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  • 特許-半導体ウエハの研磨方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】半導体ウエハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220927BHJP
   B24B 53/017 20120101ALI20220927BHJP
【FI】
H01L21/304 622M
H01L21/304 621B
B24B53/017 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018002456
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019121753
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-10
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)一般社団法人 電子情報通信学会、電子情報通信学会技術研究報告(信学技報 Vol.117 No.334)第7~12頁、平成29年11月24日発行 (2)一般社団法人電子情報通信学会、電子情報通信学会 有機エレクトロニクス研究会、2017年12月1日開催
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000236687
【氏名又は名称】不二越機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土肥 俊郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 清
(72)【発明者】
【氏名】塚本 敬一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 幹大
(72)【発明者】
【氏名】宮地 計二
(72)【発明者】
【氏名】宮下 忠一
(72)【発明者】
【氏名】鍛治倉 惇
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-299738(JP,A)
【文献】特開平11-010526(JP,A)
【文献】特開2000-340531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 53/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨液を研磨パッドに供給しながら、研磨ヘッドに支持された半導体ウエハを前記研磨パッドに摺接させて前記半導体ウエハを研磨する半導体ウエハの研磨方法であって、
ノズルから前記研磨液を前記研磨パッドに向かって高圧噴射することで研磨により生じる研磨屑を除去しつつ前記研磨液を前記研磨パッドに供給する工程を含み、
前記ノズルが前記研磨ヘッドに対して独立して配置されており、
噴射する前記研磨液の粒子径が5μm以上80μm以下である、半導体ウエハの研磨方法。
【請求項2】
研磨液を研磨パッドに供給しながら、研磨ヘッドに支持された半導体ウエハを前記研磨パッドに摺接させて前記半導体ウエハを研磨する半導体ウエハの研磨方法であって、
ノズルから前記研磨液を前記研磨パッドに向かって高圧噴射することで研磨により生じる研磨屑を除去しつつ前記研磨液を前記研磨パッドに供給する工程を含み、
前記ノズルが前記研磨ヘッドに対して独立して配置されており、
噴射する前記研磨液の粒子速度が10m/s以上80m/s以下である、半導体ウエハの研磨方法。
【請求項3】
前記研磨液を前記ノズルから圧力10MPaで噴射する、請求項1または請求項2に記載の半導体ウエハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、半導体ウエハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの研磨技術の一つに、化学的機械研磨法(CMP:chemical mechanical polishing)がある。この研磨技術は、アルカリ性溶液にシリカ等からなる砥粒を分散させたスラリーを研磨パッド表面へ滴下しながら、研磨パッドの表面に半導体ウエハを摺接させることにより、半導体ウエハの表面を平坦化する技術である。この研磨技術には、スラリーと半導体ウエハとの化学作用と、砥粒および研磨パッドによる機械的研磨とを組み合わせることにより、極めて平滑な研磨面を得ることができるという利点がある。
【0003】
研磨パッドは、使用をしている間、時々刻々とパッド表面に目つまりが生じて、使用を重ねるにつれて、研磨くず、反応生成物などの蓄積が起こって、研磨品質が損なわれていくので、目詰まりを定期的に除去(コンディショニング)する必要がある。理想的には時々刻々とパッド表面が目つまり現象によって変化してくるので、非破壊でコンディショニングすることが望ましい。除去方法としては、表面にダイヤモンド砥粒が埋め込まれたパッドドレッサーによって、目詰まりした研磨パッドの表層部分を削り取る方法(特許文献1参照)や、洗浄水を高圧で研磨パッドに吹き付けて研磨屑等を除去する高圧洗浄法(特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-199171号公報
【文献】特開2005-217037号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のコンディショニング方法は、いずれも半導体ウエハのバッチ交換のタイミングで行われる。コンディショニング作業が終了するまでは半導体ウエハの研磨加工が停止されることになるため、加工効率の向上に限界があり、さらなる改善が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書によって開示される半導体ウエハの研磨方法は、研磨液を研磨パッドに供給しながら、前記研磨パッドに半導体ウエハを摺接させて前記半導体ウエハを研磨する半導体ウエハの研磨方法であって、前記研磨液を前記研磨パッドに向かって高圧噴射することで研磨により生じる研磨屑を除去しつつ前記研磨液を前記研磨パッドに供給する工程を含む。
【0007】
上記の方法によれば、半導体ウエハを研磨加工しながら研磨屑の除去を行うことができるので、研磨パッドのコンディショニングのために半導体ウエハの研磨加工を停止させる必要がなくなり、加工効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本明細書によって開示される半導体ウエハの研磨方法によれば、研磨パッドのコンディショニングのために半導体ウエハの研磨加工を停止させる必要がなくなり、加工効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の研磨装置の概略図
図2】試験例において、高圧噴射スラリーの参考粒子径・粒子速度分布図
図3】試験例において、累計加工時間と加工レートとの関係を示すグラフ
図4】試験例において、累計加工時間と加工後の半導体ウエハの表面粗さとの関係を示すグラフ
図5】試験例において、累計加工時間と研磨パッドの摩擦係数との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
実施形態を、図1を参照しつつ説明する。本実施形態において半導体ウエハの研磨に用いられる研磨装置1は、回転定盤10と、研磨パッド11と、ノズル12と、研磨ヘッド13とを備えている。
【0011】
回転定盤10は、円板状の基台であって、図示しない駆動装置により、円板の中心位置を回転中心として回転されるようになっている。回転定盤10の上面には、回転定盤10とほぼ等しい径を有する円板状の研磨パッド11が貼り付けられている。研磨パッド11としては、多孔質ウレタンや不織布等の公知の材質のパッドを使用できる。
【0012】
ノズル12は、研磨パッド11の上方に配置され、研磨パッド11の上面にスラリーS(研磨液)を、図示しない高圧ポンプにより加圧し、高圧噴射する。
【0013】
研磨ヘッド13は、回転定盤10の半径よりも小さい直径を有する円板状であって、下面に研磨対象物である半導体ウエハWを真空ャックにより吸着保持可能となっている。この研磨ヘッド13は、図示しない駆動装置によって、円板の中心位置を回転中心として回転されるようになっている。研磨ヘッド13は、図示しない昇降装置によって昇降可能となっており、半導体ウエハWを研磨する際には下降して研磨パッド11に半導体ウエハWを押し当てることができるようになっている。
【0014】
ノズル12によって高圧噴射されるスラリーSとしては、例えば二酸化ケイ素などの無機粒子からなる砥粒をアルカリ性の溶液に分散させた一般的なものを使用できる。
【0015】
次に、上記のように構成された研磨装置1を用いて、研磨パッド11をコンディショニングしつつ半導体ウエハWを研磨する工程について説明する。
【0016】
回転定盤10を回転駆動させ、ノズル12からスラリーSを研磨パッド11に向かって高圧噴射し、スラリーSを研磨パッド11に供給する。この状態で、半導体ウエハWを吸着保持した研磨ヘッド13を下降させて半導体ウエハWを研磨パッド11に押し当てる。回転定盤10の回転により、半導体ウエハWを保持した研磨ヘッド13が、回転定盤10の回転中心の周りに円を描くように、回転定盤10に対して相対移動する。この相対移動と、研磨ヘッド13自身の回転運動によって、研磨パッド11が半導体ウエハWに対して摺接し、半導体ウエハWが研磨される。
【0017】
半導体ウエハWが研磨されている間、スラリーSが研磨パッド11に向かって高圧噴射されることにより、研磨パッド11にスラリーSが供給されるとともに、研磨によって生じた研磨屑などが吹き飛ばされ、研磨パッド11の目詰まりが抑制される。ノズル12は、研磨パッド11において、半導体ウエハWの研磨パッド11に対する相対移動の軌跡の上方に位置しており、半導体ウエハWの移動の軌跡に沿って相対的に移動しながら、スラリーSを高圧噴射するようになっている。これによって、半導体ウエハWの移動の軌跡に沿って発生する研磨屑が除去される。
【0018】
このように、半導体ウエハWを研磨加工しながら研磨屑の除去を行うことができるので、研磨パッド11のコンディショニングのために半導体ウエハWの研磨加工を停止させる必要がなくなり、加工効率を向上させることができる。また、高圧洗浄法によってコンディショニングを行う従来の方法では、研磨装置が、液供給系として研磨液と洗浄水の2系統を備えなければならないのに対し、本実施形態の研磨方法では、研磨液の1系統のみとすることができるので、研磨装置の簡易化を図ることができる。
【0019】
<試験例>
[使用機器、使用材料]
研磨加工装置として、不二越機械工業株式会社製「RDP-500」を使用した。研磨パッドとして、ニッタハース株式会社製「SUBA(登録商標)800 XY」を使用した。スラリーとして、フジミインコーポレーテッド株式会社製「GLANZOX HP-20」(SiO量17.5wt%、pH11.44、平均粒子径36nm)を20倍希釈したものを使用した。スラリー加圧・圧送装置として、旭サナック株式会社製「AF2800S」を使用した。噴射ノズルとして、専用ノズル「42-606」を使用した。研磨対象である半導体ウエハとしては、直径3インチのシリコンウエハを使用した。
【0020】
[試験例1]
シリコンウエハを研磨ヘッドにワックスを用いて直接貼り付けた。スラリーをノズルから圧力10MPa(600ml/min)で研磨パッドに吹き付けながら研磨加工を行った。このとき、噴射するスラリーの粒子径は5~80μm、粒子速度は10~80m/sである(図2参照)。回転定盤および研磨ヘッドの回転速度は200min-1、加工圧力は89kPaとした。
【0021】
[試験例2]
スラリーを研磨パッドに向かって高圧噴射する代わりに滴下した他は、試験例1と同様の条件でシリコンウエハの研磨加工を行った。
【0022】
[結果と考察]
図3に示すように、試験例2においては、累計加工時間17時間で加工レート(単位時間当たりの研磨量)が50%低下した。これは、研磨パッドの目詰まりによるものと考えられる。一方、試験例1では、累計加工時間17時間でも加工レートが全く低下しなかった。
【0023】
図4に示すように、研磨加工後のシリコンウエハの表面粗さは、試験例2においては約2.8~3.9nmの範囲内であったのに対し、試験例1においては約2.1~2.7nmの範囲内であった。
【0024】
図5に示すように、試験例2においては、研磨パッドの摩擦係数が、累計加工時間6時間で低下し始め、累計加工時間が増大するにつれて摩擦係数の低下率が大きくなった。また、摩擦係数の低下率と、加工レートの低下率との相関係数は0.98であり、両者の間には強い正の相関関係があることが分かった。このことより、目詰まりによって研磨パッドの表面が滑りやすくなったために、加工レートが低下したと考えられる。一方、試験例1においては、累計加工時間17時間でも、研磨パッドの摩擦係数が全く低下せず、定常状態で安定していた。このように研磨パッドの摩擦係数が安定していると、半導体ウエハの加工特性が安定するため、好ましい。
【0025】
また、総加工時間21時間経過後の研磨パッドを、目視および走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、試験例2では、研磨屑などが蓄積し、奥深くまで目詰まりしているのが観察されたのに対し、試験例1では、僅かな目詰まりしか観察されなかった。
【0026】
以上のように、スラリーが高圧噴射ではなく滴下によって供給された試験例2では、累積加工時間が増大するにつれて、研磨パッドに研磨屑等が蓄積され、シリコンウエハの加工レートが低下した。これに対し、試験例1においては、スラリーを研磨パッドに向かって高圧噴射することにより、スラリーが研磨パッドに供給されると同時に、研磨屑などが吹き飛ばされることにより、研磨パッドの目詰まりが大幅に抑制され、加工レートの低下が防止されることが確認できた。また、試験例1では、試験例2と比較して加工後のシリコンウエハの表面粗さが小さく、シリコンウエハの品質向上にも効果があることが確認できた。
【0027】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)研磨対象物である半導体ウエハの種類に特に制限はなく、シリコンウエハの他、サファイヤウエハ、シリコンカーバイドウエハ、ダイヤモンドウエハ、あるいは、GaN(窒化ガリウム)ウエハ、GaP(ガリウムリン)ウエハ、GaAs(ガリウムヒ素)ウエハなどの化合物半導体ウエハなどであっても構わない。
【0028】
(2)上記実施形態では、回転定盤10が回転することにより、研磨パッド11に対して半導体ウエハWとノズル12とが相対移動していたが、例えば、半導体ウエハとノズルとが回転定盤に対して円を描くように走査されるようにされていても構わない。
【符号の説明】
【0029】
11…研磨パッド
S…スラリー(研磨液)
W…半導体ウエハ
図1
図2
図3
図4
図5