの最小流動化速度の10倍で作動させると仮定すると、抵抗加熱装置のための必要となるガス量は、再加熱器のための熱源として天然ガスを使用する公知のシステムの再加熱器ライザーよりも約60倍小さい。この必要ガス量の計算では、電気加熱パイプ間のフリーボイド(空隙率)のみを考慮した。さらに、抵抗加熱を用いる方法は、処理された糖の原料の質量あたりの入熱量に関して40%効率が良いと仮定される。
【0085】
この削減されたガスの必要量は、熱分解フラグメンテーションユニットの前に必要とされる設備に関連する必要な正味のエネルギー投入と節約の両方の観点から、方法のエネルギー効率に重要な影響を及ぼす。
【0086】
公知のフラグメンテーションシステムでは、粒子および再加熱器出口ガスを運ぶ再加熱熱伝達粒子は、同じ温度で装置から出る。既知の方法では、使用済みの熱伝達粒子との熱交換前にバーナーから出るガスは、1000~1400℃の温度を有する。源から熱分解フラグメンテーションへ直接移動したエネルギーと解釈されるプロセス加熱効率は、(1000℃-600℃)/1000℃×100%=40%と(1400℃-600℃)/1400℃×100%=57%の間であると大まかに計算できる。エネルギー源から熱分解的フラグメンテーション過程に直接移行しない残りのエネルギーは、この工程を加熱ガスとして残す。これらのガスによる熱分解フラグメンテーションを残したこのエネルギーは、フラグメンテーション工程に直接移されたエネルギーよりも利用しにくい。抵抗加熱された熱分解フラグメンテーション反応器は再生器を出るガス流が60倍低いので、抵抗加熱を用いた工程加熱効率は著しく高い。その結果、環境に大きな恩恵をもたらし、工程の節約にもつながる。
【0087】
前述したように、ガス焼成熱分解フラグメンテーションと抵抗加熱フラグメンテーションを比較すると、ガス必要量に大幅な削減が生じる。増加した圧力で運転される熱分解フラグメンテーション工程では、ガスバーナーの空気必要量もこの場合約60倍高いので、天然ガス加熱を使用する場合にも圧縮出力は著しく高くなる。
【0088】
工業規模の熱分解フラグメンテーション反応器が乾燥塩基単糖供給原料を1時間あたり18トン処理すると仮定すると、天然ガス焼成再加熱器のエネルギー必要量は約25MWとなる。このような工場の空気必要量は、およそ40000~60000m3/hであろう。50000m3/hを仮定すると、この流れを例えば1.5bargに圧縮するには、典型的なコンプレッサー効率を仮定して、コンプレッサーへの電気的熱入力が2.1MWを必要とするであろう。抵抗加熱フラグメンテーション反応器への圧縮ガスの流れは、比較して、約60倍低いか、または0.035MWのコンプレッサー電力消費のみを必要とすることになる。
【0089】
反応器と加熱構造の概略を図1~4に示す。図1および図2は、ブロックタイプの図としてのシステムの機能を示し、図3および図4は、本発明の具体的な実施形態の例を示す。
【0090】
図3Aおよび図3Bは、加熱構造を外部電力供給源(電源)で接続するコネクタの実施形態を示す図である。3Aでは、加熱構造31は、コネクタ34で電源32に接続される。コネクタ34は、反応器壁36を通過するフィッティング33内に配置される。図3Aは、コネクタが絶縁体35によって反応器壁から絶縁されている実施形態を示しており、この実施形態においては、ポリマー材料である。接続部と反応器壁の間の密封は圧縮フィッティング37によって保証され、これは反応器壁36、絶縁体35、およびコネクタ34の間の任意のギャップを密封し、なお反応器壁36を有しており、互いの接続部は電気的に絶縁されている。図3Bは、図3Aの単純化された形態であり、反応器壁36、絶縁体35、及びコネクタ34のみにより、この実施形態の最小要件を示している。
【0091】
図4を参照すると、加熱された熱伝達材料(加熱された熱伝達粒子とも呼ばれる)は、第2の流動手段(20)を通って、フラグメンテーション粒子入口(7)を経てフラグメンテーションライザー(2)の下部ゾーンに運ばれる。このライザーの下部ゾーンは、ライザーの下部ゾーンの流動化ガス入口(6)を通してガスを加えることによって流動化される。砂糖原料は接続部(8)(供給原料入口とも呼ばれる)を通って、ライザーの下方ゾーンの流動された熱伝達物質に添加される。ライザーの下部に注入すると、スプレー・ゾーン(図には示されていない)によって、供給原料が小さな液滴に変わることができる。供給原料がライザーの底部の流動熱伝達物質に接触した後、それは蒸発し始め、所望の生成物(C-C含酸素化合物)を形成する。この蒸発および反応の間、十分な量のガスが形成され、ライザー(2)内の上昇ガス速度を増加させ、それにより、ライザー(2)を通して現在より低温の熱伝達材料を搬送する。生成物ガスは、第1のフラグメンテーション粒子分離器(3)中において熱伝達粒子から分離される。ここでは、第1の粒子分離器がサイクロン性装置であることが示されている。しかし、他の遠心または方向転換ベースの分離装置を用いることができるので、この方法に限定されるものではない。次いで、第1の粒子分離器(3)からの粒子濃度の薄い生成物ガスは、冷却部(5)で急速に冷却される。ここでは、冷却部を液体の添加として示し、これを蒸発させると、粒子濃度の薄い生成物ガスの温度が低下する。第2の粒子分離装置(4)をユニットに加えて、生成物ガスから粒子の最終部分を除去することができる。第2の分離装置は、遠心分離原理の分離原理、例えばサイクロンまたはスワールチューブ等に基づくことができる。生成物ガスは生成物の出口から出る(9)。(3)から分離された熱伝達物質をフラグメンテーションストリッピングゾーン(24)に入れ、生成物ガスが、第1の粒子分離器(3)から来る粒子濃度が濃い部分(粒子高密度フラグメンテーション生成物とも呼ばれる)から除去される。ストリッピング装置は、先行技術から知られている異なる方法、例えば格子状トレイまたはディスクとドーナツのように構成されていてもよい。ストリッパーの適切な作用のためのガスは、フラグメンテーションストリッピングガス入口(25)を介して添加される。より冷たい(使用済みとも呼ばれる)熱伝達粒子は、第1の流動手段(19)(この実施形態ではパイプ)を介して、第1の流動手段制御装置(22)(この実施形態ではバルブ)によって制御されたその流量で、フラグメンテーション粒子出口(10)を通って、再加熱器入口(14)を介して再加熱器(11)へと出て行く。再加熱器において、熱伝達材料は、第1の再加熱器ガス入口(12)および第2の再加熱器ガス入口(13)を通して導入された流動化ガスによって流動化される。加熱ゾーン(21)では、抵抗加熱構造が、抵抗加熱構造と流動熱伝達材料との間の直接接触によって、より低温の(使用済の)熱伝達材料に熱を供給する。再加熱器(11)の上部においては、再加熱器粒子分離器(18)が配置され、流動化された再加熱器ゾーンから巻き込まれた熱伝達粒子を再加熱器ガスから分離する。再加熱器粒子分離器は、図に示すように、例えばサイクロン式の遠心分離器であってもよいが、これに限定されない。再加熱器ガスは、再加熱器ガス出口(16)を通って再加熱器を出る。供給原料のフラグメンテーションからの固形コークの残渣は、再加熱器粒子に付着している可能性があり、このコークは、第2の再加熱器ガス注入口(13)を通して、酸化剤の添加により燃焼させることができる。フラグメンテーション反応器(1)の収率および効率を高めるために、再加熱器ストリッピングゾーン(17)を再加熱器に配置して、加熱された熱伝達粒子から任意の酸化ガスの残留物を除去する。このストリッピング装置は、先行技術から知られている様々な方法、例えば、格子状のトレイまたはディスクとドーナツのように構成されてもよい。加熱された熱伝達粒子は、再加熱器(11)から再加熱器粒子出口(15)を通り、第2の流動手段(20)(本実施形態においてはパイプ)を経て、第2の流動手段制御装置(23)(本実施形態においてはバルブ)によって制御されるその流量で出る。
【0092】
別の実施形態においては、粒子分離器(3)は、熱伝達物質を分離するための分離器の出口において、統合されたストリッパー(24)を有する粒子分離器である。それにより、粒子分離器(3)を囲む容器を排除する。次いで、生成物ガス(5)の急冷を、粒子分離装置(9)の生成物出口または粒子分離装置の後の別個の装置に統合することができる。
【0093】
さらに別の実施形態においては、粒子分離器(3)およびストリッパーが再加熱器と一体化され、第1の流動手段が反応器壁内の開口部であることによって、粒子分離器(3)を取り囲む別個の容器を排除することが想定され得る。次いで、ストリッパー(24)を再加熱器に組み込むことができる。次いで、生成物ガス(5)の急冷を、粒子分離器(9)の出口または粒子分離器の後の別個の装置に一体化することができる。
【実施例
【0094】
例1
再加熱器への工業規模の熱の必要量は、一例では25MWである。再生熱伝達粒子温度600℃、電気加熱内部温度800℃、外部熱伝達率400W/m2/Kと仮定すると、必要な表面積は次のようになる:
2510[W]/(800[℃]-600[℃])400W/m/K)=312m
【0095】
この領域は、さまざまな方法で設定できる。1つのアプローチは、適切な電流を維持しながら、もし0.9インチ(26.3mm)であれば、外径を有するロッドを有することである。外径26.3mm、面積14%の設計マージンを持つロッドを使用すると、必要な5mの電気加熱された内部構造の数は約1000になるであろう。ピッチ0.1mを使用すると、結果として生じる再加熱器容器の内径は約3.4mとなる。これは比較的小さなサイズであり、流動層の抵抗加熱を用いる利点と簡便さを示している。
【0096】
電気加熱された再加熱器を6cm/sの最小流動化速度の10倍で運転すると仮定すると、必要なガス量は以前に知られている再加熱器よりも約60倍小さい。これは明らかに上に示した節約につながる。コークスの燃焼要件に応じて、電気加熱された再加熱器内のガス流がより大きくなる場合がある。
【0097】
例2
電気加熱された再加熱器を6cm/sの最小流動化速度の10倍で運転すると仮定すると、必要なガス量は以前に知られている再加熱ライザーよりも約60倍小さい。
【0098】
適切な電流は、0.9インチ(26.3mm)であれば外径のロッドを有することである。外径26.3mm、面積14%の設計マージンを持つロッドを使用すると、必要な5mの電気加熱された内部構造の数は約1000になるであろう。ピッチ0.1mを使用すると、結果として生じる再加熱器容器の内径は約3.4mとなる。これは比較的小さなサイズであり、流動層の抵抗加熱を用いる利点と簡便さを示している。
【0099】
再加熱器容器の内径は約2.6mとなる。熱を伝達するためのこの容器の正味の有効容量は、約25mとなる。それ自体が、設置される工場の量の削減とそれに伴う利益につながる。
【0100】
例3
電気加熱された再加熱器を約6cm/秒の最小流動化速度の10倍で作動させると仮定すると、実施例1の電気加熱装置の必要ガス量は、以前の特許の再加熱ライザーよりも約60倍小さい。この必要ガス量の計算では、電気加熱パイプ間のフリーボイド(空隙率)のみを考慮した。
【0101】
さらに、電気加熱を利用した方法は、加工された砂糖の質量あたりの入熱量に関して、40%効率が高いと仮定されている(後の例2も参照)。
【0102】
源から熱分解分解工程へ直接移動したエネルギーと解釈されるプロセス加熱効率は、(1000℃-600℃)/1000℃×100%=40%と(1400℃-600℃)/1400℃×100%=57%との間であると大まかに計算できる。エネルギー源から熱分解的フラグメンテーション工程に直接移行しない残りのエネルギーは、この過程を加熱ガスとして残す。これらのガスによる熱分解フラグメンテーションを残したこのエネルギーは、フラグメンテーション工程に直接移されたエネルギーよりも利用しにくい。
【0103】
電気加熱された熱分解フラグメンテーション反応器は、再加熱器を出る60倍低いガス流を有するので、電気加熱を使用すると、プロセス加熱効率が著しく高くなる。その結果、環境に大きな恩恵をもたらし、その過程でOPEX(操業費用)を節約することになる。
【0104】
例4
50000m3/hを仮定すると、この流れを例えば1.5bargに圧縮するには、典型的なコンプレッサー効率を仮定して、コンプレッサーへの電気的熱入力が2.1MWを必要とするであろう。比較すると、電気加熱された熱分解反応器への圧縮ガスの流れは、約60倍低く、または、0.035MWのコンプレッサー電力消費のみ必要となる。
【0105】
本発明のさらなる実施態様
実施形態1. 前記システムが、再加熱器流動化ガスを用いて、再加熱器内の熱伝達粒子を流動化するように構成されており、ここで、糖組成の乾燥ベースで、a)再加熱流動化ガスのm/時とb)kg/時との比率(a:b)が、10~1000、例えば100~300で動作するように、前記システムが構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【0106】
実施形態2. 前記電気伝導性材料が表面積を有し、糖組成の乾燥ベースで、a)表面積(m2)とb)kg/時との比率(a:b)が、1~1000、例えば、10~100で動作するように、前記システムが構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【0107】
実施形態3. 再加熱器が平均直径を有し、糖組成の乾燥ベースで、a)平均直径(m)とb)kg/時との比率(a:b)が0.01~1、例えば、0.05~0.5で動作するように、前記システムが構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【0108】
実施形態4. 前記システムが、少なくとも80%、例えば、少なくとも82~99%、または90~98%である、前記加熱された熱伝達粒子に供給されるエネルギー(kW)に対する前記抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の割合として測定されるエネルギー効率を有する、請求項1に記載の反応器システム。
【0109】
実施形態5. 糖組成の乾燥ベースで、a)耐熱加熱システムに供給されるエネルギー(MW)とb)kg/時との比率(a:b)が800~2500、例えば1100~2000で動作するように、前記システムが構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
【0110】
実施形態6. 前記システムは、再加熱器流動化ガスを用いて前記再加熱器内の熱伝達粒子を流動化するように構成されており、ここで、前記再加熱器は、前記再加熱器流動化ガスを圧縮するコンプレッサーを更に備えており、前記システムは、糖組成の乾燥ベースでa)前記コンプレッサーに供給されるエネルギー(MW)とb)kg/時の比率(a:b)が1~20、例えば、2~8で作動するように構成されている、請求項1に記載の反応器システム。
また、本発明は以下の形態を含む;
[1]
-C -C 含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーション(断片化)のための熱を供給する熱伝達粒子を含むフラグメンテーション反応器、ここでフラグメンテーション反応器は加熱された熱伝達粒子を該フラグメンテーション反応器中に導入するためのフラグメンテーション粒子入口、フラグメンテーション反応器からの使用済み熱伝達粒子を収集するためのフラグメンテーション粒子出口、フラグメンテーション反応器に糖を導入するための供給原料入口、フラグメンテーションゾーンを含み糖の熱分解フラグメンテーションを可能にするフラグメンテーションライザー、およびC -C 含酸素化合物を回収するための生成物出口を備える;
-再加熱器、ここで前記再加熱器は、
○第1の再加熱器ガス入口
○再加熱器粒子入口
○再加熱器粒子出口
○再加熱器ガス出口
○抵抗加熱システム
を含み;
-フラグメンテーション粒子出口から再加熱器粒子入口へ使用済み熱伝達粒子を運搬するための第一の流動手段;
-再加熱器粒子出口からフラグメンテーション粒子入口まで加熱された熱伝達粒子を運搬するための第二の流動手段;
を含むC -C 含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーションのための反応器システムであって、
ここで、前記抵抗加熱システムが、電気伝導性材料の加熱構造を含み、前記加熱構造が、前記再加熱器内の加熱ゾーン内に配置されて、前記再加熱器内の熱伝達粒子に熱を供給する、前記反応器システム。
[2]
電気伝導性材料の加熱構造は、電力供給源に接続されており、ここで、前記電力供給源は、熱伝達粒子を少なくとも300℃の再加熱器出口温度まで、例えば300~800℃、400~700℃、または500~650℃の再加熱器出口温度まで加熱するように構成されている、[1]に記載の反応器システム。
[3]
加熱構造の電気伝導性材料が、20℃において10 -7 Ω・m~10 -5 Ω・mの範囲の電気抵抗を有する材料である、[1]または[2]に記載の反応器システム。
[4]
加熱構造の電気伝導性材料が、加熱構造から熱伝達粒子に500~500,000W/m の範囲の熱流束を提供する材料である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[5]
加熱構造の電気伝導性材料が、銅、銀、アルミニウム、クロム、鉄およびニッケルの1つ以上を含む電気伝導性金属または金属合金である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[6]
加熱構造の電気伝導性材料が、電気伝導性セラミック材料、例えば、炭化ケイ素、炭化モリブデン、炭化タングステン(ウォルフラムカーバイド)、窒化チタン、二ケイ化モリブデン、二ケイ化タングステン(ウォルフラムジシリド)の一つ以上;またはその混合物を含む材料である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[7]
前記抵抗加熱システムが、加熱構造の表面の少なくとも50%;例えば、加熱構造の表面の少なくとも70、少なくとも80または少なくとも90%を覆う保護層をさらに含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[8]
前記保護層が、20℃で10 Ω・mを超える、例えば、20℃で10 ~10 25 Ω・mの範囲の電気抵抗率を有する材料を含む、[7]に記載の反応器システム。
[9]
前記保護層が、セラミック材料、例えば、炭化ケイ素、アルミナ、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素および/または耐火性ライニングを含む、[7]または[8]に記載の反応器システム。
[10]
前記熱伝達粒子が、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼、および炭化ケイ素からなる群より選択される、[1]~[9]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[11]
熱伝達粒子のSauter平均粒径が、20~400μmの範囲、例えば、20~300、20~200または20~100μmの範囲にある、[1]~[10]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[12]
再加熱器が反応器壁を有し、反応器壁から加熱構造を電気的に絶縁するフィッティング中において、前記反応器壁を通じ前記加熱構造が電力供給源に接続されている、[1]~[11]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[13]
前記加熱ゾーンが、前記再加熱器ガス出口の下方に垂直に配置される、[12]に記載の反応器システム。
[14]
前記フィッティングが、前記再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される、[12]~[13]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[15]
再加熱器粒子出口が前記フラグメンテーション粒子入口の上方に垂直に配置されている、[1]~[14]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[16]
前記第1および/または第2流動手段が流体制御手段を備えている、[1]~[15]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[17]
前記フラグメンテーション反応器が
・流動化ガスを導入するための流動化ガス入口;および/または
・使用済み熱伝達粒子の一部をC -C 含酸素化合物から分離するための第1のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・C -C 含酸素化合物を急冷するための冷却部;および/または
・残りの使用済み熱伝達粒子をC -C 含酸素化合物から分離するための第2のフラグメンテーション粒子分離器;および/または
・通過する液体の混合を改善するフラグメンテーションストリッピングゾーン
をさらに含む、[1]~[16]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[18]
第1のフラグメンテーション粒子分離器が分離器容器内に配置され、前記分離器容器がさらに、それを通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えたフラグメンテーションストリッピングゾーンおよび分離器流動化ガス入口を含み;ここで、ストリッピングゾーンは第1のフラグメンテーション粒子分離器の下方に垂直に配置され、分離器流動化ガス入口は分離器ストリッピングゾーンの下方に垂直に配置される、[17]に記載の反応器システム。
[19]
前記フラグメンテーション粒子出口が、前記フラグメンテーションストリッピングゾーンの下方に垂直に、かつ前記再加熱器粒子入口の上方に垂直に配置される、[18]に記載の反応器システム。
[20]
前記再加熱器が、
・通過するあらゆる流体の混合を改善するためのバッフルまたは他の内装品を備えた再加熱器ストリッピングゾーン;および/または
・再加熱器のストリッピングゾーンに酸化ガスを供給するための第2の再加熱器ガス入口;および/または
・再加熱器粒子分離器;および/または
・再加熱器コンプレッサー
をさらに含む、[1]~[19]のいずれか一つに記載の反応器システム。
[21]
前記再加熱器ストリッピングゾーンが、前記加熱ゾーンの下方に垂直に、かつ、前記再加熱器粒子出口の上方に垂直に配置される、[20]に記載の反応器システム。
[22]
-C 含酸素化合物への糖の熱分解フラグメンテーションを実施するための方法であって、
a.流動化に適した加熱された熱伝達粒子を提供する工程;
b.フラグメンテーション反応器のフラグメンテーションライザーにおける粒子の流動化流を生成するために、フラグメンテーション粒子入口を通して、前記加熱された熱伝達粒子をフラグメンテーション反応器に導入する工程であり、ここで前記ライザーはフラグメンテーションゾーンを含む工程;
c.糖を含む供給原料を提供する工程;
d.粒子の流動化流へ供給原料を導入する工程;
e.糖が熱分解フラグメンテーションを受けて、C -C 含酸素化合物を含む粒子濃度が濃いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
f.粒子濃度の濃いフラグメンテーション生成物から熱伝導粒子の一部を分離して使用済みの熱伝達粒子、および形成されたC -C 含酸素化合物を含む粒子濃度が薄いフラグメンテーション生成物が生成される工程;
g.C -C 含酸素化合物を回収する工程;
h.工程f)で分離された使用済み熱伝達粒子を、熱伝達粒子の第1の流れの形態でフラグメンテーション粒子出口から引き出し、第1の流動手段を介して、熱伝達粒子のこの第1の流れを運び、続いて、再加熱器粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第1の流れを再加熱器に供給する工程;
i.加熱ゾーン中の再加熱器内で熱伝達粒子に熱を吸収させて、加熱された熱伝達粒子を生成する工程;
j.工程i)で生成された加熱された熱伝達粒子を熱伝達粒子の第2の流れの形態で再加熱器粒子出口から引き出し、第2の流動手段を介して熱伝達粒子のこの第2の流れを運び、続いて、フラグメンテーション粒子入口を通じて、熱伝達粒子の第2の流れをフラグメンテーション反応器に供給する工程;
k.c)~k)の工程を繰り返す工程;
を含む、方法。
[23]
熱伝導粒子が、砂、シリカ、ガラス、アルミナ、鋼、および炭化ケイ素からなる群より選択される、[22]に記載の方法。
[24]
前記熱伝達粒子のSauter平均粒径が、20~400μmの範囲、例えば、20~300、20~200または20~100μmの範囲にある、[22]または[23]に記載の方法。
[25]
前記熱伝導粒子が、再加熱器の加熱ゾーンにおける断面積当たり、5~10.000kg/m /sの範囲の流束を有する、[22]~[24]のいずれか一つに記載の方法。
[26]
前記再加熱器の加熱ゾーン内の空塔ガス速度が0.01m/s~2m/sの範囲である、[22]~[25]のいずれか一つに記載の方法。
[27]
工程i)において、使用済みの熱伝達粒子を酸化ガス流と混合して、再加熱器の加熱ゾーンにおける使用済み熱伝達粒子の表面上に存在するコークスを酸化し、ここで、酸化ガスが3~21vol%(体積%)の範囲の酸素を含む、[22]~[26]のいずれか一つに記載の方法。
[28]
前記熱伝達粒子が、再加熱器流動化ガスを用いて再加熱器内で流動化される、[22]~[27]のいずれか一つに記載の方法。
[29]
フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時)に対する再加熱器に供給される再加熱器流動化ガス(Nm /時)の比率が、10~1000、例えば100~300の範囲にある、[28]に記載の方法。
[30]
再加熱器流動化ガスが、1~103ppmの範囲の酸素を含む、[28]または[29]に記載の方法。
[31]
工程j)で引き出した熱伝達粒子の温度が、300~800℃の範囲、例えば、400~800℃、400~700℃、または500~700℃の範囲にある、[22]~[30]のいずれか一つに記載の方法。
[32]
工程j)の前に、再加熱器ストリッピングゾーンにおいて、過剰な酸素が熱伝達粒子から除去される、[22]~[31]のいずれか一つに記載の方法。
[33]
前記再加熱器流動化ガスが窒素を含む、[28]~[32]のいずれか一つに記載の方法。
[34]
工程e)の熱分解フラグメンテーションが行われた後に、少なくとも250℃の温度、例えば、少なくとも300℃、少なくとも350℃、少なくとも400℃または少なくとも450℃の温度を維持するのに十分な速度で、工程b)において加熱された熱伝達粒子を導入し、ここで前記速度は粒子の流動化流を得るのに十分である、[22]~[33]のいずれか一つに記載の方法。
[35]
前記工程e)の粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を、前記供給原料が粒子の流動化流に導入された瞬間から急冷が行われるように少なくとも50℃の温度に急冷する工程をさらに含み、この際、ガスの平均滞留時間が最大5秒、例えば、最大3秒、最大2秒、最大1秒、最大0.8秒または最大0.6秒となる、[22]~[34]のいずれか一つに記載の方法。
[36]
-C 含酸素化合物を含む粗フラグメンテーション生成物を生成するために、粒子濃度の薄いフラグメンテーション生成物を第2の分離に供することをさらに含む、[22]~[35]のいずれか一つに記載の方法。
[37]
前記供給原料が、スクロース、ラクトース、キシロース、アラビノース、リボース、マンノース、タガトース、ガラクトース、グルコースおよびフルクトース;またはこれらの混合物からなる群より選択される糖の水溶液を含む、[22]~[36]のいずれか一つに記載の方法。
[38]
前記供給原料中の糖の濃度が10~90質量%の間である、[37]に記載の方法。
[39]
前記加熱された熱伝達粒子に供給されるエネルギー(kW)に対する前記抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の割合として測定されるエネルギー効率が、少なくとも80%、例えば、少なくとも82~99%、または90~98%である、[22]~[38]のいずれか一つに記載の方法。
[40]
フラグメンテーション反応器に供給される糖(メトリックトン/時間)に対する前記抵抗加熱システムに供給されるエネルギー(kW)の比が、800~2500の範囲、例えば1100~2000の範囲にある、[22]~[39]のいずれか一つに記載の方法。
[41]
[22]~[40]のいずれか一つに記載の方法を実施する工程;
次いで
-C 含酸素化合物を水素化処理して、対応するC -C ヒドロキシ化合物を得る工程
を含む、糖からC -C ヒドロキシ化合物を製造するための方法。
図1
図2
図3A
図3B
【図 】