特許 7146217 保冷ボックス

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-09-26

(45)【発行日】2022-10-04

(54)【発明の名称】保冷ボックス

(51)【国際特許分類】

   B65D 81/18 20060101AFI20220927BHJP

   A61J 1/00 20060101ALI20220927BHJP

   A45C 11/00 20060101ALI20220927BHJP

   F25D 3/00 20060101ALI20220927BHJP

【ＦＩ】

B65D81/18 B

A61J1/00 430

A45C11/00 L

A45C11/00 Q

F25D3/00 D

F25D3/00 E

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2021104434

(22)【出願日】2021-06-23

【審査請求日】2021-06-23

(73)【特許権者】

【識別番号】000199979

【氏名又は名称】川上産業株式会社

(73)【特許権者】

【識別番号】517455683

【氏名又は名称】アトム技研株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100085338

【弁理士】

【氏名又は名称】赤澤 一博

(74)【代理人】

【識別番号】100148910

【弁理士】

【氏名又は名称】宮澤 岳志

(72)【発明者】

【氏名】佐藤 浩司

(72)【発明者】

【氏名】水野 博之

(72)【発明者】

【氏名】加藤 雄也

(72)【発明者】

【氏名】松本 英俊

(72)【発明者】

【氏名】田島 琢己

(72)【発明者】

【氏名】石山 昌道

【審査官】吉澤 秀明

(56)【参考文献】

【文献】特開２０１４－０００９９３（ＪＰ，Ａ）

【文献】特表昭６１－５０１７００（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－１６０８５７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－００６４６５（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６５Ｄ ８１／１８

Ａ６１Ｊ １／００

Ａ４５Ｃ １１／００

Ｆ２５Ｄ ３／００

Ｂ６５Ｄ ８１／３８

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

ワクチンが封入されたバイアルが収納されたバイアル収納ケースを収容するものであり当該バイアル収納ケース内の温度を一定時間において所定の温度以下に維持し得るワクチン輸送用の保冷ボックスであって、
発泡スチロール製のアウターボックスと、このアウターボックス内に収容され少なくとも外面側及び内面側の何れか一方の略全域にアルミフィルムが添着された気泡シートを基材にして袋状に形成されたインナーバッグと、このインナーバッグの内部空間に収容された前記バイアル収納ケースとを備えたものであり、
内部に第一の保冷体が保持された上の保冷体保持枠体と、内部に第二の保冷体が保持された下の保冷体保持枠体とを備えたものであり、
前記バイアル収納ケースが、直上に配設された前記上の保冷体保持枠体と直下に配設された前記下の保冷体保持枠体との間に挟まれた状態で、当該上下の保冷体保持枠体とともに前記内部空間に収容されているものであり、
前記バイアル収納ケースが、内部に複数の前記バイアルを収容し得る収容部が設けられた略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、
前記上の保冷体保持枠体が、前記バイアル収納ケースにおける前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ前後方向及び左右方向の幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、
前記下の保冷体保持枠体が、前記バイアル収納ケースにおける前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ前後方向及び左右方向の幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものである保冷ボックス。

【請求項2】

前記アウターボックスが、収容空間と外部空間とを連通し得る上向きに開放された開口部を有し少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する底壁及び当該底壁の周縁部から立設された少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する周壁とを一体に有するアウターボックス本体と、少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有し前記開口部を開閉可能な蓋体とを備えたものである請求項１記載の保冷ボックス。

【請求項3】

前記上の保冷体保持枠体が、前記第一の保冷体の下に配設された枠体底壁を備えたものであり、
前記枠体底壁に、前記バイアル収納ケースと前記第一の保冷体との間を連通し得る複数の連通孔が設けられている請求項１又は２記載の保冷ボックス。

【請求項4】

前記下の保冷体保持枠体が、前記第二の保冷体の上に配設された枠体天壁を備えたものであり、
前記枠体天壁に、前記バイアル収納ケースと前記第二の保冷体との間を連通し得る複数の連通孔が設けられている請求項１、２又は３記載の保冷ボックス。

【請求項5】

前記上の保冷体保持枠体及び前記下の保冷体保持枠体がそれぞれプラスチック中空板を基材として作られたものである請求項１、２、３又は４記載の保冷ボックス。

【請求項6】

前記プラスチック中空板が、プラスチック段ボール又はプラスチック気泡ボードである請求項５記載の保冷ボックス。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、ワクチンを輸送する際に使用されるワクチン輸送用の保冷ボックスに関する。

【背景技術】

【0002】

従来から、薬品や食品等の物品を保冷しつつ輸送するための保冷ボックスが知られている（例えば、特許文献１を参照）。

【0003】

ところで、近時は、新型コロナウイルスの流行を抑制するために、新型コロナウイルス感染症に対抗するためのワクチンの接種が各地において行われている。

【0004】

従前から、バイアル内に封入されたワクチンは、リユース可能な高機能の保冷箱により搬送されている。特に、新型コロナウイルス感染症に対応したワクチンを搬送する保冷箱は、大都市の大規模接種会場に対応し得るように、一度に多くのワクチンを搬送し得る大型なものであり、且つ、所定の保冷機能を確実に発揮し得る極めて高価且つ高機能な構成のものとなっている。

【0005】

ところが、このような保冷箱は、過疎地における医療機関や大病院が無いような地域では相当にオーバースペックなものである。そのため、従来の保冷箱は、導入コストや資材管理等の現実的な問題が障壁となっており、小規模の医療機関や過疎地域等においては容易に採用され難いものとなっている。

【0006】

かかる事情から、ワクチンの搬送が、専ら、大型・高価・高機能の保冷箱によって行われる状況が継続した場合には、ワクチンのスピーディーな供給に支障が生じてしまうことも懸念される。

【0007】

換言すれば、ワクチンの輸送に関しては、長時間の低温を維持し得るという所定条件を満たすとともに低コスト、且つ、使い捨ても無理なく可能であり、小規模な医療機関や過疎地域等の実情に好適に対応した保冷ボックスの登場が望まれている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0008】

【文献】特開２０２０－１２１７４１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

本発明は、以上のような事情に着目してなされたものであり、少なくとも、長時間の低温を維持し得るという所定条件を満たすとともに使い捨ても無理なく可能なワクチン輸送用の保冷ボックスを提供することにある。

【課題を解決するための手段】

【0010】

すなわち、本発明は次の構成をなしている。

【0011】

請求項１に記載の発明は、ワクチンが封入されたバイアルが収納されたバイアル収納ケースを収容するものであり当該バイアル収納ケース内の温度を一定時間において所定の温度以下に維持し得るワクチン輸送用の保冷ボックスであって、発泡スチロール製のアウターボックスと、このアウターボックス内に収容され少なくとも外面側及び内面側の何れか一方の略全域にアルミフィルムが添着された気泡シートを基材にして袋状に形成されたインナーバッグと、このインナーバッグの内部空間に収容された前記バイアル収納ケースとを備えたものであり、内部に第一の保冷体が保持された上の保冷体保持枠体と、内部に第二の保冷体が保持された下の保冷体保持枠体とを備えたものであり、前記バイアル収納ケースが、直上に配設された前記上の保冷体保持枠体と直下に配設された前記下の保冷体保持枠体との間に挟まれた状態で、当該上下の保冷体保持枠体とともに前記内部空間に収容されているものであり、前記バイアル収納ケースが、内部に複数の前記バイアルを収容し得る収容部が設けられた略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、前記上の保冷体保持枠体が、前記バイアル収納ケースにおける前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ前後方向及び左右方向の幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、前記下の保冷体保持枠体が、前記バイアル収納ケースにおける前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ前後方向及び左右方向の幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものである保冷ボックスである。

【0012】

請求項２に記載の発明は、前記アウターボックスが、収容空間と外部空間とを連通し得る上向きに開放された開口部を有し少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する底壁及び当該底壁の周縁部から立設された少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する周壁とを一体に有するアウターボックス本体と、少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有し前記開口部を開閉可能な蓋体とを備えたものである請求項１記載の保冷ボックスである。

【0014】

請求項３に記載の発明は、前記上の保冷体保持枠体が、前記第一の保冷体の下に配設された枠体底壁を備えたものであり、前記枠体底壁に、前記バイアル収納ケースと前記第一の保冷体との間を連通し得る複数の連通孔が設けられている請求項１又は２記載の保冷ボックスである。

【0015】

請求項４に記載の発明は、前記下の保冷体保持枠体が、前記第二の保冷体の上に配設された枠体天壁を備えたものであり、前記枠体天壁に、前記バイアル収納ケースと前記第二の保冷体との間を連通し得る複数の連通孔が設けられている請求項１、２又は３記載の保冷ボックスである。

【0016】

請求項５に記載の発明は、前記上の保冷体保持枠体及び前記下の保冷体保持枠体がそれぞれプラスチック中空板を基材として作られたものである請求項１、２、３又は４記載の保冷ボックスである。

【0017】

請求項６に記載の発明は、前記プラスチック中空板が、プラスチック段ボール又はプラスチック気泡ボードである請求項５記載の保冷ボックスである。

【発明の効果】

【0018】

以上説明したように本発明によれば、少なくとも、長時間の低温を維持し得るという所定条件を満たすとともに使い捨ても無理なく可能なワクチン輸送用の保冷ボックスを提供することができるものとなる。

【図面の簡単な説明】

【0019】

【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。

【図2】本発明の一実施形態を示す斜視図。

【図3】同実施形態における分解斜視図。

【図4】同実施形態における分解斜視図。

【図5】図１におけるＸ－Ｘ線断面図。

【図6】同実施形態における保冷性能試験の結果を示す表。

【発明を実施するための形態】

【0020】

以下、本発明の一実施形態を、図１～６を参照して説明する。

【0021】

この実施形態は、本発明を、ワクチン輸送用の保冷ボックス（以下、単に、「保冷ボックス」という。）に適用したものである。

【0022】

保冷ボックスは、ワクチンが封入されたバイアルＢが収納されたバイアル収納ケース３を収容するものであり当該バイアル収納ケース３内の温度を一定時間において所定の温度以下に維持し得るものである。

【0023】

具体的に言えば、保冷ボックスは、図６の実験結果に示されるように、外気温Ｔ１が、３５°Ｃの状況下において、１２時間以上、バイアル収納ケース３内の温度Ｔ２を８°Ｃ以下に維持することができるものとなっている。

【0024】

保冷ボックスは、発泡スチロール（ＥＰＳ；発泡倍率３０倍）製のアウターボックス１と、アウターボックス１内に収容され外面側の略全域にアルミフィルムＭが添着された気泡シートＵを基材にして袋状に形成されたインナーバッグ２と、インナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容されたバイアル収納ケース３、インナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容され第一の保冷体Ｓ１が保持された上の保冷体保持枠体４と、インナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容され内部に第二の保冷体Ｓ２が保持された下の保冷体保持枠体４とを備えたものである。

【0025】

そして、インナーバッグ２の内部空間ｓ２には、バイアル収納ケース３が、上の保冷体保持枠体４と下の保冷体保持枠体５との間に挟まれた状態で収容されている。

【0026】

アウターボックス１は、軽量であり断熱性に優れ、且つ、外部からの衝撃に対する耐性に優れた構成をなしている。この実施形態では、アウターボックス１の前後寸法、左右寸法、及び、上下寸法は、約２３ｃｍ、約３７ｃｍ、及び、２０ｃｍに設定されており、人が持ち運びし易い大きさに構成されている。

【0027】

アウターボックス１は、収容空間ｓ１と外部空間とを連通し得る上向きに開放された開口部ｋ１を有し、少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する底壁１１及び当該底壁１１の周縁部から立設された少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する周壁１２とを一体に有するアウターボックス本体１Ｈと、少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有しアウターボックス本体１Ｈの開口部ｋ１を開閉可能な蓋体１３とを備えたものである。

【0028】

インナーバッグ２は、気泡シートＵを用いて開口部ｋ２を有した袋状に形成されたものである。インナーバッグ２は、外面側に外部からの輻射熱を反射させるためのアルミフィルムＭがラミネートされた気泡シートＵが用いられている。インナーバッグ２は、アルミフィルムＭにより外面側が被覆された気泡シートＵの所定部分間を溶着等の接着手段により接合することにより開口部ｋ２以外の部分が密閉された袋状の形態をなしている。インナーバッグ２には、バイアル収納ケース３、及び、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２が保持された上、下の保冷体保持枠体４、５を収容し得る内部空間ｓ２が形成されている。

【0029】

インナーバッグ２に適用される気泡シートＵは、ポリエチレンにより作られたキャップフィルム、バックフィルム、及び、ライナーフィルムにより構成されたいわゆる三層構造のものである。気泡シートＵの詳細な図示については省略する。

【0030】

気泡シートＵは、多数の突起を有するキャップフィルムと、キャップフィルムの突起開放側に融着されたバックフィルムと、キャップフィルムの突起先端側に融着されたライナーフィルムとを有してなるものである。気泡シートＵは、キャップフィルム、バックフィルム、及び、ライナーフィルムの協働により、バックフィルムとライナーフィルムとの間に断熱性の向上に資する複数の空気密閉室Ｒが並び配されたものとなっている。気泡シートＵの厚み寸法は、２ｍｍ～４ｍｍに設定されている。

【0031】

バイアル収納ケース３は、内部に複数のバイアルＢを収容し得るバイアル収容部ｓ３が設けられた略矩形ボックス状の外形を構成したものである。

【0032】

バイアル収納ケース３は、ケース底壁３１と、ケース底壁３１の周縁部から立設されたケース周壁３２と、ケース周壁３２の上縁部に形成された開口部ｋ３を開閉可能なケース天壁３３とを備えたものである。そして、バイアル収納ケース３には、ケース底壁３１、ケース周壁３２、及び、ケース天壁３３により囲まれたバイアル収容部ｓ３が設けられている。バイアル収容部ｓ３には、バイアルＢを保持し得る複数の保持孔ｇｈが穿設された保持板Ｇが配設されている。

【0033】

この実施形態では、バイアル収納ケース３は、一枚のプラスチック中空板を所定箇所により折り曲げるとともに凹凸関係のある所定の部位同士を組み付けることにより構成されている。

【0034】

バイアル収納ケース３の基材となるプラスチック中空板のより具体的なものとしては、ポリプロピレン又はポリオレフィンを主材とし、内部に筒状の中空部分を有するプラスチック段ボールや内部に複数の空気密閉室を有するプラスチック気泡ボードを挙げることができる。

【0035】

続いて、上の保冷体保持枠体４及び下の保冷体保持枠体５について説明する。上の保冷体保持枠体４と下の保冷体保持枠体５は、バイアル収納ケース３に対する配設箇所が異なる（上の保冷体保持枠体４はバイアル収納ケース３の直上に配設され、下の保冷体保持枠体５はバイアル収納ケース３の直下に配設される。）ものの構造は略同じなものであるため、以下、双方をまとめて説明する。

【0036】

上、下の保冷体保持枠体４、５は、バイアル収納ケース３における前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ前後方向及び左右方向の幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものである。

【0037】

上、下の保冷体保持枠体４、５は、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２の下に配設された枠体底壁４１、５１と、枠体底壁４１、５１の周縁部から立設され第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２の周囲を囲む枠体周壁４２、５２と、枠体周壁４２、５２の上縁部に形成された枠体開口部ｋ４、ｋ５を開閉可能であり第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２の上に配設された枠体天壁４３、５３とを備えたものである。そして、上、下の保冷体保持枠体４、５は、枠体底壁４１、５１、枠体周壁４２、５２、及び、枠体天壁４３、５３により囲まれた保冷体収容空間ｓ４、ｓ５が形成されている。

【0038】

上、下の保冷体保持枠体４、５における枠体底壁４１、５１、及び、枠体天壁４３、５３には、矩形状をなす上下方向に貫通した複数の下連通孔４Ｌ、５Ｌ、及び、上連通孔４Ｕ、５Ｕが設けられている。

【0039】

上の保冷体保持枠体４における枠体底壁４１に設けられた下連通孔４Ｌは、バイアル収納ケース３のケース天壁３３と第一の保冷体Ｓ１との間を連通し得るものであり、下の保冷体保持枠体５における枠体天壁５３に設けられた上連通孔５Ｕは、バイアル収納ケース３のケース底壁３１と第二の保冷体Ｓ２との間を連通し得るものとなっている。

【0040】

上、下の保冷体保持枠体４、５における枠体底壁４１、５１に上下方向に貫通した複数の下連通孔４Ｌ、５Ｌは、枠体底壁４１、５１の短手方向に延びてなる長方形状のものであり、且つ、枠体底壁４１、５１の長手方向に一定の間隔をあけて複数すなわち五つ並び配されている。

【0041】

上、下の保冷体保持枠体４、５における枠体周壁４２、５２の前後には、それぞれ左右に離間させて横長をなし前後方向に貫通した一対の横連通孔４Ｍ、５Ｍが設けられている。

【0042】

上、下の保冷体保持枠体４、５における枠体天壁４３、５３に上下方向に貫通した複数の上連通孔４Ｕ、５Ｕは、枠体天壁４３、５３の短手方向に延びてなる長方形状のものであり、且つ、枠体天壁４３、５３の長手方向に一定の間隔をあけて複数すなわち五つ並び配されている。

【0043】

この実施形態では、上、下の保冷体保持枠体４、５は、一枚のプラスチック中空板を所定箇所において折り曲げるとともに凹凸関係のある所定の部位同士を組み付けることにより構成されている。

【0044】

上、下の保冷体保持枠体４、５の基材となるプラスチック中空板のより具体的なものとしては、ポリプロピレン又はポリオレフィンを主材とし、内部に筒状の中空部分を有するプラスチック段ボールや内部に複数の空気密閉室を有するプラスチック気泡ボードを挙げることができる。

【0045】

第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２は、使用前に冷凍庫等の冷凍手段により冷凍された上で使用されるものである。第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２は、インナーバッグ２における内部空間ｓ２の低温環境を実現するためのものである。

【0046】

第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２は内部空間ｓ２の低温環境を実現し得るものあれば、どのような構成のものであっても構わないが、この実施形態では、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２として、アトム技研株式会社製のＩＣＥＥＮＥＲＧＹ（登録商標）が使用されている。

【0047】

ここで、この実施形態に適用されているアトム技研株式会社製のＩＣＥＥＮＥＲＧＹ（登録商標）は、凝固・融解温度が０°Ｃを超えることを特徴とするものである。より具体的言えば、この実施形態に適用される第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２は、凝固・融解温度が０°Ｃを超えることを特徴とし、融解温度が－２５°Ｃから０°Ｃとするものである。また、融解熱は、日本工業規格ＪＩＳ Ｋ ０１２９「熱分析通則」の関連規格に準じた方法により測定された数値が、２２０（Ｊ／ｇ）から３２０（Ｊ／ｇ）の範囲のものである。

【0048】

なお、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２は、上、下の保冷体保持枠体４、５における保冷体収容空間ｓ４、ｓ５に収容され一定の形状が保持された状態のまま、冷凍庫内において冷凍されるようになっている。つまり、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２が柔らかく保形性が悪いものであっても、上、下の保冷体保持枠体４、５に保持されたまま冷凍させることができるため、使い勝手に優れたものとなっている。

【0049】

＜保冷性能試験＞
保冷性能試験は、本実施形態の保冷ボックスを、外気温Ｔ１が３５°Ｃに設定された部屋内に２４時間設置し、その状況下において、バイアル収納ケース３内の温度Ｔ２の変化を確認したものである。図６に示すように、本実施形態の保冷ボックスは、１２時間以上、バイアル収納ケース３内の温度Ｔ２を８°Ｃ以下に維持することができるものとなっている。

【0050】

以上説明したように、本実施形態に係るワクチン輸送用の保冷ボックスは、ワクチンが封入されたバイアルＢが収納されたバイアル収納ケース３を収容するものであり当該バイアル収納ケース３内の温度を一定時間（１２時間）において所定の温度以下（８°Ｃ以下）に維持し得るものである。

【0051】

そして、保冷ボックスは、発泡スチロール製のアウターボックス１と、アウターボックス１内に収容され少なくとも外面側の略全域にアルミフィルムＭが添着された気泡シートＵを基材にして袋状に形成されたインナーバッグ２と、インナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容されたバイアル収納ケース３とを備えたものである。

【0052】

第一の保冷体Ｓ１が保持された上の保冷体保持枠体４と、内部に第二の保冷体Ｓ２が保持された下の保冷体保持枠体５とを備えたものであり、バイアル収納ケース３が、上の保冷体保持枠体４と下の保冷体保持枠体５との間に挟まれた状態で、インナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容されている。

【0053】

このため、本実施形態であれば、長時間の低温（１２時間以上・８°Ｃ以下）を維持し得るという所定条件を満たすとともに使い捨ても無理なく可能なワクチン輸送用の保冷ボックスを提供することができるものとなる。

【0054】

つまり、発泡スチロール製のアウターボックス１内に、気泡シートＵを基材にしたインナーバッグ２が収容されており、更に、インナーバッグ２の中にバイアル収納ケース３を収容した構成をなしている。そのため、アウターボックス１内に配設されたインナーバッグ２がバイアル収納ケース３に対する断熱を極めて好適に実現し得るものとなっている。しかも、アウターボックス１やインナーバッグ２は、使い捨ても無理なく可能な構成のものであるため、再利用や資材管理等について気にすることなくワクチン接種という一定時間だけの目的に保冷ボックスを利用し得るものとなっている。

【0055】

また、インナーバッグ２は、複数の空気密閉室Ｒを配した気泡シートＵにより構成されているため断熱性に優れたものとなっている。インナーバッグ２は、気泡シートＵの外面側の略全域にアルミフィルムＭがラミネートされている。そのため、アルミフィルムＭに基づいて外部からの輻射熱を好適に反射し得るものとなり、インナーバッグ２内に配設された第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２の融解温度を可及的に遅延させるものとなっている。

【0056】

バイアル収納ケース３内のバイアルＢが、上の保冷体保持枠体４と下の保冷体保持枠体５との間にサンドイッチされた状態で保冷されている。そのため、バイアル収納ケース３内のバイアルＢは上下方向から極めて好適に保冷されるものとなっている。また、保冷に好適なサンドイッチ式の冷却構造をなしているため、第一、第二の保冷体Ｓ１、Ｓ２の保冷力に依存するだけで（他の保冷体を過剰に投入させる必要なく）、効率よくバイアルＢに対する所定条件を達成し得る保冷力を発揮し得るものとなっている。

【0057】

アウターボックス１が、収容空間ｓ１と外部空間とを連通し得る上向きに開放された開口部ｋ１を有し少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する底壁１１及び当該底壁１１の周縁部から立設された少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有する周壁１２とを一体に有するアウターボックス本体１Ｈと、少なくとも３ｃｍ以上の厚み寸法を有し開口部ｋ１を開閉可能な蓋体１３とを備えたものである。

【0058】

このため、外部空間との断熱性に優れた厚み寸法を備えるとともにアウターボックス本体１Ｈに対して蓋体１３を開閉可能な構成により、ワクチンのアウターボックス１内に対する収容作業、及び、ワクチンのアウターボックス１内からの取り出し作業を好適に行い得るものとなる。

【0059】

バイアル収納ケース３が、内部に複数のバイアルＢを収容し得るバイアル収容部ｓ３が設けられた略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、上の保冷体保持枠体４が、バイアル収納ケース３における前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものであり、下の保冷体保持枠体５が、バイアル収納ケース３における前後方向及び左右方向の幅寸法と略同じ幅寸法に設定された略矩形ボックス状の外形を構成したものである。

【0060】

このため、バイアル収納ケース３内に収容された複数のバイアルＢを第一の保冷体Ｓ１を保持する上の保冷体保持枠体４及び第二の保冷体Ｓ２を保持する下の保冷体保持枠体５によって、好適に保冷し得るものとなっている。

【0061】

上の保冷体保持枠体４が、第一の保冷体Ｓ１の下に配設された枠体底壁４１を備えたものであり、枠体底壁４１に、バイアル収納ケース３と第一の保冷体Ｓ１との間を連通し得る複数の下連通孔４Ｌが設けられている。

【0062】

このため、第一の保冷体Ｓ１により生成された冷気がバイアル収納ケース３に対して好適に伝達され得るものとなる。

【0063】

下の保冷体保持枠体５が、第二の保冷体Ｓ２の上に配設された枠体天壁５３を備えたものであり、枠体天壁５３に、バイアル収納ケース３と第二の保冷体Ｓ２との間を連通し得る複数の上連通孔５Ｕが設けられている。

【0064】

このため、第二の保冷体Ｓ２により生成された冷気がバイアル収納ケース３に対して好適に伝達され得るものとなる。

【0065】

上の保冷体保持枠体４及び下の保冷体保持枠体５がそれぞれプラスチック中空板を基材として作られたものである。

【0066】

このため、低コストでありながら高い断熱性をもつプラスチック中空板を基材として、上、下の保冷体保持枠体４、５が構成されたものとなっている。

【0067】

プラスチック中空板が、プラスチック段ボール又はプラスチック気泡ボードであるため、断熱性に優れた好適な構成のものとなっている。

【0068】

なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。

【0069】

インナーバッグのアルミフィルムは、外面側及び内面側における双方の略全域に設けられたものであってもよいし、外面側及び内面側の何れか一方の略全域に設けられたものであればよい。

【0070】

バイアル収納ケースは、プラスチック中空板により構成されたものに限られるものではなく、他のケースに収容されたものであってもよい。

【0071】

上、下の保冷体保持枠体は、プラスチック中空板により構成されたものに限られるものではなく、他の材質のものにより構成されたものであってもよい。

【0072】

アウターボックスの形状や大きさについては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜の構成のものを適用することができる。

【0075】

上、下の保冷体保持枠体に設けられた連通孔の形状は、適宜の形状を採用することができるのは言うまでもない。

【0076】

その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。

【符号の説明】

【0077】

１…アウターボックス
２…インナーバッグ
３…バイアル収納ケース
４…上の保冷体保持枠体
５…下の保冷体保持枠体
Ｓ１、Ｓ２…第一、第二の保冷体
Ｍ…アルミフィルム
Ｕ…気泡シート

【要約】

【課題】長時間の低温を維持し得るという所定条件を満たすとともに使い捨ても無理なく可能なワクチン輸送用の保冷ボックスを提供する。
【解決手段】ワクチンが封入されたバイアルＢが収納されたバイアル収納ケース３を収容するものであり当該バイアル収納ケース３内の温度を一定時間において所定の温度以下に維持し得るワクチン輸送用の保冷ボックスであって、バイアル収納ケース３が、上の保冷体保持枠体４と下の保冷体保持枠体５との間に挟まれた状態で、アウターボックス１に収容されたインナーバッグ２の内部空間ｓ２に収容されている。
【選択図】図２

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】