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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】電子レンジ用食品包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20220927BHJP
   B65D 75/60 20060101ALI20220927BHJP
   B65D 77/02 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D75/60
B65D77/02 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019025676
(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公開番号】P2020132183
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】110001391
【氏名又は名称】特許業務法人レガート知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 直樹
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3062518(JP,U)
【文献】特開2001-270583(JP,A)
【文献】特開2000-203661(JP,A)
【文献】特開2000-062858(JP,A)
【文献】登録実用新案第3064857(JP,U)
【文献】特開2005-206183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 75/60
B65D 77/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部周縁に形成されたフランジの上面に蓋材がヒートシールされる電子レンジ用食品包装容器であって、
前記フランジの上面には収容部内の圧力を外気圧と調整するための圧力調整部を部分的に設け、
前記圧力調整部は、前記フランジの前記蓋材とのヒートシール面と上面が同じ高さの凸部を前記フランジの周方向に複数並べて形成される凸部列を前記フランジの幅方向に複数列、前記凸部が千鳥状となるように配列するとともに、前記凸部列のうち最も収容部側の凸部列を前記フランジの内縁に接するようにして設けた、
電子レンジ用食品包装容器。
【請求項2】
凸部列は、フランジの幅方向に3列以上設けた、
請求項1記載の電子レンジ用食品包装容器。
【請求項3】
フランジの幅方向に隣接する凸部列間の隙間は、前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間よりも狭く形成した、
請求項1又は2記載の電子レンジ用食品包装容器。
【請求項4】
フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さを2mm以下とし、凸部の長さは、前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さの等倍以上3倍以下とした、
請求項1ないし3の何れか記載の電子レンジ用食品包装容器。
【請求項5】
フランジ上面の圧力調整部以外の部分に前記フランジの周方向に延びる凸条を設け、この凸条の上面を蓋材とのヒートシール面とした、
請求項1ないし4の何れか記載の電子レンジ用食品包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、弁当や惣菜などの食品を収容して蓋材で封をし、そのまま電子レンジで加熱調理することができる電子レンジ用食品包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓋材で密封された電子レンジ用食品包装容器内に収容された弁当や惣菜を電子レンジを用いて加熱調理すると、食品内の水分が水蒸気となって膨張し、密封された容器内の圧力が高まって容器が破裂するおそれがある。
【0003】
このため、従来の電子レンジ用食品包装容器にあっては、電子レンジによる加熱調理の際に生じる容器内圧力を容器の外部に逃がすために、加熱調理前に蓋材の一部を剥がしたり、蓋材に通気孔を設けたりするのが一般的である。
【0004】
例えば、実用新案登録第3064857号公報には、周囲に鍔部(フランジ)を有する食品用容器において、鍔部1a上面より上方に突出し、かつ、所定間隔で凹部1eが形成された外側凸条1cと、この外側凸条1cの内側に外側凸条1cと略同じ高さで、かつ、所定間隔で凹部1fが形成された内側凸条1dを設け、これら外側凸条1cの凹部1eと内側凸条1dの凹部1fの位置をずらした食品用容器が開示されている。
【0005】
この食品用容器によれば、電子レンジによる加熱調理時に発生する多量の蒸気の一部は、内側凸条1dに形成された凹部1f、両凸条間に形成された溝間、外側凸条1cに形成された凹部1eを通って容器外部に適度に放出されるため、容器内部が膨張して破裂することを防止することができる。また、内側凸条1dの凹部1fと外側凸条1cの凹部1eは、互いに重ならない位置に形成されているので、容器外部から容器内部への異物の混入も可及的に防止することができる。
【0006】
【文献】実用新案登録第3064857号公報
【0007】
ところで、密封された電子レンジ用食品包装容器内に収容された弁当や惣菜を電子レンジを用いて加熱調理した場合、加熱調理が終わると、容器内部の水蒸気が冷却されて容器内の圧力が急激に低下し、密封された容器の内部が負圧状態又は真空状態となるため、蓋材が容器内部の食品と接触したり、蓋材が容器と密着して開封しにくくなったり、さらには容器自体が変形してしまったりするおそれもある。
【0008】
この点、実用新案登録第3064857号公報に記載された食品用容器にあっては、鍔部1aの上面に形成された各凸条1c,1dの長さが長く、また、図7、8に示すように、内側凸条1dが鍔部内縁21(すなわち収容部1の開口縁)から鍔部外縁方向に後退した位置に形成されているため、加熱調理後に容器内部が負圧状態になると、蓋材5が鍔部内縁21に密着し、容器内部から容器外部に連通する通気路(内側凸条1dに形成された凹部1f、両凸条間に形成された溝間、外側凸条1cに形成された凹部1eによって形成されている通気路)が閉塞されてしまい、外気を容器内部に取り入れることができず、加熱調理後に生じる容器内部の急激な減圧に対応することができないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、電子レンジによる加熱調理時に容器内部に生じる正圧を容器外部に放出するだけでなく、加熱調理後に容器内に負圧が生じた場合に容器外部から確実に空気を取り入れることができる電子レンジ用食品包装容器を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の電子レンジ用食品包装容器は、収容部周縁に形成されたフランジの上面に蓋材がヒートシールされる電子レンジ用食品包装容器であって、前記フランジの上面には収容部内の圧力を外気圧と調整するための圧力調整部を部分的に設け、前記圧力調整部は、前記フランジの前記蓋材とのヒートシール面と上面が同じ高さの凸部を前記フランジの周方向に複数並べて形成される凸部列を前記フランジの幅方向に複数列、前記凸部が千鳥状となるように配列するとともに、前記凸部列のうち最も収容部側の凸部列を前記フランジの内縁に接するようにして設けたものとして構成する。前記凸部は、半球状、蒲鉾状、錘台状、柱状など種々の形状のものが考えられ、前記圧力調整部を構成する凸部全部を同じ形状のものとしてもよいし、凸部列毎あるいは凸部毎に異なる形状のものとしてもよく、必ずしも全ての凸部を同じ形状とする必要はない。
【0011】
請求項2の発明は、前記凸部列を前記フランジの幅方向に3列以上設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、前記フランジの幅方向に隣接する凸部列間の隙間を前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間よりも狭く形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さを2mm以下とし、前記凸部の長さを前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さの等倍以上3倍以下としたことを特徴とする。前記凸部の長さとは、前記凸部のフランジ周方向における長さをいう。
【0014】
請求項5の発明は、前記フランジ上面の圧力調整部以外の部分に前記フランジの周方向に延びる凸条を設け、この凸条の上面を蓋材とのヒートシール面としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、収容部の周縁に形成されたフランジの上面に収容部内の圧力を外気圧と調整するための圧力調整部を部分的に設け、前記圧力調整部は、前記フランジの前記蓋材とのヒートシール面と上面が同じ高さの凸部を前記フランジの周方向に複数並べて形成される凸部列を前記フランジの幅方向に複数列、前記凸部が千鳥状となるように配列するとともに、前記凸部列のうち最も収容部側の凸部列を前記フランジの内縁に接するようにして設けたので、容器内部に収容した食品を電子レンジで加熱調理する際に発生する水蒸気によって収容部内の圧力が高まり正圧状態になると、圧力調整部において千鳥状に配設された凸部間の隙間を通って水蒸気が容器外部に放出され、収容部内が過度の正圧状態となることを防止することができる。
【0016】
そして、圧力調整部の最も収容部側の凸部列は、フランジの内縁に接するようにして設けてあるので、収容部との境界線となるフランジ内縁は圧力調整部において上下方向の凹凸に形成される。そのため、電子レンジによる加熱終了後に収容部内の圧力が急激に低下して、負圧により蓋材が収容部側に引きつけられても、蓋材がフランジ内縁に完全に密着して収容部の開口部を塞いでしまうことがなく、最も収容部側に配設された凸部列におけるフランジ周方向の凸部間の隙間が蓋材によって閉塞されるおそれがない。これにより、容器内部から容器外部に連通する通気路がフランジ上面の圧力調整部において確保され、加熱調理後に容器内に負圧が生じた際に容器外部から確実に空気を取り入れることができ、容器内部が過度に負圧状態となることを防止することができる。
【0017】
また、圧力調整部の各凸部は千鳥状に配設されているため、最も外縁側に配設された凸部列におけるフランジ周方向の凸部間の隙間から異物が侵入しても、フランジの幅方向に隣接する凸部列の凸部に突き当たり、収容部内への侵入が遮られる。
【0018】
さらに、圧力調整部において、蓋材は千鳥状に配列された凸部の上面とだけヒートシールされているので、圧力調整部における蓋材とフランジ上面とのシールが断続的なものとなる。このため、圧力調整部においては蓋材とフランジ上面とのシール状態が脆弱で剥がれやすく、加熱調理の際に生じる容器内の圧力が圧力調整部に加わると、圧力調整部において蓋材が凸部上面から剥離されやすい。
【0019】
請求項2の発明によれば、凸部列をフランジの幅方向に3列以上設けたので、容器内部と容器外部とに連通する通気路の経路が複雑となり、容器外部から容器内部への異物の混入を一層防止することができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、フランジの幅方向に隣接する凸部列間の隙間は、前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間よりも狭く形成したので、フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間(フランジ周方向の凸部間の隙間)を異物が通過しても、その異物がフランジの幅方向に隣接する凸部列間の隙間(フランジ幅方向の凸部列間の隙間)よりも大きいとこのフランジ幅方向の凸部列間の隙間を通過することができず、収容部への異物の混入を防止することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さを2mm以下としたので、フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間から異物が混入しにくい。そして、凸部の長さを前記フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間の長さの等倍以上3倍以下としたので、フランジの周方向に隣接する凸部間の隙間に対する凸部の長さが相対的に抑えられ、千鳥状に配置された凸部間の隙間を縫って収容部の内部と外部とに連通する通気路の最短距離を、外部からの異物侵入を防ぎつつ圧力調整時の通気性を確保する上で必要最小限に抑えることができる。さらには、各凸部の長さが短く蓋材とのシール面も小さくなるので、圧力調整部における易剥離性も確保することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、フランジ上面の圧力調整部以外の部分に前記フランジの周方向に延びる凸条を設け、この凸条の上面を蓋材とのヒートシール面としたので、圧力調整部以外のフランジ上面における蓋材とのシール面積を小さくすることができ、蓋材を開封する際に小さな力で開封することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】この発明の実施例の概要を示す斜視図
図2】同じく圧力調整部の拡大斜視図
図3】同じく圧力調整部の拡大平面図
図4】同じく加熱調理前後の様子を示す断面図
図5】同じくフランジ上面の変形例を示す拡大斜視図
図6】同じく圧力調整部を構成する凸部の変形例を示す拡大平面図
図7】従来の電子レンジ用食品包装容器のフランジ部分の拡大斜視図
図8】同じく加熱調理後の様子を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1ないし4は、この発明の第1の実施例の概要を示す図である。
この電子レンジ用食品包装容器は、合成樹脂を成形してなり、弁当や惣菜などの食品を収容する収容部1と、収容部1の開口部周縁から外側に向かって形成されたフランジ2を備えている。図中符号11は収容部1の側壁であり、符号12は収容部1を複数区画に仕切るための仕切壁である。
【0025】
フランジ2の上面には、部分的に圧力調整部3が形成されるとともに、この圧力調整部3以外の部分にはフランジ2の周方向に延びる凸条4が形成されている。この実施例において、圧力調整部3は、対向するフランジ2の長手辺にそれぞれ1箇所ずつの合計2箇所に設けてあるが、1箇所だけ設けてもよいし、フランジ2の短手辺に設けるものとしてもよい。
【0026】
圧力調整部3は、長さ(L)2mm、幅(W)1mm、高さ(H)0.5mmの複数の略蒲鉾状の凸部を、フランジ2の周方向に3.5mmピッチ、幅方向に2mmピッチで千鳥状に配設して形成されており、収容部1側からフランジ2の外縁にかけて、収容部側凸部列31(7個の凸部で構成)、中央凸部列32(6個の凸部で構成)、外縁側凸部列33(7個の凸部で構成)としてある。この実施例においては、フランジ2の周方向に隣接する凸部間の隙間(フランジ周方向の隙間)Sは1mmとし、フランジ2の幅方向に隣接する凸部列間の隙間(フランジ幅方向の隙間)Sは0.5mmとしてある。そして、収容部側凸部列31はフランジ2の内縁21と接するようにして設けてあり、圧力調整部3におけるフランジ2の内縁21は、上下方向の凹凸を備えたものとして形成されている。
【0027】
フランジ2の周方向に延びる凸条4の高さは0.5mmで、その上面は圧力調整部3を構成する凸部の上面と同じ高さに位置するようにしてあり、凸条4の上面および圧力調整部3を構成する各凸部の上面が、蓋材5とヒートシールされるヒートシール面となっている。
【0028】
この発明の電子レンジ用食品包装容器は、上記のように構成したので、収容部1に食品を収容した後、蓋材5をフランジ2の上面にヒートシールすると、凸条4の上面および圧力調整部3の凸部上面において蓋材5がヒートシールされることとなる。すなわち、蓋材5をフランジ2の上面にヒートシールした場合、圧力調整部3において蓋材5とフランジ2とのヒートシールが断続的なものとなることでシール脆弱部が形成されるとともに、フランジ2の周方向に隣接する凸部間の隙間Sとフランジ2の幅方向に隣接する凸部列間の隙間Sとによって包装容器の内外部に連通する通気路Vが圧力調整部3に形成される。
【0029】
次いで、この発明の電子レンジ用食品包装容器を用いて電子レンジで加熱調理した前後の様子を、図4を参照しながら説明する。
図4は、この発明の電子レンジ用食品包装容器を用いた加熱調理前後の様子を示す圧力調整部3の断面図であり、図3のA-A線部分における断面の概要を示している(図3にあっては蓋材5の図示を省略しているが、図4においては蓋材5をヒートシールした状態のものとして図示してある。)。
【0030】
図4(a)は、フランジ2の上面に蓋材5をヒートシールした状態の電子レンジ用食品包装容器であり、電子レンジによる加熱調理前の様子を示すものである。フランジ2に形成された圧力調整部3を構成する凸部列31,32,33の各凸部上面に合成樹脂製のシート状蓋材5がヒートシールされており、フランジ2の周方向に隣接する凸部間の隙間Sとフランジ2の幅方向に隣接する凸部列間の隙間Sとによって、収容部1の内部と外部とを連通する通気路Vが形成されている。
【0031】
ここで、外縁側凸部列33を構成する凸部間の隙間Sを通って包装容器外部から異物が侵入してきても、中央凸部列32を構成する凸部に突き当たってしまうため、そのまま異物が収容部1内に侵入することはない。そして、異物が進行方向を変えて外縁側凸部列33と中央凸部列32との隙間Sを通過しようとしても、この隙間Sは外縁側凸部列33を構成する凸部間の隙間Sよりも幅が狭くなっているので、隙間Sよりも小さい異物でなければこの隙間Sを通過することはできない。
【0032】
図4(b)は、電子レンジによって加熱調理している途中の様子を示すものである。電子レンジによって加熱調理すると、収容部1内に収容された食品に含まれる水分が温められて大量の水蒸気が一気に発生し、収容部1内の気体が膨張して圧力が高まり収容部1内は正圧状態となるが、フランジ2の周方向に隣接する凸部間の隙間Sとフランジ2の幅方向に隣接する凸部列間の隙間Sとにより収容部1の内部と外部とを連通する通気路Vが形成されているので、収容部1内に発生した水蒸気の一部はこの通気路Vを通って外部に放出される。また、圧力調整部3における蓋材5とフランジ2上面とのヒートシールは、千鳥状に配置された凸部の上面と断続的にシールされており、凸条4と蓋材5とのヒートシールと比較して脆弱なシール状態となっているため、収容部1内の圧力によって蓋材5が押し上げられると、収容部側凸部列31、中央凸部列32、外縁側凸部列33の順に次第にシールが剥離していき、圧力調整部3全体が開口して収容部1内の圧力が外部に放出される。
【0033】
図4(c)は、電子レンジによる加熱調理を終えた後の様子を示すものである。電子レンジによる加熱調理が終了すると、温められていた収容部1内の気体が常温にさらされて冷却されることで気体の体積が急激に小さくなり、収容部1内が負圧状態となる。このため、蓋材5が収容部1側に引きつけられるものの、収容部側凸部列31がフランジ2の内縁21に接するようにして設けられているため、蓋材5が収容部1側に引きつけられてもフランジ内縁21に蓋材5が密着してしまうことがなく、収容部側凸部列31を構成する凸部間の隙間Sによって容器外部から容器内部への通気路Vが確保される。これにより、蓋材5がフランジ内縁21と隙間なく密着して外気を容器内に取り入れることができなくなることを防止することができる。
【0034】
したがって、電子レンジを用いて加熱調理を行う際、この発明の電子レンジ用食品包装用容器を用いることにより、加熱調理時に容器内部に生じる正圧が圧力調整部3を介して適度に容器外部に放出されるので容器の破損が防止される。そして、加熱調理後に容器内に負圧が生じた場合には、圧力調整部3を介して容器外部から収容部1内に確実に外気が取り入れられるので、収容部1内が過度に負圧状態となることがなく、蓋材5が収容部1側に押しつけられて食品に接触したり、容器と密着して開封しにくくなったり、収容部1内が真空状態となり容器自体が変形してしまったりすることもない。
また、蓋材5をフランジ2から剥がす際には、蓋材5はフランジ2の上面に形成された凸条4の上面にヒートシールされているので、圧力調整部3を除く部分のフランジ2の上面とのシール面積が小さく、簡単に蓋材5をフランジ2から剥がすことができる。
【0035】
図5は、上記実施例におけるフランジ2の上面の変形例を示す概要図である。すなわち、上記実施例にあっては、圧力調整部3を除く部分のフランジ2の上面にフランジ2の周方向に延びる凸条4を形成し、この凸条4の上面に蓋材5をヒートシールするものとしてあるが、この変形例においては、フランジ2の上面全体を圧力調整部3を構成する凸部の上面と同じ高さに形成し、圧力調整部3とともにフランジ2の上面全体を蓋材5とヒートシールするようにしてある。この変形例においては、圧力調整部3が形成された部分を除くフランジ2の上面全体が蓋材5とヒートシールされることになるので、上記実施例よりも蓋材5とフランジ2の上面とのシール状態が強固なものとなる。その他の構成並びに効果は上記実施例と同じである。
【0036】
図6は、上記実施例における凸部形状の変形例である。上記実施例においては、圧力調整部3を構成する各凸部は略蒲鉾状の形状としてあるが、図6(a)に示す変形例にあっては略六角柱状の凸部形状、図6(b)に示す変形例にあっては略四角柱状の凸部形状としたものである。何れの変形例も角柱の角部が容器の収容部1側に向くようにして凸部を設けてあるので、電子レンジでの加熱調理時に発生する収容部1内の圧力上昇によって蓋材5が押し上げられると、凸部上面から蓋材5を剥がそうとする力が凸部とのヒートシール面全体に分散せずに凸部の収容部1側に向いた角部に集中するため、蓋材5が剥離されやすいという効果が得られる。また、収容部1側以外の方向にも角部が形成されているので、電子レンジによる加熱調理時にフィルム状の蓋材5が凸部上面からうまく剥がれなかった場合や、凸部上面から一旦剥離された蓋材5が加熱調理後に再び凸部上面と固着してしまった場合などにおいて、蓋材5を手で剥がす際にも角部に力が集中して剥がしやすいという効果がある(凸部形状を略四角柱状とした変形例にあっては、フランジ2の周方向に蓋材5を剥がす場合に剥がしやすく、略六角柱状とした変形例にあっては、フランジ2に対して斜め方向(収容部1の対角線方向)に蓋材5を剥がす場合に剥がしやすい。)。その他の構成並びに効果は上記実施例と同じである。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明は、弁当や惣菜などの食品を収容して蓋材で封をし、そのまま電子レンジで加熱調理することができる電子レンジ用食品包装容器に関するものであり、産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0038】
1 収容部
11 側壁
2 フランジ
21 フランジ内縁
3 圧力調整部
31 収容部側凸部列
32 中央凸部列
33 外縁側凸部列
4 凸条
5 蓋材
L 凸部の長さ
W 凸部の幅
フランジ周方向に隣接する凸部間の隙間(フランジ周方向の隙間)
フランジ幅方向に隣接する凸部列間の隙間(フランジ幅方向の隙間)
V 通気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8