(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】哺乳動物の疾患を治療するための新規なマルチターゲット薬
(51)【国際特許分類】
A61K 31/216 20060101AFI20220927BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20220927BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220927BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220927BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61K31/216
A61P3/04
A61P17/06
A61P1/00
A61P1/12
(21)【出願番号】P 2019534119
(86)(22)【出願日】2018-05-24
(86)【国際出願番号】 RU2018050057
(87)【国際公開番号】W WO2018217138
(87)【国際公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-04-26
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(73)【特許権者】
【識別番号】519221176
【氏名又は名称】”ファームエンタープライジーズ・ユーラシア”・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール・エフゲニーヴィチ・ネボルシン
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・アレクサンドロヴナ・クロモヴァ
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシア・ウラジミロヴナ・リードロフスカヤ
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-534495(JP,A)
【文献】特表2003-521511(JP,A)
【文献】PNAS,2007年,Vol.104, No.25,p.10655-10660
【文献】日本消化器内視鏡学会雑誌,Vol.46, No.1,2004年,p.3-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐から選択される障害を防止及び/又は治療するための、
式
【化1】
の化合物又はその付加物、水和物若しくは溶媒和物を含む医薬組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の医薬組成物を製造するための、式
【化2】
の化合物又はその付加物、水和物若しくは溶媒和物の使用。
【請求項4】
肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐から選択される障害を防止及び/又は治療するための医薬の製造における、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項5】
治療有効量の
式
【化3】
の化合物又はその付加物、水和物若しくは溶媒和物、及び1つ又は複数の他の追加の治療剤を含む
、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐から選択される障害を防止及び/又は治療するための医薬組成物。
【請求項6】
他の追加の治療剤が、抗生物質、抗炎症薬、抗体、鎮痛剤、細胞増殖抑制剤から選択される、請求項
5に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物の化学、薬理学及び医学に関し、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤である化合物の使用による、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びに他のいくつかの疾患の療法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
胃腸管の機能障害には、胃腸管の中部及び下部からの症状によって現れる一群の不均質な臨床状態が含まれる。過敏性腸症候群(IBS)、疝痛、鼓腸、便秘及び下痢は、胃腸管の最も一般的な障害である。世界消化器病学会(the World Gastroenterological Organization)のデータによると、ヨーロッパ及び北米におけるIBSの罹患率は10~15%と推定されている。世界中で、この疾患は人口の約11.2%が罹患している(Nat Rev Dis Primers、2016年、2:16014)。消化器病理学の一般的な構造では、IBSは米国で第1位にランクされ、それは消化器科医による診察のすべてのケースの28%を占めている。胃腸管のもう1つの非常に一般的な障害は下痢である。下痢を治療するためのゴールドスタンダードは現在ロペラミドであり、これは末梢作用のミューオピオイド受容体アゴニストである。しかし、化学療法薬を服用することによって引き起こされる、下痢を含むいくつかのケースでは、ロペラミドの使用は効果がない。6週間から6か月の乳児に現れる乳児疝痛は、10~30%の子供が罹患し、1日3時間より長く続く聞き分けのない激しい泣き声を伴う(Zhonghua Er Ke Za Zhi. 2017年4月2日、55(4):314~317頁)。この現象の原因は現在のところ不明であるため、疝痛発作を軽減するための有効で安全な方法はまだ開発されていない。1980年代に、コリン作動性アンタゴニストを使用する試みがなされたが、副作用の危険性が高いために中止された。疝痛での使用が承認されている唯一の薬物はシメチコンであり、最近行われたメタ分析の結果によると、効果がなかった。したがって、胃腸管の障害の治療のための新規で有効な薬物の創製及び臨床診療への導入の必要性があると主張することができる。
【0003】
タキキニン(ニューロキニン)受容体は、胃腸管の疾患の治療のための革新的な薬物の治療標的であると見込まれる群である。タキキニン受容体には、NK1、NK2、及びNK3の3種類がある。これらの受容体は、中枢神経系及び末梢組織の両方において広く見られる。胃腸管(GIT)では、これらの受容体はニューロン及びエフェクター細胞において発現し、腸の運動性、分泌及び免疫活性、内臓感受性及び侵害受容に影響を及ぼす(Holzer P. Tachykinins. In Handbook of Biologically Active Peptides (第2版); Kastin A. J.、編; Elsevier、2013年、1330~1337頁)。これに関して、タキキニン受容体は、機能性GIT疾患の治療のための潜在的な標的であることが証明されており、種々の機能性GIT疾患のうちの1つは過敏性腸症候群(IBS)である。機能性腸疾患の治療に関して最も多く研究され広範にわたって調査されている受容体は、NK2受容体である(Br J Pharmacol、2004年、141、1249~63頁)。胃腸管のタキキニンNK2受容体は、筋肉層、粘膜の筋肉層、腸細胞及び免疫細胞、並びに粘膜下組織及び筋肉神経叢の興奮性及び抑制性ニューロンにおいて発現する(J Comp Neurol、2007年、503、381~91頁)。NK2受容体の発現は、適切な粘膜板の炎症性細胞及び粘膜陰窩周辺の好酸球の活性化において増加する(Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol、2003年、367、104~8頁)。NK1及びNK2受容体アンタゴニストの治療適応症としては、過敏性腸症候群(Neurogastroenterol Motil. 2015年10月、27(10):1354~70頁、Br J Pharmacol. 2004年4月、141(8):1249~63頁)、潰瘍性大腸炎(Inflamm Res. 2014年5月、63(5):399~409頁)、クローン病(Neurogastroenterol Motil. 2011年5月、23(5):475~83頁、e179-80)、下痢(Br J Pharmacol. 1997年6月、121(3):375~80頁)、乳児疝痛(Neuropeptides. 2010年6月、44(3):269~72頁)、術後腸閉塞、悪心及び嘔吐(Am J Health Syst Pharm. 2017年4月10日)、咳(Pulm Pharmacol Ther. 2004年、17(1):11~8頁)、喘息(Allergy. 2013年1月、68(1):48~54頁、BMC Pulm Med. 2011年8月2日、11:41頁)、関節リウマチ(Neuropeptides. 1998年6月、32(3):215~23頁)、及び乾癬(Pathobiology. 1999年、67(1):51~4頁)、が挙げられる。
【0004】
胃腸障害のための別の可能な治療は、CB1Rカンナビノイド受容体アゴニストの使用である。CB1R受容体アゴニストは腸粘膜内のイオン輸送を遅くし、水分の蓄積を減少させる。おそらく、その効果は腸上皮への直接的な効果というよりもむしろ、神経ガイドとの相互作用によって媒介されていると考えられる。腸の運動性を弱め、神経終末の分泌及び感受性を低下させるCB1受容体アゴニストの能力は、過敏性腸症候群(J Pharmacol Exp Ther. 2014年7月、350(1):69~78頁)及び、化学療法誘発性下痢(Curr Gastroenterol Rep. 2015年2月、17(2):429頁)を含む下痢(Drug News Perspect. 2009年9月、22(7):383~92頁)を有する患者を治療するために使用することができる。更に、CB1Rカンナビノイド受容体アゴニストは、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病を含む神経変性疾患(Handb Exp Pharmacol. 2015年、231:233~59頁)、多発性硬化症(J Med Chem. 2016年7月28日、59(14):6753~71頁、及び脳脊髄炎(Mult Scler Relat Disord. 2015年11月、4(6):505~11頁)を治療するために使用することができる。
【0005】
5-ヒドロキシトリプタミン受容体(5-HT3)アゴニストは、過敏性腸症候群及び他の胃腸管の障害に関連する疼痛を治療するために使用される(Aliment Pharmacol Ther 1997年、11:3~15頁)。同時に、5-ヒドロキシトリプタミン受容体5-HT2Bのアンタゴニストは、明らかに、病状の進行に関連する痛みを軽減するのに有用であるだけでなく、疾患の病因に直接的な影響を及ぼすこともある(Mini Rev Med Chem. 2004年3月、4(3):325~30頁)。更に、5-ヒドロキシトリプタミン受容体5-HT2Bアンタゴニストは、片頭痛を治療するために使用することができる(Expert Opin Investig Drugs. 2017年3月、26(3):269~277頁)。
【0006】
比較的新規な、比較的十分に探求されていない方向は、胃腸管の障害、特に過敏性腸症候群の治療のための第1型及び第2型プロキネチシン受容体アゴニストの使用である(Neurogastroenterol Motil. 2012年1月、24(1):65~75頁)。クローン病、潰瘍性大腸炎(Br J Pharmacol. 2013年1月、168(2):389~402頁)及び他の多くの疾患(虚血(Stroke. 2009年1月、40(1):285~93頁)、アレルギー性喘息(Pharmacol Res. 2016年2月、104:132~9頁)及び高血糖症(J Cardiovasc Pharmacol. 2012年7月、60(1):61~9頁))の治療に、BRDKB1ブラジキニン受容体アゴニストを使用することが可能である。いくつかの受容体の活性化によって引き起こされる機能的応答は、転写NF-κB因子のシグナル伝達経路と関連していることに留意すべきである。NF-κBシグナル伝達経路阻害剤は、乾癬(Int Immunopharmacol. 2015年2月、24(2):392~9頁)、多発性硬化症(J Neuroinflammation. 2015年9月30日、12:184頁)、潰瘍性大腸炎(Mol Cell Biochem. 2016年8月、419(1-2):65~74頁)、クローン病(J Steroid Biochem Mol Biol. 2007年1月、103(1):51~60頁)及び他のいくつかの疾患を治療するために使用することができる。
【0007】
したがって、今日、胃腸管の障害の治療に対する多くの治療的アプローチがある。しかし、記載された機構のうちのいくつかに作用する登録医薬品はまだ存在していない。したがって、胃腸管の障害及び他の疾患の治療のための新規で有効な薬物の創製及び臨床診療への導入の必要性が、依然としてある。
【0008】
本発明は、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びに他のいくつかの疾患の治療における、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤である、ベンジル(2S)-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド]-3-フェニルプロパノエート化合物又はその付加物、水和物、溶媒和物の使用に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Nat Rev Dis Primers、2016年、2:16014
【文献】Zhonghua Er Ke Za Zhi. 2017年4月2日、55(4):314~317頁
【文献】Holzer P. Tachykinins. In Handbook of Biologically Active Peptides (第2版); Kastin A. J.、編; Elsevier、2013年、1330~1337頁
【文献】Br J Pharmacol、2004年、141、1249~63頁
【文献】J Comp Neurol、2007年、503、381~91頁
【文献】Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol、2003年、367、104~8頁
【文献】Neurogastroenterol Motil. 2015年10月、27(10):1354~70頁
【文献】Br J Pharmacol. 2004年4月、141(8):1249~63頁
【文献】Inflamm Res. 2014年5月、63(5):399~409頁
【文献】Neurogastroenterol Motil. 2011年5月、23(5):475~83頁、e179-80
【文献】Br J Pharmacol. 1997年6月、121(3):375~80頁
【文献】Neuropeptides. 2010年6月、44(3):269~72頁
【文献】Am J Health Syst Pharm. 2017年4月10日
【文献】Pulm Pharmacol Ther. 2004年、17(1):11~8頁
【文献】Allergy. 2013年1月、68(1):48~54頁
【文献】BMC Pulm Med. 2011年8月2日、11:41頁
【文献】Neuropeptides. 1998年6月、32(3):215~23頁
【文献】Pathobiology. 1999年、67(1):51~4頁
【文献】J Pharmacol Exp Ther. 2014年7月、350(1):69~78頁
【文献】Drug News Perspect. 2009年9月、22(7):383~92頁
【文献】Curr Gastroenterol Rep. 2015年2月、17(2):429頁
【文献】Handb Exp Pharmacol. 2015年、231:233~59頁
【文献】J Med Chem. 2016年7月28日、59(14):6753~71頁
【文献】Mult Scler Relat Disord. 2015年11月、4(6):505~11頁
【文献】Aliment Pharmacol Ther 1997年、11:3~15頁
【文献】Mini Rev Med Chem. 2004年3月、4(3):325~30頁
【文献】Expert Opin Investig Drugs. 2017年3月、26(3):269~277頁
【文献】Neurogastroenterol Motil. 2012年1月、24(1):65~75頁
【文献】Br J Pharmacol. 2013年1月、168(2):389~402頁
【文献】Stroke. 2009年1月、40(1):285~93頁
【文献】Pharmacol Res. 2016年2月、104:132~9頁
【文献】J Cardiovasc Pharmacol. 2012年7月、60(1):61~9頁
【文献】Int Immunopharmacol. 2015年2月、24(2):392~9頁
【文献】J Neuroinflammation. 2015年9月30日、12:184頁
【文献】Mol Cell Biochem. 2016年8月、419(1-2):65~74頁
【文献】J Steroid Biochem Mol Biol. 2007年1月、103(1):51~60頁
【文献】Protein Sci. 1996年4月、5(4):789~91頁
【文献】Glia. 1992年、6(2):89~95頁
【文献】Biochem Biophys Res Commun. 1994年5月16日、200(3):1512~20頁
【文献】Mol Pharmacol. 1995年9月、48(3):443~50頁
【文献】Eur J Pharmacol. 2000年3月24日、392(1-2):1~9頁
【文献】Mol Pharmacol. 2005年6月、67(6):2070~6頁
【文献】Br J Pharmacol. 1999年9月、128(1):13~20頁
【文献】J Immunol. 2009年5月1日、182(9):5836~45頁
【文献】J Ethnopharmacol. 2004年2月、90(2-3):195~204頁
【文献】J Pharm Pharmacol. 2015年2月、67(2):244~54頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の開示
本発明の目的は、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤であり、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐の治療において有効な、新規薬物を開発することである。
【0012】
本発明の技術的結果は、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びに他の疾患の療法において、局所使用における化合物の使用が可能である高い活性及び薬物動態特性を特徴とする、有効なカテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤の開発及び取得である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
示された技術的結果は、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤としての、ベンジル(2S)-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド]-3-フェニルプロパノエート化合物(化合物1)
【0014】
【0015】
又はその付加物、水和物、溶媒和物の使用によって達成される。
【0016】
ベンジル(2S)-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド]-3-フェニルプロパノエート化合物は、国際出願WO2006101422に開示及び記載されている。
【0017】
本発明はまた、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びにまた他の障害を防止及び/又は治療するための医薬組成物を製造するための、ベンジル(2S)-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド]-3-フェニルプロパノエート化合物又はその付加物、水和物、溶媒和物の使用に関する。
【0018】
更に、本発明は、本発明による有効量の化合物1及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びにまた他の障害を防止及び/又は治療するための、医薬組成物に関する。本発明のいくつかの実施形態では、賦形剤は薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤である。
【0019】
本発明はまた、本発明による医薬組成物を体内に投与することを含む、前記体内におけるカテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する障害を防止及び/又は治療するための方法も含む。本発明の実施形態のいくつかの非限定的な変形形態では、疾患は肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐である。本発明の特定の実施形態では、体はヒト又は動物の体である。
【0020】
本発明はまた、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する障害を、そのような治療を必要とする対象において、防止及び/又は治療する方法であって、治療有効量の化合物1を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0021】
本発明はまた、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐を、そのような治療を必要とする対象において、防止及び/又は治療する方法であって、治療有効量の化合物1を前記対象に投与することを含む、方法に関する。
【0022】
本発明はまた、医薬の製造における化合物1の使用に関する。
【0023】
本発明はまた、化合物1を、1つ又は複数の他の追加の治療剤と組み合わせて含む組合せに関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な開示
本発明の目的である化合物1の取得は、国際出願WO2006101422に記載されている。示された出願は、シクロオキシゲナーゼを阻害する能力を有する、生体アミン及びアミノ酸のフェニル含有N-アシル誘導体を開示する。そして、それにより、副作用、特に潰瘍形成作用及び痙攣作用を伴わない、鎮痛及び抗炎症特性を有し、更に、抗低酸素作用、抗鬱作用及び抗パーキンソン作用を有する他の鎮痛薬の作用を増強する能力を有する。
【0025】
化合物1の薬理学的標的の大規模スクリーニング中に、化合物1が、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤であることが、驚くべきことに見出された。
【0026】
実験的に測定された化合物1の治療標的のスペクトルに従って、化合物1の使用が最も有望であると思われる適応症を決定した。しかし、化合物1の薬物動態の試験中に、化合物1は、動物及びヒトの血漿中での安定性が極めて低いことが意外にも見出された。化合物1のこの予想外の特性により、化合物が専ら局所的効果を有することが可能になる。したがって、薬物のマルチターゲット作用に関連した全身的な副作用がないので、化合物1の使用は安全であろう。
【0027】
したがって、化合物1は、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びにまた他の疾患の治療に使用することができる、新規なカテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、5-HT2Bセロトニン受容体アンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤である。局所使用のために化合物を使用することが可能になる薬物動態パラメーターにより、化合物1を使用する場合の高い安全性及び全身作用の欠如が提供される。
【0028】
用語及び定義
「化合物1」という用語は、構造式:
【0029】
【0030】
でも表されるベンジル(2S)-2-[2-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド]-3-フェニルプロパノエート化合物に関する。
【0031】
「C」という用語を温度に関して使用する場合、センチグレードスケール又は摂氏の温度スケールを意味する。
【0032】
「IC50」という用語は、最大半量の酵素阻害又はアゴニスト若しくはアンタゴニスト作用が達成される試験中の化合物の濃度を意味する。
【0033】
「薬学的に許容される付加物」又は「付加物」という用語は、比較的非毒性の化合物を使用して得られる、分子同士の直接結合の生成物を含む。薬学的に許容される非毒性付加物の例は、非毒性ニトロ誘導体又は尿素によって形成される付加物であり得る。他の薬学的に許容される付加物としては、非イオン性界面活性剤、シクロデキストリン等の付加物、並びに電荷移動錯体(π付加物)が挙げられる。「付加物」という用語には、非化学量論的付加物も含まれることに留意されたい。
【0034】
「溶媒和物」という用語は、本発明による化合物、及び薬学的に許容される溶媒、例えばエタノールの、1つ又は複数の分子を含有する分子複合体を説明するのに使用する。「水和物」という用語は、指示溶媒が水である場合に使用する。
【0035】
「賦形剤」という用語は、薬物の一部であるか、又は薬物の製造工程、薬物の製造において使用して、薬物に必要な物理化学的特性を付与する、無機又は有機由来の任意の薬学的に許容される物質を意味する。
【0036】
「AUC」(曲線下面積)という用語は、全観察時間中の血漿中の薬物の総濃度を特徴付ける薬物動態パラメーターを意味する。AUCは、経時的な血漿中の薬物濃度の関数(薬物動態曲線)の0~∞の積分として数学的に定義され、薬物動態曲線及び座標軸によって限定される図形の面積に等しい。
【0037】
「治療」、「療法」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける病的状態の治療を包含し、a)軽減、b)疾患経過の阻止(中断)、c)疾患の重症度の緩和、すなわち、疾患の退縮を誘導すること、d)用語が適用される疾患若しくは状態、又は疾患若しくは状態の1つ又は複数の症状を逆転させることを包含する。
【0038】
「予防」、「防止」という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトにおける疾患の危険因子の排除、並びに無症状期の予防的治療を包含し、疾患の臨床病期の発生の可能性を減少させることを目的とする。予防的療法のための患者は、既知のデータに基づいて、全集団と比較したときの、疾患の臨床病期の発生リスクの増加を含む因子に基づいて選択される。予防的療法は、a)一次予防及びb)二次予防を含む。一次予防は、まだ疾患の臨床病期に達していない患者における予防的治療として定義する。二次予防は、疾患の同一又は類似の臨床状態の反復発症の防止である。
【0039】
本発明の目的である化合物1の使用は、カテプシンS、1型カンナビノイド受容体、1型及び2型タキキニン受容体、1型及び2型プロキネチシン受容体、1型ブラジキニン受容体、メラノコルチン受容体MC4R、セロトニン受容体5-HT2B及びNB-κBシグナル伝達経路の活性に関連する肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群、下痢、悪心及び嘔吐、並びにまた他の疾患の治療に使用することができる。
【0040】
化合物の治療的使用方法
本発明の主題はまた、治療有効量の本発明による化合物1を、適切な治療を必要とする対象へ投与することを含む。治療有効量は、患者が治療(予防)に対して所望の反応を示す可能性が最も高い、患者に投与又は送達される化合物の量を意味する。正確な必要量は、年齢、体重及び一般的な患者の状態、疾患の重症度、製剤の投与手順、他の製剤との併用治療等に応じて、対象ごとに異なってもよい。
【0041】
本発明による化合物又はこの化合物を含む医薬組成物は、疾患の治療又は予防に有効である任意の量及び任意の投与方法で、患者の体に投与することができる。好ましくは、活性物質の1日用量は、1患者あたり1日5gであり、最も好ましくは、1日用量は、5~500mg/日である。好ましくは、化合物1は経口的に又は局所的に投与する。
【0042】
化合物1を好適な薬学的に許容される担体と所望の投与量で混合した後、本発明の本質である医薬組成物を、ヒト又は他の動物の体に経口的に、非経口的に、局所的に等で投与することができる。
【0043】
投与は、1日に、1週間に(又は他の任意の時間間隔で)、又は時々、1回及び数回のどちらでも、行うことができる。更に、化合物1は、一定期間、例えば2~10日間患者の体に毎日投与し、物質を摂取しない期間、例えば1~30日間が続いてもよい。
【0044】
化合物1を併用療法レジメンの一部として使用する場合、併用療法の各成分の用量は、必要な治療期間中に投与する。併用療法を構成する化合物は、すべての成分を含有する剤形で一度にでも、成分の個々の投与量の形態でも、どちらででも患者の体に投与することができる。
【0045】
医薬組成物(薬物)
本発明はまた、本発明による化合物1又はその付加物、水和物、溶媒和物、並びに、本発明の本質である化合物と組み合わせて患者に投与することができ、化合物の薬理学的活性に影響を及ぼさず、治療量の化合物を送達するのに十分な用量で投与する場合に非毒性である、1つ又は複数の薬学的に許容される担体、アジュバント、溶媒及び/又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。本明細書で特許請求する医薬組成物は、本発明の化合物1を薬学的に許容される担体と共に含み、担体としては、特定の剤形に好適である、任意の溶媒、希釈剤、分散剤又は懸濁液、界面活性剤、等張剤、増粘剤及び乳化剤、保存剤、結合剤、流動促進剤等が挙げられる。
【0046】
薬学的に許容される担体として使用し得る材料としては、単糖及びオリゴ糖、並びにそれらの誘導体;ゼラチン;タルク;カカオバター及び坐剤用ワックス等の賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフロール油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油等の油;プロピレングリコール等のグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム等の緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質非含有水;等張溶液、リンゲル液;エチルアルコール、及びリン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
組成物はまた、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム等の他の非毒性相溶性滑沢剤を、並びに染料、フィルム形成剤、甘味剤、香味剤及び芳香剤、保存剤及び酸化防止剤も含んでもよい。
【0048】
本発明の目的はまた、剤形-医薬組成物のクラスであり、その製剤は、治療有効用量での体への特定の投与方法、例えば推奨される投与量で、経口投与、局所投与、又は吸入投与、例えば吸入スプレーの形態での投与、又は血管内方法による投与、鼻腔内、皮下、筋肉内投与、並びに注入方法による投与のために最適化される。
【0049】
本発明の剤形は、リポソームの使用方法、マイクロカプセル化技術、ナノ形態の医薬の調製方法、又は製薬学において既知の他の方法によって得られる製剤を含み得る。
【0050】
本発明の医薬組成物は、化合物1を薬学的に許容される担体と混合することによって得てもよい。
【0051】
したがって、組成物の取得においては、例えば、錠剤の形態では、化合物1を、ゼラチン、デンプン、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、アラブルガム(arable gum)、マンニトール、微結晶セルロース、ヒプロメロース、又は類似化合物等の1つ又は複数の医薬賦形剤と混合する。
【0052】
錠剤は、スクロース、セルロース誘導体、又はコーティングを施すのに好適な他の物質でコーティングすることができる。錠剤は、直接圧縮、乾式若しくは湿式造粒、又はホットメルトフュージョン(hot melt fusion)等の種々の方法によって得ることができる。
【0053】
ゼラチンカプセルの形態の医薬組成物は、化合物1を薬学的に許容される担体(他のどのような物質か明確ではない)と混合し、得られた混合物を軟カプセル又は固体カプセルに充填することによって得ることができる。
【0054】
非経口投与のためには、水性懸濁液、等張食塩水又は注射用滅菌溶液を使用し、それらは薬理学的に相溶性のある薬剤、例えばプロピレングリコール又はブチレングリコールを含有する。
【0055】
医薬組成物の例
本発明に記載の物質は、以下の製剤の形態でヒト疾患又は動物疾患の防止及び/又は治療に使用することができる:(「物質」とは活性成分-化合物1-を意味する):
【0056】
錠剤I mg/錠
物質 3.0
微結晶セルロース 64.0
カルボキシメチルデンプンナトリウム 2.3
ステアリン酸マグネシウム 0.7
錠剤II mg/錠
物質 30.0
微結晶セルロース 640.0
カルボキシメチルデンプンナトリウム 23.0
ステアリン酸マグネシウム 7.0
錠剤III mg/錠
物質 3.0
微結晶セルロース 64.0
カルボキシメチルデンプンナトリウム 2.3
ステアリン酸マグネシウム 0.7
腸溶性コーティング Acryl-EZE(登録商標) MP 2.0
錠剤IV mg/錠
物質 30.0
微結晶セルロース 640.0
カルボキシメチルデンプンナトリウム 23.0
ステアリン酸マグネシウム 7.0
腸溶性コーティング Acryl-EZE(登録商標) MP 20.0
錠剤V mg/錠
物質 200.0
ラクトースPh. Eur 182.75
クロスカルメロースナトリウム 12.0
コーンスターチ(5%w/v ペースト) 2.25
ステアリン酸マグネシウム 3.0
カプセル剤 mg/カプセル
物質 10.0
ラクトースPh. Eur 488.5
マグネシア 1.5
注射用製剤I mg/100ml
物質 310.0
ポリエチレングリコール-400 44.4
エデト酸二ナトリウム 5.0
注射用水 最大100ml
軟膏I g/100g
物質 0.103
トコフェロール 0.100
Lanett SX 10.900
ヒマシ油 11.000
ポリエチレンオキシド1500 31.906
ポリソルベート80 4.491
1,2-プロパンジオール 41.500
軟膏II g/100g
物質 0.103
ブチルヒドロキシトルエン(イオノール) 0.100
Lanett SX 10.900
ヒマシ油 11.000
ポリエチレンオキシド1500 31.906
ポリソルベート80 4.491
1,2-プロパンジオール 41.500
軟膏III g/100g
物質 0.105
トコフェロール 0.100
Lanett SX 10.900
ヒマシ油 11.000
ポリエチレンオキシド1500 31.906
ポリソルベート80 2.225
1,2-プロパンジオール 41.500
エチルアルコール、精留 2.260
軟膏IV g/100g
物質 0.105
ブチルヒドロキシトルエン(イオノール) 0.100
Lanett SX 10.900
ヒマシ油 11.000
ポリエチレンオキシド1500 31.906
ポリソルベート80 4.491
1,2-プロパンジオール 41.500
エチルアルコール、精留 2.260
【0057】
これらの組成物は標準的な製薬技術に従って調製することができる。
【0058】
併用療法における化合物1の使用
本発明による化合物1を個々の活性医薬品として投与することができるという事実にもかかわらず、化合物1は、1つ又は複数の他の薬剤と組み合わせて使用することもでき、特に他の薬剤は抗生物質、NSAID又は他の抗炎症剤、抗体、鎮痛剤、細胞増殖抑制剤等であり得る。併用摂取の場合、治療剤は、同時に又は順次異なる時間に投与される異なる剤形を表してもよく、又は治療剤を1つの剤形中に組み合わせてもよい。
【0059】
他の医薬品と組み合わせた本発明の化合物1に関する「併用療法」という語句は、薬物の組合せの有益な効果を何らかの形で提供する、すべての薬剤の連続的又は同時の摂取である。併用投与とは、特に、例えば、一定比率の活性物質を有する1つの錠剤、カプセル剤、注射剤又は他の形態での組合せ送達、並びに各化合物についてそれぞれいくつかの別々の剤形での同時送達を意味する。
【0060】
したがって、本発明の化合物の投与は、対応する疾患の防止及び治療の分野における当業者に既知の追加の療法と共に行ってもよく、追加の療法は、抗菌薬、細胞増殖抑制薬及び細胞傷害性薬の使用、症状又は医薬のうちの1つの副作用の抑制のための医薬の使用を含む。
【0061】
剤形が単一剤形である場合、組合せは、好適な投与量の範囲で本発明の化合物を使用する。本発明による化合物1はまた、これらの医薬の組合せが可能ではない場合には、他の薬剤と共に連続的に患者に投与してもよい。本発明は投与順序に限定されない、本発明の化合物は、他の医薬の投与の前又は後に一緒に、患者に投与することができる。
【実施例】
【0062】
本発明による化合物の取得
化合物1の取得は、国際出願WO2006101422に記載及び開示されている。シクロオキシゲナーゼの活性を阻害する化合物1の能力は、同じ出願に記載及び開示されている。
【0063】
本発明による化合物の生物活性の特徴
本発明の目的である化合物1の生物活性は、異なるインビトロ及びインビボ実験で試験されてきた。特に、異なるインビトロ及びインビボモデルにおける化合物1の活性試験に関して、ヒマシ油によって誘発される下痢のマウスモデルにおける化合物1の阻害効果が示されている。化合物1の生物学的効果は、化合物1がシクロオキシゲナーゼを阻害する能力についての従来の知識に基づいて予測することも説明することもできない。
【0064】
インビトロでの化合物1の生物活性の試験によって、化合物1が、カテプシンS酵素阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤であることを証明することができた。おそらく、乾癬モデルにおける、また胃腸障害の異なるモデルにおける化合物1の活性は、前述のタンパク質に対する影響によって提供される。
【0065】
(実施例1)
カテプシンSの酵素活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。大腸菌(E. coli)で発現させたヒト組換えカテプシンSを実験に使用した。試験化合物を、その活性が蛍光分光法による基質Z-Phe-Arg-AMC(6μM)の形質転換速度によって決定される酵素と共に、37℃で15分間プレインキュベートした(Protein Sci. 1996年4月、5(4):789~91頁)。
【0066】
試験の結果、化合物1は、IC50=6.7μMであるカテプシンS阻害剤であることが証明された。
【0067】
(実施例2)
1型タキキニン受容体(NK1R)の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。NK1Rを発現するU373細胞を実験に使用し、[Sar9,Met(O2)11]-SP(1nM)アンタゴニストとのプレインキュベーションの後、前記細胞を化合物1と共にインキュベートした。受容体の活性は、蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Glia. 1992年、6(2):89~95頁)。
【0068】
試験の結果、化合物1は、IC50=4.1μMである1型タキキニン受容体アンタゴニストであることが証明された。
【0069】
(実施例3)
2型タキキニン受容体(NK2R)の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。NK2Rを発現するCHO細胞を実験に使用し、[Nleu10]-NKA-(4-10)(10nM)アゴニストとのプレインキュベーションの後、前記細胞を試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Biochem Biophys Res Commun. 1994年5月16日、200(3):1512~20頁)。
【0070】
試験の結果、化合物1は、IC50=8.4μMである2型タキキニン受容体アンタゴニストであることが証明された。
【0071】
(実施例4)
1型カンナビノイド受容体の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。CB1Rを発現するCHO細胞を実験に使用し、これらの細胞を試験化合物と共にインキュベートした。CP55940(30nM)化合物を対照として使用した。受容体の活性は、均質時間分解蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Mol Pharmacol. 1995年9月、48(3):443~50頁)。
【0072】
試験の結果、化合物1は、IC50=3.3μMである1型カンナビノイド受容体アゴニストであることが証明された。
【0073】
(実施例5)
ブラジキニン受容体BRDKB1の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。ブラジキニン受容体B1を発現するCHO細胞を実験に使用し、これらの細胞を、LysdesArg9-BKアゴニスト(3nM)とのプレインキュベーションの後、試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Eur J Pharmacol. 2000年3月24日、392(1-2):1~9頁)。
【0074】
試験の結果、化合物1は、IC50=3.7μMであるブラジキニン受容体アンタゴニストであることが証明された。
【0075】
(実施例6)
1型プロキネチシン受容体(PK1)の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。プロキネチシン受容体PK1を発現するHEK-293細胞を実験に使用し、これらの細胞を、PK1アゴニスト(3nM)とのプレインキュベーションの後、試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Mol Pharmacol. 2005年6月、67(6):2070~6頁)。
【0076】
試験の結果、化合物1は、IC50=5.7μMである1型プロキネチシン受容体(PK1)アンタゴニストであることが証明された。
【0077】
(実施例7)
2型プロキネチシン受容体(PK2)の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。プロキネチシン受容体PK2を発現するHEK-293細胞を実験に使用し、これらの細胞を、PK2アゴニスト(2nM)とのプレインキュベーションの後、試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Mol Pharmacol. 2005年6月、67(6):2070~6頁)。
【0078】
試験の結果、化合物1は、IC50=5.4μMである2型プロキネチシン受容体(PK2)アンタゴニストであることが証明された。
【0079】
(実施例8)
メラノコルチン受容体MC4Rの活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。メラノコルチン受容体MC4Rを発現するCHO細胞を実験に使用し、これらの細胞を、NDP-アルファ-MSHアゴニスト(30nM)とのプレインキュベーションの後、試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、均質時間分解蛍光分光法による細胞内カルシウム濃度に従って判定した。
【0080】
試験の結果、化合物1は、IC50=7.6μMであるメラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニストであることが証明された。
【0081】
(実施例9)
セロトニン受容体5-HT2Bの活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。セロトニン受容体5-HT2Bを発現するCHO細胞を実験に使用し、これらの細胞を、セロトニンアゴニスト(30nM)とのプレインキュベーションの後、試験化合物と共にインキュベートした。受容体の活性は、均質時間分解蛍光分光法によるホスファチジルイノシトールの細胞内カルシウム濃度に従って判定した(Br J Pharmacol. 1999年9月、128(1):13~20頁)。
【0082】
試験の結果、化合物1は、IC50=8.9μMであるセロトニン受容体5-HT2Bアンタゴニストであることが証明された。
【0083】
(実施例10)
NF-κBシグナル伝達経路の活性に対する化合物1の効果の試験
化合物1をDMSO中に溶解して100mMの濃度にして、次いで、ストック溶液をDMSOで連続希釈した。この物質の最大開始濃度は100μMである。試験化合物の5つの濃度で効果を判定し、各濃度を2回試験した。β-ガラクトシダーゼ転写がNFAT-1転写因子の制御下にあるlacZオペロンでトランスフェクトしたヒトJurkatTリンパ球を実験に使用した。試験化合物を細胞と共にプレインキュベートした。細胞のβ-ガラクトシダーゼ活性は、蛍光分光光度法による基質FDG(フルオレセイン-ジ-β-D-ガラクトピラノシド)の形質転換速度によって決定した。
【0084】
試験の結果、化合物1は、IC50=9.9μMであるNF-κBシグナル伝達経路阻害剤であることが証明された。
【0085】
(実施例11)
イミキモド誘発性の耳の乾癬マウスモデルに対する化合物1の効果の試験
乾癬は、10日間1日1回毎日Aldarクリーム(5%イミキモド)を右耳の内側に塗布することによって、雌型balb/cマウスでシミュレートした(J Immunol. 2009年5月1日、182(9):5836~45頁)。ワセリンをインタクトな動物に塗布した:右耳に20mg。
【0086】
病状の進行の評価は、次のAldarクリームの塗布の2、4、6、8及び10日前に左右の耳の厚さを測定することによって行った。
【0087】
試験の結果をTable1(表1)に示す。
【0088】
【0089】
Table1(表1)から、化合物1はマウスの右(罹患)耳の厚さの増加をインタクトな動物のレベルまで低下させたことが明白である。
【0090】
したがって、化合物1は、耳の乾癬マウスモデルにおいて、乾癬の治療を目的としたグルココルチコステロイド薬デルモベート(クロベタゾール)と同様に顕著な効果を有する。
【0091】
(実施例12)
イミキモド誘発性の背部の乾癬マウスモデルに対する化合物1の効果の試験
乾癬は、15日間1日1回毎日Aldarクリーム(5%イミキモド)を予め剃毛した3×4cmの背部の皮膚領域に塗布することによって、雌型balb/cマウスでシミュレートした(J Immunol. 2009年5月1日、182(9):5836~45頁)。インタクトな動物にワセリンを塗布した:剃毛背部領域あたり120mg。
【0092】
病状の進行の評価は、指標、すなわち背部の皮膚のひだの厚さに従って、次のAldarクリームの塗布の10、12、13及び15日前に行った。背部の皮膚のひだの厚さを、Digimatic MK-25マイクロメーター(Mitutoyo社、日本)を用いて測定した。
【0093】
試験の結果をTable2(表2)に示す。
【0094】
【0095】
Table2(表2)から、化合物1は患部皮膚領域の皮膚のひだの厚さの増加を2倍低下させたことが明らかである。比較薬であるデルモベートは、試験の12日目に皮膚を薄くし、動物を完全に死に至らせることによって毒性効果を示した。
【0096】
したがって、背部の乾癬マウスモデルでは、化合物1は顕著な治療効果を有し、患部領域の皮膚厚の増加を低下させると結論付けることが可能である。安全性プロファイルと比較すると、化合物1はデルモベートを上回る。
【0097】
(実施例13)
クローン病のマウスモデルに対する化合物1の効果の試験
この試験は、雄型balb/cマウスで行った。24時間飢餓状態にした動物に、50%エタノール中のTNBS溶液150μl/マウスを、3.5Fのカテーテルを使用してマウスの直腸孔に4cmの深さまで注射した。次に、マウスをひっくり返して60秒間保持した。150μlの50%エタノール溶液を、健康な対照(インタクトな動物)に注射した。試験を7日間続けた。病状の進行は動物の死亡によって評価した。
【0098】
【0099】
Table4(表3)に示すデータから、化合物1の投与は動物の死亡を2倍より大きく減少させることが可能であることが分かる。作用の重大性に関しては、化合物1はステロイド薬のプレドニゾンよりも優れており、これにより死亡率が20~40%低下している。
【0100】
(実施例14)
インドメタシン大腸炎のマウスモデルに対する化合物1の活性試験
この試験は、大腸炎を誘発するために、2日間連続して9mg/kgの用量でインドメタシン溶液を皮下注射した雄ウィスターラットで行った。注射溶液を以下のように調製した。すなわち、最初に、インドメタシンを100%エタノールに溶解し、次いでそれを5%NaHCO3溶液に希釈した。安楽死の4日後に、胃及び腸をCO2チャンバ内の動物から取り出し、次いで、盲腸を摘出し、回腸及び大腸から10cm切り取り、盲腸から5cm切り取り、肉眼的病変を評価した(J Ethnopharmacol. 2004年2月、90(2-3):195~204頁)。
【0101】
【0102】
Table5(表4)から、化合物1は腸病変の程度を低下させたことが明らかである。したがって、化合物1はインドメタシン大腸炎のマウスモデルに対する顕著な治療効果を有すると結論付けることが可能である。
【0103】
(実施例15)
ヒマシ油により誘発される下痢のマウスモデルに対する化合物1の活性試験
24時間飢餓状態のbalb/cマウスに、ヒマシ油を胃内投与した。次いで、動物を、底が白い紙で覆われた個々のケージに収容し、下痢の発症までの時間を記録した。観察時間は4時間である(J Pharm Pharmacol. 2015年2月、67(2):244~54頁)。
【0104】
【0105】
Table6(表5)から、化合物1の投与により下痢の発症までの時間が2倍増加したことが分かる。このことは、化合物1が胃腸障害のモデルにおいて顕著な治療効果を有すると結論付けるための根拠を提供する。
【0106】
(実施例16)
過敏性腸症候群のモデルに対する化合物1の効果の試験
胃腸管の運動性に対する効果を、体重24~30gの非線形雄マウスにおける過敏性腸症候群のモデルで試験した。動物に、活性炭の溶液(10ml/kgの容量で、50mg/ml)、及び動物の腸を通る活性炭の移動速度(分単位)で胃内注射した。活性炭の導入の1時間前に、試験中の化合物を1回胃内投与した。ドロタベリン(6.7mg/kg)、ブスコパン(3mg/kg)及びトリメダット(33mg/kg)を参照薬として使用した。
【0107】
【0108】
Table7(表6)から、化合物1の投与により活性炭の排泄時間が2倍増加したことが明らかである。このことは、化合物1が顕著な鎮痙効果を有すると結論付けるための根拠を提供する。
【0109】
(実施例17)
動物及びヒトの血漿中の化合物の安定性の試験
1μMの濃度の化合物1を、ヒト及び種々の動物種(ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ウマ、イヌ、雄ウシ、コビトイノシシ)の血漿中で、37℃で24時間インキュベートした。アリコートを0、0.25、1、2、4、8及び24時間の時点で採取した。ウサギ及びサルの血漿の場合、化合物1を4時間インキュベートし、アリコートを0、0.25、1、4時間の時点で採取した。アセトニトリルでタンパク質を沈殿させた後、試料をHPLC-MS/MSによって分析し、化合物1の濃度を判定した。安定な対照としてベラパミルを使用した。
【0110】
実施した試験は、15分後に既に化合物1が、マウス、ラット、ウサギ及びモルモットの血漿中でほぼ完全に加水分解されることを示した。他の種類の動物については、化合物1の安定性はサル-コビトイノシシ-ヒト-イヌの間で増加する。試験の結果をTable8(表7)に示す。
【0111】
【0112】
【0113】
したがって、試験中、ヒト及び種々の動物種の血漿中の化合物1の安定性が低いことが示された。化合物1のこの予想外の特性により、化合物が専ら局所的効果を有することが可能になる。したがって、薬物のマルチターゲット効果に関連した全身的な副作用がないので、化合物1の使用は安全であろう。
【0114】
(実施例18)
経口投与後の動物の血漿中の化合物1の薬物動態試験
化合物1の低い全身利用能を確認するために、3mg/kgの用量でラットに経口投与した後の化合物1の薬物動態及び生物学的利用能試験を行った。動物からの血液のサンプリングは、薬物投与後24時間の特定の時点で行った。血漿試料中の化合物1の含有量をHPLC-MS/MSによって分析し、定量限界は1ng/mlであった。
【0115】
行われた探査の過程で、化合物1は、実験動物の血漿中に検出されなかった。
【0116】
(実施例19)
ウサギの体重あたりの化合物1の慢性経口投与の影響の試験
雄及び雌チンチラウサギの体重に対する1.5mg/kg、7.5mg/kg及び15mg/kgの用量の化合物1の90日間経口投与の効果を試験した。実験全体を通してウサギの一般的な状態、外観、及び可動性は満足のいくものであり、実験群と対照群では異ならなかった。
【0117】
化合物1で処置された動物は、平行対照と比較して体重増加がやや遅れていた。1.5mg/kgの用量の化合物1で処置された雄ウサギでは、体重増加の遅れは投与の4~5週目及び9~11週目に認められた;4~5週目及び10~11週目に7.5mg/kgの用量で薬物を投与された雄、実験の2週目、4~5週目、8~11週目に15mg/kgの用量で薬物を投与された雄。雌ウサギでは、1.5mg/kgの用量で化合物1を毎日胃内投与したことを背景に、5~6週目及び9週目に体重増加の遅れを観察した;-実際には、薬物投与の全期間中で7.5mg/kg及び15mg/kgの用量を背景として。回復期間において、対照動物と実験動物との間で体重の動態に差はなかった。実験動物における体重増加の減少は飼料及び水分摂取量の減少を伴った。
【0118】
これらの試験は、化合物1が体重の制御において、肥満の場合においてもまた有効であり得ることを示している。
【0119】
このように、行った試験の過程において、化合物1が、カテプシンS阻害剤、1型カンナビノイド受容体アゴニスト、1型及び2型タキキニン受容体アンタゴニスト、1型及び2型プロキネチシン受容体アンタゴニスト、1型ブラジキニン受容体アンタゴニスト、メラノコルチン受容体MC4Rアンタゴニスト、セロトニン受容体5-HT2Bアンタゴニスト、及びNB-κBシグナル伝達経路阻害剤であることが示されている。これらの治療標的に対する効果により、化合物1によって、肥満、乾癬、クローン病、大腸炎、過敏性腸症候群及び下痢のモデルにおいて顕著な治療効果を有することが可能になる。動物及びヒトの血漿中の化合物1の極めて低い安定性により、そのようなマルチターゲット剤の全身的使用から生じ得る副作用の可能性を排除することが可能になる。
【0120】
本発明を開示の実施形態を参照して説明したが、詳細に説明した特定の実験は本発明を説明するためにのみ与えられたものであり、決して本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではないことは当業者に明白であるはずである。本発明の本質から逸脱することなく種々の変更を実施することが可能であることは明らかであるはずである。