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特許7146120スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体、射出成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体、射出成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20220926BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20220926BHJP
   C08L 25/14 20060101ALI20220926BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08L21/00
B29C45/00
C08L25/14
C08L67/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021567747
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020049033
(87)【国際公開番号】W WO2021132692
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2019237227
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141601
【弁理士】
【氏名又は名称】貴志 浩充
(72)【発明者】
【氏名】望月 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】平塚 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛弘
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081282(JP,A)
【文献】特開2013-053284(JP,A)
【文献】特開2013-245222(JP,A)
【文献】特開2019-147911(JP,A)
【文献】国際公開第2016/098489(WO,A1)
【文献】特開2011-207967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 21/00
C08L 25/14
C08L 67/04
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム状重合体粒子(A)と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と、スチレン単量体単位(c1)及び当該スチレン単量体単位(c1)と共重合可能なビニル系単量体単位(1)を有するスチレン系樹脂(C)と、ポリ乳酸(D)とを含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物に含有される前記ゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径が0.3μm以上8μm以下であり、
前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上であり、
前記ビニル系単量体単位(1)は、アクリルアミド単量体単位、メタクリルアミド単量体単位、N-マレイミド単量体単位、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位、N-フェニルマレイミド単量体単位、酢酸ビニル単量体単位、プロピオン酸ビニル単量体単位、バーサチック酸ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、プロピレン単量体単位、イソプレン単量体単位及びブタジエン単量体単位からなる群から選択される1種以上の単量体単位であり、
前記スチレン系樹脂(C)全体に対して前記ビニル系単量体単位(1)を0~50質量%含有する、スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリ乳酸(D)の含有量は、前記ゴム状重合体粒子(A)と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と、前記スチレン系樹脂(C)と、前記ポリ乳酸(D)との合計量100質量%に対して、0.5質量%以上55質量%以下である、請求項1に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、前記ゴム状重合体粒子(A)と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と、前記スチレン系樹脂(C)と、前記ポリ乳酸(D)との合計量100質量%に対して、0.5質量%以上56質量%以下である、請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、スチレン系単量体単位と炭素原子数1~6のアルキル鎖をエステル置換基として有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とを有し、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、前記スチレン系樹脂組成物全体に対して、0.1~8.0質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位は、アクリル酸n-ブチルである、請求項4に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ゴム状重合体粒子(A)は、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満のゴム状重合体粒子(x1)、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(x2)、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(x3)及び重量平均径2.5μm以上10μm以下のゴム状重合体粒子(x4)からなる群から選択される少なくとも2種以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル系単量体単位を有する共重合体を1種又は2種以上含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項8】
前記ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が多峰性を示す、請求項1~7のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項9】
インジェクションブロー成形用である、請求項1~8のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を成形してなる、成形体。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を押出成形してなる、シート体。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか1項に記載のスチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、射出成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体、射出成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、軽量であり、且つ成形容易性であるといった特性を備えていることから、発泡体、シート、又は筐体等として様々な産業分野に使用されている。
近年、石油資源の枯渇問題又は炭酸ガス排出増加に伴う地球温暖化問題の観点から、「カーボンニュートラル」な材料として、ポリ乳酸をはじめとするバイオマス由来の材料が注目されている。このようなバイオマス由来の材料をスチレン系樹脂に配合(ポリマーアロイ)して使用することにより、スチレン系樹脂の使用量を削減することが可能であり、また、このようなスチレン系樹脂とのポリマーアロイが近年種々検討されている。特に最近のように積極的に力を担う構造材料又は工業材料用途として高分子が使用されると、弾性率等の剛性をいかに低下させずに耐衝撃性を改良するかが重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、耐衝撃性スチレン系樹脂(A)と、スチレン-アクリル酸エステル共重合体(B)と、ポリ乳酸(C)とを混合した、成形性及び耐油性に優れた発泡シートが提案されている。また、特許文献2では、(A)スチレン系樹脂と、ポリ乳酸(B)と、(C)ブタジエンとエチレン性不飽和カルボン酸エステルの共重合体とを含有する、耐衝撃性に優れた樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016-098489号公報
【文献】特開2016-199654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、耐衝撃性スチレン系樹脂(A)を含有しているものの、ポリ乳酸の欠点である既存の石油系プラスチックに比べて耐衝撃性が低い点は検討されていない。一方、特許文献2の樹脂組成物は、耐衝撃性については着目しているが、剛性等を低下させずに耐衝撃性を改良する点については検討されていない。
【0006】
そこで、本開示の目的は、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立させたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体又は射出成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。
[1]本開示は、ゴム状重合体粒子(A)と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と、スチレン単量体単位(c1)及び当該スチレン単量体単位(c1)と共重合可能なビニル系単量体単位(1)を有するスチレン系樹脂(C)と、ポリ乳酸(D)とを含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂組成物に含有される前記ゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径が0.3μm以上8μm以下であり、
前記ビニル系単量体単位(1)は、アクリルアミド単量体単位、メタクリルアミド単量体単位、N-マレイミド単量体単位、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位、N-フェニルマレイミド単量体単位、酢酸ビニル単量体単位、プロピオン酸ビニル単量体単位、バーサチック酸ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、プロピレン単量体単位、イソプレン単量体単位及びブタジエン単量体単位からなる群から選択される1種以上の単量体単位であり、
前記スチレン系樹脂(C)全体に対して前記ビニル系単量体単位(1)を0~50質量%含有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0008】
[2]本実施形態において、前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上であることが好ましい。
【0009】
[3]本実施形態において、前記ゴム状重合体粒子(A)は、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満のゴム状重合体粒子(x1)、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(x2)、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(x3)及び重量平均径2.5μm以上10μm以下のゴム状重合体粒子(x4)からなる群から選択される少なくとも2種以上であることが好ましい。
【0010】
[4]本実施形態において、前記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル系単量体単位を有する共重合体を1種又は2種以上含有することが好ましい。
【0011】
[5]本実施形態に係るスチレン系樹脂組成物は、インジェクションブロー成形用であることが好ましい。
【0012】
[6]本実施形態において、前記ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が多峰性を示すことが好ましい。
【0013】
[7]本実施形態は、上記スチレン系樹脂組成物を成形してなる、成形体である。
【0014】
[8]本実施形態は、上記スチレン系樹脂組成物を押出成形してなる、シート体である。
【0015】
[9]本実施形態は、上記スチレン系樹脂組成物を射出成形してなる、射出成形体である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立させたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体又は射出成形体を提供することができる。
本開示によれば、成形性に優れたスチレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体、シート体又は射出成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、四酸化オスミウムで染色した実施例7のスチレン系樹脂組成物から作製した厚さ100nmの超薄切片の透過電子顕微鏡画像である(倍率10000倍)。
図2図2は、四酸化オスミウムで染色した実施例7のスチレン系樹脂組成物から作製した厚さ100nmの超薄切片の透過電子顕微鏡画像であり(倍率10000倍)、当該透過電子顕微鏡画像を大津の手法で二値化した画像である。
図3図3(a)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示した場合における、参考例のHIPS樹脂に含まれるゴム状重合体粒子の粒子径分布を表すヒストグラムである。図3(b)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値を表示した場合における、参考例のHIPS樹脂に含まれるゴム状重合体粒子の円相当径を積算した積分分布曲線である。
図4図4(a)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示した場合における、実施例7のスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布を表すヒストグラムである。図4(b)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値を表示した場合における、実施例7のスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A)円相当径を積算した積分分布曲線である。
図5図5は、図3(b)と図4(b)とを重ね合わせた積分分布曲線である。
図6図6は、濃度既知の組成物中のアクリル酸ブチル単量体単位の量の測定を示すフローチャートである。
図7図7は、濃度未知の組成物中のアクリル酸ブチル単量体単位の量の測定を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本開示の範囲は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0019】
[スチレン系樹脂組成物]
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ゴム状重合体粒子(A)(以下、(A)成分とも称する)と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)(以下、(B)成分とも称する。)と、スチレン系樹脂(C)(以下、(C)成分とも称する。)と、ポリ乳酸(D)(以下、(D)成分とも称する。)と、を含有し、前記ゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径が、0.3μm以上8μm以下であることを特徴とする。スチレン系樹脂組成物全体として(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を含有し、且つゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径が特定の範囲であることにより、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立することができる。本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物を構成する各成分について以下説明する。
【0020】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ゴム状重合体粒子(A)を含有する。スチレン系樹脂組成物がゴム状重合体粒子(A)を含有することにより、耐衝撃性等の機械的特性を向上することができる。
【0021】
本実施形態におけるゴム状重合体粒子(A)は、ゴム状重合体を含有する粒子体であればよい。したがって、ゴム状重合体粒子(A)の形態は、ゴム状重合体からなる中実粒子、ゴム状重合体からなる中空粒子、ゴム状重合体内にスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、並びに表面にスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)がグラフトされた表面グラフト化粒子を含む。また、これらの形態を複合的に備えてもよい。ゴム状重合体粒子(A)の好ましい形態としては、ゴム状重合体からなる中実粒子の表面にスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)がグラフトされた表面グラフト化粒子、ゴム状重合体内にスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)の表面に対して、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)がグラフトされた表面グラフト化内包粒子が挙げられる。これらのうち、ゴム状重合体粒子(A)としては、上述した、表面グラフト化粒子、内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、及び表面グラフト化内包粒子が好ましい。
【0022】
また、上記内包粒子は、以下の(1)~(3)の構造を含む。
(1)スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が、スチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル系単量体単位を有するブロック共重合体、或いはスチレン系単量体単位及び(メタ)アクリル系単量体単位以外のその他単量体(例えば、共役ジエン構造を有する単量体)単位を有するブロック共重合体(一部又は全部水添された共重合体を含む)であり、且つこれらブロック共重合体から形成されるミクロ相分離構造、
(2)スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相をコアとし、ゴム状重合体をシェルとするコアシェル構造体、
(3)スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相がゴム状重合体内に複数内包したサラミ型構造
尚、上記ゴム状重合体を含有する粒子体とは、ゴム状重合体粒子(A)全体の5質量%以上をゴム状重合体が占めていることをいう。
【0023】
本実施形態において、スチレン系樹脂(C)の全部又は一部として、ゴム状重合体粒子(A)を含有する樹脂を選択してもよい。より詳細には、スチレン系樹脂(C)の全部又は一部として、後述するHIPS樹脂などのゴム変性スチレン系樹脂(スチレン系樹脂を含むマトリックス樹脂中にゴム状粒子が分散したもの)を使用する場合、当該ゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状粒子がゴム状重合体粒子(A)である形態を、本開示は含む。また同様に、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の全部又は一部として、ゴム状重合体粒子(A)を含有する樹脂を選択してもよい。より詳細には、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の全部又は一部として、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)のマトリックス樹脂中にゴム状粒子が分散したゴム状粒子分散樹脂を使用する場合、当該ゴム状粒子分散樹脂に含まれるゴム状粒子が、ゴム状重合体粒子(A)である形態も本開示は含む。
【0024】
但し、上述したスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)自体がゴム状重合体粒子(A)を含む形態の場合、本明細書では、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)中に含まれるゴム状重合体粒子(A)の含有量は、ゴム状重合体粒子(A)として独立に換算する。言い換えると、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)及びスチレン系樹脂(C)のそれぞれ含有量に関しては、スチレン系樹脂(C)及びスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)のそれぞれから、ゴム状重合体粒子(A)の含有量を引いた値として換算する。
【0025】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、全ゴム状重合体粒子(A)の含有量の上限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、55質量%以下、52質量%以下、51質量%以下、50質量%以下、48質量%以下、46質量%以下、44質量%以下、42質量%以下、40質量%以下、39質量%以下、38質量%以下、37質量%以下、36質量%以下、35.3質量%以下、35質量%以下、34質量%以下、33.8質量以下、33質量%以下、32質量%以下、31.5質量%以下、31質量%以下、30質量%以下、29.5質量%以下、29.3質量%以下、29質量%以下、28.7質量%以下、28.3質量%以下、27.3質量%以下が好ましい。
ゴム状重合体粒子(A)の含有量が55質量%以下であると、より優れた剛性を発揮できる。
一方、本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、全ゴム状重合体粒子(A)の含有量の下限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、5質量%以上、5.4質量%以上、6質量%以上、6.6質量%以上、7質量%以上、7.3質量%以上、8質量%以上、8.6質量%以上、9質量%以上、9.4質量%以上、9.9質量%以上、10質量%以上、10.3質量%以上、11質量%以上、12質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、14.1質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上が好ましい。これらの上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
ゴム状重合体粒子(A)の含有量が5質量%以上であると、より優れた耐衝撃性を発揮できる。
【0026】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体粒子(A)の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、5質量%以上55質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上55質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上45質量%以下、よりさらに好ましくは10質量%以上35質量%以下、さらにより好ましくは15質量%以上35質量%以下、特に好ましくは16質量%以上30質量%以下である。当該含有量を5質量%以上55質量%以下とすることにより、優れた耐衝撃性及び剛性を両立しやすくなる。ゴム状重合体粒子(A)の含有量が8質量%以上55質量%以下であると、より優れた耐衝撃性及び剛性を両立できる。
【0027】
尚、本明細書において、ゴム状重合体粒子(A)の含有量の算出方法は、以下のクロロホルム不溶分の測定方法を用いている。
沈殿管にゴム状重合体粒子(A)を含む樹脂又は樹脂組成物1gを精秤した。当該精秤したゴム状重合体粒子(A)を含む樹脂又は樹脂組成物の質量をW1とする。そして、クロロホルム20ミリリットルを加え23℃で2時間振とう後、遠心分離機((株)佐久間製作所製SS-2050A(ローター:6B-N6L))にて4℃以下、20000rpm(遠心加速度45100G)で60分間遠心分離する。内部の沈殿物が落下しないように、沈殿管を約45度にゆっくり傾け、上澄み液をデカンテーションして取り除く。その後、クロロホルムを含んだ不溶分を160℃、3kPa以下の条件で1時間真空乾燥し、デシケータ内で室温まで冷却後、クロロホルム不溶分の質量を精秤し、当該室温まで冷却後のクロロホルム不溶分の質量をW2とする。そして、下記数式(1)により、クロロホルム不溶分を求める。
クロロホルム不溶分(%)=(W2/W1)×100 数式(1)
本明細書において、以上により算出したクロロホルム不溶分を、各種樹脂又はスチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A)の含有量としている。
【0028】
ゴム状重合体粒子(A)(或いはゴム状重合体)に用いる材料としては、共役ジエン構造を有していればよく、例えば、ポリブタジエン(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)又はスチレン-ブタジエン共重合体(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、ポリブタジエンは、ポリブタジエンの一部又は全部にスチレン-ブタジエン共重合体及び/又はアクリロニトリル-ブタジエン共重合体を有してもよい。スチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体粒子(A)は1種若しくは2種以上使用することができる。
【0029】
また、上記ブタジエン系ゴム(ポリブタジエン(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体(ポリスチレン等のスチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を内包した形態を含む)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体)を水素添加した飽和ゴムをゴム状重合体粒子(A)として使用してもよい。
なお、スチレン系樹脂組成物全体の成形性を重視する場合、ゴム状重合体粒子(A)又は本実施形態のスチレン系樹脂組成物中にはアクロニトリル単量体単位、メタクリロニトリル単量体等のシアン化ビニル系単量体を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、スチレン系樹脂組成物の総量に対して、シアン化ビニル系単量体が10質量%以下含有することが好ましく、5質量%以下含有することがより好ましく、2質量%以下含有することがさらに好ましい。
【0030】
スチレン系樹脂(C)がHIPS樹脂である場合、当該HIPS樹脂に含まれるゴム状粒子をゴム状重合体粒子(A)としてもよい。当該HIPS樹脂に含まれるゴム状粒子をゴム状重合体粒子(A)とする場合、ゴム状重合体粒子(A)は、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンであることが好ましい。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
【0031】
尚、該ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス1,4、トランス1,4、又はビニル1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
【0032】
また、該ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0033】
尚、共役ジエン構造を有する単量体としては、特に制限されることはなく、ブタジエン、イソプレン、又はクロロプレンなどが挙げられる。
【0034】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径は、0.3μm以上8μm以下である。スチレン系樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A)全体(又は全ゴム状重合体粒子(A)とも称する。)の重量平均径が、上記特定の範囲内である態様としては、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が多峰性を示す、及び/又は、ゴム状重合体粒子(A)が、当該ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布を積分した積分分布曲線において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が20%の20%径(d20%)と、頻度の積算値が80%の80%径(d80%)との差(以下、d80%-d20%と称する)が、0.8μm以上であることが好ましい。これにより、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立しやすくなる。その理由の詳細は不明であるが、以下の機構により、優れた耐衝撃性と、当該優れた耐衝撃性とトレードオフの関係になる高剛性とが両立しやすくなると現在考えている。
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径が0.3μm以上8μm以下であり、且つ、重量平均径又は円相当径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)が、スチレン系樹脂組成物のマトリックス樹脂内に(分散して)存在する場合、当該ゴム状重合体粒子(A)が存在するマトリックス樹脂中では応力場が不均一となる。これにより、種々の重量平均径又は円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)周囲で局部的な変形(せん断降伏変形及び/又はクレーズ変形)が粒子間をつなぐように引き起こされ、複数種のゴム状重合体粒子(A)が外部エネルギーを吸収するため、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立することができると推定している。
【0035】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、当該組成物中に、重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)を有し、かつ当該重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布(例えば、粒子径分布のモード値)が、所定の間隔で離間するよう制御されていることが好ましい。これにより、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が多峰性を示すことが好ましい。
ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が多峰性を示す例として、ゴム状重合体粒子(A1)及びゴム状重合体粒子(A2)と称する重量平均径が互いに異なる2種のゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が、所定の間隔離間するよう制御されている組成物を一例として以下説明する。尚、上記(A1)及び上記(A2)は説明の便宜上の名称である。
【0036】
ゴム状重合体粒子(A1)及びゴム状重合体粒子(A2)のそれぞれの粒子の形状を円と仮定し、且つ横軸に円相当径を表示し、そして縦軸に頻度(%)を表示する粒子径分布において、一方のゴム状重合体粒子(A1)の山形の粒子径分布のモード値を示す凸部が、他方のゴム状重合体粒子(A2)の山形の粒子径分布内に包含されること無く存在すると、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布が2峰性を示すことが確認できる。換言すると、「粒子径分布が2峰性を示す」とは、一方のゴム状重合体粒子(A1)の山形の粒子径分布のモード値と、他方のゴム状重合体粒子(A2)の山形の粒子径分布のモード値との2つのモード値が分離して観察されるように、重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A1)及びゴム状重合体粒子(A2)がゴム状重合体粒子(A)として組成物中に存在することをいう。また、後述の実施例7の図4(a)を用いて、「多峰性」の一例を示す。図4(a)は、横軸が円相当径を示し、かつ縦軸が頻度(%)を示す粒子径分布である。そして、当該頻度(%)は、組成物中に存在する全ゴム状重合体(A)中に占めるそれぞれの円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積の割合(体積分率)(%)である。当該図4(a)の粒子径分布から、複数のモード値(本明細書では、ピーク又は極大値とも称する。)を示す凸部が確認できる。尚、後述の数式(N1)を用いて、測定した円相当径及び個数から、個数基準の重量平均径が算出される。
【0037】
以上のことから、「粒子径分布が多峰性を示す」とは、ゴム状重合体粒子(A)の山形の粒子径分布のモード値が2以上分離して観測されるように、異なる重量平均径を有する2種以上のゴム状重合体粒子(A)が組成物中に存在することをいう。さらに、「モード値が分離」とは、2以上のモード値を有する粒子径分布において、当該2つのモード値の間に極小値が存在することをいう。例えば、図4(a)で示されるように、粒子径分布のヒストグラムには、長周期的なうねりと、短周期的なうねりとが混在するため、ヒストグラムのみから山の数を一義的に決定することは難しい。そのため、2つのモード値の間に極小値が存在しているか否かの判別が難しい場合は、2つのモード値に対応するそれぞれの円相当径が、0.1μm以上離れていれば「モード値が分離している」としてもよい。尚、本実施形態において、多峰性とは、2峰性以上を示すものであればよく、スチレン系樹脂組成物内に存在する重量平均径が異なるゴム状重合体粒子(A)の種類数と、観測されるモード値の数(凸部の数)とは一致しなくともよい。また、本明細書における「異なる重量平均径を有する2種以上のゴム状重合体粒子(A)」とは、重量平均径が互いに異なるゴム状重合体粒子が2以上をいい、ゴム状重合体粒子の材質異同を問わない。
【0038】
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径が0.05μm以上10μm以下において多峰性を示すことが好ましい。これにより、優れた耐衝撃性及び高剛性がより両立しやすくなる。
【0039】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、上述の通り、重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)を含有することが好ましい。これら重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)の材質は、それぞれ同一の成分組成であっても、或いは異なる成分組成であってもよい。また、「2種以上の重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)」とは、重量平均径又は材質が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子をいう。
【0040】
本明細書において、ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径は、以下の方法により測定している。四酸化オスミウムで染色したスチレン系樹脂組成物から厚さ100nmの超薄切片を作製し、透過電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の明視野像を取得する。所得した画像中、黒く染色された粒子がゴム状重合体粒子(A)である。前記画像から、下記数式(N1):
重量平均径=ΣniDri /ΣniDri (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体粒子(A)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径とする。上記解析は、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて次の通り実施する。取得した前記画像を大津の手法(Otsu metod)で二値化し、ゴム状重合体粒子(A)以外の白部分(マトリックス部(例えば、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)又はスチレン系樹脂(C))に相当)を塗りつぶす。隣接接触しているゴム状重合体粒子(A)同士をWatershed処理により分割し、ゴム状重合体粒子(A)の面積を算出後、円相当径に換算した。得られた円相当径の数値群から体積基準、個数基準のヒストグラム及び平均値を導出する。本明細書では、円相当径の数値群から個数基準のヒストグラムを算出した結果を使用している。尚、使用した装置等は以下の通りである。
ウルトラミクロトーム:UC7/ライカ
透過電子顕微鏡:HT7700/日立ハイテクノロジーズ
また、上記のゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の測定方法は、スチレン系樹脂組成物中に含有されるゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径の測定方法である。
【0041】
一方、ゴム状重合体粒子(A)単独の重量平均径の測定方法、すなわちスチレン系樹脂組成物中に含まれる複数種のゴム状重合体粒子(A)のそれぞれの種類の重量平均径の測定方法は、以下の方法により測定している。
スチレン系樹脂組成物として他の成分と混合する前に予め、各重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)10質量部それぞれを個別にマトリックス樹脂(ポリスチレン(PSJ-ポリスチレン680 PSジャパン社製))90質量部と溶融混練して溶融混練物を作製した後、四酸化オスミウムで染色した溶融混練物から作製した厚さ100nmの超薄切片を用い、上記のスチレン系樹脂組成物中に含有するゴム状重合体粒子(A)の重量平均径と同様の方法により重量平均径を算出している。
【0042】
さらには、スチレン系樹脂組成物の原料自体が、既にゴム状重合体粒子(A)がマトリックス樹脂中に分散されている場合(例えば、HIPS樹脂等)、ペレット状のまま四酸化オスミウムで染色した後、厚さ100nmの超薄切片を作製して、上記のスチレン系樹脂組成物中に含有するゴム状重合体粒子(A)の重量平均径と同様の方法で重量平均径を算出している。
【0043】
本明細書において、「粒子径分布」とは、横軸に円相当径を示し、縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を示す場合における、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布をいう。粒子径分布の一例としては、例えば、図3(a)及び図4(a)のヒストグラムが挙げられる。
【0044】
本明細書において、「積分分布曲線」とは、横軸に円相当径を示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%)の積算値)を表示した場合における、ゴム状重合体粒子(A)の円相当径を積算した曲線をいう。また、積分分布曲線は、前記粒子径分布を積分した関数である。積分分布曲線の一例としては、例えば、図3(b)及び図4(b)が挙げられる。
【0045】
尚、体積分率は、上述した重量平均径の測定の際に得られたゴム状重合体粒子(A)を球体とみなしたときの体積の割合を示したものである。
【0046】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、2種以上の重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)を含有することが好ましい。本実施形態において、重量平均径が互いに異なる2種以上のゴム状重合体粒子(A)を含有する場合、横軸に円相当径を表示し、且つ縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示する、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるそれぞれのゴム状重合体粒子(A)の円相当径は、0.05μm以上1μm未満の範囲と、1μm以上10μm以下の範囲との間にそれぞれ少なくとも一つの極大値(モード値)を有することが好ましい。換言すると、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるそれぞれのゴム状重合体粒子(A)の重量平均径は、0.05μm以上1μm未満の範囲と、1μm以上10μm以下の範囲とにそれぞれ有することが好ましい。
【0047】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、少なくとも3種の重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)を含有することが好ましい。重量平均径が互いに異なる3種以上のゴム状重合体粒子(A)を含有する場合、本実施形態のスチレン系樹脂組成物中に分散するゴム状重合体粒子(A)は、横軸に円相当径を表示し、且つ縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示する、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布において、円相当径0.05μm以上1μm未満と、円相当径1μm以上2.5μm未満と、円相当径2.5μm以上10μm以下に、それぞれ少なくとも一つの極大値を有することが好ましい。少なくとも3つの極大値(モード値)を有すると優れた耐衝撃性と高剛性とを両立する効果がより発揮される。換言すると、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるそれぞれのゴム状重合体粒子(A)の重量平均径は、0.05μm以上1μm未満の範囲と、1μm以上2.5μm未満の範囲と、2.5μm以上10μm以下とにそれぞれ有することが好ましい。
【0048】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、少なくとも4種の重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)を含有することが好ましい。重量平均径が互いに異なる4種以上のゴム状重合体粒子(A)を含有する場合、本実施形態のスチレン系樹脂組成物中に分散するゴム状重合体粒子は、横軸に円相当径を表示し、且つ縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示する、ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布を表すヒストグラムにおいて、円相当径0.05μm以上0.5μm未満と、円相当径0.5μm以上1μm未満と、円相当径1μm以上2.5μm未満と、円相当径2.5μm以上10μm以下に、それぞれ少なくとも4つの極大値(モード値)を有することが好ましい。少なくとも4つの極大値(モード値)を有すると優れた耐衝撃性と高剛性とを両立する効果がより発揮される。換言すると、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれるそれぞれのゴム状重合体粒子(A)の重量平均径は、0.05μm以上0.5μm未満の範囲と、0.5μm以上1μm未満の範囲と、1μm以上2.5μm未満の範囲と、2.5μm以上10μm以下とにそれぞれ有することが好ましい。
【0049】
尚、上述した極大値(モード値)のそれぞれが他の粒子径分布(曲線)と重なりあって全て観察できない場合が存在する。しかし、本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物では、少なくとも2つの極大値(モード値)を示すことが好ましく、少なくとも3つの極大値(モード値)を示すことがより好ましく、少なくとも4つの極大値(モード値)を示すことがさらに好ましい。
【0050】
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の下限は、0.3μm以上、0.4μm以上、0.43μm以上、0.5μm以上、0.52μm以上、0.57μm、0.62μm以上、0.68μm以上、0.7μm以上、又は0.73μm以上であることが好ましい。当該全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の上限は、8μm以下、7.4μm以下、7μm以下、6.6μm以下、6μm以下、5.7μm以下、5.2μm以下、5μm以下、4.8μm以下、4.3μm以下、又は4μm以下であることが好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径は、0.3μm以上8μm以下である。また、当該重量平均径の好ましい範囲は、0.5μm以上6μm以下であることがより好ましく、0.7μm以上4μm以下であることがさらに好ましい。また、別の重量平均径の好ましい範囲の態様としては、0.73μm以上8μm以下であることが好ましい。
全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の上限値が8μmを超えると、剛性が低下する傾向を示す。また、全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の下限値が0.3μm未満であると、均質な耐衝撃性を発揮しがたくなる傾向を示す。
この全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径とは、スチレン系樹脂組成物中に存在する、互いに重量平均径又は円相当径が異なる複数種のゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径であり、例えば、図4(a)に示されるスチレン系樹脂組成物中の複数種のゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布(横軸:円相当径、縦軸:頻度)から、上記の方法及び数式(N1)から算出した。
【0051】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体粒子(A)は、当該ゴム状重合体粒子(A)の粒子径分布を積分した積分分布曲線において、頻度(%)の積算値(以下、積算値と称する)が20%の20%径(d20%)と、頻度の積算値が80%の80%径(d80%)との差(以下、d80%-d20%と称する)が、0.8μm以上であることが好ましく、0.8μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.85μm以上1.95μm以下であることがさらに好ましく、0.9μm以上1.9μm以下であることが特に好ましい。20%径(d20%)が2μm以下であると、成形性が向上する。
【0052】
優れた耐衝撃性、及び耐折れ性の観点から、d80%-d20%が、0.8μm以上であることが好ましい。また、ここでいう、頻度(%)の積算値が80%の場合の80%径(d80%)及び頻度(%)の積算値が20体積%の場合の20%径(d20%)は、横軸が円相当径であり、且つ縦軸が頻度(%)の積算値(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%)の積算値)を表示する積分分布曲線において、積算値がそれぞれ20%及び80%に対応する重量平均径をいう。一例として、図4(b)の場合の積分分布曲線における、積算値が80%の80%径(d80%)と、積算値が20%の20%径(d20%)とを図に示す。したがって、「ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)」とは、ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線において、当該積分分布曲線の縦軸である頻度(%)の積算値が20%の場合の円相当径をいう。
【0053】
ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線において、(縦軸の)積算値が80%の80%径(d80%)としては、0.5μm以上が好ましく、1μm以上8μm以下が好ましく、1.05μm以上6μm以下がより好ましい。
【0054】
ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線において、(縦軸の)積算値が20%の20%径(d20%)としては、2μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2μm以下がより好ましく、0.25μm以上1.95μm以下がさらに好ましく、0.3μm以上1.9μm以下がよりさらに好ましい。20%径(d20%)が0.2μm以上であると、成形性が向上する。また、(縦軸の)積算値が20%の20%径(d20%)の別の態様としては、0.34μm以上2μm以下が好ましい。
【0055】
尚、本明細書における成形性とは、糸引き又は離型性を言う。本明細書では、糸引きとは、樹脂の(射出)成形において、金型が成形後に開く際、固化しきらない樹脂が糸状に長く伸びることをいう。そして、離型性とは、一般的には、密着面の離れやすさをいい、離型性に優れるとは、糸引き以外の粘着又は焼き付きが、成形体又は型の表面に生じにくいことをいう。離型性に優れていても、糸引きが発生する場合が散見され、糸引きした樹脂が金型又は製品に付着すると、成形不良あるいは金型の破損等のトラブルに繋がるため、本開示では、離型性とは別に糸引きを評価している。
【0056】
80%-d20%を0.8μm以上にコントロールする条件としては、所定の重量平均径を有するゴム状重合体粒子の選定又は混合、及び重合時の撹拌条件、重合開始剤などが挙げられる。
【0057】
本実施形態のゴム状重合体粒子(A)全体(100体積%)に対して、重量平均径1μm未満のゴム状重合体粒子(A)が3~40体積%、重量平均径1μm以上のゴム状重合体粒子(A)が60~97体積%を占めることが好ましい。
【0058】
本実施形態のゴム状重合体粒子(A)全体(100体積%)に対して、重量平均径1μm未満のゴム状重合体粒子(A)が3~40体積%、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(A)が15~55体積%、重量平均径2.5μm以上のゴム状重合体粒子(A)が15~80体積%を占めることが好ましい。
【0059】
本実施形態のゴム状重合体粒子(A)全体(100体積%)に対して、重量平均径0.5μm未満のゴム状重合体粒子(A)が1~15体積%、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(A)が1~35体積%、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(A)が15~55体積%、重量平均径2.5μm以上のゴム状重合体粒子(A)が15~80体積%を占めることが好ましい。
【0060】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体粒子(A)は、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満のゴム状重合体粒子(x1)、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(x2)、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(x3)及び重量平均径2.5μm以上10μm以下のゴム状重合体粒子(x4)からなる群から選択される少なくとも2種であることが好ましく、少なくとも3種であることがより好ましく、少なくとも4種であることが好ましい。
【0061】
上記ゴム状重合体粒子(x1)の好ましい重量平均径の範囲は、より好ましくは0.1μm以上0.45μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.4μm以下である。
【0062】
上記ゴム状重合体粒子(x2)の好ましい重量平均径の範囲は、より好ましくは0.55μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.6μm以上0.9μm以下である。
【0063】
上記ゴム状重合体粒子(x3)の好ましい重量平均径の範囲は、より好ましくは1.05μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.1μm以上2.3μm以下である。
【0064】
上記ゴム状重合体粒子(x4)の好ましい重量平均径の範囲は、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下である。
【0065】
重量平均径の範囲が異なるゴム状重合体粒子を2種以上含有することにより、d80%-d20%が、0.8μm以上を満たしやすくなる、又はスチレン系樹脂組成物全体の粒子径分布がより多峰性を示し易くなるため、より優れた耐衝撃性と、高剛性とを両立することができる。尚、上述のゴム状重合体粒子(x1)~(x4)は、それぞれ別個独立して、ゴム状重合体粒子(A)の好ましい形態の一例であるため、上述したゴム状重合体粒子(A)の実施形態を適用することができる。また、上述のゴム状重合体粒子(x1)~(x4)は互いに区別するため、便宜上設けた名称である。したがって、ゴム状重合体粒子(x1)~(x4)はそれぞれ、同一の樹脂組成であっても、或いは異なる樹脂組成であってもよい。
【0066】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ゴム状重合体粒子(A)の好ましい形態としては、以下の実施形態(I)~(VIII)が挙げられる。また、以下の表面グラフト化内包粒子(a1)~(a24)はそれぞれ別個独立して、ゴム状重合体粒子(A)の好ましい形態の一例であり、上述したゴム状重合体粒子(A)の実施形態を適用することができる。そして、表面グラフト化内包粒子(a1)~(a24)は互いに区別するため、便宜上設けた名称である。さらに、本実施形態として、以下の表面グラフト化内包粒子(a1)~(a24)を用いる態様であると、d80%-d20%が0.8μm以上である条件、又は多峰性を満たしやすくなる。
【0067】
なお、以下の実施形態(I)~(VIII)では、異なる重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)同士の粒子径分布が重なる場合を含む。しかし、以下の実施形態(I)~(VIII)から、スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径が、0.3μm以上8μm以下でない条件は、本開示の範囲から除かれることは言うまでもない。また、d80%-d20%が0.8μm以上でない条件、又は多峰性を示さない組み合わせ条件も本開示の範囲から除かれることが好ましい。さらには、以下の実施形態(I)~(VIII)の条件を満たす限り、スチレン系樹脂組成物に更に別のゴム状重合体粒子(A)を1種又は2種以上含有してもよい。
【0068】
本実施形態(I)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子を2種有し、一方が、好ましくは0.05μm以上1μm未満の範囲、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.9μm以下の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a1)であり、他方が、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1.1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a2)である形態が好ましい。
【0069】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a1)は、3~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a2)は、60~97質量%含有することが好ましく、65~95質量%含有することがより好ましい。
【0070】
本実施形態(II)において、ゴム状重合体粒子(A)として、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子を2種有し、一方が、好ましくは0.05μm以上1μm未満の範囲、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a3)であり、他方が、好ましくは1.01μm以上10μm以下、より好ましくは1.1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a4)である形態が好ましい。
【0071】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a3)は、3~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a4)は、60~97質量%含有することが好ましく、65~95質量%含有することがより好ましい。
【0072】
本実施形態(III)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a5)が1種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a6)が1種と、を有し、前記表面グラフト化内包粒子(a5)は、好ましくは1.01μm以上10μm以下、より好ましくは1.1μm以上8μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有し、前記表面グラフト化内包粒子(a6)は、好ましくは0.05~1μm未満の範囲、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する形態が好ましい。
【0073】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a5)は、60~97質量%含有することが好ましく、65~97質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a6)は、3~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。
【0074】
本実施形態(IV)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が2種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a7)が1種と、を有し、前記2種の表面グラフト化内包粒子の一方が、好ましくは1.01μm以上2.5μm未満、より好ましくは1.1μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上2.3μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a8)であり、他方が、好ましくは2.5μm以上10μm以下、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a9)であり、且つ前記表面グラフト化内包粒子(a7)は、好ましくは0.05μm以上1μm以下、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.l5μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する形態が好ましい。
【0075】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a7)は、3~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a8)は、15~55質量%含有することが好ましく、18~52質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a9)は、15~80質量%含有することが好ましく、18~77質量%含有することがより好ましい。
【0076】
本実施形態(V)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a10)が1種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が2種と、を有し、前記表面グラフト化内包粒子(a10)は、好ましくは2.5μm以上10μm以下、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有し、且つ前記2種の表面グラフト化内包粒子の一方が、好ましくは0.05μm以上1μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a11)であり、他方が、好ましくは1.01μm以上2.5μm未満、より好ましくは1.1μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上2.3μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a12)である形態が好ましい。
【0077】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a10)は、15~80質量%含有することが好ましく、18~77質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a11)は、3~40質量%含有することが好ましく、5~35質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a12)は、15~55質量%含有することが好ましく、18~52質量%含有することがより好ましい。
【0078】
本実施形態(VI)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が2種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が2種と、を有し、前者の2種の表面グラフト化内包粒子の一方が、好ましくは1.01μm以上2.5μm未満、より好ましくは1.05μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.1μm以上2.3μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a13)であり、他方が、好ましくは2.51μm以上10μm以下、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a14)であり、且つ後者の2種の表面グラフト化内包粒子の一方が、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.45μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.4μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a15)であり、他方が、好ましくは0.51μm以上1μm未満、より好ましくは0.55μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.60μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a16)である形態が好ましい。
【0079】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a13)は、15~55質量%含有することが好ましく、18~52質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a14)は、15~80質量%含有することが好ましく、18~77質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a15)は、1~15質量%含有することが好ましく、1.5~14質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a16)は、1~35質量%含有することが好ましく、1.5~34質量%含有することがより好ましい。
【0080】
本実施形態(VII)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a17)が1種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が3種と、を有し、前記表面グラフト化内包粒子(a17)は、好ましくは2.51μm以上10μm以下、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有し、且つ前記3種の表面グラフト化内包粒子のうち、重量平均径が小さい順から、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.45μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.4μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a18)と、好ましくは0.51μm以上1μm未満、より好ましくは0.55μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.6μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a19)と、好ましくは1.01μm以上2.5μm未満、より好ましくは1.1μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上2.3μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a20)とを有する形態が好ましい。
【0081】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a17)は、15~80質量%含有することが好ましく、18~77質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a18)は、1~15質量%含有することが好ましく、1.5~14質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a19)は、1~35質量%含有することが好ましく、1.5~34質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a20)は、15~55質量%含有することが好ましく、18~52質量%含有することがより好ましい。
【0082】
本実施形態(VIII)において、ゴム状重合体粒子(A)として、ポリスチレンが表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内にスチレン系樹脂(C)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子が3種と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が表面にグラフトした、ポリブタジエン又はポリブタジエン-スチレン共重合体内に、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含む相が内包された表面グラフト化内包粒子(a21)が1種と、を有し、前記表面グラフト化内包粒子(a21)は、好ましくは0.05μm以上0.5μm未満、より好ましくは0.1μm以上0.45μm以下、さらに好ましくは0.15μm以上0.4μm以下の範囲の重量平均径を有し、且つ前記3種の表面グラフト化内包粒子のうち、重量平均径が小さい順から、好ましくは0.51μm以上1μm未満、より好ましくは0.55μm以上0.95μm以下、さらに好ましくは0.6μm以上0.9μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a22)と、好ましくは1.01μm以上2.5μm未満、より好ましくは1.1μm以上2.4μm以下、さらに好ましくは1.2μm以上2.3μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a23)と、好ましくは2.51μm以上10μm以下、より好ましくは2.6μm以上8μm以下、さらに好ましくは2.7μm以上6μm以下の範囲の重量平均径を有する表面グラフト化内包粒子(a24)とを有する形態が好ましい。
【0083】
この場合、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a21)は、1~15質量%含有することが好ましく、1.5~14質量%含有することがより好ましい。同様に、本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a22)は、1~35質量%含有することが好ましく、1.5~34質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a23)は、15~55質量%含有することが好ましく、18~52質量%含有することがより好ましい。本実施形態において、スチレン系樹脂組成物全体(100質量%)に対して、表面グラフト化内包粒子(a24)は、15~80質量%含有することが好ましく、18~77質量%含有することがより好ましい。
【0084】
尚、上記表面グラフト化内包粒子(a1)、(a2)、(a5)、(a8)~(a10)、(a13)、(a14)、(a17)、及び(a22)~(a24)はそれぞれ、同一の樹脂組成であっても、或いは異なる樹脂組成であってもよい。また、上記表面グラフト化内包粒子(a1)、(a2)、(a5)、(a8)~(a10)、(a13)、(a14)、(a17)、及び(a22)~(a24)は、スチレン系樹脂(C)の一例であるゴム変性スチレン系樹脂に含まれる態様であってもよい。
【0085】
さらには、上記表面グラフト化内包粒子(a3)、(a4)、(a6)、(a7)、(a11)(a12)、(a15)、(a16)、及び(a18)~(a21)はそれぞれ、同一の樹脂組成であっても、或いは異なる樹脂組成であってもよい。
【0086】
本実施形態において、ゴム状重合体粒子(A)の調製方法は特に制限されることは無く、公知の方法(例えば、乳化重合、懸濁重合等)を採用することができる。
【0087】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含有する。スチレン系樹脂組成物がスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を含有することにより、スチレン系樹脂(C)とポリ乳酸(D)との相容化の効果を奏する。特に、スチレン系樹脂(C)(例えば、ゴム変性スチレン系樹脂)及びスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と併用することにより、分散性が向上し、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立する相乗効果が発揮される。
【0088】
本明細書において、「スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)」は、スチレン系単量体単位(b1)と、(メタ)アクリル系単量体単位とを必須に含む共重合体である。当該(メタ)アクリル系単量体(単位)としては、(メタ)アクリル酸系単量体(単位)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体(単位)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)はそれぞれ、単独で使用してもよく、或いは2種以上混合して使用してもよい。本明細書では、「スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)」と、「スチレン系樹脂(C)」とを便宜上、区別している。すなわち、スチレン系単量体(単位)(b1)及び(メタ)アクリル系単量体(単位)を含む共重合体を「スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)」とし、「スチレン系樹脂(C)」は(メタ)アクリル系単量体(単位)を含まない重合体とする。
本明細書の(メタ)アクリル系単量体(単位)とは、「-HC=CH-C(=O)-O-」又は「-HC=C(CH)-C(=O)-O-」を有する、重合して重合体を形成可能な単量体(単位)をいう。
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、スチレン系単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル系単量体単位以外に、本実施形態の効果を損ねない範囲でスチレン系単量体(b1)又は(メタ)アクリル系単量体と共重合可能なビニル系単量体(2)を有してもよい。
当該ビニル系単量体(単位)(2)としては、アクリルアミド単量体(単位)、メタクリルアミド単量体(単位)、N-マレイミド単量体(単位)、N-シクロヘキシルマレイミド単量体(単位)、N-フェニルマレイミド単量体(単位)、酢酸ビニル単量体(単位)、プロピオン酸ビニル単量体単位、バーサチック酸ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、プロピレン単量体(単位)、イソプレン単量体(単位)及びブタジエン単量体(単位)からなる群から選択される1種以上の単量体(単位)であることが好ましい。
本実施形態におけるスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、アクロニトリル単量体単位、メタクリロニトリル単量体等のシアン化ビニル系単量体を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)100質量%に対するアクロニトリル単量体単位又はメタクリロニトリル単量体の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下含有することがより好ましく、2質量%以下含有することがさらに好ましい。スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)にアクロニトリル単量体単位を含有すると、スチレン系樹脂組成物の成形性が低下する傾向を示す。
【0089】
本明細書における「スチレン系単量体単位」とは、スチレン系単量体由来の繰り返し単位を意味し、より詳細には、スチレン系単量体が重合反応又は架橋反応により、当該単量体中の不飽和二重結合が単結合になった構造単位をいう。尚、他の「単量体単位」の意味も上記と同様の意味である。また、「単量体(単位)」は、単量体及び/又は単量体単位を意味する。さらに、スチレン系単量体(単位)(b1)は、(B)成分に含まれるスチレン系単量体(単位)をいい、スチレン系単量体(単位)(c1)は、(C)成分に含まれるスチレン系単量体(単位)をいう。
【0090】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の上限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、80質量%以下、74質量%以下、70質量%以下、63質量%以下、60質量%以下、56質量%以下、50質量%以下、44質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、24質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、2.7質量%以下、又は2.3質量%以下が好ましい。一方、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の下限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.7質量%以上、1質量%以上、1.2質量%以上、1.6質量%以上、9質量%以上、12質量%以上、19質量%以上、22質量%以上、25質量%以上、31質量%以上、40質量%以上又は42質量%以上が好ましい。これらの上限及び下限はそれぞれ任意に組み合わせできる。
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の上限値が80質量%を超えると、成形加工性が悪化する。一方、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の下限値が0.1質量%未満であると相溶性の効果を発揮し難くなる。
【0091】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量は、ゴム状重合体粒子(A)、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)、スチレン系樹脂(C)及びポリ乳酸(D)の合計質量100質量%に対して、好ましくは0.1質量以上80質量%以下、より好ましは0.2質量%以上74質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上63質量%以下、特に好ましくは1質量%以上40質量%以下である。
【0092】
光学特性、視認性の観点、特に光透過性を要求される用途に使用する場合、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の範囲を50質量%以上80質量%以下にすることが好ましい。また、成形加工性(流動性、低粘度性)の観点を重視する場合は、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の含有量の範囲を0.1質量%以上50質量%未満にすることが好ましい。
【0093】
本実施形態における(メタ)アクリル系単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体及び(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群から選択される1種又は2種以上の単量体であることが好ましい。
【0094】
本実施形態における成分(B)に使用する(メタ)アクリル酸系単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、無水フマル酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸等が挙げられる。
【0095】
本実施形態における成分(B)に使用する(メタ)アクリル酸エステル単量体は、炭素原子数1~6のアルキル鎖をエステル置換基として有する(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましい。この際、当該炭素原子数1~6のアルキル鎖は、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を含む。(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル及び(メタ)アクリル酸t-ブチルを含む)等が挙げられる。これらの中でも工業的の観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル((メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、及び(メタ)アクリル酸t-ブチルを含む)であることが好ましく、アクリル酸n-ブチル及びメタクリル酸n-ブチルであることがより好ましく、アクリル酸n-ブチルであることが特に好ましい。
成分(B)に使用する(メタ)アクリル酸エステル単量体としてアクリル酸n-ブチルを選択することにより、スチレン系樹脂を成形する際の割れを低減できる。
なお、本明細書において、“(メタ)アクリル酸ブチル単量体(単位)”は、メタクリル酸ブチル単量体(単位)及び/又はアクリル酸ブチル単量体(単位)を表す。また、“ブチル”は、n-ブチル、s-ブチル、イソブチル、及び(メタ)アクリル酸t-ブチルを包含する名称である。
【0096】
本実施形態における成分(B)に使用するスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。
【0097】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)において、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)全体におけるスチレン系単量体単位の含有量は、好ましくは20~99質量%であり、より好ましくは32~91質量%であり、更により好ましくは45~82質量%である。
【0098】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)において、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)全体における(メタ)アクリル系単量体単位の含有量は、好ましくは1~80質量%であり、より好ましくは8~70質量%であり、更により好ましくは18~55質量%である。
【0099】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態において、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)全体における(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は、好ましくは0~19質量%であり、より好ましくは0~17質量%であり、更により好ましくは0~13質量%である。
【0100】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態において、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)全体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは5~50質量%であり、更により好ましくは10~42質量%である。当該含有量を60質量%以下とすることにより、樹脂の流動性を向上させ、且つ吸水性を抑制することができる。また、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を0質量%とすることにより、耐熱性の向上やコスト削減をすることができるが、上記の観点から(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量を0質量%超とすることもできる。
特にインブロ成形用途など、スチレン系樹脂組成物の成形品に生じる割れの低減を重視する場合、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(特に、アクリル酸ブチル単量体単位)の含有量は、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、0.05~15.0質量%であることが好ましく、0.08~12.0質量%であることがより好ましく、0.1~8.0質量%であることがさらに好ましい。スチレン系樹脂組成物中の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(特に、アクリル酸n-ブチル単量体単位)の含有量を増やすと、スチレン系樹脂組成物の成形品に生じる割れを低減することができる。しかし、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(特に、アクリル酸n-ブチル単量体単位)の含有量が一定量以上超えると、今度はスチレン系樹脂組成物及びその成形品の耐熱性が低下する傾向を示す。したがって、耐熱性を維持しつつ、成形品に生じる割れを低減するためには、スチレン系樹脂組成物の総量(100質量%)に対して、アクリル酸ブチル単量体単位の含有量は、0.08~12.0質量%であることが好ましく、0.1~8.0質量%であることがより好ましい。
上記アクリル酸ブチル単量体単位の含有量は、後述の実施例の欄、図6及び図7に記載のフローチャートに記載の手順と条件で算出した。
【0101】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、(メタ)アクリル酸系単量体との分子間相互作用によって(メタ)アクリル酸系単量体の脱水反応を抑制するために、及び、樹脂の機械的強度を向上させるために用いることができる。更には、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
【0102】
尚、(メタ)アクリル酸系単量体(単位)と(メタ)アクリル酸エステル単量体(単位)とが隣り合わせで結合した場合、高温、高真空の脱揮装置を用いると、条件によっては脱アルコール反応が起こり、六員環酸無水物が形成される場合がある。本実施形態のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、この六員環酸無水物を含んでいてもよいが、流動性を低下させることから、生成される六員環酸無水物はより少ない方が好ましい。
【0103】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態の一例としては、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸系単量体単位と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、を有する共重合体(B1)(以下、共重合体(B1))であることが好ましい。当該共重合体(B1)は特に限定されることはないが、例えば、スチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-アクリル酸n-ブチル-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸イソブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸イソブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸-メタクリル酸n-ブチル共重合体等が挙げられる。
【0104】
また、本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ブタジエン単量体単位を含むゴム状重合体粒子(A)に対してグラフト可能な、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル酸系単量体と、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、を主成分とする共重合体(B1)であってもよい。
【0105】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態の他の一例としては、スチレン系単量体単位と、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、を繰り返し単位とする共重合体(以下、共重合体(B2))であることが好ましい。上記共重合体(B2)は特に限定されることはないが、例えば、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-アクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸イソブチル共重合体、スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸s-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸イソブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸プロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸イソプロピル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸t-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸イソブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸s-ブチル共重合体、及びスチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸n-ブチル共重合体等が挙げられ、スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸n-ブチル-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル-アクリル酸n-ブチル共重合体が好ましい。なかでも、本実施形態において、共重合体(B2)は、スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体又はスチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体であることが特に好ましい。スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)として、スチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体又はスチレン-メタクリル酸n-ブチル共重合体、特にスチレン-アクリル酸n-ブチル共重合体を使用することにより、スチレン系樹脂組成物の成形品に生じる割れの低減を発揮することができる。
また、本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)は、ブタジエン単量体単位を含むゴム状重合体粒子(A)に対してグラフト可能な、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位とスチレン系単量体単位とを主成分とする共重合体(B2)であってもよい。但し、当該共重合体(B2)は(メタ)アクリル酸系単量体単位を含有しない。
【0106】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の好ましい形態の別の一例としては、スチレン系単量体単位と、2種の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と、を繰り返し単位とする共重合体(以下、共重合体(B3))を含むマトリックス樹脂中に、ゴム状重合体粒子(A)が分散した樹脂が好ましい。この際、ゴム状重合体粒子(A)は、共重合体(B3)にグラフトされていることが好ましい。また、当該ゴム状重合体粒子(A)の形態としては、上記したゴム状重合体粒子(A)の形態を適用することができ、例えば、ポリブタジエン(共重合体(B3)を内包した形態を含む)、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、及びこれらを水素添加した飽和ゴムをゴム状重合体粒子(A)として使用してもよい。なかでも、ポリブタジエン(共重合体(B3)を内包した形態を含む)又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、ポリブタジエンは、ポリブタジエンの一部又は全部にスチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体を有してもよい。スチレン-ブタジエン共重合体及びアクリロニトリル-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体粒子(A)は1種若しくは2種以上使用することができる。
なお、スチレン系樹脂組成物の成形性を重視する場合、上記の通り、スチレン系樹脂組成物中又はスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)中にはアクリロニトリル単量体単位又はメタクリロニトリル単量体単位を実質的に含有しないことが好ましい。
【0107】
本実施形態において、スチレン系単量体単位と、(メタ)アクリル系単量体単位と、を有する共重合体は、当該共重合体の全単量体単位に対する必須の繰り返し単位(単量体単位)の合計の割合が、20質量%以上であることが好ましい。
【0108】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位2種と、スチレン系単量体単位1種とを繰り返し単位とする共重合体(B3)(共重合(B3))であることが好ましい。当該共重合体(B3)において、当該共重合体(B3)全体におけるスチレン系単量体単位の含有量は、好ましくは28~92質量%であり、より好ましくは40~90質量%であり、更により好ましくは47~70質量%である。なお、共重体(B3)は、共重合体(B2)のさらに好ましい態様の一つである。
【0109】
上記共重合体(B3)において、当該共重合体(B3)全体における第1の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは6~70質量%であり、より好ましくは10~62質量%であり、更により好ましくは20~50質量%である。
【0110】
上記共重合体(B3)において、当該共重合体(B3)全体における第2の(メタ)アクリル酸系単量体単位の含有量は、好ましくは2~25質量%であり、より好ましくは5~20質量%であり、更により好ましくは6~18質量%である。
【0111】
第2の(メタ)アクリル酸系単量体単位のエステル置換基の炭素原子数は、第1の(メタ)アクリル酸系単量体単位のエステル置換基の炭素原子数より大きいことが好ましい。
【0112】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)が、スチレン系単量体単位1種と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位1種とを繰り返し単位とする共重合体(以下、共重合体(B4))の場合、上記共重合体(B4)において、当該共重合体(B4)全体におけるスチレン系単量体単位の含有量は、好ましくは20~92質量%であり、より好ましくは30~90質量%であり、更により好ましくは42~80質量%である。なお、共重体(B4)は、共重合体(B2)のさらに好ましい態様の一つである。
【0113】
上記共重合体(B4)において、当該共重合体(B4)全体におけるアクリル酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは8~70質量%であり、より好ましくは10~62質量%であり、更により好ましくは25~55質量%である。
【0114】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の分子量又は分子量分布は、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは10000以上500000以下であり、より好ましくは20000以上350000以下である。分子量が10000より小さいと組成物の衝撃強度が低下する恐れがあり、500000を超えると組成物中でのスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の分散性が低下し、機械的強度、特に耐折強度が低下する。尚、本開示における重量平均分子量の測定方法は、「実施例」の欄に記載の方法で行っている。
【0115】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)のメルトマスフローレイトは、0.3~10g/10minが好ましく、0.3~7.0g/10minがより好ましく、特に好ましくは、0.5~5.0g/10minである。尚、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)のメルトマスフローレイトは、JIS K 7210-1に従って、200℃、5kg荷重で測定した値である。
【0116】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
【0117】
以下、本実施形態に用いることができるスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合方法の一例について説明する。
【0118】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。
【0119】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合に用いられる重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t-ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t-ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0120】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合に用いられる連鎖移動剤としては、例えば、α-メチルスチレンリニアダイマー、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0121】
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合方法としては、必要に応じて、重合溶媒を用いた溶液重合を採用できる。用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部を超えない範囲で使用するのが好ましい。全単量体100質量部に対して重合溶媒が25質量部を超えると、重合速度が著しく低下し、且つ得られる樹脂の機械的強度の低下が大きくなる傾向がある。重合前に、全単量体100質量部に対して5~20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点でも好ましい。
【0122】
本実施形態において、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、後述のスチレン系樹脂(C)又は公知の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合を採用する場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はない。塊状重合を採用する場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、既知の方法にて脱揮処理する。より詳細には、例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。尚、脱揮処理の温度は、通常、190~280℃程度であり、190~260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13~4.0kPa程度であり、好ましくは0.13~3.0kPaであり、より好ましくは0.13~2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0123】
尚、上述した、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合方法及び重合条件は、ゴム状重合体粒子(A)を含有しないスチレン系樹脂(C)の重合方法に援用できる。
【0124】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂(C)を含有する。スチレン系樹脂組成物がスチレン系樹脂(C)を含有することにより、スチレン系樹脂組成物全体の耐衝撃性が向上する。特に、スチレン系樹脂(C)(例えば、ゴム変性スチレン系樹脂)及びスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)と併用することにより、分散性が向上して、優れた耐衝撃性と高剛性とを両立する相乗効果が発揮される。
本実施形態におけるスチレン系樹脂(C)は、スチレン単量体単位及び当該スチレン単量体単位と共重合可能なビニル系単量体単位(1)を有する重合体である。そして、当該スチレン系樹脂(C)の総量(100質量%)に対して、前記単量体単位(1)は、0~50質量%含有する。また、当該ビニル系単量体(1)は、アクリルアミド単量体単位、メタクリルアミド単量体単位、N-マレイミド単量体単位、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位、N-フェニルマレイミド単量体単位、酢酸ビニル単量体単位、プロピオン酸ビニル単量体単位、バーサチック酸ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、プロピレン単量体単位、イソプレン単量体単位及びブタジエン単量体単位からなる群から選択される1種以上の単量体である。さらに、前記単量体(単位)(1)は、上記成分(B)に必須の(メタ)アクリル系単量体(単位)を含まない。
したがって、本実施形態におけるスチレ系樹脂(C)は、スチレン系単量体単位以外に、本実施形態の効果を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体(1)を有してもよい。
【0125】
本実施形態で用いることができるスチレン系樹脂(C)は、スチレン系単量体と、必要に応じて当該スチレン系単量体と共重合可能なビニル系単量体(1)及びゴム状重合体より選ばれる1種以上とを重合して得られる樹脂であることが好ましい。但し、本実施形態におけるビニル系単量体(1)は、(メタ)アクリル系単量体は除く。換言すると、スチレン系樹脂(C)は、スチレン系単量体単位を有する重合体であることが好ましく、スチレン系単量体単位と、当該スチレン系単量体単位に対して共重合可能であり、且つ(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体(1)及び/又はゴム状重合体の単量体単位とを有する重合体であることがより好ましい。スチレン系樹脂(C)の好ましい形態としては、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリスチレンマトリックス中にゴム状重合体粒子(A)が分散されたゴム変性スチレン系樹脂、ポリスチレンマトリックス中に2種以上のゴム状重合体粒子(A)が分散されたゴム変性スチレン系樹脂、又はスチレン系重合樹脂が挙げられる。また、これらのスチレン系樹脂(C)は、1種又は2種以上使用することができる。
本実施形態におけるスチレン系樹脂(C)は、アクロニトリル単量体単位、メタクリロニトリル単量体等のシアン化ビニル系単量体を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、当該スチレン系樹脂(C)100質量%に対するアクロニトリル単量体単位又はメタクリロニトリル単量体の含有量が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下含有することがより好ましく、2質量%以下含有することがさらに好ましい。スチレン系樹脂(C)にアクロニトリル単量体単位又はメタクリロニトリル単量体を含有すると、スチレン系樹脂組成物の成形性が低下する傾向を示す。
【0126】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(C)の含有量の上限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、80質量%以下、76質量%以下、69質量%以下、64質量%以下、60質量%以下、57質量%以下、52質量%以下、48質量%以下、43質量%以下、40質量%以下、38質量%以下、35質量%以下、32質量%以下、30質量%以下が好ましい。一方、スチレン系樹脂(C)の含有量の下限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、3質量%以上、5質量%以上、9質量%以上、11質量%以上、13質量%以上、14質量%以上、15質量%以上、16質量%以上、17質量%以上、18質量%以上、19質量%以上、20質量%以上、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上、24質量%以上が好ましい。
【0127】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、スチレン系樹脂(C)の含有量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、3質量%以上80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5~76質量%、より好ましくは7~72質量%、さらに好ましくは11~69質量%である。当該含有量を3質量%以上とすることにより、組成物中の(B)成分及び(C)成分の分散性が良好であり、耐衝撃性をより向上させることができる。また、当該含有量を質量%以下とすることにより、剛性をより向上させることができる。
【0128】
光学特性、視認性の観点、特に光透過性を要求される用途に使用する場合、スチレン系樹脂(C)の含有量の範囲を3質量%以上40質量%以下にすることが好ましい。また、成形加工性(流動性、低粘度性)の観点を重視する場合は、スチレン系樹脂(C)の含有量の範囲を40質量%超80質量%以下にすることが好ましい。
【0129】
<<ポリスチレン>>
本実施形態において、ポリスチレンとはスチレン系単量体を重合した単独重合体であり、一般的に入手できるものを適宜選択して用いることができる。ポリスチレンを構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン及びインデン等のスチレン誘導体が挙げられる。特に工業的観点からスチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種又は2種以上使用することができる。ポリスチレンは、本実施形態の効果を損なわない範囲で、上記のスチレン系単量体単位以外の他のビニル系単量体単位を更に含有することを排除しないが、典型的にはスチレン系単量体単位からなる。
【0130】
<<ゴム変性スチレン系樹脂>>
本実施形態において、上記ゴム変性スチレン系樹脂は、マトリックスとしてのスチレン系樹脂中にゴム状重合体粒子(A)の粒子が分散したものであり、ゴム状重合体粒子(A)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造してもよい。
【0131】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂のマトリックスを構成するスチレン系樹脂に用いられる単量体としては、上記スチレン系単量体と同一のものを使用することができる。当該単量体としては、特に、スチレンが好ましい。
【0132】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂に含まれるゴム状重合体粒子(A)は、例えば、内側に上記のスチレン系単量体より得られる、スチレン系単量体単位含有樹脂を内包してもよく(コアシェル構造又はサラミ型構造)、及び/又は、外側にスチレン単量体単位を含有する樹脂がグラフトされたものであってよい。
【0133】
ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体粒子(A)としては、例えば、ポリブタジエン(ポリスチレンを内包した形態を含む)、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体粒子(A)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
このようなゴム変性スチレン系樹脂の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
しかし、スチレン系樹脂組成物全体の成形性を重視する場合、スチレン系樹脂(C)又は本実施形態のスチレン系樹脂組成物中にはアクリロニトリル単量体単位、メタクリロニトリル単量体又はABS樹脂を実質的に含有しないことが好ましい。具体的には、スチレン系樹脂組成物の総量に対してアクリロニトリル単量体単位又はメタクリロニトリル単量体の含有量が、10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下である。
【0134】
ゴム変性スチレン系樹脂がHIPS樹脂である場合、これらのゴム状重合体粒子(a1)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
【0135】
尚、該ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス1,4、トランス1,4、又はビニル1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
【0136】
また、該ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0137】
ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下する虞があり、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する虞がある。
【0138】
尚、本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値である。
【0139】
ゴム変性スチレン系樹脂の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0140】
尚、上述した、スチレン系樹脂(C)の好ましい形態であるゴム変性スチレン系樹脂の重合方法及び重合条件は、ゴム状重合体粒子(A)を含有するスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の重合方法に援用できる。
【0141】
<重合樹脂>
本実施形態において、重合樹脂とは、スチレン系単量体単位を主成分として必須に含み、(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体単位(1)を含む樹脂である。本実施形態における重合樹脂は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体単位(1)の合計含有量を100質量%としたとき、スチレン系単量体単位の含有量は70質量%以上100質量%以下であることが好ましい。
本実施形態における重合樹脂は、スチレン系単量体単位及びビニル系単量体単位(1)の合計含有量を100質量%としたとき、ビニル系単量体単位(1)の含有量は0質量%以上30質量%以下であり、好ましくは1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
【0142】
一般に、本実施形態におけるスチレン系樹脂(C)の一形態である重合樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されているが、本実施形態において、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行なうことができる。
【0143】
本実施形態において、重合樹脂中の、スチレン単量体単位(例えば、スチレン単量体単位)、(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体単位(1)(例えば、ビニルアルコール単量体単位等)の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0144】
本実施形態において、重合樹脂は、スチレン系単量体単位、任意成分である、(メタ)アクリル系単量体以外のビニル系単量体単位(1)を、本実施形態の効果を損なわない範囲で更に含有することを排除しない。しかし、本実施形態における重合樹脂は、典型的には、スチレン系単量体単位から構成されることが好ましい。
【0145】
本実施形態の重合樹脂を構成するスチレン系単量体としては、スチレン系単量体としては、上述のスチレン系単量体単位を使用することができるため、ここでは省略する。これらのスチレン系単量体は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0146】
本実施形態において、スチレン系樹脂(マトリックス樹脂分)の重量平均分子量(Mw)は10,000~350,000であることが好ましく、より好ましくは80,000~330,000であることが好ましく、さらに好ましくは120,000~300,000、よりさらに好ましくは140,000~240,000である。重量平均分子量(Mw)が100,000~350,000である場合、機械的強度と流動性とのバランスにより優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。尚、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、標準ポリスレン換算で得られる値である。
【0147】
本実施形態において、重合樹脂の重合方法は、特に制限はないが例えば、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好適に採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とを備える。
【0148】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、ポリ乳酸(D)を含有する。スチレン系樹脂組成物がポリ乳酸(D)を含有することにより、環境負荷を低減することができる。
【0149】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、ポリ乳酸(D)の含有量の上限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、60質量%以下、56質量%以下、51質量%以下、50質量%以下、46質量%以下、42質量%以下、40質量%以下、38質量%以下、36質量%以下、34質量%以下、又は33質量%以下が好ましい。一方、ポリ乳酸(D)の含有量の下限は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計量100質量%に対して、0.1質量%以上、0.6質量%以上、1質量%以上、1.6質量%以上、2質量%以上、2.4質量%以上、2.8質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.2質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上が好ましい。
【0150】
本実施形態において、ポリ乳酸(D)は、スチレン系樹脂(C)、ポリ乳酸(D)、及びスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)の合計質量100質量%に対して、0.1~60質量%であることが好ましく、0.5~55質量%であることがより好ましく、1~50質量%であることがさらに好ましく、15~33質量%であることが特にに好ましい。本実施形態において、ポリ乳酸(D)の含有量を0.1質量%以上にすることにより、環境負荷を低減することができる。一方、ポリ乳酸(D)の含有量を60質量部以下にすることにより、耐衝撃性及び高剛性の両立が発揮されやすくなる。
【0151】
カーボンニュートラルの観点から環境負荷の軽減又は耐油性を重視する場合は、ポリ乳酸(D)の含有量の範囲を35質量%以上50質量%以下にすることが好ましい。また、機械的強度点を重視する場合は、ポリ乳酸(D)の含有量の範囲を0.1質量%以上35質量%未満にすることが好ましい。
【0152】
本実施形態のポリ乳酸(D)は、特に限定されないが、例えばとうもろこしやイモ類等から得た澱粉を糖化して、更に乳酸菌により乳酸を得、次に、乳酸を環化反応させてラクチドとし、これを開環重合する方法で得られたポリ乳酸を用いることができる。また、石油からラクチドを合成しこれを開環重合して得たポリ乳酸でも、あるいは石油から乳酸を得、これを直接脱水縮合して得たポリ乳酸樹脂を用いてもよい。特に、二酸化炭素排出量削減という観点から、植物由来原料が好ましい。
【0153】
ポリ乳酸(D)を構成するL-乳酸およびD-乳酸の比率に関しては、特に限定されることなく用いることができる。本実施形態の樹脂組成物の成形性を考慮すると、L-乳酸とD-乳酸の比が100:0~90:10であることが好ましく、より好ましくはL-乳酸とD-乳酸の比が100:0~95:5である。
【0154】
ポリ乳酸(D)の分子量又は分子量分布は、特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1万以上40万以下であり、より好ましくは4万以上30万以下である。分子量が1万より小さいと樹脂組成物の衝撃強度が低下する恐れがあり、40万を超えると樹脂組成物中でのポリ乳酸(D)の分散性が低下し、機械的強度、特に耐折強度が低下する。
【0155】
ポリ乳酸(D)樹脂のメルトマスフローレイトは、1~30g/10minが好ましく、特に好ましくは、3.8~26.3g/10minである。尚、ポリ乳酸(D)樹脂のメルトマスフローレイトは、JIS K 7210-1に従って、210℃、2.16kg荷重で測定した値である。
【0156】
本開示の好ましい態様は、ゴム状重合体粒子(A)3~55質量%と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)0.1~80質量%と、スチレン系樹脂(C)3~80質量%と、ポリ乳酸(D)1~50質量%とを含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記ゴム状重合体粒子(A)として、中実粒子、表面グラフト化粒子、内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、及び表面グラフト化内包粒子から選択され、
前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が、2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上である粒子径分布を有し、
且つ、当該スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)は、0.3μm以上8μm以下の重量平均径を有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0157】
「他の任意成分」
本実施形態において、上記各成分(A)~(D)を製造する際の回収工程の前後の任意の段階、又はスチレン系樹脂組成物を押出加工、成形加工する段階において、必要に応じ本開示の目的を損なわない範囲で各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、光安定剤、ヒンダートフェノール系、リン系、イオウ系などの酸化防止剤、滑剤、流動パラフィンなどの可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、各種染料や顔料、無機結晶核剤(酸化チタン、酸化スズ等の金属酸化物)、有機結晶核剤、蛍光増白剤、光拡散剤、選択波長吸収剤を添加してもよい。
【0158】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、流動パラフィンの含有量は、ゴム状重合体粒子(A)、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)、スチレン系樹脂(C)及びポリ乳酸(D)の合計質量100質量%に対して、0.07質量以上5質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以上2.8質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であることがさらに好ましく、0.6質量%以上1.8質量%以下であることがさらに好ましい。また、別の態様としては、1.1質量%以上1.8質量%以下であることが好ましい。さらに別の態様としては、0.6質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0159】
上記流動パラフィンとは、ミネラルオイルとも称され、パラフィン系炭化水素を含むオリゴマー状及び重合体である。上記流動パラフィンは、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン・ワックスを含み、パラフィン炭化水素とアルキルナフテン炭化水素との混合物である。15℃における比重が0.8494以下のものも、15℃における比重が0.8494を超えるものも含む。また、上記流動パラフィンのナフテン含有量は、当該流動パラフィン100質量%に対して、15質量%以上55質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、19質量%以上35質量%以下であることがさらに好ましい。
【0160】
本実施形態において、流動パラフィンの動粘度(40℃)は、使用目的に応じて適宜設定することができるが、3~500mm/sであることが好ましく、5~400mm/sであることがより好ましく、6~300mm/sであることがさらに好ましく、7~150mm/sであることが特に好ましい。
【0161】
また、上記流動パラフィンの動粘度の測定方法は、JIS K2283に準じる方法で測定しており、具体的には、測定温度40℃、ウベローデ粘度計(粘度計番号2番)による自動粘度測定装置(VMC-252型)(株式会社離合社製)を用いている。
【0162】
例えば、代表的な流動パラフィンとしては、特に制限されることは無いが、エクソンモービル有限会社製のクリストール(登録商標)N352、プライモール(登録商標)N382;Sonneborn社製のPL-380;出光興産(株)製のダイアナプロセスオイル(登録商標)PW-380、PW-150、PW-100、PW-90、ダフニーオイル(登録商標)CP68N、CP50S、PS350S、LP530-SP;三光化学工業製の流動パラフィン350-S;Formosa製のF380N;SEOJIN CHEMICAL社製のPARACOS KF-550、PARACOS KF-350;シェルケミカルズジャパン社製Edelex226が好適である。
【0163】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物は、さらに無機結晶核剤として金属酸化物を含有してもよい。本実施形態のスチレン系樹脂組成物において、金属酸化物(例えば、二酸化チタン)の含有量は、ゴム状重合体粒子(A)、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)、スチレン系樹脂(C)及びポリ乳酸(D)の合計質量100質量%に対して、0.07質量以上5.5質量%以下であることが好ましく、0.65質量%以上3.8質量%以下であることがより好ましく、1.2質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。また、別の態様としては、1.1質量%以上2.8質量%以下であることが好ましい。さらに別の態様としては、0.2質量%以上0.9質量%以下であることがさらに好ましい。
【0164】
尚、スチレン系樹脂組成物中の上記各種添加剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%に対して6.0質量%以下であることが好ましく、3.5質量%以下であることがより好ましく、0.9質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることがよりさらに好ましい。
【0165】
本開示の別の好ましい態様は、ゴム状重合体粒子(A)3~55質量%と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)0.1~80質量%と、スチレン系樹脂(C)3~80質量%と、ポリ乳酸(D)1~50質量%と、流動パラフィン0.07~5質量%を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記ゴム状重合体粒子(A)として、中実粒子、表面グラフト化粒子、内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、及び表面グラフト化内包粒子から選択され、
前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が、2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上である粒子径分布を有し、
且つ、当該スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)は、0.3μm以上8μm以下の重量平均径を有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0166】
本開示の別の他の好ましい態様は、ゴム状重合体粒子(A)3~55質量%と、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)0.1~80質量%と、スチレン系樹脂(C)3~80質量%と、ポリ乳酸(D)1~50質量%と、二酸化チタン0.07~5.5質量%を含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記ゴム状重合体粒子(A)として、中実粒子、表面グラフト化粒子、内包粒子(ミクロ相分離構造、コアシェル構造及びサラミ型構造を含む)、及び表面グラフト化内包粒子から選択され、
前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が、2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上である粒子径分布を有し、
且つ、当該スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)は、0.3μm以上8μm以下の重量平均径を有する、スチレン系樹脂組成物である。
【0167】
本開示の他の好ましい態様は、ゴム状重合体粒子(A)10~35質量%と、スチレン単量体単位(b1)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を有するスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)1~40質量%と、ポリ乳酸(D)15~33質量%と、スチレン単量体単位(c1)及び当該スチレン単量体単位(c1)と共重合可能なビニル系単量体単位(1)を有するスチレン系樹脂(C)とを含有するスチレン系樹脂組成物であって、
前記スチレン系樹脂(C)の総量に対して、前記ビニル系単量体単位(1)を0~5質量%含有し、前記スチレン系樹脂組成物の総量に対して、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を0.1~8.0質量%含有し、
前記ビニル系単量体単位(1)は、アクリルアミド単量体単位、メタクリルアミド単量体単位、N-マレイミド単量体単位、N-シクロヘキシルマレイミド単量体単位、N-フェニルマレイミド単量体単位、酢酸ビニル単量体単位、プロピオン酸ビニル単量体単位、バーサチック酸ビニル単量体単位、エチレン単量体単位、プロピレン単量体単位、イソプレン単量体単位及びブタジエン単量体単位からなる群から選択される1種以上の単量体単位であり、
前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)が、2μm以下であり、且つ前記ゴム状重合体粒子(A)の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差が、0.8μm以上2.0μmである粒子径分布を有し、
前記スチレン系樹脂組成物中に含まれる全ゴム状重合体粒子(A)は、0.73μm以上8μm以下の重量平均径を有する、スチレン系樹脂組成物である。
また、スチレン系樹脂組成物中のスチレン系樹脂(C)は残部として、スチレン系樹脂組成物全体の最大74質量%含有される。
本開示の他の好ましい態様において、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位が、アクリル酸ブチルであると、より優れた耐衝撃性、高剛性及び成形性を有し、耐熱性を維持しつつ、かつ成形時の割れを抑制することができる。
【0168】
[スチレン系樹脂組成物の物性]
<デュポン衝撃強さ>
本実施形態のスチレン系樹脂組成物のデュポン衝撃強度は、2kg・cm以上であることが好ましく、より好ましくは3kg・cm以上である。2kg・cm未満であると、使用中に破損する懸念がある。尚、本開示で、デュポン衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0169】
本実施形態のスチレン系樹脂組成物は、メルトマスフローレイトが、0.6g/10min以上であることが好ましい。メルトマスフローレイトが0.6g/10min以上であれば、押出成形時や真空成形時の成形性が良好である。0.6g/10minのメルトマスフローレイトは、各成分(A)~(C)のメルトマスフローレイト、並びにこれらの樹脂の混合比を調整することにより達成できる。尚、本開示で、メルトマスフローレイトは、ISO 1133に準拠して、温度200℃、5.00kgにて測定される値である。
【0170】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物の用途としては、インジェクションブロー成形、シート体(フィルムも含む)、射出成形、又は押出成形に供されることが好ましい。
【0171】
<スチレン系樹脂組成物の製造方法>
本実施形態において、スチレン系樹脂組成物の製造方法は、ゴム状重合体粒子(A)、スチレン-アクリル系樹脂(B)、スチレン系樹脂(C)、及びポリ乳酸(D)を配合、溶融、混練、造粒する方法は特に限定されず、樹脂組成物の製造で常用されている方法を用いることができる。また、ゴム状重合体粒子(A)は、当該ゴム状重合体粒子(A)を含有する、スチレン系樹脂(C)又はスチレン-アクリル系樹脂(B)を原料として用いてもよい。例えば、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー等で配合(混合)した上記各成分をバンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー等を用いて溶融、混練し、ロータリーカッター、ファンカッター等で造粒することによって樹脂組成物を得ることができる。溶融、混練における樹脂温度は180~240℃が好ましい。目標とする樹脂温度にするためには、押出機等のシリンダー温度は樹脂温度よりも10~20℃低い温度に設定することが好ましい。樹脂温度が180℃未満では混合が不十分となり好ましくない。一方、樹脂温度が240℃を超えるとポリ乳酸(D)の熱分解が起こり好ましくない。
【0172】
本実施形態において、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満のゴム状重合体粒子(x1)、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(x2)、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(x3)及び重量平均径2.5μm以上10μm以下のゴム状重合体粒子(x4)からなる群から選択される少なくとも2種のゴム状重合体粒子(A)を含有する、スチレン系樹脂(C)及び/又はスチレン-アクリル系樹脂(B)を、他の成分(ポリ乳酸(D)、任意の添加剤、スチレン系樹脂(C)、スチレン-アクリル系樹脂(B))と混合(配合、溶融、混練、及び造粒を含む)してスチレン系樹脂組成物を調製してもよい。また、別の形態では、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満のゴム状重合体粒子(x1)、重量平均径0.5μm以上1μm未満のゴム状重合体粒子(x2)、重量平均径1μm以上2.5μm未満のゴム状重合体粒子(x3)及び重量平均径2.5μm以上10μm以下のゴム状重合体粒子(x4)からなる群から選択される少なくとも2種のゴム状重合体粒子(A)を単独で、他の成分(ポリ乳酸(D)、任意の添加剤、スチレン系樹脂(C)、スチレン-アクリル系樹脂(B))と混合(配合、溶融、混練、及び造粒を含む)してスチレン系樹脂組成物を調製してもよい。
【0173】
<<成形体>>
本実施形態の成形体は、上記のスチレン系樹脂組成物を成形して得ることができる。当該成形体は、上記の樹脂組成物を成形して得たものであれば特に限定されないが、また、本実施形態の成形体は、特に限定されないが、射出成形体、押出成形体、又はシート体(フィルムを含む)であることが好ましい。本実施形態の射出成形体の一例として容器が挙げられ、当該容器は、樹脂組成物より直接製造(成形)してもよく、または樹脂組成物を成形して得たシートをさらに成形することにより製造してもよい。また、本実施形態のシートは、容器だけでなく他の成形体を製造(成形)するために用いることができる。
【0174】
本実施形態のシートは、非発泡又は発泡のシートである。また、本実施形態のシートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂等と多層化して用いてもよく、また、当該スチレン系樹脂等の層に加えて、又は代えて、該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PP樹脂、PP/PS系樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0175】
本実施形態の容器は、上記の樹脂組成物を用いてインジェクションブロー成形により得られた容器、または、上記のシートを成形して得られた容器であることが好ましい。
【0176】
具体的には、本実施形態の、インジェクションブロー成形により得た容器としては、特に限定されないが例えば、乳酸菌飲料等の飲料や発酵乳等の食品などを保存ないし収容する容器が挙げられ、容器は、開口部にフランジ面を有し、開口部を上方に備える円筒竪型とすることができる。当該容器は、高さ50~120mm、直径30~60mm、厚さ0.2~0.8mmの大きさにすることができる。
【0177】
また、本実施形態の、上記のシートを成形して得られた容器としては、特に限定されず、シート又はこれを含む多層体より成形した、弁当の蓋材又は惣菜等を入れる容器が挙げられる。
【0178】
<成形体の製造方法>
本実施形態において、樹脂組成物から成形体を得る製造方法は、特に限定されず、公知の成形方法、例えば押出成形加工や射出成形加工により製造することができる。具体的には押出成形加工としては、例えば、押出成形、カレンダ成形、中空成形、押出発泡成形、異形押出成形、ラミネート成形、インフレーション成形、Tダイフィルム成形、シート成形、真空成形、圧空成形、ダイレクトブロー成形などが挙げられる。また、射出成形加工としては、例えば、射出成形、RIM成形、射出発泡成形、インジェクションブロー成形、射出延伸ブロー成形などが挙げられる。
【0179】
本実施形態において、成形体のなかでもシートの製造方法としては、特に限定されないが例えば、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出機で押し出しし、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る方法等を挙げることができる。
【0180】
また、本実施形態において、シートより成形して得る容器の製造方法は、特に限定されず例えば、真空成形が挙げられる。
【0181】
また、本実施形態において、インジェクションブロー成形により得られた容器の製造方法としては、特に限定するものではなく公知の方法により成形することができる。具体的には、インジェクションブロー成形では、まず射出成形によって樹脂組成物から中間体(例えば有底のパリソン)を成形し、ついで、この中間体を、軟化状態でコア(射出成形の雄金型)に付けたままでブロー成形金型内に移行させ、そして、コアから圧気を送り込んでブロー成形金型内壁面まで膨らませることで、中空成形体(例えば容器)を成形することができる。
上記の成形法において、中間体をブロー成形する段階において、金型温度は35~75℃であることが好ましく、40~60℃であることがより好ましく、45~55℃であることがさらに好ましい。
また、スチレン系組成物の温度は、200~240℃であることが好ましく、210~230℃であることがより好ましい。
中間体の体積に対する容器の体積の倍率(体積の延伸倍率)は、1.5~7倍であることが好ましく、2~5倍であることがより好ましい。
【0182】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示の範囲は、上記例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0183】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示の実施形態を更に具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
「測定及び評価方法」
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0184】
<樹脂の特性解析>
(1)スチレン-アクリル系樹脂(B)及びスチレン系樹脂(C)のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸単量体、及び(メタ)アクリル酸エステルの各々の単量体単位の含有量(質量%)の算出
(NMR測定)
プロトン核磁気共鳴(H-NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6-DMSO 0.75mlに60℃で6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA-500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒
(NMRスペクトルの帰属)
DMSO重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5~1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチル及び六員環酸無水物のα-メチル基の水素、1.6~2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(-COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5~7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。尚、本実施形態の樹脂は六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定の方法では通常定量化は難しい。
【0185】
(2)重量平均分子量(万)の測定
試料調製 :テトラヒドロフランに樹脂約0.05質量%を溶解
(測定条件)
機器 :TOSHOH HLC-8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM-H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0186】
(3)デュポン衝撃強度
得られたシートから縦8cm×横8cmの試験片を切り出し、(株)東洋精機製作所製のデュポン衝撃試験機(No451)を用いて落錘衝撃強度(デュポン衝撃強度)を測定した。落下重錘の質量150g、撃心突端の半径9.4mmで、n=30で試験を行い、50%破壊高さから落錘衝撃強度を求めた。そして、2kg・cm以上を合格とする。
【0187】
(4)口部圧縮評価
引張圧縮試験機の圧縮用治具を平板にし、容器を横、パーティングラインが上、かつ口部フランジが垂直に当たるようにして200mm/分の速度で圧縮し、破壊に至るまでの最大荷重を口部圧縮強度とし、この最大荷重時の容器口部の変位量を測定した。当該測定には、2ショット分の容器を使用し、測定値を平均とした。そして、最大荷重時の容器口部の変位量が10mm以上を合格とする。
【0188】
(5)座屈強度評価
圧縮試験用下部圧盤に固定された、インジェクションブロー成形した容器に対して、圧縮試験機の可動部位に突設された圧縮負荷冶具により、押圧速度200mm/minで負荷をかけた際の圧縮強度を測定した。尚、測定装置として、島津製作所製の卓上型精密万能試験機(オートグラフAGS-5kNX)を使用した。測定した結果を下記の基準で評価した。座屈強度が120N未満であると、剛性が不足し、実用場面で容器が座屈する等の弊害が生じるため、座屈強度が120N以上を合格とした。
【0189】
(6)成形性試験(糸引き)
本実施例の糸引き発生の評価方法は、射出成形機で厚さ2mmのプレートを成形する際、ゲート部から、プレートと繋がっているスプルー部に、糸引きが目視確認できるか否かで評価を行った。射出成形機は東芝機械株式会社製、EC60Nを用いた。シリンダー温度220℃、金型温度50℃で実験を行った。成形後の糸引きが確認できた場合に1個とカウントし、合計100回成形した際の糸引き発生個数で評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:糸引きの発生なし。
○:1~10個発生。
△:11~20個発生。
×:21個以上発生。
【0190】
(7)成形性試験(離型性不良)
本実施例の離型性不良の評価方法は、射出ブロー成形機で円筒堅型の容器を成形する際、射出成形により成形されたパリソンが型から離れるか否かで評価を行った。射出ブロー成形機は住友重機械工業株式会社製、SG125NPを用いた。シリンダー、ホットランナー温度220℃、金型温度50℃で実験を行った。成形後のパリソンが型に貼りついてしまい完全に離脱できない状態が確認できた場合に1個とカウントし、合計100回成形した際の離型不良発生個数で評価を行った。評価基準は以下の通りである。
◎:離型不良の発生なし。
○:1~10個発生。
△:11~20個発生。
×:21個以上発生。
【0191】
(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定
(8-1)スチレン系樹脂組成物及び樹脂組成物中のゴム状重合体粒子(A)全体の重量平均径の測定
後述の実施例のスチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物を、四酸化オスミウムで染色した後、厚さ100nmの超薄切片を5つ作製し、透過電子顕微鏡を用いて、それぞれ5つの明視野像(倍率10000倍)を取得した。そして、それぞれの5つ明視野像を合計して、下記数式(N1):
重量平均径=ΣniDri /ΣniDri (N1)
(上記数式(N1)中、niは、粒子径Driのゴム状重合体粒子(A)粒子の個数であり、粒子径Driは、明視野画像中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体粒子(A)の重量平均径とした。上記解析は、画像解析ソフトImageJ(アメリカ国立衛生研究所製)を用いて次の通り実施した。取得した前記画像を大津の手法(Otsu metod)で二値化し、ゴム状重合体粒子(A)以外の白部分(マトリックス樹脂部(例えば、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)又はスチレン系樹脂(C))に相当)を塗りつぶした。隣接接触しているゴム状重合体粒子(A)同士をWatershed処理により分割し、ゴム状重合体粒子(A)の面積を算出後、円相当径に換算した。得られた円相当径の数値群から個数基準のヒストグラム及び平均値を導出した。また使用した装置等は以下の通りである。
ウルトラミクロトーム:UC7/ライカ
透過電子顕微鏡:HT7700/日立ハイテクノロジーズ
実施例7のスチレン系樹脂組成物の透過電子顕微鏡画像を一例として、図1に示す。また、実施例7のスチレン系樹脂組成物を四酸化オスミウムで染色した後、大津の手法で二値化した明視野画像を図2に示す。図1及び図2から確認されるように、所得した明視野画像中、黒く染色された粒子がゴム状重合体粒子(A)である。
さらに一例として、実施例7のスチレン系樹脂組成物の明視野画像から算出した個数基準のヒストグラムを、図4(a)に示す。そして、図4(a)の縦軸の頻度(%)を積算したグラフを図4(b)に示す。
【0192】
(8-2)ゴム状重合体粒子(A)単独の重量平均径の測定
また、ゴム状重合体粒子(A)の単独の重量平均径は、上記に記載した通り、スチレン系樹脂組成物として他の成分と混合する前に予め、各重量平均径を有するゴム状重合体粒子(A)10質量部それぞれを個別にマトリックス樹脂(ポリスチレン(PSJ-ポリスチレン680 PSジャパン社製))90質量部と溶融混練して溶融混練物を作製した後、四酸化オスミウムで染色した溶融混練物から作製した厚さ100nmの超薄切片を用い、上記のスチレン系樹脂組成物中に含有するゴム状重合体粒子(A)の重量平均径と同様の方法により重量平均径を算出した。
【0193】
(8-3)スチレン系樹脂(C)、又はスチレン-アクリル系樹脂(B)中のゴム状重合体粒子(A)の重量平均径の測定
さらには、スチレン系樹脂組成物の原料であるスチレン系樹脂(C)、スチレン-アクリル系樹脂(B)自体が、既にゴム状重合体粒子(A)がマトリックス樹脂中に分散されている場合(例えば、HIPS樹脂等)も同様に、ペレット状のスチレン系樹脂(C)、又はスチレン-アクリル系樹脂(B)自体をそれぞれ四酸化オスミウムで染色した後、厚さ100nmの超薄切片を作製して、上記のスチレン系樹脂組成物中に含有するゴム状重合体粒子(A)の重量平均径と同様の方法で重量平均径を算出した。
【0194】
(9)多峰性の評価
表3~表7中における「多峰性の評価」の算出方法は以下の通りである。
実施例のスチレン系樹脂組成物及び比較例の樹脂組成物のそれぞれの個数基準のヒストグラムである粒子径分布(横軸:円相当径、縦軸:頻度(%))を、上述した手法により算出した。次いで、得られた粒子径分布のヒストグラムにおいて、最も近い距離に存在する2つの極大値(ピーク)を選択した後、当該2つの極大値(ピーク)の間に極小値が存在するかを確認し、極小値が存在する場合は、それぞれの極大値を山の数(すなわち2峰)としてカウントし、極小値が存在しない場合は一つの山とみなした。そして、この手法繰り返すことにより、粒子径分布のヒストグラム中の全極大値(ピーク)の数が2以上であるかどうか、即ち多峰性の有無を評価した。そして、多峰性の評価基準は以下の通りである。
○:2峰以上である(極大値が2以上存在する)。
×:単峰である(極大値が1つ存在する。)。
―:ゴム状重合体粒子(A)由来の極大値(ピーク値)が確認されない。
なお、一般的なピーク分離の方法又はカーブフィットの方法は恣意的な判断を排除し難いことから、山の数を一義的に決定することが難しい。しかし、例えば、図4(a)の粒子径分布において、円相当径がそれぞれ、3μm近傍、2.4μm近傍、1.7μm近傍、及び1.5μm近傍である場合に対応する、少なくとも4つの極大値(少なくとも4峰)が確認される。そのため、図4(a)で示される実施例7の粒子径分布から多峰性を示すことが理解される。また、任意の2つの極大値(ピーク値)の間に極小値が存在するか否かの判別が難しい場合、必要により、当該極大値(ピーク値)の間の距離(円相当径)が0.1μm以上であるときはそれぞれの山をピーク値とし、また当該極大値(ピーク値)の間の距離(円相当径)が0.1μm未満であるときは、一つの山とみなす条件を設けてもよい。
【0195】
(10)MFR(メルトマスフローレート)の測定
製造したスチレン系樹脂組成物のメルトマスフローレート(g/10min)は、ISO1133に準拠して、200℃、5.00kgの荷重条件にて測定した。
【0196】
(11)容器耐熱試験
後述に記載の[容器の製造方法]の欄に記載のインジェクションブロー成形した容器を、90℃の熱水中に10秒間浸漬し、取り出した容器を冷却した後、収縮率を算出した。より詳細には、温度23℃、湿度50%の環境で24時間状態で調整した容器の高さL1をあらかじめ測定し、この容器を90℃の熱水中に10秒間浸漬し、取り出した容器を速やかに25℃の冷水を用いて冷却し、温度23℃、湿度50%の環境で24時間状態調整してからその高さL2を測定し、次式から収縮率を算出した。
[(L1-L2)/L1]×100 (%)
n=10で試験を行い、収縮率の数平均値を算出した。容器の収縮率が0.25%を超えると外観不良が生じるため、0.25%以下の場合を○、0.25%より大きい場合を×とした。
【0197】
(12)容器口部衝撃強度の評価
後述に記載の方法によりインジェクションブロー成形した容器を半径9.4mmの撃心の突端が前記容器の口部と接触するように、デュポン衝撃試験機下部に設置し、質量150gの重錘を20cmの高さから落下させ、前記容器の口部の割れの有無を確認した。
n=100で試験によって容器口部衝撃強度の評価を行い、容器の口部の割れの目視で数えて以下の通り区分分けを行った。
10個以下
11~20個
21個以上
【0198】
「実施例・比較例に使用した原料」
(1)スチレン系樹脂(C)
スチレン系樹脂(C)として、以下のスチレン系樹脂(C-1)~(C-4)を使用した。
【0199】
・スチレン系樹脂(C-1)(当該スチレン系樹脂(C-1)は、第6ゴム状重合体粒子(x3)を含有する。):(原料(9))
スチレン系樹脂(C-1)は、以下の方法で合成した。
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン81.7質量%、ゴム状重合体としてポリブタジエンゴム-1(宇部興産社製BR13HB)8.6質量%、溶剤としてエチルベンゼン9.5質量%、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイド0.002質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.04質量%、酸化防止剤イルガノックス1076(BASFジャパン社製)0.14質量%を投入し、ゴム状重合体を完全に溶解した。この原料溶液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1(第1反応器)に、3.2リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を117℃/123℃/129℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分150回転とした。反応器出口の反応率は30%であった。
【0200】
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2(第2反応器)に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は136℃/138℃/140℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3(第3反応器)に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は147℃/156℃/159℃に設定した。
【0201】
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズして、ペレット状のスチレン系樹脂(C-1)(ゴム状重合体粒子(x))を合成した。なお、押出機の温度は240℃に設定した。得られたスチレン系樹脂(C-1)のMFRは1.3g/10minであった。また、スチレン系樹脂(C-1)のマトリックス樹脂の重量平均分子量Mwは16万であった。
【0202】
・スチレン系樹脂(C-2)(当該スチレン系樹脂(C-2)は、第7ゴム状重合体粒子(x3)を含有する。):(原料(10))
スチレン系樹脂(C-2)は、下記表1に示す組成比及び一部の条件を変更した以外は上記スチレン系樹脂(C-1)と同一の方法で合成した。原料比及び重合条件については下記表1に示す。得られたスチレン系樹脂(C-2)のMFRは3.0g/10minであった。また、スチレン系樹脂(C-2)のマトリックス樹脂の重量平均分子量Mwは14万であった。
【0203】
・スチレン系樹脂(C-3)(当該スチレン系樹脂(C-3)は、第8ゴム状重合体粒子(x4)を含有する。):(原料(11))
スチレン系樹脂(C-3)は、下記表1に示す組成比及び一部の条件を変更した以外は上記スチレン系樹脂(C-1)と同一の方法で合成した。原料比及び重合条件については下記表1に示す。得られたスチレン系樹脂(C-3)のMFRは2.3g/10minであった。また、スチレン系樹脂(C-2)のマトリックス樹脂の重量平均分子量Mwは13.5万であった。
【0204】
・スチレン系樹脂(C-4)(当該スチレン系樹脂(C-4)は、ゴム状重合体粒子(A)を含有しない。):(原料(12))
スチレン系樹脂(C-4)は、下記表1に示す組成比及び一部の条件を変更した以外は上記スチレン系樹脂(C-1)と同一の方法で合成した。原料比及び重合条件については下記表1に示す。得られたスチレン系樹脂(C-4)のMFRは7.0g/10minであった。また、スチレン系樹脂(C-4)の重量平均分子量Mwは18万であった。
【0205】
【表1】
【0206】
(2)ポリ乳酸(D)
ポリ乳酸(D)として、以下のポリ乳酸(D-1)~(D-3)を使用した。
・ポリ乳酸(D-1):(原料(13))
PLA樹脂1:商品名「Luminy(登録商標) L175」 Total Corbion PLA社製、L体99%以上、Mw20万、MFR 8g/10min
・ポリ乳酸(D-2):(原料(14))
PLA樹脂2:商品名「Luminy(登録商標) LX175」 Total Corbion PLA社製、L体96%、Mw20万、MFR 6g/10min
・ポリ乳酸(D-3):(原料(15))
PLA樹脂3:商品名「Luminy(登録商標) L105」 Total Corbion PLA社製、L体99%以上、Mw11万、MFR 70g/10min
上記ポリ乳酸(D-1)~(D-3)のMFR(メルトマスフローレート)はカタログ値を採用している。当該MFR(g/10min)は、JIS K 7210-1に準拠して、210℃、2.16kgの荷重条件にて測定している。
【0207】
(3)スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B)として、以下のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)~(B-9)を使用した。
【0208】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)は、第3ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。):(原料(3))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)は、以下の方法で合成した。
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン40.6質量%、アクリル酸n-ブチル8.3質量%、メタアクリル酸メチル30.1質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)8.7質量%、溶剤としてエチルベンゼン12.0質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%、を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1に、2.5リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を113℃/116℃/120℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分150回転とした。反応器出口の反応率40%であった。
【0209】
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は125℃/131℃/134℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は140℃/145℃/150℃に設定した。
【0210】
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズして、ペレット状のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)を得た。尚、押出機の温度は230℃に設定した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)の重量平均分子量Mwは21万であり、MFRは2.8g/10minであった。
【0211】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-2)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-2)は、第4ゴム状重合体粒子(x1)を含有する。):(原料(4))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-2)は、特開2001-40193号公報の段落[0022]~[0023]に記載されている方法を用いて合成した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-2)の重量平均分子量Mwは、3万以上50万以下であり、MFRは0.3~10g/10minである。
【0212】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)は、第5ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。): (原料(5))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)は、以下の方法により合成した。
攪拌機付き原料容器にスチレン66.5重量部、アクリル酸n-ブチル15重量部、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)9重量部、エチルベンゼン9重量部、ノルマルドデシルメルカプタン0.006重量部を投入し、スチレン-ブタジエンブロック共重合体を完全に溶解した。この原料溶液を、攪拌機付き層流型反応器(容量1.5リットル)を3基直列に連結した重合装置に0.6リットル/hrの速度で供給し、第1段反応器の反応温度110~120℃、第2段の反応器の反応温度120℃~130℃、第3段の反応器の反応温度130℃~150℃で重合を行なった。得られた重合溶液を2段ベント付き脱揮押出機に連続的に供給し、押出機の温度200~240℃、1段ベント及び2段ベントを2.0kPaの減圧下で、未反応単量体、溶媒を回収し、スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)を得た。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)の重量平均分子量Mwは25万であり、MFRは6.5g/10minであった。
【0213】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-4)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-4)は、ゴム状重合体粒子(A)を含有しない。):(原料(6))
スチレン系単量体としてスチレン、ゴム状重合体の代わりに、メタクリル酸メチルを使用した以外は、スチレン系樹脂(C-1)と同様の方法でスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-4)を合成した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-4)の重量平均分子量Mwは15万であり、MFRは0.7g/10minであった。
【0214】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-5)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-5)は、ゴム状重合体粒子(A)を含有しない。):(原料(7))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-5)は以下の通り合成した。
温度計、攪拌機、コンデンサーを備えたガラス製反応器に、1.0%のポリビニルアルコール水溶液300質量部と予めメタクリル酸メチル10質量部にポリメリックペルオキシド1.5質量部を溶解させて得られた溶液とを仕込んだ。反応器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しつつ65℃に加熱して重合を開始した。温度を65℃に維持しつつ2時間重合させた後、スチレン90質量部を加えた。次いで温度を80℃に昇温して6時間重合を続けた。室温に冷却して重合を終了した後、重合物を濾別しよく水洗してから真空乾燥して白色粒状のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-5)(A-B型ブロック共重合体)97質量部を得た。組成比はスチレン/メタクリル酸メチル=90/10であった。
得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-5)の重量平均分子量Mwは5万であり、MFRは0.3~7.0g/10minである。
【0215】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-6)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-6)は、ゴム状重合体粒子(A)を含有しない。):(原料(8))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-6)は以下の通り合成した。
温度計、攪拌機、コンデンサーを備えたガラス製反応器に、1.0%のポリビニルアルコール水溶液300質量部と予めメタクリル酸メチル30質量部にポリメリックペルオキシド1.5質量部を溶解させて得られた溶液とを仕込んだ。反応器内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しつつ65℃に加熱して重合を開始した。温度を65℃に維持しつつ2時間重合させた後、スチレン70質量部を加えた。次いで温度を80℃に昇温して6時間重合を続けた。室温に冷却して重合を終了した後、重合物を濾別しよく水洗してから真空乾燥して白色粒状のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-6)(A-B型ブロック共重合体)97質量部を得た。組成比はスチレン/メタクリル酸メチル=70/30であった。
得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-6)の重量平均分子量Mwは7万であり、MFRは0.3~7.0g/10minである。
【0216】
・ABS樹脂(ABS樹脂は、ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。)):(原料(16))
ABS樹脂は、スタイラック120(ABS樹脂、旭化成株式会社製)を使用した。MVRは18cm/10min(密度1.05g/cm)である。
【0217】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)は、第9ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。):(原料(17))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)は、以下の方法で合成した。
攪拌機付き原料容器にスチレン系単量体としてスチレン40.6質量%、アクリル酸n-ブチル8.3質量%、メタアクリル酸メチル30.1質量%、ゴム状重合体としてスチレン-ブタジエンブロック共重合体(旭化成株式会社製:アサプレン625A)8.7質量%、溶剤としてエチルベンゼン12.0質量%、重合開始剤として1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量%、連鎖移動剤としてα-メチルスチレンダイマー0.17質量%、を混合溶解した重合液を、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-1に、2.5リットル/Hrで連続的に仕込み、温度を113℃/116℃/120℃に調整した。攪拌機の回転数は毎分150回転とした。反応器出口の反応率40%であった。
続いて層流型反応器-1と直列に接続された、攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-2に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分15回転とし、温度は125℃/131℃/134℃に設定した。続いて攪拌機を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な6.2リットルの層流型反応器-3に反応液を送った。攪拌機の回転数は毎分10回転とし、温度は140℃/145℃/150℃に設定した。
重合反応器(層流型反応器-3)から連続して排出される重合体溶液を真空ベントつき押出機で、10torrの減圧下、脱揮後ペレタイズして、ペレット状のスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)を得た。尚、押出機の温度は230℃に設定した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)の重量平均分子量Mwは21万であり、MFRは2.8g/10minであった。
【0218】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)は、第10ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。):(原料(18))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)は、以下の方法で合成した。
スチレンの添加量を42.6質量%とし、かつメタアクリル酸メチルの添加量を26.1質量%とした以外は、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)の合成方法と同様でスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)を合成した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)の重量平均分子量Mwは21万であり、MFRは1.3g/10minであった。
【0219】
・スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)は、第11ゴム状重合体粒子(x2)を含有する。):(原料(19))
スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)は、以下の方法で合成した。
スチレンの添加量を26.8質量%とし、アクリル酸n-ブチルの添加量を15.8質量%とし、かつメタアクリル酸メチルの添加量を26.1質量%とした以外は、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)の合成方法と同様でスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)を合成した。得られたスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)の重量平均分子量Mwは21万であり、MFRは7.2g/10minであった。
【0220】
(4)ゴム状重合体粒子(A)
ゴム状重合体粒子(A)として、以下のゴム状重合体粒子(A-1)~(A-11)を使用した。
・ゴム状重合体粒子(A-1):(原料(1))
ゴム状重合体粒子(A-1)として、第1ゴム状重合体粒子(x1)(商品名「タフプレン126S」(旭化成株式会社製)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第1ゴム状重合体粒子(x1)の重量平均径は、0.2μmであった。ゴム状重合体粒子(A-1)は、ミクロ相分離構造を有する。
【0221】
・ゴム状重合体粒子(A-2):(原料(2))
ゴム状重合体粒子(A-2)として、第2ゴム状重合体粒子(x1)(商品名「タフテックH1043」(旭化成株式会社製))を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第2ゴム状重合体粒子(x1)の重量平均径は、0.25μmであった。ゴム状重合体粒子(A-2)は、ミクロ相分離構造を有する。
【0222】
・ゴム状重合体粒子(A-3):(原料(3))
ゴム状重合体粒子(A-3)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-1)中に含有される第3ゴム状重合体粒子(x2)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第3ゴム状重合体粒子(x2)の重量平均径は、0.6μmであった。
【0223】
・ゴム状重合体粒子(A-4):
ゴム状重合体粒子(A-4)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-2)中に含有される第4ゴム状重合体粒子(x1)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第4ゴム状重合体粒子(x1)の重量平均径は、0.3μmであった。
【0224】
・ゴム状重合体粒子(A-5):
ゴム状重合体粒子(A-5)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)中に含有される第5ゴム状重合体粒子(x2)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第5ゴム状重合体粒子(x2)の重量平均径は、0.9μmであった。
【0225】
・ゴム状重合体粒子(A-6):
ゴム状重合体粒子(A-6)として、上記スチレン系樹脂(C-1)中に含有される第6ゴム状重合体粒子(x3)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第6ゴム状重合体粒子(x3)の重量平均径は、1.25μmであった。
【0226】
・ゴム状重合体粒子(A-7):
ゴム状重合体粒子(A-7)として、上記スチレン系樹脂(C-2)中に含有される第7ゴム状重合体粒子(x3)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第7ゴム状重合体粒子(x3)の重量平均径は、1.7μmであった。
【0227】
・ゴム状重合体粒子(A-8):
ゴム状重合体粒子(A-8)として、上記スチレン系樹脂(C-3)中に含有される第8ゴム状重合体粒子(x4)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第8ゴム状重合体粒子(x4)の重量平均径は、3.6μmであった。
【0228】
・ゴム状重合体粒子(A-9):
ゴム状重合体粒子(A-9)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-7)中に含有される第9ゴム状重合体粒子(x2)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第9ゴム状重合体粒子(x2)の重量平均径は、0.6μmであった。
【0229】
・ゴム状重合体粒子(A-10):
ゴム状重合体粒子(A-10)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-8)中に含有される第10ゴム状重合体粒子(x2)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第10ゴム状重合体粒子(x2)の重量平均径は、0.6μmであった。
【0230】
・ゴム状重合体粒子(A-11):
ゴム状重合体粒子(A-11)として、上記スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-9)中に含有される第11ゴム状重合体粒子(x2)を使用した。上記「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄の測定方法によれば、第11ゴム状重合体粒子(x2)の重量平均径は、0.6μmであった。
【0231】
「(4)ゴム状重合体粒子(A)」の本欄における(x1)、(x2)、(x3)及び(x4)は、重量平均径の範囲に対応している。(x1)は、重量平均径0.05μm以上0.5μm未満の範囲を有し、(x2)は、重量平均径0.5μm以上1μm未満の範囲を有し、(x3)は、重量平均径1μm以上2.5μm未満の範囲を有し、(x4)は、重量平均径2.5μm以上10μm以下の範囲を有することを示している。また、第1~第8の序数は、組成の種類を示しており、異なる序数は異なる材料組成であることを意味している。したがって、第1ゴム状重合体粒子(x1)とは、第2ゴム状重合体粒子~第8ゴム状重合体粒子とは異なる材料組成であって、且つその重量平均径は、0.05μm以上0.5μm未満の範囲内であることを意味する。
【0232】
(5)添加剤
添加剤(1)として、酸化チタン(商品名「CR60」 石原産業社製(平均粒子径 0.21μm(カタログ表示値)))を使用した。
【0233】
添加剤(2)として、流動パラフィン(商品名「ダフニーオイルCP68N」 出光興産製 動粘度(40℃)69.09mm/s(カタログ表示値))を使用した。また、使用した流動パラフィン中のナフテン量は、全流動パラフィンに対して15~55質量%含有する。
【0234】
「実施例1~42のスチレン系樹脂組成物の製造方法」
上記の「実施例・比較例に使用した原料」の欄及び下記の表2に従い、原料(1)~(15)をそれぞれ調製した後、下記表3、表4、表5及び表6に示す通り原料(1)~(15)を計量した。計量した原料(1)~(15)をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、実施例1~40のペレット状のスチレン系樹脂組成物を得た。
【0235】
【表2】
【0236】
「比較例1~7の樹脂組成物の製造方法」
上記の「実施例・比較例に使用した原料」の欄及び上記の表2に従い、原料(1)~(15)をそれぞれ調製した後、表3~表6に示す通り計量した。計量した原料(1)~(15)及び原料(16)のABS樹脂をドラムタンブラーで配合し、二軸押出機(東芝機械株式会社製TEM-26SS)でシリンダー設定温度220℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練し溶融ストランドとして抜き出した。溶融ストランドを水冷しロータリーカッターでストランドをカッティングすることにより、比較例1~7のペレット状の樹脂組成物を得た。
【0237】
「シートの製造方法」
得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物又は樹脂組成物を創研株式会社製のスクリュー径30mmのシート押出機に供給した。樹脂溶融ゾーンの温度は180~220℃に設定し、Tダイ(コートハンガーダイ)より吐出量10kg/hで溶融押出した後、80℃に設定したキャストロール、タッチロールに圧着し、幅300mm、厚み0.3mmのシートを得た。
【0238】
「容器の製造方法」
得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物又は樹脂組成物を住友重機械工業株式会社製、射出ブロー成形機SG125NPに供給した。樹脂溶融ゾーン、ホットランナーの温度を180~220℃に設定し、50℃に設定された射出金型内に射出した後、ブロー金型内に移動させ、0.5MPaの圧力にてブローを行い、円筒状の容器を得た。
【0239】
「2mmプレートの製造方法」
得られたペレット状のスチレン系樹脂組成物又は樹脂組成物を東芝機械株式会社製EC60N、射出成形機に供給した。樹脂溶融ゾーンの温度は180~220℃に設定し、50℃に設定された金型内に射出、2mm厚のプレートを得た。
【0240】
[実施例1~42及び比較例1~7]
調製した実施例1~42のスチレン系樹脂組成物及び比較例1~7の樹脂組成物を用いて、上述の「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄に記載の方法により粒子径分布及び積分分布曲線を算出した。その結果を、以下の表3~表5及び表6に示す。
【0241】
表3~表6に示す通り、得られた粒子径分布によれば、実施例1~42のスチレン系組成物はいずれも多峰性を示すことが確認された。一方、表6に示す通り、比較例1の樹脂組成物は、粒子径分布のモード値のピークが確認されなかった。また、比較例2~7のスチレン系組成物はいずれも単峰性を示すことが確認された。
【0242】
調製した実施例1~42のスチレン系樹脂組成物及び比較例1~7の樹脂組成物から、上記シートの製造方法、容器の製造方法及びにより2mmプレートの製造方法により、シート、円筒状の容器、及び2mm厚プレートをそれぞれ作製して、上記評価方法により、ディポン衝撃強度、口部圧縮評価、座屈強度評価、成形性試験(糸引き)、成形性試験(離型性不良)を行った。その結果を以下の表3、表4、表5及び表6に示す。
【表3】
【0243】
【表4】
【0244】
【表5】
【0245】
【表6】
【0246】
上記表3~表6の実験結果から、実施例1~42のスチレン系組成物は、比較例1~7に比べて優れた耐衝撃性及び高剛性を示すことが確認された。
【0247】
「実施例43~45」
製造した容器の口部圧縮の評価の際に、一部の容器の口部に亀裂が入っていることを確認したことから、容器口部の衝撃時の割れ個数について検討した。その結果、上記実施例1~40のうち、特に実施例28のスチレン系樹脂組成物を成形した容器の口部の衝撃時の割れ個数が他の例と比較して少ないことが確認された。
そこで、実施例28の特徴である原料(3)(スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3))の含有量について検討したところ、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸ブチル単量体単位)の量と容器口部の衝撃時の割れ個数に相関関係が確認された。
以下、当該スチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)に含まれる(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸ブチル単量体単位)の量と容器口部の衝撃時の割れ個数の評価結果について説明する。また、スチレン系樹脂組成物中において(メタ)アクリル酸エステルの量が増えると、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸ブチル単量体単位)が分子内可塑剤としての効果を発揮してTgを低下させることから耐熱性が低下することも考慮して、容器の耐熱性についても評価した。
【0248】
上記の実施例1~42及び比較例1~7と同様の条件を用いて、「実施例・比較例に使用した原料」の欄及び上記の表2に従い、実施例43~45のスチレン系樹脂組成物及び比較例8の樹脂組成物を用いて、上述の「(8)粒子径分布、積分分布曲線及び重量平均径の測定」の欄に記載の方法により粒子径分布及び積分分布曲線を算出した。さらに、調製した実施例41~43のスチレン系樹脂組成物及び比較例8の樹脂組成物から、上記シートの製造方法、容器の製造方法及びにより2mmプレートの製造方法により、シート、円筒状の容器、及び2mm厚プレートをそれぞれ作製して、上記評価方法により、ディポン衝撃強度、口部圧縮評価、座屈強度評価、成形性試験(糸引き)、成形性試験(離型性不良)、容器口部衝撃時の割れ個数評価及び耐熱性評価を行った。
なお、実施例5、7及び実施例28についても比較のため、上記容器口部衝撃時の割れ個数評価及び耐熱性評価を行った。その結果を以下の表7に示す。
【0249】
【表7】
表7の実験結果から、(メタ)アクリル酸エステル(アクリル酸ブチル単量体単位)が所定量含有されることにより、耐熱性を低下することなく、容器口部の衝撃時の割れ個数を低減できることが確認された。
【0250】
上記表7で採用したアクリル酸ブチル単量体単位の定量は、以下の方法を用いて算出した。
「アクリル酸ブチル単量体単位の定量方法」
濃度既知の試料としてスチレン-(メタ)アクリル系樹脂(B-3)を内部標準として用い、熱分解GC/MS測定から、実施例及び比較例で調製した組成物中のアクリル酸ブチル単量体単位成分を定量した。手順は以下の通りである。
<検量線用の標準溶液調整、濃度既知試料の分析(手順1)>
図6に記載のフローチャートの通り、アクリル酸ブチル単量体単位濃度既知の試料(13C-NMR測定で定量)を準備し、クロロホルムを用いて溶解させ、標準溶液を調製した。次にGC/MS測定から得られたアクリル酸ブチル単量体単位の面積値を用いて、絶対検量線法により定量した。検量線には13C-NMR測定から求めたBA定量結果を使用した。
【0251】
<濃度未知の組成物中のアクリル酸ブチル単量体単位量の測定>
図7に記載のフローチャートの通り、試料約1mgを精秤し、上記手順1で調整した試料を内部標準として20μL添加後、熱分解GC/MS測定を実施し、アクリル酸ブチル単量体単位の面積値を用いて標準添加法により定量した。
なお、NMR及び熱分解GC/MSの測定条件等は以下の通りである。
13C-NMRの測定条件>(定量モード)
装置:JNM‐ECZ500(日本電子)+superCOOLプローブ
観測核:13
共鳴周波数:124.50MHz
パルス幅:90°
待ち時間:60sec
積算回数:1500回(24h)
溶媒:CDCl
測定温度:室温
化学シフト基準:TMS 0.00ppm
<熱分解GC/MSの測定条件>
GC/MS装置:Agilent 6890GC/5973MSD
カラム:HP-5MS(L:30m,I.D.:0.25mm,F:0.25μm)
キャリア:ヘリウム
検出器:MSD
イオン化法:EI
質量範囲 m/z 10-800
オーブン温度:40(5min hold)→20℃/min→320℃(12min hold)
注入口:320℃
インタフェース温度:320℃
スプリット比:1/10
熱分解装置:FRONTIER LAB PY-2010D
分解温度:600℃
インタフェース温度:320℃
【0252】
「参考例」
参考として、市販のHIPS樹脂(商品名「403R」 PSジャパン株式会社製)単独の粒子径分布及びその積分分布曲線を算出した。その結果を、図3に示す。図3(a)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に頻度(%)(種々の円相当径を有するゴム状重合体粒子(A)の体積分率(%))を表示した場合における、参考例のHIPS樹脂に含まれるゴム状重合体粒子の粒子径分布を表すヒストグラムである。図3(b)は、横軸に円相当径を表示し、縦軸に前記頻度(%)の積算値を表示した場合における、参考例のHIPS樹脂に含まれるゴム状重合体粒子の円相当径を積算した積分分布曲線である。参考例のHIPS樹脂は、図3(a)から、円相当径が0.5~0.9μmの範囲に極大値を有することが確認できる。また、参考例のHIPS樹脂の積分分布曲線における積算値の20%径(d20%)は、0.62μmであり、積算値の80%径(d80%)は、0.98μmであった。したがって、参考例のHIPS樹脂単独の積分分布曲線における積算値の80%径(d80%)と前記20%径(d20%)との差は、0.36μm以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0253】
本実施形態におけるスチレン系樹脂組成物、及びそれを含む成形品は、デスクトップパソコンやノート型パソコン等のコンピューター部品、携帯電話部品、電気・電子機器、携帯情報端末、家電製品部品、自動車部品、産業資材、及び建築材等のシート、フィルム、発泡体等に好適に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7