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特許7146264短波赤外線蛍光を撮像するためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】短波赤外線蛍光を撮像するためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
G01N21/64 F
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018548165
(86)(22)【出願日】2017-03-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 US2017021824
(87)【国際公開番号】W WO2017160639
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-02-06
(31)【優先権主張番号】62/307,981
(32)【優先日】2016-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バウェンディ, モウンギ ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ブランズ, オリバー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バルデス, トゥーリオ エー.
(72)【発明者】
【氏名】カー, ジェシカ アン
(72)【発明者】
【氏名】フランケ, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】アエレン, マリアンヌ
【審査官】赤木 貴則
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0297086(US,A1)
【文献】特開2011-188900(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011122602(DE,A1)
【文献】特表2010-525866(JP,A)
【文献】米国特許第05394199(US,A)
【文献】国際公開第2014/176375(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/032306(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0371582(US,A1)
【文献】国際公開第2011/152046(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/086802(WO,A1)
【文献】米国特許第06005256(US,A)
【文献】特表2015-527909(JP,A)
【文献】特開2014-231488(JP,A)
【文献】特開2006-296635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0234225(US,A1)
【文献】国際公開第2009/079629(WO,A2)
【文献】国際公開第1998/012560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-G01N 21/74
A61B 10/00
A61B 5/00
A61K 49/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
蛍光スペクトルを有する蛍光プローブであって、前記蛍光スペクトルは、400nm以上900nm以下の最大蛍光波長である蛍光ピークと、前記蛍光スペクトルの全体的ピークから除去された前記蛍光スペクトルの一部に対応しかつ900nm以上2000nm以下の波長を有するテールの少なくとも一部分とを含む、蛍光プローブと、
300nm以上900nm以下の波長における電磁放射を放出する励起源と、
前記蛍光プローブから放出された蛍光を検出することと、前記蛍光プローブを含む組織を撮像することとを実行するように構成された検出器であって、前記検出器は、900nm以上2000nm以下の波長を有する電磁放射を検出する、検出器と、
前記蛍光プローブの前記蛍光スペクトルの前記テールの前記一部分に対応する検出された蛍光信号を使用して、前記撮像された組織の状態を決定するように構成されたプロセッサと
を含む、システム。
【請求項2】
前記検出器は、前記蛍光プローブからの検出された蛍光信号を前記プロセッサに出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記検出された蛍光信号を強度閾値と比較し、組織状態を決定する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記組織状態は、癌性である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
ディスプレイをさらに含み、前記検出器は、前記蛍光プローブからの検出された蛍光信号を前記ディスプレイに出力する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記蛍光ピークは、600nm以上900nm以下である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記励起源は、600nm以上900nm以下の波長における電磁放射を放出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記蛍光プローブは、インドシアニングリーン、フルオレセン、メチレンブルー、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン7.5、シリコンローダミン、5-ALA、IRDye 700、IRDye 800CW、IRDye 800RS、E350、スクアリリウム染料、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体、およびボロンジピロメタンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記検出器は、1400nm以上1500nm以下の波長範囲内の電磁放射を検出する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
蛍光プローブ蛍光強度と組織自己蛍光強度との比は、前記蛍光プローブのピーク蛍光放出波長においてよりも前記テール部分においてより大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムは、血管造影を実行するためのシステムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
血管造影を実行するための前記システムは、眼の血管造影を実行するためのシステムである、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムは、組織灌流を決定するためのシステムである、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2016年3月14日に出願された米国仮出願第62/307,981号の35 U.S.C. § 119(e)の下での優先権の利益を主張するものであり、該米国仮出願の開示は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
現在の生体内撮像技術は、高分解能、望ましい侵入深さ、および感度を同時に提供することができず、これは、疾患を識別するためのその広範囲の採用を限定している。例えば、高分解能および高感度撮像は、可視光撮像技法を使用して、単一細胞に対して容易である。しかしながら、動物およびその組織全体を撮像するとき、表面下組織特徴の分解能および感度は、周辺組織による光の散乱および吸収に起因して、劇的に低減される。従来の生体内撮像技術の別の主要な限定は、種々の病状を検出するために使用される蛍光プローブの発光波長と同一の波長における組織の強力なバックグラウンド自家蛍光である。関連付けられる蛍光プローブの予期される発光波長との自家蛍光の本重複は、疾患検出を阻止する。1つのそのような実施例では、可視および近赤外波長を用いた伝統的な撮像は、正常な細胞および組織からのバックグラウンド自家蛍光信号に対するコントラスト不良に悩まされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一実施形態では、システムが、900nmを下回る蛍光ピークを含む蛍光スペクトルおよび900nmを上回る波長における蛍光スペクトルのテールの少なくとも一部を伴う蛍光プローブを含む。本システムはまた、900nmを下回る波長における電磁放射を放出する励起源と、蛍光プローブから放出される蛍光を検出する検出器とを含む。検出器は、900nmを上回る波長を伴う電磁放射を検出する。
【0004】
別の実施形態では、システムが、担体に取り付けられる蛍光成分を含む蛍光プローブを含む。蛍光成分は、第1の範囲の波長にわたって蛍光を発し、担体は、第1の範囲と少なくとも部分的に重複する、第2の範囲の波長にわたって自家蛍光を発する。さらに、第1の範囲の波長のテール部分の強度と担体自家蛍光の対応する強度との比は、蛍光成分のピーク蛍光発光波長の強度と担体自家蛍光の対応する強度との比を上回る。本システムはまた、蛍光成分の吸収スペクトル内の電磁放射を放出する励起源と、第1の範囲の波長のテール部分内の電磁放射を検出する検出器とを含む。
【0005】
また別の実施形態では、方法が、蛍光プローブを含む組織の一部を蛍光プローブの励起源に暴露するステップであって、蛍光プローブは、900nmを下回るピークを含む蛍光スペクトルを有し、蛍光スペクトルのテールの少なくとも一部は、900nmを上回る波長を有する、ステップと、900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射に感受性がある検出器を用いて、組織を撮像するステップとを含む。
【0006】
別の実施形態では、方法が、蛍光プローブを含む組織の一部を蛍光プローブの励起源に暴露するステップであって、蛍光プローブは、担体に取り付けられる蛍光成分を含み、蛍光成分は、第1の範囲の波長にわたって蛍光を発し、担体は、第1の範囲と少なくとも部分的に重複する、第2の範囲の波長にわたって自家蛍光を発し、第1の範囲の波長のテール部分の強度と担体自家蛍光の対応する強度との比は、蛍光成分のピーク蛍光発光波長の強度と担体自家蛍光の対応する強度との比を上回る、ステップと、蛍光成分の蛍光のテール部分を検出するステップとを含む。
【0007】
また別の実施形態では、方法が、蛍光プローブを含んでいない組織の一部を組織の励起源に暴露するステップであって、組織自家蛍光スペクトルの少なくとも一部は、900nmを上回る波長を含む、ステップと、900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射に感受性がある検出器を用いて、組織を撮像するステップとを含む。
【0008】
前述の概念および下記に議論される付加的概念は、本開示がこの点に限定されないため、任意の好適な組み合わせにおいて配列され得ることを理解されたい。さらに、本開示の他の利点および新規の特徴が、付随の図を併せて考慮されるとき、以下の種々の非限定的実施形態の詳細な説明から明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
付随の図面は、縮尺通りに描かれることを意図されない。図面では、種々の図において図示される各同じまたはほぼ同じ構成要素は、同様の番号によって表され得る。明確化を目的として、全ての構成要素が、全ての図面において標識化され得るわけではない。図面は、以下である。
【0010】
図1図1は、励起および対応する発光波長のグラフである。
図2図2は、一実施形態による、励起ユニット、トランスミッションユニット、および対応する検出ユニットの概略表現である。
図3図3は、一実施形態による、励起ユニット、トランスミッションユニット、および対応する検出ユニットの概略表現である。
図4図4は、対照動物モデルおよび病変動物モデルの白色光画像である。
図5図5は、図4の対照動物モデルおよび病変動物モデルの蛍光画像である。
図6図6は、異なる検出器を用いて測定されるようなインドシアニングリーンの吸光度および対応する発光スペクトルのグラフである。
図7図7は、InGaAs検出器を用いて測定される、検出されたインドシアニングリーン強度のグラフである。
図8図8図10は、インドシアニングリーンを用いて標識化される、マウス肝臓および腸の異なる波長における蛍光画像である。
図9図8図10は、インドシアニングリーンを用いて標識化される、マウス肝臓および腸の異なる波長における蛍光画像である。
図10図8図10は、インドシアニングリーンを用いて標識化される、マウス肝臓および腸の異なる波長における蛍光画像である。
図11図11は、近赤外シリコンベースの検出システムを使用する、マウス頭部の蛍光画像である。
図12図12は、短波InGaAsベースの検出システムを使用する、マウス頭部の蛍光画像である。
図13図13-13Aは、マウス内に埋込された頭蓋窓を通して近赤外シリコンベースの検出システムを使用する、脳脈管の蛍光画像である。
図14図14-14Aは、マウス内に埋込された頭蓋窓を通して短波InGaAsベースの検出システムを使用する、脳脈管の蛍光画像である。
図15図15は、短波InGaAsベースの検出システムを使用する、マウス心臓の蛍光画像である。
図16図16は、異なる波長を使用する、マウス内のリンパ流の一連の蛍光画像である。
図17A図17Aは、マウス頭部の画像である。
図17B図17Bは、IRDye800-トラスツズマブを使用する、図17Aのマウス頭部の蛍光画像である。
図17C図17Cは、IRDye800-Pegを使用する、図17Aのマウス頭部の蛍光画像である。
図17D図17Dは、図17Bおよび17Cに示される蛍光画像の合成疑似色画像である。
図18図18A-18Dは、異なる波長におけるマウス肝臓の量子ドット標識化細胞から取得される蛍光画像である。
図19図19は、波長の関数としてプロットされる、観察されたコントラストのグラフである。
図20図20は、波長の関数として侵入深さのグラフである。
図21図21は、病変および対照動物モデルにおける自家蛍光を比較する蛍光画像である。
図22図22は、病変動物モデルおよび対照動物モデルの脳内で測定された自家蛍光信号を比較する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者は、蛍光ベースの病理学的決定のための、蛍光染料等の蛍光成分を含む蛍光プローブの広範囲の使用にもかかわらず、現在の生体内撮像技術が高分解能、十分な侵入深さ、および感度を同時に提供できないことによって、用途が限定されていることを認識している。例えば、容易な細胞特有撮像が、可視および近赤外撮像技法を使用して達成可能であるが、組織における高感度および分解能は、周辺組織による光の散乱および吸収から生じる複数の要因によって、本質的に限定される。蛍光プローブの信号を研究する際の別の主要な限定およびその病理学的影響は、正常な細胞および組織によって放出されるバックグラウンド自家蛍光信号に対して、これらの蛍光プローブを使用して十分なコントラストを達成することが困難なことである。
【0012】
上記に照らして、本発明者は、可視および近赤外スペクトルにおける撮像の欠点を回避するために、短波赤外(SWIR)スペクトル領域における撮像と関連付けられる利益を認識している。理論によって拘束されるわけではないが、より長い撮像波長は、光子散乱プロセスを低減させ、したがって、SWIRスペクトル内の組織を通した撮像される光の透過を最大限にする。したがって、本周波数範囲内の撮像は、所与の侵入深さに関して有意に改良された分解能および信号強度をもたらす。加えて、SWIR放射は、表面下組織特徴の変化を非侵襲的に照会するために十分な組織侵入深さを呈する一方、可視撮像技法は、典型的には、表面の生物学的構造の撮像に限定される。例えば、いくつかの実施形態では、SWIRは、10サブマイクロメートル分解能を伴う最大2mmまたはそれを上回る侵入深さを可能にし得るが、SWIRが異なる分解能を伴うより大きい侵入深さを可能にする事例もまた、想定される。さらに、可視および近赤外領域と異なり、SWIR形態は、特に、皮膚および筋肉における健常組織からのバックグラウンド自家蛍光を殆ど含有しない。本低減された自家蛍光信号は、蛍光プローブからの対応する蛍光信号および/または病変組織からの自家蛍光とのコントラストを改良し、病理学的および非病理学的生物学的構造間のより容易な区別を可能にする。低減された光散乱、強化された光透過、および抑制されたバックグラウンド自家蛍光は全て、より典型的な撮像方法と比較して、増加されたコントラスト、分解能、および感度を伴う撮像および検出方法を可能にするように組み合わせられる。
【0013】
上記に加えて、医療目的のための蛍光プローブにおいて使用される蛍光染料等の多くの蛍光成分の蛍光発光は、以前は、可視および近赤外スペクトルにおいてのみ、病状の撮像および検出のために十分であると考えられていた。したがって、これらの蛍光成分の使用は、より明るくないテール信号が撮像および検出目的のために十分ではないと考えられていたため、可視および近赤外スペクトルにおける使用に制限されていた。しかしながら、下記に詳述されるように、本発明者は、これらの蛍光成分の多くが、実際には、SWIRスペクトル内の波長においても同様に実質的に蛍光を発することを認識している。本誤解は、部分的に、SWIRスペクトル内の発光に感受性がないこれらの化合物に関するスペクトルを測定するために使用された従来のセンサに起因していた。したがって、これらの蛍光化合物の多くは、SWIRスペクトル外のピークを呈するにもかかわらず、それらは、依然として、下記にさらに詳述されるように、検出および/または診断のいずれかの目的のために、SWIR蛍光信号を測定するデバイスおよび方法を用いて使用可能であるように、SWIRスペクトル内に十分な蛍光信号を呈する。さらに、健常組織の減少された自家蛍光信号と相まって、これは、撮像および診断目的のためのバックグラウンド自家蛍光信号に対する病変組織のコントラストの全体的増加につながり得る。
【0014】
上記に照らして、本発明者は、種々のタイプの蛍光プローブからSWIR蛍光を検出するための光学撮像方法およびシステムと関連付けられる利益を認識している。1つのそのような実施形態では、蛍光プローブは、少なくとも部分的に、SWIR蛍光スペクトル外のピーク蛍光および吸収スペクトルを含む。さらに、蛍光プローブは、少なくとも部分的に、SWIRスペクトル内に延在するテールを含む。そのような実施形態では、対応する撮像または診断デバイスは、蛍光プローブの吸収スペクトル内かつSWIRスペクトル外の電磁放射を放出する励起源を含み得る。本デバイスはまた、SWIRスペクトル内に位置するスペクトルのテール部分内の蛍光プローブから放出される蛍光を検出する検出器を含む。
【0015】
別の実施形態では、本発明者は、SWIRスペクトル等の特定のスペクトル内の蛍光プローブの撮像が、蛍光プローブの担体と関連付けられる自家蛍光信号を低減および/または実質的に排除し得ることを認識している。したがって、いくつかの実施形態では、蛍光プローブは、担体に取り付けられる蛍光成分を含み得、担体の蛍光スペクトルは、少なくとも部分的に、担体の自家蛍光スペクトルと重複する。さらに、蛍光スペクトルの強度と担体自家蛍光の対応する強度との比(すなわち、コントラスト)は、蛍光スペクトルのテール部分において、蛍光スペクトルのピーク蛍光発光波長におけるものを上回る。その結果、そのような実施形態では、対応するデバイスは、蛍光成分の吸収スペクトル内の電磁放射を放出する励起源と、蛍光スペクトルのテール部分内の電磁放射を検出する検出器とを含み得る。
【0016】
また別の実施形態では、本発明者は、SWIRスペクトル領域内の健常組織に対する病変組織の増加された自家蛍光信号が、撮像された組織の組織状態および/または患者病状を識別するために使用され得ることを認識している。その結果、いくつかの実施形態では、蛍光プローブまたは他のマーカを含んでいない組織は、第1のスペクトル領域内の組織の自家蛍光励起源に暴露される。組織の自家蛍光信号は、次いで、第2の異なるスペクトル領域内の電磁放射に感受性がある検出器を使用して検出される。いくつかの事例では、励起源は、近赤外(NIR)スペクトル領域内で放出し、検出器は、SWIRスペクトル領域内の電磁放射に感受性がある。
【0017】
上記に照らして、いくつかの実施形態では、デバイスが、蛍光プローブを含み得る、または含まない場合がある組織を、蛍光プローブおよび/または組織の吸収スペクトル内の電磁放射に暴露するように構成および配列される励起源を含み得る。特定のプローブに応じて、励起源は、蛍光プローブおよび/または組織の吸収スペクトルの特定の帯域内の電磁放射を放出し得る。代替として、本開示がそのように限定されないため、励起源は、蛍光プローブの吸収スペクトル全体にわたる電磁放射を放出し得る。いずれにしても、いくつかの実施形態では、励起源は、300nm、350nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、または任意の他の適切な波長を上回るかまたはそれに等しい波長を含む電磁放射を放出し得る。代替として、励起源は、900nm、800nm、700nm、および/または任意の他の適切な波長を下回るかまたはそれに等しい波長を含む吸収スペクトル内の電磁放射を放出し得る。例えば、300nm以上900nm以下の電磁放射を放出する励起源を含む、上記の範囲の波長の組み合わせが、想定される。特定の範囲および組み合わせの波長が上記に留意されるが、本開示がそのように限定されないため、上記に留意されるものを上回るものおよび下回るものの両方の、励起源に関する他の波長もまた想定されることを理解されたい。
【0018】
一実施形態では、デバイスが、蛍光スペクトルのテール部分の一部を検出するための検出器を含む。本テール部分は、特定の用途に応じて、任意の範囲の波長に対応し得るが、一実施形態では、テール部分は、約900nm、1,000nm、1,100nm、1,200nm、1,300nm、1,400nm、1,500nm、1,600nm、および/または任意の他の適切な波長を上回るかまたはそれに等しい波長を含む。対応して、テール部分は、約2,000nm、1,600nm、1,500nm、1,400nm、1,300nm、および/または任意の他の適切な波長を下回るかまたはそれに等しい波長を含み得る。蛍光スペクトルのテール部分の上記に留意される波長範囲および対応する検出器が感受性がある範囲の組み合わせが、想定される。例えば、検出器および任意の関連付けられるフィルタまたは他の光学構成要素は、約900nm以上2,000nm以下の蛍光スペクトルのテール部分を検出するように構成および配列され得る。当然ながら、本開示がそのように限定されないため、上記に留意されるそれらの範囲を下回るものおよび上回るものの両方の波長を呈する、スペクトルのテール部分およびそれらを測定するために使用される検出器が、想定される。上記に留意される範囲はまた、健常および病変組織の自家蛍光信号を測定することにも同様に適用され得る。
【0019】
上記に留意される実施形態では、蛍光プローブの対応するピーク発光波長は、蛍光プローブのテール部分よりも短い波長にあり得る。例えば、いくつかの実施形態では、蛍光プローブのピーク波長は、限定ではないが、900nmを下回るかまたはそれに等しい波長を含み得る。
【0020】
蛍光スペクトルは、典型的には、1つまたはそれを上回るピーク蛍光強度を含む。これらの強度は、周辺波長における蛍光スペクトルの強度を上回る局所的および/または全体的ピークのいずれかであり得る。さらに、スペクトルは連続的であり、ピークはある範囲の波長に及ぶであろうが、ピークは、概して、最も大きい蛍光強度が測定される波長に関して説明される。加えて、蛍光スペクトルは、本願の目的として、無視できるほど小さい検出可能な信号だけを伴って、全ての波長にわたって連続的であると主張され得るが、測定される蛍光および/または自家蛍光強度が最大ピーク強度の0.01%、0.1%、1%、または他の適切なパーセンテージを下回るかまたはそれに等しい、および/または測定される蛍光信号のバックグラウンド雑音を上回らない波長は、特定の蛍光プローブおよび/または組織に関して、スペクトルのテール部分は言うまでもなく、蛍光および/または自家蛍光スペクトル波長範囲内であると見なされない。
【0021】
上記に加えて、いくつかの実施形態では、スペクトルのテール部分は、スペクトルの全体的ピークから除去されたスペクトルの一部に対応するものとして説明され得る。また、いくつかの実施形態では、スペクトルのテール部分は、全体的ピークを上回る波長における蛍光スペクトルの面積のパーセンテージに対して説明され得る。例えば、いくつかの実施形態では、蛍光スペクトルのテール部分は、蛍光スペクトルの面積の1%、5%、10%、20%、または任意の他の適切なパーセンテージを上回る、またはそれに等しくあり得る。対応して、スペクトルピークの場所に応じて、蛍光スペクトルのテール部分は、蛍光スペクトルの面積の約70%、60%、50%、40%、30%、20%、または任意の他の適切なパーセンテージを下回る、またはそれに等しくあり得る。例えば、蛍光スペクトルの面積の約1%~40%である蛍光スペクトルのテール部分を含む、上記の組み合わせが、想定される。
【0022】
先に留意されるように、いくつかの実施形態では、蛍光プローブの感度および関連付けられるデバイスおよび方法は、関連付けられる担体の自家蛍光に起因して限定される。したがって、いくつかの実施形態では、蛍光プローブに関する波長の検出を、担体のピーク自家蛍光発光波長から除去される担体の自家蛍光スペクトルの領域に限定し、蛍光プローブのコントラストを改良することに役立てることが、望ましくあり得る。1つのそのような実施形態では、担体のピーク自家蛍光発光波長は、約900nm、800nm、700nm、または任意の他の適切な波長を下回る、またはそれに等しくあり得る。対応して、担体のピーク自家蛍光発光波長は、約400nm、500nm、600nm、700nm、または任意の他の適切な波長を上回る、またはそれに等しくあり得る。例えば、約400nm以上900nm以下の担体のピーク自家蛍光発光波長を含む、上記の範囲の組み合わせが、想定される。
【0023】
開示される方法およびデバイスの所望の用途に応じて、検出器によって取得される蛍光および/または自家蛍光信号を表示するか、および/またはさらに処理するかのいずれかが、望ましくあり得る。したがって、一実施形態では、検出器は、組織内に位置する蛍光プローブから検出された蛍光および/または自家蛍光信号、および/または組織自体の自家蛍光信号を、下記に詳述されるようなさらなる評価のためにコンピューティングデバイスに出力し得る。上記に加えて、またはその代替として、検出器は、検出された蛍光および/または自家蛍光信号を、モニタまたはプリンタ等の関連付けられるディスプレイに出力し得る。本ディスプレイは、撮像または診断デバイスとは別個であり得るか、または、本開示がそのように限定されないため、これは、それと統合され得るかのいずれかである。
【0024】
実施形態では、蛍光または自家蛍光信号がコンピューティングデバイスに出力される場合、1つまたはそれを上回る措置が、受信される情報を用いて講じられ得る。例えば、いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスは、後で処理するために情報を関連付けられるメモリ内に記憶するか、および/または情報をサーバ、本システムに接続される別個のコンピューティングデバイスに通信するか、および/または情報のさらなる処理、記憶、および/または他の処理のために遠隔に位置するコンピューティングデバイスに情報を伝送するかのいずれかであり得る。いずれの場合も、いくつかの実施形態では、受信された信号を処理し、組織および/または対象の病状を決定することが、望ましくあり得る。例えば、検出器の視野(FOV)は、検出器が配向される組織からの蛍光および/または自家蛍光信号を捕捉する、複数のピクセルを含み得る。各ピクセルまたはピクセルのグループ化のいずれかに関する検出された信号の強度は、ある閾値強度と比較され得る。本閾値強度を満たす、または超えるピクセルは、特定の組織状態または対象病状を呈するものとして識別され得る。
【0025】
特定の用途に応じて閾値強度が示し得る組織状態は、限定ではないが、癌性または癌関連組織;硬化性組織;線維性および瘢痕組織;放射線処置された組織;炎症組織;加齢組織;ストレスを受けた組織;血管または組織における動脈硬化病変およびプラーク;神経変性疾患の影響を受けた組織、例えば、アルツハイマー病、アルツハイマープラーク、パーキンソン病;眼の血管造影、および以下の例えば、急性後部多発性小板状色素上皮症、滲出性加齢性黄斑変性、網膜色素上皮の出血性剥離、網膜出血、網膜血管新生、網膜色素上皮の漿液剥離、ベーチェット病(ベーチェット症候群)、脈絡膜悪性黒色腫;重症虚血肢、糖尿病黄斑浮腫、ドルーゼン分化、黄斑スキーシス、傍矢状洞髄膜腫、内頸静脈における術後血栓症の予測、腹部ヘルニア修復における創傷合併症の予測、サルコイドーシス、強膜炎および後部強膜炎、センチネルリンパ節マッピング、脊髄硬膜動静脈瘻、Vogt-Koyanagi-Harada症候群、および血管造影に関する他の適切な使用等の具体的適用を含む血管造影、および他の適用可能な病変、異常、または他の着目組織状態を含む。代替として、閾値強度は、硬化性肝臓対健常肝臓等、対象病変を区別するために使用され得る。開示される方法およびシステムはまた、再建外科手術およびバイパス外科手術中に行われ得るように、所定の閾値強度に対する着目組織の画像からの検出された蛍光強度を使用して、組織灌流を決定するために使用され得る。
【0026】
上記に加えて、いくつかの実施形態では、開示される方法およびシステムは、予期されるバックグラウンド組織自家蛍光信号強度対検出された自家蛍光信号強度における差異に基づいて、1つまたはそれを上回る構造または病状を識別するために使用され得る。例えば、特定のタイプの組織の測定および/または所定のいずれかのバックグラウンド自家蛍光信号強度が、決定され得、これは、いくつかの事例では、均質なバックグラウンド自家蛍光信号強度であり得る。対照的に、着目構造が、検出された自家蛍光信号強度に関する所望の範囲の波長内の蛍光を吸収する、1つまたはそれを上回る成分を含み得る。例えば、一具体的実施形態では、構造が、水を用いて充填される、または殆どそれから成り得(例えば、嚢胞または膿瘍)、これは、これらの構造がSWIR周波数範囲内の蛍光を大いに吸収する水を含むため、予期される蛍光信号強度を低減させ得る。構造は、次いで、検出された自家蛍光信号強度が、予期されるバックグラウンド自家蛍光信号強度を下回る閾値自家蛍光強度値に等しい、またはそれを下回るかどうかを決定することによって、検出され得る。加えて、比較的に均質なバックグラウンド自家蛍光信号は、これらの蛍光信号吸収構造を撮像するとき、改良されたコントラストを提供することに役立ち得る。
【0027】
上記の実施形態は、自家蛍光に対して説明されるが、蛍光プローブが、着目構造の1つまたはそれを上回る成分が蛍光を吸収する波長範囲内で撮像される実施形態もまた、想定される。故に、上記と同様に、これは、撮像される構造に関して改良されたコントラストを提供し得、また、蛍光信号強度が、予期されるバックグラウンド蛍光信号強度を下回る閾値蛍光強度値を下回るかどうかを決定することによって、所望の構造の検出を可能にし得る。
【0028】
上記の実施形態では、水は、980nm、1,150nm、1,450nm、および1900nmに近接して、自家蛍光および/または蛍光撮像コントラストおよび/または検出を改良するために使用され得る吸収ピークを有する。故に、周辺組織に対して増加された量の水を含む構造の改良されたコントラストおよび/または検出を用いた撮像が、25nm、50nm、または上記の波長の任意の他の適切な範囲内の周波数範囲内で実行され得る。例えば、着目組織および/またはプローブから放出された自家蛍光および/または蛍光信号の撮像は、1,425nm以上1,475nm以下、1,400nm以上1,500nm以下の周波数範囲、または任意の他の適切な範囲内で実行され得る。当然ながら、水を含む構造が上記に留意されているが、本開示がそのように限定されないため、特定の着目周波数範囲内で吸収する周辺組織よりも多い、または少ない量における異なる成分を含む構造の実施形態もまた、使用され得る。
【0029】
具体的タイプの組織状態および対象病状が上記に留意されるが、本開示されるシステムおよび方法は、任意の適切なタイプの対象病状および/または組織状態に適用され得ることを理解されたい。加えて、いくつかの実施形態では、強度閾値が使用され得るが、本開示がそのように限定されないため、他の実施形態では、開示されるシステムおよび方法は、例えば、単純に、より良好なコントラスト化を伴う画像を提供するために、強度閾値を伴わずに使用され得る。
【0030】
上記に留意される実施形態では、複数のピクセルの検出された蛍光および/または自家蛍光強度をある閾値強度と比較するコンピューティングデバイスが、組織状態および/または対象病状を、閾値強度を満たす、または超える1つまたはそれを上回るピクセルに割り当て得る。本組織状態または病状は、次いで、ディスプレイ上に提示され(例えば、撮像された組織の組織状態を描写する画像)、コンピューティングデバイスのメモリ内に記憶され、別のコンピューティングデバイスに伝送され、診断結果として出力され(すなわち、対象病状が存在するかどうか)、および/または任意の他の適切な方式で使用され得る。
【0031】
本明細書に説明される種々のデバイスおよび方法は、任意の適切なタイプの組織に対して、任意の数の異なる用途のために使用され得ることを理解されたい。例えば、撮像および/または診断デバイスが、オブジェクトからの蛍光および/または自家蛍光信号を続けて検出するために、オブジェクト内の組織を蛍光プローブおよび/または組織自体の励起源の両方に暴露するように構築および配列され得る。しかしながら、本デバイスの特定の使用に応じて、オブジェクトは、いくつかの異なる表面および/または構成に対応し得る。1つのそのような実施形態では、オブジェクトは、対象の身体であり、撮像および/または診断デバイスは、一度に対象の身体全体および/または対象の身体の下位部分(すなわち、胴体、腕、脚、頭部、またはその下位部分)に対して非侵襲性撮像および/または検出を実施する。代替として、オブジェクトは、癌性腫瘍の抽出中に暴露される組織等の手術中の対象の手術台であり得る。また別の実施形態では、オブジェクトは、組織の切除された断片(例えば、任意の残留癌関連細胞を検出するために撮像される腫瘍マージンを含む切除された腫瘍)に対応し得る。当然ながら、本開示が本明細書に留意されるそれらの用途のみに限定されないため、撮像および/または診断デバイスの他の具体的用途もまた、想定される。
【0032】
本明細書に説明される所望の範囲の電磁放射に感受性がある任意の検出器が、開示されるデバイスおよび方法と併用され得ることを理解されたい。しかしながら、一実施形態では、撮像および/または診断デバイス内で使用される検出器は、InGaAs(砒化インジウムガリウム)検出器、ゲルマニウム検出器、MCT(テルル化カドミウム水銀)検出器、ボロメータ、および/または着目電磁波長の範囲に感受性がある任意の他の適切な検出器であり得る。さらに、検出器は、本開示がそのように限定されないため、これらのタイプの検出器のみに限定されず、いくつかの事例では、留意される波長範囲内であり得る、および/または説明される範囲外に延在し得る波長の範囲を網羅する検出器の組み合わせであり得ることを理解されたい。
【0033】
蛍光プローブは、蛍光を発し、組織内で所望のコントラストを提供することが可能な任意の適切な化合物に対応し、所望の組織状態および/または対象病状を区別することに役立ち得る。一実施形態では、蛍光プローブは、蛍光染料等の蛍光成分を含む。適切な蛍光染料は、限定ではないが、インドシアニングリーン(ICG)、フルオレセン、メチレンブルー、シアニン5(Cy5)、シアニン5.5(Cy5.5)、シアニン7(Cy7)、シアニン7.5(Cy7.5)、シパート、シリコンローダミン、5-ALA、IRDye 700、IRDye 800CW、IRDye 800RS、E350(例えば、特に、E350d)、スクアリリウム染料、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体、ボロンジピロメタン(BODIPY)染料、および/または他の食品添加物、および多くの他の染料を含む。さらに、いくつかの実施形態では、これらの蛍光成分は、他の可能なスペクトル範囲に加えて、短波赤外波長において蛍光を発し得る。
【0034】
蛍光成分を含むことに加えて、蛍光プローブは、いくつかの異なる方法において、対象の身体内の所望のタイプの組織または他の生物学的特徴を標的とし得る。1つのそのような実施形態では、蛍光プローブは、癌および癌関連細胞等の特定のタイプの細胞を標的とし得る。代替として、別の実施形態では、蛍光プローブは、プローブをより迅速に一掃するより血管に富んだ組織によって囲繞される腫瘍内で起こり得るように、これがある組織から優先的に一掃される一方、他の組織内に留まる用途において、単純に使用され得る。代替として、蛍光プローブは、長い血液循環時間およびプローブの緩慢な一掃を要求する、動物の脈管構造を強調するために使用され得る。さらに、プローブは、排出リンパ管およびリンパ節を強調するために、腫瘍の中に注入され得る。別の使用は、手術中に尿路、例えば、尿管を強調するためのカテーテルを通した膀胱の中への注入であろう。別の使用は、手術に先立つ最大2週間の注入であり、その場合では、肝臓における悪性および良性病変が、異なって染色され得る。別の用途は、肝臓を通した胆汁および胃腸管の中への静脈内注入および後続クリアランスであり、これは、胆嚢、膵臓、および小腸および大腸の病状を強調することに役立つであろう。
【0035】
いくつかの実施形態では、蛍光プローブはまた、蛍光成分が結合される担体を含み得る。例えば、適切な担体は、限定ではないが、カーボンナノチューブ、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、砒化インジウムベースまたは硫化鉛ベースのナノ粒子、シリカナノ粒子、リボゾームナノ粒子)、抗体、タンパク質、DNA、小分子、または蛍光成分が関連付けられる任意の他のタイプの粒子、基質、または化合物を含む。加えて、蛍光成分は、当分野で公知であるような任意の適切な方法を使用して、担体に結合され得る。
【0036】
特定の蛍光プローブの具体的量および効果は、使用されている特定のプローブ、対象のサイズ、およびこれが使用されている用途に応じて変動するであろうことを理解されたい。したがって、蛍光プローブが「効果的な量」において特定の場所に存在するとき、これは、蛍光プローブの濃度が、痕跡量を上回る、またはそれに等しく、例えば、診断目的、撮像目的のために対象内の蛍光プローブの検出を可能にすること、および/または対象における疾患または病状の処置を強化すること等の所望の目的を達成するために十分な濃度において存在することを意味する。いくつかの実施形態では、特定の蛍光プローブが、診断または撮像化合物として使用され、したがって、特定の場所におけるその存在は、対象の特定の病状を示す。
【0037】
本明細書に説明される方法およびデバイスは、同等の近赤外撮像技法と比較して、はるかに高い分解能および感度を提供しながら、蛍光プローブを使用する組織の非侵襲性撮像を含む、いくつかの異なる用途のために使用され得る。これは、多くの臨床状況において蛍光プローブを検出および監視する際に多大な影響を及ぼす。加えて、異常および健常生物学的構造間を描写するために十分なコントラストを用いて、組織の自家蛍光を非侵襲的に撮像する能力は、主要な利点であり、疾患の機構への調査を加速させる、または診断医療デバイスとしての役割を果たし得る。例えば、SWIR蛍光および自家蛍光を使用する説明されるデバイスおよび方法は、研究動物および対象におけるオートファジーおよび/または他の病状のステータスの迅速かつ非侵襲性評価を可能にし得る。
【0038】
ここで図に目を向けると、いくつかの非限定的実施形態が、さらに詳細に説明される。しかしながら、本開示は、本明細書に説明されるそれらの具体的実施形態のみに限定されないことを理解されたい。代わりに、本開示がそのように限定されないため、種々の開示される構成要素、特徴、および方法は、任意の好適な組み合わせにおいて配列され得る。
【0039】
図1は、異なる可視、近赤外、および短波赤外スペクトル領域に対応する異なる波長の範囲を図示する。本図はまた、900nmを下回る励起波長または波長の範囲および900nmを上回って起こる対応する蛍光および/または自家蛍光発光への組織の暴露を図示する。
【0040】
図2は、撮像および/または診断システム2を描写する。本システムは、励起ユニット4と、トランスミッションユニット6と、検出ユニット8とを含む。下記にさらに説明されるように、励起ユニットおよびトランスミッションユニットは、対象の身体、対象の身体の下位部分、手術台、および/または切除された組織等のオブジェクト10の部分または下位部分を、励起波長または波長の範囲に暴露する。特定の用途に応じて、オブジェクトは、オブジェクトの組織内に位置する蛍光プローブを含み得るか、および/または蛍光プローブが存在しない場合があるかのいずれかであり得、励起波長は、オブジェクト自体の組織の励起波長であり得る。オブジェクトを励起波長に暴露した後、検出ユニットは、次いで、励起波長に応答してオブジェクトから放出される蛍光信号を検出および処理する。これらのユニットおよびオブジェクトの構成要素および相互作用は、下記にさらに詳述される。
【0041】
明確化のために、下記に説明される実施形態は、主として、オブジェクトの組織内に位置する蛍光プローブからの蛍光を励起し、続けて検出するために使用されるデバイスに関して説明される。しかしながら、本説明はまた、励起源がオブジェクトの組織からの自家蛍光を励起し、結果として生じる自家蛍光を検出するために構成される実施形態に適用可能であることを理解されたい。加えて、本開示がそのように限定されないため、両方の現象が同時に起こり、両方が組織状態および/または対象病状を決定する際に使用される実施形態もまた、想定される。
【0042】
図示される実施形態では、励起ユニット4は、電力を励起源14に提供する電源12を含み得る。励起源は、オブジェクト10の組織内に位置する蛍光プローブの吸収スペクトル内か、時として、それから延在するかのいずれかの任意の所望の範囲の波長を放出し得る。限定ではないが、レーザ、発光ダイオード、ハロゲンベースのエミッタ、または所望のスペクトル帯域内の電磁放射の任意の他の適切な源を含む、任意の適切なタイプの励起源が、使用され得る。励起源は、限定ではないが、光ファイバ束、光パイプ、平面光ガイド、光学的に透明な経路、または励起源をトランスミッションユニットに結合する任意の他の適切な方法を含む、任意の適切な光学カップリング16を介してトランスミッションユニット6に光学的に結合される。具体的カップリングにかかわらず、描写される実施形態では、光学カップリングは、電磁放射を励起源から励起フィルタ18またはフィルタのセットに経路指定する。所望の励起波長および使用される源のタイプに応じて、フィルタは、所望のスペクトル内の電磁放射を提供するために、ローパスフィルタおよび/またはハイパスフィルタの組み合わせであり得る。例えば、フィルタは、所望の蛍光スペクトル波長または他の望ましくない励起波長を上回る、および/または下回る電磁波長を除外し得る。いくつかの実施形態では、放出される電磁放射は、次いで、オブジェクトを横断する励起光を拡散する際に補助するために、拡散器を通過し得る。
【0043】
いったん励起源がオブジェクトに暴露されると、オブジェクトの組織内の蛍光プローブおよび/または組織自体が、蛍光を発し、適切に構成および配列された検出ユニット8に向かって所定の蛍光スペクトル内の電磁放射を放出する。描写される実施形態では、検出ユニットは、撮像されるオブジェクトの対応する部分からの強度信号を撮像および/または検出する複数のピクセルを含む、光学的に結合される検出器26上にオブジェクト10を適切に撮像するために、対物レンズ22を含み得る。オブジェクトと検出器との間の光路に沿ったいずれかの場所で、1つまたはそれを上回るフィルタ24が、反射励起光が検出器によって検出されることを排除するために位置し得る。検出器は、任意の適切な範囲の電磁波長に感受性があり得るが、いくつかの実施形態では、検出器は、限定ではないが、短波赤外スペクトル範囲を含む、本明細書に説明される波長の範囲に感受性がある。
【0044】
いったん蛍光信号および/または自家蛍光信号が検出器26によって検出されると、検出器は、信号をプロセッサ28に出力し得る。プロセッサは、次いで、先に説明されるような情報を適切に処理し、検出された信号が特定の組織状態および/または対象病状に対応するかどうかを決定し得る。本情報は、単一の捕捉される画像に関してか、および/または外科手術手技の撮像中に起こり得るようにリアルタイムで連続的にかのいずれかで、ピクセル毎に決定され得る。処理された情報は、次いで、ディスプレイ30上に画像として表示される、および/または後続閲覧および/または使用のためにメモリ32内に記憶され得る。
【0045】
図3は、図2に示されるものと類似する別のシステムを提示する。しかしながら、描写される実施形態では、本デバイスは、所望の範囲の励起波長を撮像されるべきオブジェクト10に向かって反射するダイクロイックミラー34を含む、修正されたトランスミッションユニット6を含む。後続蛍光信号は、対物レンズ22を通過し、ダイクロイックミラーの通過帯域内である蛍光波長の範囲を含み、したがって、それらは、ダイクロイックミラーを通過し、検出器26によって検出され、先に説明されるように処理される。
【0046】
上記に説明される実施形態では、励起ユニット、トランスミッションユニット、および検出ユニットは、別個に説明された。しかしながら、本開示がそのように限定されないため、これらの種々のユニットは、単一の一体型システムにおいて組み合わせられ得るか、またはそれらは、別個の構成要素として提供され得るかのいずれかであることを理解されたい。
【0047】
本明細書に説明される技術の上記に説明される実施形態は、多数の方法のいずれかにおいて実装されることができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組み合わせを使用して実装され得る。ソフトウェアにおいて実装されるとき、ソフトウェアコードは、単一のコンピューティングデバイスにおいて提供されるか、または複数のコンピューティングデバイス間に分散されるかを問わず、任意の好適なプロセッサまたはプロセッサの集合上で実行されることができる。そのようなプロセッサは、CPUチップ、GPUチップ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはコプロセッサ等の名称によって当分野で公知の商業的に利用可能な集積回路コンポーネントを含む、集積回路コンポーネント内に1つまたはそれを上回るプロセッサを伴う集積回路として実装され得る。代替として、プロセッサは、ASIC等のカスタム回路またはプログラマブル論理デバイスを構成することからもたらされるセミカスタム回路において実装され得る。またさらなる代替として、プロセッサは、商業的に利用可能、セミカスタム、またはカスタムを問わず、より大きい回路または半導体デバイスの一部であり得る。具体的実施例として、いくつかの商業的に利用可能なマイクロプロセッサは、複数のコアを有し、したがって、それらのコアのうちの1つまたはサブセットが、プロセッサを構成し得る。但し、プロセッサは、任意の好適なフォーマットにおける回路を使用して実装され得る。
【0048】
さらに、コンピューティングデバイスは、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、またはタブレットコンピュータ等のいくつかの形態のいずれかにおいて具現化され得ることを理解されたい。加えて、コンピューティングデバイスは、携帯情報端末(PDA)、スマートフォン、または任意の他の好適なポータブルまたは固定電子デバイスを含む、概して、コンピューティングデバイスと見なされないが、好適な処理能力を伴うデバイス内に埋設され得る。
【0049】
また、コンピューティングデバイスは、1つまたはそれを上回る入力および出力デバイスを有し得る。これらのデバイスは、とりわけ、ユーザインターフェースを提示するために使用されることができる。ユーザインターフェースを提供するために使用され得る出力デバイスの実施例は、出力の視覚表現のためのプリンタまたはディスプレイスクリーンおよび出力の可聴表現のためのスピーカまたは他の音声生成デバイスを含む。ユーザインターフェースのために使用され得る入力デバイスの実施例は、キーボードおよびマウス、タッチパッド、およびデジタイザタブレット等のポインティングデバイスを含む。別の実施例として、コンピューティングデバイスは、音声認識を通して、または他の可聴フォーマットにおいて入力情報を受信し得る。
【0050】
そのようなコンピューティングデバイスは、企業ネットワークまたはインターネット等のローカルエリアネットワークまたは広域ネットワークを含む、任意の好適な形態における1つまたはそれを上回るネットワークによって相互接続され得る。そのようなネットワークは、任意の好適な技術に基づき得、任意の好適なプロトコルに従って動作し得、無線ネットワーク、有線ネットワーク、または光ファイバネットワークを含み得る。
【0051】
また、本明細書に概説される種々の方法またはプロセスは、種々のオペレーティングシステムまたはプラットフォームのうちのいずれか1つを採用する、1つまたはそれを上回るプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化され得る。加えて、そのようなソフトウェアは、いくつかの好適なプログラミング言語および/またはプログラミングまたはスクリプトツールのいずれかを使用して書き込まれ得、また、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される実行可能な機械言語コードまたは中間コードとしてコンパイルされ得る。
【0052】
この点で、開示される実施形態は、1つまたはそれを上回るコンピュータまたは他のプロセッサ上で実行されるとき、上記に議論される種々の実施形態を実装する方法を実施する、1つまたはそれを上回るプログラムを用いてエンコードされる、コンピュータ可読記憶媒体(または複数のコンピュータ可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つまたはそれを上回るフロッピディスク、コンパクトディスク(CD)、光学ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイまたは他の半導体デバイス内の回路構成、または他の有形コンピュータ記憶媒体)として具現化され得る。前述の実施例から明白であるように、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ実行可能命令を非一過性形態で提供するために十分な時間にわたって情報を留保し得る。そのようなコンピュータ可読記憶媒体または複数の媒体は、トランスポート可能であり得、したがって、その上に記憶されたプログラムまたは複数のプログラムは、1つまたはそれを上回る異なるコンピュータまたは他のプロセッサ上にロードされ、上記に議論されるような本開示の種々の側面を実装することができる。本明細書で使用されるように、用語「コンピュータ可読記憶媒体」は、製造(すなわち、製造品)または機械であると見なされ得る、非一過性コンピュータ可読媒体のみを包含する。代替として、または加えて、開示される方法は、伝搬信号等、コンピュータ可読記憶媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化され得る。
【0053】
用語「プログラム」または「ソフトウェア」は、上記に議論されるような本開示の種々の側面を実装するようにコンピューティングデバイスまたは他のプロセッサをプログラムするために採用され得る、任意のタイプのコンピュータコードまたはコンピュータ実行可能命令のセットを指すような一般的意味において本明細書で使用される。加えて、本実施形態の一側面によると、実行されるとき、本開示の方法を実施する1つまたはそれを上回るコンピュータプログラムは、単一コンピュータまたはプロセッサ上に常駐する必要はなく、いくつかの異なるコンピュータまたはプロセッサ間にモジュール方式で分散され、本開示の種々の側面を実装し得ることを理解されたい。
【0054】
コンピュータ実行可能命令は、1つまたはそれを上回るコンピュータまたは他のデバイスによって実行される、プログラムモジュール等の多くの形態であり得る。概して、プログラムモジュールは、特定のタスクを実施する、または特定の抽象データタイプを実装する、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。典型的には、プログラムモジュールの機能は、種々の実施形態において所望に応じて組み合わせられる、または分散され得る。
【実施例
【0055】
実施例:近赤外染料を用いた肝臓の標的SWIR撮像
マウスが、HER2受容体の有意な過剰発現を示す、乳癌腫瘍を肝臓内に事前に移植された。HER2受容体標的抗体であるトラスツズマブが、商業的に利用可能な標識化キットを使用して、IRDye 800CWにコンジュゲートされた。染料-抗体コンジュゲートが、15mg/kg体重の用量においてマウスの中に腹腔内注入された。染料-抗体コンジュゲートの初期注入の3日後、マウスは、SWIR蛍光検出を使用して撮像された。
【0056】
対照実験として、IRDye 800CWが、非特異的抗体であるIgGにコンジュゲートされた。コンジュゲートは、同一の腫瘍を同一の場所に移植された第2のマウスモデルの中に注入された。
【0057】
図4は、位置参照のために室内光がオンである、左側の対照マウスおよび右側のトラスツズマブ標識化マウスの両方の白色光画像を提示する。図5は、同一の位置における両方のマウスのSWIR画像を提示する。画像に見られるように、腫瘍の位置を示す、強力な蛍光信号が、トラスツズマブ標識化マウスにおいて見られる。対照的に、InGコンジュゲートは、腫瘍を標的とせず、いかなる有意な蛍光信号も、対照マウスモデルにおいて識別されなかった。
【0058】
実施例:インドシアニングリーンの吸収および発光スペクトル
【0059】
インドシアニングリーンの吸収最大値が、図6に示されるグラフにプロットされる。発光スペクトルもまた、2つの異なる検出手段によって測定されるように示される。最初に、本図は、典型的なシリコンベースの検出システムによって測定されるような発光スペクトルを描写し、これは、シリコンの基本的性質に起因して、900nmを超える波長において比較的に低い感度を有する。対照的に、薄化砒化インジウムガリウム(InGaAs)ベースの検出システムによって測定されるような発光スペクトルは、500~1,700nmの波長の範囲内の感度を示す。2つの発光スペクトルの比較は、シリコンベースの検出システムが発光のテールを十分に検出しないことを示し、これは、インドシアニングリーン等の近赤外染料が、SWIR波長においていかなる発光も有しておらず、SWIR撮像のために使用され得ないという一般的誤解をもたらしていた。代わりに、これらの実験によって確認されるように、多くの近赤外染料が、SWIR範囲内に有意な検出可能テールを示すことが予期される。
実施例:InGaAs検出器上で検出されるようなICGの強度
【0060】
図7は、InGaAs検出器上で検出されるようなICGの相対的強度を示す。水中に分散された0.027mg/mL ICGを伴うバイアルが、約50mW/cmの808nm励起光を用いて照射され、放出された電磁放射が、900~1,650nmの25nm毎に中心を置く20nmスペクトル帯域においてカメラ上で検出された。2つの850nmロングパスフィルタが、808nmレーザからの反射光を遮断するために使用され、VariSpec Liquid Crystal Tunable Filterが、ICG発光の20nmスペクトル帯域を選択的に通過させるために使用された。1,000~1,575nmで、検出器応答性は、比較的に平坦であり、強度は、染料の発光の減少に起因して低下する。強度は、低いが、溶媒(水)による発光の強力な再吸収に起因して、約1,450nmで依然として検出可能であるが、本再吸収はあまり有意ではないため、強度は、1,500~1,600nmで再びわずかに上昇する。ICGからの発光は、InGaAsカメラの感度範囲全体を横断して検出可能であり、挿入画像は、1,575nmを中心とする20nmスペクトル帯域内で検出されるようなICGのバイアルを示す。加えて、固有のICGスペクトルは、本スペクトル領域内の電磁放射を吸収する水に起因して、本実験設定において測定されるものよりも大きいことに留意されたい。
実施例:生体内のSWIR波長を横断するインドシアニングリーンの検出
【0061】
生体系の中に注入されると、インドシアニングリーンは、肝臓によって代謝され、肝胆道クリアランスと呼ばれるプロセスによって、肝臓および胆管によって排泄される。本プロセスは、インドシアニングリーンの溶液をマウスの中に静脈内注入し、本明細書に説明されるようなSWIR撮像システムを使用し、インドシアニングリーンの蛍光を観察することによって、非侵襲的に観察された。染料は、ヒトにおけるインドシアニングリーンの最大推奨用量を下回る、1.7mg/kgの用量において注入された。マウスの肝臓内のインドシアニングリーンの蓄積が、SWIR蛍光検出システムを使用して観察された。図8-10は、900nmロングパスフィルタ(900~1,650nmの波長を検出する)を伴い、1,200nmロングパスフィルタ(1,200~1,650nmの波長を検出する)を伴い、1,500nmロングパスフィルタ(1,500~1,650nmの波長を検出する)を伴う、SWIRカメラ上で観察されるような、インドシアニングリーンからの蛍光を用いて強調されるマウスの肝臓および小腸の一部を示す。1,500nmはインドシアニングリーンのピーク発光から遠いという事実にもかかわらず、SWIR蛍光画像を取得するために、本波長領域内の発光ピークのテールからの十分な発光強度が存在する。別個に、マウス内の小腸の中へのICGの胆管道排泄もまた、1,200nmロングパスフィルタを使用する19.7フレーム/秒のニアビデオレート撮像を使用して撮像され、これは、小腸の蠕動移動を捕捉することを可能にした。フレームレートは、2.0フレーム/秒とより緩慢であったが、およそ1,500~1,620nmの波長を捕捉する、1,500nmロングパスフィルタを使用して、ICGクリアランスを撮像することが可能であった。
実施例:非侵襲性脳脈管撮像
【0062】
図11および12は、無傷の皮膚および頭蓋骨を通したマウス内の脳脈管の高コントラストメゾスコピック撮像を使用する、それぞれ、NIRおよびSWIRにおけるICGの撮像を提示する。具体的には、ICGの水性溶液が、ヒトに対して推奨される用量(0.2~0.5mg/kgが推奨され、5mg/kgが最大である)内である、0.2mg/kgの用量においてマウスの尾静脈の中に注入された。マウスは、次いで、最大許容可能暴露限界(808nm連続波光に関して330mW/cm)を下回ったままである、50~70mW/cmの808nm励起光を用いて照射された。マウスは、次いで、NIR波長におけるシリコンカメラ上で、および冷却SWIRカメラの検出カットオフである、1,300nm~1,620nmのSWIR波長におけるInGaAsカメラ上で捕捉された結果として生じる蛍光を使用して、非侵襲的に撮像された。NIR画像およびSWIR画像における、脳脈管を含有する着目領域内のコントラストが、平均ピクセル強度に正規化されたピクセル強度の標準偏差として定義される変動係数を使用して計算された。SWIR画像コントラストは、0.20のコントラスト値を伴うNIR画像と比較して、0.29の値を伴い、ほぼ50%上回った。さらに、脳血管に関する見掛け血管幅が、着目血管を横断する強度プロファイルに対する2ガウスフィットの半値全幅を使用して測定された。NIR画像に関して測定された見掛け血管幅は、それぞれ、430μmおよび210μmの値を伴うSWIR画像において測定された見掛け幅の2倍を上回る広さであった。これは、検出波長を、シリコンカメラを使用する伝統的なNIR撮像から、InGaAs SWIRカメラ上での1,300nmを超える検出に単純に切り替えることによって、FDA承認ICGコントラストを使用しながら、微細な脈管構造のコントラストおよび分解能が大幅に改良され得ることを確認する。
実施例:生体内脳脈管撮像
【0063】
顕微鏡撮像に関するNIR検出と比較したSWIR検出の改良されたコントラストをさらに示すために、生体内脳脈管撮像が、留意される波長範囲内で実施された。具体的には、ICGが、典型的には、3~4分に限定される血液半減期を増加させるために、ポリエチレングリコール-リン脂質に組み込まれた。これらのミセルを含む水性溶液が、移植された頭蓋窓を伴うマウスの尾静脈の中に注入された。顕微鏡が、次いで、NIR検出および1,300nmロングパスSWIR検出の両方を用いて、脳脈管内のICGリン脂質ミセルの蛍光を撮像するために使用された。2倍の倍率における頭蓋窓全体の画像が、NIRまたはSWIR撮像のいずれかを使用して、ほぼ全ての同一の血管を分解する能力を示した(それぞれ、図13および14参照)。しかしながら、全体的コントラストは、SWIR画像に関して1.4倍上回った(標準偏差/平均は、NIRの0.24対SWIRの0.33に等しい)。加えて、6倍のより高い倍率を使用することによって、SWIR撮像を使用する本コントラスト改良が、周辺血管の高い標識密度に起因して、NIR画像を使用するバックグラウンド信号と区別不可能である血管の分解能を可能にすることを示す(図13Aおよび14A参照)。
実施例:ICGを使用する生体内リアルタイムSWIR蛍光撮像
【0064】
拍動するマウス心臓における血管造影が、蛍光誘導外科手術において使用されるであろうように、ICGのSWIR発光が高フレームレートを用いたリアルタイム撮像のために十分に明るいことを示すために行われた。血管造影を実施するために、拡散する808nm励起光が、拍動するマウス心臓に向かって放出され、1,300nmロングパスエミッションフィルタが、InGaAs SWIRカメラと併用された。画像捕捉中、拍動する心臓の脈管を9.7フレーム/秒の速度で撮像する一方、基本的コントラストに対して外面上の微細な血管を分解することが可能であった(図15)。少ないコントラストコストにおいて、1,150nmロングパスエミッションフィルタを使用して、15フレーム/秒のより速い速度で心臓脈管を撮像することもまた可能であった。
実施例:ICGを使用するリンパ流の撮像
【0065】
また別の実施例では、マウス内のリンパ流が、ICGを使用して非侵襲的に撮像された。ICGの水性溶液が、マウスの後足および尾の中に皮下注入された。ICG蛍光が、次いで、リンパクリアランスを可視化するために、無傷の皮膚を通して撮像された。蛍光信号が、850nm、1,000nm、1,200nm、1,300nm、1,400nmロングパス誘電フィルタを伴う商業的Navitarレンズを用いて撮像された。SWIR周波数範囲を横断するこれらの種々のバンドパスフィルタを使用して、リンパ管およびリンパ節が、最大約1,400nmのICGコントラストを用いて可視であり、その点において、管および表面の節のみが、可視であり、より深いリンパ節の信号は、1,450nmにおける水吸収帯域に起因して、減衰した状態になった(図16参照)。
実施例:IRDye 800CWを用いた生体内標的撮像
【0066】
NIR染料IRDye 800CWを使用するSWIRにおける分子標的蛍光撮像が、実施された。商業的に利用可能な標識化キットが、IRDye 800CWを腫瘍標的抗体トラスツズマブとコンジュゲートさせるために使用された。染料-抗体コンジュゲートは、脳内にヒトBT474乳癌細胞を移植されたマウスモデルの中に注入された。マウス頭部の室内光反射画像が、図17Aに示される。マウス頭部は、次いで、IRDye 800CW標識化腫瘍から放出されるSWIR蛍光を用いて非侵襲的に撮像された(図17B参照)。続けて、IRDye 800CWは、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされ、腫瘍を囲繞する脳脈管を強調した(図17C参照)。脳の多色機能画像が、次いで、2つの標識を時間分解することによって、すなわち、IRDye 800CW PEGの添加の前後に異なる色を割り当てることによって生成された(図17D参照)。
実施例:コントラスト対深さ
【0067】
図18A-18Dは、80μmの深さにおいて10倍対物レンズを用いて観察される、マウス肝臓の量子ドット標識化細胞から取得される一連の蛍光画像である。画像は、画像において示されるように、1,000nm、1,200nm、1,450nm、および1,600nmにおける中心波長を伴う50nmブロードバンドパス(BP)フィルタを用いて取得された。挿入画像は、対応する画像内の黒色正方形の拡大を示す。全ての画像は、同一の強度スケールを呈する。スケールバーは、100μmを表す。
【0068】
図19は、950nm~1,600nmの50nm毎に中心を置くバンドパスフィルタを使用して取得される画像に関する、波長の関数としてプロットされる観察されたコントラストのグラフである。図20は、10倍対物レンズを用いて取得される画像に関する、波長の関数としての侵入深さのグラフである。破線は、80μmの侵入深さをマーキングし、グラフ上の十字は、図18A-18Bに提示される画像の波長位置を示す。
実施例:SWIRを使用する組織の自家蛍光
【0069】
SWIR撮像が、対照マウス、およびハンチントン病、パーキンソン病、およびアルツハイマー病を含む、増加している神経変性疾患に関連し得る主要な細胞内分解経路である調節不全のオートファジーを伴うマウスに対して実行された。図21に示されるように、疾患マウスモデルは、対照モデルと比較して、硬化性肝臓内に強化されたSWIR自家蛍光を呈した。同様に、強化されたSWIR自家蛍光信号が、図22に示されるように、対照モデルと比較して、病変モデルの脳内に観察された。理論によって拘束されるわけではないが、増加された観察されたコントラストは、約1,000~2,000nmの電磁波長において殆ど自家蛍光を有していない最も健常な組織に起因する。しかしながら、いくつかの病状は、具体的器官または他の生物学的構造においてSWIR自家蛍光信号を上昇させ、SWIR画像内に疾患相関コントラストを提供し得る。
【0070】
本教示は、種々の実施形態および実施例と併せて説明されたが、本教示が、そのような実施形態または実施例に限定されることは意図されない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるであろうように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。故に、前述の説明および図面は、実施例にすぎない。
(項目1)
方法であって、
蛍光プローブを含んでいない組織の一部を上記組織の励起源に暴露するステップであって、上記組織の少なくとも一部は、900nmを上回る波長を含む自家蛍光スペクトルを有する、ステップと、
900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射に感受性がある検出器を用いて、上記組織を撮像するステップと
を含む、方法。
(項目2)
上記組織の少なくとも一部が病変組織であるかどうかを決定するために、上記撮像された組織を強度閾値と比較するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記病変組織は、癌性組織である、項目2に記載の方法。
(項目4)
上記撮像された組織に関連する信号をディスプレイに出力するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記撮像された組織に関連する信号をコンピューティングデバイスに出力するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記検出器は、2,000nmを下回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射に感受性がある、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記励起源は、900nmを下回る波長を伴う電磁放射を放出する、項目1に記載の方法。
(項目8)
上記検出器を用いて組織を撮像するステップはさらに、1,400nm以上1,500nm以下の周波数範囲内で上記組織を撮像するステップを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
閾値自家蛍光強度を決定するステップと、
構造を識別するために、検出された自家蛍光強度が上記閾値自家蛍光強度を下回るかどうかを決定するステップと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
システムであって、
担体に取り付けられる蛍光成分を含む蛍光プローブであって、上記蛍光成分は、第1の範囲の波長にわたって蛍光を発し、上記担体は、上記第1の範囲と少なくとも部分的に重複する、第2の範囲の波長にわたって自家蛍光を発し、上記第1の範囲の波長のテール部分の強度と上記担体自家蛍光の対応する強度との比は、上記蛍光成分のピーク蛍光発光波長の強度と上記担体自家蛍光の対応する強度との比を上回る、蛍光プローブと、
上記蛍光成分の吸収スペクトル内で電磁放射を放出する励起源と、
上記第1の範囲の波長のテール部分内の電磁放射を検出する検出器と
を備える、システム。
(項目11)
コンピューティングデバイスをさらに備え、上記検出器は、上記蛍光プローブから検出されたテール部分信号を上記コンピューティングデバイスに出力する、項目10に記載のシステム。
(項目12)
上記コンピューティングデバイスは、上記検出された蛍光信号を対象病状に対する強度閾値と比較する、項目10に記載のシステム。
(項目13)
上記対象病状は、硬化性肝疾患である、項目12に記載のシステム。
(項目14)
ディスプレイをさらに備え、上記検出器は、上記蛍光プローブから検出されたテール部分信号を上記ディスプレイに出力する、項目10に記載のシステム。
(項目15)
上記励起源は、900nmを下回るかまたはそれに等しい波長における電磁放射を放出する、項目10に記載のシステム。
(項目16)
上記第1の範囲の波長のテール部分は、900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を含む、項目10に記載のシステム。
(項目17)
上記第1の範囲の波長のテール部分は、2,000nmを下回るかまたはそれに等しい波長を含む、項目10に記載のシステム。
(項目18)
上記検出器は、2,000nmを下回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射を検出する、項目10に記載のシステム。
(項目19)
上記検出器は、900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を伴う電磁放射を検出する、項目10に記載のシステム。
(項目20)
上記蛍光プローブは、インドシアニングリーン、フルオレセン、メチレンブルー、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン7.5、シリコンローダミン、5-ALA、IRDye 700、IRDye 800CW、IRDye 800RS、E350、スクアリリウム染料、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体、およびボロンジピロメタンのうちの少なくとも1つを備える、項目10に記載のシステム。
(項目21)
上記検出器は、1,400nm以上1,500nm以下の周波数範囲内の電磁放射を検出する、項目10に記載の方法。
(項目22)
方法であって、
蛍光プローブを含む組織の一部を上記蛍光プローブの励起源に暴露するステップであって、上記蛍光プローブは、担体に取り付けられる蛍光成分を含み、上記蛍光成分は、第1の範囲の波長にわたって蛍光を発し、上記担体は、上記第1の範囲と少なくとも部分的に重複する第2の範囲の波長にわたって自家蛍光を発し、上記第1の範囲の波長のテール部分の強度と担体自家蛍光の対応する強度との比は、上記蛍光成分のピーク蛍光発光波長の強度と上記担体自家蛍光の対応する強度との比を上回る、ステップと、
上記蛍光成分の蛍光のテール部分を検出するステップと
を含む、方法。
(項目23)
上記蛍光成分の蛍光のテール部分は、900nmを上回るかまたはそれに等しい波長を有する、項目22に記載の方法。
(項目24)
上記蛍光成分の蛍光のテール部分は、2,000nmを下回るかまたはそれに等しい波長を有する、項目23に記載の方法。
(項目25)
上記担体の自家蛍光は、900nmを下回るピーク自家蛍光発光波長を有する、項目23に記載の方法。
(項目26)
上記蛍光成分のピーク蛍光発光波長は、900nmを下回る、項目23に記載の方法。
(項目27)
蛍光信号の検出された部分に基づいて、対象の病状を決定するステップをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目28)
上記対象の病状は、硬化性肝疾患を含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
治療量の上記蛍光プローブを投与するステップをさらに含む、項目22に記載の方法。
(項目30)
上記蛍光成分は、インドシアニングリーン、フルオレセン、メチレンブルー、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン7.5、シリコンローダミン、5-ALA、IRDye 700、IRDye 800CW、IRDye 800RS、E350、スクアリリウム染料、フタロシアニン、ポルフィリン誘導体、およびボロンジピロメタンのうちの少なくとも1つを備える、項目22に記載の方法。
(項目31)
上記テール部分を検出するステップは、1,400nm以上1,500nm以下の周波数範囲内の電磁放射を検出するステップを含む、項目22に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-13A】
図14-14A】
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20
図21
図22