(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】連鎖状食品切断用の刃物ホルダー
(51)【国際特許分類】
A22C 11/00 20060101AFI20220927BHJP
B26D 1/28 20060101ALI20220927BHJP
B26D 7/18 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
A22C11/00
B26D1/28 C
B26D1/28 J
B26D7/18 E
(21)【出願番号】P 2020012213
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】西本 嘉尹
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201338(JP,A)
【文献】特表2019-518570(JP,A)
【文献】特開2008-264194(JP,A)
【文献】特開2004-276198(JP,A)
【文献】実開昭60-064772(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10015664(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
B26D 1/28
B26D 7/00-11/00
B26B 21/08
B26B 21/14
B26B 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の棒状食品部が結束部を介して連結されて成る連鎖状食品を前記結束部で切断する連鎖状食品切断装置の回転ドラム内に装着される装着部を自らの一端部に有するホルダー本体と、前記ホルダー本体の他端部に設けられていて前記棒状食品部よりも狭い隙間幅で且つ前記結束部よりも広い隙間幅に形成された切断用隙間を有する鉤状の切断部と、前記切断部に設けられていて前記連鎖状食品の結束部を切断する刃物の刃先を前記切断用隙間内に突出させた配置で当該刃物が着脱自在に設置される刃物設置部と、前記刃物設置部に着脱自在に取り付けられる部材であって刃先が前記切断用隙間内に突出した前記刃物を前記刃物設置部との間で挟持する挟持部材と、を備えて成る刃物ホルダーであって、前記挟持部材および前記刃物設置部に、当該挟持部材および刃物設置部の内外を連通する通液孔が穿設され、前記挟持部材の通液孔と前記刃物設置部の通液孔とが、前記挟持部材および前記刃物設置部における互いに非対面の位置
で、かつ、前記連鎖状食品の切断時に生じた切断クズなどの長尺片が前記挟持部材の通液孔と前記刃物設置部の通液孔の双方にまたがらないほど離れた位置に配置されていることを特徴とする連鎖状食品切断用の刃物ホルダー。
【請求項2】
前記挟持部材の通液孔と前記刃物設置部の通液孔とが、異なる総開口面積で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の連鎖状食品切断用の刃物ホルダー。
【請求項3】
前記挟持部材の内面の刃物挟持位置および前記刃物設置部の内面に、厚み方向に陥入した通液用凹陥部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連鎖状食品切断用の刃物ホルダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数のウィンナーが連なった連鎖状ウィンナーなど連鎖状食品の結束部を切断する刃物を保持する刃物ホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の刃物ホルダーとしては、例えば下記の特許文献1および
図11に記載されたものが知られている。この刃物ホルダー51は、連鎖状食品切断装置に装着されるホルダー本体52と、ホルダー本体52の他端部に設けられていて切断用隙間を有する切断部(図外)と、切断用隙間に突出させた刃物を着脱自在に保持するためにホルダー本体52に設けられた刃物設置部56と、刃物を刃物設置部56との間で挟持するために刃物設置部56に着脱自在に取り付けられた挟持部材57とを有していて、ホルダー本体52の刃物設置部56および挟持部材57に、刃物設置部56および挟持部材57の内外を連通する通液孔61B,61Aが穿設されたものである。そして、ホルダー本体52の刃物設置部56に挟持部材57が装着された状態において、刃物設置部56の各通液孔61Bと挟持部材57の各通液孔61Aは互いに対面する位置に配置されている。
【0003】
上記した構成の刃物ホルダー51によれば、噴きつけられた洗浄液が上下の通液孔61B,61Aを出入りして挟持部材57と刃物設置部56の間の刃設置空間80内に流入する。従って、刃物自体はもとより刃設置空間80内の刃物の周辺部も洗浄される。これにより、ホルダー分解作業を行なうことなく、ホルダー本体52に刃物をセットしたまま刃物設置部56内の洗浄を行なえるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の刃物ホルダー51では、ホルダー本体52の通液孔61Bと挟持部材7の通液孔61Aとが互いに対面した位置に配置されているので、一方の通液孔61Bまたは通液孔61Aから流入した洗浄液の一部が、対面する通液孔61Aまたは通液孔61Bから流出しやすい。そのために、洗浄液が刃設置空間80内に流入しにくく刃設置空間80内での洗浄能力が落ちるという問題がある。また、先に切ったウィンナーの切断クズや夾雑物のうち、長尺片70(
図11中の1点鎖線で示す)が通液孔61B,61Aの双方に一連にまたがり引っ掛かってしまうという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、ホルダー分解作業を行なうことなくホルダー本体の刃物設置部内をしっかりと洗浄できることは言うまでもなく、切断クズや夾雑物の長尺片が通液孔に掛止されたままになることのない連鎖状食品切断用の刃物ホルダーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る連鎖状食品切断用の刃物ホルダーは、複数の棒状食品部が結束部を介して連結されて成る連鎖状食品を結束部で切断する連鎖状食品切断装置の回転ドラム内に装着される装着部を自らの一端部に有するホルダー本体と、ホルダー本体の他端部に設けられていて棒状食品部よりも狭い隙間幅で且つ結束部よりも広い隙間幅に形成された切断用隙間を有する鉤状の切断部と、切断部に設けられていて連鎖状食品の結束部を切断する刃物の刃先を切断用隙間内に突出させた配置で当該刃物が着脱自在に設置される刃物設置部と、刃物設置部に着脱自在に取り付けられる部材であって刃先が切断用隙間内に突出した刃物を刃物設置部との間で挟持する挟持部材と、を備えて成るものであって、挟持部材および刃物設置部に、当該挟持部材および刃物設置部の内外を連通する通液孔が穿設され、挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔とが、挟持部材および刃物設置部における互いに非対面の位置で、かつ、連鎖状食品の切断時に生じた切断クズなどの長尺片が挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔の双方にまたがらないほど離れた位置に配置されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記構成において、挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔とが、異なる総開口面積で形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
そして、前記した各構成において、挟持部材の内面の刃物挟持位置および/または刃物設置部の内面に、厚み方向に陥入した通液用凹陥部を形成したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る連鎖状食品切断用の刃物ホルダーによれば、挟持部材および刃物設置部に通液孔が穿設されるとともに、挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔とが挟持部材および刃物設置部における互いに非対面の位置に配置されているので、挟持部材の通液孔または刃物設置部の通液孔から刃物設置部内に流入した洗浄液は、刃物またはその周辺部に当たって洗浄を行ない、刃物などに当たらなかった洗浄液は、対面する刃物設置部の内壁または挟持部材の内壁に当たって刃物設置部内に沿うように進路を変え、流入した通液孔とは非対面位置の通液孔からホルダー外へ流出する。従って、刃物設置部内の刃物およびその周辺部の洗浄を効率よく行なうことができる。一方で、洗浄液中に散在している切断クズなどの長尺片は挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔の双方にまたがることがないから、双方の通液孔への掛止を防ぐことができる。
【0011】
また、挟持部材の通液孔と刃物設置部の通液孔とが異なる総開口面積で形成されているものでは、挟持部材と刃物設置部のうち、広い総開口面積の通液孔を有する側から多量の洗浄液を噴きつけることにより、より多くの洗浄液を刃物設置部内に流入させることができる。これにより、刃物設置部内の刃物およびその周辺部を効率よく洗浄することができる。
【0012】
そして、挟持部材の内面の刃物挟持位置および/または刃物設置部の内面に、厚み方向に陥入した通液用凹陥部を形成したものでは、挟持部材の内面および/または刃物設置部の内面と刃物との間に通液用凹陥部が介在し、この通液用凹陥部を洗浄液や水が多量に流通できるから、切断作業後の刃物の洗浄を効率よく確実に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る刃物ホルダーを斜め下から視た斜視図である。
【
図2】(a)は前記刃物ホルダーにおけるホルダー本体の底面図、(b)はホルダー本体の平面図、(c)は前記刃物ホルダーに用いられる刃物の平面図である。
【
図3】前記刃物ホルダーの挟持部材を示した図であって、(a)は底面図、(b)は平面図、(c)は(a)におけるB-B線矢視図、(d)は(a)におけるC-C線矢視断面図である。
【
図4】前記刃物ホルダーを示した図であって、(a)は側面図、(b)は
図1におけるA-A線矢視断面図である。
【
図5】前記刃物ホルダーにおいて切断部の刃物設置部に挟持部材を固定する部分を示した図であって、(a)は刃物設置部の部分拡大平面図、(b)は刃物設置部の部分拡大側断面図、(c)は刃物設置部に挟持部材を固定した状態を示す部分拡大側断面図である。
【
図6】前記刃物ホルダーを使用した連鎖状食品切断装置を示す図であって、(a)は前記連鎖状食品切断装置の一部断面を含む概略構成図、(b)は前記連鎖状食品切断装置に使用される回転ドラムを示した正面図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係る刃物ホルダーのホルダー本体を示す図であって、(a)は前記ホルダー本体の底面図、(b)は前記ホルダー本体の平面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る刃物ホルダーの挟持部材を示す図であって、(a)は前記挟持部材の底面図、(b)は前記挟持部材の平面図である。
【
図9】本発明の他の実施形態または更に他の実施形態に係る刃物ホルダーの挟持部材を示す図であって、(a)は前記他の実施形態に係る挟持部材の平面図、(b)は前記更に他の実施形態に係る挟持部材の平面図である。
【
図10】前記他の実施形態または更に他の実施形態に係る挟持部材を有した刃物ホルダーによる洗浄液の流れ状態を側断面で示す説明図である。
【
図11】本発明の背景の一例となる従来の刃物ホルダーによる洗浄液の流れ状態を側断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、
図1は本発明の一実施形態に係る刃物ホルダーを斜め下から視た斜視図である。
図1において、この実施形態に係る連鎖状食品切断用の刃物ホルダー1は、後で詳述する連鎖状食品切断装置100(
図6(a),(b)参照)の回転ドラム104内に装着される装着部4を一端部2Aに有するホルダー本体2と、ホルダー本体2の他端部2Bに設けられた食品切断用の切断部3と、切断部3の内面(平面視で下面)に設けられていて後述の刃物C(C1,C2)が着脱可能に装着される刃物設置部6と、刃物設置部6に着脱自在に取り付けられて刃物Cを保持する挟持部材7と、から構成されている。
【0015】
前記した切断部3は、
図2(a)および(b)に示すように、平面視略J字の鉤状に形成されている。ホルダー本体2の他端部2B側における刃物設置部6の端部には袋状の係合凹部10Aが形成されており、切断部3の先端部3Bにも袋状の係合凹部10Bが形成されている。切断部3の一端部3A側の対向辺部3Cと他端部3B側の対向辺部3Dとの間には、棒状食品部Wよりも狭く且つ結束部Nよりも広い隙間幅Sの切断用隙間5が形成されている。そして、切断部3は、ホルダー本体2の内面(平面視で下面)の他端部2Bより凹んだ形態の刃物設置部6を備えている。
【0016】
この刃物設置部6では、2つの刃物装着位置31A,31Bが切断用隙間5を挟んだ部位に向い合って配置されている。これらの刃物装着位置31A,31Bには、それぞれ1対の係合ボス9A,9Aまたは係合ボス9B,9Bが突設されている。これらの係合ボス9A,9Aまたは係合ボス9B,9Bは、連鎖状食品Fの結束部Nを切断する後述の刃物C(C1,C2)の係合孔E1,E1に着脱可能に装着されて刃物Cを保持するようになっている。そして、係合ボス9A,9Aまたは係合ボス9B,9Bは、刃物C(C1,C2)の刃先D,Dを切断用隙間5内に突出させ、且つ、突出した刃先D,Dが鋭角の交差角度θで交差するような配置にされている。そして、刃物設置部6の内面には、厚み方向(
図4(b)の矢印T方向)に陥入した通液用凹陥部8が形成されている。通液用凹陥部8は、刃物装着位置31A,31Bの大部分を含んでいる。更に、通液用凹陥部8には、刃物設置部6を上下貫通する複数(例えば4つ)の通液孔11B,11B,11B,11Bが穿設されている。これらの通液孔11B,11B,11B,11Bは、後で詳述する挟持部材7と刃物設置部6との間に形成される刃設置空間40の内外を連通するものである。
【0017】
前記の装着部4は、
図1および
図2(a)に示すように、ホルダー本体2の一端部2Aに形成された台座12と、台座12の底面中央部に穿設された雌ネジ穴13と、台座12の底面周縁部に突設された位置決め突起14とから構成されており、雌ネジ穴13に雄ネジ棒15が螺着されて使用される。
【0018】
この刃物ホルダー1に用いられる刃物Cとしては、特に限定されないが、例えば安全カミソリの替え刃を用いることができる。この安全カミソリは、安価、入手容易であり両刃を交替して使用できる。ここで用いる刃物Cは、
図2(c)に示すように、両側の長辺に刃先D,Dが設けられ貫通溝部Eが中央部分に長辺に沿って形成された例えば両刃の平刃である。貫通溝部Eの両端部には、ホルダー本体2の刃物設置部6に位置決め固定するための係合孔E1,E1が形成されている。この刃物ホルダー1では、2枚の刃物C1,C2が用いられる。
【0019】
更に、前記の挟持部材7は、
図3に示すように、切断部3の刃物設置部6に嵌合可能な形状に形成されていて、刃物設置部6の切断用隙間5の隙間幅Sと略同じ幅の切断用隙間5Aを有する平面視略U字の鉤状に形成されている。前記の切断用隙間5Aは挟持部材7の一端部7A側の対向辺部7Cと先端部7B側の対向辺部7Dとの間に形成されている。また、切断部3の係合凹部10Aに嵌まり込んで係止される先細の係合凸部20Aが一端部7Aに形成され、切断部3の係合凹部10Bに嵌まり込んで係止される先細の係合凸部20Bが先端部7Bに形成されている。挟持部材7の内面25(平面視で上面)には、厚み方向(
図4(b)中の矢印T方向)に陥入した通液用凹陥部26が形成されている。この通液用凹陥部26には、切断部3の刃物設置位置31A,31Bと対向する刃物挟持位置30A,30Bが設けられている。また、この挟持部材7の内面25とホルダー本体2の刃物設置部6との間は、刃物C1,C2を設置するための刃設置空間40となっている。
【0020】
そして、通液用凹陥部26には、挟持部材7で蓋止されたときの刃物設置部6との間に形成される刃設置空間40の内外を連通する複数(例えば5つ)の通液孔11A,11A,11A,11A,11Aが上下貫通して穿設されている。これら通液孔11A,11A,11A,11A,11Aは、例えば刃物設置部6における通液孔11B,11B,11B,11Bに対して、互いに対面しない非対面の位置に配置されている。すなわち、各通液孔11Aは各通液孔11Bと上下一連に連通しないような位置に配置されている。尚、
図3(a)中に、挟持部材7がホルダー本体2の刃物設置部6に装着されたときに配置される通液孔11B,11B,11B,11Bの位置を1点鎖線の丸印で示しておく。また、挟持部材7には、刃物C(C1,C2)を保持した切断部3の係合ボス9A,9A,9B,9Bを挿通するための貫通孔21,21,21,21が形成されている。すなわち、貫通孔21,21,21,21の周囲が刃物挟持位置30A,30Bであり、これら刃物挟持位置30A,30Bと切断部3の刃物設置部6との間で、切断用隙間5,5A内に刃先Dが突出した状態の刃物C(C1,C2)を挟持するようになっている。各貫通孔21の内径は係合ボス9A,9Bの外径よりも大きく設定されていることにより、刃物設置部6内に流入する洗浄液の出し入れを容易にしている。この場合、挟持部材7の通液孔11A,11A,11A,11A,11Aの個々の開口面積を合計して得られた総開口面積は、ホルダー本体2の通液孔11B,11B,11B,11Bの総開口面積よりもかなり広く設定されている。
【0021】
J字状の切断部3の折り返し部分には、後述する挟持部材7を係止するためのロック機構32が設けられている。このロック機構32は、
図4(b)および
図5(c)に示すように、切断部3における膨出部17、凹底部18、挿通孔16および係合溝19と、挟持部材7における膨出部22、凹底部24、挿通孔23、操作棒27、コイルバネ28および係止ピン29と、から構成されている。これらの構造要素は順次説明していく。
【0022】
切断部3には、
図5(a),(b)に示すように、係止ピン29および操作棒27を挿通可能な挿通孔16が穿設されている。すなわち、挿通孔16は、中央が操作棒27を挿通可能な円形をしていて、この円形の中心軸を通るように係止ピン29を挿通可能な長孔が合わさった形状をしている。そして、刃物設置部6の反対側の面には、係止ピン29の長さより少し径の大きい凹底部18が穿設され、この凹底部18に挿通孔16の長孔部分に直交するように、係止ピン29を係止するための係合溝19が穿設されている。
【0023】
挟持部材7において、刃物設置部6の凹底部18に対応する部分の下面には凹底部24が形成され、凹底部24の中央には、後述する操作棒27をその軸中心に回動自在に嵌合する挿通孔23が穿設されている。すなわち、操作棒27は、凹底部24に嵌まり込む大きさをしてマイナスドライバーの刃先等が入り込む溝を有していて挿通孔23にその軸方向へスライド自在に挿入されている。コイルバネ28は、操作棒27と凹底部24との間で操作棒27に巻回状態に配置されていて操作棒27をバネ付勢するようになっている。そして、挿通孔23を通って刃物設置部6側に突出した操作棒27の先端部には、円柱状をした係止ピン29が取り付けられている。すなわち、係止ピン29は、操作棒27をコイルバネ28の付勢力(
図5(c)中の矢印J方向の力)に抗して凹底部24側に押圧することによって、挿通孔23を通って刃物設置部6側に突出する操作棒27の先端部に、操作棒27の中心軸に直交するように嵌着されている。
【0024】
これらのホルダー本体2、刃物C1,C2、および挟持部材7を組み上げるに際しては、刃物設置部6を上面にしてホルダー本体2を配置し、例えば先端部3B側の係合ボス9B,9Bに1枚目の刃物C2の係合孔E1,E1を装着し、一端側3Aの係合ボス9A,9Aに2枚目の刃物C1の係合孔E1,E1を装着する。これにより、刃物C1,C2の刃先D,Dは切断用隙間5,5A内に露出した状態となり鋭角の交差角度θ(例えば20度)で交差する。この状態で、ホルダー本体2の係合凹部10A,10Bに、挟持部材7の係合凸部20A,20Bを差し入れたのち、挟持部材7の膨出部22を切断部3の挿通孔16に向けて押し込む。そして、操作棒27を挿通孔16内に指などで押し入れて、操作棒27の先端および係止ピン29を挿通孔16から露出させる。その後、操作棒27を回すと、係止ピン29が係合溝19の対面位置にくる。そこで、操作棒27から指を離すと、コイルバネ28の付勢力により係止ピン29が係合溝19内に入り込んで、挟持部材7が抜け止め係止される(
図5(c)の状態)。このように簡単に、刃物ホルダー1を組み上げることができる。尚、刃物Cの刃先Dを未使用側に替えて使用したいときや、長期間経過後に緻密洗浄を行ないたいときは、ロック機構32の操作棒27を押し戻して回すことによりロック状態が解除されるから、極めて簡単に挟持部材7を取り外して分解することができる。
【0025】
上記のように組み上げられた刃物ホルダー1は、
図6に示す連鎖状食品切断装置100で使用される。この連鎖状食品切断装置100は、投入口102および排出口103を有する箱状の本体ケーシング101と、本体ケーシング101内で支持ローラ107および支持ローラ108に回動自在に支持されて傾斜軸心回りに回転する回転ドラム104と、周回ベルト105を介して回転ドラム104を回転駆動するモータMと、回転ドラム104の内周面104Aに周方向に離間して複数配備されていて前記傾斜軸心方向に長尺のアングル材106,106,106,106と、各アングル材106に固定された100セットないし200セットの刃物ホルダー1,1,1,・・・と、から構成されている。各刃物ホルダー1は、各アングル材106の取付穴(図示省略)に挿通された雄ネジ棒15がナット110で螺止されることにより回転ドラム104内に固定される。
【0026】
この連鎖状食品切断装置100では、モータMの回転駆動軸の回転が周回ベルト105を介して伝わり回転ドラム104を矢印R方向(
図6(b)参照)に回転させる。そして、投入口102から供給された連鎖状食品F(例えば連鎖状ウィンナー)は、回転する回転ドラム104の上側開口からドラム内に導かれ、回転ドラム104の内周面104A上を転動しながら排出口103に向かって移動する。この移動中に、連鎖状食品Fは数多くあるうちのいくつかの刃物ホルダー1,1,1,・・・と当接する。そのとき、棒状食品部W(例えばウィンナー)自体は刃物ホルダー1の切断用隙間5,5Aに入れないが、隣り合う棒状食品部W,W間の結束部Nであれば切断用隙間5,5Aに入ることができる。切断用隙間5,5Aに入った結束部Nは、切断用隙間5,5A内に露出した刃物C1,C2の鋭利な刃先D,Dに触れて切断される。
【0027】
そうして、予定の切断作業が終了すると、各刃物ホルダー1の内外に付着している連鎖状食品Fの切断クズを除去するとともに器具を清浄にするために、刃物ホルダー1,1,1,・・・の洗浄作業が行なわれる。このとき、各刃物ホルダー1は切断作業を終えた状態のまま分解されることなく、洗浄作業に供される。洗浄作業は、加圧・加温した温水などの洗浄液を個々の刃物ホルダー1,1,1,・・・に噴き付けて行なわれる。この場合、洗浄液は、ホルダー本体2の小さな円形状の通液孔11B,11B,11B,11B、挟持部材7の広い略角形状の通液孔11A,11A,11A,11A,11A、および貫通孔21,21,21,21,21から刃物設置部6の刃設置空間40内に流入する。このとき、洗浄液は通液用凹陥部8内や通液用凹陥部26内を流通し、更に刃物Cの貫通溝部Eを通過して反対側の刃面に到達する。これにより、刃物設置部6内に残留していた切断クズが洗い流される。その後、洗浄液は、切断クズとともに挟持部材7の通液孔11A,11A,11A,・・・および貫通孔21,21,21,・・・、ホルダー本体2の通液孔11B,11B,11B,・・・、ならびに刃物設置部6と挟持部材7との隙間からホルダー外へ流出する(
図4(b)参照)。このような動作が適宜時間継続されることにより、刃物ホルダー1,1,1,・・・の洗浄が終了する。
【0028】
上記のように、この実施形態の刃物ホルダー1によれば、挟持部材7の通液孔11Aとホルダー本体2の通液孔11Bとが、挟持部材7およびホルダー本体2において互いに非対面の位置に配置されているので、挟持部材7の通液孔11Aからまたはホルダー本体2の通液孔11Bからホルダー本体2の刃物設置部6内に流入した洗浄液は、刃物Cまたはその周辺部に当たってそれらの洗浄を行なう。一方、刃物Cなどに当たらなかった洗浄液は、対面する刃物設置部6の内壁または挟持部材7の内壁に当たったのちにそれらの内壁に沿って進路を変え、流入した通液孔11A,11Bとは非対面位置の通液孔11B,11Aからホルダー外へ流出する。従って、従来技術のように洗浄液が流入した通液孔から対面の通液孔へ直に向かって流出するといった無駄を生じないから、刃物設置部6内の洗浄を効率よく行なうことができる。一方で、洗浄液中に散在している切断クズなどの長尺片70(
図11参照)は挟持部材7の通液孔11Aと刃物設置部6の通液孔11Bの双方にまたがることがないから、これら双方の通液孔11A,11Bでの掛止を防ぐことができる。そして、ホルダー分解を行なうことなくホルダー本体2の刃物設置部6に刃物Cをセットしたまま洗浄できるのは言うまでもなく、洗浄時間を大幅に短縮できて手間も大きく省ける。
【0029】
また、挟持部材7の通液孔11A,・・・・の総開口面積はホルダー本体2の通液孔11B,・・・の総開口面積よりも著しく広く設定されているので、広い総開口面積の通液孔通液孔11A,・・・・を有する挟持部材7側から多量の洗浄液を噴きつけることにより、より多くの洗浄液を刃物設置部6内に流入させることができる。これにより、刃物設置部6内の刃物C1,C2およびその周辺部を効率よく洗浄できる。また、挟持部材7の内面25および刃物設置部6の内面と刃物C1,C2との間に、通液用凹陥部8,26が介在するので、これらの通液用凹陥部8,26を洗浄液が多量に流通するから、このことも刃物C1,C2の洗浄を効率よく行なえることにつながっている。
【0030】
尚、上記の実施形態では、挟持部材7に平面視で略角形状の通液孔11Aを穿設し、ホルダー本体2の刃物設置部6に円形状の通液孔11Bを穿設した例を示したが、本発明の刃物ホルダーはそれに限定されるものでない。例えば、
図7および
図8に示すようなホルダー本体2aおよび挟持部材7aを用いた刃物ホルダーでも構わない。この刃物ホルダーでは、4つの円形状の通液孔11Aa,・・・が挟持部材7aの通液用凹陥部26に穿設され、5つの略角形状の通液孔11Ba,・・・・がホルダー本体2aの刃物設置部6に穿設されている。この場合も、各通液孔11Aaと各通液孔11Baとは、挟持部材7aおよび刃物設置部6において互いに非対面の位置に配置されている。この刃物ホルダーの場合、ホルダー本体2aの側から多量の洗浄液を噴きつけるようにすると、刃物設置部6内を多量の洗浄液で洗浄することができる。このような実施形態の刃物ホルダーであっても、既述した各実施形態の刃物ホルダーと同様に、ホルダー分解なしの洗浄は行なえるし、長尺片70が引っ掛かることもない。
【0031】
また、上記した各実施形態では、ホルダー本体2,2aまたは挟持部材7,7aの一方に略角形状の通液孔11A、11Baを穿設し、他方に円形状の通液孔11B、11Aaを穿設した例を示したが、本発明の刃物ホルダーはそれに限定されない。例えば、
図9(a)に示すように、挟持部材7bの通液用凹陥部26とホルダー本体2b(
図10参照)の刃物設置部6の双方に、いずれも円形状の通液孔11Ab,・・・・と通液孔11Bb,・・・を穿設したものでもよい。この場合、各通液孔11Abと各通液孔11Bbとは、挟持部材7bおよびホルダー本体2bにおいて互いに非対面の位置に配置されている。このような実施形態の刃物ホルダーであっても、既述した各実施形態の刃物ホルダーと同様の作用、効果は呈する。
【0032】
また、前記では、平面視で円形の通液孔11Bbを切断部3の刃物設置部6に形成し、同じく円形状の通液孔11Abを挟持部材7bに形成した例を示したが、本発明はそれに限定されるものでない。例えば、
図9(b)に示すような刃物ホルダーも本発明に含まれる。この刃物ホルダーでは、挟持部材7cの通液用凹陥部26に、平面視で三角形状の通液孔11Ac,11Ac,11Ac・・・が形成され、これら通液孔11Ac,11Ac,11Ac・・・と同形状の通液孔11Bc,11Bc,11Bc,・・・(
図9(b)中の1点鎖線)がホルダー本体2c(
図10参照)の刃物設置部6に形成されている。各通液孔11Acと各通液孔11Bcとは、挟持部材7cおよびホルダー本体2cにおいて互いに非対面の位置に配置されている。このような実施形態の刃物ホルダーであっても、既述した各実施形態の刃物ホルダーと同様の作用、効果は呈する。
【0033】
そして、通液孔の平面視形状は特に限定されるものでなく、上記した円形状または三角形状以外に、例えば楕円形状、四角形状、星型形状、またはその他の形状であってよく、これらを切断部の刃物設置部と挟持部材に形成するようにしても構わない。この場合、ホルダー本体の通液孔の形状と挟持部材の通液孔の形状は、同一形状にこだわるものでない。
【0034】
そして、上記では、2枚の刃物C1,C2を用いた例を示したが、1枚の刃物Cを用いる刃物ホルダーであっても相応の効果を呈することができ、本発明の技術思想を受け継ぐことができる。
また、上記では、適用される連鎖状食品として連鎖状ウィンナーを例示したが、本発明はそれに限定されるものでない。複数の棒状食品部が結束部を介して連結されて成る連鎖状食品であれば、いかなる種類の食品であっても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 刃物ホルダー
2,2a,2b,2c ホルダー本体
2A 一端部
2B 他端部
3 切断部
4 装着部
5,5A 切断用隙間
6 刃物設置部
7,7a,7b,7c 挟持部材
8,26 通液用凹陥部
11A,11Aa,11Ab,11Ac,11B,11Ba,11Bb,11Bc 通液孔
30A,30B 刃物挟持位置
31A,31B 刃物装着位置
40 刃設置空間
70 長尺片
100 連鎖状食品切断装置
104 回転ドラム
C,C1,C2 刃物
D 刃先
F 連鎖状食品
N 結束部
S 隙間幅
T 矢印
W 棒状食品部