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特許7146145ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
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  • 特許-ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220926BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220926BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20220926BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20220926BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220926BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220926BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220926BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L21/78 N
H01L21/68 N
B32B7/06
B32B27/16 101
C09J7/38
C09J201/00
G09F9/00 338
G09F9/33
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022530952
(86)(22)【出願日】2022-01-13
(86)【国際出願番号】 JP2022000963
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021053426
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】古野 健太
(72)【発明者】
【氏名】福元 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜章
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-53558(JP,A)
【文献】特開2020-188261(JP,A)
【文献】国際公開第2019/207920(WO,A1)
【文献】特表2014-515883(JP,A)
【文献】特開2010-251359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
B32B 7/06
B32B 27/16
C09J 7/38
C09J 201/00
G09F 9/00
G09F 9/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であることを特徴とする請求項1に記載のワークハンドリングシート。
【請求項3】
前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項2に記載のワークハンドリングシート。
【請求項4】
シリコンウエハのミラー面に対する粘着力は、300mN/25mm以上、30000mN/25mm以下であることを特徴とする請求項2または3に記載のワークハンドリングシート。
【請求項5】
前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力は、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下であることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項6】
前記光重合開始剤は、250nm以上、500nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項7】
前記紫外線吸収剤は、有機化合物であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項8】
前記紫外線吸収剤は、1個以上の複素環を有する化合物であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項9】
前記紫外線吸収剤は、炭素環および複素環の少なくとも1種を有し、
前記紫外線吸収剤が有する全ての前記炭素環および前記複素環は、それぞれ単環である
ことを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項10】
前記紫外線吸収剤は、複数の芳香環を有する化合物であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項11】
前記界面アブレーション層中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上、75質量%以下であることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項12】
前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項13】
前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項14】
活性エネルギー線の照射により前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させるとともに、前記レーザー光の照射により前記界面アブレーション層において局所的に界面アブレーションを生じさせることによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項15】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項14に記載のワークハンドリングシート。
【請求項16】
前記ワーク小片は、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることを特徴とする請求項14または15記載のワークハンドリングシート。
【請求項17】
基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えることを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項18】
前記硬化工程の完了後に、前記分離工程を行うことを特徴とする請求項17に記載のデバイス製造方法。
【請求項19】
前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行うことを特徴とする請求項17に記載のデバイス製造方法。
【請求項20】
前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項17~19のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項21】
ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを前記ワーク小片として用いて、前記発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することを特徴とする請求項17~20のいずれか一項に記載のデバイス製造方法。
【請求項22】
前記発光装置は、ディスプレイであることを特徴とする請求項21に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品や半導体装置等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものであり、特に、マイクロ発光ダイオード、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロ発光ダイオードを用いたディスプレイの開発が進められている。当該ディスプレイでは、個々の画素がマイクロ発光ダイオードで構成され、各マイクロ発光ダイオードの発光が独立に制御されている。当該ディスプレイの製造においては、一般的に、サファイア、ガラス等の供給基板上に配置されたマイクロ発光ダイオードを、配線が設けられた配線基板上に実装する必要がある。
【0003】
上記実装の際には、供給基板上に配置された複数のマイクロ発光ダイオードを、配線基板の所定の位置に正確に載置する必要がある。このとき、複数のマイクロ発光ダイオードの中から所定のものを選択的に配線基板に載置させる必要があったり、複数のマイクロ発光ダイオードを同時に載置させる必要もある。
【0004】
このような実装を良好に行う観点から、レーザー光の照射を利用することが検討されている。例えば、複数のマイクロ発光ダイオードを所定の層を介して支持体に保持した後、当該層に対してレーザー光を照射することで、その照射した位置において当該層のアブレーションを生じさせ、それによって支持体から分離(レーザーリフトオフ)したマイクロ発光ダイオードを配線基板に載置する方法が検討されている(特許文献1)。レーザー光は、指向性および収束性に優れているため、照射する位置を制御しやすく、選択的な載置を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6546278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マイクロ発光ダイオードの更なる微細化や、マイクロ発光ダイオードのより高密度な実装も進められており、これらにも対応する上では、特許文献1のような従来の手法よりも効率良く多数のマイクロ発光ダイオードといった微細なワーク小片を取り扱うことができる手段が求められている。
【0007】
また、特許文献1に開示されるような、所定の層を介してマイクロ発光ダイオードを支持体に保持する手法では、その他のシート等の上で複数のマイクロ発光ダイオードを作製した後、それらを支持体上に転写することが行われる。従来、この転写の際に、マイクロ発光ダイオードが上記支持体に良好に移動せず、元のシートに残ってしまうという問題が生じる場合がある。これを回避する観点から、上述した所定の層として、比較的高い粘着力を示す粘着剤層を採用することも考えられる。しかしながら、この場合、当該粘着剤層とマイクロ発光ダイオードとが過度に密着してしまい、レーザーリフトオフによってマイクロ発光ダイオードを分離させるために必要となるレーザー光の照射量が多大なものとなる。このような観点からも、マイクロ発光ダイオードといった微細なワーク小片の良好な取り扱い手段が求められている。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことが可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートであって、前記界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有することを特徴とするワークハンドリングシートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係るワークハンドリングシートは、界面アブレーション層が紫外線吸収剤を含有していることで、レーザー光を照射した場合に効果的に界面アブレーションし、それによりワーク小片を対象物に向けて良好に分離することができる。また、界面アブレーション層が、活性エネルギー線硬化性成分および光重合開始剤を含有することで、活性エネルギー線の照射によってもワーク小片に対する密着性を低下させることができる。そのため、活性エネルギー線照射前の密着性を比較的高く設定することが可能となり、その他のシート等からワークハンドリングシートへのワーク小片の転写が容易となる。また、活性エネルギー線の照射によってワーク小片に対する密着性が低下することにより、レーザーリフトオフのために必要となるレーザー光の照射量を低減することも可能となる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記活性エネルギー線硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性粘着剤であること
が好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明2)において、前記活性エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明2,3)において、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力は、300mN/25mm以上、30000mN/25mm以下であることが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明2~4)において、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、前記界面アブレーション層に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して前記界面アブレーション層を硬化させた後における、前記シリコンウエハの前記ミラー面に対する粘着力は、10mN/25mm以上、300mN/25mm以下であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1~5)において、前記光重合開始剤は、250nm以上、500nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有することが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1~6)において、前記紫外線吸収剤は、有機化合物であることが好ましい(発明7)。
【0017】
上記発明(発明1~7)において、前記紫外線吸収剤は、1個以上の複素環を有する化合物であることが好ましい(発明8)。
【0018】
上記発明(発明1~8)において、前記紫外線吸収剤は、炭素環および複素環の少なくとも1種を有し、前記紫外線吸収剤が有する全ての前記炭素環および前記複素環は、それぞれ単環であることが好ましい(発明9)。
【0019】
上記発明(発明1~9)において、前記紫外線吸収剤は、複数の芳香環を有する化合物であることが好ましい(発明10)。
【0020】
上記発明(発明1~10)において、前記界面アブレーション層中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上、75質量%以下であることが好ましい(発明11)。
【0021】
上記発明(発明1~11)において、前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることが好ましい(発明12)。
【0022】
上記発明(発明1~12)において、前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることが好ましい(発明13)。
【0023】
上記発明(発明1~13)において、活性エネルギー線の照射により前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させるとともに、前記レーザー光の照射により前記界面アブレーション層において局所的に界面アブレーションを生じさせることによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることが好ましい(発明14)。
【0024】
上記発明(発明14)において、前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることが好ましい(発明15)。
【0025】
上記発明(発明14,15)において、前記ワーク小片は、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることが好ましい(発明16)。
【0026】
第2に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、前記積層体における前記界面アブレーション層の全体に対し、または、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、活性エネルギー線を照射することによって、前記界面アブレーション層を全体的または局所的に硬化させる硬化工程と、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程とを備えることを特徴とするデバイス製造方法を提供する(発明17)。
【0027】
上記発明(発明17)においては、前記硬化工程の完了後に、前記分離工程を行うことが好ましい(発明18)。
【0028】
上記発明(発明17)においては、前記分離工程における前記レーザー光の照射を、前記硬化工程における前記活性エネルギー線の照射を兼ねるものとして行い、前記界面アブレーション層の局所的な硬化と前記界面アブレーションとを同時に行うことも好ましい(発明19)。
【0029】
上記発明(発明17~19)において、前記ワーク小片は、半導体部品および半導体装置から選択される少なくとも1種であることが好ましい(発明20)。
【0030】
上記発明(発明17~20)においては、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを前記ワーク小片として用いて、前記発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することが好ましい(発明21)。
【0031】
上記発明(発明21)において、前記発光装置は、ディスプレイであることが好ましい(発明22)。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係るワークハンドリングシートは、微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことができ、また、本発明に係るデバイス製造方法によれば、優れた性能を有するデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートを使用したデバイス製造方法を説明する断面図である。
図3】レーザー光の照射により生じたブリスターおよび反応領域の状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図が示される。図1に示されるワークハンドリングシート1は、基材12と、基材12における片面側に積層された界面アブレーション層11とを備える。
【0035】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1においては、界面アブレーション層11が、ワーク小片を保持可能である。すなわち、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に積層されたワーク小片を、その状態のまま保持することができる。
【0036】
上記保持の具体的な態様は限定されないものの、好ましい例としては、界面アブレーション層11がワーク小片に対する粘着性を発揮することで保持することが挙げられる。この場合、界面アブレーション層11は、後述する通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むこと、すなわち粘着剤層であることが好ましい。
【0037】
また、本実施形態における界面アブレーション層11は、レーザー光の照射によって界面アブレーションするものである。すなわち、界面アブレーション層11は、上記レーザー光の照射を受けた領域において、局所的な界面アブレーションするものである。なお、上記レーザー光としては、界面アブレーションを生じさせることが可能であれば特に限定されず、紫外域、可視光域および赤外域のいずれの波長を有するレーザー光であってよく、中でも、紫外域の波長を有するレーザー光が好ましい。
【0038】
本明細書において、界面アブレーションとは、上記レーザー光のエネルギーによって界面アブレーション層11を構成する成分の一部が蒸発または揮発し、それによって生じたガスが界面アブレーション層11と基材12との界面に溜まって空隙(ブリスター)が生じることを指す。この場合、ブリスターによって界面アブレーション層11の形状が変化し、ワーク小片が界面アブレーション層11から剥がれ落ちて、ワーク小片が分離することとなる。
【0039】
そして、本実施形態における界面アブレーション層11は、活性エネルギー線硬化性成分および光重合開始剤を含有するとともに、紫外線吸収剤を含有する。
【0040】
まず、本実施形態における界面アブレーション層11中に紫外線吸収剤が存在することで、界面アブレーション層11が、レーザー光からエネルギーを受け取る効率が向上する。これにより、効果的に界面アブレーションが生じ、保持したワーク小片を界面アブレーション層11から良好に分離することが可能となる。特に、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量が低減し、レーザー光の照射装置の稼働コストを低減できるとともに、ターゲットとするワーク小片のみを良好に分離し易くなって精度が向上し、さらには、過度なレーザー光照射による装置およびワーク小片等の損傷を防ぐこともできる。
【0041】
さらに、本実施形態における界面アブレーション層11が活性エネルギー線硬化性成分および光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線の照射によって、本実施形態に係るワークハンドリングシートとワーク小片との密着性を低下させることができる。そのため、上述した界面アブレーションを生じさせる前に、または上述した界面アブレーションと同時に、活性エネルギー線の照射によって密着性を低下させることにより、本実施形態に係るワークハンドリングシートからのワーク小片の分離を確実に行うことが可能となる。また、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量をさらに低減することが可能となる。さらに、本実施形態に係るワークハンドリングシートでは、活性エネルギー線の照射によってワーク小片に対する密着性が低下するため、活性エネルギー線の照射前における密着性を高めに設定することも可能となる。それにより、本実施形態に係るワークハンドリングシートに対して、他のシート等からワーク小片を転写する際に、当該他のシート等におけるワーク小片の残留を防いで、良好な転写を行うことが可能となる。
【0042】
1.界面アブレーション層
本実施形態における界面アブレーション層11の具体的な構成や組成は、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションするという性質を有し、且つ、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有するものである限り、特に限定されない。
【0043】
(1)紫外線吸収剤
本実施形態における紫外線吸収剤の種類は特に限定されない。本実施形態における紫外線吸収剤は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよいが、良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点からは有機化合物であることが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤が有機化合物である場合、当該紫外線吸収剤の好ましい例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸系紫外線吸収剤等の化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
上述した紫外線吸収剤の中でも、YAGの第三次高調波(355nm)において良好な吸収性を有し、且つ良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の少なくとも1種を使用することが好ましく、とりわけヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0046】
上記ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、2-[4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)]-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシルオキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
これらの中でも、トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンおよび2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの少なくとも一種を使用することが好ましい。
【0048】
また、紫外線吸収剤が有機化合物である場合、当該紫外線吸収剤は、その化学構造上の特徴として、1個以上の複素環を有する化合物であることが好ましい。この場合、複素環の数は、4個以下であることが好ましく、特に1個であることが好ましい。
【0049】
また、別の化学構造上の特徴として、本実施形態における紫外線吸収剤は、炭素環および複素環の少なくとも1種を有するとともに、当該紫外線吸収剤が有する全ての炭素環および複素環がそれぞれ単環であることも好ましい。
【0050】
さらなる化学構造上の特徴として、本実施形態における紫外線吸収剤は、複数の芳香環を有する化合物であることも好ましい。この場合、芳香環の数は、2個以上であることが好ましい。また、芳香環の数は、6個以下であることが好ましく、特に3個以下であることが好ましい。
【0051】
上述した化学構造上の特徴において、それぞれの複素環は、それらを構成する炭素以外の元素として、窒素、酸素、リン、硫黄、ケイ素およびセレンから選択される少なくとも1種を有することが好ましく、特に、窒素、酸素、リンおよび硫黄から選択される少なくとも1種を有することが好ましい。また、複素環の環構造を構成する原子の数は特に限定はなく、例えば3個以上、9個以下であり、特に5個以上、6個以下であることが好ましい。好ましい複素環の具体例としては、トリアジン、ベンゾトリアゾール、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピラジン等が挙げられる。
【0052】
また、上述した化学構造上の特徴において、芳香環の好ましい例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、トリフェニル等が挙げられる。
【0053】
上述した化学構造上の特徴を有する紫外線吸収剤の例としては、以下の式(1)の構造を有する紫外線吸収剤(トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン)が挙げられる。
【0054】
【化1】
【0055】
本実施形態における紫外線吸収剤は、250nm以上、400nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有するものであることが好ましい。これにより、良好な界面アブレーションを生じさせ易くなる。なお、紫外線吸収剤の吸収ピークは、後述する試験例の記載に基づいて特定することができ、特に、後述する試験例の記載に沿って測定される、紫外線吸収剤の各波長の吸光度から特定することができる。
【0056】
本実施形態における紫外線吸収剤は、波長355nmの光線の吸光度が、0.5以上であることが好ましく、特に1.0以上であることが好ましく、さらには1.2以上であることが好ましい。これにより、良好な界面アブレーションを生じさせ易くなる。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。上記吸光度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0057】
本実施形態における界面アブレーション層11中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が1質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、本実施形態における界面アブレーション層11中における紫外線吸収剤の含有量は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が75質量%以下であることで、界面アブレーション層11形成のための材料の粘度が適度なものとなり、良好な造膜性を確保し易くなる。
【0058】
また、本実施形態における界面アブレーション層11が後述する粘着性組成物から形成される場合、紫外線吸収剤はこの粘着性組成物中に配合されてもよい。その場合、当該粘着性組成物中における紫外線吸収剤の配合量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が1質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、上記粘着性組成物中における紫外線吸収剤の配合量は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が75質量%以下であることで、得られる粘着剤が所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0059】
(2)活性エネルギー線硬化性成分
本実施形態における活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線の照射により界面アブレーション層11を硬化させることが可能である限り、特に限定されない。活性エネルギー線硬化性成分の例としては、活性エネルギー線硬化性粘着剤や、粘着剤以外の活性エネルギー線硬化性を有する樹脂等が挙げられるが、ワーク小片を保持可能という性質を発揮し易い観点から、活性エネルギー線硬化性粘着剤であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性成分が活性エネルギー線硬化性粘着剤である場合、界面アブレーション層11は、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有する粘着性組成物からなるものであることが好ましい。
【0060】
上述した活性エネルギー線硬化性粘着剤は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等のいずれの粘着剤であってもよいものの、所望の粘着力を発揮し易いという観点からは、アクリル系粘着剤であることが好ましい。
【0061】
また、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性ポリマー(活性エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーと活性エネルギー線非硬化性ポリマーとの混合物であってもよいし、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーと少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよいし、それら3種の混合物であってもよい。
【0062】
最初に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合について、以下説明する。
【0063】
活性エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(活性エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化型重合体(A)」という場合がある。)であることが好ましい。この活性エネルギー線硬化型重合体(A)は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0064】
アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
【0065】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0066】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0067】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、n-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20であるアルキル(メタ)アクリレートの他、例えば、分子内に脂環式構造を有するモノマー(脂環式構造含有モノマー)が好ましく用いられる。
【0070】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
脂環式構造含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは1質量%以上、特に好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体(a1)は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位を、好ましくは35質量%以下、特に好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下の割合で含有する。
【0073】
さらに、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上の割合で含有する。また、アクリル系共重合体(a1)は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位を、好ましくは99質量%以下、特に好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下の割合で含有する。
【0074】
アクリル系共重合体(a1)は、上記のような官能基含有モノマーと、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にもジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0075】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0076】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0077】
また上記不飽和基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸、2-(1-アジリジニル)エチル(メタ)アクリレート、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0078】
上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは50モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上の割合で用いられる。また、上記不飽和基含有化合物(a2)は、上記アクリル系共重合体(a1)の官能基含有モノマーモル数に対して、好ましくは95モル%以下、特に好ましくは93モル%以下、さらに好ましくは90モル%以下の割合で用いられる。
【0079】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化型重合体(A)が得られる。
【0080】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化型重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であるのが好ましく、特に10万以上であるのが好ましく、さらには15万以上であるのが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、150万以下であるのが好ましく、特に125万以下であるのが好ましく、さらには100万以下であるのが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0081】
活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線硬化型重合体(A)といった活性エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とする場合であっても、活性エネルギー線硬化性粘着剤は、エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)をさらに含有してもよい。
【0082】
活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0083】
かかる活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
活性エネルギー線硬化型重合体(A)に対し、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)を配合する場合、活性エネルギー線硬化性粘着剤中における活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマー(B)の含有量は、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、0質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、活性エネルギー線硬化型重合体(A)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0085】
次に、活性エネルギー線硬化性粘着剤が、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とする場合について、以下説明する。
【0086】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0087】
少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、前述の成分(B)と同じものが選択できる。活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分と少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー1質量部以上であるのが好ましく、特に60質量部以上であるのが好ましい。また、当該配合比は、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分100質量部に対して、少なくとも1つ以上の活性エネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマー200質量部以下であるのが好ましく、特に160質量部以下であるのが好ましい。
【0088】
(3)光重合開始剤
本実施形態における光重合開始剤は、特に限定されない。本実施形態における界面アブレーション層11が光重合開始剤を含有することで、特に活性エネルギー線として紫外線を用いる場合に、界面アブレーション層11の重合硬化時間および光線照射量を低減しながらも、効果的に界面アブレーション層11を硬化させることが可能となる。
【0089】
光重合開始剤(C)としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上述した光重合開始剤(C)の中でも、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0091】
本実施形態における光重合開始剤(C)は、250nm以上、500nm以下の波長の範囲に吸収ピークを有するものであることが好ましい。これにより、活性エネルギー線硬化性成分を良好に硬化させやすくなり、ワーク小片に対する密着性を低下させ易くなる。なお、光重合開始剤(C)の吸収ピークは、後述する試験例の記載に基づいて特定することができ、特に、後述する試験例の記載に沿って測定される、光重合開始剤(C)の各波長の吸光度から特定することができる。
【0092】
また、本実施形態における光重合開始剤(C)は、吸光度に関して、以下の条件を満たすことが好ましい。
【0093】
すなわち、界面アブレーション層11の硬化の際の紫外線光源として高圧水銀ランプを用いる場合には、波長313nmの光線の吸光度が、0.1以上であることが好ましく、特に0.2以上であることが好ましく、さらには0.3以上であることが好ましい。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。また、波長365nmの光線の吸光度が、0.02以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.07以上であることが好ましい。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。また、波長407nmの光線の吸光度が、0.001以上であることが好ましく、特に0.002以上であることが好ましく、さらには0.003以上であることが好ましい。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい。
【0094】
また、界面アブレーション層11の硬化の際の紫外線光源として紫外線LEDを用いる場合には、波長365nmの光線の吸光度が、0.02以上であることが好ましく、特に0.05以上であることが好ましく、さらには0.07以上であることが好ましい。なお、上記吸光度の上限値については特に限定されず、例えば4.0以下であってよい
【0095】
光重合開始剤(C)が上述した吸光度の条件を満たすことで、活性エネルギー線硬化性成分を良好に硬化させやすくなり、ワーク小片に対する密着性を低下させ易くなる。なお、上記吸光度は、光重合開始剤の濃度0.01質量%のメタノール溶液(光重合開始剤がメタノールに不溶である場合は、アセトニトリル溶液)を調製し、その溶液における波長200~500nmの範囲の吸光度を、紫外可視近赤外(UV-Vis-NIR)分光光度計(島津製作所社製,製品名「UV-3600」,光路長10mm)を使用して測定したものである。
【0096】
界面アブレーション11中における光重合開始剤(C)の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.3質量部以上であることが好ましく、さらには0.5質量部以上であることが好ましい。また、上記含有量は、活性エネルギー線硬化性成分100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましく、さらには10質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤(C)の含有量が上記範囲であることで、効果的に界面アブレーション層11を硬化させ易くなる。
【0097】
(4)その他の成分
本実施形態における活性エネルギー線硬化性成分が活性エネルギー線硬化性粘着剤である場合、当該活性エネルギー線硬化性粘着剤においては、上記成分以外にも、適宜他の成分を配合してもよい。他の成分としては、例えば、活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)、架橋剤(E)等が挙げられる。
【0098】
活性エネルギー線非硬化性ポリマー成分またはオリゴマー成分(D)としては、例えば、ポリアクリル酸エステル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、重量平均分子量(Mw)が3000~250万のポリマーまたはオリゴマーが好ましい。当該成分(D)をエネルギー線硬化性粘着剤に配合することにより、硬化前における粘着性および剥離性、硬化後の強度、他の層との接着性、保存安定性などを改善し得る。当該成分(D)の配合量は特に限定されず、エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して0質量部超、50質量部以下の範囲で適宜決定される。
【0099】
架橋剤(E)の使用は、界面アブレーション層11の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整し易いという観点から好ましい。架橋剤(E)としては、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)等が有する官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0100】
架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.2質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(E)の配合量は、活性エネルギー線硬化型共重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0101】
また、界面アブレーション層11には、粘着付与剤、染料や顔料等の着色材料、難燃剤、フィラー、帯電防止剤等の添加剤を含有させてもよい。なお、界面アブレーション層11には、ワーク小片の分離を良好に生じさせ易いという観点からは、ガス発生剤を含有させないことが好ましい。ガス発生剤を使用すると、界面アブレーション層11全域でガスが発生することがある。その場合、意図した位置のみで界面アブレーションを生じさせて、そこに位置するワーク小片のみを分離させることが困難となり、ワーク小片の分離を良好に行うことが困難となる場合がある。
【0102】
(5)界面アブレーション層の厚さ
本実施形態における界面アブレーション層11の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上が好ましい。また、界面アブレーション層11の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。界面アブレーション層11の厚さが上記範囲であることで、界面アブレーション層11上におけるワーク小片の保持と、界面アブレーションによるワーク小片の分離とを両立し易いものとなる。
【0103】
2.基材
本実施形態における基材12は、その組成や物性について特に限定されない。ワークハンドリングシート1が所望の機能を発揮し易いという観点からは、基材12は、樹脂から構成されることが好ましい。基材12が樹脂から構成される場合、当該樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリウレタン;ポリイミド;ポリスチレン;ポリカーボネート;フッ素樹脂などが挙げられる。また、基材12を構成する樹脂は、上述した樹脂を架橋したものや、上述した樹脂のアイオノマーといった変性したものであってもよい。また、基材12は、上述した樹脂からなる単層のフィルムであってもよく、あるいは、当該フィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0104】
本実施形態における基材12の表面には、界面アブレーション層11に対する密着性を向上させる目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0105】
本実施形態における基材12は、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。また、界面アブレーション層11が、活性エネルギー線により硬化する材料を含む場合、基材12は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
【0106】
本実施形態における基材12の製造方法は、樹脂から基材12を製造するものである限り特に限定されない。例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法等によって、樹脂をシート状に成形することで製造することができる。
【0107】
本実施形態における基材12の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、基材12の厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。基材12の厚さが上記範囲であることで、ワークハンドリングシート1が剛性と柔軟性とを所定のバランスで備えるものとなり、ワーク小片の良好なハンドリングを行い易いものとなる。
【0108】
3.剥離シート
本実施形態に界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面をワーク小片に貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。
【0109】
上記剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0110】
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、20μm以上、250μm以下であってよい。
【0111】
4.その他の構成
本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。当該シートでは、接着剤層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該ワーク小片が搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0112】
また、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に保護膜形成層が積層されていてもよい。このようなシートでは、保護膜形成層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をワーク小片に形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0113】
5.ワークハンドリングシートの物性
本実施形態に係るワークハンドリングシートでは、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力(活性エネルギー線照射前の粘着力)が、300mN/25mm以上であることが好ましく、特に320mN/25mm以上であることが好ましく、さらには350mN/25mm以上であることが好ましい。上記粘着力が300mN/25mm以上であることにより、ワークハンドリングシートにワーク小片等の被着体を良好に固定し易くなり、ハンドリング性により優れたものとなる。特に、本実施形態に係るワークハンドリングシートに対して、他のシート等の上に設けたワーク小片を転写する際に、本実施形態に係るワークハンドリングシートがワーク小片を保持し易くなり、上記他のシートにワーク小片が残ることが生じ難くなる。また、上記粘着力は、30000mN/25mm以下であることが好ましく、特に20000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには15000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が30000mN/25mm以下であることにより、レーザー光照射によるワーク小片の分離をより良好に行い易くなる。
【0114】
また、本実施形態に係るワークハンドリングシートでは、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面をシリコンウエハのミラー面に貼付し、界面アブレーション層11に対して高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射して界面アブレーション層11を硬化させた後における、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力が、300mN/25mm以下であることが好ましく、特に250mN/25mm以下であることが好ましく、さらには200mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力が300mN/25mm以下であることにより、その後の界面アブレーションによって、ワーク小片を良好に分離させ易くなる。なお、上記粘着力の下限値としては特に限定されず、例えば、10mN/25mm以上であってよく、特に20mN/25mm以上であってよく、さらには30mN/25mm以上であってよい。
【0115】
なお、これらの粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0116】
6.ワークハンドリングシートの製造方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の製造方法は特に限定されない。例えば、基材12上に界面アブレーション層11を直接形成してもよく、あるいは、工程シート上で界面アブレーション層11を形成した後、当該界面アブレーション層11を基材12上に転写してもよい。
【0117】
界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合、当該界面アブレーション層11の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を調製する。そして、基材の片面または剥離シートの剥離性を有する面(以下、「剥離面」という場合がある。)に上記塗布液を塗布する。続いて、得られた塗膜を乾燥させることで、界面アブレーション層11を形成することができる。
【0118】
上述した塗布液の塗布は公知の方法により行うことができ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行うことができる。なお、塗布液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、界面アブレーション層11を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。また、剥離シート上に界面アブレーション層11を形成した場合、当該剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、被着体に貼付するまでの間、界面アブレーション層11を保護していてもよい。
【0119】
界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物が前述した架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマー成分と架橋剤との架橋反応を進行させ、界面アブレーション層11内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。さらに、上述した架橋反応を十分に進行させるために、ワークハンドリングシート1の完成後、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0120】
7.ワークハンドリングシートの使用方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、ワーク小片の取り扱いのために好適に使用することができる。前述した通り、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11が、レーザー光の照射によって効率的に界面アブレーションするものであるため、界面アブレーション層11上に保持されたワーク小片を高い精度で所定の位置に向けて分離することができる。
【0121】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の使用方法の一例としては、界面アブレーション層11において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、界面アブレーション層11から選択的に分離するという使用方法が挙げられる。
【0122】
上記使用方法において、界面アブレーション層11上に保持された複数のワーク小片は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持されたワーク(ワーク小片の材料となるもの)を当該面上において個片化することで得られたものであってもよい。すなわち、ワーク小片は、界面アブレーション層11上にてワークをダイシングすることで得られたものであってもよい。あるいは、ワーク小片は、本実施形態に係るワークハンドリングシート1とは独立して形成されたものを、界面アブレーション層11上に載置されたものであってもよい。
【0123】
なお、本実施形態に係るワークハンドリングシート1が前述した接着剤層や保護膜形成層を備える場合には、これらの層とワークとを界面アブレーション層11上にてダイシングすることが好ましい。これにより、これらの層が個片化されてなるものが積層されたワーク小片を得ることができる。
【0124】
本実施形態におけるワーク小片の形状やサイズについては特に限定されないものの、サイズに関し、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が10μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましい。また、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が1mm以下であることが好ましく、特に0.25mm以下であることが好ましい。また、ワーク小片の寸法としては、ワーク小片が矩形である場合、ワーク小片の最小の一辺が、2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、上記最小の一辺は、1mm以下であることが好ましく、特に0.5mm以下であることが好ましい。矩形のワーク小片の寸法の具体例としては、2μm×5μm、10μm×10μm、0.5mm×0.5mm、1mm×1mm等が挙げられる。本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、このような微細なワーク小片、特に、ニードルの突き上げによるシートからの分離が困難な微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことができる。その一方で、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、面積が1mmを超えるもの(例えば1mm~2000mm)や、厚さが1~10000μmのもの(例えば10~1000μm)といった比較的大きなサイズのワーク小片についても良好に取り扱うことができる。
【0125】
ワーク小片としては、半導体部品や半導体装置等が挙げられ、より具体的には、マイクロ発光ダイオード、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等が挙げられる。これらの中でも、ワーク小片は発光ダイオードであることが好適であり、特にミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードであることが好ましい。近年、ミニ発光ダイオードやマイクロ発光ダイオードが高密度に配置された装置の開発が検討されており、そのような装置の製造においては、これらの発光ダイオードを高い精度で取り扱うことが可能な本実施形態に係るワークハンドリングシート1が非常に適している。
【0126】
以下に、ワークハンドリングシート1の具体的な使用例として、デバイス製造方法を図2に基づいて説明する。当該デバイス製造方法は、準備工程(図2(a))、配置工程(図2(b))、硬化工程(図2(c))、および分離工程(図2(d)および(e))という4つの工程を少なくとも備える。
【0127】
準備工程においては、図2(a)に示すように、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における、界面アブレーション層11側の面上に複数のワーク小片2が保持されてなる積層体を準備する。当該積層体は、別途作製したワーク小片2をワークハンドリングシート1上に載置することで準備してもよく、あるいは、界面アブレーション層11側の面上に保持されたワークを当該面上において個片化すること(すなわちダイシングすること)で準備してもよい。当該ダイシングは、公知の方法で行うことができる。
【0128】
ワーク小片2の形状やサイズは、前述した通り、特に限定はなく、好ましいサイズも前述した通りである。ワーク小片2の具体例についても、前述した通り、半導体部品や半導体装置等が挙げられ、特に、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードといった発光ダイオードが挙げられる。
【0129】
続く配置工程においては、図2(b)に示すように、ワーク小片2を受容可能な対象物3に対して、上記積層体におけるワーク小片2側の面が向かい合うように上記積層体を配置する。対象物3の例は、製造するデバイスに応じて適宜決定されるものの、ワーク小片2が発光ダイオードである場合には、対象物3の具体例としては、基板、シート、リール等が挙げられ、特に配線が設けられた配線基板が好適に使用される。
【0130】
その後、硬化工程において、図2(c)に示すように、積層体における界面アブレーション層11の全体に対し、活性エネルギー線4を照射することによって界面アブレーション層11を全体的に硬化させる。これにより、界面アブレーション層11は、硬化した界面アブレーション層11’となる。なお、図2(c)では、界面アブレーション層11の全体的に対して活性エネルギー線4を照射する様子が描かれているものの、当該照射は、界面アブレーション層11における、少なくとも1つのワーク小片2が貼付されている位置のみに対して行い、それにより界面アブレーション層11を局所的に硬化させてもよい。
【0131】
上述した活性エネルギー線4の照射は、公知の手法を用いて行ってよく、例えば、光源として高圧水銀ランプや紫外線LEDを備える紫外線照射装置や、後述する分離工程でも使用されるレーザー光照射装置を使用してもよい。
【0132】
その後、分離工程において、まず図2(d)に示すように、上記積層体の硬化後の界面アブレーション層11’における、少なくとも1つのワーク小片2が貼付されている位置に対し、レーザー光5を照射する。当該照射は、ワーク小片2が貼付されている複数の位置に対して同時に行ってもよく、あるいはそれらの位置に対して順次行ってもよい。レーザー光5の照射条件としては、界面アブレーションを生じさせることが可能である限り限定されない。照射のためのレーザー光照射装置としては、公知のものを使用することができる。
【0133】
なお、硬化工程における活性エネルギー線4の照射および分離工程におけるレーザー光5の照射を、ともに上述したレーザー光照射装置を用いて行う場合、硬化工程および分離工程を同時に行ってもよい。すなわち、分離工程におけるレーザー光5の照射を、硬化工程における活性エネルギー線4の照射を兼ねるものとして行い、界面アブレーション層11の局所的な硬化と界面アブレーションとを同時に行ってもよい。この場合、照射するレーザー光5は、そのピーク波長が、300nm以上であることが好ましく、特に310nm以上であることが好ましく、さらには350nm以上であることが好ましい。また、上記ピーク波長は、400nm以下であることが好ましく、特に390nm以下であることが好ましく、さらには380nm以下であることが好ましい。このような波長を有するレーザー光5を照射することで、界面アブレーション層11の硬化と界面アブレーションとを良好に進行させ易いものとなる。
【0134】
一方、図2に示されるように、硬化工程と分離工程とをそれぞれ独立した工程として行う場合には、硬化工程において使用する紫外線照射装置(特に、紫外線LEDを光源として備える装置、およびレーザー光照射装置)から照射される活性エネルギー線4は、そのピーク波長が、300nm以上であることが好ましく、特に310nm以上であることが好ましく、さらには320nm以上であることが好ましい。また、上記ピーク波長は、400nm以下であることが好ましく、特に390nm以下であることが好ましく、さらには380nm以下であることが好ましい。そして、分離工程において使用するレーザー光照射装置から照射されるレーザー光5は、そのピーク波長が、300nm以上であることが好ましく、特に310nm以上であることが好ましく、さらには320nm以上であることが好ましい。また、上記ピーク波長は、400nm以下であることが好ましく、特に390nm以下であることが好ましく、さらには380nm以下であることが好ましい。硬化工程および分離工程において、それぞれ上述のようなピーク波長を有する活性エネルギー線4およびレーザー光5を照射することにより、界面アブレーション層11の硬化と界面アブレーションとを各工程において良好に進行させ易いものとなる。
【0135】
上述したレーザー光5の照射により、図2(e)に示されるように、硬化後の界面アブレーション層11’における照射された位置において界面アブレーションを生じさせることができる。具体的には、レーザー光5の照射によって、硬化後の界面アブレーション層11’における基材12に近位な領域において、当該領域を構成していた成分が蒸発または揮発し、反応領域13となる。そして、上記蒸発または揮発によって生じたガスが基材12と反応領域13との間に溜まり、ブリスター6が形成される。当該ブリスター6の形成によって、ワーク小片2’の位置において局所的に硬化後の界面アブレーション層11’が変形し、硬化後の界面アブレーション層11から剥がされるようにワーク小片2’が分離する。以上により、当該界面アブレーションが生じた位置に存在するワーク小片2’を、対象物3上に載置することができる。
【0136】
なお、レーザー光5の照射によって生じた反応領域13およびブリスター6は、通常、ワーク小片2’の分離した後も残ったままとなる。図3には、順次レーザー光を照射してワーク小片2の分離を行っていく様子が示されており、特に、分離後の状態(左2つ)、分離中の状態(中央)、および分離前の状態(右2つ)が示されている。図示されるように、通常、分離後のブリスター6は、分離中のブリスター6に比べて、多少しぼんだ状態となる。
【0137】
上述したデバイス製造方法は、準備工程、配置工程、硬化工程および分離工程以外の工程を備えていてもよい。例えば、準備工程と分離工程との間の任意のタイミングにおいて、グラインド、ダイボンディング、ワイヤーボンディング、モールディング、検査、転写工程等を行っても良い。
【0138】
以上説明したデバイス製造方法によれば、使用するワーク小片2や対象物3を適宜選択することで様々なデバイスを製造することができる。例えば、ワーク小片2として、ミニ発光ダイオードおよびマイクロ発光ダイオードから選択される発光ダイオードを用いた場合には、そのような発光ダイオードを複数備える発光装置を製造することができ、より具体的にはディスプレイを製造することができる。特に、マイクロ発光ダイオードを画素として備えるディスプレイや、複数のミニ発光ダイオードをバックライトとして備えるディスプレイを製造することができる。
【0139】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0140】
例えば、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における界面アブレーション層11と基材12との間、または基材12における界面アブレーション層11とは反対側の面には、他の層が積層されていてもよい。当該他の層の具体例としては、粘着剤層が挙げられる。この場合、当該粘着剤層側の面を支持台(ガラス板等の透明基板)に貼付した状態で、上述した分離工程等を行うことができる。
【0141】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に限定されないものの、活性エネルギー線を吸収し難く且つ活性エネルギー線を遮断し難いものが好ましい。この場合、当該粘着剤層を介してレーザー光を照射する場合に、当該レーザー光が界面アブレーション層11に到達し易くなり、良好な界面アブレーションを生じさせ易くなる。具体的には、上記粘着剤層を構成する粘着剤として、活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤を使用することが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性成分を含有しない粘着剤を使用することが好ましい。活性エネルギー線硬化性を有しない粘着剤を使用することにより、上記レーザー光を照射した場合であっても上記粘着剤層が硬化することがなく、それにより透明基板からのワークハンドリングシート1の意図しない剥離を防ぐことも可能となる。上記粘着剤層の厚さとしては、特に限定されないものの、例えば、5~50μmであることが好ましい。
【実施例
【0142】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0143】
〔実施例1〕
(1)粘着性組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。この(メタ)アクリル酸エステル重合体に対し、そのアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(活性エネルギー線硬化性成分)を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を前述の方法によって測定したところ、100万であった。
【0144】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,商品名「コロネートL」)2.0質量部と、光重合開始剤としての2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)3.0質量部と、紫外線吸収剤としてのトリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤,BASF社製,製品名「Tinuvin477」)8.0質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。
【0145】
(2)界面アブレーション層(粘着剤層)の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」)の剥離面に対して、上記工程(1)で得られた粘着性組成物の塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱により乾燥させた。これにより、塗膜が乾燥してなる厚さ30μmの界面アブレーション層と、剥離シートとが積層されてなる積層体を得た。
【0146】
(3)ワークハンドリングシートの作製
上記工程(2)で得られた積層体における界面アブレーション層側の面と、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製,製品名「T-910 WM19」,厚さ:50μm)の片面とを貼り合わせることで、剥離シートが貼付された状態のワークハンドリングシートを得た。
【0147】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0148】
〔実施例2~8および比較例1~3〕
活性エネルギー線硬化性成分の組成、架橋剤の含有量、光重合開始剤の種類、ならびに紫外線吸収剤の種類および含有量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを製造した。
【0149】
〔試験例1〕(光重合開始剤および紫外線吸収剤の吸光度の測定)
実施例および比較例で使用した光重合開始剤について、溶媒としてのアセトニトリルに溶解し、濃度0.01質量%の測定溶液を調製した。当該測定溶液について、大形試料室(島津製作所社製,製品名「MPC-3100」)が付属した分光光度計(島津製作所社製,「UV-3600」)により、波長313nm、355nm、365nm、380nmおよび407nmの吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0150】
また、実施例および比較例で使用した紫外線吸収剤についても、上記と同様に測定溶液を調製し、上記と同様に波長313nm、355nm、365nm、380nmおよび407nmの吸光度を測定した。その結果を表2に示す。
【0151】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワークハンドリングシートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、露出した界面アブレーション層の露出面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面(ミラー面)に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼付し、20分静置し、粘着力測定用サンプルとした。
【0152】
その後、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワークハンドリングシートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハのミラー面に対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、紫外線照射前の粘着力として表1に示す。
【0153】
また、上記と同様に得た粘着力測定用サンプルにおける界面アブレーション層に対し、基材を介して、光源として高圧水銀ランプを備えた紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)を照射し(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)、界面アブレーション層を硬化させた。この紫外線照射後の粘着力測定用サンプルについても、上記と同様にシリコンウエハのミラー面に対する粘着力(mN/25mm)を測定した。その結果を、紫外線照射後の粘着力として表1に示す。
【0154】
〔試験例3〕(レーザーリフトオフ適性の評価)
(1)ワークハンドリングシート上におけるチップの準備(準備工程)
シリコンウエハ(#2000,厚さ:350μm)の片面に、ダイシングシート(リンテック社製,製品名「D-485H」)の粘着面を貼付した。続いて、当該ダイシングシートにおける上記粘着面の周縁部(シリコンウエハとは重ならない位置)に、ダイシング用リングフレームを付着させた。さらに、リングフレームの外径に合わせてダイシングシートを裁断した。その後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、シリコンウエハを、300μm×300μmのサイズを有するチップにダイシングした。
【0155】
続いて、実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、それにより露出した露出面と、上記の通り得られた積層体における複数のチップが存在する面とを貼り合わせた。その後、複数のチップからダイシングシートを剥離した。これにより、複数のチップをダイシングシートからワークハンドリングシートに転写し、ワークハンドリングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。なお、比較例3に係るワークハンドリングシートについては、チップを保持するための十分な粘着力を有しなかったため、これ以降の工程は行わず、それに伴い、レーザーリフトオフ適性の評価も行わなかった。
【0156】
(2)活性エネルギー線の照射(硬化工程)およびレーザー光照射によるチップの分離(分離工程)
上記工程(1)で得られた積層体に対し、活性エネルギー線の照射(硬化工程)およびレーザー光照射によるチップの分離(分離工程)を行った。これら硬化工程および分離工程は、以下の条件1、2および3の3通りの方法でそれぞれ行った。
【0157】
(2-1)条件1
光源として紫外線LEDを備えた紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2100」)を用い、上述した積層体におけるワークハンドリングシート側の面に対し、紫外線を照射(照度200mW/cm、積算光量200mJ/cm)することで、ワークハンドリングシートにおける界面アブレーション層を全体的に硬化させた。なお、上記紫外線LEDでは、発する紫外線を含むエネルギー線の発光スペクトルが、最大強度365nm、半値全幅10nmの単一の発光ピークを含むものとなっている。
【0158】
その後、レーザー光照射装置(YAG第三次高調波(波長355nm)かつパルス幅20nsで、光量700mJ/cm)を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。当該照射は、チップ中央の270μm×270μmの領域に対して行った。その他の照射条件としては、周波数:30kHz、照射量:50μJ/shotとした。また、照射は、複数のチップの中から100個のチップ(縦10個×横10個のチップのまとまり)を選択し、それらに対して行った。
【0159】
(2-2)条件2
光源として高圧水銀ランプを備えた紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用い、上述した積層体におけるワークハンドリングシート側の面に対し、紫外線を照射(照度:230mW/cm,光量:190mJ/cm)することで、ワークハンドリングシートにおける界面アブレーション層を全体的に硬化させた。
【0160】
その後、レーザー光照射装置(YAG第三次高調波(波長355nm)かつパルス幅20nsで、光量700mJ/cm)を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。当該照射は、チップ中央の270μm×270μmの領域に対して行った。その他の照射条件としては、周波数:30kHz、照射量:50μJ/shotとした。また、照射は、複数のチップの中から100個のチップ(縦10個×横10個のチップのまとまり)を選択し、それらに対して行った。
【0161】
(2-3)条件3
レーザー光照射装置(YAG第三次高調波(波長355nm)かつパルス幅20nsで、光量700mJ/cm)を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射し、界面アブレーション層の照射位置を硬化させると同時に、界面アブレーションを生じさせた。なお、上記照射は、チップ中央の270μm×270μmの領域に対して行った。その他の照射条件としては、周波数:30kHz、照射量:50μJ/shotとした。また、照射は、複数のチップの中から100個のチップ(縦10個×横10個のチップのまとまり)を選択し、それらに対して行った。
【0162】
(3)ブリスターおよびチップ分離の確認
以上の照射を行ったワークハンドリングシートおよびチップについて、条件ごとに、ワークハンドリングシートにおける基材と界面アブレーション層との界面におけるブリスターの発生の有無、およびワークハンドリングシートからのチップの脱離の有無を確認し、以下の基準に基づいて、レーザーリフトオフ適性を評価した。結果を表1に示す。
○…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、80個以上であった。
×…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、80個未満であった。
【0163】
なお、表1および表2に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
〔光重合開始剤〕
Omnirad379:2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)
IrugacureOXE02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(BASF社製,製品名「IrugacureOXE02」)
Omnirad651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad651」)
Omnirad819:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製,製品名「Omnirad819」)
OmniradTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins社製,製品名「OmniradTPO」)
Omnirad184:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad184」)
〔紫外線吸収剤〕
Tinuvin477:トリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤,BASF社製,製品名「Tinuvin477」)
Tinuvin400:2-[4-(2-ヒドロキシ-3-ドデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンと2-[4-(2-ヒドロキシ-3-トリデシロキシ-プロピル)オキシ-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-[ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンの混合物(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤,BASF社製,製品名「Tinuvin400」)
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
表1から明らかなように、実施例で製造したワークハンドリングシートは、レーザーリフトオフ適性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明のワークハンドリングシートは、マイクロ発光ダイオードを画素として備えるディスプレイ等の製造に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0168】
1…ワークハンドリングシート
11,11’…界面アブレーション層
12…基材
13…反応領域
2,2’…ワーク小片
3…対象物
4…活性エネルギー線
5…レーザー光
6…ブリスター
【要約】
基材12と、基材12における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層11とを備えるワークハンドリングシート1であって、界面アブレーション層11が、活性エネルギー線硬化性成分、光重合開始剤および紫外線吸収剤を含有するワークハンドリングシート1。かかるワークハンドリングシートは、微細なワーク小片であっても良好に取り扱うことができる。
図1
図2
図3