(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】アンモニアの製造方法およびアンモニア製造のための装置
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
C01C1/04 G
(21)【出願番号】P 2019572438
(86)(22)【出願日】2018-07-02
(86)【国際出願番号】 IB2018054910
(87)【国際公開番号】W WO2019008504
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-06-16
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513123399
【氏名又は名称】ビクトリア リンク リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ナタリ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ジョン・ラック
(72)【発明者】
【氏名】ハリー・ジョセフ・トロダール
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-156489(JP,A)
【文献】特開2011-246311(JP,A)
【文献】特開昭55-130806(JP,A)
【文献】特開2011-213534(JP,A)
【文献】T. Takeshita, et al.,Rare Earth Intermetallics as Synthetic Ammonia Catalysts,Journal of Catalysis,1976年,Vol.44,p.236-243
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアの製造方法であって:
- チャンバー(4)に少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)を用意する工程であって、前記少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)は、希土類窒化物原子のみからなる外部表面(3);または希土類窒化物原子のみからなる少なくとも1つの領域、もしくは希土類窒化物原子のみからなる複数の領域を含む外部表面(3)を含み、前記少なくとも1つの領域または前記複数の領域の各々は、外部表面(3)によって画定された表面のサブ領域である、前記工程;
- チャンバー(4)に、前記少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)から窒素を放出させるために真空を作り出す、またはチャンバー(4)に、前記少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)から窒素を放出させるために不活性雰囲気を作り出す工程;および
- 水素(H
2)を供給して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)の外
部表面(3)で放出される窒素と反応させ、アンモニア(NH
3)を製造する工程を含む
、前記アンモニアの製造方法。
【請求項2】
外部表面(3)は原子的に清浄な希土類窒化物外部表面(3)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)にエネルギーを加えて、窒素を放出させる工程
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの希土類窒化物材料(2)は、摩砕されたかもしくは粉砕された形態で、または粉末として用意される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
- 外部表面(7)を含む少なくとも1つの希土類材料もしくは層(6)、または原子的に清浄な希土類外部表面(7)を含む少なくとも1つの希土類材料もしくは層(6)、または希土類原子のみからなる少なくとも1つの領域;もしくは希土類原子のみからなる複数の領域を含む外部表面(7)を含む少なくとも1つの希土類材料もしくは層(6)、
を用意する工程であって、前記少なくとも1つの領域または前記複数の領域の各々は、外部表面(7)によって画定された表面のサブ領域である工程;および
- 外部表面(7)または原子的に清浄な希土類外部表面(7)を分子窒素(N
2)に曝露して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)を製造する工程
をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの希土類材料(6)は、摩砕されたかもしくは粉砕された形態で、または粉末として用意される、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
- 少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)の製造に続いて、分子窒素(N
2)への曝露を解消または低減する工程
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
分子窒素(N
2)への曝露を解消または低減した後、水素(H
2)を供給し、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)の外部表面(3)で放出された窒素(N)と反応させ、アンモニア(NH
3)を製造する、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
- 基材(10)を用意する工程;および
- 少なくとも1つの希土類元素を基材(10)上に堆積させて、少なくとも1つの希土類材料または層(6)を製造する工程
をさらに含む、請求項
5~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
- キャッピング材料または層(14)を少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)から除去して、希土類窒化物外部表面(3)または原子的に清浄な希土類窒化物外部表面(3)を曝露する工程
をさらに含む、請求項1
または2に記載の方法。
【請求項11】
アンモニアの製造に続いて、分子窒素への曝露を実行して、消耗した希土類窒化物材料または層(2)を補充する工程をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの希土類材料または層(6)を用意して、少なくとも1つの希土類材料または層(6)を分子窒素(N
2)に曝露する工程は、チャンバー(4)で、または第2のチャンバーで、またはチャンバー(4)に相互連結した第2のチャンバーで実行される、請求項5
~9および請求項5~9を引用する請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
希土類材料または層(6)は、ランタン(La)、もしくはセリウム(Ce)、もしくはプラセオジム(Pr)、もしくはネオジム(Nd)、もしくはサマリウム(Sm)、もしくはユウロピウム(Eu)、もしくはガドリニウム(Gd)、もしくはテルビウム(Tb)、もしくはジスプロシウム(Dy)、もしくはホルミウム(Ho)、もしくはエルビウム(Er)、もしくはツリウム(Tm)、もしくはイッテルビウム(Yb)、もしくはルテチウム(Lu)を含む、または、のみからなる、請求項
5~9および請求項5~9を引用する請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
希土類窒化物材料または層(2)は、窒化ランタン(LaN)、もしくは窒化セリウム(CeN)、もしくは窒化プラセオジム(PrN)、もしくは窒化ネオジム(NdN)、もしくは窒化サマリウム(SmN)、もしくは窒化ユウロピウム(EuN)、もしくは窒化ガドリニウム(GdN)、もしくは窒化テルビウム(TbN)、もしくは窒化ジスプロシウム(DyN)、もしくは窒化ホルミウム(HoN)、もしくは窒化エルビウム(ErN)、もしくは窒化ツリウム(TmN)、もしくは窒化イッテルビウム(YbN)、もし
くは窒化ルテチウム(LuN)を含む、または、のみからなる、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの希土類窒化物材料もしくは層(2)は酸化されておらず、および/または少なくとも1つの希土類材料もしくは層(6)は酸化されていない、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)をチャンバー(4)に用意する工程は、少なくとも1つの希土類窒化物のみからなるまたは少なくとも1つの希土類窒化物合金のみからなる、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)を用意することを含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
水素(H
2)を供給して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層(2)の外部表面(3)で放出された窒素(N)と反応させ、アンモニア(NH
3)を製造する工程は、室温で実行される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
希土類材料または層(6)を希土類窒化物材料または層(2)に変換するプロセスは、室温で行われる、請求項
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年7月3日に出願された欧州特許出願第17179326.8号の優先権を主張し、そのすべての内容を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
本発明は、アンモニアNH3の製造、より詳細には、希土類および希土類窒化物の材料および構造を使用するアンモニアNH3の製造の分野に関する。本発明は、アンモニアNH3の製造方法を実行するように構成された装置にも関係する。本発明は、アンモニアNH3の製造方法を使用して製造されたアンモニアにも関係する。
【背景技術】
【0003】
分子窒素(N2)の解離は、アンモニア(NH3)製造用のハーバー-ボッシュ法の商業的進歩のための、律速プロセスの1つである。20世紀の最も重要な発明としばしば呼ばれるこの工業的プロセスは、NH3の商業生産の核心であり、NH3は作物生産における肥料の生産のために不可欠な前駆体として使用され、したがって世界人口を支えるのに非常に重要である。肥料の使用は、次の数十年間で増加すると予想される。
【0004】
NH3合成での主な難題は、分子窒素(N2)の三重結合を引き裂くことである。工業上、N2結合の開裂には固体触媒が必要であり、最もよく知られている触媒(鉄またはルテニウム系金属)を用いたとしても、高温(400~600℃)および高圧(20~40MPa)という厳しい条件下でのみ実現可能であり、実質的なカーボンフットプリントをもたらす。このため、より穏やかな条件下で作用することができるより環境に優しい製造プロセスは、非常に有利であろう。
【0005】
典型的には酵素的および有機金属的手法、ならびに電極触媒材料および光触媒材料を含む、N2の容易な切断および潜在的にエネルギー効率の良いNH3合成を可能にする触媒は、まだ開発の初期段階にある。
【0006】
勇気づけられる進歩がなされた一方で、比較的複雑な手法に焦点が置かれており、複雑で大きな原子クラスター系触媒の必要性、それらを理論的に扱うことの固有の困難性、および表面での触媒反応を観察し説明するための適切なin-situでの特性評価の欠如のような、いくつかの欠点を有している。
【0007】
特許文献1は、アンモニアNH3を製造する方法を開示している。しかしながら、この方法は、アンモニアNH3を製造するために、高温(400~600℃)および高圧(0.1MPa~2MPa)という厳しい条件を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述の不都合を克服する方法を提供することが、本開示の一態様である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
アンモニアの製造方法は、好ましくは:
- チャンバーに少なくとも1つの希土類窒化物材料または層を用意する工程;
- チャンバーに真空を作り出す工程;または代わりに、チャンバーに不活性雰囲気を作り出す工程;および
- 水素H2を供給して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層の外部表面で放出される窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させ、アンモニアを製造する工程
を含む。
【0011】
前に述べたアンモニアの製造方法とは対照的に、本発明の根本的に異なる手法は、希土類材料の原子的に清浄な表面を使用して、非常に穏やかな条件下で分子N2の非常に効率的な切断を生じさせることに基づいている。本発明者らは、室温で、および1気圧よりはるかに低い、典型的には7~8桁小さい圧力下で、希土類原子がN2分子を切断および解離することを見出した。形成された希土類窒化物は、窒素を貯蔵し、窒素を放出することができ、H2が供給されるとアンモニアの製造が可能になる。
【0012】
真空環境または不活性雰囲気は、効率的で最適化されたN2の切断だけでなく、効率的な窒素放出、ならびに効率的で最適化されたNH3の反応および製造をも確実にする。
【0013】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層は、希土類窒化物原子のみからなる外部表面;または希土類窒化物原子のみからなる少なくとも1つの領域、もしくは希土類窒化物原子のみからなる複数の領域を含む外部表面を含み、前記少なくとも1つの領域もしくは前記複数の領域の各々は、外部表面によって画定された表面のサブ領域である。
【0014】
本開示の別の態様によれば、外部表面は原子的に清浄な希土類窒化物外部表面である。
【0015】
本開示の別の態様によれば、方法は:少なくとも1つの希土類窒化物材料または層にエネルギーを加えて、窒素Nまたは単原子窒素原子Nを放出する工程、をさらに含む。
【0016】
本開示の別の態様によれば、方法は:
- 外部表面を含む少なくとも1つの希土類材料もしくは層、または原子的に清浄な希土類外部表面を含む少なくとも1つの希土類材料もしくは層、または希土類原子のみからなる少なくとも1つの領域、もしくは希土類原子のみからなる複数の領域を含む外部表面を含む、少なくとも1つの希土類材料もしくは層を用意する工程であって、前記少なくとも1つの領域もしくは前記複数の領域の各々は、外部表面によって画定された表面のサブ領域である工程;および
- 外部表面または原子的に清浄な希土類の外部表面を分子窒素N2に曝露して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層を製造する工程
をさらに含む。
【0017】
本開示の別の態様によれば、方法は:
- 少なくとも1つの希土類窒化物材料または層の製造に続いて、分子窒素N2への曝露を解消または低減する工程
をさらに含む。
【0018】
本開示の別の態様によれば、分子窒素N2への曝露を解消または低減した後、水素H2を供給して、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層の外部表面で放出された、窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させ、アンモニアNH3を製造する。
【0019】
本開示の別の態様によれば、外部表面は、分子窒素N2と水素H2ガスの混合物に同時に曝露される。
【0020】
本開示の別の態様によれば、方法は:
- 基材を用意する工程;および
- 少なくとも1つの希土類元素を基材上に堆積させて、少なくとも1つの希土類材料または層を製造する工程、をさらに含む。
【0021】
本開示の別の態様によれば、用意する工程および曝露する工程は同時に実行される。
【0022】
本開示の別の態様によれば、方法は:
- 少なくとも1つの希土類窒化物材料または層からキャッピング材料または層を除去して、希土類窒化物外部表面または原子的に清浄な希土類窒化物外部表面を曝露する工程
をさらに含む。
【0023】
本開示の別の態様によれば、方法は、アンモニアの製造に続いて、分子窒素への曝露(exposition)を実行して、消耗した希土類窒化物材料または層を補充する工程をさらに含む。
【0024】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類材料または層を用意する工程、および少なくとも1つの希土類材料または層を分子窒素N2に曝露する工程は、チャンバーで、または第2のチャンバーで、またはチャンバーに相互連結した第2のチャンバーで実行される。
【0025】
本開示の別の態様によれば、希土類材料または層は、ランタンLa、もしくはセリウムCe、もしくはプラセオジムPr、もしくはネオジムNd、もしくはサマリウムSm、もしくはユウロピウムEu、もしくはガドリニウムGd、もしくはテルビウムTb、もしくはジスプロシウムDy、もしくはホルミウムHo、もしくはエルビウムEr、もしくはツリウムTm、もしくはイッテルビウムYb、もしくはルテチウムLuを含むかまたはそれらからなる。
【0026】
本開示の別の態様によれば、希土類窒化物材料または層は、窒化ランタンLaN、もしくは窒化セリウムCeN、もしくは窒化プラセオジムPrN、もしくは窒化ネオジムNdN、もしくは窒化サマリウムSmN、もしくは窒化ユウロピウムEuN、もしくは窒化ガドリニウムGdN、もしくは窒化テルビウムTbN、もしくは窒化ジスプロシウムDyN、もしくは窒化ホルミウムHoN、もしくは窒化エルビウムErN、もしくは窒化ツリウムTmN、もしくは窒化イッテルビウムYbN、もしくは窒化ルテチウムLuNを含むかまたはそれらからなる。
【0027】
本開示の別の態様によれば、希土類窒化物材料または層は、以下の群:窒化ランタンLaN、窒化セリウムCeN、窒化プラセオジムPrN、窒化ネオジムNdN、窒化サマリウムSmN、窒化ユウロピウムEuN、窒化ガドリニウムGdN、窒化テルビウムTbN、窒化ジスプロシウムDyN、窒化ホルミウムHoN、窒化エルビウムErN、窒化ツリウムTmN、窒化イッテルビウムYbN、窒化ルテチウムLuNから選択される希土類窒化物の任意の2つもしくはそれ以上の、少なくとも1つの希土類窒化物合金を含むかまたはそれらからなる。
【0028】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層は、1つもしくは複数の希土類窒化物材料もしくは層、または複数で異なる希土類窒化物材料もしくは層を含む構造に含まれている。
【0029】
本開示の別の態様によれば、構造は基材またはテンプレートを含み、希土類窒化物材料もしくは層は、基材もしくはテンプレート上に設置される、または基材もしくはテンプレートと直接接する。
【0030】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類窒化物材料または層は、1~2000nmの間の厚さを有する。
【0031】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類窒化物材料もしくは層は、エピタキシャル、多結晶もしくは非晶質である;および/または、少なくとも1つの希土類材料もしくは層は、エピタキシャル、多結晶もしくは非晶質である。
【0032】
本開示の別の態様によれば、少なくとも1つの希土類窒化物層もしくは材料は、酸化されておらず、および/または少なくとも1つの希土類材料もしくは層は酸化されていない。
【0033】
さらに別の態様によれば、本開示は上述の方法を実行するように構成された装置を提供する。本発明は、上述の方法を使用して製造されたアンモニアにも関係する。
【0034】
希土類(RE)元素は周期表で15個の元素の1組であり、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、およびルテチウム(Lu)からなる。希土類と命名されてはいるが、安定な核同位体を有さないプロメチウムを除いて、それらは実際には希少ではなく、地殻に比較的豊富である。
【0035】
本発明の1つの重要な態様および利点は、天然で最も強い結合の中でN2分子を容易に解離する能力である。
【0036】
本発明は、例えば、現行の工業的方法と比較して非常に穏やかな条件下(室温および低圧)でのアンモニア(NH3)製造用の基礎単位(building block)として、金属の薄い堆積または希土類(RE)材料の層を使用する。RE表面は、希土類窒化物を形成する分子窒素(N2)の非常に強い三重結合の切断を促進し、次に水素と再結合してアンモニアを生成することができる窒素をもたらすことを可能にする。
【0037】
例えばREN基材を使用したNH3の製造は、以下のように実行することができる:
- 希土類材料または層の例えば基材上での堆積
- 希土類材料または層の(例えば、低圧および室温での)分子窒素N2への曝露:純粋なRE+N2→REN材料または層
- 好ましくは真空または不活性雰囲気下で、REN材料または層が窒素Nを放出し、H2と反応してNH3を製造するように、成長チャンバーでのN2の停止。場合により、REN材料または層をH2の存在下で加熱することができる。
【0038】
本発明の上記および他の目的、構成および利点、ならびにそれらを実現させる方式は、本発明のいくつかの好ましい実施形態を示す添付の図面を参照とする以下の詳細な説明の検討から、より明白になり、本発明そのものが最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】
図1A~
図1Cは、本発明の1つの態様によるアンモニアの製造方法の、異なる例示的な工程を模式的に示す図である。
【
図2A】本発明の態様によるアンモニアの製造方法の、別の例示的な工程を模式的に示す図である。
【
図2B】本発明の態様によるアンモニアの製造方法の、別の例示的な工程を模式的に示す図である。
【
図3】厚さ25nmの希土類層をN
2へ曝露している間の規格化された電気抵抗の変化を、時間の関数として示す図である。
【
図4】N
2曝露前(下の曲線)および曝露後(上の曲線)の厚さ25nmの希土類層について、X線回折オメガ-2シータ走査を示す図である。
【
図5】本発明の1つの態様によるアンモニアの製造を実行するための、例示的な装置を模式的に示す図である。
【
図6A】本発明によるアンモニアの製造方法で使用することができる、例示的な構造を模式的に示す図である。
【
図6B】本発明によるアンモニアの製造方法で使用することができる、別の例示的な構造を模式的に示す図である。
【
図6C】本発明によるアンモニアの製造方法で使用することができる、別の例示的な構造を模式的に示す図である。
【
図7】希土類窒化物の測定された電気伝導率σが、希土類窒化物がどれだけ完全に窒化されているかに、どれだけ依存するかを示す図である。
【
図8】希土類窒化物を収容する真空チャンバーにN
2が導入され除去される間に、希土類窒化物の電気伝導度(electrical conductance)が測定時間にわたってどう変化するかを示す図である。
【
図9】分子窒素N
2に曝露されている間の、Gd、SmおよびDy層の電気伝導度の相対的変化(ΔC=C
0-C)を示す図であり、ここでCはGd、SmおよびDy層の測定された伝導度、ならびにC
0は、C
0=1ジーメンス(S)とみなされるような初期伝導度である。N
2曝露は電気伝導度の減少をもたらし、Gd、SmおよびDy層のそれぞれGdN、SmNおよびDyNへの窒化に対応している。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書では、図に共通する同一要素を明示するために、可能な場合は、同一の参照数字を使用している。
【0041】
図1A~1Cは、本発明の1つの態様によるアンモニアの製造方法の異なる例示的な工程を、模式的に示している。
【0042】
アンモニアNH
3の製造方法では、例えば
図1Aで説明するように、希土類窒化物材料または層2が用意される。希土類窒化物材料または層2は、好ましくは密閉されたチャンバー4の内部に設置される。
【0043】
チャンバー4は、例えば真空チャンバーであり得る。システムからのバルクガスが除去される領域である真空は、例えばチャンバー4からガスまたは物質を汲み出すことによって、チャンバー4の内部で作り出されるかまたは存在する。
【0044】
原子窒素または窒素は、チャンバーの元素または汚染物質の除去を確実にする真空チャンバー内(または希土類窒化物材料または層2の表面)の圧力値で、少なくとも、原子窒素または窒素Nが希土類窒化物材料または層2から、特に表面3から放出されることを可能にするレベルまで、希土類窒化物材料または層2から放出される。
【0045】
真空チャンバー内(または希土類窒化物材料もしくは層2の表面)の圧力値は、例えば、(i)1×10-3トル(1.333×10-1Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間である。
【0046】
原子窒素または窒素は、(i)1×10-4トル(1.333×10-2Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間;または(i)1×10-5トル(1.333×10-3Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間;または(i)1×10-6トル(1.333×10-4Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間;または(i)1×10-7トル(1.333×10-5Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間;または(i)1×10-8トル(1.333×10-6Pa)~(ii)1×10-9トル(1.333×10-7Pa)以下の間の真空チャンバー内(または希土類窒化物材料もしくは層2の表面)の圧力値で、希土類窒化物材料または層2から放出される。この圧力は、NH3を製造するために供給される水素H2のない状態での、チャンバーの圧力値である。チャンバーの圧力は、例えばPfeifferゲージを使用し、Bayard-Alpertの原理に基づいて測定することができる。
【0047】
使用する正確な圧力値は、チャンバー4内部の環境、および希土類窒化物材料または層2の汚染を回避または最小限にするためにチャンバーから除去すべきチャンバー4内部の元素に依存する。
【0048】
原子窒素または窒素は、(真空)チャンバー内(または希土類窒化物材料もしくは層2もしくは表面3)の温度が、室温(例えば、20~35℃)(範囲の末端値を含む)またはそれより高温の場合に放出される。温度を、例えば500℃、1000℃、1500℃またはそれより高くまで上げることができる。原子窒素が放出される温度範囲は、したがって例えば、(i)室温~(ii)300℃、または350℃、または400℃、または450℃、または500℃、または1000℃、または1500℃、または2000℃であり得る。放出は例えば、≧650℃または≧700℃、および≦1000℃または≦1500℃または≦2000℃でも起こる。
【0049】
チャンバー4での水素酸素混合物の不着火を確実にするために、酸素は、チャンバー4から完全に除去される(無酸素)か、または、少なくとも、チャンバー4の残留雰囲気で検出することができず、例えば、従来の質量分析計の検出限界以内のレベルまたは量まで除去されることが好ましい。チャンバー4は、水フリーまたは水蒸気フリーチャンバーであるか、または、少なくとも、チャンバー4の残留雰囲気で検出することができず、例えば、従来の質量分析計の検出限界以内のレベルまたは量まで除去されることもまた好ましい。
【0050】
O2および水蒸気は、例えば、超高真空技術で使用される従来の技法または方法によって、例えば、限定されるものではないが、真空システムの焼成(150~450℃)によって、および/または専用のポンプシステム、例えば、ターボもしくは極低温ポンプを使用することによって除去することができる。真空システムのすべての部位の温度を低下させ、O2、水蒸気および他の汚染物質の脱ガスを捕捉または低減する。
【0051】
希土類窒化物材料または層2は、原子的に清浄な外部表面3を含むことができる。
【0052】
「原子的に清浄な」という用語は、汚染物質または不純物、例えば酸素が、10%、もしくは5%、もしくは2%、もしくは1%、もしくは0.5%未満の単分子層、または好ましくは0.1%未満の単分子層、またはより好ましくは0.01%未満の単分子層に相当する量で存在する表面を意味するように、本明細書で使用される。希土類窒化物材料または層2は、例えば、酸化されていない希土類窒化物材料もしくは層、および/または鉄フリー希土類窒化物材料もしくは層、および/またはルテニウムフリー希土類窒化物材料もしくは層である。外部表面3は、例えば完全に希土類窒化物原子の表面であり得る。つまり、表面3は実質的に希土類窒化物を含む、または希土類窒化物のみからなる。
【0053】
表面3は、例えば、(実質的に)化学量論的な表面であり得る。希土類窒化物材料または層2は、例えば、(実質的に)化学量論的な層であり得る。
【0054】
希土類窒化物材料または層2は、例えば、希土類窒化物材料または層2中の原子の全濃度(原子/cm3)の、10%以下、または5%以下、または2%以下、または1%以下である、不純物の濃度(または不純物レベル)を有する。
【0055】
希土類窒化物材料2は、例えば摩砕されたかもしくは粉砕された形態で、または粉末として用意することができる。代わりに粉末形態は、例えば、希土類窒化物材料を粉砕する、または代わりに希土類粉末を分子窒素に曝露することによって、チャンバーの内部で製造することができる。
【0056】
例えば
図1Cで示されるように、希土類窒化物材料または層2がチャンバー4で真空下にある間に、水素H
2を供給し、希土類窒化物材料または層2の外部表面3で放出された窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させて、アンモニアNH
3を製造する。
【0057】
水素は、例えばガス流としての二水素または分子水素H2として、供給される。
【0058】
供給されるH2ガスは、酸素フリーおよび/または水フリーであり得る。
【0059】
水素は、他の形態で、例えば水H2Oとして代わりにまたはさらに供給することができる。それにもかかわらず、分子水素H2のガス供給源が好ましい。
【0060】
代わりに、不活性雰囲気はチャンバー4に作り出すことができる。例えば希ガス雰囲気、例えば制御されたアルゴンガスまたは制御されたヘリウム雰囲気を、チャンバー4に作り出すことができる。チャンバー4が真空下にある場合の上で述べたのと同じ方式で、アンモニアNH3が製造される。前に述べたように、チャンバー4は酸素フリーチャンバー、および/または水フリーもしくは水蒸気フリーチャンバーであり得る。
【0061】
希土類窒化物材料または層2の外部表面3は、希土類窒化物原子のみからなることができる。外部表面3は、希土類窒化物原子(希土類および/または窒素原子)のみからなる、少なくとも1つの領域を含むことができ、この領域は表面3によって画定された領域のサブ領域である。外部表面3は、希土類窒化物原子のみからなる複数の領域も含むことができる。外部表面3のこれらの領域で窒素Nまたは単原子窒素原子Nが放出され、NH3を製造することができる。
【0062】
表面3は、例えば、少なくとも70%、または好ましくは少なくとも80%、またはより好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%の希土類または窒素原子を含む。
【0063】
表面汚染の定量的元素組成を決定する方法は、例えば、Surface and Thin Film Analysis:A Compendium of Principles,Instrumentation,and Applications、Henning Bubert、Holger Jenett編、Wiley-VCH Verlag GmbH & Co.KGaA(2011年)に見出すことができる。
【0064】
希土類窒化物原子だけの領域は、例えば、少なくとも少数、例えば、2~5の間(この範囲の末端値を含む)の格子定数の距離に広がる。
【0065】
希土類材料または層6を、分子H2に替えて、水または水蒸気と代わりに反応させてNH3を製造してもよい。
【0066】
例えば
図1Bに示すように、エネルギーを希土類窒化物材料または層2に加えて、窒素Nまたは単原子窒素原子Nの放出を高めることができる。例えば、希土類窒化物材料または層2を電磁放射線の吸収を通して加熱し、窒素Nまたは単原子窒素原子Nを放出する。チャンバー4は、例えば、窓Wを含むことができ(例えば
図5を参照されたい)、電磁放射線供給源Sによって放出された電磁放射線は、そこを通ってチャンバー4に入る。電磁放射線は、希土類窒化物材料または層2を加熱するように、希土類窒化物材料もしくは層2、または希土類窒化物材料もしくは層2と熱的に接している構造体、材料、もしくは層によって吸収される波長または波長範囲を有する。代わりに、加熱は、層もしくは構造を通って流れる直流電流のような技法を使用して、またはホットプレートを通る熱伝導を介して、実行することができる。希土類窒化物材料または層2の外部表面3で放出される窒素Nまたは単原子窒素原子Nに熱を加える必要はなく、これは所定圧力において真空チャンバー4で起こり得る。熱エネルギーを加えることによって、単原子窒素の放出を高めることができる。
【0067】
例えば
図1Cに示すように、水素H
2がチャンバー4の中へ導入され、希土類窒化物材料または層2によって放出された窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させて、アンモニアNH
3を製造する。
【0068】
水素は、
図5で説明するように、例えば、入口またはガスインジェクター5を介して、チャンバー4の中へ導入することができる。代わりに、チャンバーの中へH
2を注入する加熱したインジェクターを使用することができ、加熱したH
2を、放出された窒素と反応させることができる。チャンバー4は、例えば、ガス入口および出口を含んでもよく、不活性雰囲気を作り出すことができる。ガス入口および出口は、ガスを注入および除去して、例えば、チャンバー4の希ガス雰囲気、または例えば、チャンバー4の制御されたアルゴンもしくはヘリウム雰囲気を作り出し制御するように、配置される。
【0069】
希ガスは、例えば、真空チャンバーの中へのガスの流れを許可するかまたは許可しない、マスフローコントローラーシステム(Mass Flow Controler system)を通して供給することができる。マスフローコントローラーシステムは、チャンバーの中への希ガスの圧力の正確な制御ももたらす。
【0070】
希土類窒化物材料または層2を水素へ曝露している間に、エネルギーを希土類窒化物材料または層2に同時に加えることができる。これは、代わりに順次行うことができる。
【0071】
本発明の別の態様によれば、例えば
図2Aで説明するように、(例えば、原子的に清浄な外部表面7を有する)希土類材料または層6を用意し、希土類材料または層6の外部表面7を分子窒素N
2に曝露することによって、希土類窒化物材料または層2を得ることができる。希土類材料または層6によって分子窒素N
2が解離され、希土類窒化物材料または層2が形成される。
【0072】
希土類材料6は、摩砕されたかもしくは粉砕された形態で、または粉末として用意することができる。代わりに、粉末形態は、例えば、希土類材料を粉砕することによって、チャンバーの内部で製造することができる。
【0073】
供給される分子窒素N2は、例えば、酸素フリーおよび/または水フリーであり得る。
【0074】
希土類材料または層6の外部表面7は、希土類原子のみからなることができる。外部表面7は、希土類原子のみからなる少なくとも1つの領域を含むことができ、この領域は、表面7によって画定された領域のサブ領域である。外部表面7は、希土類原子のみからなる複数の領域も含むことができる。分子窒素はこれらの領域で解離し、希土類窒化物を形成する。
【0075】
希土類原子だけの領域は、例えば、少なくとも少数、例えば、2~5の間(範囲の末端値を含む)の格子定数の距離に広がる。
【0076】
表面7は、例えば、少なくとも70%、または好ましくは少なくとも80%、またはより好ましくは少なくとも90%または少なくとも95%の希土類原子を含む。
【0077】
希土類材料または層6は、例えば、希土類材料または層6中の原子の全濃度(原子/cm3)の10%以下、または5%以下、または2%以下または1%以下の不純物の濃度(または不純物レベル)を有する。
【0078】
表面7上の希土類原子は、室温(例えば、20~35℃)で、および1気圧または760トルよりはるかに低い圧力下、例えば、(典型的には)10-6気圧(もしくは7.6×10-4トルもしくは0.101325Pa)以下;例えば、10-6気圧(もしくは7.6×10-4トルもしくは0.101325Pa)~10-9気圧(もしくは7.6×10-7トルもしくは0.000101325Pa)の圧力下で、N2分子を切断または解離する。圧力値は、N2曝露中の真空チャンバーの(または希土類材料もしくは層6の表面での)圧力値に相当し、例えば、Pfeifferゲージを使用してBayard-Alpertの原理に基づいて測定される。真空チャンバー内または希土類材料もしくは層6(もしくは表面7)の温度は、室温または室温より高い温度であり得る。
【0079】
希土類材料または層6を、例えば、チャンバー4に用意することができる。分子窒素N
2は、例えば、
図5で説明するように、入口またはガスインジェクター8を介して、チャンバー4の中へ導入することができる。希土類材料もしくは層6、またはより具体的には希土類材料もしくは層6の外部表面7との接触は、希土類窒化物材料または層2を形成している分子窒素N
2の非常に強い三重結合の切断をもたらす。
【0080】
本発明の別の態様によれば、希土類材料または層6は、例えば、
図2Bおよび
図5で説明するように、希土類元素を基材10上に堆積させることによって製造することができる。蒸発セル12は例えば希土類元素を蒸発させ、希土類原子は基材10に接触し、基材10上に原子的に清浄な外側表面7を有する希土類材料または層6を形成する。
図5は、蒸発セル12によって基材10に向かう希土類元素の蒸発を模式的に示している。
【0081】
基材10上に希土類元素を堆積させることによって希土類材料または層6を製造する工程、および希土類材料または層6を分子窒素N2に曝露する工程は、同時に実行することができるか、または代わりに順次実行することができる。
【0082】
希土類窒化物材料または層の製造に続いて、分子窒素N2への曝露を解消または低減することができる。
【0083】
分子窒素N2への曝露を解消または低減した後、水素H2を供給し、希土類窒化物材料または層の外部表面3で放出された、窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させて、アンモニアNH3を製造することができる。
【0084】
外部表面3は、例えば、分子窒素N2と水素素H2ガスの混合物に、同時に曝露することができる。分子窒素N2と水素H2ガスの混合物は、例えば、酸素フリーまたはO2フリーであり得る。
【0085】
図で表される基材10は、基材の模式的で例示的な表現である。しかしながら、基材は例えば、その上に希土類材料もしくは層6が(直接もしくは間接的に)設置もしくは堆積される、またはその上に希土類窒化物材料もしくは層2が(直接的もしくは間接的に)設置もしくは堆積される、任意の基礎的な表面、物質または(任意の形状の)材料であり得る。
【0086】
希土類材料または層6は、例えば、酸化されていない希土類材料もしくは層、および/または鉄フリー希土類材料もしくは層である。外部表面7は、例えば完全に希土類原子の表面であり得る。つまり、表面7は実質的に希土類原子もしくは元素を含む、または希土類原子もしくは元素のみからなる。
【0087】
表面7は、例えば、(実質的に)化学量論的な表面であり得る。希土類材料または層6は、例えば、(実質的に)化学量論的な層であり得る。
【0088】
上記の方法は、チャンバー4の中へ水素H2を導入することによって、アンモニアを製造するためのものである。しかしながら、他の窒素含有製造物/化合物を代わりに製造することができる。したがって本発明の方法は、窒素含有製造物または化合物の製造方法であり得、反応物質またはガスをチャンバー4の中へ導入し、希土類窒化物材料または層2によって放出された窒素Nまたは単原子窒素原子Nと反応させて、窒素含有製造物もしくは化合物、または中間体生成物もしくは化合物を製造する。
【0089】
反応物質またはガスは、例えば、
図5で説明するように、入口またはガスインジェクター5を介して、チャンバー4の中へ導入することができる。
【0090】
本発明の別の態様によれば、例えば
図1Aで説明するように、希土類窒化物材料または層2が用意される場合、例えば、
図6Bで示すように、希土類窒化物材料または層2は、(直接的または間接的に)キャッピング材料または層14と接していてもよい。希土類窒化物材料または層2を分解または酸化させるおそれのある周囲の雰囲気との反応を回避するために、キャッピング材料または層14は、希土類窒化物材料または層2を保護する。キャッピング材料または層14は、チャンバー4で希土類窒化物材料または層2から除去され、原子的に清浄な外部表面3を曝露し、例えばエネルギーをそれに加えることによって、希土類窒化物材料または層2が窒素Nまたは単原子窒素原子を放出することを可能にする。
【0091】
キャッピング14は、例えば希土類窒化物を酸化から保護するために、希土類窒化物材料または層2を不動態化するためである。キャッピング14は、除去可能なキャッピングであり、例えば、超高真空を含む真空下の蒸発または昇華によって除去可能である。除去可能な不動態化キャッピング層14は、例えば、サマリウム、ユウロピウム、ツリウム、マグネシウム、インジウム、アンチモン、ビスマス、亜鉛、ヒ素、銀、ストロンチウム、カドミウム、カルシウム、鉛、ナトリウム、またはテルルを含むかまたはそれらのみからなることができる。
【0092】
キャッピング14は、ドープまたは非ドープ希土類窒化物材料とエピタキシャルであり得る。キャッピング14は、ドープまたは非ドープ希土類窒化物材料と多結晶または非晶質であり得る。キャッピングまたはキャッピング層の厚さは、好ましくは約1~200nmの間、例えば120~150nmの間または約40~50nmの間である。できるだけ薄いことが好ましいが、200nmを超える厚さも技術的に機能する。
【0093】
キャッピング14は、高温で除去される。温度は、考慮される材料の蒸発/昇華の温度またはより高い温度が相当する。選択された蒸発/昇華値の温度が、チャンバーの圧力の関数であることに留意されたい。キャッピング層は、真空または超高真空システムで行なわれる蒸発または昇華によって除去される。真空システムの圧力は、典型的には約10-3トル以下である。例えば加熱を、例えば超高真空技術用の従来のヒータ、例えば1500℃の温度まで加熱するための放射抵抗ヒータであり得る電磁放射線供給源Sを使用して、実行することができる。キャッピング材料または層14の除去は、例えば原子的に清浄な外部表面3を曝露し、希土類窒化物材料または層2が窒素Nまたは単原子窒素原子を放出することを可能にする。
【0094】
希土類窒化物材料または層2を製造するための、希土類材料もしくは層6の用意またはそれの基材10上への堆積、および分子窒素への曝露は、(
図5で模式的に説明するチャンバーのように)その中で希土類窒化物材料もしくは層2を使用してアンモニアを製造する同じチャンバー4で実行することができる、または代わりに第2の真空チャンバー(説明していない)で実行することができる。第2の真空チャンバーは独立したチャンバーであることができ、こうした場合、アンモニアの製造が実行される真空チャンバーに移動する間の保護のために、キャッピング材料または層14が希土類窒化物材料または層2上に付与される。
【0095】
代わりに、第2の真空チャンバーは真空下の閉じた方式で真空チャンバー4に相互に連結し、製造した希土類窒化物材料または層2が、アンモニアの製造のための真空チャンバー4に移動することが可能にする。希土類窒化物材料または層2、および希土類窒化物材料または層2上のキャッピング材料または層14は、周囲の雰囲気へ曝露されることなく、チャンバー間を移動することができる。第2の真空チャンバーは、
図5に模式的に示すチャンバー4に類似することができるが、水素入口は必要ない。
【0096】
希土類材料または層6は、以下の群から選択される希土類を含むかまたはそれらからなる:ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)。
【0097】
言い換えれば、希土類材料または層6は、ランタン(La)、もしくはセリウム(Ce)、もしくはプラセオジム(Pr)、もしくはネオジム(Nd)、もしくはサマリウム(Sm)、もしくはユウロピウム(Eu)、もしくはガドリニウム(Gd)、もしくはテルビウム(Tb)、もしくはジスプロシウム(Dy)、もしくはホルミウム(Ho)、もしくはエルビウム(Er)、もしくはツリウム(Tm)、もしくはイッテルビウム(Yb)、もしくはルテチウム(Lu)を含むまたはそれらのみからなる。
【0098】
希土類材料または層6は、以下の群から選択される希土類の任意の2つもしくはそれ以上の希土類合金を、含むかまたはそれらのみからなることができる:ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)。
【0099】
言い換えれば、希土類材料または層6は、ランタン(La)、もしくはセリウム(Ce)、もしくはプラセオジム(Pr)、もしくはネオジム(Nd)、もしくはサマリウム(Sm)、もしくはユウロピウム(Eu)、もしくはガドリニウム(Gd)、もしくはテルビウム(Tb)、もしくはジスプロシウム(Dy)、もしくはホルミウム(Ho)、もしくはエルビウム(Er)、もしくはツリウム(Tm)、もしくはイッテルビウム(Yb)、もしくはルテチウム(Lu)の任意の2つもしくはそれ以上の希土類合金を、含むかまたはそれらのみからなることができる。
【0100】
希土類材料または層6は、エピタキシャル、多結晶もしくは非晶質の材料または層である。希土類材料または層6は、厚さが好ましくは約1~2000nmの間である。
【0101】
希土類窒化物材料または層2は、以下の群から選択される希土類窒化物を、含むまたはそれらのみからなることができる:窒化ランタン(LaN)、窒化セリウム(CeN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)。
【0102】
言い換えれば、REN材料または層2は、窒化ランタン(LaN)、もしくは窒化セリウム(CeN)、もしくは窒化プラセオジム(PrN)、もしくは窒化ネオジム(NdN)、もしくは窒化サマリウム(SmN)、もしくは窒化ユウロピウム(EuN)、もしくは窒化ガドリニウム(GdN)、もしくは窒化テルビウム(TbN)、もしくは窒化ジスプロシウム(DyN)、もしくは窒化ホルミウム(HoN)、もしくは窒化エルビウム(ErN)、もしくは窒化ツリウム(TmN)、もしくは窒化イッテルビウム(YbN)、もしくは窒化ルテチウム(LuN)、もしくは前に述べた希土類窒化物の任意の組み合わせを含むかまたはそれらのみからなることができる。
【0103】
希土類窒化物材料または層2は、以下の群から選択される希土類窒化物の任意の2つもしくはそれ以上の希土類窒化物合金を含むかまたはそれらのみからなることができる:窒化ランタン(LaN)、窒化セリウム(CeN)、窒化プラセオジム(PrN)、窒化ネオジム(NdN)、窒化サマリウム(SmN)、窒化ユウロピウム(EuN)、窒化ガドリニウム(GdN)、窒化テルビウム(TbN)、窒化ジスプロシウム(DyN)、窒化ホルミウム(HoN)、窒化エルビウム(ErN)、窒化ツリウム(TmN)、窒化イッテルビウム(YbN)、窒化ルテチウム(LuN)。
【0104】
言い換えれば、希土類窒化物材料または層2は、窒化ランタン(LaN)、もしくは窒化セリウム(CeN)、もしくは窒化プラセオジム(PrN)、もしくは窒化ネオジム(NdN)、もしくは窒化サマリウム(SmN)、もしくは窒化ユウロピウム(EuN)、もしくは窒化ガドリニウム(GdN)、もしくは窒化テルビウム(TbN)、もしくは窒化ジスプロシウム(DyN)、もしくは窒化ホルミウム(HoN)、もしくは窒化エルビウム(ErN)、もしくは窒化ツリウム(TmN)、もしくは窒化イッテルビウム(YbN)、もしくは窒化ルテチウム(LuN)の任意の2つもしくはそれ以上の希土類窒化物合金を、含むまたはそれらのみからなることができる。
【0105】
希土類窒化物材料または層2は、エピタキシャル、多結晶もしくは非晶質の材料または層である。希土類窒化物材料または層2は、厚さが好ましくは約1nm~2000nmの間である。
【0106】
希土類窒化物材料または層2は、構造16の一部であるかまたはそれに含まれる。構造16は、例えば
図6Aに示すように、希土類窒化物材料または層2が直接的または間接的に接している、基材10からなるかまたはそれを含むことができる。構造16は、1つの希土類窒化物材料もしくは層2、または複数の連続的な希土類窒化物材料もしくは層2を含んでもよい。構造16は複数の連続的な希土類窒化物材料または層2を含んでもよく、連続的な材料または層は異なる希土類窒化物である。
【0107】
この構造は、例えば
図6Bに示すように、基材18、および希土類窒化物材料または層2が直接的または間接的に接する堆積層を含む、テンプレートTを含んでもよい。キャッピング14は任意選択である。例えば、基材18は(111)ケイ素基材であり得、堆積層20はケイ素基材上の六方晶(0001)-配向AlN堆積層である。SmN希土類窒化物材料または層2は、例えばテンプレートTの堆積層20上に設置され、テンプレートTの堆積層20と直接接することができる。追加の希土類窒化物材料または層2を含むことができる。
【0108】
構造16は、例えば
図6Cに示すように、希土類窒化物材料または層2に加えて、1つまたは複数の非希土類窒化物材料または層22も含んでもよい。
【0109】
基材10またはテンプレートTは、単結晶、エピタキシャル、多結晶または非晶質であり得る。希土類窒化物材料または層2を製造するために、基材10またはテンプレートT上に希土類材料または層6を堆積させることができる。
【0110】
上で述べた希土類元素は、真空または超高真空技法を使用して堆積させることができる。好適な技法としては、限定されるものではないが、パルスレーザー堆積(PLD)およびDC/RFマグネトロンスパッタリング、熱蒸着、ならびに分子線エピタキシー(MBE)を含む物理蒸着(PVD)が挙げられる。限定されるものではないが、有機金属化学気相堆積(MOCVD)を含む他の技法も使用してもよい。
【0111】
希土類窒化物層は、例えばスパッタリングによって成長させることができる。例えば、GdN層は、およそ6×10-6パスカルのベース圧力を有する超高真空チャンバーで、反応性高周波(RF)マグネトロンスパッタリングによって、500℃でAlN基材または層上に成長させることができる。成長チャンバーは、Gd(99.9%純粋)固体ターゲットを装備している。反応性成長用のアルゴンと窒素の超高純度の(99.9999%)ガス混合物であり、分圧比は典型的にはAr:N2比=9:6sccmである。全スパッタリング圧力は、約5Paである。入力RFパワーは、約250Wである。結果として得られるGdN成長速度は、約2.0nm/秒である。
【0112】
希土類窒化物層も、例えばパルスレーザー堆積によって成長させることができる。例えば、以下の成長条件は、エピタキシャルなGdNをYSZ基材上に成長させることを可能にする。
【0113】
成長チャンバー(ベース圧力10-9トル)に移動する前に、トリクロロエチレン、アセトンおよびメタノールのそれぞれに5分浸漬することによって脱脂された、両面研磨(100)-配向イットリア安定化ジルコニア(YSZ)基材上に、GdN薄膜を成長させた。基材は、800℃で最低1時間脱ガスした。248nmの波長および25nsのパルス長を有するLambda Physik Compex 205 KrFエキシマレーザーを、範囲2~8Jcm-2のターゲットのエネルギー密度とともに10Hzの繰り返し周波数(repetition rate)で運転した。GdN成長用に純度99.9%の元素Gdスパッタリングターゲットを用い、薄膜キャッピング用ターゲットとしてYSZ基材を使用した。99.999%純粋な窒素ガスを、Aeronexフィルターを通してOxford Applied Research HD25 rfプラズマソースに通過させ、120~400Wの範囲のパワーおよび2.5×10-5~1.2×10-4トルの範囲の圧力で運転した。ターゲットから基材までの距離は、6.0cmに固定した。
【0114】
希土類窒化物は、例えば、CVDによって成長したAlN層上に化学気相堆積によって成長させることもできる。
【0115】
例えば有機金属前駆体として、それぞれGdNおよびAlNの堆積のために用いられる、トリス(N、N’-ジイソプロピル-アセトアミジネート)ガドリニウム(III)[Gd(DPAMD)3]およびヘキサキス(ジメチルアミド)ジアルミニウム(III)[Al2(NMe2)6]を、以前に文献において報告された方法に従って合成した。例えば、T.B.Thiede、M.Krasnopolski、A.P.Milanov、T.de los Arcos、A.Ney、H.-W.Becker、D.Rogalla、J.Winter、A.Devi、R.A.Fischer、Chem.Mater.23、1430~1440頁(2011年);またはK.M.Waggoner、M.M.Olmstead、P.P.Power、Polyhedron 9、257~263頁(1990年);またはP.Drose、S.Blaurock、C.G.Hrib、F.T.Edelmann、Z.Anorg.Allg.Chem.637、186~189頁(2010年)を参照されたい。CVDを介する薄膜堆積を、特注の水平コールドウォール反応器で実施した。堆積の前に、2-プロパノールおよび水中での一連の超音波処理を使用して、1cm2のSi(100)基材を洗浄し、表面の汚染を除去した。蒸発器温度は、GdおよびAlの供給源に対してそれぞれ、120および80℃に設定した。窒素(5.0)をキャリヤーガスとして使用し、すべての堆積は乾燥したアンモニアの存在状態で実施した。GdN層を、両ガスとも50sccmの流速にて800℃で成長させ、一方AlN薄膜用の堆積温度は、25sccmの流速で400℃(キャッピング層)および500℃(緩衝層)に設定した。すべての多層構造は連続的なCVDプロセスで調製して、親酸素性層の雰囲気との相互作用を回避した。
【0116】
希土類材料または層6は、好ましくは、約10-3トル(0.1333Pa)~10-9トル(1.333×10-7Pa)の圧力範囲である高真空下、または約10-9トル(1.333×10-7Pa)より低い超高真空圧力下で成長または堆積させ、原子的に清浄な表面7を有する希土類金属を製造する。
【0117】
希土類材料または層6を、例えば、室温(例えば、20~35℃)または室温を超える高温で、優先的には、考慮される希土類元素の蒸発/昇華より低い温度で、分子線エピタキシー(MBE)技法を使用して堆積させることができる。堆積は、高真空または超高真空環境でなされる。
【0118】
結果として得られる構造は、少なくとも1つの希土類材料もしくは層6および基材10もしくはテンプレートT、または複数の連続的な希土類材料もしくは層6および基材10もしくはテンプレートTを、含むかまたはそれらからなることができる。
【0119】
希土類材料または層6は、基材10もしくはテンプレートTと直接的または間接的に接して、基材10もしくはテンプレートT上に設置される。基材10またはテンプレートTは、単結晶、多結晶または非晶質であり得る。
【0120】
金属希土類材料または層6の成長速度は、典型的には数nm/時間~数μm/時間の間である。
【0121】
いったん希土類材料または層6が堆積すると、材料または層は、好ましくは真空下、または超高真空(UHV)下に保持される。
【0122】
希土類材料または層6を純粋な分子窒素N2に曝露させると、希土類窒化物材料または層2が得られる。この曝露は同じ真空チャンバーで実行することができる、または構造2が、UHV下で接続された異なるチャンバーへ移動する場合、異なる真空チャンバーで実行することができる。
【0123】
前に述べたように、N2への曝露は、希土類材料または層6が室温(例えば、20~35℃)または代わりに室温より上の高温で実行することができる。N2曝露中のチャンバーの圧力は、10-6気圧(もしくは7.6×10-4トル、もしくは0.101325Pa)以下;例えば、10-6気圧(もしくは7.6×10-4トル、もしくは0.101325Pa)~10-9気圧であり得る。
【0124】
曝露中に、希土類材料または層6は希土類窒化物材料または層2へ変換される。
【0125】
金属希土類材料または層6は純粋な分子窒素に曝露され、希土類材料または層6を、原子的に清浄な外側表面3を有する希土類窒化物材料または層2へ完全にまたは部分的に変換する。
【0126】
分子窒素曝露の正確な持続時間、および曝露が実行されるチャンバーの正確な圧力は、REN材料または層2に変換される希土類材料または層6の厚さに依存する。N2およびチャンバーの圧力は、例えば、1気圧未満、例えば、5×10-4mbar~10-6mbarの範囲内である。例えば、N2曝露を使用して、25nmの希土類Gd層6がGdN材料または層2に完全に変換され、このときN2曝露下でのチャンバー圧力は10分の持続時間に対して2×10-4mbarである。チャンバーの圧力は、例えば、Bayard-Alpert原理に基づいて、Pfeifferゲージを使用して測定することができる。
【0127】
金属希土類材料または層6をREN材料または層2に変換する窒化プロセスは、室温またはより高温で行うことができるが、好ましくは考慮される希土類元素の昇華/蒸発温度より低い温度で行うことができる。
【0128】
いったん希土類窒化物材料または層2が形成されると、N2への曝露を停止または低減することができる。N2圧力のこの低減は、すでにREN材料または層2の外部表面3からの窒素Nの放出をもたらしている。REN材料または層2は、純粋な分子窒素の分圧の存在状態で希土類元素を同時に蒸発させることによっても、製造することができる。
【0129】
例示的な実施形態では、10-9トルの超高真空中で電子銃を使用してGd金属を蒸発させることによって、厚さ25nmの多結晶ガドリニウム薄膜を分子線エピタキシーシステムで成長させた。入手時のGd固体チャージの純度は、3Nであった。厚さ25nmのGd希土類材料または層6を、室温、典型的には約30℃の温度、および約150nm/時間の堆積速度で、ケイ素基材上に成長した市販のSiO2層の上に堆積させた。
【0130】
次に、同じ分子線エピタキシーチャンバーまたはシステム内で、Gd希土類層をN2に曝露した。曝露は、例えば2×10-4トルの窒素の分圧下、10分間室温(約30℃)で実行した。Gd材料または層6の電気抵抗率を、2点電圧-電流測定法を使用して、N2への曝露前およびN2への曝露中にin-situで測定した。
【0131】
図3は、N
2への曝露中の時間の関数として、厚さ25nmのGd希土類材料または層6の規格化された電気抵抗の変化を示す。
図3は、電気抵抗の規格化された変化(ΔR=R-R
0)を示し、ここで、RはGd層の測定された抵抗、およびR
0はR
0=0オームとみなされるような初期抵抗である。N
2曝露は電気抵抗の増加をもたらし、Gd層のGdNへの窒化に対応している。
【0132】
GdのGdNへの窒化を確認するために、分子線エピタキシーシステムから構造を取り出した後に、X線回折ω-2θ測定をex-situで実施した。空気中での変性を防ぐために、分子線エピタキシーシステムから構造を取り出す前に、すべての構造を厚さ100nm~150nmのGaN層でキャップした。
図4は、N
2曝露後(上の曲線)の厚さ25nmのGd希土類層のX線回折オメガ-2シータ走査を示す。厚さ25nmのGd希土類層を、10分の持続時間、2×10
-4mbarのN
2圧力に曝露した。XRD走査は、GdN(111)に関連するピークのみを示している。純粋なGdの痕跡は検出されなかった。比較のために、純粋なGd希土類層のXRD走査を示す(下の曲線)。したがって、Gd材料のGdNへの窒化が確認された。
【0133】
GdN材料または層6をMBEチャンバーまたは装置で加熱し、窒素Nを放出した。加熱は、例えば、1500℃の温度まで加熱することができる放射抵抗ヒータ、超高真空技術用ヒータを使用して実行される。窒素Nの放出が開始する温度は、装置の残留圧力に依存するが、5×10-8トル以下の残留圧力で、SmNに対しておよそ600℃である。原子Nの放出は、しかしながら、チャンバー4の所定圧力で加熱することなく開始することができる。しかしながら、加熱によって、REN材料または層2のより深い内部から原子窒素を放出することが可能になる。
【0134】
図7~8は、希土類窒化物材料または層2からの窒素Nの放出を実証する、測定結果を示す。
【0135】
図7は、希土類窒化物材料または層2の測定した電気伝導率σが、希土類窒化物層をどれだけ完全に窒化したかに依存していることを示している。
図7は、N
2圧力が低下するにつれて希土類窒化物層2はより導電性になることを示し、層2に窒素の空孔(vacancy)がドープされ、層中のNの濃度の代わりに、層2の測定された電気伝導率σを使用することができることを明確に示している。
【0136】
図8は、N
2が導入され、チャンバーから除去される間に、電気伝導度が測定時間にわたってどのように変化するか示している。
図8で層2の測定電気伝導度は、チャンバーのN
2が10
-4mbarの圧力で、窒素Nは希土類窒化物材料または層2の中へ入り、窒素がチャンバーから汲み出されて10
-8mbarの圧力で、再度抜けることを明確に示している。
【0137】
図9は、電気伝導度の測定された相対的な変化(ΔC=C
0-C)を示し、ここで、CはGd、SmおよびDy層の測定された伝導度、ならびにC
0は初期伝導度であり、C
0=1ジーメンス(S)とみなされる。
図9は、N
2曝露が電気伝導度の減少をもたらし、Gd、SmおよびDy層がそれぞれGdN、SmNおよびDyNへ窒化されることに対応していることを示す。厚さ15~20nmのGd、SmおよびDy希土類材料を、室温、典型的には約30℃の温度で、約0.5Å/秒の堆積速度で市販のサファイア基材上に堆積させ、その上に、in-situの電気計測を可能にするように、標準的な電子ビーム蒸発を使用して金端子(gold contact)を堆積させた。希土類材料の堆積を、超高真空堆積システム、例えば、分子線エピタキシーシステムで、典型的には10
-8トル以下のベース圧力で行った。入手時のGd、DyおよびSm固体チャージの純度は、3Nであった。次に、同じ分子線エピタキシーチャンバーまたはシステム内で、希土類層をN
2に曝露した。曝露は、室温(約30℃)で、いくつかの分について、典型的には10、20、40または60分、および2×10
-4トルの窒素分圧下で実行した。Gd、SmおよびDy材料の電気伝導度を、2点の電圧-電流測定法を使用してあらかじめ堆積した金端子上で、N
2への曝露の前およびN
2への曝露中にin-situで測定した。述べたように、
図9は電気伝導度の相対的な変化(ΔC=C
0-C)を示し、N
2曝露が電気伝導度の減少をもたらし、Gd、SmおよびDy層がそれぞれGdN、SmNおよびDyNへ窒化されることに対応していることを示す。
【0138】
したがって希土類窒化物材料または層2は、真空または超高真空下で例えば、500℃、1000℃、1500℃または2000℃までの温度に加熱される。REN材料または層2の外部表面3は、真空下で窒素Nを放出する。水素がチャンバーへ導入され、窒素と再結合してアンモニアを形成する。
【0139】
アンモニア形成の後、分子窒素へのさらなる曝露を実行して、上に記述した方式で消耗した希土類窒化物材料または層2を補充することができる。
【0140】
製造したアンモニアは、その後収集される。
【0141】
例えば、NH3および他のガスをチャンバーから抜き取ることができる。このパージプロセスは、チャンバーの出口を通してポンプダウン(pump down)を実施することによって、チャンバーを排気することを含む。機械的ドライポンプおよび/またはターボ分子ポンプのような真空ポンプは、プロセスガスを抜き取り、反応器内の低圧を好適に維持する。代わりにまたは加えて、パージ/抜き取りは、反応チャンバーを非反応性ガス、例えばArでスウィープすることを含んでもよい。非反応性ガスを、バーストプッシュ(burst push)で送達してもよい。最適なパージ条件は、反応チャンバーのアーキテクチャ(architecture)および体積、または所望の反応特性に依存する。パージまたはスイープは、部分的、完全または実質的に完全であり得る。ある特定の場合では、パージ/スイープが起こらない可能性がある。
【0142】
チャンバーの外部に輸送されたNH3および他の反応物、例えばNおよびH2は、さらなる使用の準備ができる前に、例えば、フィルターの使用、圧縮および液化プロセスを通じて、プロセッシングおよび精製を経ることができる。
【0143】
本発明の根本的に異なる手法は、希土類材料6の表面7を使用して、非常に穏やかな条件下で分子N2の非常に効率的な切断を製造することに基づいている。本発明者らは、室温(20~35℃)、および1気圧よりはるかに低い、典型的には7~8桁小さい圧力下(1気圧から10-7または10-8気圧まで)で、希土類原子がN2分子を切断および解離することを見出した。形成された希土類窒化物2は窒素を貯蔵し、H2を表面3へ供給した場合に、表面3からの原子窒素の放出がアンモニアの製造を可能にする引き金となり得る。本発明は、現行の工業的方法と比較して非常に穏やかな条件下(室温および低圧)で、アンモニア(NH3)を製造するための基礎単位として、例えば、金属の薄い堆積物または希土類(RE)材料の層を使用する。RE表面は、希土類窒化物を形成する分子窒素(N2)の非常に強い三重結合の切断を促進し、次に水素と再結合してアンモニアを生成することができる窒素をもたらすことを可能にする。
【0144】
ある特定の好ましい実施形態を参照して本発明を開示してきたが、記載されている実施形態およびこれらの均等物への多数の変形、代替および変更は、本発明の領域および範囲から逸脱することなく可能である。記載されている実施形態のいずれか1つの構成は、記述された実施形態の任意の他のものに含まれる。方法の工程は上に提示されたものと全く同じ順序で実行される必要はなく、異なる順序で実行することができる。したがって、本発明は、記述された実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲の文言に従って、最も広い適切な解釈が与えられることを意図している。