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▶ コーシム・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】心臓弁プロテーゼ用傾斜可能ツール
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220926BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021506441
(86)(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 IB2018055890
(87)【国際公開番号】W WO2020030944
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】522068636
【氏名又は名称】コーシム・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】カルリーノ,フェリーチェ・ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】アチルッツィ,モニカ・フランチェスカ
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0327998(US,A1)
【文献】特表2014-518699(JP,A)
【文献】特開平10-314195(JP,A)
【文献】米国特許第04865600(US,A)
【文献】国際公開第2017/216607(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116795(US,A1)
【文献】特開2017-023714(JP,A)
【文献】特表2002-512077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0136434(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の心臓の心臓弁輪位置に配置するための移植付属品であって、前記心臓の弁輪が第1の軸を有し、前記移植付属品が、
第1の表面と、
前記第1の表面に垂直な第2の軸と、
前記第1の軸と第2の軸を位置合わせするための操縦システムと、を含み
前記操縦システムが、第1の糸通し可能なボアおよび第2の糸通し可能なボアを含み、各ボアが、前記第1の表面に配設された第1および第2の開口部を有する、移植付属品。
【請求項2】
前記操縦システムが、前記第1の表面に対して旋回可能な中央ピンを含み、前記第2の軸が、前記中央ピンに直交する、請求項1に記載の移植付属品。
【請求項3】
前記第1の糸通し可能なボアおよび前記第2の糸通し可能なボアが、前記第1の表面を傾斜させ、前記第1の軸と前記第2の軸を位置合わせするための、前記第1の糸通し可能なボアおよび前記第2の糸通し可能なボアを通る第1の糸および第2の糸をそれぞれ含む、請求項1に記載の移植付属品。
【請求項4】
前記中央ピンが、低侵襲心臓胸部手術鉗子に取り付け可能である、請求項2に記載の移植付属品。
【請求項5】
前記移植付属品が、前記弁輪をサイズ決定するように構成されている、請求項1に記載の移植付属品。
【請求項6】
前記移植付属品が、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを移植するように構成されている、請求項1に記載の移植付属品。
【請求項7】
前記移植付属品が、取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリを移植するように構成されている、請求項1に記載の移植付属品。
【請求項8】
前記移植付属品が、前記取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリの複数の弁尖を位置決めするように構成されている、請求項7に記載の移植付属品。
【請求項9】
患者の心臓の心臓弁輪位置に取り付けられた合口リング内に移植するための取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであって、前記合口リングが第1の軸を有し、前記取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリが、
前記合口リングに結合させるための生体人工弁と、
前記生体人工弁に分離可能に結合されたホルダーと、を備え、
前記ホルダーが、
第1の表面と、
前記第1の表面に垂直な第2の軸と、
前記第1の軸と前記第2の軸を位置合わせするための操縦システムと、を有し、
前記操縦システムが、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弓形ボアを含み、各ボアが、第1の表面に配設された第1および第2の開口部を有する、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ
【請求項10】
前記操縦システムが、前記ホルダーに対して旋回可能な中央ピンを含み、前記第2の軸が、前記中央ピンに直交する、請求項9に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項11】
前記中央ピンが、第1の時計回り方向および第2の反時計回り方向に前記ホルダーとともにさらに回転可能である、請求項10に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項12】
前記第1の糸通し可能な弓形ボアおよび前記第2の糸通し可能な弓形ボアが、前記第1の表面を傾斜させ、前記第1の軸および前記第2の軸を位置合わせするための、それぞれ、それらを通る第1の糸および第2の糸を含む、請求項9に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項13】
近位端および遠位端を有する脱離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、前記近位端が前記ホルダーに結合するように構成され、前記遠位端が細長いハンドルに結合するように構成されている、請求項9に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項14】
前記合口リングをさらに含み、前記合口リングが、ロックシステムを含み、前記生体人工弁が、少なくとも1つのロック機能を含み、前記少なくとも1つのロック機能が、前記ロックシステムによって受け入れられるように構成されている、請求項9に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項15】
前記ロックシステムが、前記ホルダーが前記合口リングに対して少なくとも第1の係合位置および第2の係合解除位置まで回転され得るように、前記生体人工弁の少なくとも1つのロック機能を受け入れるように構成された少なくとも1つのチャネルを含む、請求項14に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項16】
前記操縦システムが、時計回りの方向に係合位置までおよび反時計回りの方向に係合解除位置まで前記ホルダーを回転させるように、前記合口リングに対して前記ホルダーとともに回転可能な中央ピンを含む、請求項15に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項17】
前記合口リングが、患者の僧帽弁縁に取り付け可能である、請求項14に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【請求項18】
前記中央ピンが、低侵襲心臓胸部手術鉗子に取り付け可能である、請求項10に記載の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、人工僧帽弁、移植付属品、および関連する移植方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工心臓弁は、患者における欠陥のある人間の弁を置換し得る。人工心臓弁には、生体人工(例えば、組織)心臓弁と機械的心臓弁の2種類がある。弁置換手順中、弁人工器官は、通常、損傷または罹患した天然の弁構造を外科的に除去した後、天然の心臓弁開口部(「弁輪」)の末梢組織に縫合される。例えば、人工弁の縫合リングは、縫合糸を介して弁輪に固定され得る。外科医は、視界が制限された狭い空間内で作業しながら、複数の縫合糸や小さな構成要素を操縦しているため、この手順は非常に複雑になる可能性がある。組織弁の形状と構造を考慮すると、組織弁の実装ではさらに困難になる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、生体人工心臓弁を僧帽弁の位置に配置する場合、交連ポストは、弁の送達中に患者の弁輪の内側に入る弁の最初の部分である。複数の事前に取り付けられた縫合糸と交連ポストが近接していることを考慮すると、1つ以上の交連ポストが1つ以上の事前に取り付けられた縫合糸と絡み合う(一般に「縫合糸ループ」と呼ばれる)ことは珍しいことではない。さらに、手順中のこの時点では交連ポストが見えないため、外科医は、そのような絡み合いが発生したかどうかを視覚的に検出することができない。この問題は、業界で急速に一般的になりつつある技術である低侵襲アクセスアプローチの際にさらに顕著になり、これによって、弁送達中の手術野の可視性がさらに制限されてしまう。
【0004】
人工心臓弁は、低侵襲心臓胸部手術(MICS)ツールおよび技術を使用して埋め込まれることがよくある。MICS技術には、小さな切開を通して(例えば、多くの場合、肋骨を通して)手順を実行するか、またはデバイスを埋め込むことが含まれるため、この小さな切開を通して心臓胸部領域にアクセスできるツールが必要である。移植を容易にするために弁のサイズ決めおよび位置合わせを効率的に行うための移植付属品、システムおよび方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例1は、患者の心臓の心臓弁輪位置に配置するための移植付属品であり、弁輪は、第1の軸を有し、移植付属品が、第1の表面と、第1の表面に垂直な第2の軸と、第1の軸と第2の軸を位置合わせするための操縦システムとを含む。
【0006】
実施例2は、実施例1に記載の移植付属品であり、操縦システムは、表面に対して旋回可能な中央ピンを含み、第2の軸は、中央ピンに直交している。
【0007】
実施例3は、実施例1または実施例2のいずれかによる移植付属品であり、操縦システムは、第1の糸通し可能なボアおよび第2の糸通し可能なボアを含み、各ボアは、第1の表面に配設された第1および第2の開口部を有する。
【0008】
実施例4は、実施例1~3のいずれかに記載の移植付属品であり、第1の糸通し可能なボアおよび第2の糸通し可能なボアは、第1の表面を傾斜させ、第1の軸および第2の軸を位置合わせするために、それぞれ、それらを通る第1の糸および第2の糸を含む。
【0009】
実施例5は、実施例1~4のいずれかによる移植付属品であり、中央ピンは、低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子に対して把持可能である。
【0010】
実施例6は、実施例1~5のいずれかによる移植付属品であり、移植付属品は、弁輪のサイズを決定するように構成される。
【0011】
実施例7は、実施例1~6のいずれかに記載の移植付属品であり、移植付属品は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを移植するように構成される。
【0012】
実施例8は、実施例1~7のいずれかによる移植付属品であり、移植付属品は、取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリを移植するように構成される。
【0013】
実施例9は、実施例1~8のいずれかに記載の移植付属品であり、移植付属品は、取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリの複数の弁尖を位置決めするように構成される。
【0014】
本発明の実施例10は、患者の心臓の心臓弁輪位置に取り付けられた合口リングに移植するための取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、合口リングは第1の軸を有し、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリは、合口リングに結合させるための生体人工弁と、生体人工弁に分離可能に結合されたホルダーであって、第1の表面と、第1の表面に垂直な第2の軸と、第1の軸と第2の軸を位置合わせするための操縦システムとを有する、ホルダーと、を含む。
【0015】
実施例11は、実施例10の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、操縦システムは、ホルダーに対して旋回可能な中央ピンを含み、第2の軸は、中央ピンに直交している。
【0016】
実施例12は、実施例11による取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、中央ピンは、第1の時計回り方向および第2の反時計回り方向にホルダーとともにさらに回転可能である。
【0017】
実施例13は、実施例10~12のいずれかによる取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、操縦システムは、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弓形ボアを含み、各ボアは、第1の表面に配設された第1および第2の開口部を有する。
【0018】
実施例14は、実施例13による取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弓形ボアは、第1の表面を傾斜させ、第1の軸および第2の軸を位置合わせするために、それぞれ、それらを通る第1の糸および第2の糸を含む。
【0019】
実施例15は、実施例10~14のいずれかによる取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、近位端および遠位端を有する分離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、近位端はホルダーに結合するように構成され、遠位端は細長いハンドルに結合するように構成される。
【0020】
実施例16は、実施例10~15のいずれかによる取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、合口リングをさらに含み、合口リングがロックシステムを含み、生体人工弁が少なくとも1つのロック機能を含み、少なくとも1つのロック機能がロックシステムによって受け入れられるように構成される。
【0021】
実施例17は、実施例16による取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、ロックシステムは、ホルダーが合口リングに対して少なくとも第1の係合位置および第2の係合解除位置まで回転され得るように、生体人工弁の少なくとも1つのロック機能を受け入れるように構成された少なくとも1つのチャネルを含む。
【0022】
実施例18は、実施例17による取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、操縦システムは、第1の時計回り方向に係合位置までおよび第2の反時計回り方向に係合解除位置までホルダーを回転させつために、合口リングに対してホルダーとともに回転可能な中央ピンを含む。
【0023】
実施例19は、実施例16~18のいずれかによる取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、合口リングは、患者の僧帽弁縁に取り付け可能である。
【0024】
実施例20は、実施例11~12のいずれかによる取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであり、中央ピンは、低侵襲心臓胸部外科(MICS)鉗子に対して把持可能である。
【0025】
実施例21は、多構成要素心臓弁人工器官を移植する方法であり、この方法は、合口リングを患者の心臓の心臓弁輪に固定するステップであって、合口リングが第1の軸を有する、ステップと、合口リングに隣接する取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを前進させるステップであって、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリが合口リングに結合するための生体人工弁および生体人工弁に分離可能に結合されたホルダーを含み、ホルダーが、第1の表面と、第1の表面に垂直である第2の軸と、第1の軸と第2の軸を位置合わせするための操縦システムとを有する、ステップと、第1の軸と第2の軸を位置合わせするために操縦システムを操縦するステップと、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを合口リングにさらに前進させることにより、生体人工弁を着座させるステップと、生体人工弁を合口リングに結合させるステップと、ホルダーを取り外すステップと、を含む。
【0026】
実施例22は、実施例21に記載の方法であり、操縦システムは、ホルダーに対して旋回可能な中央ピンを含み、第2の軸は中央ピンに直交し、操縦するステップは、取り付け可能な低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子を使用して中央ピンを旋回させることを含む。
【0027】
実施例23は、実施例22に記載の方法であり、中央ピンはホルダーとともに回転可能であり、操縦するステップは、第1の時計回り方向および第2の反時計回り方向にホルダーを回転させることを含む。
【0028】
実施例24は、実施例21~23のいずれかに記載の方法であり、操縦システムは、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弓形ボアを含み、各ボアは、第1の表面に配設された第1および第2の開口部と、それを通して配設された第1および第2の糸とを有し、操作するステップは、第1および第2の糸を引っ張って、第1の表面を傾斜させ、第1の軸と第2の軸を位置合わせすることを含む。
【0029】
実施例25は、実施例21~24のいずれかに記載の方法であり、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリは、近位端および遠位端を有する分離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、近位端はホルダーに結合され、遠位端は細長いハンドルであり、前進するステップは、ハンドルを介して取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを挿入することをさらに含む。
【0030】
実施例26は、実施例25に記載の方法であり、前進するステップの前に、嵌め合い接合部は弁アセンブリから細長いハンドルまで分離される。
【0031】
実施例27は、実施例21~26のいずれかに記載の方法であり、合口リングはロックシステムを含み、生体人工弁は少なくとも1つのロック機能を含み、少なくとも1つのロック機能はロックシステムによって受け入れられるように構成され、生体人工弁を合口リングに着座させるステップは、第1の時計回り方向に第1の係合位置までおよび第2の反時計回り方向に第2の係合解除位置までホルダーを回転させることを含む。
【0032】
実施例28は、患者の心臓の心臓弁輪位置に移植するための多構成要素心臓弁人工器官であり、心臓弁人工器官は、心臓弁輪位置に取り付けるように構成された合口リングであって、合口リングが第1の軸を有する、合口リングと、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリであって、合口リングに結合されるように構成された生体人工弁と、生体人工弁に分離可能に結合されたホルダーと、を備え、ホルダーが、第1の表面および第1の表面に垂直な第2の軸とを有する、ホルダーと、第1の軸および第2の軸を位置合わせするための操縦システムであって、操縦システムが、ホルダーに対して旋回可能であり、ホルダーとともに回転可能な中央ピンであって、第2の軸が中央ピンに直交する、中央ピンと、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弧状ボアであって、第1の表面を傾斜させ、第1の軸および第2の軸を位置合わせするために、各ボアが第1の表面に配設された第1および第2の開口部ならびにそれらを通る第1および第2の糸を有する、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弧状ボアと、を有する、操縦システムと、を含む。
【0033】
実施例29は、実施例28による多構成要素心臓弁人工器官であり、近位端および遠位端を有する分離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、近位端はホルダーに結合するように構成され、遠位端は細長いハンドルに結合するように構成される。
【0034】
複数の実施形態が開示されているが、本発明のさらに他の実施形態は、本発明の例示的な実施形態を示し、説明する以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。したがって、図面および詳細な説明は、本質的に例示と見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示に記載のいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリおよび患者への移植を示す概略図である。
図2A図1の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの嵌め合い接合部およびホルダーテンプレートを含むホルダーを示す斜視図である。
図2B図2Aの取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの嵌め合い接合部を示す斜視図である。
図2C図2Aの取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリのホルダーテンプレートを示す斜視図である。
図3図1の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリのホルダーテンプレートを示す斜視図である。
図4図1の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの、弁に固定するための保持システム、および傾斜するための操作システムを有するホルダーテンプレートを示す斜視図である。
図5A図1の取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの、係合解除構成での上面図である。
図5B】係合構成での、図5Aの取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの上面図である。
図6】本開示に記載されている他の実施形態によるサイザーを示す斜視図である。
図7】本開示に記載されているいくつかの実施形態による、機械的心臓弁アセンブリおよび患者への移植を示す概略図である。
図8A図7の機械的心臓弁アセンブリによる、嵌め合い接合部およびホルダーを有する移植付属品を含む多構成要素心臓弁人工器官を示す斜視図である。
図8B図8Aのように、ホルダー中央ピンを有し、嵌め合い接合部に取り付け可能な移植付属品を示す分解図である。
図8C図8Aおよび8Bの移植付属品の代替図を示す斜視図であり、下側は軸A2に垂直な平面を有する。
図8D】本開示に記載された、いくつかの実施形態による、糸通し可能なボアを含む操縦システムを示す、移植付属品のホルダーの別の実施形態の斜視図である。
図8E図8Bのような嵌め合い接合部の取り付け手段を示す斜視図である。
図8F】本開示に記載されているいくつかの実施形態による、移植付属品と結合された図8Aの多構成要素心臓弁人工器官を示す斜視図である。
図9A】本開示に記載された、いくつかの実施形態による、移植手順においてサイザーを使用することを示す。
図9B】本開示に記載されているいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの移植手順による合口リングの挿入を示す。
図9C】本開示に記載されているいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの移植手順による合口リングの固定を示す。
図9D】本開示に記載のいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの移植手順によるホルダー/弁アセンブリの前進を示す。
図9E】本開示に記載のいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの移植手順にしたがったホルダー/弁アセンブリの操作、位置合わせおよびロックを示す。
図9F】本開示に記載のいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリの移植手順によるホルダーの取り外しを示す。
図10】は、本開示に記載のいくつかの実施形態による、多構成要素心臓弁人工器官を移植する方法を示すフローチャートである。
【0036】
本開示は、様々な修正形態および代替形態が可能であるが、特定の実施形態が、例として図面に示され、以下で詳細に説明される。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することではない。それとは逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての修正物、等価物、および代替物を網羅することを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本装置および方法は、心臓弁人工器官が準備された弁縁(または弁輪)に外科的に取り付けられる多種多様な用途において、心臓弁人工器官の移植手順および性能を改善するために利用することができる。本明細書に開示される実施形態は、移植可能な合口リングに移植するための改良された取り外し可能な生体人工心臓弁、それに取り付けられた組織弁尖を有する弁フレームを含む取り外し可能な生体人工心臓弁(または、あるいは、機械的ピボットディスクもしくは機械的弁尖またはそれらの同等物)に関する。本発明の様々な態様は、人工心臓弁フレームが縫合リングに従って動作する僧帽弁(または他の心臓弁-大動脈など)の置換において利用され得る。
【0038】
図1は、本開示に記載されているいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250および患者への移植を示す概略図である。様々な実施形態において、取り外し可能な人工心臓弁アセンブリ250は、生体人工(すなわち、組織)心臓弁アセンブリである。上で論じたように、組織弁は、一般に、例えば、ウシ心膜または採取したブタ心臓弁組織から作製され、静止した金属またはプラスチックフレーム構造に取り付けられた複数の組織尖または小葉を含む。このフレーム構造は、十分な弁の開閉特性および適切な血流を促進する所望の向きおよび形状に様々な尖または小葉を維持するように動作する。
【0039】
他の様々な実施形態では、人工心臓弁アセンブリ250は、機械的心臓弁アセンブリである。上記のように、最新の機械的心臓弁人工器官は、通常、比較的剛性の高い弁本体内の環状弁座から形成され、所定の可動範囲内の閉座位置と開位置との間を移動する閉塞ディスクまたは一対の小葉を含む。
【0040】
本明細書で論じられる実施形態は、生体人工心臓弁または機械的心臓弁のいずれかを使用するように動作し得るが、以下の説明は、図1~6に示される生体人工心臓弁を参照して提供される。しかしながら、機械的心臓弁(図7および8に示される)も本明細書で論じられる実施形態で使用され得、生体人工心臓弁への言及は、本開示の範囲を制限する役割をするべきではないことを理解されたい。
【0041】
一実施形態では、移植可能な合口リング50に移植するための取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250は、その中に組織小葉を有する弁フレーム200およびホルダー100を含む。以下でより詳細に論じられるように、合口リング50は、弁フレーム200を受け入れるように構成され、弁フレーム200は、合口リング50によって受け入れられるように構成される。一緒に、ホルダー100、弁フレーム200、および弁フレーム200内に位置する複数の組織小葉(図示せず)は、概して、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250の構造を構成する。一緒に、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250および合口リング50は、通常、その組み立てられた構成において、患者の心臓の心臓弁輪位置に移植するための多構成要素心臓弁人工器官280を構成する。前述のように、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250は、弁フレーム200を操作して合口リング50に移植するためのホルダー100を含む。有利なことに、ホルダー100は、弁フレーム200が合口リング50にうまく埋め込まれた後、着脱可能および取り外し可能である。弁フレーム200は、本明細書では互換的に弁200と呼ばれ、弁または弁フレーム200は、弁フレーム200内に位置する複数の組織小葉をさらに含むことが理解される。
【0042】
図1に示されるように、軸A1を有する合口リング50内に移植するための取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250は、患者の心臓の心臓弁輪位置30に取り付けられる。例えば、低侵襲アクセスアプローチでは、患者10には、患者の胸部開口部12を通して入れられて、心室20にアクセスされる。合口リング50は、患者の弁輪30に固定されている。合口リング50は、その中心を通る軸A1を含む。軸A1は、通常、環に垂直である。弁輪30に固定されると、患者10内の物理的制約のために合口リング50へのアクセスが制限され、したがって、弁200の移植が困難になる。
【0043】
取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250は、合口リング50に結合するための生体人工弁200と、弁200に分離可能に結合されたホルダー100とを含む。弁200の埋め込みを容易にするために、ホルダー100はまた、嵌め合い接合部(160、図2Bに示される)を介してハンドル300に結合される。バルブ200に結合されたホルダー100は、表面110および軸A2を含む。軸A2は表面110に垂直である。表面110は平面であり、弁200と結合するようにディスク形状である。開口部12を通してハンドル300を介してホルダー100を挿入すると、軸A2は、角度60だけ軸A1に対してオフセットされる。角度60は、鋭角であり、90度未満でありかつ0度よりも大きい測定における範囲である。ホルダー100は、軸A2を軸A1と位置合わせするための操縦システム120(図3)をさらに含む。弁200を合口リング50に着座させる前に軸A1およびA2を位置合わせすることにより、弁200が合口リング50に適切に埋め込まれることが保証される。操縦システム120を有するホルダー100は、本明細書では互換的に傾斜可能なホルダー100と呼ばれる。いくつかの実施形態では、合口リング50は、患者の僧帽弁縁に取り付け可能である。
【0044】
図2Aは、図1に示されるような取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250のためのホルダー100および嵌め合い接合部160を示す斜視図である。ホルダー100は、嵌め合い接合部160に結合されている。図2Bは、図2Aのように嵌め合い接合部160を示す斜視図である。嵌め合い接合部160は、近位端162および遠位端164を含み、近位端162は、ホルダー100に結合するように構成され、遠位端164は、細長いハンドル300(図1に示される)に結合するように構成される。嵌め合い接合部160は必要に応じて分離可能である。有利なことに、嵌め合い接合部160は、例えば、MICS鉗子を使用して、医師による操縦システム120へのアクセスを可能にするために、ホルダー100から分離される。図2Cは、図2Bのように嵌め合い接合部160に分離可能に結合するためのホルダー100を示す斜視図である。ホルダー100は、本明細書ではホルダーテンプレートと互換的に呼ばれる。
【0045】
図3は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250のホルダー100を示す斜視図である。軸A2を有するホルダー100は、表面110および操縦システム120を含む。操縦システム120は、ホルダー100に対して旋回可能な中央ピン130を含み、方向70によって示されるように旋回する。軸A2は中央ピン130の中を通る。中央ピン130は、ホルダーとともに、第1の時計回り方向D1および第2の反時計回り方向D2にさらに回転可能である。いくつかの実施形態では、中央ピン130は、操作性を容易にするために、低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子に取り付け可能である。操縦システム120は、糸通し可能な弓形ボア140および150をさらに含む。各糸通し可能な弓形ボア、ボア140および150は、表面110に配設された第1および第2の開口部を含む。ボア140は、開口部142および144を含む。ボア150は、開口部152および154を含む。
【0046】
図4は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250のホルダー100を示す斜視図である。糸通し可能な弓形ボア140および糸通し可能な弓形ボア150は、それぞれ、それらを通る糸146および156を含む。中央ピン130を(例えば、MICS鉗子で)把持しながら、糸146および156を操作または引っ張ることによって、表面110を傾斜させ、軸A1および軸A2を位置合わせするように動作させる。表面110は、中央ピン130に平行に延びる軸z(座標180を参照)を中心に傾動可能である。有利なことに、表面110は、結合されたホルダー100およびバルブ200が隣接する合口リング50である場合に、軸A1およびA2を位置合わせするように操作可能である。いくつかの実施形態では、外科用保持縫合糸は、ボア140、150のうちの少なくとも1つに取り付けられ得る。この保持縫合糸は、患者の外側(例えば、外科医)まで延在し得、デバイスが患者の内側で失われないことを確実にするために使用され得る。
【0047】
図4はまた、ホルダー100の厚さを通した穴180を示し、穴は、表面110からその反対側の表面210まで延びている。これらの穴は、ホルダー100を弁200に結合させることを可能にし、図4に示されるように、取り付けるための縫合糸170、172、および174を含む。有利なことに、縫合糸170、172、および174は、弁200を合口リング50内に首尾よく着座および固定した後に切断され得る。したがって、ホルダー100は分離可能であり、患者から取り外され得る。ホルダー100は、患者の弁の要件に応じてサイズが決められ、通常、生体適合性金属(例えば、チタン、ステンレス鋼、もしくは他の適切な金属合金)、プラスチック材料(例えば、アセタールホモポリマープラスチック)、または任意の他の適切な生体適合性材料で形成される。ホルダー100は、分離可能で、使い捨て可能で、1回の使用に適している。
【0048】
図5Aおよび5Bは、いくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250の上面図である。いくつかの実施形態では、心臓弁アセンブリ250は、ツーピースの機械的心臓弁を含む。図5Aは、係合解除構成1250における合口リング1050およびバルブフレーム1200を示す。合口リング1050は、ロックシステム1220を含む。いくつかの実施形態では、ロックシステム1220は、係合位置(本明細書では「ロック」位置とも呼ばれる)へのロックシステムにおけるノッチと位置合わせされていない位置までチャネルを通してロック機能の回転を可能にするようにノッチ間に延びるチャネルとともに、バルブフレーム1200上のロック機能を受け入れることができる1つ以上のノッチを含む。弁フレーム1200は、少なくとも1つのロック機能1230を含む。図5Aに示されるように、弁フレーム1200は、3つのロック機能を含み、これらは、半径方向外側に突出して、弁システム1220と嵌合する。
【0049】
図5Bは、係合構成1260における合口リング1050およびバルブフレーム1200を示す。少なくとも1つのロック機能1230は、例えば、ノッチ間に延びる合口リング1050のチャネル1240によって、ロックシステムによって受け入れられるように構成される。参照により本明細書に組み込まれる国際出願番号PCT/IB2016/053515号には、本開示の少なくともいくつかの実施形態による、取り外し可能な生体人工弁アセンブリに適したロックシステムが記載されている。バルブフレーム1200のロック機能がロックシステム1220のノッチと嵌合するとき、中央ピン(図4に示される130)を有する操縦システムを使用して、ロック位置に第1の(例えば、時計回りの)方向に合口リング1050に対してバルブフレーム1200を回転させ得る。同様に、操縦システムを使用して、弁を合口リング1050に対して1200から第2の(例えば、反時計回りに)方向に係合解除位置まで回転させ得る。これにより、軸A1とA2の位置合わせ後に、バルブを合口リングに着座させて固定することができる。同様に、逆に、バルブを合口リングから係合解除して取り外すことができる。
【0050】
一般に、本開示のいくつかの実施形態では、ホルダー/弁アセンブリを挿入する前に、弁輪のサイズを評価するために、サイザーなどの移植付属品がネイティブの弁輪に導入される。いくつかの実施形態では、異なる寸法を有する複数のサイザーが、弁輪サイズの決定のために独立して導入される。例えば、医療チームは、サイザー500でサイジング手順を実行するために利用可能な様々な寸法の3つまたは4つのサイザーを有することができる。このようにして、ネイティブの弁輪に最適に嵌め合う適切なサイズの対応するホルダー/バルブアセンブリを医療チームが選択できるため、これらは、(とりわけ)生体人工心臓弁、機械的心臓弁および弁輪形成術リングの移植を含む。
【0051】
図6は、弁輪サイズを決定するためのサイザー500を示す斜視図である。本明細書でD字状サイザー500とも交換的に呼ばれ得るサイザー500は、例えば、D字状僧帽弁輪を補完するように設計されている。D字状とは、長辺510および湾曲したプロファイル辺520を含むおおよその形状を指す。辺510は、通常、患者の前方に配置され、辺520は、通常、後方に配置される。サイザー500は、図6に示されるように、長軸A3および短軸A4を含む。様々な実施形態によれば、サイザー500の長軸A3は、24mm~42mmの範囲である。いくつかの実施形態によれば、長軸A3は、24mm、または26mm、または28mm、または30mm、または32mm、または34mm、または36mm、または38mm、または40mm、または42mmである。例示的な実施形態によれば、短軸に対する長軸の比A3/A4は、1.3~1.5の範囲である。有利なことに、僧帽弁人工器官および弁輪形成術リングとともに使用するためのサイザー500は、例えば、MICS手順のように、小さな創傷を通して挿入するための高さを低減した低侵襲手順を提供する。言い換えれば、サイザー500は、それがネイティブの弁輪の形状に対応するように形作られ、同時に、処置中に患者の肋骨の間の空間を通して挿入することができる厚さを有する。
【0052】
図6に示されるように、サイザー500は、MICS鉗子で把持および操作するための中央ピン530を含む。図6はまた、サイザー500の厚さを通した穴580および585を示し、穴は、表面560からその反対側の表面570まで延びている。糸通し可能な穴580および585は、そこに糸を挿入するためのものである(すなわち、1つの糸が穴580を通り、第2の糸が穴585を通る)。穴または開口部580および585を通るねじはまた、図4のホルダー100の糸通し可能な弓形ボア140および150と同様の様式で糸を引っ張るまたは操作することによって、サイザー、すなわち、傾斜面または角度付け面560を操作するために使用され得る。上記のように、様々な実施形態において、糸はまた、サイザー500が患者内に置き去りにされないことを確実にするのを助けるために使用される。いくつかの実施形態では、穴580は、本明細書では、一対の穴580によって形成される第1の糸通し可能なボアと互換的に呼ばれ、穴585は、本明細書では、一対の穴585によって形成される第2の糸通し可能なボアと互換的に呼ばれる。中央ピン530および糸通し可能な穴580および585を含む操縦システム520は、ホルダー100のシステム120について説明したのと同様に動作する。サイザー500は、ボアまたはスロット540および550をさらに含み、スロット540および550は、図2Bのはめあい接合部160について示されるのと同様に説明される様式で、中央の嵌め合い接合部をサイズ500に結合することを可能にするように構成されている。これにより、ハンドルを接続して、サイザーを環状部にパラシュートで降下させることができる。このようなパラシュートでの降下はまた、中央ピン530に係合するためにMICS鉗子を使用して達成され得る。サイザー500の表面570は、サイズを決定する間に患者の弁輪に隣接しておよび/または接触して配置され、一方、表面560は、サイズ決定を行う医師の方向を向いている。MICSの手順では、嵌め合い接合部を取り外して、サイザーを傾けて小さな切開部を通して挿入できるようにしてもよい。
【0053】
一般に、本開示のいくつかの実施形態では、患者の心臓弁輪位置に配置するための移植付属品が提供される。いくつかの実施形態では、付属品は、患者のネイティブな弁輪に配置するための機械的心臓弁を含む。ネイティブの弁輪は、大動脈弁または僧帽弁の位置にあり得る。いくつかの実施形態では、移植付属品は、機械的心臓弁の弁尖を方向付けまたは再位置決めするために、すでに移植された弁を回転させるための回転子を含む。図7では、患者の心臓の心臓弁輪位置30に取り付けられた弁ハウジングを含む、機械的心臓弁850への移植のための移植付属品700が示されている。弁850は、本明細書では互換的に弁ハウジング850とも呼ばれる。移植付属品700はまた、本明細書では回転子700またはホルダー700と互換的に呼ばれる。回転子700を使用して、弁850は、弁移植後の微調整および弁尖の方向付けのためにそのハウジング内で回転される。移植アセンブリ650は、機械的心臓弁850(図8Aおよび8Fを参照)および回転子700を含む。弁850は、弁尖860をさらに含む。多構成要素心臓弁付属品780は、回転子700および嵌め合い接合部760を含み、これらは、上記の嵌め合い接合部160と同様であり得る。嵌め合い接合部760は、ハンドル300に取り付け可能である。例えば、低侵襲アクセスアプローチでは、患者10には、患者の胸部開口部12を通して入れられて、心室20にアクセスされる。機械的心臓弁850は、患者の弁輪30に固定され、図7に示されるように、その中心を通る軸A1を含む。軸A1は、通常、弁輪に垂直である。弁輪30に固定されると、患者10内の物理的制約のために弁850へのアクセスが制限され、したがって、機械的心臓弁850の位置決めおよび弁尖860の方向付けが困難になる。
【0054】
図8A~8Fに示されるように、移植アセンブリ650は、機械的弁650(弁ハウジング850と結合される)および弁850に分離可能に結合される回転子700を含む。弁850の移植を容易にするために、回転子700はまた、図8Aに示されるように、嵌め合い接合部760を介してハンドル300に結合される。嵌め合い接合部760および回転子700は、図8Aに一緒に結合されて示される2つの別個の構成要素である。回転子700は、操縦システム720を使用することによって、弁ハウジング850内の弁尖860を回転または位置合わせさせるのにさらに有用である。移植付属品780は、図8Bの分解図に示されるように、中央ピン730を有する回転子700を含み、回転子700は嵌め合い接合部760に取り付け可能である。回転子またはホルダーである構成要素700は、中央ピン730を含む。嵌め合い接合部760は、ホルダー780が組み立てられて使用される開放胸部にアクセス可能である場合に、医師による弁の配置に有用である。低侵襲手順では、アセンブリを挿入する前に、フィットジョイント760を患者の外側に取り外して、回転子700のみが弁に残るようにし、それにより、移植付属品の高さを減らし、小さな創傷を通して挿入できるようにする。本明細書に開示される実施形態では、嵌め合い接合部760は、移植前に取り外され、したがって、操作システム720は、完全に露出され、上で詳述した操作システム120と同様の様式で医師が使用できるようにアクセス可能である。中央ピン730は、ホルダー100の中央ピン130について説明したのと同様に動作し、鉗子によって把持可能である。回転子700は、穴770および775を含む。穴770および775は、これらを通して糸を糸通しすることによってバルブ850をホルダー700に固定することを可能にし、バルブに取り付けるための保持システムとも呼ばれる。嵌め合い接合部760の歯758は、スナップ嵌め合い接続を介して回転子700への結合を容易にし、歯758は、ホルダー700の穴745と嵌合する。弁850が回転子700から分離された後、両方の穴770は、回転可能な中央ピン730を把持する鉗子と連動して動作する操作システム720の一部として、医師によって外科用糸を挿入してホルダーを傾けるために使用される。
【0055】
図8Cに示されるように、回転子700は、表面710および軸A2を含む。軸A2は、表面710に垂直である。表面710は、弁850と結合する形状にされた平面およびディスクである。図7に示すように、ハンドル300を介して開口部12を通して回転子700を挿入すると、軸A2は、鋭角だけ軸A1に対してオフセットされ、角度60は、90度未満であり0度よりも大きい測定における範囲である。
【0056】
移植付属品または回転子の代替の実施形態は、図8Dのように示されている。回転子800は、操縦システム820を有する回転子800が、糸通し可能な弓形ボア840および845を含むことを除いて、図8Bの回転子700と同様であり、ボアは、上に詳述したように、および図4に示すように、ホルダー100の弓形ボア140および150と同様に、回転子を傾斜させるために糸通し可能である。回転子800は、軸A2を軸A1と位置合わせするための操縦システム820を含み、操縦システム820は中央ピン730を含む。弁850を着座させる前の軸A1およびA2の位置合わせは、弁850の適切な移植、および金属であってもよい弁尖860の弁ハウジング850への方向付けを確実にする。移植付属品800は、取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリ850の複数のリーフレット860を位置決めするように構成される。リーフレットの位置決めには、旋回および傾斜の少なくとも1つが含まれる。回転子800は、本明細書では、互換的に傾斜可能な回転子800と呼ばれる。いくつかの実施形態では、弁ハウジング850は、縫合カフを介して患者の僧帽弁縁に取り付け可能である。他の実施形態では、弁ハウジング850は、患者の大動脈弁縁に取り付け可能である。
【0057】
いくつかの実施形態では、中央ピン730は、低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子に取り付け可能である。図8Dに示されるように、回転子800は、MICS鉗子で把持および操作するための中央ピン730を含む。低侵襲心臓胸部外科(MICS)鉗子で中央ピン730を把持することは、図8A~8Fには示されていないが、中央ピン730は、図9Aのように中央ピン520を有する実施形態について示されるのと同様に、または図9Eおよび9Fのように中央ピン130を有する実施形態のように、MICS鉗子によって把持可能である。中央ピン730ならびに糸通し可能なボア840および845を含む操縦システム820は、ホルダー100のシステム120について説明したのと同様に動作する。中央ピン730は、表面710に対して旋回可能であり、第2の軸A2は、中央ピン730の中を通り、それに直交している。糸通し可能なボア840は、開口部742および744を含み、糸通し可能なボア845は、開口部752および754を含み、ボアおよび開口部は、表面710を傾斜させ、第1の軸A1および第2の軸A2を位置合わせするために、それぞれ、それらを通る第1および第2の糸746および756を受け入れるためのものである。図8Eに示されるように、嵌め合い接合部760は、回転子700に取り付けるためのスナップ嵌め合いプロングまたは歯758を含む。図8Fは、弁ハウジング850内に位置決めされた多構成要素心臓弁人工器官880を概略的に示す。
【0058】
より一般的には、本開示のいくつかの実施形態では、患者の心臓の心臓弁輪位置に配置するための移植付属品が提供される。弁輪は、第1の軸を有する(図9AのA1を参照)。移植付属品(100、500、700、800)は、第1の表面に垂直な第2の軸を有する第1の表面(すなわち、図3および4の110、または図9Aの560、または図8Aの710)を含む。移植付属品(100、500、700、800)は、第1の軸および第2の軸を位置合わせするための操縦システム(120、520、720、820)を含む。操縦システム(120、520、720、820)は、表面(110、560、710)に対して旋回可能な中央ピン(130、530、730)を含む。第2の軸は、中央ピンの中を通る。操縦システム(120、520、720、820)は、第1の糸通し可能なボア(140、580、740)および第2の糸通し可能なボア(150、585、750)を含み、各ボアは、第1の表面に配設された第1および第2の開口部を有する。第1の糸通し可能なボアおよび第2の糸通し可能なボアは、第1の表面を傾斜させ、第1の軸および第2の軸を位置合わせするために、それぞれ、それらを通る第1の糸および第2の糸を含む。中央ピン(130、530、730)は、低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子(図9Aおよび9Fの2500)に取り付け可能である。いくつかの実施形態では、移植付属品は、弁輪のサイズを決定するように構成され、移植付属品は、サイザーと呼ばれる。他の実施形態では、移植付属品は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを移植するように構成され、移植付属品は、ホルダーまたはテンプレートと呼ばれる。さらに他の実施形態では、移植付属品は、取り外し可能な機械的心臓弁アセンブリを移植するように構成され、移植付属品は、回転子と呼ばれる。
【0059】
図9A~9Fは、本開示に記載されているいくつかの実施形態による、多構成要素心臓弁人工器官280を移植するための方法を示す。この方法は、任意選択で、図9Aに示されるように、ネイティブな弁輪のサイズを決めることを含む。サイザー500は、患者の弁輪2100の近くで前進する。サイザー500は、MICS鉗子2500に取り付け可能または把持可能であり、弁輪の近くでサイザー500の前進および配置を容易にする。サイザー500は、中央ピン530を把持すること、および/または必要に応じて糸545または556を角度面560に対して調整して、サイザー500を弁輪2100内に位置決めすることによって操作可能である。表面560に垂直な軸A2を含むサイザー500は、弁輪の中心軸に対応する軸A1を軸A2と位置合わせするように操作可能である。必要に応じて、異なる寸法のサイザー500を使用して、使用者がサイザーを弁輪に適切に嵌め合うまで、サイズ決めを繰り返す。それにより、適切なサイズ決めされた取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ1300が選択される。図9Aのサイザー500は、おおよそD字状の断面を有するように示されているが、他の実施形態では、サイザー500は、典型的な人工弁の断面形状と同様に、断面が実質的に円形である。
【0060】
この方法は、図9Bおよび9Cに示されるように、合口リング1050を、縫合糸2000を介して患者の心臓の心臓弁輪2100に挿入および固定することを含む。合口リング1050は、第1の軸A1を有する。この方法は、図9Dに示されるように、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ1300を合口リング1050に前進させることをさらに含む。アセンブリ1300が前進するとき、軸A1およびA2は、患者に入る際の物理的制約のために位置合わせされない(図9Dを参照)。取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ1300は、合口リング1050に結合するための生体人工弁1320と、生体人工弁1320に分離可能に結合されたホルダー1310とを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリが、近位端および遠位端を有する分離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、近位端はホルダーに結合され、遠位端は細長いハンドルに結合され、前進するステップは、ハンドル(図示せず)を介して取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを挿入することをさらに含む。図1および図2も参照すると、前進には、嵌め合い接合部160およびハンドル300に取り付けられた前進ホルダー100が含まれ、ホルダーは、第1の表面と、第1の表面に垂直な第2の軸A2と、軸A1およびA2を位置合わせするための操作システム(嵌め合い接合部160の取り外し時にアクセス可能な)を含む。いくつかの実施形態では、弁を患者内に進める前に、細長いハンドルに結合された嵌め合い接合部を弁アセンブリから分離させる。取り付け可能な低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子2500を使用して中央ピンを旋回させることにより操縦することは、図9Dおよび9Eに示されている。
【0061】
図9Eに示されるように、この方法は、軸A1およびA2を位置合わせするように操縦システムを操縦することをさらに含む。図1図4も参照すると、操縦することは、例えば、MICS鉗子2500を使用して、および/または図9Eに示すように糸2146および2156を操縦または引っ張ることにより第1の表面を傾けることによって、中央ピン130を旋回させることが含まれる。いくつかの実施形態では、この方法は、操縦システムが、ホルダーに対して旋回可能な中央ピンを含み、軸A2が中央ピン130の中を通り、操縦するステップが、取り付け可能な低侵襲心臓胸部手術(MICS)鉗子2500を使用して中央ピンを旋回させることを含む。いくつかの実施形態では、この方法は、中央ピンがホルダーとともに回転可能であることと、操縦するステップが、バルブアセンブリ1300を合口リング1050と係合またはロックするために時計回り方向D1に、およびバルブアセンブリを合口リングから係合解除させるために反時計回り方向D2に、ホルダーを回転させることと、を含む。いくつかの実施形態では、この方法は、操縦システムが、第1の糸通し可能な弓形ボアおよび第2の糸通し可能な弓形ボアを含み、各ボアが第1の表面に配置された第1および第2の開口部およびそれを通して配設された第1および第2の糸を有することと、操縦するステップが、第1および第2の糸(2146、2156)を引っ張って、第1の表面を傾斜させて、第1の軸および第2の軸を位置合わせすることと、を含む。
【0062】
軸A1およびA2が位置合わせされると、この方法は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを合口リングにさらに前進させ、生体人工弁を合口リングに結合させることによって、生体人工弁を着座させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、この方法は、合口リングがロックシステムを含み、生体人工弁が少なくとも1つのロック機能を含み、少なくとも1つのロック機能がロックシステムによって受け入れられるように構成されることと、生体人工弁を合口リングに着座させるステップが、時計回りに係合位置までおよび反時計回り方向に係合解除位置までホルダーを回転させることを含むことと、を含む。
【0063】
バルブの着座後、ホルダーを取り外す。次に、縫合糸(図4の縫合糸170、172、および174を参照)を切断して、ホルダー1310を分離および取り外しし得る。次に、中央ピン130に結合されたままであるMICS鉗子を使用して、図9Fに示されるように、ホルダー1310を取り外しし得る。ホルダー1310は、弁の移植が完了すると、患者から取り外されるが、合口リング1050および弁1320は、患者内に残る。
【0064】
図10は、いくつかの実施形態による方法4000を示すフローチャートである。ステップ4010は、第1の軸を有する合口リングを患者の弁輪に固定することを含む。ステップ4020は、合口リングに隣接する取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを前進させることを含み、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリは、合口リングに結合するための生体人工弁および生体人工弁に分離可能に結合されたホルダーを含む。ホルダーは、第1の表面と、第1の表面に垂直な第2の軸と、第1の軸および第2の軸を位置合わせするための操縦システムとを有する。ステップ4030は、操縦システムを操縦して、第1の軸および第2の軸を位置合わせすることを含む。ステップ4040は、取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリを合口リング内にさらに前進させて、生体人工弁を合口リングに結合させることによって、生体人工弁を着座させることを含む。ステップ4050は、ホルダーを取り外すことを含む。
【0065】
他の実施形態では、患者の心臓の心臓弁輪位置に移植するための、図1を再び参照する多構成要素心臓弁人工器官280が開示されている。心臓弁人工器官280は、心臓弁輪位置30に取り付けるように構成された合口リング50であって、合口リングが第1の軸A1を有する、合口リングと、合口リング50に結合するように構成された生体人工弁200および生体人工弁200に分離可能に結合されたホルダー100を含む取り外し可能な生体人工心臓弁アセンブリ250と、を含む。ホルダー100は、第1の表面110および第1の表面に垂直な第2の軸A2と、第1の軸および第2の軸(A1およびA2)を位置合わせするための操縦システム120とを含む。操縦システムは、以下を含む。ホルダー100に対して旋回可能であり、ホルダー100とともに回転可能な中央ピン130であって、第2の軸A2が、中央ピン130の中を通る、中央ピン130と、第1の糸通し可能な弓形ボア140および第2の糸通し可能な弓形ボア150であって、各ボアが、第1の表面110に配設された第1および第2の開口部と、第1の表面を傾斜させ、第1の軸および第2の軸(A1およびA2)を位置合わせするために、その中を通る第1および第2の糸(146、156)を有する、弓形ボアとを含む。いくつかの実施形態では、多構成要素心臓弁人工器官は、近位端および遠位端を有する分離可能な嵌め合い接合部をさらに含み、近位端はホルダーに結合するように構成され、遠位端は細長いハンドルに結合するように構成されている。
【0066】
様々な修正および追加が、本開示の範囲から逸脱することなく、考察された例示的な実施形態に対して行われ得る。例えば、上記の実施形態は特定の特徴に言及しているが、本発明の範囲はまた、特徴の異なる組み合わせを有する実施形態と、記載された特徴のすべてを含まない実施形態と、を含む。したがって、本発明の範囲は、そのすべての等価物とともに、特許請求の範囲の範囲内にあるようなすべてのそのような代替、修正、および変形を包含するように意図される。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10