(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20220927BHJP
【FI】
G06T19/00 600
(21)【出願番号】P 2022014234
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2022-02-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522044593
【氏名又は名称】イワキテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399105715
【氏名又は名称】株式会社インフォマティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【氏名又は名称】信末 孝之
(74)【代理人】
【識別番号】100074055
【氏名又は名称】三原 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 雄一
(72)【発明者】
【氏名】島本 啓生
(72)【発明者】
【氏名】池田 昌隆
(72)【発明者】
【氏名】金野 幸治
【審査官】松永 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-128768(JP,A)
【文献】特開2021-049532(JP,A)
【文献】松尾 宏平,2306 造船における拡張現実感技術を用いた作業支援、現場からの設計情報操作に関する取り組み,第25回 設計工学・システム部門講演会講演論文集,2015年09月,p.1-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00-19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システムであって、
前記柱状治具の高さを示す数字を含む
3次元の位置情報である設置情報を
、複数の柱状治具の格子状マス目の位置および各マス目に示された柱状治具の高さを示す数字が示された2次元の図面から
OCRで読み取る設置情報読取手段と、
前記読み取った設置情報から前記柱状治具の高さを示す数字を含む
所定の座標系及び縮尺を有する3次元データを生成する3次元データ生成手段と、
前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する前記柱状治具の高さを示す数字を含む投影用モデルを生成する投影用モデル生成手段と、
前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャン手段と、
前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影手段と、
を含むことを特徴とする船舶用図面投影システム。
【請求項2】
船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影方法であって、
前記柱状治具の高さを示す数字を含む
3次元の位置情報である設置情報を
、複数の柱状治具の格子状マス目の位置および各マス目に示された柱状治具の高さを示す数字が示された2次元の図面から
OCRで読み取る設置情報読取ステップと、
前記読み取った設置情報から前記柱状治具の高さを示す数字を含む
所定の座標系及び縮尺を有する3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、
前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する前記柱状治具の高さを示す数字を含む投影用モデルを生成する投影用モデル生成ステップと、
前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャンステップと、
前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影ステップと、
を含むことを特徴とする船舶用図面投影方法。
【請求項3】
船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システムに、
前記柱状治具の高さを示す数字を含む
3次元の位置情報である設置情報を
、複数の柱状治具の格子状マス目の位置および各マス目に示された柱状治具の高さを示す数字が示された2次元の図面から
OCRで読み取る設置情報読取ステップと、
前記読み取った設置情報から前記柱状治具の高さを示す数字を含む
所定の座標系及び縮尺を有する3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、
前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する前記柱状治具の高さを示す数字を含む投影用モデルを生成する投影用モデル生成ステップと、
前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャンステップと、
前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影ステップと、
を実行させるための船舶用図面投影プログラム。
【請求項4】
請求項1に記載の船舶用図面投影システムを用いた柱状治具の高さ調整方法であって、
前記設置情報読取手段が、前記柱状治具の高さを示す数字を含む3次元の位置情報である設置情報を、複数の柱状治具の格子状マス目の位置および各マス目に示された柱状治具の高さを示す数字が示された2次元の図面からOCRで読み取る設置情報読取ステップと、
前記3次元データ生成手段が、前記読み取った設置情報から前記柱状治具の高さを示す数字を含む所定の座標系及び縮尺を有する3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、
前記投影用モデル生成手段が、前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する前記柱状治具の高さを示す数字を含む投影用モデルを生成する投影用モデル生成ステップと、
前記空間スキャン手段が、前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャンステップと、
前記投影手段が、前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影ステップと、
により、現実空間に前記柱状治具の高さを示す数字を表示し、
作業者が、表示された数字に基づいて、前記柱状治具の高さを調整することを特徴とする柱状治具の高さ調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の造船業では、船体を区画や構造ごとに分割したパーツ(船体ブロック)をそれぞれ製造し、建造ドックにおいて複数のブロックを繋ぎ合わせる工法が行われている。パーツとなる船体ブロックの製造時には、船体外板部分を下側にした反転や横倒しの状態で設置されるが、船体外板は複雑に曲がっている部分が多いため、船体外板の曲がりに応じた柱状治具により支持するようになっている。
【0003】
図7は、船体ブロックの支持状態を示す図である。船体ブロック5は複数の柱状治具6により支持されており、各々の柱状治具6は船体ブロック5の外板の曲がりに応じた高さに調整されている。
図8に示すように、柱状治具6は筒体61及び柱体62から構成されており、筒体61の内部に柱体62を挿通させて所望の高さに調整した後、穴63に通したピンで固定するようになっている。なお、柱状治具には、アングル、H鋼、C型鋼等を地面に溶接等により固定して必要な高さで切断するものもある。
【0004】
各々の柱状治具6の設置情報(3次元の位置情報)は、例えば造船会社から船体ブロック製造会社に対して提供される図面(外板治具表)により得られる。
図9は、柱状治具6の設置情報を示した図面の概略を示すものである。
図9に示すように、図面1には予め定められた間隔で格子状に配置された縦横の交差した各々の点に柱状治具6の高さが記載されており、各々の柱状治具6の設置情報が得られるようになっている。なお、柱状治具6は図示しない横架材と組み合わせた架台として構成される。
【0005】
柱状治具6の高さ調整にあたっては、図面1の設置情報に基づいて、まず柱状治具6の各々に手書きで高さを記入する。そして、記入された寸法通りに各々の柱状治具6の高さを調整する。
【0006】
一方、現実空間に位置や縮尺を合わせて図面情報を投影することが可能な図面投影システムが提案されている。例えば、特許文献1には、現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャン手段111と、図面データを現実空間に合わせてスケーリングする投影画像生成手段113と、スケーリングされた図面データを現実空間にマッピングして表示する投影手段115とを含む図面投影システム100に関する発明が記載されており、3次元の図面データを現実空間に重畳して表示するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の柱状治具の高さ調整は、図面の設置情報に基づいて、まず柱状治具の各々に手書きで高さを記入する必要があり、作業に長時間を要していた。特に、設置情報が記載された図面は複雑であり、ある程度の経験のある作業者でなければ効率的な作業が困難であった。また、記入された寸法を一つ一つ読み取りながら高さを調整していく作業も非効率的であった。
【0009】
一方、特許文献1に記載された図面投影システムでは、建設現場での使用が提案されているものの、造船業への適用については言及されておらず、そのための情報処理についての記載もない。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、船体ブロックを支持する柱状治具の高さを効率的に調整することの可能な、船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の船舶用図面投影システムは、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システムであって、前記柱状治具の設置情報を図面から読み取る設置情報読取手段と、前記読み取った設置情報から3次元データを生成する3次元データ生成手段と、前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する投影用モデルを生成する投影用モデル生成手段と、前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャン手段と、前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影手段と、を含むことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の船舶用図面投影方法は、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影方法であって、前記柱状治具の設置情報を図面から読み取る設置情報読取ステップと、前記読み取った設置情報から3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する投影用モデルを生成する投影用モデル生成ステップと、前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャンステップと、前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影ステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の船舶用図面投影プログラムは、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システムに、前記柱状治具の設置情報を図面から読み取る設置情報読取ステップと、前記読み取った設置情報から3次元データを生成する3次元データ生成ステップと、前記生成した3次元データから前記現実空間に投影する投影用モデルを生成する投影用モデル生成ステップと、前記現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャンステップと、前記生成した投影用モデルを前記認識した空間形状に合わせて前記現実空間に重畳して仮想的に表示する投影ステップと、を実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の船舶用図面投影システムは、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システムである。そして、設置情報読取手段が柱状治具の設置情報を図面から読み取り、3次元データ生成手段が設置情報から3次元データを生成し、投影用モデル生成手段が3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成するようになっているので、作業者が図面に記載された情報を一つ一つ確認する必要がなく、経験の少ない作業者であっても対応することができる。また、空間スキャン手段が現実空間をスキャンして空間形状を認識し、投影手段が投影用モデルを空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示するようになっているので、作業者は表示された映像の情報に基づいて、各々の柱状治具の高さを直接調整することができる。従って、柱状治具への手書きでの記入作業や、記入された寸法を一つ一つ読み取りながら高さを調整する作業が不要であり、短時間で効率的な作業が可能である。
【0015】
本発明の船舶用図面投影方法は、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影方法である。そして、設置情報読取ステップで柱状治具の設置情報を図面から読み取り、3次元データ生成ステップで設置情報から3次元データを生成し、投影用モデル生成ステップで3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成するようになっているので、作業者が図面に記載された情報を一つ一つ確認する必要がなく、経験の少ない作業者であっても対応することができる。また、空間スキャンステップで現実空間をスキャンして空間形状を認識し、投影ステップで投影用モデルを空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示するようになっているので、作業者は表示された映像の情報に基づいて、各々の柱状治具の高さを直接調整することができる。従って、柱状治具への手書きでの記入作業や、記入された寸法を一つ一つ読み取りながら高さを調整する作業が不要であり、短時間で効率的な作業が可能である。
【0016】
本発明の船舶用図面投影プログラムは、上記本発明の船舶用図面投影システムに上記本発明の船舶用図面投影方法を実行させることができるプログラムである。
【0017】
このように、本発明によれば、船体ブロックを支持する柱状治具の高さを効率的に調整することの可能な、船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る船舶用図面投影システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る船舶用図面投影方法のフローチャートである。
【
図5】(A)投影装置を示す斜視図、(B)投影装置の装着状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、
図1乃至
図9を参照して、本発明の実施形態に係る船舶用図面投影システム及び船舶用図面投影方法について説明する。なお、本実施形態に係る船舶用図面投影方法は、以下に示す各ステップを実行させるプログラムによって、一つ又は複数の情報処理装置を船舶用図面投影システムとして機能させることにより実現することができる。
【0020】
本実施形態に係る船舶用図面投影システム100は、船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影するものである。すなわち、
図7及び
図8に示す船体ブロック5を支持する複数の柱状治具6の高さを調整するために、
図9に示す図面1に記載された設置情報を現実空間に重畳して投影するものである。なお、柱状治具は、アングル、H鋼、C型鋼等を地面に溶接等により固定して必要な高さで切断するものなど、高さ調整ができるものであれば特に限定されない。
【0021】
図1は、本実施形態に係る船舶用図面投影システム100の構成を示すブロック図である。船舶用図面投影ステム100は、管理装置10及び投影装置20,30から構成されている。管理装置10と投影装置20,30とは有線又は無線により通信可能に接続されている。
【0022】
管理装置10は、例えばパソコンであり、設置情報読取手段101、3次元データ生成手段102及び投影用モデル生成手段103を有している。
【0023】
設置情報読取手段101は、柱状治具6の設置情報(3次元の位置情報)を図面1から読み取るものである。例えば、紙媒体の図面1をOCRで読み取ることもできるし、PDFファイルの図面1をOCRで読み取ることもできる。読み取った設置情報は、
図4に示す設置情報4として数値化される。設置情報4は、複数の柱状治具6の格子状マス目の位置を示すA~E、1~4の符号と、各マス目に示された柱状治具6の高さを示す数字から構成されている。例えば、A-1のマス目に位置する柱状治具6に高さは725となっている。なお、数値化した設置情報4について、必要により手動で数値の追加、削除、変更を行うようにしてもよい。
【0024】
3次元データ生成手段102は、設置情報読取手段101で読み取った設置情報から3次元データを生成するものである。生成する3次元データは、後述する投影装置20,30によって現実空間に重畳して投影される映像の基礎となる、所定の座標系及び縮尺を有するデータであって、データ形式は特に限定されないが、例えばDAEファイル形式で生成することができる。
【0025】
3次元データには、複数の柱状治具6の位置を示す情報として、格子状のグリッド線、位置を示す符号(A~E、1~4)、柱状治具6の位置と高さを視覚的に示すための柱状の線、柱状治具6の高さを示す数字等を含ませることができる。また、各柱状治具の頂点を結ぶ船体断面線を含ませることもできる。さらに、柱状治具6を横架材と組み合わせた架台として構成する場合には、架台の3次元データも含ませることができる。
【0026】
投影用モデル生成手段103は、3次元データ生成手段102で生成した3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成するものである。投影用モデルの形式は特に限定されるものではないが、投影画像の品質向上や処理負荷低減の観点からは、適切なデータ変換を行うことが好ましい。データ変換の方法については、例えば特開2018-163466号公報に記載された公知技術を用いることができる。生成した投影用モデルは、投影装置20,30に送信される。なお、投影用モデルには、現実空間に重畳して投影する際に基準となる原点情報(後述するARマーカー3の位置や向きを定義する情報)が含まれている。
【0027】
投影装置20は、スマートフォンやタブレットである。また投影装置30は、例えば
図5に示すような、作業者2の頭部に装着する眼鏡型のウェアラブル端末である。投影装置20,30は、空間スキャン手段104及び投影手段105を有している。なお、本実施形態では投影装置20,30を2種類として、どちらの投影装置も使用可能な構成としているが、いずれかを1つの投影装置だけを使用する構成としてもよい。
【0028】
空間スキャン手段104は、現実空間をスキャンして空間形状を認識するものである。また、投影手段105は、投影用モデルを空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示するものである。管理装置10から送信された投影用モデルは、空間スキャン手段104が認識した空間形状に合わせてスケーリングされるとともに、投影用モデルに含まれる原点情報を基準として現実空間に投影される。
【0029】
次に、船舶用図面投影システム100による船舶用図面投影方法について説明する。
図2は船舶用図面投影方法のフローチャートであり、
図3は船舶用図面投影方法の説明図である。
【0030】
まず、管理装置10の設置情報読取手段101が、柱状治具6の設置情報を図面1から読み取る(ステップS101)。読み取った設置情報は、
図4に示す設置情報4として数値化される。
【0031】
次に、管理装置10の3次元データ生成手段102が、読み取った設置情報から3次元データを生成する(ステップS102)。3次元データには、複数の柱状治具6の位置を示す情報として、格子状のグリッド線、位置を示す符号(A~E、1~4)、柱状治具6の位置と高さを視覚的に示すための柱状の線、柱状治具6の高さを示す数字等を含ませることができる。また、各柱状治具の頂点を結ぶ船体断面線を含ませることもできる。さらに、柱状治具6を横架材と組み合わせた架台として構成する場合には、架台の3次元データも含ませることができる。
【0032】
次に、管理装置10の投影用モデル生成手段103が、生成した3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成する(ステップS103)。このとき、投影画像の品質向上や処理負荷低減の観点から、さらに適切なデータ変換を行うことが好ましい。生成した投影用モデルは、投影装置20,30に送信される。
【0033】
次に、投影装置20,30の空間スキャン手段104が、現実空間をスキャンして空間形状を認識する(ステップS104)。また、空間スキャン手段104は、位置合わせのために現実空間内に予め設置されたARマーカー3を認識する。なお、空間スキャン手段の累積誤差による投影位置や向きの精度低下を抑制するため、複数のARマーカー3を用いてもよい。
【0034】
次に、投影装置30の投影手段105が、管理装置10から送信された投影用モデルを現実空間に重畳して仮想的に表示する(ステップS105)。このとき投影手段105は、空間スキャン手段104が認識した空間形状に合わせて投影用モデルをスケーリングし投影用モデルの縮尺を認識した空間形状と等倍にするとともに、投影用モデルに含まれる原点情報とARマーカー3により位置合わせを行う。
【0035】
図6は、投影用モデルの投影画像を示す図である。投影画像には、複数の柱状治具6の位置を示す情報として、格子状のグリッド線(破線)、位置を示す符号(A~E、1~4)、柱状治具6の位置と高さを視覚的に示すための柱状の線、柱状治具6の高さを示す数字が表示されている。また、各柱状治具の頂点を結ぶ船体断面線7も表示されている。このようにして、船舶用図面投影システム100による船舶用図面投影方法を実施することができる。
【0036】
本実施形態に係る船舶用図面投影システムは、船体ブロック5を支持する柱状治具6の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システム100である。そして、設置情報読取手段101が柱状治具6の設置情報を図面1から読み取り、3次元データ生成手段102が設置情報から3次元データを生成し、投影用モデル生成手段103が3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成するようになっているので、作業者が図面1に記載された情報を一つ一つ確認する必要がなく、経験の少ない作業者であっても対応することができる。また、空間スキャン手段104が現実空間をスキャンして空間形状を認識し、投影手段105が投影用モデルを空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示するようになっているので、作業者は表示された映像の情報に基づいて、各々の柱状治具6の高さを直接調整することができる。従って、柱状治具6への手書きでの記入作業や、記入された寸法を一つ一つ読み取りながら高さを調整する作業が不要であり、短時間で効率的な作業が可能である。
【0037】
また、本実施形態に係る本発明の船舶用図面投影方法は、船体ブロック5を支持する柱状治具6の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影方法である。そして、設置情報読取ステップS101で柱状治具6の設置情報を図面から読み取り、3次元データ生成ステップS102で設置情報から3次元データを生成し、投影用モデル生成ステップS103で3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成するようになっているので、作業者が図面に記載された情報を一つ一つ確認する必要がなく、経験の少ない作業者であっても対応することができる。また、空間スキャンステップS104で現実空間をスキャンして空間形状を認識し、投影ステップS105で投影用モデルを空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示するようになっているので、作業者は表示された映像の情報に基づいて、各々の柱状治具6の高さを直接調整することができる。従って、柱状治具6への手書きでの記入作業や、記入された寸法を一つ一つ読み取りながら高さを調整する作業が不要であり、短時間で効率的な作業が可能である。
【0038】
このように、本発明によれば、船体ブロックを支持する柱状治具の高さを効率的に調整することの可能な、船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムを提供することができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係る船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムについて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、船舶用図面投影システム100を、管理装置10及び投影装置20,30により構成したが、これに限定されるものではなく、一つ又は複数の情報処理装置を船舶用図面投影システムとして機能させることができる。例えば、管理装置10の機能(設置情報読取手段101、3次元データ生成手段102、投影用モデル生成手段103)を分けて、複数のパソコンにより構成するようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、投影装置20,30の各々が空間スキャン手段104及び投影手段105を有するように構成したが、空間スキャン手段104及び投影手段105を投影装置20(スマートフォンやタブレット)だけに設けて、投影装置20からの送信情報に基づいて眼鏡型のウェアラブル端末で表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 図面
2 作業者
3 ARマーカー
4 設置情報
5 船体ブロック
6 柱状治具
7 船体断面線
10 管理装置
20 投影装置
30 投影装置
100 船舶用図面投影システム
101 設置情報読取手段
102 3次元データ変換手段
103 投影用モデル生成手段
104 空間スキャン手段
105 投影手段
【要約】
【課題】船体ブロックを支持する柱状治具の高さを効率的に調整することの可能な、船舶用図面投影システム、船舶用図面投影方法及び船舶用図面投影プログラムを提供する。
【解決手段】船体ブロックを支持する柱状治具の設置情報を現実空間に重畳して投影する船舶用図面投影システム100であって、柱状治具の設置情報を図面から読み取る設置情報読取手段101と、読み取った設置情報から3次元データを生成する3次元データ生成手段102と、生成した3次元データから現実空間に投影する投影用モデルを生成する投影用モデル生成手段103と、現実空間をスキャンして空間形状を認識する空間スキャン手段104と、生成した投影用モデルを認識した空間形状に合わせて現実空間に重畳して仮想的に表示する投影手段105と、を含む。
【選択図】
図1