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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】脂溶性組成物を含む水性製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220927BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220927BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/04
A61Q13/00
A61Q17/02
A61K47/38
A61K9/08
A61P17/00 101
A61P17/02
【請求項の数】 31
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016252598
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2017160184
(43)【公開日】2017-09-14
【審査請求日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】1650158
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522343865
【氏名又は名称】ビオシネクス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ,ヴィダル
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-フランソワ,レギャール
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527451(JP,A)
【文献】特開2015-157796(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306223(US,A1)
【文献】特表2013-534561(JP,A)
【文献】特表2013-513558(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0060570(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
C09K 23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記脂溶性組成物は、上記油として、揮発油または揮発油の混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項2】
上記水性製剤は、20重量%より多い脂溶性組成物を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の水性製剤。
【請求項3】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記脂溶性組成物は、有害動物に対する忌避薬機能を有することを特徴とする水性製剤。
【請求項4】
上記脂溶性組成物は、上記油として、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)を含んでいることを特徴とする請求項に記載の水性製剤。
【請求項5】
上記油は、治療および/または予防機能として、有害動物の刺し傷または噛み傷を緩和することを意図した鎮静機能、抗火傷、治癒、リラックスおよび抗炎症機能、および、健康機能として、香水、防臭剤、殺生物剤、殺菌剤、および殺真菌剤機能から選択される少なくとも1つの機能を有することを特徴とする請求項またはに記載の水性製剤。
【請求項6】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記香水組成物は、揮発油または揮発油の混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項7】
上記香水組成物は、5重量%ないし20重量%であることを特徴とする請求項に記載の水性製剤。
【請求項8】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記均質化成分はさらに、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムまたはこれらの化合物の混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項9】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤は、0.1重量%ないし2重量%の均質化成分を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項10】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記均質化成分は、微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項11】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記粘土は、スメクタイト、カオリナイト、イライト、クロライト、バーミキュライト、海泡石またはアタパルガイトを含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項12】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤は、1重量%より少ない粘土を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項13】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、20重量%より少ない保存料としての天然起源のフェネチルアルコールを含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項14】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、10重量%より少ない抗酸化剤を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項15】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、2重量%より少ない、クエン酸に基づくpH調整剤を、含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項16】
0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、上記脂溶性組成物は油を含み、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
水性製剤はさらに、3重量%ないし50重量%の、一つ以上の溶媒として、アルコール、酸、および/または酸性塩から選択される、溶媒を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項17】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記均質化成分はさらに、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムまたはこれらの化合物の混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項18】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤は、0.1重量%ないし2重量%の均質化成分を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項19】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記均質化成分は、微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項20】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記粘土は、スメクタイト、カオリナイト、イライト、クロライト、バーミキュライト、海泡石またはアタパルガイトを含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項21】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤は、1重量%より少ない粘土を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項22】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、20重量%より少ない保存料としての天然起源のフェネチルアルコールを含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項23】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、10重量%より少ない抗酸化剤を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項24】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
上記水性製剤はさらに、2重量%より少ない、クエン酸に基づくpH調整剤を、含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項25】
0.1重量%ないし50重量%の香水組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含み、
水性製剤はさらに、3重量%ないし50重量%の、一つ以上の溶媒として、アルコール、酸、および/または酸性塩から選択される、溶媒を含んでいることを特徴とする水性製剤。
【請求項26】
上記スメクタイトはベントナイトであることを特徴とする請求項11または20に記載の水性製剤。
【請求項27】
上記粘土は、0.5重量%より少ないことを特徴とする請求項12または21に記載の水性製剤。
【請求項28】
上記保存料は、上記天然起源のフェネチルアルコールを、水性製剤の0.4重量%ないし5重量%の量、含んでいることを特徴とする請求項13または22に記載の水性製剤。
【請求項29】
上記抗酸化剤は、ビタミンEを、水性製剤の1重量%より少ない量、含んでいることを特徴とする請求項14または23に記載の水性製剤。
【請求項30】
上記溶媒は、10重量%より少ないことを特徴とする請求項16または25に記載の水性製剤。
【請求項31】
溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メチレンジオール、エチレングリコール、プロパンジオール、グリセロール、ブタンジオール、ペンタノール、イソペンチルジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオールおよびベンザンジオールから選択されることを特徴とする請求項16または25に記載の水性製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物、例えば、揮発油または揮発油の混合物、を含む水性製剤に関する。
【0002】
それは、特に、化粧用途および/または医薬用途のための水性製剤に適用され、脂溶性組成物、例えば、揮発油または揮発油の混合物は、求められる化粧および/または医薬効果に対応する特性を有し、この特性は、例えば、有害動物に対する忌避機能、治療および/または予防機能、例えば、有害動物の刺し傷または噛み傷を緩和することを意図した鎮静機能、抗火傷、治癒、リラックスおよび抗炎症機能、または、健康機能、特に、香水、防臭剤、殺生物剤、殺菌剤、および殺真菌剤機能である。
【0003】
このような製剤は、一般に、対象者の皮膚への直接の適用によって、または、例えば噴霧機、ボールアプリケータまたは他の塗布形態を用いて、空気中または他の表面上での間接的な適用によって用いることを意図される。
【0004】
水と脂溶性組成物は不混和性の液体であるので、それらの混合物の安定性を供給するためには、乳化剤、特に人工的乳化剤を用いることが知られており、このことは、脂溶性組成物の濃度が高いときにはなおさらである。
【0005】
しかしながら、これらの人工的乳化剤の性質は、特に、製剤の化粧用途および/または医薬用途との関連で問題を有している。実際に、製剤中にこれらが存在すると、脂溶性組成物の特性、特に、香水の特性を変えることがあり、また、ある対象者には、好ましくない皮膚反応、特に、刺激またはアレルギーを起こすこともある。
【0006】
これらの欠点を解消するために、文献JP-S55/162710からは、化粧用途の水性製剤が知られており、これは、人工的乳化剤の使用をできるだけ制限するために、水と、高濃度(最大85重量%まで)の油とを含み、また、特に、随意的に水可溶性のポリマーを補足した微結晶性セルロース、例えば、カルボキシメチルセルロースに基づいたもの、を含む均質化混合物を含む。
【0007】
しかしながら、この製剤は、水-油混合物を完全に安定化することはできないので、完全な満足を与えない。したがって、この製剤は、ある期間後には、水と油との相分離を起こし、これは、この製剤の容器内に、および/または、この製剤が適用される対象者の身体の一部に、油によって形成される有効成分の分布の問題を起こしてこの製剤の有効性を妨げることがある。
【0008】
高濃度の油を含む水性製剤の特に長期間の安定性を改善するために、文献FR-2 974 312は、このような製剤にセルロースナノクリスタルを加えることを提案しているが、この解決策は、実施するには比較的複雑であることがわかった。
【0009】
さらに、文献EP-1 699 429からは、化粧用途の水性製剤が知られており、これは、水と、香水油、特に揮発油に基づいた高濃度(少なくとも30重量%)の脂溶性組成物とを含み、また、少量(0.1重量%ないし4重量%)のセルロース誘導体、特にカルボキシメチルセルロース、および/または、粘土、特に、ベントナイトを含んでいる。
【0010】
しかしながら、この文献では、ベントナイトおよび/またはセルロース誘導体を加えるのは、主として、製剤を濃化(thicken)することが狙いであり、一方、水性製剤の安定化は、乳化剤を加えることによって得られる。さらに、増粘剤(thickening agent)の量は、特に噴霧機を用いる場合に、製剤を適用困難にする。
【0011】
本発明は、特に、水と高濃度の脂溶性組成物とを含む水性製剤であって、水と脂溶性組成物との混合物は、長期間の均質性と安定性とを改善し、その一方で、対象者の皮膚に対し、特に噴霧機またはボールアプリケータを用いての適用が容易であり、さらに、製剤の製造が容易になるような水性製剤を提案することによって、従来技術を改善することを狙いとしている。
【0012】
この目的のために、本発明は、0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む水性製剤であって、水性製剤はさらに、
少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分と、
0.01重量%ないし2重量%の粘土と、
残余の水と、
を含んでいることを特徴とする水性製剤を提案する。
【0013】
本発明の他の特徴と利点は、種々の特定の実施形態の以下の記述にて示される。
【0014】
本発明は、0.1重量%ないし50重量%の脂溶性組成物を含む製剤であって、脂溶性組成物は、特に、少なくとも1つの油、より特には、揮発油または揮発油の混合物を含んでいる製剤に関する。特に、本発明は、高濃度、特に、20重量%より多い脂溶性組成物を含んでいる製剤に関する。
【0015】
本発明は、特に、化粧用途および/または医薬用途のための水性製剤に適用され、脂溶性組成物は、求められる化粧および/または医薬効果に対応する特性を有している。
【0016】
特に、脂溶性組成物は、有害動物に対する忌避薬機能を有することができる。この目的のために、例えば、脂溶性組成物は、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)を含んでいることができ、これは、特に、蚊またはダニのような、刺すまたは噛む吸血性の虫を忌避するのに効果的である。一つの実施形態によれば、少なくとも10重量%の、また特に40重量%より大きい、PMDが、脂溶性組成物中に存在する。
【0017】
一例として、脂溶性組成物は、レモンの香りのする、ユーカリ油またはシトロネラ油から由来する揮発油を含んでもよく、例えば、登録商標Citrepelおよび登録商標Citriodiolで販売されている揮発油であり、このような油は、p-メンタン-3,8-ジオールの、公知の天然源を構成する。
【0018】
脂溶性組成物は、他の機能を有することもでき、特に、治療および/または予防機能、例えば、有害動物の刺し傷または噛み傷を緩和することを意図した鎮静機能、抗火傷、治癒、リラックスまたは抗炎症機能、または、健康機能、例えば、香水、防臭剤、殺生物剤、殺菌剤、または殺真菌剤機能を有することもできる。
【0019】
水中での脂溶性組成物の分布を改善するために、水性製剤はさらに、少なくとも微結晶性セルロースを含む、0.1重量%ないし10重量%の均質化成分、特に、0.1重量%ないし2重量%の均質化成分を含んでいる。
【0020】
特に、微結晶性セルロースは、特に、巨視的なスケールにまで塊になって組織された木材に由来する、天然起源の成分である。さらに、微結晶性セルロースは、水に可溶であり、また、水性製剤に加えられると、水と脂溶性組成物との間の固体-固体結合を生成することによってゲルを形成する。
【0021】
一つの実施形態によれば、均質化成分はさらに、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガムまたはこれらの化合物の混合物を含んでおり、キサンタンガムは、特に、濃化特性およびゲル化特性を有している。特に、微結晶性セルロースは、均質化成分が製造されるときに、カルボキシメチルセルロースおよび/またはキサンタンガムと一緒に共処理(co-process)(混合抽出)されることができる。
【0022】
特に有利には、均質化成分は、微結晶性セルロースと、カルボキシメチルセルロースおよび/またはキサンタンガムとの混合物を含み、この混合物は、75重量%ないし95重量%の微結晶性セルロースと、5重量%ないし25重量%のカルボキシメチルセルロースおよび/またはキサンタンガムとを含む。
【0023】
さらに、長期間、水と脂溶性組成物との混合物を安定化するために、またそれゆえ、特に、対象者の皮膚への製剤の適用中の相分離と、それに起因しうる脂溶性組成物の均質性と分布の問題とを防ぐために、水性製剤はさらに、0.01重量%ないし2重量%、特に、1重量%より少ない、特に、0.5重量%より少ない、粘土を含んでいる。さらに、少量の粘土が、製剤の濃化を制限することができ、それゆえ、特に、噴霧機またはボールアプリケータを用いた場合に、その適用を容易にする。
【0024】
特に、粘土は、スメクタイト、特に、ベントナイトを含んでいることができ、または、粘土は、カオリナイト、イライト、クロライト、バーミキュライト、海泡石またはアタパルガイトなどの、他の系統の粘土を含んでいることができる。有利には、粘土は、質量で100%に近い純度で、結晶シリカ総量の10重量%より少ない量を含む、ベントナイトを含んでもよい。
【0025】
水性製剤は、さらに、特に、追加の特性を与えるために、他の成分を含んでもよい。
【0026】
このように、水性製剤は、0.1重量%ないし50重量%の香水組成物、特に、5重量%ないし20重量%の香水組成物を含んでいることができる。特に、香水組成物は、揮発油または揮発油の混合物、または、特に、エステルやテルペンのような、揮発油から抽出された他の成分を含んでいることができる。
【0027】
例えば、香水組成物は、Icebergの登録商標57656または登録商標RS57656に基づいていてもよい。
【0028】
水性製剤はさらに、
20重量%より少ない保存料、例えば0.4重量%ないし5重量%の、天然起源のフェネチルアルコールと、
10重量%より少ない抗酸化剤、例えば1重量%より少ないビタミンEと、
製剤のpHを、3ないし7の範囲、好ましくは皮膚のpHに近くなるように調節するための、2重量%より少ないpH調整剤、特に、クエン酸に基づくpH調整剤と、
3重量%ないし50重量%の、特に、10重量%より少ない、一つ以上の溶媒であって、脂溶性組成物または界面活性剤に対して吸収性でなく、特に、アルコール、酸、および/または酸性塩から選択される、溶媒と、を含んでいることができる。特に、溶媒は、エタノール、イソプロパノール、メチレンジオール、エチレングリコール、プロパンジオール、グリセロール、ブタンジオール、ペンタノール、イソペンチルジオール、ヘキサノール、ヘキサンジオールおよびベンザンジオールから選択されることができる。
【0029】
最後に、特に、脂溶性組成物、均質化混合物、粘土および他の可能性のある成分の量に関して、水性製剤の組成物がどのようなものであっても、100%に対する製剤の残余は水であり、特に、脱塩された水である。
【0030】
特に、水性製剤は、以下のステップを提供する簡単な方法に従って製造されてもよい:
脂溶性組成物、均質化成分、粘土、および、場合によっては、香水、保存料、抗酸化剤および/またはpH調整剤を混合するステップ、
混合物を機械的撹拌、特に、3000rpmの速さで機能する回転子-固定子を用いて、およそ10分間、機械的撹拌するステップ、
得られた製剤を10ないし30分間休ませるステップ。
【0031】
さらに、得られる水性製剤が溶媒をも含んでいる場合は、製造方法は、上記の休ませるステップの後に、以下の補足的ステップを提供してもよい:
水性製剤に溶媒を加えるステップ、および、
水性製剤を機械的撹拌、特に、3000rpmの速さで機能する回転子-固定子を用いて、およそ5分間、機械的撹拌するステップ。
【0032】
〔実施例〕
研究所で行われた試験手順中に、特に、上述の方法に従って水性製剤の9個のサンプルを準備し、このサンプルはすべて、脱塩された水、および、
登録商標Citrepelタイプの、26重量%の、レモンの香りのするユーカリ揮発油、
Icebergの登録商標57656タイプの、13重量%の香水組成物、
3.5重量%のグリセロール、
登録商標Bioxanで販売されている0.25重量%のビタミンE、
最大0.02重量%までのクエン酸
を含んでいた。
【0033】
さらに、これらのサンプルのそれぞれは、以下のものを含んでいた:
本発明によって提案される製剤の試験サンプルに対応するサンプル1として、
サンプル1a:1重量%の微結晶性セルロース、および、0.2重量%のベントナイト、
サンプル1b:カルボキシメチルセルロースと一緒に共処理された微結晶性セルロースに基づいた1重量%の均質化混合物、および、0.2重量%のベントナイト(上記均質化混合物は、およそ85重量%の微結晶性セルロースとおよそ15重量%のカルボキシメチルセルロースとを含んでいる)、
サンプル2として、0.2重量%のベントナイト、
サンプル3として、微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースとに基づく1重量%の均質化混合物、
サンプル4として、1重量%のキサンタンガム、および、0.2重量%のベントナイト、
サンプル5として、1重量%のカルボキシメチルセルロース、
サンプル6として、1重量%のカルボキシメチルセルロース、および、0.2重量%のベントナイト、
サンプル7として、微結晶性セルロースとキサンタンガムとに基づく1重量%の均質化混合物、
サンプル8として、微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースとに基づく11重量%の均質化混合物、および、2.5重量%のベントナイト(上記均質化混合物は、およそ85重量%の微結晶性セルロースとおよそ15重量%のカルボキシメチルセルロースとを含んでいる)。
【0034】
次に、長期間のこれらの安定性をそれぞれ評価するために、これらの9個のサンプルをすべて、特に、54℃、24時間の相分離試験と、噴霧によるそれらの投与とによる、有効性試験に付した。
【0035】
これらの試験を受けて、得られた結果は以下の通りであった:
相分離試験に関しては、試験サンプル1a、1bだけが満足のいく結果を有しており、
噴霧による投与試験に関しては、試験サンプル1a、1b、2および3だけが満足のいく結果を有していた。
【0036】
したがって、これらの試験は、試験サンプル1a、1bによって得られた良好な結果ゆえ、ベントナイトと、微結晶性セルロースに基づく均質化混合物との、同時添加の有効性を示しているということができ、また、これは、適切な量において、長期間の安定性と、高濃度の脂溶性組成物を含む水性製剤の噴霧による良好な投与との両方を保証しているということができる。
【0037】
実際に、長期間の安定性と、噴霧による投与との両方に関して、試験サンプル1a、1bの良好な結果は、特に、1%のカルボキシメチルセルロースを含んで特にベントナイトおよび微結晶性セルロースが無いサンプル5によって得られた結果と比較して、脂溶性組成物の豊富な水性製剤における、微結晶性セルロースとベントナイトとの組み合わせられた存在の有効性を示している。
【0038】
さらに、本発明のそれに対応する割合でベントナイトを含有(0.2%)するが微結晶性セルロースが無い、サンプル2によって得られた結果は、揮発油が豊富な水性製剤においてこのような割合のベントナイトのみが存在すると、噴霧による投与に関しては満足のいく結果を得ることができるが、しかしながら、この製剤は、相分離試験の後に水と脂溶性組成物との間の比較的著しい相分離を示したので、長期間の良好な安定性を保証するには十分ではないということを示した。
【0039】
同様に、本発明のそれに対応する割合で微結晶性セルロースとカルボキシメチルセルロースとの混合物を含有(1%)するがベントナイトが無い、サンプル3によって得られた結果は、脂溶性組成物が豊富な水性製剤においてこのような割合の上記混合物のみが存在すると、ベントナイトのみを含有するサンプル2と同様に、噴霧による投与に関しては満足のいく結果を得ることができるが、長期間の良好な安定性を保証するにはこれもやはり十分ではないということを示した。
【0040】
さらに、1%の微結晶性セルロース/カルボキシメチルセルロース混合物、および、0.2重量%のベントナイトを含んだ、試験サンプル1bから得られた結果は、同じく0.2重量%のベントナイトを含むが、カルボキシメチルセルロースだけに基づく1重量%の均質化混合物を含んだ、サンプル6から得られた結果と比べて、微結晶性セルロースの追加、しかも、思慮深く選択された割合での追加の、増加した有効性を、噴霧による投与と、長期間の安定性との両方に関して示した。
【0041】
さらに、微結晶性セルロースだけに基づく1%の均質化混合物、および、0.2重量%のベントナイトを含んだ、試験サンプル1aから得られた結果は、サンプル6から得られた結果との比較によって、単なる、微結晶性セルロースとベントナイトとの組み合わせ、しかも、思慮深く選択された割合での組み合わせの、有効性を、噴霧による投与と、長期間の安定性との両方に関して示した。
【0042】
さらに、微結晶性セルロース以外の成分(キサンタンガム)と組み合わせられたベントナイトを含んだ、サンプル4から得られた結果は、ベントナイト以外の成分(キサンタンガム)と組み合わせられた微結晶性セルロースを含んだ、サンプル7から得られた結果と同様に、これらベントナイトと微結晶性セルロースの成分のうちの一方または他方と、他のタイプの成分との、組み合わせられた存在と比べて、ベントナイトと微結晶性セルロースとの組み合わせられた存在の、増加した有効性を、長期間の安定性と、噴霧による投与に関してとの両方に関して示した。
【0043】
最後に、試験サンプル1a、1bと全く同様に、ベントナイト、および、微結晶性セルロースに基づいた均質化混合物の両方を含むが、異なる割合で、特に、上記試験サンプル1a、1bの割合よりも高い割合(微結晶性セルロースに基づいた混合物が11%で、ベントナイトが2.5%)で、含んだサンプル8によって得られた結果は、脂溶性組成物が豊富な水性製剤におけるこれら2つの成分の組み合わせられた存在そのもの自身だけでは、長期間の良好な安定性や噴霧による良好な投与を保証するには十分ではなく、しかも、良好な結果を保証するには、これらの2つの成分は、思慮深く選択された割合で加えられる必要があるということを示した。