(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20220927BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 M
H01F37/00 J
H01F37/00 G
H01F27/06
(21)【出願番号】P 2019199278
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2019098078
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】小林 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩平
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-131567(JP,A)
【文献】特開2017-55096(JP,A)
【文献】特開2012-227493(JP,A)
【文献】特開2017-199890(JP,A)
【文献】特開2017-28084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む角筒状の側壁部と、
前記底板部と対向する開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の対向する長辺部と、一対の対向する短辺部とを備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、
前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、
前記外壁部から一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部とを備え、
前記ケースを平面視したとき、少なくとも一方の前記長辺部と前記張出し部との間に隙間を備える、
リアクトル。
【請求項2】
前記張出し部における突出方向の先端は、前記短辺部の内面に接する請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記張出し部は、
前記底板部側に位置する第一面と、
前記開口部側に位置する第二面と、
前記第一面と前記第二面とを貫通する孔とを備え、
前記封止樹脂部は、
前記孔の内部に充填される第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と連続して、前記第一面及び前記第二面に接して設けられる第二樹脂部とを備える請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記短辺部は、前記張出し部を支持する取付け座を有し、
前記張出し部と前記取付け座とが締結されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、コイルと、磁性コアと、コイルと磁性コアとの組合体を収納するケースと、ケース内に充填されて組合体の外周を覆う封止樹脂とを備えるリアクトルを開示する。特許文献1には、封止樹脂をケースの底部側から開口側に向かって充填するための樹脂導入路をケースの側壁部に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの更なる小型化が望まれている。ここでのリアクトルの小型化とは、リアクトルの設置面積が小さく、かつ組合体とケースとの間隔が小さいことを言う。更に、リアクトルの生産性の向上が望まれている。特許文献1に記載されたリアクトルは、封止樹脂を充填するための樹脂導入路がケースの側壁部に設けられている。しかし、実際問題として、ケースの側壁部に樹脂導入路を設けると、樹脂導入路を形成するための特別な加工が必要になるなど、ケースの製造コストが高くなるおそれがある。また、特許文献1に記載されているように、ケースの四隅に樹脂導入路を設けた場合は、ケースの大型化を招くおそれがある。したがって、リアクトルの小型化を図りながら、封止樹脂を良好に充填できる構造が望まれる。
【0005】
本開示は、小型で、生産性に優れるリアクトルを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む角筒状の側壁部と、
前記底板部と対向する開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の対向する長辺部と、一対の対向する短辺部とを備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、
前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、
前記外壁部から一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部とを備え、
前記ケースを平面視したとき、少なくとも一方の前記長辺部と前記張出し部との間に隙間を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリアクトルは、小型で、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、実施形態1に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施形態1に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図1C】
図1Cは、実施形態1に係るリアクトルを正面から見た概略部分断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るリアクトルに備える組合体の概略背面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るリアクトルに備える組合体の概略分解側面図である。
【
図4A】
図4Aは、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、上面から見た概略平面図である。
【
図4B】
図4Bは、封止樹脂部を形成する工程を示す図であり、側面から見た概略部分断面図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態2に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態2に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態3に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態3に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係るリアクトルに備えるケースの概略平面図である。
【
図8A】
図8Aは、実施形態4に係るリアクトルの概略平面図である。
【
図8B】
図8Bは、実施形態4に係るリアクトルを側面から見た概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、
並列に配置される一対の巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内側及び外側に配置される磁性コアと、
前記コイルと前記磁性コアとの相互の位置を規定する保持部材と、
前記コイル、前記磁性コア、及び前記保持部材を含む組合体を収納するケースと、
前記ケース内に充填される封止樹脂部とを備え、
前記ケースは、
前記組合体が載置される底板部と、
前記組合体の周囲を囲む角筒状の側壁部と、
前記底板部と対向する開口部とを備え、
前記側壁部は、一対の対向する長辺部と、一対の対向する短辺部とを備え、
前記組合体は、前記巻回部の各々の軸方向が前記ケースの深さ方向に沿うように前記ケースに収納され、
前記磁性コアは、前記巻回部の外側であって前記開口部側に配置される外側コア部を備え、
前記保持部材は、
前記外側コア部の外周面の少なくとも一部を覆う外壁部と、
前記外壁部から一方の前記短辺部に向かって突出する張出し部とを備え、
前記ケースを平面視したとき、少なくとも一方の前記長辺部と前記張出し部との間に隙間を備える。
【0011】
本開示のリアクトルは、コイルにおける巻回部の各々の軸方向がケースの深さ方向に沿うように組合体がケースに収納されている。以下、この配置形態を直立型と呼ぶ。一方、特許文献1に記載されたリアクトルは、一対の巻回部の並列方向及び巻回部の各々の軸方向の双方が底板部と平行となるように組合体がケースに収納されている。以下、この配置形態を平置き型と呼ぶ。組合体の配置形態が直立型である場合、平置き型に比較して、ケースの底板部に対する組合体の設置面積を小さくできる。一般的に、一対の巻回部の並列方向及び両巻回部の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体の長さは、両巻回部の軸方向に沿った組合体の長さよりも短いからである。よって、本開示のリアクトルは、薄型であり、小型である。そのため、本開示のリアクトルは、底板部の面積を小さくでき、設置面積の省スペース化が可能である。
【0012】
また、組合体の配置形態が直立型である場合、平置き型に比較して、両巻回部とケースとの対向面積を大きく確保できる。そのため、本開示のリアクトルは、ケースを放熱経路として効率よく利用できる。よって、本開示のリアクトルは、コイルの熱をケースに放熱し易く、放熱性に優れる。
【0013】
本開示のリアクトルは、ケースの開口部側に位置する保持部材に、側壁部における一方の短辺部に向かって突出する張出し部を備える。そして、本開示のリアクトルは、ケースを平面視したとき、少なくとも一方の長辺部と張出し部との間に隙間を備える。本開示のリアクトルは、長辺部と張出し部との間に隙間を備えることで、封止樹脂部を形成する際、ケース内に組合体を収納した状態で、上記隙間から封止樹脂部となる樹脂をケース内に充填できる。例えば、ケース内への樹脂の充填は、上記隙間に樹脂を注入するノズルを挿入し、ノズルを通してケースの底板部側から樹脂を注入することができる。
【0014】
隙間の大きさは張出し部の大きさに応じて調整でき、大径のノズルを挿入できる隙間も容易に形成することができる。ノズルの径が大きければ、封止樹脂部となる樹脂の充填作業を効率的に行うことができる。よって、本開示のリアクトルは生産性に優れる。
【0015】
その他、本開示のリアクトルは、保持部材に張出し部を備え、長辺部と張出し部との間に隙間を備える構成であることで、以下の効果が期待できる。
【0016】
(a)封止樹脂部を形成する際、上記隙間にノズルを挿入して樹脂を注入することができる。そのため、ケースの側壁部に樹脂導入路を設ける必要がなく、ケースに対して特別な加工が必要ない。よって、ケースの製造コストを低減することができる。
【0017】
(b)保持部材において張出し部が一方の短辺部側にのみ設けられており、上記隙間が一方の短辺部側にのみ形成されている。そのため、張出し部を他方の短辺部側にも設けて、上記隙間を両方の短辺部側に形成する場合に比較して、ケースの小型化が可能となる。
【0018】
(c)上記隙間にノズルを挿入して樹脂を注入した場合、一方の短辺部側から樹脂が注入され、他方の短辺部側に向かって樹脂が流れることになる。具体的には、ノズルから注入された樹脂は、一方の短辺部側から組合体と長辺部との間に回り込み、他方の短辺部側で合流する。そのため、樹脂を注入した箇所から遠い箇所に樹脂の合流点が生じることになる。この場合、一方の短辺部側から他方の短辺部側に向かって樹脂が流れている間に、樹脂に混入した気泡が浮き上がり、樹脂内の気泡が除去され易い。よって、一方の短辺部側から樹脂を注入することで、封止樹脂部における気泡の残留を低減することができる。また、一方の短辺部側から樹脂を注入すると、樹脂の合流点が他方の短辺部側の一箇所になる。樹脂の合流点は、気泡の巻き込みが発生し易いため、少ない方が好ましい。一方の短辺部側から樹脂を注入することで、樹脂の合流点が一箇所となるため、気泡の残留が低減され易い。
【0019】
(2)上記リアクトルの一形態として、
前記張出し部における突出方向の先端は、前記短辺部の内面に接することが挙げられる。
【0020】
本開示のリアクトルは、保持部材が張出し部を備えることで、ケースに対して組合体を位置決めできる。特に、張出し部が短辺部の内面に接することで、封止樹脂部となる樹脂をケース内に充填するとき、樹脂の流れで組合体の位置がずれることを抑制できる。よって、張出し部が短辺部の内面に接することで、本開示のリアクトルは生産性により優れる。
【0021】
(3)上記リアクトルの一形態として、
前記張出し部は、
前記底板部側に位置する第一面と、
前記開口部側に位置する第二面と、
前記第一面と前記第二面とを貫通する孔とを備え、
前記封止樹脂部は、
前記孔の内部に充填される第一樹脂部と、
前記第一樹脂部と連続して、前記第一面及び前記第二面に接して設けられる第二樹脂部とを備えることが挙げられる。
【0022】
本開示のリアクトルは、張出し部に孔を備え、その孔に封止樹脂部の一部が充填されることで、張出し部と封止樹脂部とを強固に接合でき、ひいては組合体と封止樹脂部とを強固に接合できる。孔に充填される第一樹脂部と、第一面及び第二面に接して設けられる第二樹脂部とが、張出し部に対して引っ掛かるためである。他に、本開示のリアクトルは、張出し部に孔を備えることで、封止樹脂部を形成する際、一方の短辺部側における樹脂の充填状態を孔から確認することができる。また、本開示のリアクトルは、張出し部に孔を備えることで、封止樹脂部を形成する際、一方の短辺部側に充填される樹脂に混入した気泡を孔から脱気することができる。つまり、張出し部に備わる孔は、封止樹脂部を形成する際、樹脂の充填状態を確認する確認孔の役割と、樹脂に混入した気泡を脱気する脱気孔の役割とを発揮する。そして、張出し部に備わる孔は、封止樹脂部の形成後には、組合体と封止樹脂部とを接合する引っ掛け構造の役割を発揮する。
【0023】
(4)上記リアクトルの一形態として、
前記短辺部は、前記張出し部を支持する取付け座を有し、
前記張出し部と前記取付け座とが締結されていることが挙げられる。
【0024】
上記形態は、保持部材の張出し部が取付け座に締結されていることで、ケースに対して組合体を強固に固定できる。上記形態は、例えば衝撃や振動などによって、ケースから組合体が脱落することを回避できる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係るリアクトルの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0026】
[実施形態1]
<概要>
図1から
図4を参照して、実施形態1に係るリアクトル1Aを説明する。リアクトル1Aは、
図1Bに示すように、コイル2と、磁性コア3と、保持部材41、42と、ケース5と、封止樹脂部6とを備える。コイル2は、
図1Bに示すように、並列に配置される一対の巻回部21、22を有する。磁性コア3は、巻回部21、22の内側に配置される内側コア部31、32と、巻回部21、22の外側に配置される外側コア部33とを有する。保持部材41、42は、コイル2と磁性コア3との相互の位置関係を規定する。ケース5は、コイル2、磁性コア3、及び保持部材41、42を含む組合体10を収納する。封止樹脂部6は、ケース5内に充填される。リアクトル1Aの特徴の1つは、組合体10の配置形態が後述する直立型である点にある。リアクトル1Aの別の特徴の1つは、ケース5の開口部55側に配置される保持部材41が張出し部45を備える点にある。張出し部45は、
図1Aに示すように、ケース5を平面視したとき、側壁部52における少なくとも一方の長辺部541、542との間に隙間46を構成する。
【0027】
図1Aは、封止樹脂部6を省略して示している。
図1B及び
図1Cは、リアクトル1Aの内部構造を分かり易くするため、ケース5及び封止樹脂部6を断面で示している。
図1Bは、
図1Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図1B中、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
図1Cは、
図1Aに示すC-C線で切断した部分断面図である。
図1C中、ケース5内の組合体10は正面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は正面と平行な平面で切断した断面を示す。
図1A、
図1B、及び
図1Cといった分図がある場合、全分図を総称して
図1ということがある。他の分図を有する図においても同様である。以下の説明では、ケース5の底板部51側を下とし、底板部51側とは反対側の開口部55側を上とする。この上下方向を高さ方向とする。高さ方向は、ケース5の深さ方向である。また、高さ方向に直交し、ケース5における側壁部52の長辺部541、542に沿った方向を長さ方向とする。高さ方向に直交し、ケース5における側壁部52の短辺部531、532に沿った方向を幅方向とする。上下方向は、
図1B、
図1Cの紙面上下方向である。長さ方向は、
図1A、
図1Bの紙面左右方向である。幅方向は、
図1Aの紙面上下方向、
図1Cの紙面左右方向である。
【0028】
以下、リアクトル1Aの構成について詳しく説明する。
【0029】
(コイル)
コイル2は、
図1Bに示すように、一対の巻回部21、22を有する。巻回部21、22は、巻線を螺旋状に巻回してなる。両巻回部21,22は、互いの軸方向が平行するように並列に配置されている。両巻回部21、22の軸方向は、高さ方向に一致する。コイル2は、両巻回部21、22が1本の連続する巻線で形成されていてもよいし、各巻回部21、22が別々の巻線を巻回して形成されていてもよい。両巻回部21、22が1本の連続する巻線で構成される場合、例えば、一方の巻回部21を形成した後、他端側で巻線を屈曲させて折り返し、他方の巻回部22を形成することが挙げられる。各巻回部21、22が別々の巻線で構成される場合、各巻回部21、22を別々の巻線で形成した後、各巻回部21、22の他端側で巻線の端部同士を接続することが挙げられる。この接続には、溶接や圧着、半田付け、ロウ付けなどの接合方法が利用できる。巻回部21、22の一端側の巻線の端部は、ケース5の開口部55側から外部に引き出される。引き出された先端には、図示しない端子金具が取り付けられる。端子金具には、図示しない電源などの外部装置が接続される。なお、
図1などは、巻回部21、22のみを示し、巻線の端部などは省略している。
【0030】
巻線は、導体線と、絶縁被覆とを有する被覆線が挙げられる。導体線の構成材料は、銅などが挙げられる。絶縁被覆の構成材料は、ポリアミドイミドなどの樹脂が挙げられる。被覆線としては、断面形状が長方形状の被覆平角線や、断面形状が円形状の被覆丸線などが挙げられる。
【0031】
この例の両巻回部21、22は、同じ仕様の巻線からなり、形状、大きさ、巻回方向、ターン数が同じである。また、この例の巻回部21、22は、被覆平角線がエッジワイズ巻きされた四角筒状のエッジワイズコイルである。巻回部21、22の形状は、この例では矩形筒状であるが、特に限定されるものではなく、例えば、円筒状や楕円筒状、長円筒状などであってもよい。また、両巻回部21、22を形成する巻線の仕様や、両巻回部21、22の形状などは異ならせてもよい。
【0032】
この例では、巻回部21、22を軸方向から見た端面形状が矩形状である。つまり、巻回部21、22は、4つの平面と4つの角部とを有する。巻回部21、22の角部は丸められている。巻回部21、22の外周面は実質的に平面で構成されている。そのため、巻回部21、22の外周面とケース5における側壁部52の内周面とは、
図1B及び
図1Cに示すように、平面同士で対向できる。従って、巻回部21、22の外周面とケース5における側壁部52の内周面との対向面積が大きく確保され易い。また、巻回部21、22の外周面とケース5における側壁部52の内周面との間隔
が小さくなり易い。
【0033】
コイル2は、
図1Bに示すように、両巻回部21、22の各々の軸方向がケース5の底板部51と直交し、かつ、両巻回部21、22の並列方向がケース5の側壁部52における長辺部541、542に沿うように配置されている。つまり、両巻回部21、22は、ケース5の長さ方向に並ぶように配置されている。この例では、一方の巻回部21が一方の短辺部531側、
図1Bでは左側に配置され、他方の巻回部22が他方の短辺部532側、
図1Bでは右側に配置されている。
【0034】
(磁性コア)
磁性コア3は、
図1Bに示すように、内側コア部31、32と、一対の外側コア部33、33とを有する。内側コア部31、32は、主として、各巻回部21、22の内側に配置される箇所を構成する。内側コア部31、32の軸方向の端部は、巻回部21、22の端面から突出される。外側コア部33、33は、両巻回部21、22の外側に配置される。外側コア部33、33は、両内側コア部31、32の各端部同士を接続するように設けられる。この例では、
図3に示すように、両内側コア部31、32を両端から挟むように外側コア部33、33がそれぞれ配置される。磁性コア3は、両内側コア部31、32の各端面と外側コア部33、33の各内端面33e(
図3)とが接続されることによって、環状に構成される。磁性コア3には、コイル2を励磁した際に磁束が流れ、閉磁路が形成される。
【0035】
(内側コア部)
内側コア部31、32の形状は、巻回部21、22の内周形状に概ね対応した形状である。巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間には隙間が存在する。この隙間には、後述するモールド樹脂部8を構成する樹脂が充填される。この例では、内側コア部31、32の形状が四角柱状、より具体的には矩形柱状であり、内側コア部31、32を軸方向から見た端面形状が矩形状である。内側コア部31、32の角部は、巻回部21、22の角部に沿うように丸められている。両内側コア部31、32の形状、大きさは同じである。内側コア部31、32において巻回部21、22の端面から突出する両端部は、後述する保持部材41、42の貫通孔43に挿入される(
図3も参照)。
【0036】
この例では、内側コア部31、32はそれぞれ、1つの柱状のコア片で構成されている。内側コア部31、32を構成する各コア片は、巻回部21、22の軸方向の全長と略等しい長さを有する。つまり、内側コア部31、32には、磁気ギャップ材が設けられていない。なお、内側コア部31、32は、複数のコア片と、隣り合うコア片間に介在される磁気ギャップ材とで構成してもよい。
【0037】
(外側コア部)
外側コア部33、33の形状は、両内側コア部31、32の各端部同士をつなぐ形状であれば、特に限定されない。この例では、外側コア部33、33は、両内側コア部31、32の各端面に対向する内端面33eを有する直方体状である。両外側コア部33の形状、大きさは同じである。外側コア部33、33はそれぞれ、1つの柱状のコア片で構成されている。
【0038】
一方の外側コア部33は、巻回部21、22の外側であって、ケース5の開口部55側、
図1Bでは上側に配置される。他方の外側コア部33は、巻回部21、22の外側であって、ケース5の底板部51側、
図1Bでは下側に配置される。底板部51側の外側コア部33の外端面は、底板部51の内底面に対向して配置される。
【0039】
〈構成材料〉
内側コア部31、32及び外側コア部33、33は、軟磁性材料を含む成形体で構成されている。軟磁性材料としては、鉄や鉄合金などの金属、フェライトなどの非金属が挙げられる。鉄合金は、例えば、Fe-Si合金、Fe-Ni合金などが挙げられる。軟磁性材料を含む成形体としては、圧粉成形体や複合材料の成形体などが挙げられる。
【0040】
圧粉成形体は、軟磁性材料からなる粉末、即ち軟磁性粉末を圧縮成形することで得られる。圧粉成形体は、複合材料に比較して、コア片に占める軟磁性粉末の割合が高い。
【0041】
複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散している。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を混合して分散させた原料を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料は、樹脂中の軟磁性粉末の含有量を調整することによって、磁気特性、例えば比透磁率や飽和磁束密度を制御し易い。
【0042】
軟磁性粉末は、軟磁性粒子の集合体である。軟磁性粒子は、その表面に絶縁被覆を有する被覆粒子であってもよい。絶縁被覆の構成材料は、リン酸塩などが挙げられる。複合材料の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂(例、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9Tなど)、液晶ポリマー(LCP)、ポリイミド(PI)樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。複合材料は、樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、複合材料の放熱性を向上させることができる。フィラーは、例えば、セラミックスやカーボンナノチューブなどの非磁性材料からなる粉末を利用できる。セラミックスは、例えば、金属又は非金属の酸化物、窒化物、炭化物などが挙げられる。酸化物の一例として、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウムなどが挙げられる。窒化物の一例として、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられる。炭化物の一例として、炭化珪素などが挙げられる。
【0043】
内側コア部31、32の構成材料と外側コア部33、33の構成材料とは、同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、内側コア部31、32及び外側コア部33、33がいずれも複合材料の成形体であり、各複合材料における軟磁性粉末の材質や含有量が異なってもよい。この例では、内側コア部31、32が複合材料の成形体で構成され、外側コア部33、33が圧粉成形体で構成されている。また、本例の磁性コア3は、磁気ギャップ材を有していない。
【0044】
(保持部材)
この例のリアクトル1Aは、二つの保持部材41、42を備える。保持部材41、42は、
図1B及び
図3に示すように、両巻回部21、22の各端面に対向するように配置される箇所である後述の枠板を備える。また、保持部材41、42は、外側コア部33の外周面の少なくとも一部を覆う箇所である後述の外壁部40を備える。一方の保持部材41は、ケース5の開口部55側に配置されて、上述の上側の外側コア部33を覆う。他方の保持部材42は、ケース5の底板部51側に配置されて、上述の下側の外側コア部33を覆う。保持部材41、42はいずれも、コイル2の巻回部21、22と、磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33、33との間の電気的絶縁を確保する。また、保持部材41、42は、コイル2と磁性コア3との相互の位置を規定して、位置決め状態を保持する。
【0045】
両保持部材41、42の基本的な構成は同じである。この例の保持部材41、42は、貫通孔43を有する枠板と、外壁部40とを備える、枠板は、巻回部21、22の端面と外側コア部33、33の内端面33eとの間に介在される。外壁部40は、外側コア部33、33の外周面の少なくとも一部、本例では全周を覆う。この例では、
図1Aに示すように、保持部材41、42の形状が平面視で矩形枠状である。外壁部40の外周面は実質的に平面で構成されている。外壁部40の外周面は、ケース5の側壁部52における短辺部531、532及び長辺部541、542に対向する4つの平面を含む。
【0046】
枠板は、主として、巻回部21、22と外側コア部33、33との間の電気的絶縁を確保する。枠板は、
図1B及び
図3に示すように、矩形状の板の表裏を貫通する一対の貫通孔43を有する。各貫通孔43には、内側コア部31、32の端部が挿入される。貫通孔43の形状は、内側コア部31、32の端部の外周形状に概ね対応した形状である。この例では、貫通孔43の四隅が内側コア部31、32の外周面の角部に沿って形成されている。この貫通孔43の四隅によって、貫通孔43内に内側コア部31、32が保持される。また、貫通孔43は、内側コア部31、32の端部が挿入された状態で、内側コア部31、32の外周面と貫通孔43の内周面との間に部分的に隙間が形成されるように設けられている。この隙間は、巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間の隙間に連通する。
【0047】
外壁部40は、枠板の周縁を囲む矩形状の筒であり、外側コア部33、33の全周を囲むように設けられている。外壁部40は、その内側に凹部44を有する。凹部44には、外側コア部33の内端面33e側が嵌め込まれる。この例では、凹部44は、外側コア部33が嵌め込まれた状態で、外側コア部33の外周面と凹部44の内周面との間に部分的に隙間が形成されるように設けられている。この隙間には、後述するモールド樹脂部8を構成する樹脂が充填される。このモールド樹脂部8によって各外側コア部33、33と各保持部材41、42とが一体化されている。本例の保持部材41、42は、外側コア部33、33と凹部44との間の隙間と、上述した内側コア部31、32と貫通孔43との間の隙間とが連通するように構成されている。これらの隙間が連通することにより、モールド樹脂部8を形成する際に、モールド樹脂部8を構成する樹脂を巻回部21、22と内側コア部31、32との間に導入することが可能である。
【0048】
更に、この例の保持部材41、42は、図示しない内側介在部を有する。内側介在部は、貫通孔43の周縁部から巻回部21、22の内側に向かって突出し、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に挿入される。この内側介在部によって、巻回部21、22と内側コア部31、32とが間隔をあけて保持される。その結果、巻回部21、22と内側コア部31、32との間の電気的絶縁が確保される。
【0049】
上述したように、内側コア部31、32の各端部が保持部材41、42の各貫通孔43に挿入されることによって、保持部材41、42に対して内側コア部31、32が位置決めされる。また、外側コア部33、33の内端面33e側が保持部材41、42の凹部44に嵌め込まれることによって、外側コア部33、33が位置決めされる。更に、上記内側介在部によって、巻回部21、22が位置決めされる。その結果、保持部材41、42によって、コイル2の巻回部21、22と、磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33、33とが、位置決め状態で保持される。
【0050】
(張出し部)
保持部材41、42のうち、ケース5の開口部55側に位置する一方の保持部材41は、
図1A及び
図1Bに示すように、外壁部40から対向する一方の短辺部531に向かって突出する張出し部45を備える。張出し部45は、短辺部531に対向する外壁部40の外周面の一部から突出するように設けられている。張出し部45は、外壁部40に一体に成形された一体物である。この例の張出し部45は、実施形態2で説明する貫通孔453などを備えない中実体で構成される。張出し部45は、
図1Aに示すように、長辺部541、542との間の少なくとも一方、より具体的には、長辺部541、542の短辺部531側の端部との間に所定の隙間46を形成する。張出し部45の位置及び数は、特に限定されない。張出し部45の位置は、保持部材41の幅方向の中央であってもよいし、中央からずれていてもよい。張出し部45の数は少なくとも1つあればよく、複数あってもよい。この例では、張出し部45が、保持部材41の幅方向の中央に1つ設けられている。
【0051】
張出し部45の形状は、特に限定されない
。この例では、
図1Aに示すように、張出し部45の形状が平面視で矩形状である。張出し部45の形状は、平面視で矩形状に限らず、多角形状、半円形状、半楕円形状など、その他の形状であってもよい。多角形状としては、例えば三角形状、台形状などが挙げられる。張出し部45の大きさは、所定の大きさの隙間46が形成されるように設定されている。例えば、張出し部45の突出長さは5mm以上15mm以下、更に6mm以上12mm以下が挙げられる。張出し部45の突出長さが大き過ぎると、長辺部541、542の長さが長くなり、ケース5が大型化する。また、張出し部45の幅は、保持部材41の幅よりも小さい。張出し部45の幅は、少なくとも一方の長辺部541、542と張出し部45の外周面との間隔が5mm以上、更に6mm以上となるように設定されていることが挙げられる
。
【0052】
張出し部45の厚みは、容易に変形や折損したりしない程度の厚みを有する。ここでの厚みは、高さ方向の寸法、即ち
図1Bの紙面上下方向の寸法である。本例の張出し部45の厚みは、保持部材41の厚みの半分弱程度である。張出し部45の厚みは、保持部材41全体の厚みと同等であってもよいし、保持部材41全体の厚みよりもさらに大きく
てもよい。例えば、張出し部45が、
一方の保持部材41から他方の保持部材42
側まで棒状に伸延されていてもよい。張出し部45の厚みを大きくすれば、封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少するため、その分、製造コストを削減できる。
【0053】
張出し部45は、ケース5に対して組合体10の長さ方向の位置を規制する役割を有する。張出し部45は、その突出方向の先端が短辺部531の内面に接することが挙げられる。張出し部45が短辺部531の内面に接することで、ケース5に対して組合体10を良好に位置決めできる。特に、封止樹脂部6を形成する際、樹脂の流れで組合体10の位置がずれることを抑制できる。
【0054】
(隙間)
隙間46は、
図1Aに示すように、リアクトル1Aを平面視したとき、少なくとも一方の長辺部541、542と張出し部45との間に形成されている。この例では、両長辺部541、542と張出し部45との間にそれぞれ隙間46が設けられる。つまり、隙間46は、一方の短辺部531側において、張出し部45の両側に設けられている。換言すれば、隙間46は、一方の短辺部531に対向する保持部材41の面と、短辺部531の内面と、長辺部541、542の各内面とで囲まれる領域のうち、張出し部45を除く領域に設けられている。
【0055】
隙間46には、封止樹脂部6を形成する際、
図4A及び
図4Bに示すように、封止樹脂部6となる樹脂を注入するノズル65が挿入される。隙間46の大きさは、リアクトル1Aを平面視したとき、ノズル65が挿入できる大きさであれば、特に限定されない。隙間46の大きさは、張出し部45の大きさに応じて調整できる。そのため、ノズル65の径が大きくても、ノズル65を挿入できる隙間を容易に形成することができる。例えば、隙間46は、平面視で直径4mm以上、更に5mm以上の大きさを有することが挙げられる。隙間46は、ケース5の開口部55側から底板部51側にわたって連通するように形成されている。
【0056】
〈構成材料〉
保持部材41、42の構成材料は、電気絶縁材料が挙げられる。電気絶縁材料としては、代表的には樹脂が挙げられる。具体的な樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、PA樹脂、LCP、PI樹脂、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂などが挙げられる。保持部材41、42の構成材料は、上記樹脂に加えて、フィラーを含有してもよい。フィラーを含有することで、保持部材41、42の放熱性を向上させることができる。フィラーは、上述した複合材料に用いるフィラーと同様のものを利用できる。この例では、保持部材41、42の構成材料はPPS樹脂である。
【0057】
(モールド樹脂部)
本例の組合体10は、
図1Bに示すように、モールド樹脂部8を備える。モールド樹脂部8は、外側コア部33、33の外周面の少なくとも一部を覆うと共に、巻回部21、22の内周面と内側コア部31、32の外周面との間に介在される。このモールド樹脂部8により、内側コア部31、32と外側コア部33とが一体に保持され、コイル2の巻回部21、22と磁性コア3の内側コア部31、32及び外側コア部33とが一体化されている。そのため、コイル2と磁性コア3とを一体物として取り扱うことができる。また、モールド樹脂部8によって各外側コア部33、33と各保持部材41、42とが一体化されている。つまり、この例では、モールド樹脂部8によって、コイル2、磁性コア3、及び保持部材41、42が一体化されている。そのため、組合体10は一体物として取り扱うことができる。なお、巻回部21、22の外周面は、モールド樹脂部8によって覆われておらず、モールド樹脂部8から露出している。
【0058】
モールド樹脂部8は、内側コア部31、32と外側コア部33、33とを一体に保持できればよく、内側コア部31、32の少なくとも端部の周方向に沿った外周面を覆うように形成されていればよい。つまり、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の軸方向の中央部まで及んでいなくてもよい。内側コア部31、32と外側コア部33、33とを一体に保持するというモールド樹脂部8の機能に鑑みれば、モールド樹脂部8の形成範囲は、内側コア部31、32の端部近傍までで十分である。勿論、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の軸方向の中央部まで及んでいてもよい。この場合、モールド樹脂部8は、内側コア部31、32の外周面を全長にわたって覆い、一方の外側コア部33から他方の外側コア部33にわたって形成される。
【0059】
〈構成材料〉
モールド樹脂部8を構成する樹脂は、上述した保持部材41、42を構成する樹脂と同様のものを利用できる。モールド樹脂部8の構成材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。この例では、モールド樹脂部8がPPS樹脂で構成されている。
【0060】
(ケース)
ケース5は、
図1に示すように組合体10を収納することで、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上などを目的とする。本例のケース5は、金属で構成されている。金属は樹脂よりも熱伝導率が高い。そのため、金属製のケース5は、組合体10の熱をケース5を介して外部に放出し易い。よって、金属製のケース5は、組合体10の放熱性の向上に寄与する。
【0061】
ケース5は、
図1に示すように、底板部51と、側壁部52と、開口部55とを有する。底板部51は、組合体10が載置される平板部材である。側壁部52は、組合体10の周囲を囲む角筒状体である。ケース5は、底板部51と側壁部52とで組合体10の収納空間が形成され、底板部51と対向する側に開口部55が形成された有底筒状の容器である。この例では、底板部51と側壁部52とが一体に形成されている。側壁部52は、組合体10の高さと同等以上の高さを有する。
【0062】
この例の底板部51は四角板状である。底板部51において、組合体10が載置される内底面は実質的に平面で構成されている。この例の側壁部52は、四角筒状である。側壁部52は、一対の対向する長辺部541、542と、一対の対向する短辺部531、532とを有する。本例の場合、側壁部52の内周面のうち、巻回部21、22に対向する長辺部541、542及び短辺部532の各部分は実質的に平面で構成されている。また、短辺部531側の内周面のうち、張出し部45と対向する短辺部531の部分も実質的に平面で構成されている。短辺部531から両長辺部541、542につながる部分は湾曲面で構成されている。
【0063】
本例の側壁部52は、
図1Aに示すように、平面視で略矩形筒状である。略矩形筒状とは、ケース5を平面視したとき、側壁部52の内周面が実質的に矩形状であることを意味する。ここでの矩形状は、幾何学的に厳密な意味での矩形でなくてもよく、角部がR面取り又はC面取りされた形状なども含めて、実質的に矩形とみなされる範囲を含む。例えば、本例の側壁部52のように、角部が比較的大きな曲率半径を有する曲面で形成された形状を含む。
【0064】
側壁部52の内周面は、底板部51側から開口部55側に向かって広がるように傾斜していてもよい。より具体的には、側壁部52の長辺部541、542の内面同士及び短辺部531、532の内面同士の少なくとも一方は、底板部51側から開口部55側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜していてもよい。つまり、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の少なくとも一つが、底板部51の内底面の垂直方向に対してケース5の外方側に傾斜するように形成されていてもよい。なお、上記垂直方向は、ケース5の高さ方向に相当する。
【0065】
長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面が底板部51側から開口部55側に向かって互いの間隔が大きくなるように傾斜している場合、リアクトル1Aの製造過程において、ケース5に組合体10を収納する作業が行い易い。また、金属製のケース5をダイキャストで製造する場合、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の少なくとも一つが傾斜していることで、ケース5を型から抜き出す作業が行い易い。この例では、
図1B及び
図1Cに示すように、側壁部52の内周面が底板部51側から開口部55側に向かって広がるように、長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面の全てが傾斜している。
【0066】
長辺部541、542及び短辺部531、532の各々の内面と、底板部51の内底面の垂線とがなす傾斜角度は、適宜選択できる。上記傾斜角度は、例えば0.5°以上5°以下、更に1°以上2°以下が挙げられる。傾斜角度が大き過ぎると、開口部55側において、組合体10の外周面と側壁部52の内周面との間隔が大きくなる。上記間隔が大き過ぎると、開口部55側の組合体10の熱が効率的にケース5に放出され難い。そのため、傾斜角度が大き過ぎることは、放熱性の観点からも好ましくない。よって、傾斜角度の上限は5°以下、更に2°以下とする。
【0067】
ケース5の長さは、例えば80mm以上120mm以下、更に90mm以上115mm以下が挙げられる。ケース5の幅は、例えば30mm以上80mm以下、更に35mm以上70mm以下が挙げられる。ケース5の高さは、例えば70mm以上140mm以下、更に80mm以上130mm以下が挙げられる。ケース5の長さは、
図1A、
図1Bの紙面左右方向の長さである。ケース5の幅は、
図1Aの紙面上下方向の長さである。ケース5の高さは、
図1Bの紙面上下方向の長さである。ケース5の容積は、例えば120cm
3以上1200cm
3以下、更に200cm
3以上900cm
3以下が挙げられる。本例のケース5は、長さが幅より大きく、かつ、幅よりも高さが大きい。よって、ケース5の長さ×幅によって求められる面積が、ケース5の長さ×高さによって求められる面積よりも小さい。
【0068】
〈構成材料〉
ケース5は非磁性の金属で構成されている。非磁性金属としては、例えばアルミニウムやその合金、マグネシウムやその合金、銅やその合金、銀やその合金、オーステナイト系ステンレス鋼などが挙げられる。これらの金属の熱伝導率は比較的高い。そのため、ケース5を放熱経路に利用でき、ケース5を介して、組合体10の熱が外部に効率よく放出される。よって、組合体10の放熱性が向上する。ケース5を構成する材料としては、金属以外にも樹脂などを用いることができる。
【0069】
金属製のケース5は、例えばダイキャストによって製造できる。本例のケース5はアルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。
【0070】
(組合体の配置形態)
ケース5に対する組合体10の配置形態は直立型である。この場合、組合体10は、
図1Bに示すように、巻回部21、22の各々の軸方向が底板部51の内底面と直交するようにケース5に収納される。また、本例の組合体10は、両巻回部21、22の並列方向が長辺部541、542に沿うようにケース5に収納されている。本例の場合、保持部材41が一方の短辺部531側に張出し部45を有するため、ケース5に対して組合体10が他方の短辺部532側に片寄って配置される。組合体10の配置形態が直立型の場合、上述した平置き型に比較して、底板部51に対する組合体10の設置面積を小さくできる。平置き型では、両巻回部の並列方向及び軸方向が底板部と平行するように組合体がケースに収納される。一般的に、両巻回部21、22の並列方向及び両巻回部21、22の軸方向の双方に直交する方向に沿った組合体10の長さは、両巻回部21、22の軸方向に沿った組合体10の長さよりも短い。つまり、直立型の場合、平置き型に比べて、組合体10の設置面積が小さくなる。よって、組合体10の配置形態が直立型の場合、底板部51の面積を小さくでき、リアクトル1Aの設置面積の省スペース化が可能である。
【0071】
また、本例のように、巻回部21、22の外周面が実質的に平面で構成される場合、巻回部21、22と側壁部52との対向面積が大きく確保される。更に、巻回部21、22の外周面と側壁部52の内周面との間隔が小さくなり易い。本例の場合、巻回部21、22の外周面と長辺部541、542の内面との間隔、及び巻回部22の外周面と短辺部532との間隔が小さくなり易い。よって、リアクトル1Aは、ケース5を放熱経路として効率よく利用できる。そのため、リアクトル1Aは、コイル2の熱をケース5に放出し易く、組合体10の放熱性に優れる。
【0072】
組合体10の外周面と側壁部52の内周面との間隔は、例えば0.5mm以上1.5mm以下、更に0.5mm以上1mm以下が挙げられる。上記間隔は、底板部51側に位置する他方の保持部材42における外壁部40の外周面と、側壁部52の長辺部541、542及び短辺部532との間隔である。この理由は、組合体10のうち、張出し部45を除いて、側壁部52と最も近接する部材が、保持部材42であるからである。後述するように側壁部52の長辺部541、542及び短辺部532の各々の内面が傾斜している場合、上記間隔は最小値を採用するとよい。この間隔が0.5mm以上であることで、組合体10と側壁部52との間に封止樹脂部6となる樹脂が回り込み易い。一方、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、ケース5が小型になり易い。また、上記間隔が1.5mm以下、更に1mm以下であることで、巻回部21、22の外周面と側壁部52の内周面との間隔が小さくなるため、組合体10の放熱性を向上させることができる。
【0073】
(封止樹脂部)
封止樹脂部6は、ケース5内に充填されて、組合体10の少なくとも一部を封止する。封止樹脂部6によって、組合体10の機械的保護及び外部環境からの保護を図ることができる。外部環境からの保護は、防食性の向上などを目的とする。
【0074】
この例では、封止樹脂部6がケース5の開口端まで充填されていて、組合体10の全体が封止樹脂部6に埋設されている。組合体10の一部のみが封止樹脂部6に封止されていてもよい。例えば、組合体10のうち、巻回部21、22の上端面の高さまでが封止樹脂部6に封止されていることが挙げられる。また、封止樹脂部6は、コイル2の巻回部21、22とケース5の側壁部52との間に介在される。これにより、コイル2の熱を封止樹脂部6を介してケース5に伝えることができ、組合体10の放熱性が向上される。
【0075】
〈構成材料〉
封止樹脂部6の樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂などが挙げられる。この例の封止樹脂部6は、シリコーン樹脂、より具体的には、シリコーンゲルによって構成されている。封止樹脂部6の熱伝導率は高いほど好ましい。この理由は、コイル2の熱をケース5に伝達させ易いからである。そのため、封止樹脂部6を構成する材料は、上記樹脂に加えて、例えば上述したようなフィラーを含有してもよい。封止樹脂部6の熱伝導率を高めるために、上記材料の成分が調整されていてもよい。封止樹脂部6の熱伝導率は、例えば1W/m・K以上、更に1.5W/m・K以上が好ましい。
【0076】
その他、組合体10と底板部51との間に、図示しない接着層が設けられていてもよい。接着層は、組合体10をケース5に強固に固定できる。接着層は、電気絶縁樹脂で構成することが挙げられる。接着層を構成する電気絶縁樹脂は、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、PPS樹脂、LCPなどが挙げられる。接着層を構成する材料は、上記樹脂に加えて、上述したフィラーを含有してもよい。接着層は、市販の接着シートを利用したり、市販の接着剤を塗布して形成してもよい。
【0077】
<製造方法>
図4を主に参照して、上述したリアクトル1Aの製造方法の一例を説明する。リアクトル1Aは、以下の第1から第3の工程を備える製造方法により製造できる。
第1の工程は、組合体10とケース5とを用意する。
第2の工程は、組合体10をケース5に収納する。
第3の工程は、ケース5内に封止樹脂部6を形成する。
【0078】
図4Aは、封止樹脂部6を形成する工程において、ノズル65の配置位置を示している。
図4Bは、
図4Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図4Bは、
図1Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0079】
(第1の工程)
第1の工程では、組合体10とケース5とを用意する。組合体10は、
図3に示すように、コイル2と、磁性コア3と、保持部材41、42とを組み付けて作製する。また、この例では、
図4Bに示すように、モールド樹脂部8を形成し、モールド樹脂部8によってコイル2、磁性コア3、及び保持部材41、42を一体化しておく。具体的には、保持部材41、42によってコイル2及び磁性コア3が所定位置に保持された状態において、外側コア部33の外周面を覆うようにモールド樹脂部8を形成する。このとき、モールド樹脂部8を構成する樹脂の一部は、上述したように、外側コア部33と凹部44との間の隙間と、内側コア部31、32と貫通孔43との間の隙間とを通って、巻回部21、22と内側コア部31、32との間に充填される。そのため、モールド樹脂部8が巻回部21、22と内側コア部31、32との間に介在するように形成される。
【0080】
用意するケース5は、例えば非磁性の金属で構成されている。この例では、ケース5がアルミニウム製のダイキャスト品である。
【0081】
(第2の工程)
第2の工程では、ケース5の開口部55から組合体10をケース5に収納する。組合体10の配置形態が直立型となるように、組合体10をケース5に収納する。具体的には、
図4Bに示すように、両巻回部21、22の各々の軸方向が底板部51と直交し、かつ、両巻回部21、22の並列方向が長辺部541、542
(図4A)に沿うように、組合体10をケース5に収納する。本例の場合、保持部材41の張出し部45によって、組合体10をケース5に対して位置決めすることができる。
【0082】
(第3の工程)
第3の工程では、ケース5内に樹脂を充填して、
図1Bに示す封止樹脂部6を形成する。具体的には、
図4A、
図4Bに示すように、ケース5内に組合体10を収納した状態で封止樹脂部6となる樹脂を充填する。この例では、樹脂を注入するノズル65を使用する。この例では、封止樹脂部6となる樹脂がシリコーン樹脂、より具体的にはシリコーンゲルである。
【0083】
樹脂の充填は、
図4Aに示すように、側壁部52の長辺部541、542と保持部材41の張出し部45との間に形成された隙間46にノズル65を挿入して行う。そして、
図4Bに示すように、ノズル65を通して底板部51側から流動状態の樹脂を注入する。例えば、熱硬化性樹脂を混合撹拌して注入することが挙げられる。ここでは、
図4Aに示すように、長辺部541側の一方の隙間46にノズル65を挿入する場合を例示する。ノズル65の直径は、例えば3.5mm以上5mm以下である。ノズル65の先端は底板部51の近傍にまで到達させることが好ましい。ノズル65の先端が底板部51の近傍に達していなくてもよい。
【0084】
樹脂をケース5の開口部55側から流し込むと、樹脂に気泡が混入し易く、封止樹脂部6に気泡が残留し易い。特に、底板部51側の封止樹脂部6に気泡が残留し易い。隙間46にノズル65を挿入して底板部51側から開口部55側へ樹脂を注入すると、樹脂に気泡が混入し難く、封止樹脂部6に気泡が残留し難い。特に、底板部51側の封止樹脂部6に気泡が残留することを回避することができる。そのため、ケース5内に封止樹脂部6を良好に充填することができる。
【0085】
本例の場合、保持部材41の張出し部45が側壁部52の短辺部531に接することで、ケース5に対して組合体10が位置決めされた状態を維持することができる。そのため、封止樹脂部6となる樹脂を充填するとき、組合体10の位置がずれることを効果的に抑制できる。
【0086】
図4Aに示すように、一方の短辺部531側に設けられた隙間46にノズル65を挿入して樹脂を注入した場合、短辺部531側から他方の短辺部532側に向かって樹脂が流れることになる。
図4A中の白抜き矢印で示すように、ノズル65から注入された樹脂は、一方の短辺部531側から組合体10と長辺部541、542との間に回り込み、他方の短辺部532側で合流する。そのため、樹脂を注入した箇所から遠い箇所に樹脂の合流点が生じることになる。この場合、一方の短辺部531側から他方の短辺部532側に向かって樹脂が流れている間に、樹脂に混入した気泡が浮き上がり、樹脂内の気泡が除去され易い。よって、一方の短辺部531側から樹脂を注入することで、封止樹脂部6に気泡が残留することを低減できる。また、一方の短辺部531側から樹脂を注入すると、樹脂の合流点が他方の短辺部532側の一箇所になる。樹脂の合流点は、気泡の巻き込みが発生し易いため、少ない方が好ましい。一方の短辺部531側から樹脂を注入することで、樹脂の合流点が一箇所となるため、気泡の残留が低減され易い。
【0087】
図4Aに示す例では、長辺部541側の一方の隙間46にノズル65を挿入して樹脂を注入する場合を例示したが、これに限定されるものではない、長辺部542側の隙間46にもノズルを挿入して、2つのノズルから樹脂を注入してもよい。
【0088】
樹脂の充填は、組合体10を収納したケース5を真空槽に入れ、真空状態で樹脂を注入することが好ましい。真空状態で樹脂を注入することで、封止樹脂部6に気泡が発生することを抑制できる。
【0089】
ケース5内に樹脂を充填した後、樹脂を固化させることで、
図1Bに示す封止樹脂部6が形成される。樹脂の固化は、使用する樹脂に応じて適宜な条件で行えばよい。
【0090】
{主要な効果}
実施形態1のリアクトル1Aは以下の効果を奏する。
組合体10の配置形態が直立型であるため、ケース5の底板部51に対する組合体10の設置面積が小さくなる。よって、リアクトル1Aは、小型化が可能である。また、組合体10の配置形態が直立型であれば、巻回部21、22と側壁部52との対向面積が大きくなり易く、かつ、巻回部21、22と側壁部52との間隔が小さくなり易い。そのため、リアクトル1Aは、コイル2の熱をケース5に放出し易く、組合体10の放熱性を向上できる。
【0091】
リアクトル1Aは、一方の保持部材41が張出し部45を有し、長辺部541、542と張出し部45との間に隙間46を有する。そのため、封止樹脂部6を形成する際、隙間46にノズル65を挿入して、封止樹脂部6となる樹脂の充填を行うことができる。隙間46の大きさは張出し部45の大きさに応じて調整できる。そのため、ノズル65の径が大きくても、ノズル65の径に応じた隙間46を容易に形成することができる。ノズル65の径が大きければ、樹脂の充填作業を効率的に行うことができる。よって、リアクトル1Aは生産性に優れる。
【0092】
更に、保持部材41が張出し部45を有することで、ケース5に対して組合体10を位置決めできる。そのため、封止樹脂部6となる樹脂をケース5内に充填するとき、張出し部45の先端が一方の短辺部531に接することで、組合体10の位置がずれることを抑制できる。この点は生産性の向上に寄与する。
【0093】
その他、実施形態1のリアクトル1Aは以下の効果が期待できる。
封止樹脂部6を形成する際、隙間46にノズル65を挿入して樹脂を注入することができる。ケース5の側壁部52に樹脂導入路を設ける必要がないため、ケース5に対して特別な加工が必要ない。よって、ケース5の加工の手間や製造コストが低減される。
【0094】
張出し部45が、保持部材41の外周面のうち、対向する一方の短辺部531側にのみ設けられており、隙間46が一方の短辺部531側にのみ形成されている。そのため、張出し部45を他方の短辺部532側にも設けて、上記隙間46を両方の短辺部531,532側に形成する場合に比較して、ケース5の小型化が可能となる。
【0095】
隙間46にノズル65を挿入して樹脂を注入した場合、一方の短辺部531側から樹脂が注入され、他方の短辺部532側に向かって樹脂が流れる。この場合、樹脂を注入した箇所から遠い箇所に樹脂の合流点が生じることになるため、樹脂内の気泡が除去され易い。一方の短辺部531側から樹脂が注入されることで、封止樹脂部6に気泡が残留することを低減できる。また、一方の短辺部531側から樹脂を注入すると、樹脂の合流点が他方の短辺部532側の一箇所になる。樹脂の合流点が一箇所となるため、気泡の残留が低減され易い。
【0096】
隙間46にノズル65を挿入して底板部51側から樹脂を注入することで、樹脂に気泡が混入し難く、封止樹脂部6に気泡が残留することを回避できる。そのため、ケース5内に封止樹脂部6が良好に充填される。
【0097】
{用途}
リアクトル1Aは、電圧の昇圧動作や降圧動作を行う回路の部品に利用できる。リアクトル1Aは、例えば、種々のコンバータや電力変換装置の構成部品などに利用できる。コンバータの一例としては、車両に搭載される車載用コンバータ、代表的にはDC-DCコンバータや、空調機のコンバータなどが挙げられる。上記車両は、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などが挙げられる。
【0098】
[実施形態2]
図5を参照して、実施形態2に係るリアクトル1Bを説明する。リアクトル1Bの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態2のリアクトル1Bは、張出し部45に貫通孔453を備え、この貫通孔453内に封止樹脂部6の一部が充填される点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0099】
図5Bは、
図5Aに示すB-B線で切断した部分断面図において、張出し部45の近傍を示す。また、
図5Bは、
図1Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0100】
(張出し部)
張出し部45は、
図5Bに示すように、ケース5の底板部51
(図1B)側に位置する第一面451と、ケース5の開口部55側に位置する第二面452とを備える。そして、張出し部45は、
図5A及び
図5Bに示すように、第一面451と第二面452とを貫通する貫通孔453を備える。この例では、貫通孔453は、張出し部45において、幅方向の中央に1つ設けられている。貫通孔453は、張出し部45に複数設けられていてもよい。
【0101】
貫通孔453における軸方向は、保持部材41の枠板に設けられる貫通孔43の軸方向と平行である。この例の貫通孔453は、一様な径の円孔で構成されている。貫通孔453の断面形状は、円形に限定されず、多角形などであってもよい。貫通孔453は、第一面451側から第二面452側に向かって漸次的に径が小さくなるテーパ状に構成されていてもよい。貫通孔453には、封止樹脂部6の一部が充填される。よって、貫通孔453がテーパ状に構成されていることで、張出し部45と封止樹脂部6との接触面積が大きく確保され易い。また、貫通孔453がテーパ状に構成されていることで、テーパ面から第一面451に続く領域で封止樹脂部6が引っ掛かり易い。
【0102】
(封止樹脂部)
封止樹脂部6は、張出し部45に設けられる貫通孔453に充填される第一樹脂部61と、第一面451及び第二面452に接して設けられる第二樹脂部62とを備える。第一樹脂部61と第二樹脂部62とは、連続して設けられる一体物である。
【0103】
実施形態2のリアクトル1Bは、張出し部45に貫通孔453を備え、その貫通孔453に封止樹脂部6の一部が充填されることで、張出し部45と封止樹脂部6とを強固に接合でき、ひいては組合体10と封止樹脂部6とを強固に接合できる。貫通孔453に充填される第一樹脂部61と、第一面451及び第二面452に接して設けられる第二樹脂部62とが、張出し部45に対して引っ掛かるためである。
【0104】
他に、実施形態2のリアクトル1Bは、張出し部45に貫通孔453を備えることで、封止樹脂部6を形成する際、一方の短辺部531側における樹脂の充填状態を貫通孔453から確認することができる。また、実施形態2のリアクトル1Bは、張出し部45に貫通孔453を備えることで、封止樹脂部6を形成する際、一方の短辺部531側に充填される樹脂に混入した気泡を貫通孔453から脱気することができる。
【0105】
[実施形態3]
図6及び
図7を参照して、実施形態3に係るリアクトル1Cを説明する。実施形態3のリアクトル1Cは、短辺部531が保持部材41の張出し部45を支持する取付け座56を有し、張出し部45と取付け座56とが締結されている点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0106】
図6Bは、
図6Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図6Bは、
図1Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0107】
(取付け座)
取付け座56は、
図6Bに示すように、短辺部531からケース5内に突出して、張出し部45
における底板部51側を支持する。取付け座56は、
図6Aに示すように、リアクトル1Cを平面視したとき、張出し部45と重なるように設けられている。この例では、取付け座56
は、底板部51から短辺部531の内面に沿って延びる
ように形成されている。取付け座56は、ケース5の開口部55側の上面にネジ穴57を有する。
【0108】
(張出し部)
張出し部45は、
図6A及び
図6Bに示すように、ケース5の底板部51側に位置する第一面と、ケース5の開口部55側に位置する第二面とを貫通する貫通孔49を備える。この例の貫通孔49は、張出し部45に金属製のカラー490が埋め込まれることで構成されている。貫通孔49は、リアクトル1Cを平面視したとき、取付け座56のネジ穴57と重なる位置に設けられている。
【0109】
張出し部45は、取付け座56のネジ穴57に重なる貫通孔49に加え、更に別の図示しない貫通孔を備えていてもよい。別の貫通孔内には、封止樹脂部6の一部が充填される。封止樹脂部6の一部が充填される別の貫通孔は、実施形態2で説明した貫通孔453の機能を有する。
【0110】
この例では、
図6Bに示すように、張出し部45と取付け座56とがボルト59によって締結されている。
図6Aは、ボルト59を図示していない。ボルト59は、ケース5の開口部55側から張出し部45の貫通孔49を貫通し、取付け座56のネジ穴57にねじ込まれている。ボルト59の頭部は、ケース5の開口部55よりも内側に位置する。そのため、ボルト59の頭部は、ケース5の開口部55から突出しない。本例では、ボルト59の頭部は、封止樹脂部6に埋設されており、封止樹脂部6からも露出していない。
【0111】
実施形態3のリアクトル1Cは、保持部材41の張出し部45が取付け座56に締結されていることで、ケース5に対して組合体10を強固に固定できる。そのため、リアクトル1Cは、例えば衝撃や振動などによって、ケース5から組合体10が脱落することを回避できる。また、この例では、取付け座56が底板部51から短辺部531の内面に沿って延びるように形成されている。リアクトル1Cは、取付け座56がケース5内に存在する分、実施形態1のリアクトル1Aに比較して、ケース5の容積が小さくなる。そのため、リアクトル1Cは、リアクトル1Aに比較して、封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少する。よって、リアクトル1Cは、封止樹脂部6となる樹脂の使用量が減少する分、製造コストを削減できる。
【0112】
[実施形態4]
図8を参照して、実施形態4に係るリアクトル1Dを説明する。リアクトル1Dの基本的な構成は、実施形態1のリアクトル1Aと同様である。実施形態4のリアクトル1Dは、保持部材41の外壁部40に突起部47、48を備える点が実施形態1のリアクトル1Aと相違する。以下の説明は、上述した実施形態1との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0113】
図8Bは、
図8Aに示すB-B線で切断した部分断面図である。
図8Bは、
図1Bと同じように、ケース5内の組合体10は側面から見た外観を示し、ケース5及び封止樹脂部6は側面と平行な平面で切断した断面を示す。
【0114】
(突起部)
突起部47、48は、
図8A及び
図8Bに示すように、保持部材41の外壁部40からケース5の内周面に向かって設けられる。第一の突起部47は、ケース5の長辺部541、542に対向する面に設けられる。第二の突起部48は、ケース5の他方の短辺部532に対向する面に設けられる。つまり、第二の突起部48は、
外壁部40における張出し部45と対向する面に設けられる。
【0115】
突起部47、48の数、位置、形状は、特に限定されるものではなく、適宜選択できる。例えば、突起部47の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。この例では、第一の突起部47は、
図8Aに示すように、外壁部40における両長辺部541、542に対向する各面において、長さ方向に間隔をあけて2つずつ設けられている。また、第二の突起部48は、外壁部40における他方の短辺部532に対向する面において、幅方向の中央に1つ設けられている。突起部47、48の形状は半球体状である。突起部47、48における突出量は、外壁部40の外周面と、側壁部52の長辺部541、542及び短辺部532との間隔に応じて、適宜設定できる。突起部47における突出量は、例えば0.5mm以上1.5mm以下が挙げられる。
【0116】
実施形態4のリアクトル1Dは、外壁部40に突起部47、48を備えることで、巻回部21,22と長辺部541、542との間隔、及び巻回部22と短辺部532との間隔を適切に維持し易い。突起部47、48は、外壁部40における対向する面に接していてもよい。突起部47が長辺部541、542の各々の内面に接することで、ケース5に対して組合体10の幅方向を位置決めし易い。また、突起部48が短辺部532の内面に接することで、ケース5に対して組合体10の長さ方向を位置決めし易い。特に、側壁部52の内周面が底板部51側から開口部55側に向かって広がるように傾斜する場合、突起部47、48が長辺部541、542の内面及び短辺部532の内面にそれぞれ接することで、ケース5内で組合体10が過度に傾くことを抑制できる。
【符号の説明】
【0117】
1A、1B、1C、1D リアクトル
10 組合体
2 コイル
21、22 巻回部
3 磁性コア
31、32 内側コア部
33 外側コア部、33e 内端面
41、42 保持部材
40 外壁部
43 貫通孔、44 凹部
45 張出し部
451 第一面、452 第二面、453 貫通孔
46 隙間
47、48 突起部
49 貫通孔
490 カラー
5 ケース
51 底板部
52 側壁部
531、532 短辺部
541、542 長辺部
55 開口部
56 取付け座
57 ネジ穴
59 ボルト
6 封止樹脂部
61 第一樹脂部、62 第二樹脂部
65 ノズル
8 モールド樹脂部