(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】遊技機
(51)【国際特許分類】
A63F 7/02 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
A63F7/02 320
(21)【出願番号】P 2018136940
(22)【出願日】2018-07-20
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】599104196
【氏名又は名称】株式会社サンセイアールアンドディ
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】特許業務法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 良孝
(72)【発明者】
【氏名】川添 智久
(72)【発明者】
【氏名】中山 覚
(72)【発明者】
【氏名】牧 智宣
(72)【発明者】
【氏名】柏木 浩志
(72)【発明者】
【氏名】梶野 浩司
【審査官】辻野 安人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-082802(JP,A)
【文献】特開2016-198359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有する表示装置と、
前記表示領域に表示される識別図柄が変動を開始してから当否判定結果に応じた態様で停止するまでの報知演出を構成する演出として、前記表示領域に基準画像が表示された第一状態から、当該表示領域に対して当該基準画像がずれたかのように表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、
当否判定に用いられる情報であって、対応する当否判定結果の報知が未だ完了していない保留情報を記憶する記憶手段を備え、
を備え
、
前記表示領域には、対応する当否判定結果についての前記報知演出が開始されている前記保留情報の存在を示す変動中保留画像、および、対応する当否判定結果についての前記報知演出が開始されていない前記保留情報の存在を示す変動前保留画像が表示されることがあり、
前記画像変位演出において、前記第一状態にあるときに
前記変動中保留画像および前記変動前保留画像が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したとき
には、前記表示領域に対する前記変動前保留画像が表示される位置は変化するものの、前記表示領域に対する
前記変動中保留画像が表示される位置は維持されることを特徴とする遊技機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
表示領域に画像が表示された状態から、当該画像が表示領域に対してずれたかのような状態に変化させる演出(画像変位演出と称する)を実行することが可能な遊技機が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像変位演出が発生したとき、遊技に関する情報が分かりにくくなるおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、画像変位演出が発生したときであっても遊技に関する情報の把握が容易である遊技機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明にかかる遊技機は、表示領域を有する表示装置と、前記表示領域に基準画像が表示された第一状態から、当該表示領域に対して当該基準画像が変位したかのように表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、当否判定に用いられる情報であって、対応する当否判定結果の報知が未だ完了していない保留情報を記憶する記憶手段を備え、を備え、前記画像変位演出において、前記第一状態にあるときに前記保留情報の存在を示す一または複数の保留画像が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したときであっても前記表示領域に対する当該一または複数の保留画像のの全部が表示される位置は維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる遊技機によれば、画像変位演出が発生したときであっても遊技に関する情報の把握が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】表示装置(表示領域)に表示された識別図柄および保留画像を示した図である。
【
図4】複数の報知演出間に跨って第二状態が維持される態様を説明するための図である。
【
図5】複数の単位演出間に跨って第二状態が維持される態様を説明するための図である。
【
図6】画像変位演出実行時に変動前保留画像の表示位置が基準画像の変位に合わせて変化し、変動中保留画像の表示位置が維持される例を説明するための図である。
【
図7】画像変位演出実行時に変動中保留画像の表示位置が基準画像の変位に合わせて変化し、変動前保留画像の表示位置が維持される例を説明するための図である。
【
図8】画像変位演出実行時に通常態様の保留画像の表示位置が基準画像の変位に合わせて変化し、特殊態様の保留画像の表示位置が維持される例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1)遊技機の基本構成
以下、本発明にかかる遊技機1の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。まず、
図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。
【0010】
遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置908(発射ハンドル)の操作によって発射された遊技球を遊技領域902に案内する通路を構成するガイドレール903が略円弧形状となるように設けられている。
【0011】
遊技領域902には、表示装置10、始動入賞口904、大入賞口906、アウト口などが設けられている。また、遊技領域902には、流下する遊技球が衝突することにより遊技球の流下態様に変化を与える障害物としての遊技釘が複数設けられている。遊技領域902を流下する遊技球は、遊技釘に衝突したときの条件に応じて様々な態様に変化する。
【0012】
このような遊技機1では、発射装置908を操作することにより遊技領域902に向けて遊技球を発射する。遊技領域902を流下する遊技球が、始動入賞口904や大入賞口906等の入賞口に入賞すると、所定の数の賞球が払出装置により払い出される。
【0013】
なお、遊技機1の枠体、遊技球を貯留する下皿や上皿など、本発明に関係のない遊技機1の構成要素は説明を省略する。これらについては公知の遊技機と同様の構造のものが適用できる。
【0014】
大当たりの抽選は、図示されない制御基板に設けられた当否判定手段が始動入賞口904への遊技球の入賞を契機として実行する(このような始動入賞口は複数設けられていてもよい)。具体的には、始動入賞口904への遊技球の入賞を契機として乱数源から数値(当否判定情報)が取得され、当該数値が予め定められた大当たりの数値と同じである場合には大当たりとなり、異なる場合にははずれとなる。本実施形態では、当該数値が取得された順に当否判定結果の報知が開始される(いわゆる変動が開始される)こととなるが、未だ当否判定結果の報知が完了していない当否判定情報が存在する場合には、新たに取得された当否判定情報は保留情報として図示されない制御基板に設けられた記憶手段に記憶される。記憶手段に保留情報が記憶されていることは、保留画像(保留図柄)80として表示される(
図2参照)。
【0015】
本実施形態では、保留画像80として、当否判定結果を報知する報知演出は開始されている(当否判定結果を示す識別図柄70(識別図柄群70g)の変動は開始されている)ものの、当否判定結果の報知は完了していない(当否判定結果を示す態様で識別図柄70(識別図柄群70g)の変動が停止していない)ものに対応する変動中保留画像81(いわゆる「当該変動保留」を示す画像)と、当否判定結果を報知する報知演出が開始されていない(当否判定結果を示す識別図柄70(識別図柄群70g)の変動が開始されていない)ものに対応する変動前保留画像82が表示される(
図2参照)。変動前保留画像82に対応する保留情報の最大の記憶数は上限が決められている。本実施形態では、始動入賞口904(いわゆる「特
図1」)に入賞することによって得られる保留情報(当否判定情報)の最大の記憶数は四つである。つまり、通常の遊技状態中(低確率かつ低ベース状態)においては、一つの変動中保留画像81と、最大四つの変動前保留画像82が表示される。
【0016】
本実施形態では、公知の遊技機と同様に、表示装置10の表示領域11に表示される識別図柄70(
図2参照)の組み合わせによって当否判定結果を遊技者に報知する。具体的には、複数種の識別図柄70を含む識別図柄群70g(左識別図柄群70gL、中識別図柄群70gC、右識別図柄群70gR)が変動を開始し、最終的に各識別図柄群70gから一の識別図柄70が選択されて停止する。大当たりに当選している場合には各識別図柄群70gから選択されて停止した識別図柄70の組み合わせは所定の組み合わせ(例えば、同じ識別図柄70の三つ揃い)となる。はずれである場合にはそれ以外(大当たりとなる組み合わせ以外)の組み合わせとなる。なお、各図においては、識別図柄70を構成する「数字(文字)」のみを図示するが、当該数字とキャラクタ等が組み合わされた図柄を識別図柄70として設定することができる。
【0017】
2)画像変位演出と装飾部材50の関係
当否判定結果を報知する報知演出(識別図柄70の変動開始から当否判定結果を示す組み合わせで停止するまでの演出)として、種々の演出が実行される。本実施形態では、当該演出の一種として、画像変位演出(一般的に「シェイク演出」等と称される)を実行することが可能である。すなわち、画像変位演出は、対象の当否判定結果を報知する一連の演出の一部として発生しうるものである。以下、当該画像変位演出について詳細に説明する。なお、特に明示した場合を除き、以下の説明において「画像」(基準画像20等)というときは、静止画と動画の両方を含むものとする。
【0018】
画像変位演出の基本的態様は、表示装置10の表示領域11に基準画像20が表示された第一状態から、表示領域11に対して当該基準画像20がずれたかのように表示された第二状態に変位するというものである(
図3参照)。基準画像20は、画像変位演出の発生前に実行されていた演出(以下、当該演出を事前演出と称することもある)中に表示されていた画像に基づくものである。事前演出の具体的な態様はどのようなものであってもよい。画像変位演出前に発生しうる事前演出は複数種設定されていてもよいし、一種のみに限定されていてもよい。本実施形態では、画像変位演出の発生直前に表示されていた事前演出の画像が、画像変位演出における基準画像20に引き継がれる。画像変位演出の発生直前に表示されている事前演出の画像は、表示領域11全体に表示された画像であるといえる。ただし、事前演出において表示された画像の一部のみが基準画像20として変位する構成としてもよい。基準画像20を静止画とする(ここでいう静止画とは、基準画像20が表す画像の内容が遊技者から同一視できる態様に維持されることをいい、画像全体が変位することによる態様の変化を含まないという意味である)のであれば、画像変位演出の発生直前に表示されていた事前演出の画像の態様を維持しつつ基準画像20全体を表示領域11に対して変位させる。基準画像20を動画とする(ここでいう動画とは、基準画像20が表す画像の内容が時間経過とともに変化することをいう)のであれば、画像変位演出の発生直前に表示されていた事前演出の画像からそのまま継続的に基準画像20の態様を変化させるとともに、基準画像20全体を表示領域11に対して変位させる。
【0019】
表示領域11に対する基準画像20全体の変位態様は種々考えられる。本実施形態では、基準画像20が平面方向(表示装置10の表示領域11に沿う方向をいう。以下同じ)に対してあたかも傾斜するように変位したかのような表示(三次元的に変位したかのような表示)がなされる。より具体的には、本実施形態では、基準画像20の左側縁が奥側に、基準画像20の右側縁が手前側に向かうように、基準画像20があたかも回動したかのような表示がなされる(
図3(b)参照)。ただし、かかる変位態様はあくまで一例である。基準画像20が平面方向に沿って(上下左右いずれかの方向に)変位したかのような表示(二次元的に変位したかのような表示)がなされるようにしてもよいし、基準画像20が奥(後)に変位したかのような表示がなされてもよい。また、時間経過とともに基準画像20の変位量が変化するかのような態様(例えば、基準画像20が揺れる態様)としてもよい。また、基準画像20の輪郭形状が変化する態様(例えば、基準画像20の輪郭が歪む態様)としてもよい。また、基準画像20の変位によりその一部が表示領域11外に位置したかのような態様(一部が見切れる態様)としてもよい。また、画像変位演出が終了したときに再び基準画像20が元に戻るような演出形態としてもよいし、基準画像20が元に戻らずに全く別の画像が表示された状態に移行しうるような演出形態としてもよい。
【0020】
また、画像変位演出の第二状態においては、基準画像20の外縁に沿う枠画像30が表示される(
図3(b)参照)。当該枠画像30は、第一状態における表示領域11の外縁に相当する部分であることを示すものである。本実施形態では、第一状態において枠画像30は表示されない。つまり、画像変位演出は、基準画像20が表示領域11に対してずれたかのように表示される演出であるから、当該ずれを表現するために、第二状態にて枠画像30を表示する。遊技者は、第一状態における表示領域11の外縁が、第二状態にて枠画像30が表示される箇所までずれてしまったかのような印象を受ける。表示領域11は、大まかにみて略方形状を呈するものであるから、本実施形態のように基準画像20が三次元的に変位する画像変位演出であれば、第二状態における枠画像30は三次元的な表現で方形状を呈するように見える態様とされる。
【0021】
本実施形態にかかる遊技機1は、表示領域11の周囲を装飾する装飾部材50を備える(
図1、
図3等参照)。装飾部材50による装飾態様はどのようなものであってもよい。装飾部材50は、その少なくとも一部が、表示領域11の一部に前側で重なるように配置されている。つまり、遊技機1を前方から見た平面図として捉えれば、表示領域11における装飾部材50が重なる部分は、当該装飾部材50に覆われるということになる。表示領域11(遊技盤90に形成された開口901)を略方形状であると捉えれば、当該方形の内側に少なくとも一部が入り込むようにして装飾部材50が設けられている。つまり、当該装飾部材50における上記方形の内側に入り込んだ部分が、表示領域11を覆う部分であるということである。
【0022】
以下の説明においては、表示領域11における装飾部材50が重なる領域を重畳領域111と、装飾部材50が重ならない領域(重畳領域111以外の領域)を露出領域112と称する。また、このような装飾部材50が複数設けられたものとしてもよい。つまり、ある装飾部材50が重なる重畳領域111と、それとは別の装飾部材50が重なる重畳領域111が存在するような構成であってもよい。以下では、説明を分かりやすくするため、一の装飾部材50が設けられ、当該一の装飾部材50が重なる一の重畳領域111が存在するものとして説明する。また、本実施形態における装飾部材50は動かないように固定されたものであるが、表示領域11の一部に前側で重なるような位置に位置することが可能なものであれば可動する部材であってもよい。例えば、原位置において表示領域11の一部に前側で重なる可動部材を装飾部材50としてもよい。この場合には、装飾部材50が原位置に位置するときにおいて画像変位演出が発生するものとする。
【0023】
画像変位演出の第一状態においては、表示領域11の全体に基準画像20が表示されているのであるから、当該基準画像20は重畳領域111に表示された部分(以下、重畳部21と称することもある)と、露出領域112に表示された部分(以下、露出部22と称することもある)を含むことになる(
図3(a)参照)。重畳部21の前側には装飾部材50が設けられているため、当該重畳部21に正対するような視線では、当該重畳部21の態様を遊技者は把握することができない。しかし、装飾部材50と重畳部21(表示面)はぴったりとくっついているのではなく、両者の間には隙間が存在するため、視線の方向によっては、遊技者は重畳部21の態様を把握することができる。具体的には、装飾部材50は表示領域11の外縁付近の一部を覆うものであるとともに、遊技者は表示領域11のほぼ中央に正対するようにして遊技しているのが通常であるため、遊技者は覗き込むようにすれば重畳部21の態様を把握することができる。換言すれば、重畳部21は、遊技者が積極的に見ようとしなければ見えない部分であるといえる。このように、重畳部21は、どのような態様の画像であるのか把握することが不可能な部位ではないが、装飾部材50に覆われていない露出部22に比して把握しにくい部位であるといえる。
【0024】
画像変位演出の発生により第一状態から第二状態に推移するということは、表示領域11に対してずれたかのように見せるために基準画像20は変形して表示されるということである。つまり、表示領域11における基準画像20の各部位が表示される箇所が変化するということでもある。本実施形態では、第一状態にて基準画像20の重畳部21であった箇所(重畳領域111に表示されていた箇所)の少なくとも一部が、第二状態にて露出領域112に表示されるような変化が発生する(
図3(b)参照)。
【0025】
このように、本実施形態における画像変位演出では、第一状態(基準画像20の変位が発生する前)には、見えにくい部分である基準画像20の重畳部21が、第二状態に推移する(基準画像20の変位が発生する)ことで容易に見える状態となる。したがって、画像変位演出の発生は、画像が表示領域11に対してずれたことによる驚きだけでなく、普段(画像変位演出が発生していないとき)には見えない(遊技者が見ようとしなければ見えない)部分が見えることの面白みを遊技者に与えるものとなる。
【0026】
重畳部21として設定される画像はどのようなものであってもよい。第一状態においては見えにくかった背景画像(識別図柄70の背景として表示される画像)の一部が第二状態に移行することで露出するような設定としてもよい。ただし、重畳部21は、普段は見えにくい部分であって、画像変位演出発生時に露出領域112に表示されて容易に見える部分となるものであるから、どのような類の画像を当該重畳部21として設定するかにより演出がもたらす作用が異なるものとなる。
【0027】
例えば、当否判定結果が大当たりとなる蓋然性(いわゆる大当たり信頼度)を示唆する画像を含むものを重畳部21とすることが考えられる。この種の画像の一例としては、表示されない場合に比して、表示された場合の方が、大当たり信頼度が高くなるいわゆるチャンスアップ画像211(態様はどのようなものであってもよい)を挙げることができる(
図3参照)。このようにすることで、第一状態にて装飾部材50に覆われるように当該チャンスアップ画像211が表示された状態(
図3(a)参照)から、第二状態に移行することで当該チャンスアップ画像211が露出する(
図3(b)参照)という面白みのある演出態様とすることができる。仮に、画像変位演出自体が、いわゆるチャンスアップ演出(発生しない場合に比して発生した場合の方が大当たり信頼度が高くなる演出)として設定するのであれば、第二状態に移行して上記チャンスアップ画像211が露出するようにすることで、画像変位演出がチャンスアップ演出であるということが、チャンスアップ画像211により示されるという演出態様となる。
【0028】
重畳部21に含まれる画像として、大当たり信頼度を示唆する複数種の示唆画像のうちのいずれかが設定され、画像変位演出発生時には、当該複数種の示唆画像から選択された一の示唆画像が露出するような構成としてもよい。
【0029】
本実施形態における画像変位演出は、第二状態となることで、第一状態においては見えにくかった基準画像20の一部である重畳部21が容易に見える状態となるものであるから、第二状態は比較的長い時間維持されることが好ましい。つまり、第二状態となる時間が短いと、重畳部21にどのような画像が表示されているのか把握できないおそれがあるから、第二状態にある時間をある程度長くすべきである。このような状態を担保するための措置としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0030】
・複数の報知演出に跨って第二状態が維持される構成(
図4参照)
第二状態が、複数の報知演出(複数の変動)に跨って維持されるものとする。ある当否判定結果(先の当否判定結果)を報知する報知演出(先の報知演出)中に画像変位演出が開始される(
図4(a)参照)。つまり、先の報知演出中に第一状態から第二状態への変化が発生するものとする。そして、当該先の報知演出の終了後連続的に発生する、先の当否判定結果の次の当否判定結果(後の当否判定結果)を報知する報知演出(後の報知演出)が開始されても、基準画像20は元の状態に戻らず、第二状態が維持されるものとする(
図4(b)(c)参照)。先の報知演出と後の報知演出は連続的に発生するのであるから、先の報知演出が終了するよりも前までに、後の報知演出(後の当否判定結果)に対応する保留情報が取得されていなければならないということになる。また、三つ以上の報知演出(三つ以上の変動)に跨って第二状態が維持されることがあってもよい。
【0031】
なお、本実施形態では、基準画像20は識別図柄70を含む。そのため、識別図柄70は、表示領域11に対してずれたかのように表示された基準画像20内にて先の当否判定結果(はずれ)を示す組み合わせで停止される(
図4(b)参照)。つまり、基準画像20が表示領域11に対してずれたかのように表示される状態(第二状態)が、先の報知演出の完了時点においても維持されるのであるから、先の当否判定結果は基準画像20が含む識別図柄70にて報知される。また、後の報知演出が開始される時点においても第二状態は維持されるのであるから、後の当否判定結果を報知する識別図柄70は基準画像20内にて変動を開始する(
図4(c)参照)。
【0032】
このように、連続する二以上の報知演出を跨いで第二状態が維持されるということは、比較的長時間第二状態が維持されるということであるため、遊技者は重畳部21にどのような画像が表示されているのか容易に把握することが可能である。なお、先の報知演出にて発生した画像変位演出(第二状態)が、後の報知演出にて維持されるというものであるから、画像変位演出がチャンスアップ演出として設定されているのであれば、連続する二以上の報知演出を跨いで第二状態が維持されることは公知の「先読み演出」(ある当否判定結果についての示唆が、それよりも前に報知が完了する当否判定結果の報知演出を利用して行われる演出)の一種であるということができる。このように「先読み演出」の一種とするのであれば、先の報知演出が開始される時点で、後の報知演出(後の当否判定結果)に対応する保留情報が取得されていなければならないということになる。
【0033】
・連続演出(単位演出)に跨って第二状態が維持される構成(
図5参照)
連続演出中に画像変位演出が発生するものとする。連続演出自体は公知であるから詳細な説明を省略するが、識別図柄70が変動表示された状態から、当該識別図柄70が停止または擬似停止(完全には停止していないが遊技者には停止しているように見える状態をいう。例えば図柄がわずかに揺れている状態)し、再び変動を開始する単位演出を一または複数回繰り返すことにより、対象の当否判定結果が当たりとなる蓋然性を示唆するものである。識別図柄70が停止または擬似停止する際には、連続演出が発生することを示す組み合わせ(いわゆるチャンス目。当該チャンス目の一例としては識別図柄70が「順目」となる態様を例示することができる)となるようにするとよい。ある一つの当否判定結果を報知する一の報知演出中に複数の単位演出が発生する「擬似連続演出」であってもよいし、複数の報知演出に亘って複数の単位演出が発生する「先読み連続演出」であってもよい。一般的な連続演出においては、単位演出の発生回数が多くなるほど、当該連続演出の対象となる当否判定結果の大当たり信頼度が高まるように設定される。
【0034】
このような連続演出において、識別図柄70が停止または擬似停止するよりも前に、第一状態から第二状態への変化が発生し(
図5(a)参照)、停止または擬似停止した当該識別図柄70が再び変動を開始した後も、当該第二状態が維持されるようにする(
図5(b)(c)参照)。つまり、先の単位演出において発生した表示領域11に対する基準画像20の変位が、次の単位演出においても維持されるようにする。連続演出を構成する単位演出の発生は、停止または擬似停止した識別図柄70が再び変動を開始することで示されるところ、当該停止または擬似停止する時点を跨いで、第二状態が維持されるものとする。このように、連続演出を構成する単位演出に跨って第二状態が維持されるということは、比較的長時間第二状態が維持されるということであるから、遊技者は重畳部21にどのような画像が表示されているのか容易に把握することが可能である。
【0035】
3)画像変位演出と保留画像80の関係
画像変位演出において、第一状態にあるときに一または複数の保留画像80が表示されている場合、当該第一状態から第二状態に変化したときであっても表示領域11に対する保留画像80が表示される位置は維持される(
図3参照)。本実施形態では、変動中保留画像81および変動前保留画像82の両方とも表示される位置は維持される。つまり、画像変位演出は、表示領域11に対して基準画像20が変位する演出であるところ、当該基準画像20には保留画像80が含まれないものとする。基準画像20を構成する一または複数の画像レイヤと、保留画像80を構成する一または複数の画像レイヤを全く別のものとすることで、画像変位演出の際に基準画像20は変位させつつ、保留画像80については表示される位置を維持する制御が容易になる。
【0036】
画像変位演出時に保留画像80も変位してしまうと、当該時点における保留の状況を遊技者が把握しにくくなる。継続的に遊技球を発射させていれば、画像変位演出時に新たに保留情報が取得されることもある。つまり、保留画像80の状況(保留数)は、常時変化しうるものであって、画像変位演出が発生するときも遊技者はその状況を把握することを欲することが想定されるため、保留画像80が表示される位置は維持されるようにする。
【0037】
画像変位演出が実行されている最中に新たに始動入賞口904に遊技球が入賞して保留情報の数が増加したときには、保留画像80(変動前保留画像82)の数がリアルタイムで増加する。当該増加が発生するときであっても、新たな保留画像80(変動前保留画像82)が表示される位置は画像変位演出の発生の有無に応じて変化するものといったものではないため、保留の増加が分かりやすいという利点がある。また、画像変位演出が実行されている最中に公知の保留変化演出(保留画像80の態様の変化により対応する当否判定結果が大当たりとなる蓋然性を示唆する演出)が発生するようにしても、遊技者が当該保留変化に気付かないといった状況が生じてしまうおそれは低い。
【0038】
上記例は、画像変位演出にて第一状態から第二状態への変化が発生したときであっても、全ての保留画像80の表示される位置が維持されるというものであるが、以下に示す例(第一例~第三例)のように一部の保留画像80の表示される位置が維持されるようにしてもよい。
【0039】
・第一例
第一状態から前記第二状態に変化したとき、変動前保留画像82が表示される位置は変化するものの、変動中保留画像81が表示される位置は維持されるものとする(
図6参照)。つまり、変動前保留画像82については表示領域11に対して変位する基準画像20に含まれるものとし、基準画像20の変位に合わせて表示される位置が変化するものとする一方、変動中保留画像81については基準画像20に含まれないものとして表示される位置が維持されるものとする。
【0040】
変動中保留画像81は、現在実行されている報知演出(現在変動している識別図柄70)に対応する当否判定結果に対応するものであるから、遊技者が特に注目するであろう画像であるとして、画像変位演出が実行されたときであっても表示位置が維持されるものとする。
【0041】
本例のような構成は、変動中保留画像81の態様により、変動中保留画像81に対応する当否判定結果の大当たり信頼度が示唆されるものにおいて特に有効である。つまり、変動中保留画像81の態様として複数種の態様が設定され、当該態様により大当たり信頼度が示唆されるものである場合には、遊技者は常時変動中保留画像81の態様に注目する可能性があるから、画像変位演出が実行されるときであっても変動中保留画像81が表示される位置は維持されるようにする。
【0042】
また、変動中保留画像81の態様が、大当たり信頼度が高まる方向に変化する保留変化演出が発生するものである場合には、画像変位演出が実行されている最中に当該保留変化が発生したとしても、遊技者が当該保留変化を見逃してしまうおそれを低減することが可能である。つまり、画像変位演出が実行されている最中に、変動中保留画像81の保留変化演出を発生させることが容易であるといえる。
【0043】
・第二例
第一状態から前記第二状態に変化したとき、変動中保留画像81が表示される位置は変化するものの、変動前保留画像82が表示される位置は維持されるものとする(
図7参照)。つまり、変動中保留画像81については表示領域11に対して変位する基準画像20に含まれるものとし、基準画像20の変位に合わせて表示される位置が変化するものとする一方、変動前保留画像82については基準画像20に含まれないものとして表示される位置が維持されるものとする。
【0044】
画像変位演出は、変動中保留画像81に対応する当否判定結果を報知する報知演出の一部として発生するものである。画像変位演出がいわゆるチャンスアップ演出であるとするのであれば、画像変位演出の発生は変動中保留画像81に対応する当否判定結果が大当たりとなる蓋然性が高まったことを示唆するものであるといえる。つまり、画像変位演出と変動中保留画像81とは「現在実行されている報知演出」(現在の変動)に関係するものとして共通するから、変動中保留画像81も基準画像20の一部として変位するものとする。一方、変動前保留画像82(変動前保留画像82に対応する当否判定結果)は、画像変位演出の発生と直接的に関係するものではないから、画像変位演出が発生しても、その表示位置は維持されるものとする。
【0045】
変動前保留画像82の態様により、変動前保留画像82に対応する当否判定結果の大当たり信頼度が示唆されるものである場合、画像変位演出が実行されるときであっても、変動前保留画像82の態様を容易に把握できるという利点がある。
【0046】
また、変動前保留画像82の態様が、大当たり信頼度が高まる方向に変化する保留変化演出が発生するものである場合には、画像変位演出が実行されている最中に当該保留変化が発生したとしても、遊技者が当該保留変化を見逃してしまうおそれを低減することが可能である。
【0047】
・第三例
保留画像80の態様として、一または複数種の通常態様80nと、当該通常態様80nよりも対応する当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高まったことを示す一または複数種の特殊態様80sとが設定されているものとする。画像変位演出が実行されるときに、保留画像80の一部が通常態様80nであり、他の一部が特殊態様80sであるとき、通常態様80nの保留画像80については表示される位置は変化するものの、特殊態様80sの保留画像80については表示される位置は維持されるものとする(
図8参照)。つまり、通常態様80nの保留画像80については表示領域11に対して変位する基準画像20に含まれるものとし、基準画像20の変位に合わせて表示される位置が変化するものとする一方、特殊態様80sの保留画像80については基準画像20に含まれないものとして表示される位置が維持されるものとする。いずれの保留画像80が特殊態様80sとされるかはその都度変化しうるものであるから、表示される位置が維持される保留画像80は画像変位演出の度に変化しうるものとなる。なお、全ての保留画像80が通常態様80nであるときには、当該保留画像80の全てが基準画像20に含まれるものとして表示される位置が変化することになる。
【0048】
特殊態様80sの保留画像80は、当該保留画像80に対応する当否判定結果が大当たりとなることに期待がもてる(通常態様80nの保留画像80に比して期待がもてる)ものであるから、画像変位演出が発生したときであっても、その表示位置が維持されるようにし、遊技者によって見やすい状態を維持する。画像変位演出が実行されて通常態様80nの保留画像80の表示位置が変化したときにおいては、当該通常態様80nの保留画像80に比して特殊態様80sの保留画像80が目立つ状態にあるともいえる。
【0049】
また、画像変位演出を「先読み演出」として機能させる場合、特殊態様80sの保留画像80に対応する当否判定結果を当該先読みの対象とすることが考えられる。このようにすれば、画像変位演出が発生したときに「目立つ」状態にある特殊態様80sの保留画像80に対応する当否判定結果の先読み演出として、画像変位演出が発生していることを示すことが可能である。
【0050】
なお、保留画像80として、変動中保留画像81が表示されず、変動前保留画像82が表示されるものについて同様に制御してもよい。変動前保留画像82のうち通常態様80nについては表示される位置は変化するものの、特殊態様80sについては表示される位置は維持されるものとする。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0052】
上記「2)画像変位演出と装飾部材50の関係」にて、画像変位演出が発生することで重畳部21が露出する構成を、上記「3)画像変位演出と保留画像80の関係」にて、画像変位演出が発生したときであっても、保留画像80の少なくとも一部は表示される位置が変化しない構成を説明したが、いずれか一方のみの構成が採用された遊技機としてもよい。
【0053】
上記実施形態から得られる具体的手段(遊技機)を以下に列挙する。
【0054】
・手段1-1
表示領域を有する表示装置と、前後方向において前記表示領域の一部に前側で重なるように配置される装飾部材と、前記表示領域に基準画像が表示された第一状態から、当該表示領域に対して当該基準画像が変位したかのように表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、を備え、前記表示領域は、前後方向において前記装飾部材が重なる重畳領域と、前記装飾部材が重ならない露出領域とに区分けされ、前記画像変位演出の前記第一状態において、前記基準画像は前記重畳領域に表示される重畳部を含み、前記画像変位演出の前記第二状態において、前記第一状態では前記重畳部であった部分の少なくとも一部が、前記露出領域に表示された態様となることを特徴とする遊技機。
上記遊技機によれば、第一状態では装飾部材に重なっているため見えにくい重畳部が、第二状態となることによって露出して容易に見える状態となるという面白みのある画像変位演出を実行することが可能である。
【0055】
・手段1-2
先の当否判定結果を報知する演出中に前記第一状態から前記第二状態への変化が発生し、当該先の当否判定結果の次の当否判定結果を報知する演出が開始されても、当該第二状態が維持される場合があることを特徴とする手段1-1に記載の遊技機。
このように、複数の当否判定結果を報知する演出を跨いで第二状態が維持されるようにすれば、画像変位演出がいわゆる先読み演出として機能することになる。また、比較的長い時間重畳部が露出した状態となるから、当該重畳部がどのような態様であるのか容易に把握できる。
【0056】
・手段1-3
当否判定結果を示す識別図柄が変動表示された状態から、当該識別図柄が停止または擬似停止し、再び変動を開始する単位演出を一または複数回繰り返すことにより、対象の当否判定結果が当たりとなる蓋然性を示唆する連続演出が実行可能であり、前記連続演出において、前記識別図柄が停止または擬似停止するよりも前に、前記第一状態から前記第二状態への変化が発生し、停止または擬似停止した当該識別図柄が再び変動を開始した後も、当該第二状態が維持される場合があることを特徴とする手段1-1または手段1-2に記載の遊技機。
このように、連続演出を構成する複数の単位演出に跨って第二状態が維持されるようにすることで、連続演出の態様を斬新なものとすることができる。また、比較的長い時間重畳部が露出した状態となるから、当該重畳部がどのような態様であるのか容易に把握できる。
【0057】
・手段2-1
表示領域を有する表示装置と、前記表示領域に基準画像が表示された第一状態から、当該表示領域に対して当該基準画像が変位したかのように表示された第二状態に変化する画像変位演出を実行する演出実行手段と、当否判定に用いられる情報であって、対応する当否判定結果の報知が未だ完了していない保留情報を記憶する記憶手段を備え、を備え、前記画像変位演出において、前記第一状態にあるときに前記保留情報の存在を示す一または複数の保留画像が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したときであっても前記表示領域に対する当該一または複数の保留画像のうちの少なくとも一部が表示される位置は維持されることを特徴とする遊技機。
上記遊技機によれば、画像変位演出が発生したときであっても、保留の状況の把握が容易になる。
【0058】
・手段2-2
前記保留画像として、対応する当否判定結果を報知する演出が開始されているものに対応する変動中保留画像と、対応する当否判定結果を報知する演出が開始されていないものに対応する変動前保留画像が設定されており、前記第一状態にあるときに前記変動中保留画像と前記変動前保留画像の両方が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したときには、前記変動前保留画像が表示される位置は変化するものの、前記表示領域に対する前記変動中保留画像が表示される位置は維持されることを特徴とする手段2-1に記載の遊技機。
変動中保留画像は、現在実行されている報知演出に対応する当否判定結果に対応するものであるから、遊技者が特に注目するであろう画像であるとして、画像変位演出が実行されたときであっても表示位置が維持されるものとすることが考えられる。
【0059】
・手段2-3
前記保留画像として、対応する当否判定結果を報知する演出が開始されているものに対応する変動中保留画像と、対応する当否判定結果を報知する演出が開始されていないものに対応する変動前保留画像が設定されており、前記第一状態にあるときに前記変動中保留画像と前記変動前保留画像の両方が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したときには、前記変動中保留画像が表示される位置は変化するものの、前記表示領域に対する前記変動前保留画像が表示される位置は維持されることを特徴とする手段2-1に記載の遊技機。
画像変位演出と変動中保留画像とは「現在実行されている報知演出」に関係するものとして共通するから、変動中保留画像も基準画像の一部として変位するものとすることが考えられる。
【0060】
・手段2-4
前記保留画像の態様として、通常態様と、当該通常態様よりも対応する当否判定結果が当たりとなる蓋然性が高まったことを示す特殊態様とが設定されており、前記第一状態にあるときに前記通常態様の保留画像と前記特殊態様の保留画像の両方が表示されている場合、当該第一状態から前記第二状態に変化したときには、前記表示領域に対する前記通常態様の保留画像が表示される位置は変化するものの、前記特殊態様の保留画像が表示される位置は維持されることを特徴とする手段2-1に記載の遊技機。
特殊態様の保留画像は、当該保留画像に対応する当否判定結果が当たりとなることに期待がもてる(通常態様の保留画像に比して期待がもてる)ものであるから、画像変位演出が発生したときであっても、その表示位置が維持されるようにし、遊技者によって見やすい状態を維持することが考えられる。
【符号の説明】
【0061】
1 遊技機
10 表示装置
11 表示領域
111 重畳領域
112 露出領域
20 基準画像
21 重畳部
22 露出部
30 枠画像
50 装飾部材
70 識別図柄
80 保留画像
81 変動中保留画像
82 変動前保留画像