(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】流量制御バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 7/16 20060101AFI20220927BHJP
F16K 31/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F16K7/16 C
F16K31/02 A
(21)【出願番号】P 2022536902
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016885
【審査請求日】2022-06-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591264429
【氏名又は名称】コフロック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597161768
【氏名又は名称】株式会社陽和
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】新村 英展
(72)【発明者】
【氏名】木戸 啓二
(72)【発明者】
【氏名】野口 通隆
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝
(72)【発明者】
【氏名】堤 亮介
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200840(JP,A)
【文献】特開2022-039472(JP,A)
【文献】特開2001-027333(JP,A)
【文献】特開2011-214627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 7/00- 7/20
13/00-13/10
25/00-25/04
29/00-31/05
33/00
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブブロックとダイアフラムとアクチュエータを有し、バルブブロック内に形成された一方の流路に流入した流体を、ダイアフラムがアクチュエータから受ける微小圧力によって、バルブブロック内側面とダイアフラム内側面との間隙を経て、バルブブロック内に形成された他方の流路から当該流体を排出するように構成されている、流体の流量を制御する流量制御バルブであって、ダイアフラム周縁部とバルブブロック上端面とが
加熱炉で加熱されることにより溶着されて一体化し、当該溶着部のダイアフラム内周面とバルブブロック内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム内周面とバルブブロック内周面が面一であることを特徴とする流量制御バルブ。
【請求項2】
溶着に供されるダイアフラムとバルブブロックの当接面の部材が互いに相手部材側に入り込み、且つダイアフラムとバルブブロックの当接面が平滑であるように前加工されていることを特徴とする請求項1に記載の流量制御バルブ。
【請求項3】
バルブブロックがPTFE、変性PTFEもしくはPFAからなり、ダイアフラムが変性PTFEもしくはPFAからなる請求項
1又は2に記載の流量制御バルブ。
【請求項4】
アクチュエータがピエゾアクチュエータである請求項
3に記載の流量制御バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は流量制御バルブに関し、特に、半導体の製造等に用いられる流体中の汚れ(コンタミネーション)や微細な異物(ゴミ)の発生を抑えるとともに、微小流量を高速で制御することができる流量制御バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造等において、シリコンウエハの洗浄用の純水やエッチング処理用の薬液等の流体には極めて高い清浄度が求められる。具体的には、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、国際半導体技術ロードマップ(ITRS)において、2015年に32nmプロセスとなることが定められている。プロセスで表される数字(32nm)は、MPUにおける最下層の最も狭い配線のピッチ(線幅+線間隔)の半分(ハーフピッチ)として定義されている。このように配線幅が定められる中にあっては、半導体製造工程内における流体の流通経路への汚れや微細なゴミ(パーティクル)の混入は、製品の歩留まりに大きな影響を与える。パーティクルは、配線ピッチの4分の1(2015年のプロセスの場合、8nm)以下とする必要があることから、流体の清浄度を維持しながら流通させる部材は大きな意味を持つ。
【0003】
例えば、従前構造の流量制御バルブは
図5に開示されている(特許文献1参照)。同流量制御バルブ100は、被制御流体の流入部101及び流出部102と、流入部及び流出部の間に弁座部103を形成した弁室104を有する弁室ボディ部105、弁座部103を進退自在にシールする弁部106と弁室104内に装着されたダイヤフラム部107とを備える弁機構部108を備える。エアポート109から流出入する作動エアにより弁機構部108を進退させて弁座部103の開閉を駆動制御する駆動機構体110を弁室ボディ部105上のハウジングボディ部111内に収容している。駆動機構体110は、弁機構部108に接続されエアポート109から流入する作動エアを受ける受圧部112を有するピストン部113と、ピストン部113を弁座部103側に付勢するばね114を備える。図中、符号115は呼吸穴、116はピストン空間部である。
【0004】
図5の流量制御バルブは、弁部が弁座部から離れて被制御流体が流通している状態である。ここで、エアポート109からの作動エアの供給圧力を低下することにより、ピストン部113の受圧部112に加わる圧力が低下する。結果、ばね114の付勢力が流入する作動エアの圧力に勝り、ピストン部113は降下する。こうして、弁機構部108を通じて弁部106は弁座部103に着座する。
【0005】
図5の流量制御バルブ100において、弁部106及び弁座部103を含む各部材は、一般にPTFE等のフッ素樹脂製であり、切削により所定形状に形成される。PTFEは耐薬品性が高く、また、清浄度も高く、半導体製造設備に多く用いられている。ところが、流体制御弁100の構造から理解されるように、被制御流体の流通を完全に停止する場合、弁部106は弁座部103に着座する。つまり双方は衝突することになる。当該流体制御弁を長時間使用し続ける間に、弁座部及び弁部の双方に磨耗が生じる。弁の構造上、磨耗部分から剥離するパーティクルの発生を回避することは困難である。
【0006】
しかしながら、前述のロードマップ等にもあるように、従来の基準よりもさらに微細なパーティクルが問題視され、その対応がより求められるようになった。従来構造の流量制御バルブのままでは、新しい基準に対応したパーティクルの発生抑制に対応するには不十分である。そこでパーティクル発生の抑制に対応した新しい構造の流量制御バルブが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、パーティクルの被制御流体への混入を抑制し、被制御流体の高度な清浄度を維持するとともに、微小流量を高速で制御することができる流量制御バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の流量制御バルブは、バルブブロックとダイアフラムとアクチュエータを有し、バルブブロック内に形成された一方の流路に流入した流体を、ダイアフラムがアクチュエータから受ける微小圧力によって、バルブブロック内側面とダイアフラム内側面との間隙を経て、バルブブロック内に形成された他方の流路から当該流体を排出するように構成されている、流体の流量を制御する流量制御バルブであって、ダイアフラム周縁部とバルブブロック上端面とが溶着されて一体化し、当該溶着部のダイアフラム内周面とバルブブロック内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム内周面とバルブブロック内周面が面一であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流量制御バルブは、ダイアフラムとバルブブロックとにより形成される流体の流路において、ダイアフラム周縁部とバルブブロック上端面とが溶着されて一体化し、当該溶着部のダイアフラム内周面とバルブブロック内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム内周面とバルブブロック内周面が面一であるから、溶着箇所に異物は発生せず、異物が溶着箇所に蓄積せず、滞留することもなく、被制御流体の高度な清浄度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、本発明の流量制御バルブの一実施形態(ノーマルクローズタイプ)の縦断面を含む概略構成図であり、
図1(b)はその平面図である。
【
図2】
図2はダイアフラムとバルブブロックの溶着箇所の形状の一実施形態を示す図である。
【
図3】
図3は、ダイアフラムとバルブブロックを溶着するときの温度パターンと圧力パターンの一実施形態を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の流量制御バルブの制御方式の一実施形態を示す概略ブロック図である。
【
図5】
図5は、特許文献1に記載された逆止弁の開状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は例示であり、本発明は実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変更や修正が可能である。
【0013】
本発明において、アクチュエータとしては、ピエゾアクチュエータを用いることができる。ピエゾ圧電効果は古くから知られている現象で、ある結晶に機械的圧力を加えた場合、圧力に比例してピエゾ素子表面に電荷が発生する現象であるが、ピエゾ圧電効果は可逆現象で、ピエゾアクチュエータではこの逆圧電効果が利用されている。すなわち、ピエゾ素子に電極を取り付け、電圧を印加することにより素子内部に電界を発生させ、これによりピエゾ素子が伸びる。ピエゾ素子結晶の分極方向に平行に加えた電場は一直線に並んだ電気双極子に回転力を生じ、強いトルクを発生する。これによって結晶中に長さの変化が生じ、結晶体の伸張を引き起こす。ピエゾ素子の長さの変化は、印加電圧を変えることにより、ナノメートル領域の極めて微小な伸張の変化として現れる。ピエゾアクチュエータは、様々なアクチュエータの中で最も早い応答速度を持ち、その伸張速度は重力加速度の数千倍の加速度が得られる。従って、ピエゾアクチュエータは、本発明の流量制御バルブのアクチュエータとして好ましい。
【0014】
ところで、被測定流体には、工業装置の洗浄液として使用される腐食性薬液も存在する。半導体の製造等において、シリコンウエハの洗浄に用いられる純水やエッチング処理に用いられる薬液は腐食性薬液であるから、半導体の製造装置に用いられる流量制御バルブの構成材料は腐食性薬液に耐える素材で構成されることが好ましい。
【0015】
図1(a)は、本発明の流量制御バルブの一実施形態(ノーマルクローズタイプ)の縦断面を含む概略構成図であり、
図1(b)はその平面図である。1はダイアフラム、2はバルブブロック、3はピエゾアクチュエータ、4はピエゾアクチュエータ3の入出力端である。この入出力端4はダイアフラム1に接続されている。バルブブロック2の上流側部分2a内に形成された一方の流路(
図1(a)の右方への矢示)に流入した流体を、ピエゾアクチュエータ3の入出力端4から受ける微小圧力によってダイアフラム1が伸縮すると、バルブブロック2の上流側部分2a内に形成された流路(
図1(a)の右方への矢示)から、バルブブロック2の内側面とダイアフラム1の内側面との間隙を経て、バルブブロック2の下流側部分2b内に形成された流路(
図1(a)の右方ヘの矢示)から当該流体を排出することができる。本発明の流量制御バルブを作動させるためのアクチュエータとしては、ピエゾアクチュエータ以外に、電気式のリニア直流モータ、リニア同期モータ、リニア誘導モータ、リニア・ステッピング・モータ、油圧式の油圧シリンダ、空気圧式の空気圧シリンダなどを用いることもできる。要するに、制御機器から出力された信号を元にして、作動機器に直線的な動作を提供できるものであればよい。
【0016】
本発明の流量制御バルブを半導体の製造装置に用いる場合、ダイアフラム1、バルブブロック2を構成する素材は耐薬品性素材(腐食性薬液に耐える素材)であることが好ましい。この耐薬品性素材としては、耐酸性、耐アルカリ性及び耐有機溶剤性に優れているPFA(パーフルオロアルコキシアルカン)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのフッ素樹脂が好ましい。さらに、ダイアフラム1とバルブブロック2に要求される機能を考慮すると、ダイアフラム1は耐摩耗性、屈曲特性、耐薬液透過性、溶着性に優れていることが好ましい。そこで、ダイアフラム1の素材は、変性PTFEまたはPFAがより好ましい。
【0017】
ダイアフラム1の素材として好ましい変性PTFEとしては、例えば、平均粒径が20μmで、見掛密度が360g/Lで、比重が2.15で,引張強度が48MPaで、伸びが400%で、収縮率が3.8%で、融点が339℃で、屈曲寿命が2.7×107回(MIT試験、ASTM D2178)であるフッ素樹脂(ダイキン工業(株)製の「PTFE M-112」)を用いることができる。
【0018】
本発明において、ダイアフラム1の周縁部とバルブブロック2の上端面とが溶着されて一体化し(
図1(a)のCで示す小さな円で囲んだ箇所参照)、当該溶着部のダイアフラム1の内周面とバルブブロック2の内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム1の内周面とバルブブロック2の内周面が面一であることは極めて重要である。この溶着箇所は、例えば、以下のようにして形成することができる。
【0019】
(1)ダイアフラム1とバルブブロック2の形成
ダイアフラム1とバルブブロック2の素材としては、PTFE、変性PTFE、PFAを用いることができるが、ダイアフラム1の屈曲寿命がバルブの寿命に直結することを考慮すると、ダイアフラム1の素材としては、屈曲特性と溶着性に優れた変性PTFEが好ましく、耐薬液透過性と耐摩耗性を考慮するとPFAが好ましい。また、ダイアフラム1の主たる素材として変性PTFEまたはPFAのどちらか一方(例えば、変性PTFE)を用いて、一部を他方の素材(例えば、PFA)とすることもできる。バルブブロック2は生産性を考慮しながら、PTFE、変性PTFEまたはPFAのいずれの素材を用いてもよい。また、バルブブロック2の主たる素材として、PTFE、変性PTFEまたはPFAのいずれか(例えば、PTFE)を用いて、一部を残り二つの素材のどちらか(例えば、PFA)とすることもできる。PTFEおよび変性PTFEは切削加工により、PFAは射出成形および切削加工により、
図1(a)に示す断面形状のダイアフラム1とバルブブロック2を得ることができる。
【0020】
(2)溶着される面の前加工
図1(a)においてCで示す溶着箇所の溶着される面である、ダイアフラム1の周縁部とバルブブロック2の上端面を、算術平均粗さがRa0.2μm以下で、最大高さがRy0.8μm以下になるように、精密切削加工する。また、溶着位置の精度確保、溶着強度の確保の両方の点から、ダイアフラム1とバルブブロック2が溶着される箇所の形状を、
図2に示すような形状にする。すなわち、
図2において点線で示すように、ダイアフラム1とバルブブロック2が互いに相手部材に入り込むような形状に前加工しておくことにより、段差や隙間を生じさせることなく、これらの部材を溶着することができる。本発明においては、ダイアフラム1とバルブブロック2を溶着するために接着剤や接合部材を使用することなく、次に説明するように溶着することができる。従って、溶着箇所に不純物が溶出することもない。
【0021】
(3)ダイアフラム1とバルブブロック2の溶着
上記のようにして得たダイアフラム1とバルブブロック2を溶着するには、大気雰囲気の加熱炉に挿入して溶着する方法(前者加熱方法)か、又はダイアフラム1の周縁部とバルブブロック2の上端面だけを局部的に加熱して溶着する方法(後者加熱方法)がある。前者加熱方法では、材料の大きさに依存して適宜変更するが、材料の融点を超える温度で、圧力は最大30MPa程度、加熱時間は最大200分程度である。後者加熱方法では、材料の大きさに依存して適宜変更するが、材料の融点を超える温度で、圧力は1.0MPa程度、加熱時間は10分程度である。加熱炉における温度と圧力のパターンの一例を
図3に示す。
図3において、実線は炉内温度、破線は炉内圧力を示す。加熱炉でダイアフラム1の周縁部とバルブブロック2の上端面を加熱により溶着した後、精密切削加工を施す。このようにして得られるダイアフラム1の内周面とバルブブロック2の内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム1の内周面とバルブブロック2の内周面が面一であるから、溶着箇所に異物は発生せず、異物が溶着箇所に蓄積せず、滞留することもない。
【0022】
次に、本発明の流量制御バルブの動作について説明する。
(1)初期パージ
流量制御を始める前に、
図1(a)に示す流路を含む全流路に純水を流して洗浄する。
(2)流量制御
図1(a)はノーマルクローズタイプの場合の流量制御を示している。図示しない電極と
図1(a)に示すピエゾアクチュエータ3を接続し、上記電極に電圧を印加することによりピエゾアクチュエータ3内部に電界を発生させ、これによりピエゾアクチュエータ3の入出力端4をピエゾアクチュエータ3に向かって僅かに引き込み、入出力端4を介してダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだに微小間隙を生じて、バルブブロック2の上流側部分2aからバルブブロック2の下流側部分2bへ流体が流れるようにする。すなわち、ノーマルクローズタイプの場合を示す
図1(a)において、入出力端4がピエゾアクチュエータ3に向かって僅かに引き込まれることによって、ダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだに微小間隙が生じる。なお、ピエゾアクチュエータ3内には、入出力端4をピエゾアクチュエータ3から外方に向かって伸長させようとするためのスプリングが挿入されているので、入出力端4をピエゾアクチュエータ3に向かって引き込むようにするためには、このスプリング力に打ち勝つ必要がある。従って、ピエゾアクチュエータ3内部に発生した電界強度を増減することにより、微小間隙を流れる流体流量を調整することができる。ピエゾアクチュエータ3内部に発生した電界強度が上記スプリング力よりも小さくなれば、入出力端4は元の位置に戻ろうとするのでダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだに微小間隙は形成されず、流体の流路は閉じられるので、バルブブロック2の上流側部分2aからバルブブロック2の下流側部分2bへ流体は流れない。
【0023】
ノーマルオープンタイプの場合の流量制御は下記のように行うことができる。ノーマルオープンタイプの場合は、
図1(a)において、ダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだに微小間隙がある。そこで、図示しない電極と
図1(a)に示すピエゾアクチュエータ3を接続し、上記電極に電圧を印加することによりピエゾアクチュエータ3内部に電界を発生させ、これによりピエゾアクチュエータ3の入出力端4が伸長し、入出力端4を介してダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだの微小間隙が閉じられて(
図1(a)に示すように)、バルブブロック2の上流側部分2aからバルブブロック2の下流側部分2bへ流体は流れない。なお、ピエゾアクチュエータ3内には、入出力端4をピエゾアクチュエータ3に向かって引き戻そうとするためのスプリングが挿入されているので、入出力端4が伸張するためには、このスプリング力に打ち勝つ必要がある。従って、ピエゾアクチュエータ3内部に発生した電界強度がこのスプリング力よりも小さくなれば、入出力端4は元の位置に戻ろうとするので、ダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとのあいだに微小間隙が生じて、バルブブロック2の上流側部分2aからバルブブロック2の下流側部分2bへ流体が流れる。従って、ピエゾアクチュエータ3内部に発生した電界強度を増減することにより、微小間隙を流れる流体流量を調整することができる。
【0024】
バルブブロック2の上流側部分2aの上流の流路と下流側部分2bの下流の流路には、流体の流量、圧力及び温度を感知するための流量センサ、圧力センサ及び温度センサが配置されており、各センサからの信号が図示しない電極にフィードバックされる。この流量センサ、圧力センサ及び温度センサからフィードバックされる信号によってピエゾアクチュエータ3内部に発生する電界強度が異なる。
【0025】
(3)フィードフォワード制御
本発明の流量制御バルブでは、フィードフォワード制御を実行することもできる。すなわち、ダイアフラム1とバルブブロック2内部の突起部2cおよびバルブブロック2の下流側部分2bとの微小間隙の開口部面積が予め定めた基準値より大きいことにより、バルブブロック2の上流側部分2aからバルブブロック2の下流側部分2bへ流れる流体の流量が所定の目標値より増加すると、フィードフォワード制御の判定がされる。すなわち、バルブブロック2の下流側部分2bの下流の流路に配置した流量センサで感知された流量が目標値より大きくなると、その目標値と実際の流量との偏差に基づいて流量の変化幅が算出され、その変化幅に基づいて流量が設定される。フィードフォワード制御では、制御後の流量は現在の流量よりも低くなるようにされる。
【0026】
(4)シーケンス制御
本発明の流量制御バルブでは、シーケンス制御を実行することもできる。すなわち、段落0024に記載した流量センサ、圧力センサ及び温度センサと、ピエゾアクチュエータ3と、前記センサからの動作状態を受け、制御ロジックに従って前記ピエゾアクチュエータ3に制御指令を出力する設備制御シーケンスと、周期的に起動信号を出力するシーケンス制御機構を備えたシーケンス制御装置において、前記設備制御シーケンスが時間幅と流量制御バルブの開度に関する複数の制御ステップに分割され、制御ステップ単位に実行レジスタと制御動作の出力部を組み合わせたプログラムによって前記制御ロジックを構成し、かつ、前記制御ステップの進捗を制御動作条件にしたがって制御し、実行ステップに対応する実行レジスタを決定するために、フロー記述のプログラムによって構成された進捗管理機構を設けることにより、シーケンス制御を実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上、説明したように、本発明の流量制御バルブは、流量制御の必要な様々な工業分野において有用であり、特に、半導体の製造装置に用いられる流体の流量制御において有用である。
【符号の説明】
【0028】
1 ダイアフラム
2 バルブブロック
3 ピエゾアクチュエータ
4 ピエゾアクチュエータの入出力端
【要約】
パーティクルの被制御流体への混入を抑制し、被制御流体の高度な清浄度を維持するとともに、微小流量を高速で制御することができる流量制御バルブを提供する。バルブブロック(2)とダイアフラム(1)とアクチュエータ(3)を有し、バルブブロック(2)の上流側部分(2a)内に形成された一方の流路に流入した流体を、ダイアフラム(1)がアクチュエータ(3)から受ける微小圧力によって、バルブブロック(2)内側面とダイアフラム(1)内側面との間隙を経て、バルブブロック(2)の下流側部分(2b)内に形成された他方の流路から当該流体を排出する。ダイアフラム(1)の周縁部とバルブブロック(2)の上端面とが溶着されて一体化し、当該溶着部のダイアフラム(1)の内周面とバルブブロック(2)の内周面との間に段差及び隙間がなく、ダイアフラム(1)の内周面とバルブブロック(2)の内周面が面一である。