(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】接合型歩行誘導マット
(51)【国際特許分類】
E01F 9/553 20160101AFI20220927BHJP
E01F 9/506 20160101ALI20220927BHJP
E01F 9/512 20160101ALI20220927BHJP
【FI】
E01F9/553
E01F9/506
E01F9/512
(21)【出願番号】P 2018233312
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名 日本ライトハウス展 全国ロービジョンフェア2018 開催場所 難波御堂筋ホール 開催日 平成30年10月13日~平成30年10月14日 (刊行物等)集会名 サイトワールド2018 開催場所 すみだ産業会館サンライズホール 開催日 平成30年11月1日~平成30年11月3日 (刊行物等)集会名 2018アイフェスタふくやま 開催場所 福山市市民参画センター 開催日 平成30年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】302025109
【氏名又は名称】トーワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】杉原 実
(72)【発明者】
【氏名】杉原 昇
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-098021(JP,A)
【文献】特開2010-285768(JP,A)
【文献】特開2015-224445(JP,A)
【文献】実開昭56-007975(JP,U)
【文献】実開昭51-126023(JP,U)
【文献】実開平01-094500(JP,U)
【文献】実開昭52-112229(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 9/553
E01F 9/506
E01F 9/512
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向断面の中央が同一厚みに形成され、表面に平坦な水平面(1a)を有し、左右両側縁に緩やかに傾斜した本体のスロープ面(1b)を有する台形断面を備えた縦長の本体マット(1)と、該本体マット(1)の縦方向端部にジョイント部(3)を介して連結され先端側に緩やかな傾斜面からなる端部のスロープ面(2b)を有し、連結端が上記本体マット(1)と同一の台形断面を有する端部マット(2)からなり、本体マット(1)の左右両側端の各端部に対して互に定角度の直線で結ばれる位置に、結ばれる直線であるカットライン(6)に沿って本体マット(1)を切離し切断を行うためのカットマーク(4)を付し、
本体マット(1)の水平面(1a)の裏側の接地面に、グリップ力を補強する多数の山形の突部(7)を形成したグリップ面(1d)を形成し、カットライン(6)の裏側にグリップ面(1d)を形成しない帯状のカットエリア(5)を設け、該カットエリア(5)を介してグリップ面(1d)を前後にブロック状に分割形成した接合型歩行誘導マット。
【請求項2】
隣接するカットライン(6)が互に平行になるように本体マット(1)の左右両側端にそれぞれ複数のカットマーク(4)を付した請求項1に記載の接合型歩行誘導マット。
【請求項3】
グリップ面(1d)と重なる本体マット(1)の表面側の水平面(1a)にシボ加工を施した請求項
1又は2に記載の接合型歩行誘導マット。
【請求項4】
本体マット(1)と端部マット(2)を連結接合するジョイント部(3)を、各マット(1),(2)の接合端の水平面形成範囲に全厚みで互に係合し合うアリ接合とし、上記ジョイン部(3)の接地面側をグリップ面(1d)を形成しない平坦面(1g),(2g)としてなる請求項1~
3のいずれかに記載の接合型歩行誘導マット。
【請求項5】
同一の形状及び寸法に形成された一種類の本体マット(1)と同一形状及び寸法に形成され、一種類の端部マット(2)との組合わせにより構成される請求項1~
4のいずれかに記載の接合型歩行誘導マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は主として視覚障害者用の接合型歩行誘導マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来視覚障害者用の歩行誘導マットとして本発明者等によって提示された特許文献1,2に示すものが公知である。
【0003】
上記特許文献1,2に示すマットは、共に前後方向の長さが異なる長方形の本体マット同士又は本体マットと端部マットとの接合端を、アリ接合によって接合し、床面への敷設状態で1本の帯状に形成されるもので、帯状に接合されたマットの前後端と左右端に緩傾斜面からなるスロープ面を形成し、スロープ面の裏側を除く中央の接地面の裏側には、多数の半球状の凸部を突設したグリップ面を形成している。
【0004】
上記誘導マットは、それ以前の点字ブロックに比して車椅子や歩行障害者用の電動キャリーの走行を円滑に行わせるほか、敷設や敷設位置の変更が容易であるという効果があり、主として屋内用として普及して来ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-98021号公報
【文献】特開2015-224445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来上記文献のマットは、製造コストや敷設労力等を考慮すると、本体マットを可能な限り前後を長くして敷設枚数を少なくし、端部マットも限られた種類の規格寸法のもので対応したい半面、屋内の床形状や敷設長さを調節するために、本体マットと端部マットの縦方向の長さをそれぞれ複数種類(最低4種類の前後長さの異なるものを)準備する必要があった。このため製造コストが高くなり普及の妨げにもなっていた。
【0007】
この発明はマットの種類を端部マットと本体マットをそれぞれ一定の寸法に統一するとともに、敷設現場の条件に応じてカットすることにより敷設寸法を調整し易くし、敷設作業も容易で敷設後の不都合も生じない低コストのマットを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明のマットは、第1に横方向断面の中央が同一厚みに形成され、表面に平坦な水平面1aを有し、左右両側縁に緩やかに傾斜した本体のスロープ面1bを有する台形断面を備えた縦長の本体マット1と、該本体マット1の縦方向端部にジョイント部3を介して連結され先端側に緩やかな傾斜面からなる端部のスロープ面2bを有し、連結端が上記本体マット1と同一の台形断面を有する端部マット2からなり、本体マット1の左右両側端の各端部に対して互に定角度の直線で結ばれる位置に、結ばれる直線であるカットライン6に沿って本体マット1を切離し切断を行うためのカットマーク4を付し、本体マット1の水平面1aの裏側の接地面に、グリップ力を補強する多数の山形の突部7を形成したグリップ面1dを形成し、カットライン6の裏側にグリップ面1dを形成しない帯状のカットエリア5を設け、該カットエリア5を介してグリップ面1dを前後にブロック状に分割形成したことを特徴としている。
【0009】
第2に、隣接するカットライン6が互に平行になるように本体マット1の左右両側端にそれぞれ複数のカットマーク4を付したことを特徴としている。
【0010】
第3に、グリップ面1dと重なる本体マット1の表面側の水平面1aにシボ加工を施したことを特徴としている。
【0011】
第4に、本体マット1と端部マット2を連結接合するジョイント部3を、各マット1,2の接合端の水平面形成範囲に全厚みで互に係合し合うアリ接合とし、上記ジョイン部3の接地面側をグリップ面1dを形成しない平坦面1g,2gとしてなることを特徴としている。
【0012】
第5に、同一の形状及び寸法に形成された一種類の本体マット1と同一形状及び寸法に形成され、一種類の端部マット2との組合わせにより構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
以上のように構成される本発明のマットによれば、以下に述べるような効果を奏する。
(1)本体マットの表面両端に通常は目立たないように予め複数のカットマークを付し、敷設時に現場の条件に応じてカットマークに従って切断することにより寸法調整できるので、マットの種類を減らして製造コストを低減でき、敷設作業も能率化できる。
(2)切断する際のカットラインの接地面側には、多数の凹凸からなるグリップ面を形成せず、帯状のカットエリアを設けるため、ブロック状に形成されたグリップ面の間をカットでき、カットが正確な直線状に且つスムースに行われるほか、敷設後の両面テープ等による接着固定も容易で十分な固定性も確保できる。
(3)本体マットの接地面側にグリップ面を形成した部分の表面側にシボ加工を施すことにより、床面敷設した後の使用で、シボ面の汚れが均一になり、表面側にグリップ面の凹凸に応じた斑点状の汚れや磨耗による不自然な模様が目立たない利点があるほか、水漏れ等による通行者のスリップ事故等も防止できる。
その他本発明の効果は実施形態の説明中で述べる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の本体マットと端部マットを接合した状態の斜視図である。
【
図6】(A)~(F)は
図2~
図5中のA~F部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面は本発明のマットの実施例を示し、
図1のマットは共に弾力性を備えた合成樹脂製のマットの大半の長さを占める本体マット1と、1枚又は2枚以上接合された本体マット1の前後の端部として接合される端部マット2とで構成されている。本体マット1同士又は本体マット1と端部マット2との接合端には、接合端同士が互に上下方向にスライドしながら嵌合し、平面(床面)方向に係合し合う10mm深さの凹凸を有するアリ接合からなるジョイント部3を介して接合される。
【0016】
本体マット1はこの例では前後方向長さが510mm,左右幅が440mmのサイズで、左右方向の断面は
図4,
図5に示すように中央が6.5mm厚の平行断面で、上面は前後左右の水平面1aを形成し、その両サイドは外側に向って緩やかに下降傾斜する95mm幅程度の本体のスロープ面1bを形成し、全体が台形断面になっている。上記スロープ面1bの端部は
図6(A)に示すようにやや急勾配を形成しながら僅かな厚みの側面を残したカット形状のエッジ部1eを形成している。
【0017】
上記本体マット1の左右両端の表面のエッジ部1eの近接位置には、
図2,
図6(D)に示すような三角形のカットマーク4が一定間隔毎に付されており、この相対する左右のカットマーク4を直線定規(図示しない)で結んでカッターにより切断することにより、この例では本体マット1を前後略3等分位置で略長方形(又は正方形)に等分割できるようになっている。上記カットマーク4はマット表面に印刷、エッチング又はシボ加工等により付され、左右方向の直線(カットライン)の目印になれば足りる。
【0018】
上記によりカットされる直線状のカットライン6は、切断によって形成されるラインであって、通常はマット表面には表示されていない。また本体マット1の上面は台形断面に形成されているので、カットのために使用される定規のマットへの押接面は、本体マット1の上面山形断面にフィットする台形状の凹凸形状に形成したものを用いることが望ましい。このカットライン6を含むマットの表裏両面には後述するグリップ面1dやシボ加工面1cを形成しない平坦な面よりなる左右方向の帯状のカットエリア5が形成される。このカットエリア5の前後幅は20mm程度である。
【0019】
また、本体マット1の表面の平行面1aは、
図1,
図2にハッチングで示されるようにシボ加工が施されたシボ加工面1cとなっており、スロープ面1bには滑り止めを兼ねた僅かな凹凸模様からなるエッチング加工が施されており、本体マット1の水平面1aの裏面側には、
図3,
図6(B),同(C)に示すようにマットの弾力性と床面へのグリップ力を高めるための多数の半円形の山形からなる突部7を形成した凹凸面であるグリップ面1dが形成されている。
【0020】
上記シボ加工面1cとグリップ面1dは、
図2,
図3に示すように表裏各面のカットエリア5によって分割された同形(略長方形)のブロック形状に配置形成されている。上記突部7の下向きの山形の頂部には、平坦な接地面7aが形成され、接地時の接触面積を広く取り、グリップ力を高める構造になっている(
図6(B),同(C)参照)。
【0021】
上記カットエリア5内には、シボ加工面1cやグリップ面1dが形成されないため、定規とカッターによる切断作業がスムースで正確に直線状に行われる利点があるほか、カット後の切断面同士を突合せて両面テープ等を用いた床面に接着する際も突合わせ易く、接着も確実に行われる。
【0022】
端部マット2は、この例では左右幅440mmで、前後幅155mmに形成されており、左右方向断面形状は本体マット1と同一断面であり、上面の水平面2a,両側のスロープ面2bも本体マット1の左右方向断面と適合する。そして端部マット2の前後端側も約90mm幅のスロープ面2bを形成しており、これらのスロープ面2bのエッジ部2eの断面形状も本体マット1のものと共通している。
【0023】
そして本体マット1の水平面1a上のジョイント部3と適合して嵌合し合うジョイント部3の前後両側には、シボ加工を施さない平坦面2dが左右方向に帯状に残され、さらにその外側には左右方向に帯状のハッチング部分で示すシボ加工面2cが形成されている。また平面視でコ字形に形成されるスロープ面2b表面には、接合時に本体マット1側のエッチング模様と連続する同様のエッチング模様が施されている。また前後端側のスロープ面には商標等の名板部2fがエッチング加工によって表示形成されている。
【0024】
また端部マット2の裏面(接地面)は、
図8に示すように本体マット1のようなグリップ面その他の凹凸加工は施されていない平坦面2gが形成されており、これに対応して本体マット1のジョイント部3の接地面側も凹凸加工やシボ加工を施さない平面からなる平坦面1gとなっており、本体マット1と端部マット2を連続接合した状態で、ジョイント部3の接地面側を両面テープその他により床面に接着する際のより確実な接着固定を行わせるようにしている。
【0025】
上記端部マット2の前後方向先端側のエッジ2eに近接した幅方向中心位置には、前記カットマーク4と略同形である三角形のセンターマーク2hが付されており、マットを床面に敷設する際に床面予め引かれたセンターライン(図示しない)に、上記センターマーク2hを合わせることにより、正確な位置に敷設ができる。
【0026】
またこの実施形態では、
図2,
図3,
図7,
図8に示すようにジョイント部3のアリ接合用の凹凸部3a,3bが、左右交互に回転対称形に形成されているが、本体マット1と端部マット2の中心位置で互に嵌合し合う凹凸部3a,3bの突合せ対応面には、
図6(E),(F)に示すように相互に適合し合って嵌合する凹凸面からなる位置合せマーク3cが形成されている。
【0027】
以上のように構成される本発明のマットは、本体マット1を1枚又は複数枚ジョイント部3により接合し、その前後端に端部マット2を接合して床面上に敷設し、両面テープその他で剥離可能に接着固定する。この時床面の長さ寸法とマットの前後方向寸法が整合しない場合は、本体マット1のいずれかのカットマーク4を過不足寸法に合せて選択し、当該位置のカットライン6,6間が切除されると1枚の本体マット1は切除分(前後長さ160mm)だけ短くなるが、逆に1本のカットライン6で切断し、他の本体マット1の1又は複数の切除部分を、カットにより分離された場所に介挿すれば、その挿入個数に応じて本体マット1は前後長を160mm単位で長くできる。
【0028】
このように上記実施例によれば、少なくとも全体の敷設長さを160mm単位(注:アリ接合なので実際には150mm単位となる)で前後長さの調節が可能になる。この調整の自由度は本体マット1を長くし、カットライン6の数が増える程高くなる。
【0029】
上記カットされたマット片同士は直線状にカットされているため、その切断面同士を突合せて、両面テープ等を用いて接合端を突合せ状態で密着させ床面に接着固定して敷設する。
【0030】
なお、上記カットライン6はいずれもこの例では20mm幅のカットエリア5の中心であり、カット自体もグリップ面1d等の凹凸に妨げられることなく円滑で正確に行われ、接地面側も上記カットエリア5の幅によって確実な接着が可能となる。
【0031】
さらに上記実施形態では
図2,
図7に示すようにスロープ面1b,2bのエッチング模様は前後方向に連続する繰り返し模様であり、ジョイント部3を介しても、またカットライン6で切断したものを接合しても上記連続模様の連続性は損なわれない形態になっている。また上記エッチング模様は、継続的な使用により、模様面の突部平面に汚れや摩耗が集中するので、スロープ面1b,2bの汚れ自体が目立たず、水分付着時の滑り防止ができる利点がある。
【0032】
同様に接地面側にグリップ面1dを形成した本体マット1の表面の水平面1aには、該グリップ面1dの配置形状と同一形状(四角形)範囲に、シボ加工が施されたシボ面1cに形成されることによって、表面側にグリップ面1dの突部7の配置に対応した汚れ模様や摩耗模様が表れ難く、且つ水分付着時の滑りも抑制できる。
【符号の説明】
【0033】
1 本体マット
2 端部マット
1a,2a 水平面
1b,2b スロープ面
1c,2c シボ加工面
1d グリップ面
1e,2e エッジ部
1g,2g 平坦面
3 ジョイント部
4 カットマーク
5 カットエリア
6 カットライン
7 突部