(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220927BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 A
H01F37/00 G
H01F27/26 160
H01F37/00 M
(21)【出願番号】P 2019192275
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019098078
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】古川 尚稔
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
(72)【発明者】
【氏名】舌間 誠二
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-131567(JP,A)
【文献】特開2017-55096(JP,A)
【文献】特開2012-227493(JP,A)
【文献】特開2017-199890(JP,A)
【文献】特開2017-28084(JP,A)
【文献】特開2019-114577(JP,A)
【文献】特開2014-36058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部と、を備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体を囲む側壁部と、前記底板部に対向する開口部と、を備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、前記外壁部から前記側壁部の内周面に向かって突出する少なくとも一つの突起部とを備え、
前記突起部は、前記封止樹脂部に埋設される、
リアクトル。
【請求項2】
前記内周面は、前記底板部側から前記開口部側に向かって広がるように傾斜している請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記深さ方向からの平面視において、前記組合体を内包する第一の長方形を仮想的にとり、前記第一の長方形の長辺方向に沿った大きさを長辺長さとし、前記第一の長方形の短辺方向に沿った大きさを短辺長さとし、
前記組合体における前記深さ方向に沿った大きさを前記組合体の高さとし、
前記長辺長さに対する前記高さの比及び前記短辺長さに対する前記高さの比の少なくとも一方が1.0超である請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記深さ方向からの平面視において、前記外壁部を内包する第二の長方形を仮想的にとり、
前記外壁部は、前記第二の長方形の長辺方向に沿った第一面と、前記第二の長方形の短辺方向に沿った第二面とを有し、
前記保持部材は、前記第一面に設けられる第一の前記突起部と、前記第二面に設けられる第二の前記突起部とを含む請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
少なくとも一つの前記突起部の形状は、球欠状である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記保持部材は、複数の前記突起部を備え、
少なくとも一つの前記突起部は、前記内周面に接していない請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記組合体は、前記底板部に対向する端面と、脚部とを備え、
前記脚部は、前記端面から前記底板部に向かって突出する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、コイルと、磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填されて組合体の外周を覆う封止樹脂部とを備えるリアクトルを開示する。特許文献1は、帯状のステーによって、磁性コアのうち、コイルの巻回部の外側に配置される外側コア部をケースの底面側に押圧する構造を開示する。ステーは、外側コア部におけるケースの開口側の面に配置される。ステーの両端は、ケースにねじ止めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-055096号公報
【文献】特開2013-131567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ケースと封止樹脂部とを備えるリアクトルにおいて、コイルと磁性コアとを含む組合体が振動した際の振幅を小さくすることが望まれている。
【0005】
一般に、コイルが励磁されると、組合体が振動する。また、リアクトルが車載部品等である場合、使用時に外的な振動を受けることによっても、組合体が振動する。
【0006】
上述のステーによる押圧構造では、ケース内において組合体がケースの深さ方向に沿って振動した際の振幅を小さくできると期待される。しかし、ケース内において組合体がケースの深さ方向に交差する方向、代表的には上記深さ方向に直交する方向に沿って振動した際の振幅を小さくすることに関して、改善の余地がある。
【0007】
また、上述のねじ止めによって、ケースとステーとが一体化される。そのため、組合体とケースとの間において相互に振動が伝わり易い。その結果、組合体とケースとが一体となって振動し易い。特に、ケースの厚さが薄い場合には、振動がより伝わり易い。
【0008】
ケース内において組合体が振動した際の振幅が大き過ぎると、組合体とケースとの間に充填される封止樹脂部に過度な応力や歪が負荷され易い。その結果、封止樹脂部が凝集破壊したり、せん断したりすることが考えられる。
【0009】
本開示は、組合体が振動した際の振幅を小さくできるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のリアクトルは、
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部と、を備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体を囲む側壁部と、前記底板部に対向する開口部と、を備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、前記外壁部から前記側壁部の内周面に向かって突出する少なくとも一つの突起部とを備え、
前記突起部は、前記封止樹脂部に埋設される。
【発明の効果】
【0011】
本開示のリアクトルは、組合体が振動した際の振幅を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るリアクトルをケースの深さ方向及び長さ方向に平行な平面で切断した概略部分断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリアクトルをケースの深さ方向に平面視した概略平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るリアクトルをケースの深さ方向及び幅方向に平行な平面で切断した概略部分断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す組合体の製造過程を説明する分解図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態2に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態2に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図5C】
図5Cは、実施形態2に係るリアクトルを正面から見た概略部分断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係るリアクトルに備える組合体の概略背面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係るリアクトルに備える組合体の製造過程を説明する概略分解側面図である。
【
図8A】
図8Aは、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、組合体及びケースを上面から見た概略平面図である。
【
図8B】
図8Bは、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、組合体及びケースを側面から見た概略部分断面図である。
【
図9A】
図9Aは、実施形態3に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図9B】
図9Bは、実施形態3に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図10】
図10は、実施形態3に係るリアクトルに備えるケースの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部と、を備え、
前記ケースは、前記組合体が載置される底板部と、前記組合体を囲む側壁部と、前記底板部に対向する開口部と、を備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、前記外壁部から前記側壁部の内周面に向かって突出する少なくとも一つの突起部とを備え、
前記突起部は、前記封止樹脂部に埋設される。
【0015】
本開示のリアクトルは、ケースの開口部側に突起部を備えるため、突起部を有さない場合に比較して、組合体が特にケースの深さ方向に交差する方向に振動した際の振幅を小さくできる。この理由として、以下の二点が挙げられる。以下、ケースの深さ方向に交差する方向を交差方向と呼ぶことがある。
【0016】
ケース内において組合体が上記交差方向に振動した際、組合体におけるケースの開口部側に位置する領域の振幅は、組合体におけるケースの底板部側に位置する領域の振幅に比較して大きくなり易い。突起部によって、ケースの開口部側において、組合体の外周面とケースの側壁部の内周面との間隔が局所的に狭められる。上記間隔が狭いことで、組合体がケース内において上記交差方向に変位する量が制限される。
【0017】
突起部を有することで、突起部を有さない場合に比較して、組合体の外周面とケースの側壁部の内周面とが接触した際に、接触面積が小さくなる。そのため、組合体とケースとの間において相互に振動が伝わり難い。
【0018】
(2)本開示のリアクトルの一例として、
前記内周面は、前記底板部側から前記開口部側に向かって広がるように傾斜している形態が挙げられる。
【0019】
上記形態では、ケースの開口部側において、組合体の外周面とケースの側壁部の内周面との間隔が大きくなり易い。しかし、突起部によって、上記間隔が確実に狭められる。また、上記形態は、リアクトルの製造過程においてケースに組合体を収納し易い点、ケースの製造過程においてケースを脱型し易い点で、製造性にも優れる。
【0020】
(3)本開示のリアクトルの一例として、
前記深さ方向からの平面視において、前記組合体を内包する第一の長方形を仮想的にとり、前記第一の長方形の長辺方向に沿った大きさを長辺長さとし、前記第一の長方形の短辺方向に沿った大きさを短辺長さとし、
前記組合体における前記深さ方向に沿った大きさを前記組合体の高さとし、
前記長辺長さに対する前記高さの比及び前記短辺長さに対する前記高さの比の少なくとも一方が1.0超である形態が挙げられる。
【0021】
上記形態における組合体の形状は、上述の交差方向に振動した際に組合体におけるケースの開口部側の領域の振幅が大きくなり易い形状といえる。このような形態でも、突起部によって、上記振幅を小さくすることができる。
【0022】
(4)本開示のリアクトルの一例として、
前記深さ方向からの平面視において、前記外壁部を内包する第二の長方形を仮想的にとり、
前記外壁部は、前記第二の長方形の長辺方向に沿った第一面と、前記第二の長方形の短辺方向に沿った第二面とを有し、
前記保持部材は、前記第一面に設けられる第一の前記突起部と、前記第二面に設けられる第二の前記突起部とを含む形態が挙げられる。
【0023】
上記形態は、ケース内において組合体が任意の上述の交差方向に振動しても、組合体の振幅を小さくできる。
【0024】
(5)本開示のリアクトルの一例として、
少なくとも一つの前記突起部の形状は、球欠状である形態が挙げられる。
【0025】
上記形態では、突起部とケースの側壁部の内周面とが接触した際に点接触となり、突起部と上記内周面との接触面積が小さい。そのため、組合体とケースとの間において振動がより伝わり難い。
【0026】
(6)本開示のリアクトルの一例として、
前記保持部材は、複数の前記突起部を備え、
少なくとも一つの前記突起部は、前記内周面に接していない形態が挙げられる。
【0027】
上記形態では、振動時に突起部とケースとが接触し難い、好ましくは接触しないため、組合体とケースとの間において振動がより伝わり難い、好ましくは全く伝わらない。
【0028】
(7)本開示のリアクトルの一例として、
前記組合体は、前記底板部に対向する端面と、脚部とを備え、
前記脚部は、前記端面から前記底板部に向かって突出する形態が挙げられる。
【0029】
上記形態では、脚部を有さない場合に比較して、組合体の端面とケースの底板部の内底面との接触面積が小さい。そのため、組合体とケースとの間において振動がより伝わり難い。
【0030】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。
【0031】
[実施形態1]
図1から
図4を参照して、実施形態1に係るリアクトル1を説明する。
図1、
図3は、リアクトル1に備えられるケース5及び封止樹脂部6をケース5の深さ方向に平行な平面で切断した部分断面図である。
図1、
図3の組合体10は、断面ではなく、外観を示す。
図1の断面図は、
図2に示す切断線I-Iによって切断した断面図に相当する。
図3の断面図は、
図2に示す切断線III-IIIによって切断した断面図に相当する。
図4は、リアクトル1に備えられる組合体10において、後述するモールド樹脂部8を備えていない状態を分解して示す。
【0032】
<概要>
リアクトル1は、
図1に示すように、コイル2と、磁性コア3と、保持部材4と、ケース5と、封止樹脂部6とを備える。コイル2は、並列に配置される一対の巻回部21、22を有する。磁性コア3は、巻回部21、22の内側及び外側に配置される。保持部材4は、コイル2と磁性コア3との相互の位置を規定する。ケース5は、コイル2、磁性コア3及び保持部材4を含む組合体10を収納する。ケース5は、底板部51と、側壁部52と、開口部55とを備える。底板部51には、組合体10が載置される。側壁部52は、組合体10を囲む。開口部55は、底板部51に対向して開口する。封止樹脂部6は、ケース5内に充填される。なお、
図2は、封止樹脂部6を省略している。
【0033】
実施形態1のリアクトル1では、組合体10は、巻回部21、22の各々の軸方向がケース5の深さ方向に沿うようにケース5に収納される。以下、この配置形態を直立型と呼ぶ。保持部材4のうち、組合体10においてケース5の開口部55側に配置される保持部材41は、ケース5の側壁部52の内周面520に向かって突出する少なくとも一つの突起部4pを備える。突起部4pは、封止樹脂部6に埋設される。突起部4pは、ケース5の開口部55側において、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間隔を局所的に狭めることに寄与する。このような突起部4pによって、組合体10がケース5内において上述の交差方向に変位する範囲が制限される。
以下、実施形態1のリアクトル1の構成について詳しく説明する。
【0034】
以下の説明では、ケース5の底板部51側を下とし、底板部51側とは反対側、即ち開口部55側を上とする。
ケース5の深さ方向は、この上下方向である。この上下方向、即ち
図1、
図3では紙面上下方向を高さ方向と呼ぶことがある。
また、高さ方向に直交し、ケース5の側壁部52において
図2に示す長辺部541、542に沿った方向を長さ方向とする。長辺部541、542は、
図2に示すように、ケース5を深さ方向に平面視した状態において、開口部55を内包する最小の長方形を仮想的にとり、側壁部52において、上記仮想の長方形の長辺方向に沿った部分である。後述する短辺部531、532は、側壁部52において、上記仮想の長方形の短辺方向に沿った部分である。以下、平面視は、ケース5の深さ方向から見た状態をいう。
高さ方向に直交し、ケース5の側壁部52の短辺部531、532に沿った方向を幅方向とする。
長さ方向は、
図1、
図2では紙面左右方向である。幅方向は、
図2では紙面上下方向であり、
図3では紙面左右方向である。
なお、高さ方向、長さ方向、幅方向については、後述する実施形態2、3、
図5Aから
図10についても同様に適用される。
【0035】
(組合体)
本例の組合体10は、コイル2、磁性コア3、保持部材4に加えて、後述するモールド樹脂部8を備える。
【0036】
本例の組合体10の外観は、直方体状である。特に、組合体10の長さは幅より大きい。また、組合体10の高さは、幅より大きく、長さに概ね等しい。定量的には、組合体10において、長さに対する高さの比が約1.0であり、幅に対する高さの比が1.0超である。ここでの組合体10の長さ、幅、高さは以下の通りである。巻回部21、22の軸方向からの平面視、又は組合体10がケース5に収納された状態ではケース5の深さ方向からの平面視において、組合体10を内包する長方形を仮想的にとる。組合体10の長さは、上記仮想の長方形の長辺方向に沿った大きさ、即ち長辺長さである。組合体10の幅は、上記仮想の長方形の短辺方向に沿った大きさ、即ち短辺長さである。組合体10の高さは、上記軸方向又は深さ方向に沿った大きさである。
以下、組合体10がケース5に収納された状態をケース収納状態と呼ぶことがある。
【0037】
上述の長さに対する高さの比及び幅に対する高さの比の少なくと一方が1.0超であれば、組合体10におけるケース5の内底面510側に配置される面、ここでは端面105に対して高さが大きく、組合体10は縦長な形状といえる。縦長の組合体10は、上述の交差方向に振動し易いといえる。また、上記交差方向に振動した際には、組合体10において、ケース5の開口部55側の領域の振幅が大きくなり易いといえる。
【0038】
上述の比の値が大きいほど、上記振幅が大きくなり易い。但し、組合体10の容積が一定であれば、上記比の値が大きいほど、組合体10の端面105の面積が小さくなり易い。その結果、ケース5の内底面510の面積も小さくなり易い。ケース5の底板部51をリアクトル1の設置面とする場合、設置面積が小さくなり易い。設置面積の小型化の観点から、例えば、上述の長さに対する高さの比及び幅に対する高さの比の少なくとも一方は、1.2以上、1.5以上、1.8以上、2.0以上でもよい。実施形態1のリアクトル1では、組合体10が縦長の形状であっても、突起部4pによって、上述の振幅を小さくできる。
【0039】
上述の振幅の低減の観点から、例えば、上述の長さに対する高さの比及び幅に対する高さの比の少なくとも一方は、5.0以下、4.5以下、4.0以下でもよい。本例では、幅に対する高さの比は、5.0以下である。
【0040】
(コイル)
コイル2は、一対の巻回部21、22を有する。巻回部21、22は、巻線を螺旋状に巻回してなる。両巻回部21、22は、互いの軸方向が平行するように並列に配置されている。上述のケース収納状態において、両巻回部21、22の軸方向は、高さ方向に一致する。
【0041】
コイル2は、両巻回部21、22が1本の連続する巻線で形成されていてもよいし、各巻回部21、22が別々の巻線を巻回して形成されていてもよい。両巻回部21、22が1本の連続する巻線によって構成される場合、例えば、一方の巻回部21を形成した後、他端側で巻線を屈曲させて折り返し、他方の巻回部22を形成することが挙げられる。各巻回部21、22が別々の巻線によって構成される場合、各巻回部21、22を別々の巻線で形成した後、各巻回部21、22の他端側で巻線の端部同士を接続することが挙げられる。この接続には、溶接や圧着、半田付け、ロウ付けなどの接合方法が利用できる。
【0042】
巻回部21、22の一端側の巻線の端部は、ケース5の開口部55側から外部に引き出される。引き出された先端には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない電源などの外部装置が接続される。なお、
図1などは、巻回部21、22のみを示し、巻線の端部などは省略している。
【0043】
巻線は、導体線と、絶縁被覆とを有する被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅などが挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミドなどの樹脂が挙げられる。被覆線としては、断面形状が長方形状の被覆平角線や、断面形状が円形状の被覆丸線などが挙げられる。
【0044】
この例の両巻回部21、22は、同じ仕様の巻線からなり、形状、大きさ、巻回方向、ターン数が同じである。また、この例の巻回部21、22は、被覆平角線がエッジワイズ巻きされた四角筒状のエッジワイズコイルである。巻回部21、22の形状は、この例では矩形筒状であるが、特に限定されるものではなく、例えば、円筒状や楕円筒状、長円筒状などであってもよい。また、両巻回部21、22を形成する巻線の仕様や、両巻回部21、22の形状などは異ならせてもよい。
【0045】
この例では、巻回部21、22を軸方向から見た端面形状が矩形状である。つまり、巻回部21、22は、4つの平面と4つの角部とを有する。巻回部21、22の角部は丸められている。巻回部21、22の外周面は実質的に平面で構成されている。そのため、巻回部21、22の外周面とケース5の内周面520とが平面同士で対向できる(
図1、
図3)。従って、巻回部21、22とケース5の側壁部52との対向面積が大きく確保され易い。また、巻回部21、22の外周面とケース5の内周面520との間隔が均一的に小さくなり易い。
【0046】
コイル2は、両巻回部21、22の各々の軸方向がケース5の底板部51と直交し、かつ、両巻回部21、22の並列方向がケース5の側壁部52における長辺部541、542に沿うように配置されている。つまり、両巻回部21、22は、ケース5の長さ方向に並ぶように配置されている。この例では、一方の巻回部21が一方の短辺部531側、
図1では左側に配置され、他方の巻回部22が他方の短辺部532側、
図1では右側に配置されている。
【0047】
(磁性コア)
この例の磁性コア3は、内側コア部31、32と、一対の外側コア部33、33とを有する。内側コア部31、32は、主として、各巻回部21、22の内側に配置される箇所を構成する。内側コア部31、32の軸方向の端部は、巻回部21、22の端面から突出される。外側コア部33、33は、両巻回部21、22の外側に配置される。外側コア部33、33は、両内側コア部31、32の各端部同士を接続するように設けられる。この例では、両内側コア部31、32を両端から挟むように外側コア部33、33がそれぞれ配置される(
図4も参照)。磁性コア3は、両内側コア部31、32の各端面と外側コア部33、33の各内端面33e(
図4も参照)とが接続されることによって、環状に構成される。磁性コア3には、コイル2を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。
【0048】
(内側コア部)
この例の内側コア部31、32の形状は、巻回部21、22の内周形状に概ね対応した形状である。巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間には隙間が存在する。この隙間には、後述するモールド樹脂部8を構成する樹脂が充填される。この例では、内側コア部31、32の形状が四角柱状、より具体的には直方体状である。内側コア部31、32を軸方向から見た端面形状が矩形状である。内側コア部31、32の角部は、巻回部21、22の角部に沿うように丸められている。両内側コア部31、32の形状、大きさは同じである。内側コア部31、32において巻回部21、22の端面から突出する両端部は、後述する保持部材41、42の貫通孔43に挿入される(
図4も参照)。
【0049】
この例では、内側コア部31、32はそれぞれ、1つの柱状のコア片で構成されている。内側コア部31、32を構成する各コア片は、巻回部21、22の軸方向の全長と略等しい長さを有する。つまり、内側コア部31、32には、磁気ギャップ材が設けられていない。なお、内側コア部31、32は、複数のコア片と、隣り合うコア片間に介在される磁気ギャップ材とで構成してもよい。
【0050】
(外側コア部)
外側コア部33、33の形状は、両内側コア部31、32の各端部同士をつなぐ形状であれば、特に限定されない。この例では、外側コア部33、33は、両内側コア部31、32の各端面に対向する内端面33eを有する直方体状である。両外側コア部33の形状、大きさは同じである。外側コア部33、33はそれぞれ、1つの柱状のコア片で構成されている。
【0051】
一方の外側コア部33は、巻回部21、22の外側であって、ケース5の開口部55側、
図1では上側に配置される。他方の外側コア部33は、巻回部21、22の外側であって、ケース5の底板部51側、
図1では下側に配置される。底板部51側の外側コア部33の外端面は、底板部51の内底面510に対向して配置される。
【0052】
〈構成材料〉
内側コア部31、32及び外側コア部33、33は、軟磁性材料を含む成形体で構成されている。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金などの金属、フェライトなどの非金属が挙げられる。鉄合金は、例えばFe-Si合金、Fe-Ni合金などが挙げられる。軟磁性材料を含む成形体としては、圧粉成形体や複合材料の成形体などが挙げられる。
【0053】
圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末、即ち軟磁性粉末を圧縮成形することで得られる。圧粉成形体は、複合材料に比較して、コア片に占める軟磁性粉末の割合が高い。
【0054】
複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散している。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば比透磁率や飽和磁束密度を制御し易い。
【0055】
軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有する被覆粒子であってもよい。絶縁被覆の構成材料は、リン酸塩などが挙げられる。
【0056】
複合材料の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。PA樹脂は、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン9Tなどが挙げられる。複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、複合材料の放熱性を向上させることができる。フィラーは、例えば、セラミックスやカーボンナノチューブなどの非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属又は非金属の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。酸化物の一例として、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。窒化物の一例として、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。炭化物の一例として、炭化珪素などが挙げられる。
【0057】
内側コア部31、32の構成材料と外側コア部33、33の構成材料とは、同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、内側コア部31、32及び外側コア部33、33がいずれも複合材料の成形体であり、各複合材料における軟磁性粉末の材質や含有量が異なってもよい。この例では、内側コア部31、32が複合材料の成形体で構成され、外側コア部33、33が圧粉成形体で構成されている。また、本例の磁性コア3は、磁気ギャップ材を有していない。
【0058】
(保持部材)
この例のリアクトル1は、保持部材4として、二つの保持部材41、42を備える。保持部材41、42は、
図1及び
図4に示すように、両巻回部21、22の各端面に対向するように配置される箇所である後述の枠板を備える。また、保持部材41、42は、外側コア部33の外周面を囲む箇所である後述の外壁部40を備える。一方の保持部材41は、ケース5の開口部55側に配置されて、上側の外側コア部33を囲む。他方の保持部材42は、ケース5の底板部51側に配置されて、下側の外側コア部33を囲む。
【0059】
本例の保持部材41,42はいずれも、コイル2及び磁性コア3に組み付け可能な部材である。保持部材41、42はコイル2及び磁性コア3に組み付けられて、コイル2の巻回部21、22と、磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33、33との間の電気的絶縁を確保する。また、保持部材41、42は、コイル2及び磁性コア3の相互の位置を規制して、位置決め状態を保持する。更に、一方の保持部材41は、突起部4pによって、組合体10の振動時の振幅を小さくする。
【0060】
ケース5の開口部55側の保持部材41が突起部4pを備え、底板部51側の保持部材42が突起部4pを備えていないことを除いて、両保持部材41、42の基本的な構成は同じである。従って、共通する構成の説明では、保持部材41、42をまとめて保持部材4と呼ぶことがある。
【0061】
まず、保持部材41、42における共通の構成を説明する。
この例の保持部材4は、貫通孔43を有する枠板と、外壁部40とを備える。枠板は、巻回部21、22の端面と外側コア部33、33の内端面33eとの間に介在される。外壁部40は、外側コア部33の外周面の少なくとも一部、本例では全周を覆う。
【0062】
この例では、
図2に示すように保持部材4の形状が平面視で矩形枠状である。外壁部40の外周面は実質的に平面で構成されている。外壁部40の外周面は、ケース5の側壁部52、ここでは短辺部531、532及び長辺部541、542に対向する4つの平面を含む。
【0063】
詳しくは、外壁部40は、以下の仮想の長方形の長辺方向に沿った第一面441、442と、上記長方形の短辺方向に沿った第二面431、432とを有する。上記仮想の長方形は、保持部材4がコイル2及び磁性コア3に組み付けられた状態において、巻回部21、22の軸方向からの平面視、上述のケース収納状態ではケース5の深さ方向からの平面視において、外壁部40を内包する長方形である。この例では、第一面441、442はそれぞれ、内周面520のうち、長辺部541、542の内面に対向する。第二面431、432はそれぞれ、内周面520のうち、短辺部531、532の内面に対向する。
【0064】
この例の枠板は、主として、巻回部21、22と外側コア部33、33との間の電気的絶縁を確保する。枠板は、
図1、
図4に示すように矩形状の板の表裏を貫通する一対の貫通孔43を有する。各貫通孔43には、内側コア部31、32の端部が挿入される。貫通孔43の形状は、内側コア部31、32の端部の外周形状に概ね対応した形状である。この例では、貫通孔43の四隅が内側コア部31、32の外周面の角部に沿って形成されている。この貫通孔43の四隅によって、貫通孔43内に内側コア部31、32が保持される。また、貫通孔43は、内側コア部31、32の端部が挿入された状態で、内側コア部31、32の外周面と貫通孔43の内周面との間に部分的に隙間が形成されるように設けられている。この隙間は、巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間の隙間に連通する。
【0065】
この例の外壁部40は、枠板の周縁を囲む矩形状の筒であり、外側コア部33の全周を囲むように設けられている。外壁部40は、その内側に凹部44を有する。凹部44には、外側コア部33の内端面33e側が嵌め込まれる。この例では、凹部44は、外側コア部33が嵌め込まれた状態で、外側コア部33の外周面と凹部44の内周面との間に部分的に隙間が形成されるように設けられている。この隙間には、後述するモールド樹脂部8を構成する樹脂が充填される。このモールド樹脂部8によって各外側コア部33、33と各保持部材41、42とが一体化されている。本例の保持部材41、42は、外側コア部33、33と凹部44との間の隙間と、上述した内側コア部31、32と貫通孔43との間の隙間とが連通するように構成されている。これらの隙間が連通することにより、モールド樹脂部8を形成する際に、モールド樹脂部8を構成する樹脂を巻回部21、22と内側コア部31、32との間に導入することが可能である。
【0066】
更に、この例の保持部材4は、図示しない内側介在部を有する。内側介在部は、貫通孔43の周縁部から巻回部21、22の内側に向かって突出し、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に挿入される。この内側介在部によって、巻回部21、22と内側コア部31、32とが間隔をあけて保持される。その結果、巻回部21、22と内側コア部31、32との間の電気的絶縁が確保される。
【0067】
上述したように、内側コア部31、32の各端部が保持部材41、42の各貫通孔43に挿入されることによって、保持部材41、42に対して内側コア部31、32が位置決めされる。また、外側コア部33、33の内端面33e側が保持部材41、42の凹部44に嵌め込まれることによって、外側コア部33、33が位置決めされる。更に、上記内側介在部によって、巻回部21、22が位置決めされる。その結果、保持部材41、42によって、コイル2の巻回部21、22及び磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33、33が位置決め状態で保持される。
【0068】
(突起部)
保持部材41に備えられる突起部4pは、
図1から
図3に示すように、外壁部40からケース5の内周面520に向かって設けられる。この例の保持部材41は、複数の突起部47、48を備える。第一の突起部47は、第一面441、442、ここでは長辺部541、542に対向する面に設けられる(
図2)。第二の突起部48は、第二面431、432、ここでは短辺部531、532に対向する面に設けられる(
図2、
図3)。
【0069】
この例では、
図1、
図2に示すように、突起部47は、第一面441、442にそれぞれ長さ方向に所定の間隔をあけて2つずつ設けられている。一つの第一面441又は442における各突起部47は、第一面441又は442の長さ方向の二等分線を中心として、対称位置に設けられている。突起部48は、
図2、
図3に示すように、第二面431、432にそれぞれ、各面431、432の幅方向の中央に1つ設けられている。突起部47、48の形状は球欠状である。
【0070】
突起部4pの数、位置、形状は、特に限定されるものではなく、適宜選択できる。
例えば、突起部4pの数は、1つであってもよいが、本例のように複数が好ましい。また、本例のように外壁部40の外周面を構成する各面441、442、431、432にそれぞれ、1つ以上の突起部4pを備えることが好ましい。更に、本例のように比較的長い面、ここでは第一面441、442はそれぞれ、複数の突起部4pを備えることが好ましい。この理由の一つは、組合体10が上述の交差方向に振動した際に、組合体10における任意の上記交差方向の変位量、即ち振幅を小さくし易いことが挙げられる。特に、後述するように、側壁部52の内周面520が底板部51側から開口部55側に向かって広がるように傾斜する場合、突起部4pによって、上述の振幅を効果的に小さくすることができる。別の理由は、突起部4pが側壁部52の内周面520、ここでは長辺部541、542の内面及び短辺部531の内面にそれぞれ接することで、ケース5内で組合体10が過度に傾くことを抑制できることが挙げられる。
【0071】
例えば、突起部4pの位置のうち、貫通孔43の軸方向に沿った位置、いわば深さ方向の位置については、上述のケース収納状態において、ケース5の開口部55に近いことが挙げられる。上記深さ方向の位置が開口部55に近いほど、突起部4pによる上述の振幅を小さくする効果が得られ易い。上記深さ方向の位置の一例として、上記ケース収納状態において、保持部材41の外壁部40の周縁のうち、ケース5の開口部55側の縁、つまり
図1では上端縁と、ケース5の底板部51側の縁、つまり
図1では下端縁との二等分線より開口部55側の位置が挙げられる。一方、本例では、上記深さ方向の位置は、上記二等分線より底板部51側である。この場合、封止樹脂部6の充填量を少なくすることができる。この理由は、封止樹脂部6の充填量は、少なくとも突起部4pが埋設されるように調整されるからである。
【0072】
例えば、突起部4pの位置のうち、第一面441、442における二つの貫通孔43の並び方向に沿った位置、いわば長さ方向の位置については、第一面441、442と第二面431、432との稜線に近いことが挙げられる。上記長さ方向の位置が上記稜線に近いほど、即ち第一面441、442の長さ方向の二等分線から上記並び方向に沿って離れるほど、突起部4pによる上述の振幅を小さくする効果が得られ易い。本例の上記長さ方向の位置は、上記稜線から上記並び方向に沿って、第一面441、442の長さの10%以上25%以下の地点である。
【0073】
保持部材41が複数の突起部4pを備える場合、上述の深さ方向の位置が異なる突起部4pを含んでもよい。例えば、複数の突起部47は、第一面441及び442の少なくとも一方に千鳥状に並んでいてもよい。本例のように全ての突起部4pにおいて上記深さ方向の位置が同じであると、突起部4pの成形条件の調整が行い易い。この点で、保持部材41は製造性に優れる。
【0074】
例えば、突起部4pの形状は、球欠状以外でもよいが、複数の突起部4pを備える場合、少なくとも一つの突起部4pの形状は球欠状が好ましい。本例のように全ての突起部4pの形状は球欠状であることがより好ましい。この理由の一つは、突起部4pとケース5の内周面520とが接触した際に点接触となり、接触面積が小さくなり易いことが挙げられる。別の理由は、振動時に突起部4pが封止樹脂部6をせん断したり、内周面520を傷つけたりすることを防止できることが挙げられる。
【0075】
球欠は、球を平面で切断した立体であり、円形面と、球面の一部を構成する曲面とを備える。球欠状の突起部4pは、その表面が上記曲面で構成される。半球は、上記円形面の直径が球の直径に相当する。突起部4pの形状は、半球状でもよいし、上述の円形面の直径が球の直径未満である曲面状でもよい。球欠状以外の形状は、例えば、角錐や円錐などの錘状、角錐台や円錐台などの錘台状、角柱や円柱などの柱状が挙げられる。
【0076】
保持部材41が複数の突起部4pを備える場合、形状が異なる突起部4pを含んでもよい。本例のように全ての突起部4pの形状が同じであると、突起部4pの成形条件の調整が行い易い。この点で、保持部材41は製造性に優れる。
【0077】
突起部4pにおける外壁部40の外周面からの突出量は、外壁部40の外周面と、側壁部52の内周面520との間に所定の間隔が設けられるように、上記間隔の大きさに応じて、適宜設定すればよい。この例では、突起部47における上記突出量は、第一面441、442と、内周面520のうち、長辺部541、542の内面との間隔に応じて調整するとよい。突起部48における上記突出量は、第二面431、432と、内周面520のうち、短辺部531、532の内面との間隔に応じて調整するとよい。
【0078】
突起部4pにおける上述の突出量が大きいほど、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間隔が大きくなり易い。そのため、巻回部21、22の外周面と、ケース5の内周面520との間の電気絶縁性が高められる。また、リアクトル1の製造過程では、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間に封止樹脂部6となる樹脂が流れ易い。上記突出量が小さいほど、上記間隔が小さくなり易い。その結果、ケース5の長さや幅が小さくなり易い。上記突出量は、例えば0.5mm以上1.5mm以下が挙げられる。
【0079】
突起部4pにおける上述の突出量は、リアクトル1が振動していない静止状態において、突起部4pとケース5の内周面520とが接しないように調整されることが挙げられる。この場合、組合体10又はケース5が振動しても、突起部4pとケース5とが接触し難い。そのため、組合体10とケース5との間において相互に振動が伝わり難い。この点で、突起部4pは、組合体10の振動を低減することに寄与するといえる。また、このような突起部4pは、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間隔を上記突出量より大きく確保することに寄与する。上記間隔は、封止樹脂部6の厚さに概ね相当する。そのため、突起部4pは、封止樹脂部6の厚さを制御することにも寄与する。また、上記間隔がある程度大きいため、巻回部21、22とケース5の内周面520との間の電気絶縁性が高められる。
【0080】
この例の突起部47、48はいずれも、上述の静止状態において、
図2に示すように内周面520に接しない。そのため、巻回部21、22と両長辺部541、542との接触、巻回部21と短辺部531との接触、及び巻回部22と短辺部532との接触が防止される。また、突起部47により、両巻回部21、22と両長辺部541、542との間隔を適切に維持することができる。突起部48により、巻回部21と短辺部531との間隔、及び巻回部22と短辺部532との間隔を適切に維持することができる。
【0081】
保持部材41が複数の突起部4pを備える場合、突起部4pの位置等に応じて、上述の突出量が異なる突起部4pを含んでもよい。この場合、少なくとも一つの突起部4pは、ケース5の内周面520に接しないことが好ましい。本例のように全ての突起部4pにおける上記突出量が同じであると、突起部4pの成形条件の調整が行い易い。この点で、保持部材41は製造性に優れる。
【0082】
なお、突起部4pは、上述の静止状態において、ケース5の内周面520に接するように設けてもよい。突起部4pが内周面520に接することで、ケース5に対して組合体10を位置決めすることができる。詳しくは、突起部47は、ケース5に対して組合体10の幅方向の位置決めに利用できる。突起部48は、ケース5に対して組合体10の長さ方向の位置決めに利用できる。また、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間に、上述の突出量に応じた間隔が確実に設けられる。但し、組合体10とケース5との間の振動伝達を防止する観点からは、本例のように突起部4pはケース5の内周面520に接しないことが望ましい。
【0083】
〈構成材料〉
保持部材4の構成材料は、電気絶縁材料が挙げられる。電気絶縁材料としては、代表的には樹脂が挙げられる。具体的な樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、PA樹脂、LCP、PI樹脂、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂などが挙げられる。保持部材4の構成材料は、上記樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、保持部材4の放熱性を向上させることができる。フィラーの具体例は、複合材料の項を参照するとよい。この例では、保持部材4の構成材料はPPS樹脂である。
【0084】
(モールド樹脂部)
本例の組合体10は、
図1に示すように、モールド樹脂部8を備える。モールド樹脂部8は、外側コア部33、33の外周面の少なくとも一部を覆うと共に、巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間に介在される。このモールド樹脂部8により、内側コア部31、32と外側コア部33とが一体に保持され、コイル2の巻回部21、22と磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33とが一体化されている。そのため、コイル2と磁性コア3とを一体物として取り扱うことができる。また、モールド樹脂部8によって各外側コア部33、33と各保持部材41、42とが一体化されている。つまり、この例では、モールド樹脂部8によって、コイル2、磁性コア3及び保持部材41、42が一体化されている。そのため、組合体10は一体物として取り扱うことができる。なお、巻回部21、22の外周面は、モールド樹脂部8によって覆われておらず、モールド樹脂部8から露出している。
【0085】
モールド樹脂部8は、内側コア部31、32と外側コア部33、33とを一体に保持できればよく、内側コア部31、32の周方向に沿った面、即ち外周面を全長にわたって覆う必要がない。内側コア部31、32と外側コア部33、33とを一体に保持するというモールド樹脂部8の機能を鑑みれば、モールド樹脂部8の形成範囲は、内側コア部31、32の端部近傍までで十分である。つまり、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の軸方向の中央部まで及んでいなくてもよく、内側コア部31、32の外周面のうち、少なくとも端部を覆うように形成されていればよい。勿論、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の軸方向の中央部まで及んでいてもよい。この場合、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の外周面を全長にわたって覆い、一方の外側コア部33から他方の外側コア部33にわたって形成される。
【0086】
更に、本例の組合体10は、ケース5の底板部51に対向する端面105と、脚部49とを備える。脚部49は、端面105から底板部51の内底面510に向かって突出する。本例の端面105及び脚部49は、モールド樹脂部8によって構成される。脚部49は、脚部49を有さない場合に比較して、組合体10の端面105と、ケース5の内底面510との接触面積を低減することに寄与する。
【0087】
この例では、組合体10の端面105に対して、
図1に示すように長さ方向に所定の間隔をあけて2つずつ、
図3に示すように幅方向に所定の間隔をあけて2つずつ、合計4つの脚部49が設けられている。各脚部49は、端面105の長さ方向の二等分線を中心として対称位置に設けられると共に、幅方向の二等分線を中心として対称位置に設けられている。また、各脚部49は、長方形状の端面105の角部の近くに設けら
れている。脚部49の形状は球欠状である。
【0088】
脚部49の数、位置、形状は、特に限定されるものではなく、適宜選択できる。
本例のように、脚部49の数が複数であれば、組合体10は、ケース5の内底面510に安定して載置され、振動し難い。脚部49の数が多いほど、組合体10の載置状態が安定し易い。脚部49の数が少ないほど、組合体10と内底面510との接触面積が小さくなり易い。
本例のように、脚部49が端面105において対称位置に設けられると、組合体10がケース5の内底面510に安定して載置され、振動し難い。また、本例のように、脚部49が端面105の中央位置ではなく、周縁寄りの位置に設けられていると、組合体10の載置状態が安定し易い。
【0089】
脚部49の形状は、球欠状以外でもよいが、複数の脚部49を備える場合、少なくとも一つの脚部49の形状は球欠状であることが好ましい。本例のように全ての脚部49の形状は球欠状であることがより好ましい。この理由は、脚部49とケース5の内底面510とが点接触となり、接触面積が小さくなり易いことが挙げられる。なお、形状が異なる脚部49を備えてもよいが、本例のように全ての脚部49の形状が同じであると、脚部49の成形条件の調整が行い易い。この点で、モールド樹脂部8は製造性に優れる。
【0090】
脚部49における端面105からの突出量は、端面105と、底板部51の内底面510との間に所定の間隔が設けられるように、上記間隔の大きさに応じて、適宜設定すればよい。上記突出量が大きいほど、組合体10の端面105とケース5の内底面510との間の間隔が大きくなり易い。そのため、組合体10の端面105とケース5の内底面510との間の電気絶縁性が高められる。また、リアクトル1の製造過程では、組合体10の端面105とケース5の内底面510との間に、封止樹脂部6となる樹脂が流れ易い。上記突出量が小さいほど、上記間隔が小さくなり易い。その結果、ケース5の高さが小さくなり易い。上記突出量は、例えば0.5mm以上1.5mm以下が挙げられる。
【0091】
〈構成材料〉
モールド樹脂部8を構成する樹脂は、保持部材4の項で説明した樹脂を利用できる。モールド樹脂部8の構成材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。この例では、モールド樹脂部8がPPS樹脂で構成されている。
【0092】
(ケース)
ケース5は、
図1に示すように組合体10を収納することで、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上などを目的とする。本例のケース5は、金属によって構成されている。金属は樹脂よりも熱伝導率が高い。そのため、金属製のケース5は、組合体10の熱をケース5を介して外部に放出し易い。よって、金属製のケース5は、組合体10の放熱性の向上に寄与する。
【0093】
ケース5は、底板部51と、側壁部52と、開口部55とを有し、底板部51と対向する側に開口部55を有する有底筒状の容器である。
この例では、底板部51は、組合体10が載置される平板部材である。側壁部52は、組合体10の周囲を囲む角筒状体である。底板部51と側壁部52とで組合体10の収納空間が形成される。この例では、底板部51と側壁部52とが一体に形成されている。側壁部52は、組合体10の高さと同等以上の高さを有する。
【0094】
詳しくは、この例の底板部51は四角板状である。底板部51において、組合体10が載置される内底面510は実質的に平面で構成されている。この例の側壁部52は、四角筒状である(
図2参照)。側壁部52は、一対の対向する長辺部541、542と、一対の対向する短辺部531、532とを有する。本例の場合、側壁部52の内周面520のうち、巻回部21、22に対向する長辺部541、542及び短辺部531、532の各部分は実質的に平面で構成されている。
【0095】
本例の側壁部52は、平面視で略矩形筒状である(
図2参照)。略矩形筒状とは、ケース5を平面視したとき、側壁部52の内周面520が実質的に矩形状であることを意味する。ここでの矩形状は、幾何学的に厳密な意味での矩形でなくてもよく、角部がR面取り又はC面取りされた形状なども含めて、実質的に矩形とみなされる範囲を含む。本例では、内周面520の角部がR面取りされている。後述する実施形態2のように、内周面520の角部が比較的大きな曲率半径を有する曲面で構成されていてもよい。
【0096】
側壁部52の内周面520は、底板部51側から開口部55側に向かって広がるように傾斜していてもよい。より具体的には、側壁部52の長辺部541、542の内面同士及び短辺部531、532の内面同士の少なくとも一方は、底板部51側から開口部55側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜していてもよい。つまり、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の少なくとも一つが、底板部51の内底面510の垂直方向に対してケース5の外方側に傾斜するように形成されていてもよい。なお、上記垂直方向は、ケース5の高さ方向に相当する。
【0097】
長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面が底板部51側から開口部55側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜している場合、リアクトル1の製造過程において、ケース5に組合体10を収納する作業が行い易い。また、金属製のケース5をダイキャストで製造する場合、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の少なくとも一つが傾斜していることで、ケース5を型から抜き出す作業が行い易い。この例では、側壁部52の内周面520が底板部51側から開口部55側に向かって広がるように、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の全てが傾斜している(
図1及び
図3参照)。
【0098】
長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面と、底板部51の内底面510の垂線とがなす傾斜角度は、適宜選択できる。上記傾斜角度は、例えば0.5°以上5°以下、更に1°以上2°以下が挙げられる。傾斜角度が大き過ぎると、開口部55側において、組合体10の外周面100と側壁部52の内周面520との間隔が大きくなる。しかし、実施形態1のリアクトル1では、ケース5の内周面520が上述の傾斜形状であっても、突起部4pによって、上記間隔が確実に狭められる。そのため、上述の組合体10の振幅が小さくなり易い。但し、上記間隔が大き過ぎると、開口部55側の組合体10の熱がケース5に伝わり難く、伝熱効率が低下し易い。そのため、傾斜角度が大き過ぎることは、放熱性の観点から好ましくない。よって、傾斜角度の上限は5°以下、更に2°以下とする。
【0099】
ケース5の長さ、幅、高さ、容積は、適宜選択できる。
ケース5の長さは、例えば80mm以上120mm以下、更に90mm以上115mm以下が挙げられる。
ケース5の幅は、例えば30mm以上80mm以下、更に35mm以上70mm以下が挙げられる。
ケース5の高さは、例えば70mm以上140mm以下、更に80mm以上130mm以下が挙げられる。
ケース5の容積は、例えば120cm3以上1200cm3以下、更に200cm3以上900cm3以下が挙げられる。
本例のケース5は、長さが幅より大きく、かつ、高さが幅より大きい。よって、ケース5の長さ×幅によって求められる面積は、ケース5の長さ×高さによって求められる面積よりも小さい。つまり、底板部51の面積は、側壁部52の面積のうち、長さ方向に沿った部分の面積、ここでは長辺部541又は542の面積より小さい。
【0100】
〈構成材料〉
ケース5は非磁性の金属で構成されている。非磁性金属としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。これらの金属の熱伝導率は比較的高い。そのため、ケース5を放熱経路に利用でき、ケース5を介して、組合体10の熱が外部に効率よく放出される。よって、組合体10の放熱性が向上する。ケース5を構成する材料としては、金属以外にも樹脂などを用いることができる。
【0101】
金属製のケース5は、例えばダイキャストによって製造できる。本例のケース5はアルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。
【0102】
(組合体の配置形態)
ケース5に対する組合体10の配置形態は直立型である。この場合、組合体10は、
図1に示すように、両巻回部21、22の各々の軸方向が底板部51の内底面510と直交するようにケース5に収納される。また、本例の組合体10は、両巻回部21、22の並列方向が長辺部541、542に沿うようにケース5に収納されている。
【0103】
組合体10の配置形態が直立型の場合、以下の平置き型に比較して、底板部51に対する組合体10の設置面積を小さくすることができる。平置き型は、特許文献1、2に記載される形態であり、両巻回部の並列方向及び軸方向がケースの深さ方向に直交するように組合体がケースに収納される。即ち、平置き型では、両巻回部の並列方向及び軸方向が底板部の内底面と平行するように組合体がケースに収納される。一般的に、両巻回部21、22の並列方向及び両巻回部21、22の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体10の大きさ、ここでは幅は、両巻回部21、22の軸方向に沿った組合体10の大きさ、ここでは高さよりも短い。つまり、直立型は、平置き型に比べて、組合体10の設置面積を小さくできる。よって、組合体10の配置形態が直立型の場合、底板部51の面積を小さくでき、リアクトル1の設置面積の省スペース化が可能である。
【0104】
また、組合体10の配置形態が直立型であれば、本例のように、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22と側壁部52との対向面積が大きく確保される。更に、巻回部21、22の外周面と側壁部52の内周面520との間隔が均一的になり易い。本例の場合、巻回部21、22の外周面と長辺部541、542の内面との間隔、巻回部21の外周面と短辺部531の内面との間隔、及び巻回部22の外周面と短辺部532の内面との間隔が均一的になり易い。よって、リアクトル1は、ケース5を放熱経路として効率よく利用できる。そのため、リアクトル1は、コイル2の熱をケース5に放出し易く、組合体10の放熱性に優れる。
【0105】
組合体10の外周面100と側壁部52の内周面520との間隔は、例えば0.5mm以上1.5mm以下、更に0.5mm以上1mm以下が挙げられる。上記間隔は、底板部51側に位置する他方の保持部材42の外壁部40の外周面と、側壁部52の長辺部541、542及び短辺部531、532との間隔である。この理由は、組合体10のうち、突起部4pを除いて、側壁部52の内周面520に最も近接する部材が、保持部材42であるからである。上述のように側壁部52の内周面520、ここでは長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面が傾斜している場合、上記間隔は最小値を採用するとよい。この間隔が0.5mm以上であることで、組合体10と側壁部52との間に封止樹脂部6となる樹脂が回り込み易い。一方、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、ケース5が小型になり易い。また、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、巻回部21、22の外周面と側壁部52の内周面520との間隔が小さくなるため、組合体10の放熱性を向上させることができる。
【0106】
(封止樹脂部)
封止樹脂部6は、ケース5内に充填されて、組合体10の少なくとも一部を封止する。封止樹脂部6によって、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上などを目的とする。
【0107】
この例では、封止樹脂部6がケース5の開口端まで充填されていて、組合体10の全体が封止樹脂部6に埋設されている。封止樹脂部6の充填量は、保持部材41の突起部4pが埋設される量であればよい。組合体10の一部、例えば開口部55側の外側コア部33の上端面などが、封止樹脂部6に封止されずに露出されていてもよい。突起部4pが封止樹脂部6によって埋設されていれば、巻回部21、22は、巻回部21、22の上端面の高さまで封止樹脂部6によって確実に覆われる。この理由は、突起部4pは、開口部55側の保持部材41の外壁部40に設けられているからである。保持部材41の外壁部40は、上述のように、巻回部21、22の上端面より上側に位置する外側コア部33を囲む。また、封止樹脂部6は、コイル2の巻回部21、22の外周面とケース5の側壁部52の内周面520との間に介在される。これにより、コイル2の熱を封止樹脂部6を介してケース5に伝えることができ、組合体10の放熱性が向上される。
【0108】
〈構成材料〉
封止樹脂部6の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂などが挙げられる。この例の封止樹脂部6は、シリコーン樹脂、より具体的には、シリコーンゲルによって構成されている。封止樹脂部6の熱伝導率は高いほど好ましい。この理由は、コイル2の熱をケース5に伝達させ易いからである。そのため、封止樹脂部6を構成する材料は、上記樹脂に加えて、例えば上述したようなフィラーを含有してもよい。封止樹脂部6の熱伝導率を高めるために、上記材料の成分が調整されていてもよい。封止樹脂部6の熱伝導率は、例えば1W/m・K以上、更に1.5W/m・K以上が好ましい。
【0109】
<製造方法>
図4を適宜参照して、上述したリアクトル1の製造方法の一例を説明する。
リアクトル1は、例えば、以下の第1~第3の工程を備える製造方法により製造できる。
第1の工程は、組合体10とケース5とを用意する。
第2の工程は、組合体10をケース5に収納する。
第3の工程は、ケース5内に封止樹脂部6を形成する。
【0110】
(第1の工程)
第1の工程では、上述の突起部4pを備える保持部材41を含む組合体10と、ケース5とを用意する。この例では、組合体10は、コイル2と、磁性コア3と、保持部材4とを組み付けて作製する。また、この例では、モールド樹脂部8(
図1)を形成し、モールド樹脂部8によってコイル2、磁性コア3及び保持部材4を一体化しておく。具体的には、保持部材41、42によってコイル2及び磁性コア3が所定の位置に保持された状態において、外側コア部33の外周面を覆うようにモールド樹脂部8を形成する。このとき、モールド樹脂部8を構成する樹脂の一部は、上述したように、外側コア部33と凹部44との間の隙間と、内側コア部31、32と貫通孔43との間の隙間とを通って、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に充填される。そのため、モールド樹脂部8が巻回部21、22と内側コア部31、32との間に介在するように形成される。
【0111】
用意するケース5は、例えば非磁性の金属で構成されている。この例では、ケース5がアルミニウム製のダイキャスト品である。
【0112】
(第2の工程)
第2の工程では、ケース5の開口部55から組合体10をケース5に収納する。組合体10の配置形態が上述の直立型となるように、組合体10をケース5に収納する。本例では、脚部49がケース5の内底面510に接することで、組合体10がケース5に収納された状態が安定して維持される。また、本例では、保持部材41の突起部47、48によって、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間に所定の間隔を設けた状態を確保することができる。
【0113】
(第3の工程)
第3の工程では、ケース5内に樹脂を充填して、封止樹脂部6(
図1)を形成する。具体的には、ケース5内に組合体10を収納した状態で封止樹脂部6となる樹脂を充填する。この例では、封止樹脂部6となる樹脂がシリコーン樹脂、より具体的にはシリコーンゲルである。
【0114】
上述の樹脂の充填は、組合体10を収納したケース5を真空槽に入れ、真空状態で上記樹脂を注入することが好ましい。真空状態で上記樹脂を注入することで、封止樹脂部6が気泡を含有することを抑制することができる。
【0115】
ケース5内に上述の樹脂を充填した後、樹脂を固化することで、封止樹脂部6(
図1)が形成される。上記樹脂の固化は、使用する樹脂に応じて適宜な条件で行えばよい。
【0116】
{用途}
リアクトル1は、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品に利用できる。リアクトル1は、例えば、種々のコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用できる。コンバータの一例としては、車両に搭載される車載用コンバータ、代表的にはDC-DCコンバータや、空調機のコンバータなどが挙げられる。上記車両は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などが挙げられる。
【0117】
{主要な効果}
実施形態1のリアクトル1は、ケース5の開口部55側に配置される保持部材41が突起部4pを備えるため、組合体10がケース5の深さ方向に交差する方向に振動した際の振幅を小さくすることができる。この理由の一つは、突起部4pによって、ケース5の開口部55側において、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間隔が局所的に狭められることが挙げられる。その結果、組合体10における上述の交差方向の変位量、即ち振幅が小さくなり易い。別の理由は、組合体10の外周面100とケース5の内周面520とが接触した際に、接触面積が突起部4pの大きさ程度であることが挙げられる。そのため、突起部4pを有さない場合に比較して、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との接触面積が小さく、組合体10とケース5との間において振動が伝わり難い。
【0118】
本例のリアクトル1では、ケース5の内周面520が傾斜しており、ケース5の開口部55側において、組合体10の外周面100とケース5の内周面520との間隔がケース5の底板部51側に比較して大きい。また、本例のリアクトル1では、組合体10における幅に対する高さの比が1.0超であり、組合体10における開口部55側の振幅が大きくなり易い。このようなリアクトル1であっても、突起部4pによって、上述の交差方向の振幅を小さくすることができる。
【0119】
更に、本例のリアクトル1は、以下の理由(1)~(4)により、上述の交差方向の振幅を小さくできる。
【0120】
(1)保持部材41が複数の突起部4pを備える。特に、第一面441、442、第二面431、432にそれぞれ、突起部47、48が設けられている。また、各面441、442、431、432の均一的な位置に突起部47、48が設けられている。そのため、突起部4pの数が一つである場合に比較して、組合体10がケース5内において任意の上記交差方向に振動しても、振幅をより確実に小さくすることができる。
【0121】
(2)突起部4pの形状が球欠状である。突起部4pとケース5の内周面520とが接触しても点接触であり、接触面積が小さい。そのため、組合体10とケース5との間において振動が伝わり難い。
【0122】
(3)リアクトル1が振動していない静止状態において、突起部4pがケース5の内周面520に接していない。そのため、リアクトル1が振動しても、突起部4pとケース5とが接触し難い。その結果、組合体10とケース5との間において振動が伝わり難い、好ましくは全く伝わらない。その結果、組合体10とケース5とが一体となって振動し難い。
【0123】
(4)脚部49を備えるため、組合体10の端面105とケース5の内底面510との接触面積が脚部49の大きさ程度である。つまり、脚部49を有さない場合に比較して、組合体10とケース5の内底面510との接触面積が小さい。その結果、組合体10とケース5との間において振動が伝わり難い。
【0124】
実施形態1のリアクトル1は、上述のように組合体10の振幅を小さくできることで、組合体10の振動に起因する封止樹脂部6のせん断などを防止できる。そのため、リアクトル1では、封止樹脂部6が組合体10をケース5内に固定することや、組合体10の放熱経路などとして長期にわたり良好に機能する。このようなリアクトル1は、組合体10の固定構造の信頼性を向上できる上に、放熱性に優れる。また、リアクトル1は、組合体10の振動に起因する騒音も抑制できる。
【0125】
更に、実施形態1のリアクトル1は、以下の効果(i)~(iv)も奏する。
(i)以下の理由により、小型化が可能である。
(1)組合体10の配置形態が直立型であるため、上述の平置き型に比較して、ケース5の底板部51に対する組合体10の設置面積を小さくできる。
(2)組合体10の配置形態が直立型であるため、巻回部21、22と側壁部52との対向面積を上記平置き型に比較して、大きく確保することができる。また、巻回部21、22と側壁部52との間隔を均一的に小さくすることができる。組合体10とケース5との間隔が小さい点で、リアクトル1は、薄型である。
(3)ケース5の四隅に特許文献2に記載される樹脂導入路を設ける必要がない。そのため、ケース5が小さくなり易い。
【0126】
(ii)上記(i)の理由(2)、及び以下の理由により、リアクトル1は、放熱性に優れる。
(1)突起部4pによって、両巻回部21、22とケース5の内周面520との間隔が適切に維持される。そのため、巻回部21、22とケース5の内周面520との間に封止樹脂部6が適切に存在する。
(2)突起部4pの形状が球欠状であるため、突起部4pによって封止樹脂部6がせん断され難い。即ち、封止樹脂部6による伝熱路の切断が抑制される。
【0127】
(iii)上記(ii)の理由(1)、及び以下の理由により、リアクトル1は、組合体10、特に巻回部21,22とケース5との間の電気絶縁性に優れる。
(1)突起部4pがケース5の内周面520に接することで、両巻回部21,22とケース5の内周面520との接触を防止することができる。
(2)脚部49によって、組合体10の端面105とケース5の内底面510との間に隙間が設けられる。
【0128】
(iv)以下の理由により、封止樹脂部6となる樹脂を充填し易い点で、リアクトル1は製造性に優れる。結果として、封止樹脂部6は、気泡を含有し難い。また、封止樹脂部6が充填されていない箇所が生じ難い。
(1)突起部4pによって、両巻回部21、22とケース5の内周面520との間隔が適切に維持される。そのため、封止樹脂部6となる樹脂が巻回部21、22とケース5の内周面520との間に流れ易い。
(2)脚部49によって、ケース5内に収納された組合体10は、ケース5の内底面510に安定して支持される。そのため、封止樹脂部6の充填時に、ケース5内で組合体10が倒れて、過度に狭い隙間が生じることが防止される。
【0129】
[実施形態2]
図5Aから
図8Bを参照して、実施形態2係るリアクトル1Aを説明する。
リアクトル1Aの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1と同様である。概略を述べると、リアクトル1Aは、
図5Bに示すように、コイル2と、磁性コア3と、保持部材41、42と、ケース5と、封止樹脂部6とを備える。保持部材41、42は、両巻回部21、22の各端面に対向するように配置される。組合体10の配置形態は直立型である。ケース5の開口部55側に配置される保持部材41は突起部47,48を備える(
図5A、
図6も参照)。
【0130】
特に、実施形態2のリアクトル1Aでは、ケース5の開口部55側に位置する一方の保持部材41が張出し部45を有する。そして、
図5Aに示すように、ケース5を平面視したとき、側壁部52における少なくとも一方の長辺部541、542と張出し部45との間に隙間46を有する。張出し部45は、突起部48と同様の機能を有しつつ、後述するノズル65を配置可能な隙間46の形成に寄与する。
以下、張出し部45及び隙間46を詳細に説明し、実施形態1と重複する構成及び効果については、詳細な説明を省略する。
【0131】
図5Aは、封止樹脂部6を省略して示している。
図5B及び
図5Cは、リアクトル1Aの内部構造を分かり易くするため、ケース5及び封止樹脂部6を断面で示している。
図5Bは、
図5Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図5B中、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
図5Cは、
図5Aに示すC-C線で切断した部分断面図である。
図5C中、ケース5内の組合体10は正面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は正面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0132】
(張出し部)
保持部材41、42のうち、ケース5の開口部55側に位置する一方の保持部材41は、
図5A及び
図5Bに示すように、対向する一方の短辺部531に向かって突出する張出し部45を有する。この例の保持部材41は、短辺部532に向かって突出する突起部48を有するものの(
図6、
図7も参照)、短辺部531に向かって突出する突起部48を有していない(
図5C、
図7も参照)。
【0133】
張出し部45は、短辺部531に対向する保持部材41の第二面431の一部から突出するように設けられている。張出し部45は、リアクトル1Aが振動していない静止状態において、張出し部45の先端が短辺部531の内面に近接して配置される。このような張出し部45は、ケース5に対して組合体10の長さ方向、即ち
図5A、
図5Bの紙面左右方向の位置を規制する。
【0134】
また、張出し部45は、
図5Aに示すように、少なくとも一方の長辺部541、542との間、より具体的には、長辺部541、542における短辺部531側の端部との間に所定の隙間46を形成する。
【0135】
張出し部45の位置及び数は、特に限定されない。
張出し部45の位置は、保持部材41の幅方向、即ち
図5Aの紙面上下方向の中央であってもよいし、中央からずれていてもよい。
張出し部45の数は少なくとも1つあればよく、複数あってもよい。
この例では、張出し部45が、保持部材41の幅方向の中央に1つ設けられている。
【0136】
張出し部45の形状は、特に限定されない、
この例では、張出し部45の形状が平面視で矩形状である(
図5A参照)。張出し部45の形状は、平面視で矩形状に限らず、多角形状、半円形状、半楕円形状など、その他の形状であってもよい。多角形状としては、例えば三角形状、台形状などが挙げられる。
【0137】
張出し部45の大きさは、所定の大きさの隙間46が形成されるように設定されている。
例えば、張出し部45の突出長さは5mm以上15mm以下、更に6mm以上12mm以下が挙げられる。張出し部45の突出長さが大き過ぎると、長辺部541、542の長さが長くなり、ケース5が大型化する。この例では、上記突出長さは、上述のように静止状態において、張出し部45の先端が短辺部531の内面に接しないように調整されている。
また、張出し部45の幅は、保持部材41の幅よりも小さい。張出し部45の幅は、少なくとも一方の長辺部541、542と張出し部45の外周面との間隔が5mm以上、更に6mm以上となるように設定されていることが挙げられる。
【0138】
張出し部45は、容易に変形や折損したりしない程度の厚みを有する。ここでの厚みは、高さ方向の寸法、即ち
図5Bの紙面上下方向の寸法である。本例の張出し部45の厚みは、保持部材41の厚みの半分弱程度である。張出し部45の厚みは、保持部材41全体の厚みと同等であってもよいし、保持部材41全体の厚みよりもさらに大きく
てもよい。例えば、張出し部45が、保持部材41から他方の保持部材42側にまで棒状に伸延されていてもよい。張出し部45の厚みを大きくすれば、封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少する。そのため、上記樹脂の充填時間が短くなる等、製造コストを削減することができる。
【0139】
(隙間)
隙間46は、
図5Aに示すように、リアクトル1Aを平面視したとき、少なくとも一方の長辺部541、542と張出し部45との間に形成されている。この例では、両長辺部541、542と張出し部45との間にそれぞれ隙間46を有する。つまり、隙間46は、一方の短辺部531側において、張出し部45の両側に設けられている。換言すれば、隙間46は、一方の短辺部531に対向する保持部材41の第二面431と、短辺部531の内面と、長辺部541、542の各内面とで囲まれる領域のうち、張出し部45を除く領域に設けられている。
【0140】
隙間46には、封止樹脂部6を形成する際、封止樹脂部6となる樹脂を注入するノズル65が挿入される(
図8A、
図8B参照)。隙間46の大きさは、リアクトル1Aを平面視したとき、ノズル65(
図8A)が挿入できる大きさであれば、特に限定されない。隙間46の大きさは、張出し部45の大きさに応じて調整できる。そのため、ノズル65の径が大きくても、ノズル65を挿入できる隙間46を容易に形成することができる。即ち、ノズル65の径に応じた隙間46を容易に形成することができる。例えば、隙間46は、平面視で直径4mm以上、更に5mm以上の大きさを有することが挙げられる。隙間46は、ケース5の開口部55側から底板部51側にわたって連通するように形成されている。
【0141】
(ケース)
この例では、
図5Aに示すように、ケース5の側壁部52のうち、巻回部21、22に対向する長辺部541、542及び短辺部532の各部分の内面は実質的に平面で構成されている。また、短辺部531の内面のうち、張出し部45と対向する短辺部531の部分が実質的に平面で構成されている。短辺部531の内面のうち、短辺部531から両長辺部541、542につながる部分が湾曲面で構成されている。本例の側壁部52では、長辺部541、542の端部、ここでは短辺部531側の端部が比較的大きな曲率半径を有する曲面で形成されている。
【0142】
(組合体の配置状態)
本例の場合、保持部材41が一方の短辺部531側に張出し部45を有する。そのため、
図5Bに示すように、ケース5に対して組合体10が他方の短辺部532側に片寄って配置される。
【0143】
(製造方法)
以下、
図8A、
図8Bを主に参照して、上述したリアクトル1Aの製造方法の一例を説明する。
図8Aは、封止樹脂部6を形成する工程において、ノズル65の配置位置を示している。
図8Bは、
図8Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図8Bでは、上述の
図5Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0144】
実施形態2のリアクトル1Aは、例えば、実施形態1で説明した第1の工程から第3の工程を備える製造方法によって製造できる。第1の工程、第2の工程は、上述の通りである。以下、特に第3の工程について、実施形態1とは異なる点を主に説明する。
【0145】
(第3の工程)
第3の工程では、
図8A、
図8Bに示すように、ケース5内に組合体10を収納した状態で封止樹脂部6となる樹脂を充填し、封止樹脂部6を形成する。この例では、上記樹脂の充填は、上記樹脂を注入するノズル65を使用して行う。
【0146】
上述の樹脂の充填は、
図8Aに示すように、側壁部52の長辺部541、542と保持部材41の張出し部45との間に形成された隙間46にノズル65を挿入して行う。
図8Bに示すように、ノズル65を通して底板部51側から流動状態の樹脂を注入する。例えば、熱硬化性樹脂を混合撹拌して注入することが挙げられる。
図8Aは、長辺部541側の一方の隙間46にノズル65を挿入する場合を例示する。ノズル65の直径は、例えば3.5mm以上5mm以下である。
【0147】
ノズル65の先端は、以下に説明するように底板部51の近傍にまで到達させることが好ましい。上述の樹脂をケース5の開口部55側から流し込むと、上記樹脂に気泡が混入し易い。その結果、封止樹脂部6に気泡が残留し易い。特に、底板部51側の封止樹脂部6に気泡が残留し易い。隙間46にノズル65を挿入して底板部51側から開口部55側へ上記樹脂を注入すると、上記樹脂に気泡が混入し難い。その結果、封止樹脂部6に気泡が残留し難い。特に、底板部51側の封止樹脂部6に気泡が残留することを回避することができる。そのため、ケース5内に封止樹脂部6を良好に充填することができる。なお、ノズル65の先端が底板部51の近傍に達していなくてもよい。
【0148】
本例の場合、保持部材41の張出し部45、及び突起部47、48が側壁部52の短辺部531、532及び長辺部541、542にそれぞれ近接して配置される。張出し部45及び突起部47,48によって、ケース5に対して組合体10における長さ方向の変位量、幅方向の変位量が制限される。そのため、封止樹脂部6となる樹脂を充填するとき、組合体10の位置がずれることを効果的に低減できる。
【0149】
図8Aに示すように、一方の短辺部531側に設けられた隙間46にノズル65を挿入して上述の樹脂を注入した場合、短辺部531側から上記樹脂が注入され、他方の短辺部532側に向かって上記樹脂が流れる。
図8A中の白抜き矢印で示すように、ノズル65から注入された上記樹脂は、一方の短辺部531側から組合体10と長辺部541、542との間に回り込み、他方の短辺部532側で合流する。そのため、上記樹脂を注入した箇所から遠い箇所に上記樹脂の合流点が生じることになる。この場合、一方の短辺部531側から他方の短辺部532側に向かって上記樹脂が流れている間に、上記樹脂に混入した気泡が浮き上がる。従って、上記樹脂内の気泡が除去され易い。よって、一方の短辺部531側から上記樹脂を注入することで、封止樹脂部6に気泡が残留することを低減できる。また、一方の短辺部531側から上記樹脂を注入すると、上記樹脂の合流点が他方の短辺部532側の一箇所になる。上記樹脂の合流点は、気泡の巻き込みが発生し易いため、少ない方が好ましい。一方の短辺部531側から上記樹脂を注入することで、上記樹脂の合流点を一箇所にできるため、気泡の残留が低減され易い。
【0150】
図8Aは、長辺部541側の一方の隙間46にノズル65を挿入して上述の樹脂を注入する場合を例示したが、これに限定されるものではない。長辺部542側の隙間46にもノズルを挿入して、2つのノズルから上記樹脂を注入してもよい。ケース5内に上記樹脂を充填した後、上記樹脂を固化することで、封止樹脂部6(
図5B)が形成される。
【0151】
{主要な効果}
実施形態2のリアクトル1Aは、張出し部45を備えることで、上述の実施形態1のリアクトル1の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0152】
(a)張出し部45によって、組合体10の外周面100とケース5の短辺部531の内面との間隔が局所的に狭められる。そのため、張出し部45は、突起部48と同様に、組合体10が上述の交差方向に振動した際の振幅を小さくすることに寄与する。
【0153】
(b)以下の理由により、生産性を向上することができる。
(1)ケース5と張出し部45との間に隙間46を設けることができる。ケース5内に組合体10を収納した状態で、隙間46にノズル65を挿入して、隙間46から封止樹脂部6となる樹脂をケース5内に充填することができる。張出し部45の大きさを調整すれば、大きな径を有するノズル65を利用することができる。ノズル65の径が大きければ、上記樹脂の充填作業を効率的に行うことができる。
【0154】
(2)隙間46にノズル65を挿入して底板部51側から上述の樹脂を注入するため、気泡が浮き上がり易く、上記樹脂に気泡が混入し難い。気泡の残留を回避できるため、封止樹脂部6を良好に形成することができる。
【0155】
(3)一方の短辺部531側から封止樹脂部6を構成する樹脂を注入するため、上記樹脂の合流点が少なくなり、封止樹脂部6に気泡が残留することが低減される。
【0156】
(4)張出し部45及び突起部47,48によって、ケース5に対して組合体10の変位が制限される。そのため、封止樹脂部6となる樹脂をケース5内に充填するとき、組合体10の位置がずれることを低減できる。
【0157】
(5)封止樹脂部6を形成する際、隙間46にノズル65を挿入して樹脂を注入することができる。そのため、ケース5の側壁部52に、特許文献2の段落[0052]、
図2などに記載される樹脂導入路を設ける必要がない。従って、ケース5に対して特別な加工が必要ない。この点で、ケース5の加工時間や製造コストを低減することができる。
【0158】
(c)以下の理由により、小型化が可能である。
張出し部45が、保持部材41の外周面のうち、対向する一方の短辺部531側にのみ設けられており、隙間46が一方の短辺部531側にのみ形成されている。そのため、張出し部45が他方の短辺部532側にも設けられており、隙間46が両方の短辺部531、532側に設けられる場合に比較して、ケース5が小型になり易い。
【0159】
実施形態2のリアクトル1Aは、小型化を図れながら、封止樹脂部6となる樹脂を良好に充填できる。
【0160】
なお、実施形態2のリアクトル1Aは、脚部49を備えていないが、脚部49を備えてもよい。また、張出し部45は、上述の静止状態において、張出し部45の先端が短辺部531の内面に接するように設けられてもよい。
【0161】
[実施形態3]
図9Aから
図10を参照して、実施形態3に係るリアクトル1Bを説明する。
実施形態3のリアクトル1Bは、短辺部531が保持部材41の張出し部45を支持する取付け座56を有し、張出し部45と取付け座56とが締結されている点が実施形態2のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態2との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0162】
図9Aは、封止樹脂部6を省略して示している。
図9Bは、
図9Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図9Bでは、上述の
図5Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0163】
(取付け座)
取付け座56は、
図9Bに示すように、短辺部531からケース5内に突出して、張出し部45の底板部51側の面、即ち下側の面を支持する。取付け座56は、
図9Aに示すように、リアクトル1Bを平面視したとき、張出し部45と重なるように設けられている。この例では、取付け座56が底板部51から短辺部531の内面に沿って延びる。
【0164】
張出し部45は、
図9A及び
図9Bに示すように、上下方向に貫通する貫通孔450を有する。この例では、貫通孔450は、張出し部45に金属製のカラー451が埋め込まれることによって形成されている。一方、取付け座56は、
図9B及び
図10に示すように、その上面にネジ穴57を有する。ネジ穴57は、リアクトル1Bを平面視したとき、張出し部45の貫通孔450と重なる位置に形成されている。
【0165】
この例では、
図9Bに示すように、張出し部45と取付け座56とがボルト59によって締結されている。ボルト59は、ケース5の開口部55側から張出し部45の貫通孔450に挿通され、取付け座56のネジ穴57にねじ込まれている。
図9Aはボルト59を図示していない。
【0166】
実施形態3のリアクトル1Bは、保持部材41の張出し部45が取付け座56に締結されていることで、ケース5に対して組合体10を強固に固定できる。そのため、リアクトル1Bは、例えば衝撃や振動などによって、ケース5から組合体10が脱落することを回避できる。また、この例では、取付け座56が底板部51から短辺部531の内面に沿って延びるように形成されている。リアクトル1Bは取付け座56がケース5内に存在する分、実施形態2のリアクトル1A(
図5B参照)に比較してケース5の容積が小さくなる。そのため、リアクトル1Aに比べて、リアクトル1Bは封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少する。よって、リアクトル1Bは、封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少する分、製造コストを削減できる。
【0167】
[試験例1]
突起部が設けられた保持部材を備えるリアクトルと、突起部を有さない保持部材を備えるリアクトルとについて、組合体の振動特性を評価した。
【0168】
評価するリアクトルは、突起部の有無を除いて、実施形態1のリアクトル1と同様の構成である。即ち、いずれのリアクトルも、コイルと磁性コアと保持部材とを有する組合体と、ケースと、封止樹脂部とを備える(
図1等)。試料No.1のリアクトルは、ケースの開口部側に配置される保持部材の外壁部に合計6個の突起部を備える。試料No.100のリアクトルは、上記保持部材に突起部を備えていない。
【0169】
振動特性の評価は、構造解析ソフトウェアを用いてCAE(Computer Aided Engineering)解析により行う。構造解析ソフトウェアは、MSC NASTRANを用いて、所定の振動を加えた際にリアクトル及び封止樹脂部に加わる応力を解析する。加振方向は、ケースの短辺に沿った方向である。振動加速度は、20Gである。
【0170】
解析の結果、試料No.100のリアクトルでは、封止樹脂部においてケースの開口部側であってケースの長辺部に対応する箇所の全域にわたって、大きな応力が加えられる。即ち、封止樹脂部に対して、面状に応力が負荷される。このことから、試料No.100のリアクトルでは、ケースの内周面と封止樹脂部との界面に対して、過度のせん断荷重が加わり易いといえる。そのため、封止樹脂部が凝集破壊したり、ケースから剥離したりすることが懸念される。大きな応力が加えられる範囲がこのように比較的広い理由の一つとして、組合体における加振方向の振幅が比較的大きいことが考えられる。
【0171】
これに対し、試料No.1のリアクトルでは、ケースの開口部側において、封止樹脂部にある程度大きな応力が加えられる箇所は、突起部及びその周辺のみである。即ち、封止樹脂部に対して、局所的に応力が負荷される。このことから、試料No.1のリアクトルでは、ケースの内周面と封止樹脂部との界面に対して、過度のせん断荷重が加わり難いといえる。ある程度大きな応力が加えられる範囲が非常に狭い理由の一つとして、組合体における加振方向の振幅が試料No.100より小さいことが考えられる。
【0172】
なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
例えば、実施形態1のリアクトル1などに対して、以下の少なくとも一つの変更が可能である。
【0173】
(変形例1)組合体10における長さに対する高さの比、及び幅に対する高さの比の少なくとも一方が1.0以下である。
【0174】
(変形例2)保持部材4が以下の構成(1)、(2)の少なくとも一つを満たす。
(1)外壁部40は、外側コア部33の外周面の一部のみを覆う。
例えば、保持部材4は、枠板の周縁から立設される複数の壁片を備える。各壁片は、枠板の周縁の周方向に離間して設けられる。少なくとも一つの壁片が突起部4pを備える。この形態は、組合体10と封止樹脂部6との接触面積が増大し易い。
(2)外壁部40の形状は、貫通孔43の軸方向からの平面視、又はケース5の深さ方向からの平面視で、長方形以外の形状である。
具体的な形状として、外壁部40の外周面が曲面を含む形状、例えば楕円状やレーストラック状などが挙げられる。
【0175】
(変形例3)磁性コア3が以下の構成(1)~(3)の少なくとも一つを満たす。
(1)磁性コア3を構成するコア片の個数が一つ、二つ、三つ、又は五つ以上である。
(2)磁性コア3は、コイル2の巻回部内に配置される部分と巻回部外に配置される部分とを有するコア片を備える。このようなコア片として、例えば、U字状のコア片、L字状のコア片などが挙げられる。
(3)内側コア部31、32の外周形状が巻回部21、22の内周形状に非相似である。例えば、巻回部21が四角筒状であり、内側コア部31が円柱状であることが挙げられる。
【0176】
(変形例4)リアクトル1は、組合体10の端面105と底板部51の内底面510との間に図示しない接着層を備える。
接着層により、組合体10はケース5に強固に固定される。そのため、組合体10の熱をケース5の底板部51に伝え易い。また、接着層が電気絶縁樹脂で構成される場合、組合体10と底板部51との間の電気絶縁性が高められる。接着層を構成する電気絶縁樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、LCPなどが挙げられる。接着層の構成材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。接着層は、市販の接着シートを利用したり、市販の接着剤を塗布して形成してもよい。
【符号の説明】
【0177】
1、1A、1B リアクトル
10 組合体
100 外周面
105 端面
2 コイル
21、22 巻回部
3 磁性コア
31、32 内側コア部
33 外側コア部
33e 内端面
4、41、42 保持部材
40 外壁部
43 貫通孔
44 凹部
45 張出し部
46 隙間
4p、47、48 突起部
49 脚部
441、442 第一面
431、432 第二面
450 貫通孔
451 カラー
5 ケース
51 底板部
52 側壁部
510 内底面
520 内周面
531、532 短辺部
541、542 長辺部
55 開口部
56 取付け座
57 ネジ穴
59 ボルト
6 封止樹脂部
65 ノズル
8 モールド樹脂部