(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220926BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20220926BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220926BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20220926BHJP
B60W 50/04 20060101ALI20220926BHJP
B60W 50/08 20200101ALI20220926BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20220926BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20220926BHJP
【FI】
G08G1/00 X
G08G1/09 H
G08G1/16 A
B60W40/08
B60W50/04
B60W50/08
B60W50/14
B60W60/00
(21)【出願番号】P 2021503765
(86)(22)【出願日】2019-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2019064667
(87)【国際公開番号】W WO2020020526
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-01-22
(31)【優先権主張番号】102018212286.5
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100195408
【氏名又は名称】武藤 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ビーク,ハンス-ヨアヒム
【審査官】貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162406(JP,A)
【文献】米国特許第9823657(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(110)の自動運転工程の際の運転者(105)の注意および/または運転態勢を補助するための方法(200)であって、前記方法(200)が、以下のステップ、すなわち
少なくとも1つの読み込まれた地図情報信号(168)、環境条件信号(171)、および/または確率信号(174)を使用して故障確率値(165)を算定し(210)、前記故障確率値(165)が、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率を表しており、前記地図情報信号(168)が、前記車両(110)が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを表しており、前記環境条件信号(171)が、前記車両(110)の周囲の気象状態を表しており、かつ前記確率信号(174)が、前記運転者支援システムの少なくとも1つの車両センサ(125)のエラー確率および/または故障確率を表しているステップと、
前記算定された故障確率値(165)に応じて比較パラメータ(177)を決定し(220)、前記比較パラメータ(177)が、前記車両(110)が前記走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度と、前記運転者(105)のその時々の注意の程度との比較結果を表しているステップと、
前記決定された比較パラメータ(177)に応じて事前警告信号(183)を提供し(230)、前記事前警告信号(183)が、前記車両(110)の前記運転者(105)による車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を表しているステップと、
前記提供された事前警告信号(183)に応じて、前記車両(110)の室内センサ(130)の注意信号(180)を使用して前記運転者(105)の運転態度をチェックするステップ(240)であって、前記運転者(105)が、車両操縦の積極的な引継ぎのための前記事前警告を無視する場合、前記自動運転工程がオフにされ、かつ/または前記運転者(105)への運転タスクの管理された引渡しが指示される、ステップと、を有する方法(200)。
【請求項2】
前記比較パラメータ(177)の前記決定のステップ(220)において、前記地図情報信号(168)および/または前記環境条件信号(171)を使用して、前記車両(110)が前記走行している走行ルート上で必要な運転要求の前記程度が決定され、とりわけこれに関し、必要な運転要求が、実行すべき運転操作を表している、請求項1に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記比較パラメータ(177)の前記決定のステップ(220)において、前記車両(110)の
前記室内センサ(130)の
前記注意信号(180)を使用して、前記運転者(105)のその時々の注意の前記程度が決定され、前記注意信号(180)が、前記運転者(105)のその時々の視線方向および/または前記運転者(105)の頭の位置および/または前記運転者(105)のシート位置および/または前記運転者(105)の手の位置を表している、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記チェックのステップ(240)において、予め決定された時間窓の経過後に、前記自動運転工程がオフにされ、かつ/または前記運転者(105)への運転タスクの管理された引渡しが指示され、とりわけこれに関し、前記時間窓が最大3秒である、請求項
1から3のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記決定のステップ(220)において、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの前記算定された故障確率値(165)が少なくとも50パーセントである場合に前記比較パラメータ(177)が決定され、とりわけこれに関し、前記提供のステップ(230)では、前記決定された比較パラメータ(177)が、前記車両(110)が前記走行している走行ルート上で必要な運転要求の前記程度と、前記運転者(105)のその時々の注意の前記程度との不一致を表す場合に前記事前警告信号(183)が提供される、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記提供のステップ(230)において、前記事前警告信号(183)が音響的、光学的、および/または触覚的に出力される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記提供のステップ(230)において、警告信号(186)が、車両外の計算ユニット(115)へおよび/または車車間通信インターフェイスを介して前記車両(110)の周辺環境内にあるさらなる車両(189)へ提供され、前記警告信号(186)が、前記車両(110)の、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率および/または自動運転工程のオフについての警告を表している、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項8】
前記算定のステップ(210)および/または前記決定のステップ(220)および/または前記提供のステップ(230)が、車両外の計算ユニット(115)上でおよび/または前記車両(110)内に取り付けられた計算ユニット上で実行され、とりわけこれに関し、前記算定のステップ(210)および/または前記決定のステップ(220)が繰り返し実行される、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法(200)。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法(200)の前記ステップ(210、220、230、240)を相応のユニット(153、156、159、162)において実行および/または制御するために適応された装置(100)。
【請求項10】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法(200)の前記ステップ(210、220、230、240)を相応のユニット(153、156、159、162)において実行および/または制御するために適応されたコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項1
0に記載のコンピュータプログラムが保存されている機械可読のメモリ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の属概念に従う装置または方法を出発点とする。コンピュータプログラムも本発明の対象である。
【背景技術】
【0002】
自動運転中の車両は、運転者をその運転タスクから少なくとも部分的に解放することができる。よって車両の自動運転中は、二次的なタスクのための余裕が生じる。それであっても、例えば、道路工事の標識または自動化の完全な故障により、例えば、強い雨および/または雪により、自動運転の際には、運転ミスの確率が特に上昇する状況が発生し得る。そのような状況においても安全に走行するために、システムは運転者に運転タスクを引き継ぐよう促すことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これを踏まえて、ここで紹介されるアプローチにより、主請求項による、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢(Fahrbereitschaft eines Fahrers)を補助するための方法、さらにこの方法を使用する装置、最後に相応のコンピュータプログラムを紹介する。従属請求項に記載した措置により、独立請求項で提示した装置の有利な変形および改善が可能である。
【0004】
ここで紹介されるアプローチは、車両の自動運転工程を実行するための少なくとも1つの車両センサのエラー確率および/または故障確率に鑑みて、車両の運転者がその際に、必要な注意を運転タスクに向けるようおよび運転態勢が整っていることを示すよう補助されるという事実に基づいている。したがってここで紹介されるアプローチは、運転者が二次的なタスクを行うことと、運転タスクを完全に引き継ぐこととの間のスムーズな移行を可能にする。こうして、二次的なタスクの不愉快な中断が和らげられる。これは、車両を安全に走行させると同時に運転満足度を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための方法を紹介し、この方法は、以下のステップ、すなわち
少なくとも1つの読み込まれた地図情報信号、環境条件信号、および/または確率信号を使用して故障確率値を算定し、この故障確率値が、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率を表しており、これに関し地図情報信号が、車両が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを表しており、環境条件信号が、車両の周囲の気象状態を表しており、かつ確率信号が、運転者支援システムの少なくとも1つの車両センサのエラー確率および/または故障確率を表しているステップと、
算定された故障確率値に応じて比較パラメータを決定し、この比較パラメータが、車両が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度と、運転者のその時々の注意の程度との比較結果を表しているステップと、
決定された比較パラメータに応じて事前警告信号を提供し、この事前警告信号が、車両の運転者による車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を表しているステップとを有する。
【0006】
車両は、旅客運送のための車両、例えば高度自動運転車両であり得る。車両はさらに、人および/または物を運送するための商用車、例えば高度自動運転トラックまたは高度自動運転バスのことであり得る。車両運転者は、車両を直接的に誘導または制御する人物であり得る。それだけでなく、車両をそのほかの責任を伴うやり方で、つまり間接的に操縦する人物も車両運転者と見なされ得る。自動運転工程とは、自動運転システムにより、動的運転タスクのすべての側面を運転モードごとに実行することであり得る。この場合、例えば、車両の人間の運転者はシステムのリクエストに適切に反応し、こうして例えば悪い気象条件の際に、運転タスクを引き継ぐことが期待され得る。この場合の自動運転工程は、飛行機のように自動パイロットモードにある車両から、つまり車線に沿ったおよび車線を横切る誘導操作、ウィンカー操作、加速操作、およびブレーキ操作を人間の介入なしで実施する車両から連想することができる。その際、車両はその入力データを最初に視覚的な情報源から取得し、この情報源は運転者にも提供されている。自動運転工程の前段階では、運転者の確実な意思決定および迅速な反応を可能にする情報の提供により、人間の知覚が補助され得る。ただし、車両の反応が、アルゴリズムおよびそれと結びついた車両の反応を介して自立的に、運転者の積極的な作用なく行われる場合には、自動運転工程と言うことができる。これに関し、システムはその限界を自ら認識することができ、かつその場合には運転者による引継ぎを適時に要求することができる。したがって運転者の運転以外の行為は制限的に可能である。
【0007】
車両の自動運転工程の故障確率を算定する際、地図情報信号は、とりわけ、車両が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを表し得る。この場合、道路トポグラフィーは、例えば、走行している走行ルートの相応のカーブ半径および/または勾配の際の、車両のビデオセンサシステムおよびレーダセンサシステムによる予測力の低下を表し得る。道路トポグラフィーはそれだけでなく、道路の隣の地形構造および/または建物によって遮断されている際の、車両のビデオセンサシステムおよびレーダセンサシステムの予測力および/または洞察力の低下を表し得る。これに対して信頼性トポグラフィーは、例えば、同等のセンサシステムを備えた車両が走行している間にメーカに報告された、地図に記入された故障イベントおよびそれを基に確定された故障確率を表し得る。
【0008】
車両の自動運転工程の故障確率を算定する際、環境条件信号は、とりわけ、車両の周囲の気象状態を表し得る。この場合、気象状態は、例えば、雨、雪、および/または嵐などのような気象現象に基づく車両センサシステムの知られている障害であり得る。
【0009】
車両の自動運転工程の故障確率を算定する際、確率信号は、とりわけ、運転者支援システムの少なくとも1つの車両センサのエラー確率および/または故障確率を表し得る。つまり確率信号は、例えば、センサに内在する故障確率、例えばセンサに内蔵されたセルフテストおよび/または冗長なセンサの故障を表し得る。確率信号はそれだけでなく、例えば認知力に基づく故障確率、例えば、車線、縁石、および/または前方の車両などのような制御に関連する特徴をセンサによって知覚する際の比較的長い、複数回の、または妥当ではない故障および/またはエラーを表し得る。
【0010】
車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するためのここで紹介しているアプローチの利点は、とりわけ、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率が算定され得ることにある。こうしてその後、算定された故障確率を使用して、車両の運転者に、運転機能を監視するためのおよび運転タスクの場合によってはあり得る引継ぎに備えるための必要な注意についての相応の指示が与えられ得る。それだけでなく、ここで紹介しているアプローチにより、与えられた注意指示に対する運転者の注意および/または運転態度を監視でき、かつそれに応じて、交通安全を向上させるためにステップが開始され得る。したがってここで紹介しているアプローチにより、このような車両の潜在的購入者の、「無力化」運転支援システムに対する低下した受容性を向上させ得ることが有利である。
【0011】
一実施形態によれば、比較パラメータの決定のステップにおいて、地図情報信号および/または環境条件信号を使用して、車両が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度を決定でき、とりわけこれに関し、必要な運転要求は、運転者による運転タスクの引継ぎを仮定した際の、実行すべき運転操作を表している。地図情報信号は、例えば、車両が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを表している。つまり、道路トポグラフィーを使って、車両が走行している走行ルート上の相応のカーブ半径および/または勾配の際の、車両のビデオセンサシステムおよび/またはレーダセンサシステムの予測力の低下についての情報が確定され得る。道路トポグラフィーを使ってさらに、例えば車道の隣の建物および/またはそのほかの覆い隠しているオブジェクトもしくは構造によって遮断されている際の、例えば車両のビデオセンサシステムおよび/またはレーダセンサシステムの予測力および/または洞察力の低下についての情報も確定され得る。信頼性トポグラフィーは、例えば、同等のセンサシステムを備えた車両が走行している間にメーカに報告された、地図に記入された車両センサの故障イベントおよびそれを基に確定された故障確率を明示し得る。したがってここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、例えばカーブでの運転タスクの引継ぎの際の危機を回避するために、運転者による相応の運転操作が必要であるかどうかが決定され得るという利点を提供する。これにより車両は、例えば、確実かつ無事故で実施可能な運転者への車両操縦の引渡しを計画できるだけでなく、潜在的にクリティカルな交通状況を早めに認識および回避することもできる。
【0012】
さらなる一実施形態によれば、比較パラメータの決定のステップにおいて、車両の室内センサの注意信号を使用して、運転者のその時々の注意の程度を決定でき、この注意信号は、運転者のその時々の視線方向および/または運転者の頭の位置および/または運転者のシート位置および/または運転者の手の位置を表している。ここで紹介しているアプローチでは、例えば、ビデオベースのアイトラッカーのような追跡システムを使用して、運転者のそのときの視線方向および/または視角ならびに頭の位置および/または頭の向きの測定が行われ得る。これに加えてさらに、運転者の姿勢、とりわけ運転者の手の配置および手の構えの監視が、ビデオセンサシステムまたは3Dセンサシステムを使って行われ得る。したがってここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、車両室内センサシステムを使って、運転者の注意および/または運転適性のその時々の程度を決定でき、これにより車両が運転者にタイムリーかつ包括的に、運転者への運転タスクの場合によってはあり得る引渡しが目前に迫っていることを事前警告し得るという利点を提供する。
【0013】
さらに、この方法はチェックのステップを有することができ、チェックのステップでは、一実施形態によれば、提供された事前警告信号に応じ、注意信号を使用して運転者の運転態度がチェックされ、その際、運転者が、車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を無視する場合、自動運転工程がオフにされ、かつ/または運転者への運転タスクの管理された引渡しが指示される。ここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、事前警告信号を使用して、運転者へ、道路を注視し続けることおよび/またはハンドルを握ることを催促し、その際、運転者が催促に従わない場合には、運転者への運転タスクの管理された引渡しおよび自動運転工程のオフが行われるという利点を提供する。これにより車両は、例えば、運転者への車両操縦の確実かつ無事故かつ快適な引渡しを計画でき、かつ潜在的にクリティカルな交通状況を早めに認識および回避することもできる。
【0014】
これに関し、一実施形態によれば、チェックのステップにおいて、予め決定された時間窓の経過後に、自動運転工程をオフにでき、かつ/または運転者への運転タスクの管理された引渡しを指示でき、とりわけこれに関し、時間窓は例えば最大3秒である。運転支援システム自体では解決できないクリティカルな状況、例えばセンサ故障および/または悪い気象条件に至る可能性がある間は、運転者が運転タスクを適時におよび快適に引き継ぎ得るべきである。これに関し、高度自動化状態での運転の際は、運転者は二次的なタスクを行っているという仮定に基づくことができ、これは、引渡し工程を設計するために観察されるべきである。そのときに引渡しに必要な時間は、克服すべき運転状況およびその時々の運転者状況に応じて異なる長さであり得る。必要な引渡し時間は、なかでも、例えば運転者がその周辺環境を目で見て完全に把握し、適切な状況自覚を獲得し、かつ車両のコントロールをシステムから引き継ぐのにどのくらいの時間が必要かに左右され得る。これに関しては、とりわけ運転状況の複雑さが関係し得る。したがってここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、一般の交通安全を妨げることなく、運転タスクを問題なく引き継ぐことができ、さらにその引継ぎが快適と知覚される引継ぎ時間が常に目指されるという利点を提供する。
【0015】
さらに、一実施形態によれば、決定のステップにおいて、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの算定された故障確率値が少なくとも50パーセントである場合に比較パラメータを決定でき、とりわけこれに関し、提供のステップでは、決定された比較パラメータが、車両が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度と、運転者のその時々の注意の程度との不一致を表す場合に事前警告信号が提供される。したがってここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、とりわけ、潜在的にクリティカルな交通状況を早めに認識および回避でき、それにより、一般の交通安全が向上するという利点を提供する。
【0016】
一実施形態によれば、提供のステップにおいて、事前警告信号が音響的、光学的、および/または触覚的に出力され得る。つまり、運転者の音響的な事前警告を、例えば車両内に取り付けられたスピーカ設備を使用して行うことができ、この音響的な事前警告は、とりわけ高い音域および音量を特色とするのがよい。運転者の光学的な事前警告は、例えば車両の表示機構、例えばオンボードコンピュータおよび/またはヘッドアップディスプレイを介して行われ得る。よってさらに、光学的な事前警告が、車両室内での光放射を使用して、その際に例えば光の色を変化させておよび/または光を点滅させて行われ得ることも想像でき、これは、とりわけ車両の夜間走行の際に有利である。運転者の触覚的な事前警告は、例えば車両の運転者が座っているかまたは横になっているシート機構の振動を使って行われ得る。したがってここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、車両の運転者が、その状態に相応してできるだけ適切に、車両操縦の場合によってはあり得る引渡しが目前に迫っていることを事前警告され得るという利点を提供する。
【0017】
さらに、一実施形態によれば、提供のステップにおいて、警告信号を、車両外の計算ユニットへおよび/または車車間通信インターフェイスを介して車両の周辺環境内にあるさらなる車両へ提供でき、この警告信号は、車両の、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率および/または自動運転工程のオフについての警告を表している。ここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、車両の運転者支援システムの故障についておよび/または車両の運転者への運転タスクの引渡しについての警告または情報を、迅速に、簡単に、かつ効果的に共有でき、それにより、運転者への運転タスクの引渡しが予想に反して困難になる場合に、この車両の周辺環境内にある車両が、ゆっくり、かつ将来を予見しながら運転する準備ならびに上記の車両に注意を払う準備をすることができるという利点を提供する。これにより交通安全が向上し得る。
【0018】
最後に、一実施形態によれば、算定のステップおよび/または決定のステップおよび/または提供のステップは、車両外の計算ユニット上でおよび/または車両内に取り付けられた計算ユニット上で実行でき、とりわけこれに関し、算定のステップおよび/または決定のステップが繰り返し実行される。したがって、車両外の計算ユニット上での、ここで紹介しているアプローチのこのような一実施形態は、車両外の計算ユニット内でのデータの処理が、車両自体における比較的少ない計算必要性を意味し、かつそれに伴う比較的少ないエネルギー消費またはほかの機能のためにリソースを利用する可能性を可能にするという利点を提供する。そのうえ、外部の計算ユニットは利用可能な計算能力が車両内のコンピュータより大きい。
【0019】
車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するためのここで紹介している方法は、例えばソフトウェアもしくはハードウェアにおいて、またはソフトウェアおよびハードウェアから成る混合形態において、例えば制御機器において実装され得る。
【0020】
ここで紹介しているアプローチはさらに、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するためのここで紹介している方法の一形態のステップを相応の機構において実施、制御、または実行するために形成された装置を提供する。装置の形態での本発明のこの実施バリエーションによっても、本発明の基礎となる課題が迅速かつ効率的に解決され得る。
【0021】
このために装置は、信号もしくはデータを処理するための少なくとも1つの計算ユニット、信号もしくはデータを保存するための少なくとも1つのメモリユニット、センサからセンサ信号を読み込むためのもしくはアクチュエータにデータ信号もしくは制御信号を出力するための、センサもしくはアクチュエータに対する少なくとも1つのインターフェイス、および/またはデータの読込もしくは出力のための、通信プロトコルに組み込まれた少なくとも1つの通信インターフェイスを有し得る。計算ユニットは、例えば信号プロセッサ、マイクロコントローラ、またはその類似物であることができ、その際、メモリユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM、または磁気メモリユニットであり得る。通信インターフェイスは、データのワイヤレスおよび/または有線での読込または出力のために形成することができ、これに関し、有線のデータを読み込み得るまたは出力し得る通信インターフェイスは、これらのデータを例えば電気的または光学的に、相応のデータ伝送線から読み込むことができまたは相応のデータ伝送線に出力することができる。
【0022】
本願において装置とは、センサ信号を処理し、かつそれに応じて制御信号および/またはデータ信号を出力する電気機器のことであり得る。装置は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアによって形成され得るインターフェイスを有し得る。ハードウェアによる形成の場合、インターフェイスは、例えば装置の非常に様々な機能を内包しているいわゆるシステムASICの一部であり得る。ただし、インターフェイスが専用の集積回路であるかまたは少なくとも部分的には個別の部品から成ることも可能である。ソフトウェアによる形成の場合、インターフェイスは、例えば1つのマイクロコントローラ上でほかのソフトウェアモジュールと共に存在しているソフトウェアモジュールであり得る。
【0023】
機械可読の媒体またはメモリ媒体、例えば半導体メモリ、ハードディスクメモリ、もしくは光学メモリ上で保存でき、かつ上述の実施形態の1つに従う方法のステップを実施、実行、および/または制御するために使用されるプログラムコードを有するコンピュータプログラム製品またはコンピュータプログラムも、とりわけこのプログラム製品またはプログラムがコンピュータまたは装置上で実行される場合、有利である。
【0024】
ここで紹介しているアプローチの例示的実施形態を図面に示しており、かつ以下の説明においてより詳しく解説する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】1つの例示的実施形態による、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための装置のブロック図である。
【
図2】1つの例示的実施形態による、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための方法の1つの例示的実施形態のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の好適な例示的実施形態の以下の説明では、異なる図に示された類似に作用する要素に対し、同じまたは類似の符号を使用しており、その際、これらの要素を繰り返し説明はしない。
【0027】
図1は、1つの例示的実施形態による、車両110の自動運転工程の際の運転者105の注意および/または運転態勢を補助するための装置100のブロック図を示している。この場合、装置100は例示的に車両110上に配置されている。それに加えてまたはその代わりに、装置100が車両外の計算ユニット115、例えばクラウド上に配置されていてもよい。車両110は、1つの例示的実施形態によれば、車両110の周辺環境を光学的にセンサによって捕捉するためのカメラユニット120、車両110の周辺環境をセンサによって捕捉するための少なくとも1つの周辺環境センサ125、車両室内を監視するための監視センサ130、例示的に監視カメラユニット130、情報を光学的に表示するための表示ユニット135、車両110内の運転者105が座るためのシート機構140、音響的情報を出力するためのスピーカ機構145、ならびに車両110の横方向操縦および縦方向操縦のための制御ユニット150を有している。
【0028】
1つの例示的実施形態によれば、装置100は、算定機構153、決定機構156、提供機構159、およびチェック機構162を有している。算定機構153は、1つの例示的実施形態によれば、少なくとも1つの読み込まれた地図情報信号168、環境条件信号171、および/または確率信号174を使用して、故障確率値165を算定するよう形成されており、この故障確率値165は、車両110の自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率を表している。この場合、車両110が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを表している地図情報信号168は、例示的に外部の計算ユニット115によって算定機構153へ提供される。ただしそれに加えてまたはその代わりに、地図情報信号168は、車両内のメモリ上で格納された地図によっても算定機構153へ提供され得る。車両110の周囲の気象状態を表している環境条件信号171は、例示的に車両110のカメラユニット120によって算定機構153へ提供される。それに加えてまたはその代わりに、環境条件信号171は、車両外の計算ユニット115および/または車両110の少なくとも1つの周辺環境センサ125によっても算定機構153へ提供され得る。運転者支援システムの少なくとも1つの車両センサのエラー確率および/または故障確率を表している確率信号174は、例示的に車両110の周辺環境センサ125によって算定機構153へ提供される。それに加えてまたはその代わりに、確率信号174は、車両110の制御ユニット150によっても算定機構153へ提供され得る。
【0029】
決定機構156は、1つの例示的実施形態によれば、算定機構153によって算定された故障確率値165に応じて比較パラメータ177を決定するよう形成されており、この比較パラメータ177は、車両110が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度と、運転者105のその時々の注意の程度との比較結果を表している。この場合、決定機構156は、比較パラメータ177を決定するために、車両外の計算ユニット115によって提供された地図情報信号168および/または車両110のカメラユニット120によって提供された環境条件信号171を使用して、車両110が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度を決定するよう形成されている。これに加えて決定機構156はさらに、比較パラメータ177を決定するために、車両室内の監視カメラユニット130によって提供された注意信号180を使用して、運転者105のその時々の注意の程度を決定するよう形成されており、この注意信号180は、運転者105のその時々の視線方向および/または運転者105の頭の位置および/または運転者105のシート位置および/または運転者105の手の位置を表している。
【0030】
提供機構159は、1つの例示的実施形態によれば、予め決定された比較パラメータ177に応じて事前警告信号183を提供するよう形成されており、この事前警告信号183は、車両110の運転者105による車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を表している。この事前警告信号183は、音響的、光学的、および/または触覚的に出力され、これに関し音響的な出力は、例示的に車両110のスピーカ機構145へ、光学的な出力は、例示的に車両110の表示機構135へ、および触覚的な出力は、例示的に車両110のシート機構140へ行われる。提供機構159はさらに、1つの例示的実施形態によれば、警告信号186を、車-車間通信インターフェイスを介して車両110の周辺環境内にあるさらなる車両189へ提供するよう形成されている。それに加えてまたはその代わりに、警告信号186は、車両外の計算ユニット115へも提供され得る。この警告信号186は、車両110の、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率および/または自動運転工程のオフについての警告を表している。
【0031】
チェック機構162は、1つの例示的実施形態によれば、提供される事前警告信号183に応じ、注意信号180を使用して運転者105の運転態度をチェックするよう形成されており、その際、運転者105が、車両操縦の積極的な引継ぎのための事前警告を無視する場合、自動運転工程がオフにされ、かつ/または車両110の運転者105への運転タスクの管理された引渡しが指示される。これに関し、チェック機構はさらに、例示的に車両110の制御ユニット150へオフ信号192を提供するよう形成されており、このオフ信号192を使用して、予め決定された時間窓の経過後に、自動運転工程をオフにされ、かつ/または運転者105への運転タスクの管理された引渡しが、指示され、これに関し、時間窓は例示的に最大3秒である。
【0032】
図2は、1つの例示的実施形態による、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための方法200の1つの例示的実施形態のフロー図を示している。この方法200は、例示的に、
図1に基づく、車両の自動運転工程の際の運転者の注意および/または運転態勢を補助するための装置上で実行され得る。
【0033】
方法200は最初に、少なくとも1つの読み込まれた地図情報信号、環境条件信号、および/または確率信号を使用して故障確率値が算定されるステップ210を有している。この故障確率値は、自動運転工程を実行するための運転者支援システムの故障確率を表しており、これに関し地図情報信号は、車両が走行している走行ルート上の道路トポグラフィーおよび/または信頼性トポグラフィーを、環境条件信号は、車両の周囲の気象状態を、ならびに確率信号は、運転者支援システムの少なくとも1つの車両センサのエラー確率および/または故障確率を表している。方法200は次に、算定された故障確率値に応じて比較パラメータが決定されるステップ220を有しており、この比較パラメータは、車両が走行している走行ルート上で必要な運転要求の程度と、運転者のその時々の注意の程度との比較結果を表している。方法200はさらに、決定された比較パラメータに応じて事前警告信号が提供されるステップ230を有しており、この事前警告信号は、車両の運転者による車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を表している。最後に方法200は、提供された事前警告信号に応じ、注意信号を使用して運転者の運転態度がチェックされるステップ240を有しており、その際、運転者が、車両操縦の積極的な引継ぎについての事前警告を無視する場合、自動運転工程がオフにされ、かつ/または運転者への運転タスクの管理された引渡しが指示される。
【0034】
一実施形態によれば、ステップ210および/またはステップ220が繰り返し実行される。
【0035】
1つの例示的実施形態が、第1の特徴と第2の特徴の間に「および/または」結合を含む場合、これは、この例示的実施形態が、一実施形態によれば第1の特徴も第2の特徴も有し、さらなる一実施形態によれば第1の特徴だけかまたは第2の特徴だけを有すると読むべきである。