(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ガスバーナー用完全燃焼キャップ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/48 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
F23D14/48 D
(21)【出願番号】P 2018186466
(22)【出願日】2018-10-01
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518349868
【氏名又は名称】株式会社ニューミドルマン
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小 野 佳 弘
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-180333(JP,U)
【文献】実開昭50-029545(JP,U)
【文献】特開2000-081205(JP,A)
【文献】特開平09-145022(JP,A)
【文献】米国特許第04582479(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスバーナーの火炎噴射ノズルが嵌め込まれるノズル受け孔を有し、前記火炎噴射ノズルに着脱自在に被せられるキャップ本体と、
前記キャップ本体の中心部分を貫通して前記火炎噴射ノズルに臨む噴射孔部と、
前記噴射孔部を囲む周囲に形成された複数の放射孔部と、
前記噴射孔部と前記放射孔部とを区切ると共に隣接する放射孔部を区切る肉薄の隔壁部と、を備え、
前記ノズル受け孔に対し前記噴射孔部及び放射孔部が小径に形成されており、
前記キャップ本体は、前記放射孔部の周囲を囲む肉厚の保温部を有していることを特徴とするガスバーナー用完全燃焼キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナーに取り付けられることにより、ガスバーナーからのガスを完全燃焼させると共に食材に対して遠赤外線を照射するガスバーナー用完全燃焼キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
寿司や刺身、鳥獣肉、カット野菜等の食材に対しては、ガスバーナーの火炎によって炙ることにより香ばしさを付与することがなされている。
特許文献1には、このためのガスバーナー火炎噴射ノズル用キャップが開示されている。このキャップは筒体と、メッシュ体からなり筒体の先端部分を塞ぐ金属線メッシュ体とによって形成されており、金属線メッシュ体には、セラミックが塗布されている。
【0003】
このキャップは、ガスバーナーの火炎噴射ノズルの先端に取り付けられて使用される。そして火炎噴射ノズルから火炎が噴射されることにより金属線メッシュ体が高温度に加熱されるため、食材を炙るようになっている。この場合、金属線メッシュ体のセラミックから遠赤外線が放射されるため、食材をふっくらとさせることできるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のキャップは、ガスバーナーからのガスを完全燃焼させることができず、食材にガス臭が付着する問題を有している。又、金属線メッシュ体が細い線材によって形成されているため、熱容量が小さく、大量の遠赤外線を放射することができないと共に火炎を停止すると直ちに遠赤外線の放射が停止する。このため遠赤外線の効果を良好に発揮できない問題がある。又、金属線が細いため、金属線の断線や曲がりが頻発し易く耐久性が小さい問題も有している。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ガスバーナーに取り付けられることによりガスバーナーのガスを完全燃焼させることができ、しかも大量の遠赤外線を長い間放射することができ、食材に対して遠赤外線の効果を良好に作用させることができ、さらには耐久性も向上したガスバーナー用完全燃焼キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のガスバーナー用完全燃焼キャップは、ガスバーナーの火炎噴射ノズルが嵌め込まれるノズル受け孔を有し、前記火炎噴射ノズルに着脱自在に被せられるキャップ本体と、前記キャップ本体の中心部分を貫通して前記火炎噴射ノズルに臨む噴射孔部と、前記噴射孔部を囲む周囲に形成された複数の放熱孔部と、前記噴射孔部と前記放熱孔部とを区切ると共に隣接する放熱孔部を区切る肉薄の隔壁部と、を備え、前記ノズル受け孔に対し前記噴射孔部及び放熱孔部が小径に形成されていることを特徴とする。
【0008】
又、本発明において、前記キャップ本体は、前記放熱孔部の周囲を囲む肉厚の保温部をさらに有していることを特徴する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ノズル受け孔に対し噴射孔部及び放熱孔部が小径に形成されているため、燃焼のための空気をガスバーナーの火炎に円滑に流れ込ませることができる。このためガスバーナーのガスを完全燃焼させることができ、ガス臭の付着を防止することができる。又、キャップ本体が迅速に赤熱状態となって遠赤外線を大量に放射する。これにより食材に対して遠赤外線効果を確実かつ良好に作用させることができ、食材のうまみを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態のガスバーナー用完全燃焼キャップをガスバーナーに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図3】キャップの断面であり、
図2のA-A線断面図である。
【
図5】(A)、(B)は本発明の別の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図4に示す一実施形態により本発明を説明する。
図1及び
図4に示すように、この実施形態のガスバーナー用完全燃焼キャップ1はガスバーナー20に装着されて使用される。
ガスバーナー20は通常のガスバーバーが用いられるものであり、燃焼ガスが封入されたガスボンベ21と、ガスボンベ21内の燃焼ガスを燃焼させるバーナー本体22とを備えている。バーナー本体22は火炎を噴射する火炎噴射ノズル23を有している。そして、バーナー本体22の後側の操作ダイヤル24を回転操作することにより、火炎噴射ノズル23から噴射する火炎の大きさや長さを調整することが可能となっている。
【0012】
ガスバーナー用完全燃焼キャップ1(以下、キャップ1)はガスバーナー20の火炎噴射ノズル23の先端部分に着脱自在に装着される。キャップ1は、
図2及び
図3に示すように、外形が円柱状に形成されたキャップ本体2と、キャップ本体2に形成された噴射孔部3、放熱孔部4、隔壁部5及び保温部6とを有している。
【0013】
キャップ本体2はセラミック、黒鉛珪石等の粉末を混錬して成形し、焼成することにより形成される。又、キャップ本体2としては、鋳鉄を使用することができる。これらの材料によって作成されることによりキャップ本体2が一定以上の温度に加熱されると赤熱して遠赤外線を放射する。
【0014】
噴射孔部3はキャップ本体2の中心部分を貫通するように形成されることにより、噴射孔部3はガスバーナー20の火炎噴射ノズル23に臨んでいる。
図1に示すように、噴射孔部3は火炎噴射ノズル23から噴射される火炎30を噴射することにより食材を焼いたり、食材に焦げ目をつけるものである。
【0015】
放熱孔部4は噴射孔部3の周囲に複数が形成されており、これにより噴射孔部3を囲んでいる。放熱孔部4が噴射孔部3の周囲に配置されることにより噴射孔部3の熱を放熱するように作用する。これによりキャップ本体2が過度の高温になることを防止しキャップ本体2に耐熱性を付与している。又、温度変化によるキャップ本体2の歪みを吸収することができる。
【0016】
隔壁部5は
図2に示すように、噴射孔部3と放熱孔部4との間を区切る第1隔壁部5aと、隣接した放熱孔部4の間を区切る第2隔壁部5bとを有している。これらの第1隔壁部5a及び第2隔壁部5bは肉薄に形成されており、これにより熱伝導を迅速に行うことができる。熱伝導が迅速に行われるため、ガスバーナー20の火炎30によって第1隔壁部5a及び第2隔壁部5bが短時間で赤熱状態となる。このため、遠赤外線放射を迅速に行うことができる。又、熱伝導が円滑になされるため、遠赤外線の放射領域が広範囲となる。このように遠赤外線が広範囲で照射されるため、大量に放射することができ、食材の広い範囲に対して遠赤外線効果を長時間作用させることができる。
【0017】
保温部6は放熱孔部4の周囲を肉厚とすることにより設けられている。保温部6が放熱孔部4の周囲で肉厚となっていることにより、ガスバーナー20の火炎からの熱を保温することができる。従って、繰り返し使用する際にキャップ本体2の全体が短時間で高温となるため、加熱のための熱量の節約を行うことができる。又、保温部6が肉厚となっているため、キャップ本体2に強度を付与することができ、耐久性が向上する。
【0018】
以上に加えてキャップ本体2には、
図3に示すように、背面側にノズル受け孔7が形成されている。このノズル受け孔7にガスバーナー20の火炎噴射ノズル23が嵌め込まれることにより、
図4に示すようにキャップ本体2が火炎噴射ノズル23に着脱自在に被せられる。
【0019】
ノズル受け孔7は噴射孔部3及び放熱孔部4を合わせた径よりも大径となっている。すなわち噴射孔部3及び放熱孔部4はノズル受け孔7よりも小径となっており、
図3に示すように、ノズル受け孔7に導入された空気流Aに対し噴射孔部3及び放熱孔部4に入り込んだ空気流Bの流速が大きくなる。噴射孔部3及び放熱孔部4内の空気流Bの流速が大きくなると、ベルヌーイの定理から空気流Bの圧力が小さくなるため、周囲の空気が空気流Bに流れ込む。すなわちキャップ本体2の先端面(前面)に沿って周囲の空気が大量に流れ込むため、噴射孔部3から出射する火炎30に大量の空気が入り込み、火炎30を完全燃焼させることができる。この完全燃焼によってガスバーナー20のガス臭をなくすことができる。
【0020】
この実施形態においては、
図3に示すように、キャップ本体2の前面に湾曲状の凹み面が形成されており、周囲の空気が凹み面に沿って流れ易くなっている。しかも、噴射孔部3が凹み面中央の底面部分に開口しているため、周囲の空気が噴射孔部3方向に円滑且つ大量に流れることができる。これによっても、噴射孔部3からの火炎30の完全燃焼させることができる。
【0021】
図5は、ガスバーナー用完全燃焼キャップ1の別の実施形態をそれぞれ示す。(A)は噴射孔部3周囲の放熱孔部4を円形に形成したものである。
(B)は噴射孔部3を複数(4つ)の小径孔3a、3bによって形成したものであり、小径孔3a、3bとすることにより周囲の空気が大量に小径孔3a、3bに向かって流れるため、小径孔3a、3bからの火炎の完全燃焼させることができる。なお、
図5(B)においては、円形の放熱孔部4を噴射孔部3の周囲に8個形成しているが、これに限定されるものではない。
【0022】
以上のガスバーナー用完全燃焼キャップ1によれば、キャップ本体2をガスバーナー20へ装着し、ガスバーナー20の火炎噴射ノズル23から火炎30を噴射する。火炎30の噴射では、噴射孔部3からの火炎30を完全燃焼させることができるため、ガス臭が食材に付着することを防止することができる。又、火炎30の噴射によって噴射孔部3周囲の隔壁部5a、5bが迅速に赤熱状態となってキャップ本体2が遠赤外線を大量に放射する。これにより食材に対して遠赤外線効果を確実に良好に作用させることができ、食材をふっくらと焼くことができると共に食材のうまみを向上させることができる。
又、キャップ本体2の全体が円柱状の外形となっているため、コンパクトであり、取り扱い性が良好となる。さらには、噴射孔部3の周囲に放熱孔部4が整然と設けられたデザインとなっているため、製品としての美感を向上させることができる。
【符号の説明】
【0023】
1 ガスバーナー用完全燃焼キャップ
2 キャップ本体
3 噴射孔部
4 放熱孔部
5 隔壁部
5a 第1隔壁部
5b 第2隔壁部
6 保温部
7 ノズル受け孔
20 ガスバーナー
23 火炎噴射ノズル