(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】飲料カップ用蓋体
(51)【国際特許分類】
B65D 47/06 20060101AFI20220927BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B65D47/06 110
B65D47/36 200
(21)【出願番号】P 2019149614
(22)【出願日】2019-08-19
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】598143343
【氏名又は名称】赤松化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506078404
【氏名又は名称】株式会社ローソン
(73)【特許権者】
【識別番号】596124678
【氏名又は名称】三菱商事パッケージング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152930
【氏名又は名称】株式会社日本デキシー
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】赤松 外之彦
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-184738(JP,A)
【文献】特開2008-207874(JP,A)
【文献】特開2010-274965(JP,A)
【文献】登録実用新案第3194783(JP,U)
【文献】実開平06-032340(JP,U)
【文献】特開2009-154951(JP,A)
【文献】米国特許第05706972(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0319138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/06
B65D 47/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料カップの開口端を閉塞する蓋体であって、
蓋本体と、
飲み口となる開口部を一部に形成した周縁部と、
飲料カップ非使用時に前記開口部を閉塞する閉位置に、
飲料カップ使用時に前記開口部を開放する開位置に、それぞれ位置されるカバー部と、
前記カバー部の上面に設けられるリフトアップ凸部と、
前記開口部に隣接して形成され、底面に香り窓を形成した第一嵌合凹部と、
前記香り窓を閉塞する押込片と、
を備え、
前記カバー部が閉位置にある姿勢で、前記カバー部は前記開口部を閉塞し、前記リフトアップ凸部は前記カバー部の上面から上方向に突出し、
前記カバー部が開位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部は前記第一嵌合凹部の内側に押し込まれ、前記押込片に接触して押し込むことにより、前記香り窓を開放するよう構成してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項2】
請求項1に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記第一嵌合凹部は、前記開口部から、前記飲料カップ用蓋体の中心方向に向かって延長されてなる飲料カップ用蓋体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記第一嵌合凹部の底面は、前記開口部側から、前記飲料カップ用蓋体の中心方向に向かって上り勾配に傾斜されてなる飲料カップ用蓋体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記蓋本体は、前記第一嵌合凹部を底面に形成する第二嵌合凹部を形成してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、さらに、
前記押込片の上面に、押込片側凸部を備えており、
前記カバー部が開位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部が前記押込片側凸部と当接することにより前記押込片を押し込むよう構成してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記押込片は、前記香り窓を閉塞する位置から下方向に30°以下傾斜されて、前記香り窓を部分的に開放してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記カバー部が閉位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部は、平面視矩形状であって、前記飲料カップ用蓋体に対して垂直方向に突出してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記第一嵌合凹部は、
前記リフトアップ凸部が押し込まれる受け部と、
前記香り窓が外部に開放される香り窓開放部とを
連続するよう形成してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項9】
請求項8に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記受け部は、前記リフトアップ凸部の外形に沿った形状であり、
前記香り窓開放部は、前記受け部より幅広に形成されてなる飲料カップ用蓋体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記カバー部は、該カバー部と前記第一嵌合凹部との間に、カバー部を開位置から閉位置に移動させるカバー部側ヒンジ構造を備えてなる飲料カップ用蓋体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記押込片は、該押込片と前記第一嵌合凹部の底面との間に、前記押込片を香り窓に押し込む押込片側ヒンジ構造を備えてなる飲料カップ用蓋体。
【請求項12】
請求項11に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記カバー部側ヒンジ構造と、前記押込片側ヒンジ構造とを、対向姿勢に配置してなる飲料カップ用蓋体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
前記蓋本体は、プラスチックよりなる飲料カップ用蓋体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体であって、
該飲料カップ用蓋体が閉塞する飲料カップは、暖かい飲料用である飲料カップ用蓋体。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の飲料カップ用蓋体を備える飲料用カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料カップ用蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カフェ、コンビニエンスストア等で提供されたり、持ち帰り用として購入されたりする飲料は、使い捨てのカップに入れられているものも多い。このようなカップには通常、プラスチック製の蓋が使用され、持ち運びの際に飲料がカップからこぼれるのを防いでいる。また、内容物が暖かい飲料であれば、このような蓋をすることにより、飲料が急に冷えてしまうことを防ぐこともできる。
【0003】
特許文献1に示す飲料用カップの蓋900は、
図10に示すように、飲み口を開閉するタブ901と、タブ901の上面に設けられている突起902と、平面視においてタブ901の上方に設けられている凹部903とを備えている。カップが使用されていないとき、蓋900の飲み口をタブ901が塞いでいる。一方、使用者がカップから飲料を飲もうとするとき、凹部903に突起902を押し込んで掛止める。これにより、飲み口を開口して使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の飲料用カップの蓋は、飲み口が比較的小さいため、飲料の香りを楽しむことができなかった。例えばコーヒーを飲む際には、コーヒーそのもののおいしさに加えて、コーヒーの香りを楽しみたいという要求が存在する。蓋のないカップ、例えばマグカップであれば、マグカップの上面からコーヒーの香りが拡がるので、コーヒーを飲もうとユーザがマグカップを口元に近付けると、コーヒーの香りがユーザの鼻に至ってこれを楽しむことができる。
【0006】
しかしながら、飲料用カップに蓋をしてしまうと、香りが蓋で閉じ込められてしまい、これを感じることができない。特に上述した飲料用カップの蓋では、不用意な液漏れを防ぐために飲み口の開口面積を小さくしている。この結果、飲み口から香りが漏れる量も少なくなってしまうという問題があった。かといって、飲み口を大きく開口すると、今度は不用意な液漏れのリスクが高まる。このように、飲料の香りを楽しむことと液漏れを防ぐこととは、相反する特性を有することから、両方の要求を満たすものは従来存在しなかった。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的の一は、カップから飲料が漏れにくい構造は維持しつつ、カップ内の飲料の香りをも楽しむことができるようにした飲料カップ用蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
本発明の第1の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、飲料カップの開口端を閉塞する蓋体であって、蓋本体と、飲み口となる開口部を一部に形成した周縁部と、飲料カップ非使用時に前記開口部を閉塞する閉位置に、飲料カップ使用時に前記開口部を開放する開位置に、それぞれ位置されるカバー部と、前記カバー部の上面に設けられるリフトアップ凸部と、前記開口部に隣接して形成され、底面に香り窓を形成した第一嵌合凹部と、前記香り窓を閉塞する押込片と、を備え、前記カバー部が閉位置にある姿勢で、前記カバー部は前記開口部を閉塞し、前記リフトアップ凸部は前記カバー部の上面から上方向に突出し、前記カバー部が開位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部は前記第一嵌合凹部の内側に押し込まれ、前記押込片に接触して押し込むことにより、前記香り窓を開放するよう構成することができる。上記構成により、飲料カップ非使用時は、カバー部で飲み口である開口部を塞ぐため、飲料が飲料カップからこぼれたり、暖かい飲料であれば、冷えたりすることの回避を図ることができる。また、飲料カップ使用時には、開口部を開放すると同時に香り窓も開放される。これにより、開口部を通じてだけでなく、香り窓を通じても飲料の香りがもれる。したがって、使用者は通常のワンプッシュの簡単な動作で、通常の香り窓を設けない飲料カップより飲料の香りを楽しむことができる。
【0009】
また、第2の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記構成に加えて、前記第一嵌合凹部を、前記開口部から、前記飲料カップ用蓋体の中心方向に向かって延長することができる。
【0010】
さらに、第3の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記第一嵌合凹部の底面を、前記開口部側から、前記飲料カップ用蓋体の中心方向に向かって上り勾配に傾斜させることができる。
【0011】
さらにまた、第4の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記蓋本体は、前記第一嵌合凹部を底面に形成する第二嵌合凹部を形成することができる。
【0012】
さらにまた、第5の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、さらに、前記押込片の上面に、押込片側凸部を備えており、前記カバー部が開位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部が前記押込片側凸部と当接することにより前記押込片を押し込むよう構成することができる。上記構成により、押込片側凸部がリフトアップ凸部と当接することで、押込片を香り窓に押し込むことが容易となる。
【0013】
さらにまた、第6の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記押込片は、前記香り窓を閉塞する位置から下方向に30°以下傾斜されて、前記香り窓を部分的に開放することができる。上記構成により、香り窓を全開とせず、部分的に開放するため、飲料の香りを楽しみつつ、飲料が外部に漏れることの回避を図ることができる。
【0014】
さらにまた、第7の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記カバー部が閉位置にある姿勢で、前記リフトアップ凸部は、平面視矩形状であって、前記飲料カップ用蓋体に対して垂直方向に突出することができる。上記構成により、リフトアップ凸部を第一嵌合凹部に押し込む部分を大きくしているため、押し込み易くなる。さらに、押し込んだ部分を安定して第一嵌合凹部内で保持できる。
【0015】
さらにまた、第8の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記第一嵌合凹部は、前記リフトアップ凸部が押し込まれる受け部と、前記香り窓が外部に開放される香り窓開放部とを連続するよう形成することができる。
【0016】
さらにまた、第9の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記受け部は、前記リフトアップ凸部の外形に沿った形状であり、前記香り窓開放部は、前記受け部より幅広に形成することができる。上記構成により、受け部でカバー部を係止するため、受け部に含まれる香り窓の部分はカバー部で覆われ外部に開放されない。一方、香り窓開放部は受け部より幅広に形成しており、カバー部に覆われないようにしている。したがって、この香り窓開放部に含まれる香り窓のみ部分的に外部に開放される。これにより、香り窓からの香りを楽しみつつ、香り窓を開放しすぎて飲料がカップから漏れることの回避を図ることができる。
【0017】
さらにまた、第10の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記カバー部は、該カバー部と前記第一嵌合凹部との間に、カバー部を開位置から閉位置に移動させるカバー部側ヒンジ構造を備えることができる。
【0018】
さらにまた、第11の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記押込片は、該押込片と前記第一嵌合凹部の底面との間に、前記押込片を香り窓に押し込む押込片側ヒンジ構造を備えることができる。
【0019】
さらにまた、第12の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記カバー部側ヒンジ構造と、押込片側ヒンジ構造とを、対向姿勢に配置することができる。
【0020】
さらにまた、第13の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、前記蓋本体は、プラスチックより作製することができる。上記構成により、プラスチックは弾性があるため、カバー部を閉位置に復帰させた際、押込片も元の香り窓を閉塞する位置に概ね復帰する。そのため使用者が飲料を飲まない場合、開口部も香り窓も概ね閉塞され、飲料が漏れることの回避を図ることができる。
【0021】
さらにまた、第14の側面に係る飲料カップ用蓋体によれば、上記何れかの構成に加えて、該飲料カップ用蓋体が閉塞する飲料カップは、暖かい飲料用とすることができる。
【0022】
さらにまた、第15の側面に係る飲料カップによれば、上記何れかの構成を有する飲料カップ用蓋体を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1に係る飲料カップ用蓋体を用いた蓋付き飲料カップを示す分解斜視図である。
【
図2】
図1の飲料カップ用蓋体のカバー部が閉位置にある状態の斜視図である。
【
図3】
図1の飲料カップ用蓋体のカバー部が閉位置にある状態の斜視図である。
【
図4】
図2の飲料カップ用蓋体のカバー部が開位置にある状態の斜視図である。
【
図5】
図2の飲料カップ用蓋体のカバー部が開位置にある状態の斜視図である。
【
図8】
図8Aは
図3のカバー部が閉位置にある状態のVIIIA-VIIIA線端面図、
図8Bは
図3のカバー部のリフトアップ凸部を押込片の押込片側凸部に当接させた状態を示す端面図、
図8Cは
図5のカバー部が開状態にある状態を示すVIIIC-VIIIC線端面図である。
【
図9】本発明の実施形態1に係る飲料カップ用蓋体を用いた蓋付き飲料カップの使用時の状態示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の飲料カップ用蓋体の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。
【0025】
また、以下に記載される「開放」とは、開口部や香り窓の全体を外部に開放するだけでなく、一部が外部に開放されることも意味する。さらに、「閉塞」又は「塞ぐ」とは、開口部や香り窓を完全に塞ぐことだけでなく、開口部や香り窓の開口部分を部分的に覆うということも意味している。
[実施形態1]
【0026】
本発明の実施形態1に係る飲料カップ用蓋体100を
図1~
図9に示す。これらの図において、
図1は本発明の実施形態1に係る飲料カップ用蓋体を用いた蓋付き飲料カップを示す分解斜視図、
図2は
図1の飲料カップ用蓋体のカバー部が閉位置にある状態の斜視図、
図3は
図1の飲料カップ用蓋体のカバー部が閉位置にある状態の斜視図、
図4は
図2の飲料カップ用蓋体のカバー部が開位置にある状態の斜視図、
図5は
図2の飲料カップ用蓋体のカバー部が開位置にある状態の斜視図、
図6は
図2の飲料カップ用蓋体の平面図、
図7は
図4の飲料カップ用蓋体の平面図、
図8Aは
図3のカバー部が閉位置にある状態のVIIIA-VIIIA線端面図、
図8Bは
図3のカバー部のリフトアップ凸部を押込片の押込片側凸部に当接させた状態を示す端面図、
図8Cは
図5のカバー部が開状態にある状態を示すVIIIC-VIIIC線端面図、
図9は本発明の実施形態1に係る飲料カップ用蓋体を用いた蓋付き飲料カップの使用時の状態示す斜視図を、それぞれ示している。
(飲料カップ200)
【0027】
図1に示す蓋付き飲料カップ1000は、飲料カップ用蓋体100と、飲料カップ200とを備える。飲料カップ200は、上端を開口した有底筒状で、飲料カップ200の開口端210に飲料カップ用蓋体100が嵌合される。飲料カップ200は、有底筒状とした紙製やプラスチック製のものが利用される。
図1の例では、外観を円筒状とした飲料カップ200を用いたが、四角柱状や多角柱状など、任意の形状の飲料カップを用いることができ、飲料カップ用蓋体は飲料カップの形状に応じて設計される。
(飲料カップ用蓋体100)
【0028】
飲料カップ用蓋体100は、飲料カップ200の蓋として用いられる。この飲料カップ用蓋体100は、
図1に示すように、蓋本体10と、その周辺に形成された縁部20で構成される。蓋本体10は、飲料カップ200の開口端210を閉塞できる大きさ及び形状に形成される。また縁部20は、
図8A~
図8Cの端面図に示すように下側に開口した溝部21を円環状に形成しており、飲料カップ200の開口端210を嵌入して保持状態とすることができる。さらに蓋本体10を、縁部20よりも高くなるように段差状に形成することで、蓋本体10に形成した飲み口(後述する開口部30)を縁部20よりも突出させて飲み易くできる。
【0029】
この蓋本体10と縁部20は、プラスチックなどの樹脂材料で一体に成形される。また、生分解性のプラスチックとしてもよい。あるいは紙製やタルク製などとしてもよい。
【0030】
飲料カップ用蓋体100は非透明とすることが好ましい。内容物が暖かい飲料の場合は、保温性を高めることができる。ただ本願発明の飲料カップ用蓋体は、非透明に限定されるものではない。透明とすることで、飲料カップの内容物を確認し易くなる。このように、内容物や使用の目的により、透明度や飲料カップの着色、材質等を適宜選択し得る。
【0031】
図2の斜視図に示すように、蓋本体10は、縁部20の内側に、周縁部11と、蓋本体凹部12と、底面13とを形成している。また底面13には、これよりも窪んだ第二嵌合凹部80が形成され、さらに第二嵌合凹部80には、これよりも窪んだ第一嵌合凹部60が形成されている。
【0032】
周縁部11は、縁部20よりも高くなるように上方に突出させている。また蓋本体凹部12は、周縁部11から窪ませている。第二嵌合凹部80は、蓋本体凹部12の底面13からさらに窪ませた平面状としている。
【0033】
一方、蓋本体10の一部には開口部30が形成されている。開口部30は、蓋本体10の平面視において偏心して設けられている。
図6や
図7の平面図に示す例では、周縁部11の一部(図において下側)に形成されている。また開口部30は、カバー部40で覆われている。
【0034】
また、第二嵌合凹部80の底面81には、第一嵌合凹部60が形成されている。さらに第一嵌合凹部60の底面61には、香り窓90が形成されている。香り窓90は、開口部30に隣接して、蓋本体10のほぼ中央に開口されている。また香り窓90は、押込片70で閉塞されている。
(開口部30)
【0035】
図4、
図7に示すように、蓋本体10の周縁部11の一部には、飲み口となる開口部30が形成されている。開口部30は、概ね矩形状に形成されている。
図7の例では、逆等脚台形状とし、底辺を周縁部11に沿って若干湾曲させている。ただ開口部30の形状はこれに限定されず、多角形状や楕円形状等、任意の形状を採用できる。
【0036】
この開口部30は、蓋本体凹部12の底面13の一端部から周縁部11の外周縁11aに向かって、周縁部11を一部切断して形成されている。また、開口部30は蓋本体凹部12の底面13と概ね同一平面上に設けられる。つまり、開口部30は、隣接する周縁部11及び周縁部11の外周縁11aの上面より一段低い位置に形成される。この開口部30と、開口部30を取り囲む周縁部11及び外周縁11aでもってカップ用蓋体の飲み口とする。このような形状にすることにより、使用者が蓋本体10に口を付けやすくし、飲料を飲みやすくできる。また、開口部30の外周端から立設するように外周縁11aを形成しているため、使用者が飲料を飲む際、開口部30と唇との間に外周縁11aが介在し、飲み物をスムーズに口に運ぶことができる。ただ、本発明の蓋本体はこのような形状に限定されるものではない。例えば、蓋本体の天面を凹部を設けず平坦としてもよい。
【0037】
この開口部30は、開閉式のカバー部40で閉塞することができる。すなわち、カバー部40は、
図2、
図3、
図6に示す開口部30を閉塞する閉位置と、
図4、
図5、
図7に示す開口部30を開放する開位置とに切り替えることができる。これにより、例えば蓋付き飲料カップ1000を持ち歩く際などにはカバー部40を閉位置として、蓋付き飲料カップ1000で保持した飲料が開口部30から漏れ出すことを防ぎつつ、飲料を飲む際には
図9の斜視図に示すように、カバー部40を開位置に切り替えることで、開口部30に口をつけてカップ200内部の飲料を飲むことが可能となる。このように、蓋付き飲料カップ1000は開口部30を閉塞状態に維持できるので、持ち運びの際などに開口部30から内部の飲料が飛び出すおそれが少ない。一方、飲料を飲む際には簡単な動作で開口部30を開位置として飲むことができ、便利に使用できる。
(カバー部40)
【0038】
カバー部40は、好ましくは蓋本体10と一体に形成される。
図2のカバー部40は、カバー部40と、第一嵌合凹部60及び第二嵌合凹部80との間に、カバー部40を開位置から閉位置に移動させるカバー部側ヒンジ構造41を備えている。そして、
図6に示すように蓋本体10に、カバー部側ヒンジ構造41を残して第一切断線50を形成することで、カバー部40をカバー部側ヒンジ構造41で開閉自在に開口部30に設けることができる。第一切断線は、予めカットしておく他、ハーフカットや切り取り線などとしてもよい。
(リフトアップ凸部42)
【0039】
またカバー部40の上面であるカバー部上面43には、リフトアップ凸部42が設けられる。リフトアップ凸部42は、カバー部40が閉位置にある姿勢で、平面視矩形状のブロック体である。また、飲料カップ用蓋体100に対して垂直方向に突出している。このように、リフトアップ凸部42は、後で述べる第一嵌合凹部60に押し込む部分を大きくしているため、第一嵌合凹部60に押し込みやすくなる。さらに、押し込んだ部分を安定して第一嵌合凹部60内で保持できる。
(第一嵌合凹部60及び第二嵌合凹部80)
【0040】
また本実施形態に係る蓋本体10は、カバー部40を開位置とした状態で保持するための係止機構を設けている。具体的には、
図2、
図3等に示すように、蓋本体凹部12の底面13に第二嵌合凹部80を、第二嵌合凹部80の底面81に第一嵌合凹部60を、それぞれ形成している。また、第一嵌合凹部60の底面61には香り窓90が形成され、香り窓90を覆うように、香り窓90を開閉する押込片70が設けられる。
【0041】
この第二嵌合凹部80は、
図6の平面図に示すように、開口部30から飲料カップ用蓋体100の中心方向に向かってやや先細りの台形状である。第二嵌合凹部80の底面81は、蓋本体10の周縁部11の上面と概ね平行である。
【0042】
第一嵌合凹部60は、リフトアップ凸部42が押し込まれる受け部62と、香り窓90が外部に開放される香り窓開放部63とを連続するよう形成している。そして、リフトアップ凸部42を受け部62に圧入して嵌合させることにより、カバー部40を開位置の状態に保持できる。このため、受け部62は、リフトアップ凸部42の外形に沿った形状としている。これにより、リフトアップ凸部42を第一嵌合凹部60に押し込みやすくなる。また、リフトアップ凸部42は受け部62より若干大きく形成して、リフトアップ凸部42を受け部62の内部に保持しやすくしている。さらに、上述したように、これらの部材を含む蓋本体10はプラスチックなどの弾性変形する樹脂材料で成形している。したがって、リフトアップ凸部42を受け部62に押し込んだり、受け部62から引き抜いたりする動作に伴いリフトアップ凸部42の形状も変形し、このような動作を繰り返し行うことができる。その結果、開口部30も開閉を繰り返し行うことができる。
【0043】
一方で、香り窓開放部63は、受け部62より幅広に形成している。さらに、第一嵌合凹部60の底面61は、開口部30側から、飲料カップ用蓋体100の中心方向に向かって上り勾配に傾斜されている。
(香り窓90)
【0044】
また、第一嵌合凹部60の底面61には香り窓90が形成される。さらに、押込片70が、香り窓90を開閉するように設けられる。香り窓90は、香り窓から飲料の香りを外部に放出できれば特に形状は限定されない。本実施形態においては、第一嵌合凹部60の外形に概ね沿って形成される。この香り窓90は、開閉式の押込片70で閉塞することができる。
(押込片70)
【0045】
押込片70は、好ましくは蓋本体10と一体に形成される。例えば、
図6に示すように、第一嵌合凹部60の底面61に、押込片側ヒンジ構造71を残して第二切断線64を形成することで、押込片70を押込片側ヒンジ構造71で開閉自在に香り窓90に設けることができる。第二切断線も、予めカットしておく他、ハーフカットや切り取り線などとしてもよい。この押込片側ヒンジ構造71の位置は特に限定されないが、本実施形態において、カバー部側ヒンジ構造41と押込片側ヒンジ構造71が、対向姿勢に配置されている。
(押込片側ヒンジ構造71)
【0046】
また、押込片70の上面には押込片側凸部72が設けられる。押込片側凸部72の形状は、後述するリフトアップ凸部42と当接できれば、特に限定されない。この押込片側凸部72を設けることにより、押込片70を香り窓90に押込みやすくできる。
(カバー部40の閉位置から開位置への移動)
【0047】
次に、カバー部40の閉位置から開位置への移動について説明する。
図2、
図3のカバー部40は、開口部30を閉塞する閉位置にある。リフトアップ凸部42は、カバー部上面43上で、飲料カップ用蓋体100に対して垂直方向に突出している。そして、使用者がリフトアップ凸部42を指で第一嵌合凹部60及び第二嵌合凹部80に向かって倒すことにより、リフトアップ凸部42が
図2、
図3の矢印の方向に移動し、第一嵌合凹部60の受け部62内に押し込まれる。このような動作により、カバー部40を開位置に移動することができる。
【0048】
図4、
図5は、カバー部40を倒して開口部30を開放する開位置とした状態を示している。この状態において、リフトアップ凸部42は、第一嵌合凹部60の受け部62内に保持されている。そして、押込片70はリフトアップ凸部42により香り窓90の内部であって、
図4、
図5の矢印のように下方向に押し込まれている。これにより、第一嵌合凹部60の香り窓開放部63において、香り窓90の一部を外部に開放することができる。この際、カバー部上面43が第二嵌合凹部80の底面81と当接し、第二嵌合凹部80内に保持されるようにしている。これにより、カバー部40が浮き上がりにくくなり、リフトアップ凸部42を安定して受け部62内に保持できる。
(香り窓90の開閉)
【0049】
ここで、
図8A~
図8Cの端面図を参照しながら、香り窓90の開閉をより具体的に説明する。
図8Aにおいて、カバー部40は閉位置にあり、香り窓90も押込片70により閉塞されている。そして、
図8Bのようにリフトアップ凸部42を第一嵌合凹部60に押し込むと、リフトアップ凸部42の先端部分が押込片側凸部72に当接する。さらにリフトアップ凸部42を押し込むことにより、
図8Cのようにリフトアップ凸部42が押込片側凸部72の上面を摺動しながらこれを押し込むことで、押込片側凸部72に連なった押込片70が押し下げられる結果、香り窓90の内部、つまり矢印で示す下方に押込片70が移動し、香り窓90の一部が開放される。これにより、香り窓90を通じて飲料の香りがもれるため、使用者が飲用時に、香りを楽しむことができる。特に従来のカップは、飲み口の僅かな領域しか開口されておらず、殆ど香りを楽しめないのに比べ、本実施形態に係る蓋付き飲料カップ1000では、香りの楽しむための香り窓を設けたことで、飲み口から意図しない液漏れが生じることを回避しつつも、香りを香り窓から十分に供給して、より多くの香りを享受しながら飲料を飲める環境が実現される。
【0050】
また、上述より、第一嵌合凹部60の底面61を上り勾配で傾斜して設けるようにしているため、押込片70も上り勾配で傾斜している。さらに、その上り勾配の押込片70の上面に押込片側凸部72を設けているため、リフトアップ凸部42が押込片側凸部72に当接しやすくなり、押込片70を香り窓90の内部に押し込みやすくできる。
【0051】
この押込片側凸部72は、リフトアップ凸部42と当接しやすい位置及び形状に設けられれば特に限定されない。本実施形態においては、平面視概ね矩形状であって、先端側に向かって若干先細りの形状としている。また、押込片側凸部72の形状により、押込片70を香り窓90の内部に押し込む程度を調節できる。その結果、香り窓90を開放する程度を調節できる。例えば、押込片側凸部72の高さを高くすると、押込片70は香り窓90の内部に大きく押し込まれ、香り窓90を大きく開放する。一方、押込片側凸部72の高さを低くすると、押込片70は香り窓90の内部に過度に押し込まれず、香り窓90を開放する程度が小さくなる。
【0052】
香り窓90を開放する程度は特に限定されない。本実施形態において、
図8Cに示すように、押込片70は、香り窓90を閉塞する位置から下方向移動する角度θを30°以下として、香り窓90を部分的に開放するようにしている。θが大きくなりすぎると、香り窓90を大きく開放してしまい、カップ内の飲料が香り窓90からこぼれる可能性が高くなるからである。
【0053】
なお、本実施形態において、押込片側凸部72は押込片70の上面に設けられているが、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、リフトアップ凸部の上面にさらに突起を設け、この突起でもって押込片を香り窓に押し込んでもよい。
【0054】
さらに、上述より、第一嵌合凹部60の受け部62は、リフトアップ凸部42の外形に沿った形状としている。一方、香り窓開放部63は、受け部62より幅広に形成している。
図8Cに示すように、リフトアップ凸部42が受け部62に押し込まれる際、押込片70全体が香り窓90に押し込まれるため、押込片70の外周縁にそって、香り窓90は開放される。
【0055】
ここで、
図7に示すように、受け部62でカバー部40を係止するため、受け部62に含まれる香り窓90の部分はカバー部40で覆われ外部に開放されない。一方、香り窓開放部63は受け部62より幅広に形成しており、カバー部40に覆われないようにしている。したがって、この香り窓開放部63に含まれる香り窓90のみ部分的に外部に開放される。このような形状を第一嵌合凹部60に採用することにより、香り窓90からの香りを楽しみつつ、香り窓90を開放しすぎて飲料がカップから漏れることの回避を図ることができる。
【0056】
また、開位置に移動させたカバー部40を再び閉位置に戻す際は、利用者が手でカバー部40を引き上げるなどして、閉位置に戻せばよい。これによって、閉位置から開位置への切り替えも可能となる。
【0057】
上述したように、飲料カップ用蓋体100は、可撓性を有する部材で構成することができる。好ましくは、可撓性に優れ、安価なプラスチック製とする。これによって、蓋本体10と一体に形成されたカバー部40は、外力を加えない状態では閉位置で保持される。そして、リフトアップ凸部42を受け部62に押し込むことにより、カバー部40を開位置に移動できる。この際、飲料カップ用蓋体100に弾性があれば、リフトアップ凸部42を受け部62内に押し込みやすくなる。一方で、カバー部40を第一嵌合凹部60から引き抜き、開位置から開放すると、弾性により閉位置に復帰しようとする。
【0058】
また、カバー部40を開位置から開放して、リフトアップ凸部42を押込片70から離間すると、弾性により押込片70も香り窓90を閉塞する位置に復帰しようとする。これにより、カバー部40を閉位置に復帰させ、開口部30を閉塞すると、香り窓90も閉塞される。
【0059】
このように、本願発明によれば、飲料カップ非使用時は、カバー部で飲み口である開口部を塞ぐため、飲料が飲料カップからこぼれたり、暖かい飲料であれば、冷えたりすることの回避を図ることができる。また、飲料カップ使用時には、開口部を開放すると同時に香り窓も開放される。これにより、開口部を通じてだけでなく、香り窓を通じても飲料の香りがもれる。したがって、使用者は通常のワンプッシュの簡単な動作で、通常の香り窓を設けない飲料カップより飲料の香りを楽しむことができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る飲料カップ用蓋体は、様々な飲料カップに好適に利用できる。特に、飲料が香り豊かな、例えば、ホットコーヒーである場合、飲料が漏れる心配をすることなく、簡単な操作で香りを楽しむことができる。
【符号の説明】
【0061】
1000…蓋付き飲料カップ
100…飲料カップ用蓋体
200…飲料カップ
210…開口端
10…蓋本体
11…周縁部
11a…外周縁
12…蓋本体凹部
13…底面
20…縁部
21…溝部
30…開口部
40…カバー部
41…カバー部側ヒンジ構造
42…リフトアップ凸部
43…カバー部上面
50…第一切断線
60…第一嵌合凹部
61…底面
62…受け部
63…香り窓開放部
64…第二切断線
70…押込片
71…押込片側ヒンジ構造
72…押込片側凸部
80…第二嵌合凹部
81…底面
90…香り窓
900…蓋
901…タブ
902…突起
903…凹部
θ…押込片の移動する角度