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特許7146195ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定のための手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定のための手段
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/333 20060101AFI20220927BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20220927BHJP
   G01N 27/27 20060101ALI20220927BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
G01N27/333 331G
G01N27/30 Z
G01N27/27 B
G01N27/416 386G
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019555636
(86)(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018056965
(87)【国際公開番号】W WO2018188909
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】17166332.1
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510019059
【氏名又は名称】メディツィーニシェ・ウニヴェルジテート・インスブルック
【氏名又は名称原語表記】MEDIZINISCHE UNIVERSITAET INNSBRUCK
【住所又は居所原語表記】Christph-Probst-Platz 1,Innrain 52,6020 Innsbruck,Austria
(73)【特許権者】
【識別番号】508373992
【氏名又は名称】ウニベルズィテート インスブルック
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ-エリアン, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】フールマン, ゲルダ ラウラ
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008182(JP,A)
【文献】特開平07-198670(JP,A)
【文献】特表昭63-500539(JP,A)
【文献】国際公開第2016/116175(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/181229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための使い捨て試験片であって
前記試験片は、
-電気絶縁性であるか、または電気絶縁層がその上に付与されている基板と、
-前記基板の上、または存在する場合には前記電気絶縁層の上に付与された電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、少なくとも
-1つのナトリウム選択性作用電極;
-1つのクレアチニン選択性作用電極;
-前記ナトリウム選択性作用電極と前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの統合参照電極か、または前記ナトリウム選択性作用電極のための参照電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別々の参照電極のいずれかを含む、電極アセンブリと、
-前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するためのインターフェースと
を含む、使い捨て試験片。
【請求項2】
前記電極アセンブリが、干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極を含む、請求項1に記載の使い捨て試験片。
【請求項3】
前記ナトリウム選択性作用電極、前記クレアチニン選択性作用電極および前記参照電極が、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法によって付与されており、従って前記基板または前記電気絶縁層の上に電極アセンブリを形成し、前記ナトリウム選択性作用電極がナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極がクレアチニン選択性膜を含む、請求項1に記載の使い捨て試験片。
【請求項4】
前記ナトリウム選択性作用電極、前記クレアチニン選択性作用電極、前記参照電極および前記中性電極が、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法によって付与されており、従って前記基板または前記電気絶縁層の上に電極アセンブリを形成し、前記ナトリウム選択性作用電極がナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極がクレアチニン選択性膜を含み、前記中性電極がナトリウム選択性でもなくクレアチニン選択性でもない膜を含む、請求項2に記載の使い捨て試験片。
【請求項5】
前記基板が、プラスチック、セラミック、アルミナ、紙、ボール紙、ゴム、織物、炭素系ポリマー、シリコン系ポリマー、フルオロポリマー、シリコン系基板、および誘電体から選択される材料から作製されており、前記電気絶縁層が、存在する場合には、誘電体で作製されており、前記電気絶縁層が前記基板上に存在する場合に前記電極アセンブリが前記電気絶縁層上に位置している、請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片。
【請求項6】
前記ナトリウム選択性作用電極が、ナトリウム選択性担体をポリマーマトリックス中に含むナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性膜がクレアチニン選択性担体をポリマーマトリックス中に含む、請求項3~4のいずれかに記載の使い捨て試験片。
【請求項7】
前記電極アセンブリが、干渉を測定し、除去するための1または2の中性電極を含み、前記中性電極が、ナトリウム選択性担体もクレアチニン選択性担体も含まないポリマーマトリックスを含む膜を含む、請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片。
【請求項8】
前記電極アセンブリの前記電極の各々がそれぞれ導線を有し、前記導線が、前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するための前記インターフェースと前記電極を接続する、請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片。
【請求項9】
前記統合参照電極が、前記ナトリウム選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有するか、あるいは、前記別々の参照電極の各々が、前記ナトリウム選択性作用電極および前記クレアチニン選択性作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有する、請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片。
【請求項10】
患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスであって、
前記POCデバイスは、
-尿試料中のナトリウムおよびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的測定と、ナトリウムとクレアチニンの比を決定するための読み出しメーターデバイスであって、前記読み出しメーターデバイスは、
-請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片のインターフェースを受け取り、前記読み出しメーターデバイスと前記使い捨て試験片の電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、従って、前記使い捨て試験片から前記読み出しメーターデバイスへの電気信号の検出および伝達を可能にするための受信モジュールであって、前記受信モジュールが、前記試験片の前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する、受信モジュールと、
-請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片から伝達された電気信号を増幅するためのマルチチャンネル増幅器と、
-請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片から受け取った電気信号を、ナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に変換し、その後に、前記ナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に基づいてナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するための、アナログ/デジタル変換器および記憶装置を含むコントローラと、
-濃度測定値および/または前記比をユーザーに示すための出力装置とを含む、読み出しメーターデバイスと
-電力供給と
を含む、非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
【請求項11】
前記使い捨て試験片の前記インターフェースを経由して前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入された、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間の電気的接触を確立している、請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片をさらに含む、請求項10に記載の非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
【請求項12】
前記デバイスが、
-前記デバイスを操作するためのユーザーインターフェース、ならびに/あるいは、複数のナトリウムおよびクレアチニン濃度測定値ならびに計算したナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を保存するためのメモリ、ならびに/あるいは、外部コンピュータまたは外部ネットワークとデータを移動させ、かつ/または交換するための接続インターフェース
をさらに含む、請求項10~1のいずれかに記載の非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
【請求項13】
前記接続インターフェースが、USBおよび/またはワイヤレス接続インターフェースである、請求項1に記載の非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
【請求項14】
患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法であって、
a)尿試料を提供するステップ
b)請求項1~のいずれかに記載の使い捨て試験片を前記尿試料と接触させるステップであって、前記試験片の電極アセンブリを前記尿試料によって濡らして前記尿試料と接触させるステップ
c)請求項1に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスを組み立てるために、前記試験片を、請求項10に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスの読み出しメーターデバイスと接続するステップであって、前記使い捨て試験片が前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入され、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間に電気的接触を確立し、
ここで、ステップc)における前記ポイントオブケアの前記読み出しメーターデバイスへの前記試験片の前記接続はステップb)の前かまたは後のいずれかで行われるステップ、
d)ステップc)で組み立てられた前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用して、前記尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を測定するステップ
を含む方法。
【請求項15】
患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出する方法であって、前記方法は、
-請求項1に記載の方法を実施するステップ、
-前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用してナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するステップ
-前記尿試料中のナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が<8である場合にナトリウム欠乏を検出し、ナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が>50である場合にナトリウム過負荷を検出するステップ
を含む、方法。
【請求項16】
前記ナトリウム欠乏が、患者の血漿中のナトリウム欠乏であるか、または正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏であり、そのような正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏では、患者の血漿中のナトリウム濃度は正常な健康範囲内にあるが、患者が、全身のナトリウムプールの欠乏に苦しんでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記患者が、体内のナトリウムと体液の比例的損失のために、全身のナトリウムプールの欠乏に苦しんでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記体内のナトリウムと体液の比例的損失が、下痢、消化管ストーマ、急性出血、嚢胞性線維症、火傷または激しい運動で起こる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定のための、そしてその後のそれらの比の定量的決定のための使い捨て試験片、ならびに、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスに関する。さらに、本発明は、患者の尿試料においてナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を同時にかつ定量的に決定するための方法ならびに患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ナトリウム欠乏(NaD)は、ナトリウムと体液バランスの障害であり、Naの低摂取または損失増加による身体のナトリウムの病理学的減少を特徴とする(1~3)。NaDは、特定の基準範囲を下回る血漿Na濃度が見出されることによって日常的に診断される。しかし、さらにより警戒すべきことに、NaDは、特に患者が身体のNaと体液の比例損失に苦しんでいる場合に、正常な血漿Na濃度でも存在することがある(4)。このいわゆる正常ナトリウム血性(normonatremic)Na欠乏(NNaD)は、下痢(5)、消化管ストーマ、急性出血、嚢胞性線維症(6、7)、熱傷または激しい身体運動(4)の場合に生じることがある。Na欠乏(NaDおよびNNaD)は、睡眠障害(4)、疲労、頭痛、錯乱、食欲不振(3、8)または成長障害(6、7、9)などの一般的な非特異的な症状を引き起こすことがあるが、筋痙攣、癲癇、脳症、昏睡、さらには死などの重篤な合併症を引き起こすこともある(10~12)。罹患患者のさらなるリスクは、NaD/NNaDがこの総体症状の通常の精密診断中にこの総体症状を引き起こす要因として考慮されないことが多いことである。そのため、NaD/NNaD患者の時宜を得た特定が至急に必要とされている。
【0003】
NaD/NNaDとは逆に、ナトリウム過負荷(NaO)は、動脈性高血圧症および心不全および卒中などのその後遺症の重要な原因として患者および医師によく知られている。しかし、24時間の採尿で食事性塩摂取および/またはNa排出を記録することによる塩状態の監視は、面倒で間違いが発生しやすいので、塩状態を監視する、より簡単な方法が必要である。
【0004】
近年、尿中ナトリウムと尿中クレアチニンの比(uNa/uCr)の計算は、NaD/NNaDのリスクのある患者を特定し、監視するための優れたマーカーかつ有望な診断ツールであることが示されている(5~7)。それにもかかわらず、uNa/uCrの決定は、現在行われているように、生化学的(13、14)または従来の電気生理学的方法論(14)を用いてNaの濃度を測定し、キャピラリー電気泳動または測光(15)などの確率された方法の1つによってクレアチニンの濃度を測定する検査室に尿検体を送る必要性によって妨害される。これらの方法は全て、集中型の医療検査室で行われ、時間と熟練した人材を必要とし、ポイントオブケア(POC)診断法にあまり適していない。
【0005】
先進技術、例えばスクリーン印刷またはインクジェットなどによって可能になった電気化学デバイスの小型化と、モバイル技術の成熟によって、真性糖尿病の患者のグルコースで実証されているように、多様な検体の定量的測定を可能にするかもしれない新時代のPOC検査が出現した(16,17,22~24)。
【0006】
身体のナトリウム状態を決定するおそらく最も正確な方法は、23Na磁気共鳴研究による組織ナトリウム濃度の測定(27)であろうが、これは非常に費用がかかり、専門の検査室を必要とする。ナトリウム状態を評価し、NaDを診断するための現在のルーチンは、血液中のナトリウム濃度の測定が多数を占める(3、13)。現在適用されている2つの主な方法は、炎光光度法による血漿中の測定(および程度は低いが尿中の測定も)と、従来のNa選択性電極による方法である(14)。これらの方法のためには、特別な計測手段および訓練された人物が必要である。
【0007】
血液中のNa濃度は、それがコンパートメントの体液シフトの影響を受けることがあるという事実のために、しばしば「真の」身体のナトリウム状態に関して誤解を招くことがある。尿Na濃度は、尿流量および体積希釈の影響を受けるため、しばしば、クレアチニン濃度への正規化因子として関連している(25)。ナトリウムバランスの評価のための現在の「ゴールドスタンダード」は、Naの分画排泄率の決定である(FENa;6~8、26)。しかし、これは血漿および尿中のNaおよびクレアチニン濃度の測定に上記の従来の検査室の方法の使用を必要とする。これはuNa/uCrの決定にも当てはまる。
【0008】
人間の身体のナトリウム状態の評価のために現在利用可能な方法の多くは、時間がかかり、多くの日常的な検査室では通常実施されない。
【0009】
臨床検査室でのクレアチニンの日常的な決定は、着色された化合物を生成する、ヤッフェ反応またはクレアチニンアミドヒドロラーゼ酵素の使用に基づいている。これらの比色法が干渉および分析上の問題を逸れないことは周知である(18、19)。クレアチニンに関する非常に正確な結果は、同位体希釈ガスクロマトグラフィー質量分析によって得られる。しかし、この方法は、高価で複雑な計測手段と訓練された人物を必要とするため、実行可能で日常的な方法と考えることはできない。最近になって、クレアチニンを決定するための実行可能で日常的な方法を開発する目的で、3つの酵素の複雑な組合せに主に依存するいくつかの電流測定バイオセンサが報告された(20)。市場で現在入手可能なのは、使い捨てのポケットサイズのカートリッジに固定されたこの3つの酵素系を利用する、i-STAT(登録商標)(アボット、米国)という携帯型臨床分析装置である(21)。しかし、分析は血液試料で行われ、非常に多くの量(>65μL)を必要とするため、それは侵襲的であり、日常的にモニタリングするには適切ではない。その上、その複雑さが原因で、デバイスは自分で運ぶにはかなり重く(650g)、コスト集約的である。
【0010】
Nova(登録商標)BiomedicalのStat Profile Critical Care Xpress(CCX)(22)は、およそ11.4%の誤差でクレアチニンを、そしてNaを含むその他の検体を検出することが可能な卓上型ポイントオブケアデバイスである。しかし、他の全てのデバイスと同様に、このデバイスは分析に血液を必要とするため、侵襲的である。それは携帯型デバイスでなく、オールインワンシステムであるので、どちらかといえば高価である。その上、上記で考察されるように、血液中のNa濃度を測定することは、上記で考察されるようにNa状態の評価に関して誤解を招くことがある。
上記の情報を考慮すると、明らかに、ナトリウム状態の障害を特定し、監視するための低侵襲的で安価な手段が非常に望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Upadhyay A, Jaber BL, Madias NE. Incidence and prevalence of hyponatremia. Am J Med 1; S30-S35 (2006)
【文献】Moritz ML, Ayus JC. Maintenance intravenous fluids in acutely ill patients. N Engl J Med 373; 1350-60 (2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の目的は、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を直接的な方法で同時に決定する手段を提供すること、および容易に取り扱うことのできるそのような手段を提供することであった。さらに、本発明の目的は、その後にそれらの比を決定するために、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を決定するための、そして時間効率が良く、ポイントオブケア(POC)で実施することのできる、ナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための方法論を提供することであった。さらに、本発明の目的は、訓練されていない人物、例えば患者自身などでさえも実行することのできる、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための方法論を提供することであった。さらに、本発明の目的は、時間がかからず、日常的な操作として実行することのできる、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定し、それらの比を決定し、かつ/または患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための手段および方法論を提供することであった。
【0013】
これらの目的は全て、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的決定のための使い捨て試験片によって解決され、
前記試験片は、
-電気絶縁性であるか、または電気絶縁層がその上に付与されている基板と、
-前記基板の上、または存在する場合には前記電気絶縁層の上に付与された電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、少なくとも
-1つのナトリウム選択性作用電極;
-1つのクレアチニン選択性作用電極;
-前記ナトリウム選択性作用電極と前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの統合参照電極か、または前記ナトリウム選択性作用電極のための参照電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別々の参照電極のいずれか;
-必要に応じて;干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極を含む、電極アセンブリと、
-前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するためのインターフェースと
を含む。
【0014】
一実施形態では、そのような決定は電位差測定によって起こる。
【0015】
本発明によれば、ナトリウムおよびクレアチニンのそれぞれの濃度の決定は、「組み合わせて」行われることに留意する必要があろう。「組み合わせて」という用語は、1つの試料中または1つの試料から両方の検体の濃度が一緒に決定されることを意味する。しかし、これは特定の決定順序を意味するものではない:例えば、そのような決定は、時間的に重複する方法で、または逐次的に、同時に行われてよい。一実施形態では、検体の濃度は同時に決定され、このことは、これらの決定の間にいかなる実質的な時間的間隔もなく、濃度が一緒に決定されることを本質的に意味する。
【0016】
一実施形態では、本発明による試験片は別々の試験片である;別の実施形態では、前記試験片は、ロールにまたはディスク上に配置され得るような試験片のアレイの一部を形成し、ここで、各測定に対して、1回に1つの試験片が使用され得る。
【0017】
一実施形態では、前記基板は、平面状基板である。別の実施形態では、前記基板は非平面状基板である。例えば、それはシートまたはロッドまたはチューブの形であってもよい。一実施形態では、前記電極アレイの電極は全て単一の平面に配置されている;別の実施形態では、前記電極は必ずしも単一の平面にある必要はなく、互いに角度をつけて異なる平面に配置されてもよい。唯一の要件は、試験片を尿試料と接触させる場合に電極を尿と接触させることができるように、電極が電極アレイ内に配置されることである。
【0018】
一実施形態では、前記作用電極、前記参照電極および存在する場合には前記中性電極は、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法、例えば印刷、スパッタリング、蒸発、無電解めっき、付着、接着または、リソグラフィー、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷によって付与されており、従って前記基板または前記電気絶縁層の上に電極アセンブリを形成し、前記ナトリウム選択性作用電極はナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極はクレアチニン選択性膜を含み、前記中性電極はナトリウム選択性でもなくクレアチニン選択性でもない膜を含む。中性電極の目的は、干渉を測定し、除去することである。しかし、この(これらの)干渉の種類および性質に応じて、中性電極は、そのような干渉検体に対して選択性でありうる。一実施形態では、一例として、中性電極はプロトン選択性であり、そしてプロトン選択性である膜を含む。そのため、中性電極はナトリウム選択性でもクレアチニン選択性でもないが、それにもかかわらず、その他の実体、例えばプロトンに対して、特に干渉を引き起こすこれらのその他の実体に対して選択性であり得る。
【0019】
一実施形態では、前記基板は、プラスチック、セラミック、アルミナ、紙、ボール紙、ゴム、織物、炭素系ポリマー、例えばポリプロピレンなど、フルオロポリマー、例えばテフロン(登録商標)など、シリコン系基板、例えばガラス、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素など、ポリジメトキシシロキサンなどのシリコン系ポリマー、ケイ素元素などの半導体材料、および、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電体、またはシリシウムジオキシドなどの無機誘電体から選択される誘電体から選択される材料から作製されており、存在する場合には前記電気絶縁層は、好ましくは前記電気絶縁層が前記基板上に存在する場合に前記電極アセンブリが前記電気絶縁層に位置している誘電体から選択される誘電体から作製されている。電気絶縁層は、基板自体が電気絶縁材料で作製されていない場合に、電極間および基板上の可能な導電経路間の電気的分離を維持する。
【0020】
一実施形態では、前記ナトリウム選択性作用電極は、ポリマーマトリックス中にナトリウム選択性担体を含むナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性膜は、ポリマーマトリックス中にクレアチニン選択性担体、好ましくはプロトン化クレアチニン選択性担体(クレアチニニウム選択性担体とも呼ばれる)を含む。
【0021】
そのため、本明細書において、「クレアチニン選択性」という用語は、プロトン化形態かまたは非プロトン化形態のクレアチニン、またはその両方に対する選択性に言及することを意味する。
【0022】
作用電極は、任意の導電性材料、例えば炭素、金、パラジウム、銀、白金、チタン、クロム、イリジウム、錫、それらの酸化物または誘導体など、および、フッ素ドープ酸化錫(FTO)または酸化インジウムスズ(ITO)などのその組合せで作製されてよい。一実施形態では、前記電極は、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法、例えば印刷、スパッタリング、蒸発、無電解めっき、付着、接着またはリソグラフィー、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などによって付与されている。電極は、個別に堆積させてもよいし、一緒に堆積させてもよい。
【0023】
一実施形態では、参照電極は、好ましくはAg/AgCl系であるが、生体液に制御された電位を提供するその他の適した参照材料も可能であり、想定される。
【0024】
一実施形態では、前記参照電極は、作用電極と同じ材料から作製されており、その表面が、Ag/AgCl/KClを含むポリマー材料でコーティングされて定電位を維持している、表面を有する。
【0025】
一実施形態では、電位差測定安定性をさらに高めるために、参照電極は、親油性塩、例えばアニオンおよびカチオン交換材料(例えば、異なるテトラアルキルアンモニウムおよびテトラフェニルボラート)などを含むポリマー材料でさらにコーティングされていてよい。これらの高親油性成分は、試料溶液とのイオン交換を除去するかまたは最小化して、参照電極の定電位を与える。
【0026】
一実施形態では、前記電極アセンブリは、干渉を測定し、除去するための1または2の中性電極(NE)をさらに含み、前記中性電極は、いかなるナトリウム選択性担体も、いかなるクレアチニン選択性担体も含まないポリマーマトリックスを含む膜を含む。代表的には、前記中性電極は、前記作用電極(WE)の前記ナトリウム選択性膜および/またはクレアチニン選択性膜と同じまたは類似のポリマーマトリックスを含むが、ナトリウム選択性およびクレアチニン選択性担体を含まない。そのような中性電極に関連する利点は、そのような中性電極を組み込んでいる系が、その他の検体、例えば尿酸またはアスコルビン酸などから生じる、試料の干渉をさらに測定することができる点である。そのため、中性電極はナトリウムに対してもクレアチニンに対しても選択性でないが、しかし、そのような中性電極は、ナトリウムまたはクレアチニン以外の検体、例えば干渉を生じさせる検体または実体に対して選択性であり得ることに留意する必要があろう。一実施形態では、中性電極は、プロトンに対して選択性であり得る。別の実施形態では、中性電極は、尿酸および/またはアスコルビン酸に対して選択性であり得る。また、これらの中性電極はそれぞれ導線を有し、前記導線は、前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するための前記インターフェースと前記それぞれの電極を接続する。(中性電極を含むそのような電極アセンブリの一実施形態は、図2Dに見出すことができる)。
【0027】
一実施形態では、前記電極アセンブリの前記電極の各々は、それぞれ導線を有し、前記導線は、前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するための前記インターフェースと前記電極を接続する。
【0028】
一実施形態では、前記導線は、任意の適した導電性材料、例えば炭素、金、パラジウム、銀、白金、チタン、クロム、イリジウム、錫、それらの酸化物または誘導体など、および、FTO、ITOなどのその組合せで作製されてよい。一実施形態では、前記導線は、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法、例えば印刷、スパッタリング、蒸発、無電解めっき、付着、接着またはリソグラフィー、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷などによって付与されている。導線は、個別に堆積させてもよいし、一緒に堆積させてもよい。
【0029】
基板上または存在する場合には絶縁層上の電極の形態と配設位置(例えば、円形、楕円形、正方形、長方形)はともに、試験片から使用できる結果を達成するために重要ではないことに留意する必要があろう。例示的な可能性のある配置は、例えば:WE1-WE2-RE、WE1-RE-WE2または、例えば中性電極が存在する場合には、WE1-NE-WE2-RE、WE1-WE2-NE-RE、NE-WE1-WE2-REなど(WE=作用電極;RE=参照電極、NE=中性電極)であり得る。
【0030】
一実施形態では、前記統合参照電極は、前記作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有する。あるいは、前記別々の参照電極の各々は、前記作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有する。
【0031】
本発明の目的は、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスによっても解決され、前記POCデバイスは、
-尿試料中のナトリウムおよびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的測定のための、そしてナトリウムとクレアチニンの比の決定のための読み出しメーターデバイスであって、前記読み出しメーターデバイスは、
-本発明による使い捨て試験片のインターフェースを受け取り、前記読み出しメーターデバイスと前記使い捨て試験片の電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、従って、前記使い捨て試験片から前記読み出しメーターデバイスへの電気信号の検出および伝達を可能にするための受信モジュールであって、前記受信モジュールが、前記試験片の前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する、受信モジュール、
-好ましくは高い入力抵抗を有する、本発明による使い捨て試験片から伝達された電気信号を増幅するためのマルチチャンネル増幅器、
-本発明による使い捨て試験片から受け取った電気信号をナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に変換し、その後に前記ナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に基づいてナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するためのアナログ/デジタル変換器および記憶装置を含むコントローラ、
-濃度測定値および/または前記比をユーザーに示すための出力装置、好ましくはディスプレイを含む、読み出しメーターデバイスと、
電力供給
を含む。
【0032】
一実施形態では、出力デバイスは、その他のデータ、例えば以前の測定値をさらに示してもよく、追加の機能、例えば特定の値の閾値を超えた場合のアラームなどを有していてもよい。それは保存/送信機能などを含んでいてもよい。
【0033】
一実施形態では、本発明による使い捨て試験片から受け取った電気信号をナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に変換するための前記コントローラは、その記憶装置に事前に保存された、事前に保存されたキャリブレーション情報を利用する。そのような事前に保存されたキャリブレーション情報は、各検体、つまりナトリウムおよびクレアチニンに関するものである。コントローラはさらに、ネルンストの式を利用し、それによってそれぞれの検体の濃度測定値を決定する。例えば、一実施形態では、電極アセンブリが、第1の作用電極(第1の導線を含む)、統合参照電極(第2の導線を含む)、第2の作用電極(第3の導線を含む)および中性電極(第4の導線を含む)を含む場合、前記コントローラは、第1の電気コネクタ(導線)および第2の電気コネクタ(導線)を介して受け取った第1の電気信号、第2の電気コネクタ(導線)および第3の電気コネクタ(導線)を介する第2の電気信号、ならびに、中性電極も存在する場合には、第2の電気コネクタ(導線)および第4の電気コネクタ(導線)を介する第3の電気信号を使用して、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度をそれぞれ決定し、その後にその比を計算する。
【0034】
一実施形態では、前記受信モジュールは、前記試験片のインターフェースへの接続を確立することを可能にするスリット、凹部またはウェルの形態あるいはその他の適した形態である。一実施形態では、前記受信モジュールは、エッジコネクタペアまたはピン&ソケットペアとして構成されてよい。
【0035】
一実施形態では、本発明による非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスは、さらに、
-前記使い捨て試験片の前記インターフェースを経由して前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入された、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間の電気的接触を確立している、本発明による使い捨て試験片を含む。
【0036】
一実施形態では、前記デバイスは、
-前記デバイスを操作するためのユーザーインターフェース、ならびに/あるいは、複数のナトリウムおよびクレアチニン濃度測定値ならびに計算したナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を保存するためのメモリ、ならびに/あるいは、外部コンピュータまたは外部ネットワークとデータを移動させ、かつ/または交換するための接続インターフェース、好ましくはUSBおよび/またはワイヤレス接続インターフェース
をさらに含む。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法であって、
a)尿試料を提供するステップ
b)本発明による使い捨て試験片を前記尿試料と接触させるステップであって、前記試験片の電極アセンブリを前記尿試料によって濡らして前記尿試料と接触させ、必要に応じて、尿で濡れた試験片を前記尿試料から取り出すステップ
c)上に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスを組み立てるために、前記試験片を、上に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスの読み出しメーターデバイスと接続するステップであって、前記使い捨て試験片が前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入され、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間に電気的接触を確立するステップであって、
ここで、ステップc)における前記ポイントオブケアの前記読み出しメーターデバイスへの前記試験片の前記接続はステップb)の前かまたは後のいずれかに行われ、
d)ステップc)で組み立てられた前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用して、前記尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を測定するステップ
を含む方法に関する。
【0038】
さらに、本発明は、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出する方法に関し、前記方法は、
-上に定義されるように、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法を実施するステップ、
-前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用してナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するステップ
-前記尿試料中のナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が<8である場合にナトリウム欠乏を検出し、ナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が>50である場合にナトリウム過負荷を検出するステップ
を含む。一般に、一実施形態では、8~50の間の比は、正常な(すなわち健康な)身体のナトリウムバランスを示す。
【0039】
一実施形態では、前記ナトリウム欠乏は、患者の血漿中のナトリウム欠乏であるか、または正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏であり、そのような正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏では、患者の血漿中のナトリウム濃度は正常な健康範囲内にあるが、患者は全身のナトリウムプールの欠乏(例えば下痢、消化管ストーマ、急性出血、嚢胞性線維症、火傷または激しい運動で起こり得る体内のナトリウムと体液の比例的損失のため)に苦しんでいる。明確にするために、そしていかなる理論にも縛られることを望むものではないが、正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏は、以下の例示的なシナリオで起こり得る。血液Na濃度は、体のコンパートメントの1つのみでのNaの濃度である。全ての血管のこの血管内コンパートメント以外のコンパートメントは、細胞内(全ての組織の細胞)および細胞外(血液循環内ではなく細胞間)である。これらのコンパートメントの1つの中のNaが低いか、または、循環中に体液がほとんどないために、わずかな体液とNaが腎臓を灌流している場合、腎臓はNaを保持し、従ってNaはほとんど排出されず、uNa/uCrは低い。
【0040】
本発明者らは、患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の同時定量のための、そして患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための非侵襲的で、定量的で、低コストかつ携帯型のポイントオブケア(POC)デバイスのための、簡単で、感受性が高く、非侵襲的で、定量的で、かつ低コストの携帯型使い捨て試験片を提供した。試験片およびポイントオブケアデバイスにより、ナトリウム欠乏(NaD/NNaD)および/またはナトリウム過負荷(NaO)のマーカーとして使用されるそれらのそれぞれの比(ナトリウム:クレアチニン)をその後に計算するための、ナトリウムおよびクレアチニンの尿濃度の電気化学測定が可能になる。
【0041】
ナトリウム濃度とクレアチニン濃度の同時定量は、酵素を含まない方法で行われることに留意する必要があろう。従って、そのような決定に酵素は使用されず、酵素反応の生成物も測定/決定されない。そのような決定は、電位差測定に基づく、すなわち、それは電位の差の測定を伴う。それは電流の測定を伴わない。
【0042】
本明細書において簡単な実施形態で使用される場合「試験片」は、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的測定を実施するために、試料と接触させる基板をさすことを意味する。試験片は、患者の試料と接触させるために適した任意の形態、例えば長方形の形態、正方形の形態、円形の形態または楕円形の形態などをとってよい。一実施形態では、試験片は平面状であり、その上に電極アセンブリが付与された平面状の電気的に絶縁された基板を有している。しかし、その他の実施形態では、試験片は、その他の形状および形態、例えばシートまたはロッドまたはチューブなどを、そのような形態が電極アレイをその上に堆積することができる基板を収容するのに適しているのであれば、採用してもよい。一実施形態では、前記基板は、平面状基板である。別の実施形態では、前記基板は非平面状基板である。例えば、それはシートまたはロッドまたはチューブの形であってもよい。一実施形態では、前記電極アレイの電極は全て、前記基板または存在する場合には前記絶縁層上の単一の平面に配置されている;別の実施形態では、前記電極は必ずしも単一の平面にある必要はなく、互いに角度をつけて異なる平面に配置されてもよい。唯一の要件は、試験片を尿試料と接触させる場合に電極を尿と接触させることができるように、電極が電極アレイ内に配置されることである。
【0043】
一実施形態では、本発明による試験片はそれ自体で単一の試験片である;別の実施形態では、前記試験片は、ロールにまたはディスク上に配置され得るような試験片のアレイの一部を形成し、この際、各測定に対して、1回に1つの試験片が使用され得る。従って、本発明は、互いに接続されている本発明による複数の試験片も想定し、それにも関する。従って、本発明は、本発明による試験片のアレイにも関する。そのようなアレイでは、各試験片は1回使用用であるが、アレイ全体は試験片がそのようなアレイに存在する限り何度でも使用されてよい。一実施形態では、そのような試験片のアレイは、試験片の連続使用を可能にするカートリッジまたはその他の分配デバイスの形態で提供されてよい。一実施形態では、そのようなアレイ内で試験片は互いに解放可能なように接続されていてよく、その結果、例えば試験片を測定に使用する場合、それをアレイから離し、その後使用することができる。
【0044】
本明細書において使用される場合、「ナトリウム選択性」および「クレアチニン選択性」という用語は、電極または膜の文脈において、それぞれ、ナトリウムおよび/またはクレアチニンに対して特異的かつ選択的に感受性の高い電極または膜をさすことを意味する。一実施形態では、電極のそのような特異的かつ選択的な感受性は、ナトリウム選択性膜またはクレアチニン選択性膜を前記電極に付与することによって達成される。一実施形態では、そのようなナトリウム選択性膜またはより一般には検体選択性膜は、検体選択性膜溶液をそれぞれの電極の表面に付与することによって作製される。付与は、ディスペンシング、ドロップキャスティング、スクリーン印刷、スピンコーティング、または任意のその他の適した堆積方法によって行われてよい。そのような検体選択性膜溶液は、イオノフォアなどの検体特異的担体分子を一般に含有する。溶液はまた、ポリマーおよび溶媒を一般に含有する。そのような溶液はまた、その他の成分、例えば可塑剤、および/またはカチオン交換塩なども必要に応じて含有してよい。検体選択性溶液は、例えば、全ての成分を適した溶媒に溶解することによって調製されてよい。適した溶媒はマニフォールド、例えば、テトラヒドロフランまたはジメチルホルムアミドである。検体選択性膜溶液が電極の表面に付与されると、溶媒は乾燥、蒸発などによって除去され、残るものは検体特異的かつ選択的な担体を含有するポリマー膜である。
【0045】
一般に、そして一実施形態では、ナトリウム選択性担体は、クラウンエーテル、カリックス(4)アレーン、シラクラウンエーテルおよび関連する大環状ホストならびに非環状ジアミドおよびトリアミドまたはモネンシン(カルボン酸抗生物質)ファミリー由来の誘導体である。ナトリウム選択性担体の例は、4-tert-ブチルカリックス(4)アレーンテトラ酢酸テトラエチルエステル、2,3:11,12-ジデカリノ-16-クラウン-5;ビス[(12-クラウン-4)メチル]ドデシルメチルマロナート;ビス[(12-クラウン-4)メチル]2,2-ジドデシルマロナート;4-オクタデカノイルオキシメチル-N,N,N’,N’-テトラシクロヘキシル-1,2-フェニレンジオキシジアセトアミド;(N,N’,N’’-トリヘプチル-N,N’,N’’-トリメチル-4,4’,4’’-プロピリジントリス(3-オキサブチルアミド);N,N’-ジベンジル-N,N’-ジフェニル-1,2-フェニレンジオキシジアセトアミド);モネンシンメチルエステルまたはモネンシンドクデシル(docdecyl)エステルである。
【0046】
一実施形態では、電位差測定の前に、クレアチニンは、適した緩衝液の添加によって前記試料のpHを調整することにより、クレアチニニウムイオンを形成するためにプロトン化されなければならない。「クレアチニン選択性」という用語は、前記クレアチニンのプロトン化状態に関係なく独立に、クレアチニンに対する選択性を包含することを意味する。従って、クレアチニン選択性電極は、非プロトン化形態またはプロトン化形態または両方のクレアチニンに対して選択性である。一実施形態では、適したpHは5未満であり、適した緩衝液はマニフォールドである。例えば、それらは、酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩であり得る。一般に、一実施形態では、プロトン化クレアチニン選択性担体(クレアチニニウム選択性担体)は、クラウンエーテルのファミリー、α-、β-シクロデキストリン、カリックスピロール、アミノ-ピリドンおよびアミノ-ピリミドンから選択されてよい。クレアチニン選択性担体の例は、ジベンゾ-30-クラウン-10;トリ-o-オクチル-β-シクロデキストリン;2,6-ジ-o-ドデシル-β-シクロデキストリン;1-(5,7,7-トリメチル-2-(1,3,3-トリメチルブチル)-オクチル)イソシトシンである。
【0047】
一実施形態では、クレアチニン選択性担体は、結晶性イオン対錯体、例えばクレアチニンタングストホスフェート、クレアチニンモリブドホスフェートまたはクレアチニンピクロロネートなどであってよい。
【0048】
膜溶液(それからポリマーマトリックスを生成する)の調製に使用されてよく、その後に膜中でポリマーマトリックスとして機能する、ポリマーまたはポリマーの混合物はマニフォールドであり、一実施形態では、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリシロキサン、ポリメタクリレート(polymetacrylate)、シリコーンエラストマー、セルロースエステルから選択される。
【0049】
極度に疎水性の検体選択性電極(ASE)膜、例えば、イオン選択性電極(ISE)膜を実現するために、これらのポリマーのフルオラス相も可能である。
【0050】
一実施形態では、ポリマーは、膜の不活性特性を保証するために、平均分子量が高いことが好ましい。
【0051】
一実施形態では、ポリマー材料の重量百分率は、検体選択性膜の総重量に対して20~40%である。
【0052】
一実施形態では、1または数種類の可塑剤が膜溶液に含まれている。それらの役割は、膜をより柔らかくし、機械的応力に対して耐性にすることである。一実施形態では、膜溶液中で使用されてよい可塑剤は、o-ニトロフェニル-オクチルエーテル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、セバシン酸ジオクチル、ホスホン酸ジオクチルフェニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、ヘキサメチルホスホルアミド、アジピン酸ビス(1-ブチルペンチル)、クロロパラフィンから選択されてよい。一実施形態では、可塑剤は、ポリマー材料中の検体選択性担体を溶媒和させるために十分な量で存在する。一実施形態では、可塑剤と検体選択性担体の重量比は10:1~100:1である。一実施形態では、一般的な可塑剤:ポリマー混合物中の可塑剤:ポリマーの重量比は、1:1~4:1の範囲内である。一実施形態では、可塑剤の重量百分率は、膜の総重量に対して40~80%である。
【0053】
必要に応じて、そして特定の実施形態では、特に検体選択性担体が中性の分子である場合、カチオン交換塩がポリマーマトリックスに添加されてよい。一実施形態では、そのような塩は、大きな負に帯電した有機分子と小さなカチオンから構成される。その機能は、大きな負に帯電した有機分子、例えば親油性アニオンによって膜に捕捉された各カチオン性検体を補完し、膜内で同じ符号をもつイオンだけを交換することにより、膜の選択透過性を維持することを助けることである。
【0054】
そのようなカチオン交換塩の例は、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウムもしくはナトリウム、テトラキス(p-クロロフェニル)ホウ酸カリウムもしくはナトリウム、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ホウ酸カリウムもしくはナトリウムである。
【0055】
一実施形態では、カチオン交換塩:検体選択性担体混合物の典型的なモル比は、1:10~1:2の範囲内である。一実施形態では、カチオン交換塩の重量百分率は、膜の総重量に対して0.1%~2%である。
【0056】
しかし、ポリマーマトリックスおよびその異なる成分に関して、ポリマーマトリックスのこれらの異なる成分が存在し、それらの合計が100重量%になるような量で使用されることは明白である。
【0057】
必要に応じて、そして一部の実施形態では、検体選択性溶液をそれぞれの電極の表面に、あるいはAg/AgCl/KClまたは親油性塩を含むポリマー材料を参照電極に付与する前に、「内部接触層」材料(イオン電子トランスデューサとも呼ばれる)を前記電極にコーティングしてもよい。いかなる理論にも縛られることを望むものではないが、そのような内部接触層は、電極/膜インターフェースでの容量層の形成を避ける機能を有する。「内部接触層」として適した材料の例は、ポリアニリン、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3-オクチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリンなどの導電性ポリマー、グラフェン、カーボンナノチューブ、グラフェン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェンなどの導電性炭素系材料または金属ナノ粒子である。一実施形態では、それらを適した溶媒中に可溶化または分散させて、ディスペンシング、ドロップキャスティング、スクリーン印刷、スピンコーティングまたは任意のその他の適した堆積方法によって前記電極の表面に付与させてよい。溶液/分散液が電極の表面に付与されると、溶媒は乾燥、蒸発などによって除去され、残るものは後でその上に検体選択性膜が付与される「内部接触層」である。
【0058】
一実施形態では、「内部接触層」材料は、必要に応じて、参照電極に付与される検体選択性膜のポリマー膜溶液またはポリマー材料に直接含められてもよい。
【0059】
一部の実施形態では、電極は液体試料、例えば尿試料と電気的に接触しているべきであるが、電極アレイおよび導線が、濃度の決定の品質を妨害し、その品質にマイナスの影響をもたらす、より大きな分子または尿成分、例えばタンパク質などと接触することを防ぐことも有用であろう。(そのようなより大きな分子による悪化プロセスを「生物付着」と呼ぶ)。そのため、一部の実施形態では、必要に応じて、被覆膜を前記尿試料と接触することを意図する前記試験片の部分に付与してもよい。そのような適した被覆膜の一例は、ポリカーボネート材料、例えば、大きな干渉分子の捕捉を可能にする、「Nucleopore」の商標で販売されているものである。
【0060】
さらに、一部の実施形態では、ユーザーの使いやすさのために、保管および処理中の導線の汚染を除外するために、試験片の製造の終わりに、適した被覆フィルム、例えば電極用の開口部を有するプラスチック絶縁材料を試験片(図4)の上に付与して、露出した電極アレイ4および末端インターフェース5を有する試験片(2a)を構築することができる。
【0061】
一実施形態では、本発明による試験片が棒状の構造ではなく、平面状の電気絶縁基板であるかまたはそれを含むことに留意する必要があろう。一実施形態では、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量は、比色測定または電流測定に基づいていない。一実施形態では、それは電位差測定に基づいている。さらに、一実施形態では、本発明によるナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量は、酵素の使用も、いかなる酸化/還元反応も、検体のいかなる加水分解も伴わない。
【0062】
本発明による実施形態では、使い捨て試験片は、ナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための本発明によるポイントオブケアデバイスと接続して使用されるものである。その目的のため、使い捨て試験片は、前記試験片の電極アセンブリを、本発明のポイントオブケアデバイスの一部をなす読み出しメーターデバイスと電気的に接続するための適したインターフェースを有する。そのようなインターフェースは任意の適した形態をとってよく、一実施形態では、平面状基板上の電極アセンブリからくる一連の電気的接触であり得る。そのようなインターフェースは、例えば、プラグの一部をなす電気的接触を含む前記プラグの形態をとり得る。インターフェースは、ナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための電極アセンブリを非侵襲的ポイントオブケアデバイスの読み出しメーターデバイスに電気的に接続することに適しており、そのようなポイントオブケアデバイスは、本発明による使い捨て試験片のインターフェースを受け取るための、例えば凹部またはウェルまたはスリットの形態の受信モジュールを有する読み出しメーターデバイスを含む。一実施形態では、そのような受信モジュールはソケットの形態をとってよい。一般に、受信モジュールは、使い捨て試験片のインターフェースを収容するのに適している。
【0063】
「尿試料中のナトリウム濃度」または「尿中のナトリウム濃度」という用語は、本明細書において時々「uNa」とも省略される。同じことは、「尿試料中のクレアチニン濃度」または「尿中のクレアチニン濃度」にも当てはまり、これは「uCr」と省略される。尿試料中のナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比は、本明細書において時々「uNa/uCr」とも省略される。
【0064】
本明細書において使用される場合、略語「EMF」とは、起電力をさし、これは本質的に2つの電極間の電位の差をさす。そのような起電力は、ネルンストの式によって、試料中の対応する検体濃度に定量的に関連している。一般に、本発明による試験片から得ることのできる電位差測定信号または測定値は起電力であり、これは次に検体濃度に関連付ける/変換することができる。本明細書において使用される場合、略語「WE」とは、作用電極をさし、略語「RE」は参照電極をさし、略語「NE」は中性電極をさす。
【0065】
試験片に含まれる基板は、好ましくは電気絶縁材料で作製される。一実施形態では、そのような電気絶縁材料は、誘電体、例えばプラスチック、セラミック、アルミナ、紙、ボール紙、ゴム、織物など、炭素系ポリマー、例えばポリプロピレンなど、フルオロポリマー、例えばテフロン(登録商標)など、シリコン系基板、例えばガラス、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素など、ポリジメトキシシロキサンなどのシリコン系ポリマー、ケイ素元素などの半導体材料である。基板は必要に応じて電気絶縁層でコーティングされてよい。そのような電気絶縁基板は、好ましくは誘電体、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電体、またはシリシウムジオキシドなどの無機誘電体から選択される誘電体で作製される。一実施形態では、基板または存在する場合には前記電気絶縁基板に付与される電極アセンブリは、基板の表面の一部であり、かつ/または基板の表面の一部をなし、患者の試料、例えば尿試料などと接触させるのに適している。電気絶縁層が基板上に存在する場合、電極アセンブリは好ましくはそのような電気絶縁層上に配置され付与される。
【0066】
本発明の実施形態による試験片は、使い捨て試験片である。これは、ナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の測定のために一度使用された後、それが処分されることを意味する。従って、本発明の実施形態による試験片は、使い捨ての試験片である。それは、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための本発明による非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスと併せて使用されるものである。そのようなポイントオブケアデバイスは、尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的測定のための、ならびにナトリウムとクレアチニン濃度の比を決定するための読み出しメーターデバイスを含む。そのような読み出しメーターデバイスは、読み出しメーターデバイスに接続された使い捨て試験片から受け取る電気信号を定量的に測定するのに適し、そうするように構成されている。さらに、読み出しメーターデバイスは、電気信号およびキャリブレーション情報に基づいて検体、すなわちナトリウムおよびクレアチニンの濃度およびそれらの比を計算するように構成されていて、またユーザーに結果を出力する、例えば表示するように構成されている。一実施形態では、そのような読み出しメーターデバイスは、前記試験片から受け取った電気信号を測定し、そのような電気信号に基づいて濃度を計算するように構成されているコントローラを含む。さらに、読み出しメーターデバイスは、ユーザーによる検査の結果を出力するためのコントローラに接続された出力デバイスを含む。さらに、読み出しメーターデバイスは、外部コンピュータまたはネットワークとデータを交換するためのUSBおよび/またはワイヤレスポートを含む。
【0067】
本発明による使い捨て試験片およびポイントオブケア(POC)デバイスは、低コストデバイスであって取り扱いが非常に容易であり、そのため非医療スタッフおよび患者が使用することもできる。これらのデバイスはポケットタイプの携帯機器であり、非侵襲的な方法で使用することができるため、最適な患者のコンプライアンスのための優れた基盤を提供する。これは例えば、採血の必要性がなくなるので子供に特に有利である。さらに、本発明によるデバイスおよび方法論は、時間ならびに技術的およびロジスティックな複雑さおよび日常的な臨床分析のコストを減少させ、それにより身体のナトリウム状態の分析を大いに促進する。
【0068】
以下の図を参照することにより、本発明をこれからさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1図1は、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するためのポイントオブケア(POC)デバイスの実施形態の模式図を示す;EMF=起電力;uNa=尿試料中のナトリウム濃度;uCr=尿試料中のクレアチニン濃度;uNa/uCr=ナトリウム:クレアチニン濃度比。1=POCデバイス、2=試験片、3=読み出しメーターデバイス、4=電極アセンブリ、5=電気接続用のインターフェース、6=ナトリウム選択性電極、7=クレアチニン選択性電極、8=参照電極、9=導線
【0070】
図2図2は、電極アレイおよび導線の例示的な可能性のあるパターンが絶縁層に付与された、例示的な試験片の上面図を示す。 A)例示的な円形の作用電極+楕円形の参照電極 5=電気接続用のインターフェース 6=ナトリウム選択性電極 7=クレアチニン選択性電極 8=参照電極 9=導線 B)例示的な正方形の作用電極+長方形の参照電極 C)9a)=読み出しメーターデバイスに接続するための導線の端部の例示的な接触経路 D)10=干渉を決定するための中性電極
【0071】
図3図3は、例示的な検体選択性電極の断面図を示す。 A)「内部接触層」なし 11=基板 12=絶縁層 13=導電層 14=検体選択性膜 B)「内部接触層」あり 11=基板 12=絶縁層 13=導電層 14=検体選択性膜 15=必要に応じて、「内部接触層」(トランスデューサ)
【0072】
図4図4は、追加の被覆層を含む例示的な試験片の製造のための例示的な実施形態を示す。そのような例示的な製造方法では、以下のステップが実施される。 ステップ1)基板の上面に絶縁層を提供する ステップ2)電極アセンブリおよび導線を付与する ステップ3)検体選択性電極を形成する ステップ4)好ましくは、適した被覆フィルム、例えば電極用の開口部を有するプラスチック絶縁材料を付与する 2a=被覆層を有する試験片 4a=電極アセンブリおよび導線 5=電気接続用のインターフェース 11a=絶縁層を有する基板 15a=検体選択性膜溶液 16=電極用の開口部を有する被覆フィルム
【0073】
図5図5は、水溶液中の異なる濃度のナトリウムに対する、本発明に従って組み立てられた試験片(T1~T4)の電位差測定応答を示す。
【0074】
図6図6は、伝統的な従来のナトリウム鉄選択性電極(ISE)、国際臨床化学連合(International Federation of Clinical Chemistry:IFCC)の参照方法である炎光光度法(すなわち、原子吸光分析、AAS)、そして、例示的な本発明によるナトリウム選択性試験片によって決定されたナトリウム濃度の比較を示す。
【0075】
図7図7は、水溶液中の異なるクレアチニン濃度に対する、本発明に従って組み立てられた例示的な試験片(C1~C5)の電位差測定応答を示す。
【0076】
図8図8は、0.5M塩化カルシウム水溶液中の異なるナトリウム濃度に対する、本発明に従って組み立てられた例示的な試験片(T5~T7)のほぼネルンストの(near-Nernst)電位差測定応答を示す。
【0077】
図9図9は、例示的な寸法の電極アレイおよび基板を有する例示的な試験片の上面図を示す。WE1=第1の作用電極;WE2=第2の作用電極;RE=参照電極。
【0078】
図10図10は、試験片および例示的な分析結果を表示する読み出しメーターからなる、患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための例示的なポイントオブケア(POC)デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0079】
さらに、本発明は、本発明を限定するためではなく、例示するために与えられる以下の実施例を参照することにより、これからさらに説明される。
【実施例
【0080】
ナトリウム特異的試験片の機能の試験
市販のGwent(登録商標)試験片に負荷されたNa特異的試験膜の機能の初期試験は、以下の
-所定のNa濃度を有する流体および天然のヒト尿試料中のNa濃度の電位差測定の成功
-生理液中の関連濃度のナトリウムに対する試験片の線形(動的)範囲の実証
-ヒト尿中のNa濃度と、AASおよびISEを含む従来の方法によって測定された値の良好な一致
-生理学的流体中の関連濃度のナトリウムに対するほぼネルンストの(near-Nernst)電位差測定応答の実証
によって得た。
【0081】
市販のGwent(登録商標)試験片に負荷されたクレアチニン特異的試験膜の機能の初期試験は、
-所定のクレアチニン濃度を有する流体およびヒト尿中のクレアチニン濃度の電位差測定の成功
によって得た。
実施例1) ナトリウム選択性試験片の製造
【0082】
原理証明実験のために、市販の2電極系(Gwent、UK、BE 2070921D1/007)を使用した。この系は、φ=6mmの炭素作用電極(WE)および、12.0×26.5mmのプラスチック基板の上にスクリーン印刷されている共通の(Ag/AgCl)対/参照電極(RE)からなる。
【0083】
ナトリウム選択性電極(Na-ISE)を実現するために、イオン選択性膜(Na-ISM)溶液(30μL)を炭素WEの領域にキャストした。次に、基板を乾燥させて溶媒を除去した。Na-ISM溶液は、4.0mgのナトリウムイオノフォアX(4-tert-ブチルカリックス[4]アレーンテトラ酢酸テトラエチルエステル)、1.0mgのKTpClPB(テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム)、133mgのPVC(高分子量ポリ塩化ビニル)および266mgのo-NPOE(2-ニトロフェニルオクチルエーテル)の3mLテトラヒドロフラン中の混合物からなった。
実施例2) ナトリウム選択性試験片による電位差測定
【0084】
測定の前に、Na-ISE電極をコンディショニングするために、試験片を塩化ナトリウム溶液(1M NaCl水溶液)に一晩浸漬した。両電極を有する基板を試料溶液に導入し、改質したWE(Na-ISE)とREの間の電位差(EMF)を単純なデジタル電圧計で測定した。
実施例3) 標準ナトリウム溶液系列を測定することによるセンサのキャリブレーション
【0085】
ナトリウム濃度がそれぞれ1M、10-1M、10-2Mの標準液を、塩化ナトリウム(NaCl)を水に溶解することによって調製した。EMF値を記録し、ナトリウム濃度の負対数の関数としてEMF値をプロットすることにより、検量線を設定した。4つの異なる試験片(T1~T4)を組み立て、試験した。結果は表1に要約されている。
【表1】
表1:4つの異なる試験片(T1~T4)での測定によって得た3つの異なるNa濃度(1.0~0.01M)に対するEMF値
【0086】
データは明らかに、優れた再現性と、図5に示されるように、0.01~1Mのナトリウム溶液の線形(動的)範囲を示す。従って、試験片の線形範囲は、Na濃度の正常範囲が0.02~0.25Mの間にあるヒトの尿のように、生理学的流体において医学的に関連濃度を網羅する。
【0087】
各試験片に関するこれらのデータから、回帰方程式を対応する相関係数Rを用いて計算した(表2)。
【表2】
表2:4つの異なるナトリウムセンサ(T1~T4)でのEMF測定値に対して得られた線形回帰方程式および相関係数の概要
【0088】
これらの回帰方程式を用いて、試料中のナトリウムの濃度を測定されたEMFから決定することができる。
実施例4) 組み立てたナトリウム選択性試験片での天然のヒト尿試料の測定および従来方法によって得られた結果との比較
【0089】
17の異なる天然のヒト尿試料(数字1~17で表す)を、組み立てたナトリウムセンサ試験片で調べた。測定前に試料を1:10希釈した。上記のように、各試験片を測定の前に1M NaCl溶液に浸漬することによりコンディショニングした。その後、試験片を尿試料に浸し、電位差計を用いてEMFを測定した。
【0090】
線形回帰方程式を用いて、尿試料中のナトリウムの濃度(表3)を、以下の実施例に例示されるように決定した。
T1試験片で測定した試料のEMF:27mV
回帰方程式:y=89.0x-116.7
-Log[Na+]=(27+116.7)/(-89.0)=-1.6146
[Na+]=10-1.6146=0.0243
測定前に1:10希釈したので、10を乗じる⇒0.243M=243mM
【表3】
表3:表2の4つの異なる試験片(T1~T4)および対応する回帰方程式を使用する測定から得られたEMFおよび対応するNa濃度の概要
【0091】
ヒト尿の同じ試料を従来の炎光光度法(AAS)および従来のNa-ISEにより、それらのNa濃度について分析した(表4)。
【表4】
表4:本発明に従って製造されたNa選択性試験片、従来のNa-ISEおよび炎光光度法(AAS)によって測定された、17人の子供由来の尿中のナトリウム濃度(mM)。
【0092】
4つの試験片測定から得られたナトリウム濃度を平均し、従来のNa ISEおよび炎光光度法によって決定された値と比較した。図6に見られるように、3つの方法の間にはかなり良好な一致がある。従来のNa-ISEと炎光光度法(両方法とも現在臨床検査室でナトリウム濃度決定に適用されている)の違いは、場合によっては従来のNa-ISEと開発された試験片の違いよりもさらに大きい。
実施例5) クレアチニン選択性試験片の組み立て
【0093】
原理証明実験のために、市販の2電極系(Gwent、UK、BE 2070921D1/007)を使用した。この系は、φ=6mmの炭素作用電極(WE)および、12.0×26.5mmのプラスチック基板の上に両方ともスクリーン印刷されている共通の(Ag/AgCl)対/参照電極(RE)からなる。
【0094】
クレアチニン選択性電極(Cr-SE)を実現するために、選択性膜(Cr-SM)溶液(30μL)を炭素WEの領域にキャストした。次に、基板を乾燥させて溶媒を除去し、WE上に選択性膜を形成した。Cr-ISM溶液は、1.8mgのジベンゾ-30-クラウン-10(DB30C10)、1.8mgのテトラキス(p-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(PTp-ClPB)、65.5mgのo-ニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE)および30.9mgのPVC(高分子量ポリ塩化ビニル)の3mLテトラヒドロフラン中混合物からなった。
実施例6) クレアチニン選択性試験片による電位差測定
【0095】
測定の前に、Cr選択性電極をコンディショニングするために、試験片を10-2Mプロトン化クレアチニン水溶液に一晩浸漬した。両電極を有する基板を試料溶液に導入し、改質したWE(Na-ISE)とREの間の電位差(EMF)を単純なデジタル電圧計で測定した。
実施例7) 標準クレアチニン溶液系列を測定することによるセンサのキャリブレーション
【0096】
濃度がそれぞれ1M、10-1M、10-2M、および10-3Mのプロトン化クレアチニンの標準水溶液を調製した。
EMF値を記録し、クレアチニン濃度の負対数の関数としてEMF値をプロットすることにより、検量線を設定した。5つの異なる試験片(C1~C5)を組み立て、試験した。結果は表5に要約されている。
【表5】
表5:5つの異なる試験片(C1~C5)での測定によって得た4つの異なるクレアチニン濃度(1.0~0.001M)に対するEMF値
【0097】
データは明らかに、優れた再現性と、図7に示されるように、0.001~1Mのクレアチニン溶液の線形(動的)範囲を示す。従って、試験片の線形範囲は、0.004~0.02Mの値を有する尿のように、生理学的流体において医学的に関連濃度を網羅する。
【0098】
各試験片に関するこれらのデータから、表6に記載される回帰方程式を相関係数Rを用いて計算した。
【表6】
表6:5つの異なるクレアチニンセンサ(C1~C5)でのEMF測定値から得られた線形回帰方程式および相関係数の概要
実施例8) 生物学的関連範囲内でほぼネルンスト(near-Nernst)応答を示す安定化された参照電極電位でのセンサのキャリブレーション
【0099】
使用した市販の試験片(Gwent、UK、BE 2070921D1/007)上のAg/AgCl対/参照電極(RE)の電位は、試料中の塩化物イオン濃度に依存する。安定した参照電極電位を達成するために、飽和濃度の塩化物イオンを、センサをキャリブレーションした標準液に添加した。そのため、濃度がそれぞれ1M、10-1M、10-2M、10-3Mのナトリウム標準液を、塩化ナトリウム(NaCl)を0.5M塩化カルシウム(CaCl)水溶液に溶解することによって調製した。実施例1に記載されるようにナトリウムセンサを組み立て、実施例2に記載されるようにEMF値を記録した。ナトリウム濃度の負対数の関数としてEMF値をプロットすることにより、検量線を設定した。3つの異なる試験片(T5~T7)を組み立て、試験した。結果は表1に要約されている。
【表7-1】
【表7-2】
表7:3つの異なる試験片(T5~T7)での測定によって得た4つの異なるNa濃度(1.0~0.001M)に対するEMF値
【0100】
各試験片に関するこれらのデータから、回帰方程式を対応する相関係数Rを用いて計算した(表8)。
【表8】
表8:3つの異なるナトリウムセンサ(T5~T7)でのEMF測定値に対して得られた線形回帰方程式および相関係数の概要
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【0101】
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【0102】
前述の説明、特許請求の範囲、および/または添付の図面に開示された特徴は、別々に、かつそれらの任意の組み合わせの両方で、その多様な形態で本発明を実現するための材料となり得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための使い捨て試験片であって
前記試験片は、
-電気絶縁性であるか、または電気絶縁層がその上に付与されている基板と、
-前記基板の上、または存在する場合には前記電気絶縁層の上に付与された電極アセンブリであって、前記電極アセンブリは、少なくとも
-1つのナトリウム選択性作用電極;
-1つのクレアチニン選択性作用電極;
-前記ナトリウム選択性作用電極と前記クレアチニン選択性作用電極の両方のための1つの統合参照電極か、または前記ナトリウム選択性作用電極のための参照電極および前記クレアチニン選択性作用電極のための別々の参照電極のいずれか;
-必要に応じて、干渉を測定および除去するための1つまたは2つの中性電極を含む、電極アセンブリと、
-前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するためのインターフェースと
を含む、使い捨て試験片。
(項目2)
前記作用電極、前記参照電極および存在する場合には前記中性電極が、前記基板または存在する場合には前記電気絶縁層に、適した堆積技法、例えば印刷、スパッタリング、蒸発、無電解めっき、付着、接着または、リソグラフィー、好ましくはスクリーン印刷またはインクジェット印刷によって付与されており、従って前記基板または前記電気絶縁層の上に電極アセンブリを形成し、前記ナトリウム選択性作用電極がナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性作用電極がクレアチニン選択性膜を含み、前記中性電極がナトリウム選択性でもなくクレアチニン選択性でもない膜を含む、項目1に記載の使い捨て試験片。
(項目3)
前記基板が、プラスチック、セラミック、アルミナ、紙、ボール紙、ゴム、織物、炭素系ポリマー、例えばポリプロピレンなど、フルオロポリマー、例えばテフロン(登録商標)など、シリコン系基板、例えばガラス、石英、窒化ケイ素、酸化ケイ素など、ポリジメトキシシロキサンなどのシリコン系ポリマー、ケイ素元素などの半導体材料、誘電体、好ましくはポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタラート、ポリウレタン、ポリフッ化ビニリデンなどの有機誘電体、シリシウムジオキシドなどの無機誘電体から選択される誘電体から選択される材料から作製されており、前記電気絶縁層が、存在する場合には、誘電体で作製されており、前記電気絶縁層が前記基板上に存在する場合に前記電極アセンブリが前記電気絶縁層上に位置している、先行する項目のいずれかに記載の使い捨て試験片。
(項目4)
前記ナトリウム選択性作用電極が、ナトリウム選択性担体をポリマーマトリックス中に含むナトリウム選択性膜を含み、前記クレアチニン選択性膜がクレアチニン選択性担体をポリマーマトリックス中に含む、項目2~3のいずれかに記載の使い捨て試験片。
(項目5)
前記電極アセンブリが、干渉を測定し、除去するための1または2の中性電極をさらに含み、前記中性電極が、ナトリウム選択性担体もクレアチニン選択性担体も含まないポリマーマトリックスを含む膜を含む、先行する項目のいずれかに記載の使い捨て試験片。
(項目6)
前記電極アセンブリの前記電極の各々がそれぞれ導線を有し、前記導線が、前記電極アセンブリを読み出しメーターデバイスに電気的に接続するための前記インターフェースと前記電極を接続する、先行する項目のいずれかに記載の使い捨て試験片。
(項目7)
前記統合参照電極が、前記作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有するか、あるいは、前記別々の参照電極の各々が、前記作用電極の各々の表面積よりも大きい表面積を有する、先行する項目のいずれかに記載の使い捨て試験片。
(項目8)
患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出するための非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイスであって、
前記POCデバイスは、
-尿試料中のナトリウムおよびクレアチニン濃度の定量的かつ選択的測定と、ナトリウムとクレアチニンの比を決定するための読み出しメーターデバイスであって、前記読み出しメーターデバイスは、
-項目1~7のいずれかに記載の使い捨て試験片のインターフェースを受け取り、前記読み出しメーターデバイスと前記使い捨て試験片の電極アセンブリとの間の電気的接触を確立し、従って、前記使い捨て試験片から前記読み出しメーターデバイスへの電気信号の検出および伝達を可能にするための受信モジュールであって、前記受信モジュールが、前記試験片の前記インターフェースを介して各電極に別々に接触するための電気コネクタを有する、受信モジュールと、
-好ましくは高い入力抵抗を有する、項目1~7のいずれかに記載の使い捨て試験片から伝達された電気信号を増幅するためのマルチチャンネル増幅器と、
-項目1~7のいずれかに記載の使い捨て試験片から受け取った電気信号を、ナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に変換し、その後に、前記ナトリウム濃度測定値およびクレアチニン濃度測定値に基づいてナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するための、アナログ/デジタル変換器および記憶装置を含むコントローラと、
-濃度測定値および/または前記比をユーザーに示すための出力装置、好ましくはディスプレイとを含む、読み出しメーターデバイスと
-電力供給と
を含む、非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
(項目9)
前記使い捨て試験片の前記インターフェースを経由して前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入された、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間の電気的接触を確立している、項目1~7のいずれかに記載の使い捨て試験片
をさらに含む、項目8に記載の非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
(項目10)
前記デバイスが、
-前記デバイスを操作するためのユーザーインターフェース、ならびに/あるいは、複数のナトリウムおよびクレアチニン濃度測定値ならびに計算したナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を保存するためのメモリ、ならびに/あるいは、外部コンピュータまたは外部ネットワークとデータを移動させ、かつ/または交換するための接続インターフェース、好ましくはUSBおよび/またはワイヤレス接続インターフェース
をさらに含む、項目8~9のいずれかに記載の非侵襲的ポイントオブケア(POC)デバイス。
(項目11)
患者の尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を定量的に決定するための方法であって、
a)尿試料を提供するステップ
b)項目1~7のいずれかに記載の使い捨て試験片を前記尿試料と接触させるステップであって、前記試験片の電極アセンブリを前記尿試料によって濡らして前記尿試料と接触させ、必要に応じて、尿で濡れた試験片を前記尿試料から取り出すステップ
c)項目9に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスを組み立てるために、前記試験片を、項目8に定義されるポイントオブケア(POC)デバイスの読み出しメーターデバイスと接続するステップであって、前記使い捨て試験片が前記読み出しメーターデバイスの前記受信モジュールに挿入され、従って前記試験片の前記電極アセンブリと前記読み出しメーターデバイスとの間に電気的接触を確立し、
ここで、ステップc)における前記ポイントオブケアの前記読み出しメーターデバイスへの前記試験片の前記接続はステップb)の前かまたは後のいずれかで行われるステップ、
d)ステップc)で組み立てられた前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用して、前記尿試料中のナトリウム濃度およびクレアチニン濃度を測定するステップ
を含む方法。
(項目12)
患者の体内のナトリウム欠乏および/またはナトリウム過負荷を検出する方法であって、前記方法は、
-項目11に記載の方法を実施するステップ、
-前記ポイントオブケア(POC)デバイスを使用してナトリウム濃度とクレアチニン濃度の比を決定するステップ
-前記尿試料中のナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が<8である場合にナトリウム欠乏を検出し、ナトリウム濃度とクレアチニン濃度の計算された比が>50である場合にナトリウム過負荷を検出するステップ
を含む、方法。
(項目13)
前記ナトリウム欠乏が、患者の血漿中のナトリウム欠乏であるか、または正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏であり、そのような正常ナトリウム血性ナトリウム欠乏では、患者の血漿中のナトリウム濃度は正常な健康範囲内にあるが、患者が、例えば下痢、消化管ストーマ、急性出血、嚢胞性線維症、火傷または激しい運動で起こり得る体内のナトリウムと体液の比例的損失のために、全身のナトリウム(sorium)プールの欠乏に苦しんでいる、項目12に記載の方法。
図1
図2A)】
図2B)】
図2C)】
図2D)】
図3A)】
図3B)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10