(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】微小粗面化電解銅箔及び銅箔基板
(51)【国際特許分類】
C25D 7/06 20060101AFI20220927BHJP
C25D 5/16 20060101ALI20220927BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20220927BHJP
H05K 1/09 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C25D7/06 A
C25D5/16
H05K1/03 630H
H05K1/09 A
(21)【出願番号】P 2019176154
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2019-09-26
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】514167525
【氏名又は名称】金居開發股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 雲興
(72)【発明者】
【氏名】高 羣祐
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 宗憲
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】市川 篤
【審判官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285751(JP,A)
【文献】特開2009-218206(JP,A)
【文献】特開2018-141228(JP,A)
【文献】特開2004-263296(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138338(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/006739(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のピーク、複数の凹溝及び複数の微結晶クラスタを含む微小粗面化表面を有する微小粗面化電解銅箔であって、
前記凹溝が、走査式電子顕微鏡による5000倍の写真から観察すると、U形の断面輪郭及び/又はV形の断面輪郭を有し、平均幅が0.1~4μmであり、平均深さが1.5μm以下であり、
前記複数の微結晶クラスタのそれぞれが、前記ピークのトップに位置され、複数の粒子径0.05~0.5μmの微結晶により堆積するように形成されたものであり、
前記微小粗面化表面のRlr値が、1.3より小さい、
微小粗面化電解銅箔。
【請求項2】
各前記微結晶クラスタの平均高さが2μm以下である、請求項1に記載の微小粗面化電解銅箔。
【請求項3】
前記微小粗面化表面のRlr値は、1.26より小さい、請求項1
又は2に記載の微小粗面化電解銅箔。
【請求項4】
基材及び微小粗面化電解銅箔を備える銅箔基板であって、
前記微小粗面化電解銅箔は、前記基材に貼り付けされる微小粗面化表面を有し、走査式電子顕微鏡による5000倍の写真から観察すると、前記微小粗面化表面に、複数のピーク、U形の断面輪郭及び/又はV形の断面輪郭を有する複数の凹溝、及び複数の微結晶クラスタが形成され、前記凹溝の平均幅が0.1~4μmであり、前記凹溝の平均深さが1.5μm以下であり、前記微結晶クラスタが前記ピークのトップに位置し、前記微結晶クラスタの平均高さが2μm以下であり、
各前記微結晶クラスタが複数の微結晶により堆積するように形成され、前記微結晶の粒子径が0.05~0.5μmであり、
前記銅箔基板による20GHzでの挿入損失が0~-1.5dB/inであり、
また、前記微小粗面化電解銅箔と前記基材と間の剥離強度が4.3lb/inより大きい、銅箔基板。
【請求項5】
前記銅箔基板による16GHzでの挿入損失が0~-1.2dB/inである、請求項
4に記載の銅箔基板。
【請求項6】
前記銅箔基板による8GHzでの挿入損失が0~-0.65dB/inであり、前記銅箔基板による12.89GHzでの挿入損失が0~-1.0dB/inである、請求項
5に記載の銅箔基板。
【請求項7】
前記銅箔基板による8GHzでの挿入損失が0~-0.63dB/inであり、前記銅箔基板による12.89GHzでの挿入損失が0~-0.97dB/inであり、前記銅箔基板による16GHzでの挿入損失が0~-1.15dB/inであり、前記銅箔基板による20GHzでの挿入損失が0~-1.45dB/inである、請求項
6に記載の銅箔基板。
【請求項8】
前記基材は、周波数10GHzでのDk値が4.0以下であり、且つ周波数10GHzでのDf値が0.015以下である、請求項
4に記載の銅箔基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅箔に関し、特に電解銅箔及びそれを備える銅箔基板に関する。
【背景技術】
【0002】
情報と電子産業の発展につれて、高周波高速の信号伝送は、現代の回路設計と製造の一環になる。電子製品は、高周波高速の信号伝送要求に満たすために、使用される銅箔基板が、高周波において好適な挿入損失(insertion loss)を果たすことが求められ、もって高周波信号の伝送中の過度な損失が回避される。銅箔基板の挿入損失は、その表面粗さと密接な関係がある。表面粗さが低下された場合、挿入損失が良いが、そうでない場合は良くない。しかし、粗さの低下に連れて、銅箔と基材と間の剥離強度が低減されて、バックエンド製品の歩留まりに影響を与える。従って、どのように剥離強度を当業界の水準に維持しながら、好適な挿入損失を果たせることは、本技術的分野で解決しようとする課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の解決しようとする技術課題は、従来技術の不足に対して微小粗面化電解銅箔を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記した技術的課題を解決するために、本発明で採用された一つの技術手段としては、微小粗面化電解銅箔を提供することである。上記微小粗面化電解銅箔は、微小粗面化表面を有する。上記微小粗面化表面には、複数のピーク、複数の凹溝、及び複数の微結晶クラスタを含む。上記凹溝は、U形の断面輪郭及び/又はV形の断面輪郭を有し、平均幅が0.1~4μmであり。上記凹溝の平均深さが1.5μm以下である。上記微結晶クラスタは、上記ピークのトップに位置する。各上記微結晶クラスタは、複数の平均径0.5μm以下の微結晶により堆積して形成される。上記微小粗面化電解銅箔における微小粗面化表面のRlr値は、1.3より小さい。
【0005】
各上記微結晶クラスタが複数の微結晶により堆積するように形成され、上記微結晶の平均径が0.5μm以下であり、各上記微結晶クラスタの平均高さが2μm以下であることが好ましい。
【0006】
各上記微結晶クラスタが複数の微結晶により堆積するように形成され、上記微結晶の平均径が0.5μm以下であり、各上記微結晶クラスタの平均高さが1.3μm以下であることが好ましい。複数の上記微結晶は枝状結晶群となるように構成される。
【0007】
上記微小粗面化電解銅箔における微小粗面化表面のRlr値が1.26より小さいことが好ましい。
【0008】
上記した技術的課題を解決するために、本発明で採用された一つの技術手段としては、基材及び微小粗面化電解銅箔を備える銅箔基板を提供することである。上記微小粗面化電解銅箔は、上記基材に貼り付けされる微小粗面化表面を有する。上記微小粗面化表面に、複数のピーク、複数の凹溝及び複数の微結晶クラスタが形成され、上記凹溝の平均幅が0.1~4μmであり、上記凹溝の平均深さが1.5μm以下であり、上記微結晶クラスタが上記ピークのトップに位置し、上記微結晶クラスタの平均高さが2μm以下である。上記銅箔基板による20GHzでの挿入損失(Insertion Loss)が、0~-1.5dB/inである。上記微小粗面化電解銅箔と上記基材との間の剥離強度が、4.3lb/inより大きい。
【0009】
上記銅箔基板による16GHzでの挿入損失が0~-1.2dB/inであることが好ましい。
【0010】
上記銅箔基板による8GHzでの挿入損失が0~-0.65dB/inであり、上記銅箔基板による12.89GHzでの挿入損失が0~-1.0dB/inであることが好ましい。
【0011】
上記銅箔基板による8GHzでの挿入損失が0~-0.63dB/inであり、上記銅箔基板による12.89GHzでの挿入損失が0~-0.97dB/inであり、上記銅箔基板による16GHzでの挿入損失が0~-1.15dB/inであり、上記銅箔基板による20GHzでの挿入損失が0~-1.45dB/inであることが好ましい。
【0012】
上記微結晶クラスタの平均最大幅が5μm以下であり、一部の上記微結晶クラスタに枝状構造が形成され、各上記微結晶クラスタの平均高さが1.8μm以下であり、各上記微結晶クラスタが複数の微結晶により堆積するように形成され、上記微結晶の平均径が0.5μm以下であり、上記微小粗面化電解銅箔における微小粗面化表面のRlr値が1.26より小さいことが好ましい。
【0013】
上記基材による周波数10GHzでのDk値が4以下であり且つ周波数10GHzでのDf値が0.020以下であることが好ましいが、上記基材による周波数11の10GHzでのDk値が3.8以下であり且つ周波数10GHzでのDf値が0.015以下であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による1つの有利の効果では、微小粗面化表面が、基材と好適な接合力を有し、且つ好適な挿入損失が表現され、信号輸送中の損失が効果的に抑制されることができる。
【0015】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と図面を参照するが、提供される図面は、参考と説明を提供するためのものに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る銅箔基板の実施形態を説明するための側面模式図である。
【
図2】
図1のIIの一部を拡大した部分拡大模式図である。
【
図3】微小粗面化電解銅箔の製造デバイスを説明するための模式図である。
【
図4】実施例1における微小粗面化電解銅箔の表面形態を説明するための走査式電子顕微鏡による写真である。
【
図5】実施例1における微小粗面化電解銅箔の断面形態を説明するための走査式電子顕微鏡による写真である。
【
図6】比較例3における銅箔表面形態を説明するための走査式電子顕微鏡による写真である。
【
図7】比較例3における銅箔断面形態を説明するための走査式電子顕微鏡による写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、特定の具体的実施例により本発明に開示される「微小粗面化電解銅箔及び銅箔基板」に関する実施の態様を説明するが、当業者は本明細書に開示される内容から本発明のメリットと効果が分かる。本発明は他の異なる具体的実施例により実施又は応用されてもよく、本明細書における各項の詳細は異なる観点と応用に基づき、本発明の趣旨を逸脱することなく種々の変形と変更を行ってもよい。また、本発明の添付図面は簡単な概略的説明に過ぎず、実際のサイズに応じて描画されるものではないことをまず明らかにしておく。以下の実施の態様は本発明の関連技術内容をさらに詳細に説明するが、開示される内容は本発明の保護範囲を制限するためのものではない。
【0018】
図1を参照すると、本発明に係る銅箔基板1は、基材11及び2つの微小粗面化電解銅箔12を備える。微小粗面化電解銅箔12は、それぞれ基材11の反対する両面に貼り付けられる。特に説明すべきことは、銅箔基板1は、1枚の微小粗面化電解銅箔12だけ含んでもよい。
【0019】
基材11は、挿入損失(insertion loss)を抑制するように、低Dk値及び低Df値を有することが好ましい。上記基材11による周波数10GHzでのにおけるDk値が4以下であり且つ周波数10GHzでのDf値が0.020以下であることが好ましいが、上記基材11による周波数10GHzでのDk値が3.8以下であり且つ周波数10GHzでのDf値が0.015以下であることがさらに好ましい。
【0020】
基材11は、プリプレグが合成樹脂に含浸され硬化されてなる複合材料を使用してもよい。プリプレグとしては、例えば、フェノ-ル綿紙、綿紙、樹脂製繊維布、樹脂製繊維不織布、ガラス板、ガラス織布、又はガラス不織布が挙げられる。合成樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、シアン酸エステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリエ-テル樹脂、又はフェノ-ル樹脂が挙げられる。合成樹脂層は、単一の層や複数の層であってもよく、特別に限定されない。基材11は、EM891、IT958G、IT150DA、S7439G、MEGTRОN 4、MEGTRОN 6、又はMEGTRОN 7から選ばれるが、それらに限定されない。
【0021】
図1及び
図2を参照すると、微小粗面化電解銅箔12は、電解法で銅箔表面に対して粗化処理を行うことにより得られる。電解法粗化処理は、銅箔のいずれかの表面に対して実施されてよく、従って、微小粗面化電解銅箔12が、少なくとも一側にある微小粗面化表面121を有する。本発明における一実施形態では、グリーン箔として、反転銅箔(Reverse Treated copper Foil,RTF)が使用され、その光沢面にさらに粗化処理を行って、微小粗面化電解銅箔12が得られる。
【0022】
微小粗面化表面121は、基材11に貼り付けされるためのものであり、複数のピーク122、複数の凹溝123、及び複数の微結晶クラスタ124を備える。2つの隣り合うピーク122により凹溝123が定義される。凹溝123は、U形の断面輪郭及び/又はV形の断面輪郭を有し、凹溝123の平均深さが1.5μm以下であり、1.3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。凹溝123の平均幅は、0.1~4μmである。
【0023】
微結晶クラスタ124の平均高さは、2μm以下であり、1.8μm以下であることが好ましく、1.6μm以下であることがより好ましい。上記した平均高さは、微結晶クラスタ124のトップからピーク122のトップまでの距離を意味する。微結晶クラスタ124の平均最大幅は、5μm以下であり、3μm以下であることが好ましい。各微結晶クラスタ124は、複数の微結晶125により堆積するように形成され、且つ微結晶125の平均径が0.5μm以下であり、0.05~0.5μmであることが好ましく、0.1~0.4μmであることがより好ましい。各微結晶クラスタ124は、その自身の高さ方向での微結晶125の平均堆積数が15個以下であり、13個以下であることが好ましく、10個以下であることがより好ましく、8個以下であることがさらに好ましい。微結晶125は、微結晶クラスタ124に堆積される場合、タワ-状構成に堆積されてもよく、外へ延伸して枝状構造になって、枝状結晶群Mが構成されてもよい。
【0024】
微結晶クラスタ124間の配列は、限定されないので、ランダムに配列されてもよく、ほぼ同じ方向に配列されてもよく、又は?列の延伸方向が一部同じであるように、複数の微結晶クラスタ124が一列に並べられてもよい。
【0025】
微小粗面化電解銅箔12における微小粗面化表面121は、平均高さが0.5μmより大きいことが好ましく、1.5μmより大きいことがさらに好まし、2.0μmより大きいことが特に好ましい。微小粗面化表面121の平均粗さRzは、上記した範囲であり場合、基材11との好適な接合力が果たし、つまり、平均粗さRzを向上すれば、基材11との接合力を効果的に向上し、剥離強度(Peel strength)を効果的に向上することができる。1oz銅箔基板1については、微小粗面化電解銅箔12と基材11との間の剥離強度が4.3lb/inより大きく、4.5lb/inより大きいことが好ましく、4.7lb/inより大きいことがより好ましい。基板11に貼付される場合、微小粗面化表面に塗布された粘着剤が凹溝123及び微結晶クラスタ124の底部に浸入することがあるので、基板11に貼付されてから、剥離強度を効果的に向上することができる。
【0026】
上記微小粗面化表面121の態様により、微小粗面化電解銅箔12と基材11との間に十分な剥離強度を有し、信号輸送中の損失が効果的に抑制される。微小粗面化表面121のRlr値が、1.3より小さく、1.26より小さいことが好ましく、1.23より小さいことがより好ましく、1.2より小さいことがさらに好ましい。上記Rlr値は、展開長さの比、即ち、被測定物の単位長当たりの表面輪郭長さの比を意味する。値が高いほど、表面が起伏することを示し、値が1である場合、完全に平坦であることを示す。Rlrは、式Rlr=Rlo/Lに満たす。ただし、Rloは、測定される輪郭長さを示し、Lは、測定される距離を示す。
【0027】
微小粗面化電解銅箔12のRlr値が、1.3より小さい場合、銅箔基板1(例えば、IT170GRA1+RG311)には、好適な挿入損失が表現される。銅箔基板1の8GHzにおける挿入損失は、0~-0.65dB/inであり、0~-0.63dB/inであることがより好ましく、0~-0.60dB/inであることがさらに好ましく、0~-0.57dB/inであることが特に好ましい。銅箔基板1の12.89GHzにおける挿入損失は、0~-1.0dB/inであり、0~-0.97dB/inであることが好ましく、0~-0.94dB/inであることがより好ましく、0~-0.90dB/inであることがさらに好ましい。銅箔基板1の16GHzにおける挿入損失は、0~-1.2dB/inであり、0~-1.15dB/inであることがより好ましく、0~-1.1dB/inであることがさらに好ましい。銅箔基板1の20GHzにおける挿入損失は、0~-1.5dB/inであり、0~-1.45dB/inであることが好ましく、0~-1.4dB/inであることがより好ましく、0~-1.36dB/inであることがさらに好ましく、0~-1.34dB/inであることがまたさらに好ましい。本発明に係る微小粗面化電解銅箔12は、周波数4GHz~20GHzにて、信号の輸送中の損失を効果的に抑制することができる。
【0028】
[微小粗面化電解銅箔の製造方法]
微小粗面化電解銅箔12に対して、グリーン箔を銅を含有するめっき液に浸入させてから、一定の時間で電解粗化処理を行う。本発明の実施形態では、グリーン箔として、反転銅箔(RTF)が使用され、その粗い面に対して電解粗化処理を行う。電解粗化処理は、任意の従来のデバイス、例えば、連続型の電解デバイスや、バッチ式電解デバイスにより実施されてよい。
【0029】
銅を含有するめっき液には、銅イオン、酸、及び金属添加剤を含む。銅イオンは、例えば、硫酸銅、硝酸銅、又はそれらの組合せに由来する。酸としては、例えば、硫酸、硝酸、又はそれらの組合せが挙げられる。金属添加剤としては、コバルト、鉄、亜鉛、又はそれらの組合せが挙げられる。なお、銅を含有するめっき液には、従来の添加剤、例えば、ゼラチン、有機窒化物、ヒドロキシエチルセルロ-ス(hydroxyethyl cellulose;HEC)、ポリエチレングリコ-ル(Poly(ethylene glycol)、PEG)、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム(Sodium 3-mercaptopropanesulphonate、MPS)、ビス(3-スルフォプロピル)ジスルファイド(Bis-(sodium sulfopropyl)-disulfide、SPS)、又はチオ尿素基化合物をさらに加えてもよいが、これらに限定されない。
【0030】
粗化処理の回数は、少なくとも2回であり、毎回の粗化処理中の銅を含有するめっき液の組成は、同じ又は異なってもよい。本発明の一実施形態では、2組の銅を含有するめっき液により交互に粗化処理を行い、且つ、第1組の銅を含有するめっき液での銅イオン濃度が10~30g/lであることが好ましく、酸濃度が70~100g/lであることが好ましく、また、金属添加剤の添加量が150~300g/lであることが好ましい。それに対して、第2組の銅を含有するめっき液での銅イオン濃度が70~100g/lであることが好ましく、酸濃度が30~60g/lであることが好ましく、また、金属添加剤の添加量が15~100g/lであることが好ましい。
【0031】
電解の給電方法は、定電圧、定電流、パルス型波形、あるいはのこぎり波形が使用されるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、粗化処理は、まず第1組の銅を含有するめっき液により定電流25~40A/dm2で実施してから、第2組の銅を含有するめっき液により定電流20~30A/dm2で処理を行うことである。第1組の銅を含有するめっき液は、定電流30~56A/dm2で処理を行うが、第2組の銅を含有するめっき液は、定電流23~26A/dm2で処理を行うことが好ましい。注意すべきことは、上記定電流は、パルス型波形又はのこぎり波形で給電されてもよい。なお、定電圧で給電する場合、各粗化処理の段階で印加する電圧値が電流値を上記範囲内にすることを確保しなければならない。
【0032】
粗化処理の回数が3回以上の場合、上記第1組及び第2組の銅を含有するめっき液により粗化処理を交互に行ってもよい。電流値が、1~60A/dm2に制御される。本発明の一実施形態では、第3回及び第4回の粗化処理には、それぞれ第1組の銅を含有するめっき液及び第2組の銅を含有するめっき液が利用され、且つ電流値がそれぞれ1~8A/dm2及び40~60A/dm2に制御される。第5回以後の粗化処理での電流値が、5A/dm2以下に制御される。注意すべきことは、上記定電流は、パルス型波形又はのこぎり波形で給電してもよい。なお、定電圧で給電する場合、各粗化処理の段階で印加する電圧値が電流値を上記範囲内にすることを確保しなければならない。
【0033】
特に説明すべきことは、微小粗面化表面121における微結晶クラスタ124の配列方法及び凹溝123の延伸方向は、銅を含有するめっき液の流れ場により制御されてよい。流れ場の付与又は乱流の形成がない場合、微結晶クラスタ124間がランダムに配列されるが、流れ場が銅箔表面に特定方向で流れるように制御する場合、ほぼ同じ方向で配列される構成が形成される。しかしながら、微結晶クラスタ124の配列方式及び凹溝123の延伸方向を制御する方法は、これに限定されないが、予め鋼ブラシでスクラッチを刻むことにより、方向不定の凹溝123を形成してもよく、製造者が、任意の既存の方法で調整してもよい。
【0034】
本発明の好ましい一つの実施形態では、複数の溝及び複数の電解ロールによる連続型の電解デバイスにより粗化処理がなされる。ただし、各溝内に、第1組の銅を含有するめっき液及び第2組の銅を含有するめっき液が交互に収容される。給電方法は、定電流が使用される。製造速度は、5~20m/minに制御される。製造温度は、20~60℃に制御される。
【0035】
注意すべきことは、上記微小粗面化電解銅箔の製造方法は、高温伸び銅箔(High Temperature Elongation、HTE)又は超低粗さの銅箔(Very Low Profile、VLP)に対する処理に適用されてもよい。
【0036】
以上、銅箔基板1の各層の構成及び製造方法に対して説明したが、以下、実施例1~3を例として、比較例1~4と比較しながら、本発明の利点を説明する。なお、本願明細書において、「平均幅」、「平均深さ」、「平均高さ」、「平均粒子径」、「平均堆積数」、「平均最大幅」は、SEM写真によって実際に測定して得られた「幅」、「深さ」、「高さ」、「粒子径」、「堆積数」、「最大幅」それぞれの算数平均数である。
【実施例】
【0037】
[実施例1]
図3を参照すると、微小粗面化電解銅箔は、連続型の電解デバイス2により粗化処理を行う。連続型の電解デバイス2は、1つの送りロール21、1つの受けロール22、送りロール21と受けロール22との間の6個の溝23、溝23上の6個の電解ロール組24、及び溝23内の6個の補助ロール組25を備える。各溝23内には、1組の白金電極231が設けられる。各電解ロール組24は、2つの電解ロール241を有する。各補助ロール組25は、2つの補助ロール251を有する。各溝23内の白金電極231及び対応の電解ロール組24は、それぞれ外部電源供給器の陽極及び陰極に電気接続される。
【0038】
本実施例1において、グリーン箔として、金居開発有限公司(規格RG311)から入手した反転銅箔(RTF)が使用される。グリーン箔は、送りロール21に巻き取られてから、順次に電解ロール組24及び補助ロール組25に引き回れて、受けロール22に巻き取られる。各溝23内の銅を含有するめっき液組成及び電気メッキ条件は、表1に示し、ただし、銅イオンが硫酸銅に由来する。超低粗さの銅箔は、第1の溝~第6の溝で順次にグリーン箔の粗い面に対して粗化処理を行い、製造速度が10m/minであり、最後、粗さRz(JIS94)が2.5μm以下の微小粗面化電解銅箔が得られる。そして、2枚の微小粗面化電解銅箔を取って1枚の基材IT170GRA1と貼り付けることにより、製作を完成する。
【0039】
本実施例1では、その表面
(走査式電子顕微鏡による10000倍の写真)及び断面
(走査式電子顕微鏡による5000倍の写真)構成
を観察して、それぞれ
図4及び
図5に示す。
【0040】
本実施例1における微小粗面化電解銅箔の剥離強度については、まず、微小粗面化表面に対して銅シランカップリング剤を塗布して基材IT170GRA1に貼付して硬化させてから、IPC-TM-650 4.6.8測定方法で測定する。測定結果は、表2に示す。
【0041】
本実施例1における微小粗面化電解銅箔のRlr値は、形状計測レーザ顕微鏡(メーカー:Keyence;規格:VK-X100)で計測する。設定パラメータ(λs=2.5μm, λc= 0.003mm),測定結果は、表2に示す。
【0042】
本実施例1における微小粗面化電解銅箔の挿入損失は、Micro-strip line(特性抵抗50 Ω)の方法で測定し、それぞれ周波数4GHz、8GHz、12.89GHz、16GHz,及び20GHzにおいて検出する。測定結果は、表2に示す。
【0043】
[実施例2及び3]
グリーン箔、電解デバイス及び銅を含有するめっき液組成は、実施例1と同じで、電気メッキ条件を表1に示し、製造速度が10m/minである。そして、2枚の微小粗面化電解銅箔を取って1枚の基材IT170GRA1と貼り付けることにより、製作を完了する。計測方式は、実施例1と同じで、測定結果は、表2に示す。
【0044】
[比較例1及び2]
グリーン箔、電解デバイス及び銅を含有するめっき液組成は、実施例1と同じで、電気メッキ条件を表1に示し、製造速度が10m/minである。そして、2枚の微小粗面化電解銅箔を取って1枚の基材IT170GRA1に貼り付けることにより、製作を完成する。計測方式は、実施例1と同じで、測定結果は、表2に示す。
【0045】
[比較例3]
三井金属製の反転銅箔(規格:MLS-G、以下、MLS-G銅箔という)を利用して、走査式電子顕微鏡写真でその表面及び断面構成を観察し、それぞれ
図6及び
図7に示す。2枚のMLS-G銅箔を1枚の基材IT170GRA1に貼り付けてから、その剥離強度、Rlr及び挿入損失を計測し、測定結果は、表2に示す。
【0046】
[比較例4]
長春集団製の反転銅箔(規格:RTF3、以下、RTF3銅箔という)を使用して、走査式電子顕微鏡写真でその表面及び断面構成を観察する。2枚のRTF3銅箔を1枚の基材IT170GRA1に貼り付けてから、その剥離強度、Rlr及び挿入損失を計測し、測定結果は、表2に示す。
【0047】
【0048】
【0049】
図4及び
図5を参照すると、実施例1における微小粗面化表面は、複数の上下延伸する凹溝を含み、凹溝の延伸方向がほぼ平行である。凹溝は、幅が約0.1~4μmであり、深さが0.8μm以下である。凹溝間のピークに、明らかな微結晶クラスタが形成される。微結晶クラスタの高さが2μm以下であり、且つ各微結晶クラスタは、複数の粒径0.1~0.4μmの微結晶により堆積してなる。
【0050】
図6及び
図7を参照すると、MLS-G銅箔の表面は、複数の粒径が3μmより大きい結晶により均一に被覆され、且つ少数の微結晶が互いに集まっている。断面図によると、微結晶は、特定の位置に集中しなくて、互いに離間して表面に散在される。
【0051】
表2を参照すると、剥離強度については、実施例1~3における剥離強度が少なくとも4.75lb/inであり、当業界の基準4lb/inより少なくとも18%大きい。これによると、本発明に係る微小粗面化電解銅箔は、基材との好適な接合力を有し、後のプロセスの推進に寄与し、製品の歩留まりを維持することができる。
【0052】
挿入損失については、実施例1~3における周波数8GHz~20GHzでの挿入損失が、いずれも比較例1~4より優れる。特に説明すべきことは、微小粗面化表面の表面形態の制御及び1.3以下のRlr値への調整により、銅箔基板の高周波における信号損失が明らかに抑制される。なお、Rlr値が低いほど、信号損失がより低下する効果が現れる。
【0053】
上記によると、本発明に係る微小粗面化電解銅箔は、好適な剥離強度を維持しながら、挿入損失を最適化して、信号損失が効果的に抑制されることが分かる。
【0054】
以上に開示された内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではない。従って、本発明の明細書及び図面の内容に基づき為された均等の技術的変形は、全て本発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0055】
1 銅箔基板
11 基材
12 微小粗面化電解銅箔
121 微小粗面化表面
122 ピーク
123 凹溝
124 微結晶クラスタ
125 微結晶
2 連続型の電解デバイス
21 送りロール
22 受けロール
23 溝
231 白金電極
24 電解ロール組
241 電解ロール
25 補助ロール組
251 電解ロール
M 結晶群