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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】浴槽用給湯口アダプタ
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/13 20220101AFI20220927BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20220927BHJP
   F24H 9/00 20220101ALI20220927BHJP
【FI】
F24H9/13 A
A47K3/00 E
F24H9/00 V
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018187319
(22)【出願日】2018-10-02
(65)【公開番号】P2020056535
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)株式会社ハタノ製作所が、小林伸成及び山縣正義が発明した浴槽用給湯アダプタを販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】594107103
【氏名又は名称】株式会社ハタノ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸成
(72)【発明者】
【氏名】山縣 正義
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特許第6149422(JP,B2)
【文献】特開平10-30847(JP,A)
【文献】実開平2-55053(JP,U)
【文献】特開2016-121825(JP,A)
【文献】特開2007-139207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00 - 9/14
A47K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が槽内に臨むように配置される仕切部材本体と、浴槽壁部を貫通するように配置される第1および第2流路と、前記仕切部材本体の前面に設けられ、かつ前記第1流路に連通する第1吐出口および第1吸込口と、前記仕切部材本体の前面に設けられ、かつ前記第2流路に連通する第2吐出口および第2吸込口と、前記第1,第2吐出口および第1,第2吸込口に設けられた第1,第2吐出側逆止弁および第1,第2吸込側逆止弁とを備え、浴槽外から湯水が前記第1および第2流路のうちいずれか一方の流路に供給されて、前記一方の流路を通ってその流路に対応する吐出口から浴槽内に吐出されるとともに、浴槽内の湯水が、他方の流路に対応する吸込口から吸い込まれて前記他方の流路を通って槽外に流出されるようにした浴槽用給湯口アダプタであって、
前記第1および第2吐出側逆止弁は、前記第1および第2吐出口の前面側を閉塞する態様に配置されて、前記第1および第2吐出口の開口縁部に近接することによって、前記第1および第2吐出口を閉塞するように構成され、
前記第1および第2吐出側逆止弁は、吐出方向側の圧力と吸込方向側の圧力とが均衡した通常状態において、前記第1および第2吐出口の開口縁部に対し前方に離間して配置されていることを特徴とする浴槽用給湯口アダプタ。
【請求項2】
前記第1および第2吐出口にはその開口面に沿ってリブが設けられ、
前記リブに前方に突出する支持凸部が設けられ、その支持凸部によって前記第1および第2吐出側逆止弁が前方に押し込まれた状態に支持されている請求項1に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【請求項3】
前記第1および第2吐出口に、前記リブがそれぞれ複数設けられ、各リブに前記支持凸部がそれぞれ設けられている請求項2に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【請求項4】
前記第1吐出側逆止弁と前記第1吸込側逆止弁とが一体に形成されるとともに、前記第2吐出側逆止弁と前記第2吸込側逆止弁とが一体に形成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【請求項5】
前記第1および第2吸込口は横並びに配置されるとともに、前記第1および第2吐出口は、前記第1および第2吸込口の下側において横並びに配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽壁部に貫通状態に取り付けられ、浴槽外の給湯機から湯水を浴槽内に供給するための浴槽用給湯口アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭等の浴槽において、追い焚きが行えるような給湯システムには、浴槽壁部に循環式の給湯口アダプタが貫通状態に組み付けられている。給湯口アダプタの槽外側には、第1および第2の2つの外管接続口があり、例えば第1外管接続口に室外給湯機から浴槽内に湯水を供給する往き管が接続されるとともに、第2外管接続口に浴槽内の湯水を給湯機に戻す戻り管が接続される。そして給湯機からの湯水が第1外管接続口を介してアダプタ内に供給されて浴槽内に吐出されるとともに、浴槽内の湯水がアダプタ内に吸い込まれて、第2外管接続口を介して給湯機に戻されるようになっている。
【0003】
また給湯口アダプタにおいて無極性タイプのものは、第1および第2外管接続口のいずれに往き管および戻り管を接続しても、正常に動作するように構成されている。
【0004】
下記特許文献1には、無極性タイプの給湯口アダプタにおいて逆止弁付きのものが開示されている。この給湯口アダプタは、第1外管接続口と連通する第1流路と、第2外管接続口と連通する第2流路と、各流路にそれぞれ連通し、かつ浴槽内に臨む吐出口および吸込口と、各吐出口および各吸込口にそれぞれ設けられた逆止弁とを備えている。
【0005】
この給湯口アダプタにおいては、往き管が第1外管接続口に連結された場合には、給湯機から供給された湯水が、往き管を介して第1流路に導入されて、第1流路室の吐出口から浴槽内に吐出されるとともに、浴槽内の湯水が第2流路の吸込口から吸い込まれて、第2外管接続口および戻り管を介して給湯機に戻されるようになっている。逆に往き管が第2外管接続口に連結された場合には、給湯機からの湯水が往き管、第2流路、吐出口を介して浴槽内に吐出されるとともに、浴槽内の湯水が第1流路の吸込口から吸い込まれて、第1外管接続口および戻り管を介して給湯機に戻されるようになっている。
【0006】
一方、従来の給湯機において1缶2水路式給湯機が周知である。この給湯機は1つの燃焼室内に、追い焚きや湯はり時に浴槽に湯水を供給する浴槽側給湯回路と、台所や洗面台等、浴槽以外の箇所に湯水を供給する他の給湯回路とが共存して設けられている。
【0007】
このような1缶2水路式給湯機に上記の逆止弁付無極性給湯口アダプタが適用された給湯システムにおいては、逆止弁の振動による異音が発生するおそれがある。すなわち一般的に給湯口アダプタの逆止弁は、自然状態においては閉塞されており、浴槽側給湯回路が未使用の状態ではその回路内が密閉されている。このような状態において、他の給湯回路でお湯が供給されると、つまり他の給湯回路内の水が加熱されると、給湯機内において浴槽側給湯回路も加熱されて、浴槽側給湯回路内に滞留する水が膨張し、浴槽側給湯回路内の圧力が高くなる。そうすると、浴槽側給湯回路に繋がる給湯口アダプタの逆止弁が振動して、異音が発生し、使用者等に不快感を与えてしまうおそれがある。
【0008】
そこで下記特許文献1に示す給湯口アダプタにおいては、各流路の吸込口に設けられる逆止弁を、自然状態において吸込口に対し少しだけ離間した少開状態に配置しておき、既述したように未使用状態で浴槽側給湯回路が加熱されて圧力が上昇した際には、少開状態の吸込口から圧力を逃がすことによって、逆止弁の振動、ひいては異音の発生を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第6149422号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に示す従来の給湯口アダプタでは既述した通り、吐出側の流路(往き流路)となる一方側流路の吸込口と、吸込側の流路(戻り流路)となる他方側流路の吸込口とがそれぞれ少開状態となっているが、少ない流量で浴槽の湯水を循環させるような場合、水圧が不十分であり、吐出側の流路の吸込口の逆止弁が確実に閉塞されず、少開状態が維持される。このため給湯機から吐出側の流路に供給された湯水のうち、一部の湯水が吐出側流路の吸込口から浴槽側に流出されてしまう。ここで、通常の給湯口アダプタにおいては、吐出側流路の吸込口と、吸込側流路の吸込口とは左右に隣合うように配置されるとともに、隣合う2つの吸込口の前面側を覆うように前面カバーが設けられている。このため吐出側流路の吸込口から流出した湯水は、前面カバー内で滞留して、吸込側流路の吸込口から吸引され、いわゆるショートサーキットが発生し、給湯機から浴槽内に湯水を効率良く供給することができないという課題が発生する。
【0011】
さらに追い焚き時にショートサーキットによって高温の湯水が吸い込まれると、その湯水により、給湯機が追い焚き設定温度まで達したと誤検知し、浴槽の水温が設定温度よりも低い温度状態で追い焚きが終了してしまうという課題が発生する。
【0012】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、異音の発生を防止できる上さらに、ショートサーキットの発生を防止することができる浴槽用給湯口アダプタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0014】
[1]前面が槽内に臨むように配置される仕切部材本体と、浴槽壁部を貫通するように配置される第1および第2流路と、前記仕切部材本体の前面に設けられ、かつ前記第1流路に連通する第1吐出口および第1吸込口と、前記仕切部材本体の前面に設けられ、かつ前記第2流路に連通する第2吐出口および第2吸込口と、前記第1,第2吐出口および第1,第2吸込口に設けられた第1,第2吐出側逆止弁および第1,第2吸込側逆止弁とを備え、浴槽外から湯水が前記第1および第2流路のうちいずれか一方の流路に供給されて、前記一方の流路を通ってその流路に対応する吐出口から浴槽内に吐出されるとともに、浴槽内の湯水が、他方の流路に対応する吸込口から吸い込まれて前記他方の流路を通って槽外に流出されるようにした浴槽用給湯口アダプタであって、
前記第1および第2吐出側逆止弁は、前記第1および第2吐出口の前面側を閉塞する態様に配置されて、前記第1および第2吐出口の開口縁部に近接することによって、前記第1および第2吐出口を閉塞するように構成され、
前記第1および第2吐出側逆止弁は、吐出方向側の圧力と吸込方向側の圧力とが均衡した通常状態において、前記第1および第2吐出口の開口縁部に対し前方に離間して配置されていることを特徴とする浴槽用給湯口アダプタ。
【0015】
[2]前記第1および第2吐出口にはその開口面に沿ってリブが設けられ、
前記リブに前方に突出する支持凸部が設けられ、その支持凸部によって前記第1および第2吐出側逆止弁が前方に押し込まれた状態に支持されている前項1に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【0016】
[3]前記第1および第2吐出口に、前記リブがそれぞれ複数設けられ、各リブに前記支持凸部がそれぞれ設けられている前項2に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【0017】
[4]前記第1吐出側逆止弁と前記第1吸込側逆止弁とが一体に形成されるとともに、前記第2吐出側逆止弁と前記第2吸込側逆止弁とが一体に形成されている前項1~3のいずれか1項に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【0018】
[5]前記第1および第2吸込口は横並びに配置されるとともに、前記第1および第2吐出口は、前記第1および第2吸込口の下側において横並びに配置されている前項1~4のいずれか1項に記載の浴槽用給湯口アダプタ。
【発明の効果】
【0019】
発明[1]の浴槽用給湯口アダプタによれば、仕切部材本体の吐出口に設けられた吐出側逆止弁を通常状態において少開状態に設定しているため、少開状態の吐出口から圧力を逃がすことによって、未使用時の給湯回路内における不用意な圧力上昇を回避することができる。このためその不用意な圧力上昇によって逆止弁が振動して異音が発生するのを防止することができる。さらに吐出口から吐出される湯水は通常、軸心方向に対し直交する径方向の外側に向けて流出されるため、一方の吐出口から吐出される湯水が他方の吐出口側に流動するのを防止することができる。このため吐出側の流路に連通する一方の吐出口から吐出される湯水が、吸込側の流路に連通する少開状態の他方の吐出口から吸い込まれるのを防止でき、ショートカットの発生を確実に防止することができる。
【0020】
発明[2][3]の浴槽用給湯口アダプタによれば、吐出側逆止弁を所望の形態に確実に支持することができるため、高い動作信頼性を得ることができ、品質を向上させることができる。
【0021】
発明[4]の浴槽用給湯口アダプタによれば、吐出側逆止弁と吸込側逆止弁とを一体に形成しているため、その2つの弁の一体品を仕切部材本体に取り付けるだけで、吐出側および吸込側の2つの逆止弁を一度に組み付けることができる。このように逆止弁を効率良く組み付けることができ、アダプタ全体の組付作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0022】
発明[5]の浴槽用給湯口アダプタによれば、上記の効果をより確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1はこの発明の実施形態である浴槽用給湯口アダプタを示す側面断面図である。
図2図2は実施形態の給湯口アダプタを分解して示す斜視図である。
図3図3は実施形態の給湯口アダプタに適用された仕切部材を分解して示す斜視図である。
図4図4は実施形態の給湯口アダプタに適用された弁付き仕切部材本体を示す正面図である。
図5図5は実施形態の弁付き仕切部材本体を示す下面図である。
図6図6は実施形態の弁付き仕切部材本体を示す側面断面図である。
図7図7は実施形態の仕切部材本体を示す正面図である。
図8図8は実施形態の仕切部材本体を示す下面断面図である。
図9図9図7の要部断面図であって、図(a)は図7のDa-Da線断面図、図(b)は図7のDb-Db線断面図、図(c)は図7のDc-Dc線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1はこの発明の実施形態である浴槽用給湯口アダプタを示す側面断面図、図2はその給湯口アダプタを分解して示す斜視図である。両図に示すように、この給湯口アダプタは、槽外取付部材1と、槽内取付部材2、仕切部材3と、フィルターカバー9とを基本的な構成要素として備えている。なお本実施形態においては、発明の理解を容易にするため、給湯口アダプタの軸心方向に沿って浴槽内側を「前側」とし、浴槽外側を「後側」として説明する。
【0025】
槽外取付部材1は、前面側が開放され、かつ後面側が閉塞された円筒形状の外筒部12と、その外筒部12の内部に同軸心上に配置される円筒形状の内筒部11と、外筒部12の前端外周に設けられたフランジ部15と、外筒部12の後部外面に設けられた管状の第1および第2外管接続口1a,1bとを備えている。
【0026】
内筒部11の内側空間は、後述の第1流路Aの一部として構成されるとともに、内筒部11および外筒部12間の環状空間は、後述の第2流路Bの一部として構成されている。第1外管接続口1aは、第1流路Aとしての内筒部11内に連通するとともに、第2外管接続口1bは、第2流路Bとしての内筒部11および外筒部12間の環状空間に連通している。
【0027】
なお槽外取付部材1における外筒部12の内周面には、槽内取付部材2を組み付けるための雌ねじが刻設されている。
【0028】
槽内取付部材2は、両端が開放された円筒形状の円筒部21と、その円筒部21の前端外周に設けられたフランジ部25とを備えている。槽内取付部材2の外周面には、槽外取付部材1の雌ねじに対応して雄ねじが刻設されており、槽外取付部材1における外筒部12の筒孔内に螺着できるように構成されている。
【0029】
図1および図2に示すように、槽外取付部材1のフランジ部15が、浴槽の周壁(浴槽壁部W)の外面における取付孔Hの周縁部にパッキン81(図1参照)を介して沿うように配置された状態で、槽内取付部材2のフランジ部25が、パッキン82(図1参照)を介して浴槽壁部Wの内面における取付孔Hの周縁部に圧接しつつ、槽内取付部材2の円筒部21が取付孔Hを通じて槽外取付部材1の外筒部12内にねじ込まれて固定される。これにより両取付部材1,2のフランジ部15,25が、浴槽壁部Wにおける取付孔周縁部を挟持することにより、両取付部材1,2が浴槽壁部Wに貫通状態に組み付けられる。
【0030】
図3は仕切部材3を分解して示す斜視図、図4図6は弁付き仕切部材本体31を示す図、図7および図8は仕切部材本体31を示す図である。これらの図に示すように、仕切部材3は、仕切部材本体31と、仕切部材本体31の前面側を覆うように配置される円板状の前面カバー39とを備えている。
【0031】
仕切部材本体31は、前端に設けられた円盤部32と、円盤部32の裏面側に軸心に沿って後方に延びるように一体に形成された円筒部35とを備えた硬質合成樹脂の一体成形品によって構成されている。
【0032】
仕切部材本体31の円盤部32には、中間部の下側に左右に並んで第1吐出口4aおよび第2吐出口4bが形成されるとともに、中間部における第1吐出口4aおよび第2吐出口4bの上側に、左右に並んで第1吸込口5aおよび第2吸込口5bが形成されている。なお図7の仕切部材本体31の正面図に示すように、左右に並ぶ第1吐出口4aおよび第2吐出口4bと、第1吸込口5aおよび第2吸込口5bとの間には、横仕切部37がそれぞれ形成されるとともに、上下に並ぶ第1吐出口4aおよび第1吸込口5aと、第2吐出口4bおよび第2吸込口5bとの間には、縦仕切部36がそれぞれ形成されている。
【0033】
第1吐出口4aおよび第1吸引口5aは、円盤部32の裏面側に膨出状に一体形成された流路形成部33を介して円筒部35の内部に連通されている。
【0034】
また第2吐出口4bおよび第2吸込口5bは、円盤部32の裏面側において、円筒部35の外側に連通(開放)されている。
【0035】
仕切部材本体31における円盤部32の前面には、第1および第2吐出口4a,4b間に上下方向に沿って仕切壁45が形成されている。なおこの仕切壁45は、第1および第2吐出口4a,4bのいずれか一方の吐出口から吐出された湯水が、他方の吐出口に吸い込まれるのを防止するためのものである。
【0036】
図7および図8に示すように、仕切部材本体4における第1および第2吐出口4a,4bには、その開口面に沿って上下方向に延びる3本のリブ41が一体にそれぞれ形成されている。
【0037】
図9(a)は図7のDa-Da線断面図、図9(b)は図7のDb-Db線断面図、図9(c)は図7のDc-Dc線断面図である。図7および図9(a)に示すように各3本のリブ41のうち最も内側(軸心寄り)のリブ411は、吐出口4a,4bの開口縁部下端から縦仕切部36に沿うようにしながら上方に延びて横仕切部37に至るように形成されており、図7および図9(b)に示すように内側から2番目のリブ412は、吐出口4a,4bの開口縁部下端から上方に延びて吐出口4a,4bの上下方向の中間位置で途切れるように形成されており、図7および図9(c)に示すように内側から3番目(最も外側)のリブ413は、横仕切部37から下方に延びて吐出口4a,4bの開口縁部下端近傍に至るように形成されている。
【0038】
さらに図9(a)~(c)に示すように各リブ41には、その前端縁に前方に突出する支持凸部42が形成されている。この支持凸部42の先端(前端)位置は、吐出口4a,4bの開口面から前方に突出するように形成されている。
【0039】
図3図6に示すように吐出口4a,4bおよび吸込口5a,5bに設けられる第1および第2弁部材6a,6bは、柔軟性および弾力性を有する縦長の合成ゴム製のシート部材によって構成されている。さらに各弁部材6a,6bの下側半分は第1および第2吐出側逆止弁61a,61bとして構成されるとともに、上側半分は第1および第2吸込側逆止弁62a,62bとして構成されている。
【0040】
第1および第2弁部材6a,6bを仕切部材本体4に取り付けるための弁取付板65は、第1および第2吸込口5a,5bの双方を閉塞し得る形状に形成されており、第1および第2吸込口5a,5bに対応して、開口66a,66bが形成されている。なお開口66a,66bには各開口66a,66bを縦断するようにリブ67(図4参照)が形成されている。
【0041】
そして上記第1および第2弁部材6a,6bにおける第1,第2吐出側逆止弁61a,61bおよび第1,第2吸込側逆止弁62a,62bによって、仕切部材本体4の円盤部32における第1,第2吐出口4a,4bおよび第1,第2吸込口5a,5bを覆うようにして、第1および第2弁部材6a,6bが円盤部32の前面側に配置される。さらにその状態で、弁取付板65がその開口66a,66bを第1および第2吸込側逆止弁62a,62bに対応させつつ、弁取付板65の開口66a,66bの開口縁部が、仕切部材本体4の円盤部32における第1および第2吸込口5a,5bの開口縁部に固定される。これにより第1弁部材6aの第1吐出側逆止弁61aおよび第1吸込側逆止弁62a間の境界部と、第2弁部材6bの第2吐出側逆止弁61bおよび第2吸込側逆止弁62b間の境界部とが、仕切部材本体4における横仕切部37,37にそれぞれ圧接して固定される。
【0042】
この状態において、吸込側逆止弁62a,62bは、下端部が固定されて、その下端部を支点に前後方向に弾性変形自在に構成されている。さらに弁取付板65における開口66a,66bの開口縁部が、吸込側逆止弁62a,62bの外周縁部と密着可能な弁座として機能する。従って、湯水の水圧によって、逆止弁62a,62bに対し吸込方向の圧力が作用した際には、逆止弁62a,62bが後側に弾性変形して、第1および第2吸込口5a,5bが開放されて、湯水の吸引が許容されるとともに、吐出方向の圧力が作用した際には、逆止弁62a,62bが弁取付板65の開口縁部に密着して、弁取付板65の開口66a,66bが閉塞されることにより、第1および第2吸込口5a,5bが間接的に閉塞されて、湯水の吐出が制限されるように構成されている。なお本実施形態において、吸込側逆止弁62a,62bは、吸込方向(図1の紙面に向かって右側方向)の圧力と吐出方向(図1の左側方向)の圧力とが均衡した通常状態においては、弁取付板65の開口縁部に密着して、第1および第2吸込口5a,5bは閉塞されるように構成されている。
【0043】
一方、吐出側逆止弁61a,61bは、上端部が固定されて、その上端部を支点に前後方向に弾性変形自在に構成されている。さらに第1および第2吐出口4a,4bの開口縁部が、吐出側逆止弁61a,61bの外周縁部と密着可能な弁座として機能する。従って、逆止弁61a,61bに対し吐出方向の圧力が作用した際には、逆止弁61a,61bが前側に弾性変形して、第1および第2吐出口4a,4bが開放されて、湯水の吐出が許容されるとともに、吸込方向の圧力が作用した際には基本的に、逆止弁61a,61bが第1および第2吐出口4a,4bの開口縁部に密着して、第1および第2吐出口4a,4bが閉塞されて、湯水の吸込が制限されるように構成されている。
【0044】
ここで図5および図6に示すように、本実施形態においては、第1および第2吐出口4a,4bの開口面に沿って設けられたリブ41には、前方に突出する支持凸部42が形成されているため、その支持凸部42によって吐出側逆止弁61a,61bが前方に押し込まれるように支持されている。このため吐出側逆止弁61a,61bは通常状態において、少し前方に押し曲げられて、吐出口4a,4bの開口縁部から少し前方に離間して、少し開放した状態となっている。
【0045】
図1図3に示すように、仕切部材本体31の円盤部32にはその前面側を覆うように前面カバー39が取り付けられて、仕切部材3が組み付けられる。
【0046】
この仕切部材3の前面カバー39には、第1および第2吸込口5a,5bに対応して、多数の吸込孔5が形成されている。そして前面カバー39の前方側から湯水が吸込孔5を通って第1および第2吸込口5a,5bに吸い込まれるように構成されている。
【0047】
また仕切部材3における円盤部32の下縁部と前面カバー39の下縁部との間には、隙間が形成されて、この隙間によって、径方向の斜め下向きから下向きにかけて開口する吐出用開口4が形成されている。そして第1および第2吐出口4a,4bから前方に吐出された湯水が、円盤部32および前面カバー39間の隙間を通って、吐出用開口4から吐出されるように構成されている。
【0048】
以上の構成の仕切部材3が、浴槽壁部Wに組み付けられた槽外取付部材1および槽内取付部材2に組み付けられる。すなわち仕切部材3の円盤部32の裏面側外周縁部を槽内取付部材2のフランジ部25の前面側に圧接させつつ、仕切部材3の円筒部35を槽内取付部材2の円筒部21を通じて、槽外取付部材1の内筒部11にパッキン83(図1参照)を介して水密状態に連結し、その状態で周知の固定手段によって仕切部材3を槽内取付部材2に着脱自在に固定する。
【0049】
この組付状態においては、槽外取付部材1の内筒部11の内部と、仕切部材3の円筒部35の内部とが連通し、その連通部によって、第1外管接続口1aから第1吐出口4aおよび第1吸込口5aに至る第1流路Aが形成される。さらに槽外取付部材1の内筒部11および外筒部12間の環状空間部と、仕切部材3の内筒部35および槽内仕切部材2の円筒部21間の環状空間部とが連通し、その環状連通部によって、第2外管接続口1bから第2吐出口4bおよび第2吸込口5bに至る第2流路Bが形成される。本実施形態においては、第1および第2流路A,Bは互いに独立した流路として構成されている。
【0050】
図1および図2に示すようにフィルターカバー9は、円形の前壁部91と、前壁部91の外周縁部に後方に延びるように形成された周壁部95とを備えている。そしてこのフィルターカバー9がその前壁部91によって仕切部材3の前面カバー39の前方を覆うとともに、周壁部95によって仕切部材3の円盤部32の外周側面を覆うようにして、仕切部材3の円盤部32に着脱自在に組み付けられる。
【0051】
フィルターカバー9には、その前壁部91に多数の吸込孔92が形成されるとともに、周壁部95の下縁部に、仕切部材3の吐出用開口4に対応して吐出用開口96が形成されている。
【0052】
以上のように構成された本実施形態の給湯口アダプタは、室外の給湯機から湯水を給湯口アダプタに供給するための往き管と、給湯口アダプタから給湯機に湯水を戻すための戻り管とが第1および第2外管接続口1a,1bに接続されて、給湯機から供給される湯水を浴槽内に供給する湯はり(貯湯処理)と、浴槽内の湯水を給湯機に戻して再度浴槽内に戻す追い焚き(循環処理)とを行えるものである。
【0053】
さらに本実施形態の給湯口アダプタは、第1および第2外管接続口1a,1bのいずれに対して、往き管および戻り管のどちらを接続しても使用可能な、いわゆる無極性タイプのものである。例えば、第1外管接続口1aに往き管が接続されるとともに、第2外管接続口1bに戻り管が接続された場合には、往き管から第1外管接続口1aに供給された湯水が第1流路Aを通り、その流通する湯水の水圧によって第1吐出側逆止弁61aが開放されて、湯水が第1吐出口4aから吐出される。さらに第1吐出口4aから吐出された湯水は、仕切部材3の吐出用開口4およびフィルターカバー9の吐出用開口96を通って浴槽内に吐出される。この場合、仕切部材3の第1吸込口5aは、第1流路Aを流通する湯水の水圧によって第1吸込側逆止弁62aが閉塞されるため、第1吸込口5aから湯水が吐出されるのが防止される。
【0054】
また浴槽内の湯水は、フィルターカバー9の吸込孔92および仕切部材3の前面カバー39の吸込孔5から吸い込まれ、その吸い込まれた湯水の水圧によって、第2吸込側逆止弁62bが開放されて、湯水が第2吸込口5bから第2流路B内に吸い込まれる。さらに第2流路B内に吸い込まれた湯水は、第2流路B、第2外管接続口1bおよび戻り管を通って給湯機に戻される。この場合、仕切部材3の第2吐出口4bにおいては、第2流路B内が負圧となるため、第2吐出口4bが第2吐出側逆止弁61bによって閉塞されて、第2吐出口4bから浴槽内の湯水が吸い込まれるのが防止される。
【0055】
一方、第2外管接続口1bに往き管が接続されるとともに、第1外管接続口1aに戻り管が接続された場合には、往き管から第2外管接続口1bに供給された湯水が第2流路Bを通り、その流通する湯水の水圧によって第2吐出側逆止弁61bが開放されて、湯水が第2吐出口4bから吐出される。さらに第2吐出口4bから吐出された湯水は、仕切部材3の吐出用開口4およびフィルターカバー9の吐出用開口96を通って浴槽内に吐出される。この場合、仕切部材3の第2吸込口5bは、第2流路Bを流通する湯水の水圧によって第2吸込側逆止弁62bが閉塞されるため、第2吸込口5bから湯水が吐出されるのが防止される。
【0056】
また浴槽内の湯水は、フィルターカバー9の吸込孔92および仕切部材3の前面カバー39の吸込孔5から吸い込まれ、その吸い込まれた湯水の水圧によって、第1吸込側逆止弁62aが開放されて、湯水が第1吸込口5aから第1流路A内に吸い込まれる。さらに第1流路A内に吸い込まれた湯水は、第1流路A、第1外管接続口1aおよび戻り管を通って給湯機に戻される。この場合、仕切部材3の第1吐出口4aにおいては、第1流路A内が負圧となるため、第1吐出口4aが第1吐出側逆止弁61aによって閉塞されて、第1吐出口4aから浴槽内の湯水が吸い込まれるのが防止される。
【0057】
このように本実施形態の給湯口アダプタにおいては、第1および第2外管接続口1a,1bのいずれに対して、往き管および戻り管のどちらを接続しても問題なく、浴槽内および給湯機間に湯水を循環させることができる。
【0058】
以上のように構成された本実施形態の給湯口アダプタにおいては、仕切部材3の吐出口4a,4bに設けられた吐出側逆止弁61a,61bを通常状態において少開状態に設定しているため、1つの燃焼室内に浴槽側給湯回路と、他の給湯回路とが共存する1缶2水路式給湯機に接続したとしても、異音の発生を確実に防止することができる。すなわち本実施形態の給湯口アダプタにおいては、浴槽側給湯回路の一部を構成する第1および第2流路A,Bが通常状態で大気に開放されているため、未使用の浴槽用給湯回路が、他の給湯回路の影響によって加熱されたとしても、未使用状態の浴槽用給湯回路内の圧力が高くなるのを防止することができる。このためその圧力上昇によって逆止弁61a,61b,62a,62bが振動して異音が発生するのを防止することができる。
【0059】
また本実施形態の給湯口アダプタにおいて、吐出側逆止弁61a,61bは通常状態で少開状態に設定されており、少ない流量で湯水を循環させるような場合には水圧が低くなるため、吐出側逆止弁61a,61bのうち、吸込側の流路(戻り流路)、例えば第2流路B側に配置される吐出側逆止弁61bは確実に閉じられず、第2吐出口4bが少し開いたままの状態となる。このためその少開状態の第2吐出口4bから第2流路(吸込側の流路)B内に湯水が吸い込まれるおそれがある。しかしながら、本実施形態の給湯口アダプタにおいては、仕切部材3の第1および第2吐出口4a,4bから吐出される湯水は、両側方から下方に向けて、換言すると軸心方向に対し直交する径方向の外側に向けて吐出されるように構成しているため、吐出側の流路(往き流路)としての第1流路A側の第1吐出口4aから吐出される湯水は、第2吐出口4b側に流動することがない。このため第1吐出口4aから吐出された湯水が浴槽内に吐出されずに第2吐出口4bから直ちに吸い込まれる、いわゆるショートカットの発生を確実に防止することができる.従って、浴槽および給湯機間の湯水の循環を効率良く行うことができ、追い焚きをスムーズに行うことができる。
【0060】
その上さらに本実施形態の給湯口アダプタにおいては、仕切部材本体31の円盤部32の前面における第1および第2吐出口4a,4bに仕切壁45を形成して、その仕切壁45によって、一方の吐出口から流出した湯水が、他方の吐出口側に流動しないようにしているため、ショートカットの発生をより一層確実に防止することができる。
【0061】
また本実施形態の給湯口アダプタにおいては、仕切部材3の第1および第2吐出口4a,4bに開口面に沿ってリブ41を形成し、そのリブ41に設けた支持凸部42によって、第1および第2吐出側逆止弁61a,61bを前方に押し込んで支持するようにしているため、通常状態においては、第1および第2吐出側逆止弁61a,61bを少開状態に確実に保持できるとともに、水圧が強い場合には、逆止弁61a,61bの外周縁部を、吐出口4a,4bの開口縁部に密着できて確実に閉塞することができる。このように吐出口4a,4bにおいて通常時には所望の少開状態を維持しつつ、必要時には確実に閉塞できるため、高い動作信頼性、ひいては高い品質を確実に得ることができる。
【0062】
さらに複数のリブ41を各吐出口4a,4bにそれぞれ形成して、各リブ41に支持凸部42を形成しているため、各吐出側逆止弁61a,61bは複数の支持凸部42によって安定した状態に支持される。このため各吐出側逆止弁61a,61bは、所望の動作を確実に得ることができ、より一層動作信頼性を向上させることができる。
【0063】
また本実施形態の給湯口アダプタにおいては、吐出側逆止弁61a,61bと吸込側逆止弁62a,62bとを一体に有する弁部材6a,6bを用いているため、1つの弁部材を取り付けるだけで2つの逆止弁を一度に組み付けることができる。このように逆止弁61a,61b,62a,62bを効率良く組み付けることができ、アダプタ全体の組付作業を簡単かつスムーズに行うことができる。
【0064】
なお上記実施形態においては、第1吐出側逆止弁61aと第1吸込側逆止弁62aとを一体に形成し、かつ第2吐出側逆止弁61bと第2吸込側逆止弁62bとを一体に形成する場合を例に挙げて説明したが、それだけに限られず、本発明においては、逆止弁同士を一体に形成しても良いし、一体に形成しなくとも良い。例えば第1吐出側逆止弁61aと第2吐出側逆止弁61bとを一体に形成し、かつ第1吸込側逆止弁62aと第2吸込側逆止弁62bとを一体に形成しても良いし、各逆止弁61a,61b,62a,62bをそれぞれ別体に形成しても良い。さらに4つの逆止弁61a,61b,62a,62bうち、いずれか2つの逆止弁を一体に形成し、残り2つの逆止弁を別体に形成するようにしても良い。さらにいずれか3つの逆止弁を一体に形成し、残り1つの逆止弁を別体に形成しても良いし、4つの逆止弁を一体に形成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明の浴槽用給湯口アダプタは、室外給湯機から浴槽内に湯水を供給する際に浴槽壁部に組み付けられる湯水供給装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1a:第1外管接続口
1b:第2外管接続口
31:仕切部材本体
4a,4b:第1吐出口、第2吐出口
41,411~413:リブ
42:支持凸部
5a,5b:第1吸込口、第2吸込口
61a,61b:第1吐出側逆止弁、第2吐出側逆止弁
62a,62b:第1吸込側逆止弁、第2吸込側逆止弁
67:リブ
A:第1流路
B:第2流路
W:浴槽壁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9