(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】スライス装置
(51)【国際特許分類】
B26D 3/28 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
B26D3/28 610J
B26D3/28 610K
B26D3/28 610Q
(21)【出願番号】P 2021023027
(22)【出願日】2021-02-17
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】503049427
【氏名又は名称】匠技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【氏名又は名称】辻 忠行
(74)【代理人】
【識別番号】100150762
【氏名又は名称】阿野 清孝
(72)【発明者】
【氏名】今浦 博志
(72)【発明者】
【氏名】栩野 登久
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0180438(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0031363(US,A1)
【文献】特開2000-288984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状の食品原木を長手方向に移送し、所定の厚さにスライスするスライサーと、
前記スライサーでスライスされた食品を受け止めると共に、当該スライスされた複数枚の食品を積み重ねてスライス食品を製造し、かつ当該スライス食品を下流に搬送する搬送手段とを備え、
前記搬送手段は、搬送方向に並置され
、かつそれぞれが搬送方向と直交する方向に移動可能
な第1および第2のコンベアで構成され、
前記第1のコンベアは、前記スライサーでスライスされた食品原木を受け止める毎に、搬送方向と直交する方向に所定のピッチ移動して、当該第1のコンベア上にシングリング状態で積み重ねられたスライス食品が製造され、
また前記第1のコンベアは、前記スライス食品の製造が終了した後、前記第2のコンベアと同期して初期の位置まで戻ると共に、移動の途中で前記スライス食品の前記第2のコンベアへの引き渡しを行うことを特徴するスライス装置。
【請求項2】
前記第1および第2のコンベアが初期の位置に戻った時点で両方のコンベアの移動を停止し、
前記第2のコンベアに引き渡されたスライス食品を、当該第2のコンベアの下流に設置された第3のコンベアに引き渡すと共に、前記スライサーによる食品原木のスライスを再開する、請求項
1に記載のスライス装置。
【請求項3】
前記食品原木として断面が扁平な食品原木を用い、前記スライサーは、前記食品原木の断面の短辺方向が水平方向を向いた状態でスライスを行う、請求項1
または2に記載のスライス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハムやベーコンの原木をスライスしてシングリング状態のスライス食品を製造するスライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スライスされたハムを包装用フィルムで封止してスライス食品を製造する場合、ハムの原木を、一定速度で回転する切断刃に対して一定速度で移送してスライスし、ハムが所定の枚数積み重ねられたスライス食品の半完成品を製造した後、コンベアによって包装機まで搬送している。
【0003】
包装機まで搬送された半完成のスライス食品は、包装用下フィルムのポケットに投入され、更に上フィルムで封止されてスライス食品が完成する。
【0004】
近年では、上述の工程によってスライス食品を製造する場合、生産性を高めるために、複数本(例えば3本)のハム原木を1つの切断刃でスライスしている(特許文献1参照)。
【0005】
そしてスライスされたハムを、包装用フィルムのポケットに投入できるように、自動投入装置で搬送方向およびそれと直交する方向の位置を調節して整列させた後、包装機まで搬送している。
【0006】
上述したスライス食品を製造する際、使用時に剥しやすいようにスライスハムを少しずつずらして積み重ねて、シングリング状態にすることが一般的に行われている(例えば特許文献2参照)
【0007】
このようなシングリング状態のスライス食品を製造するためには、切断刃によってハムが所定枚数スライスされる間、スライスハムを受け止めるコンベアを低速で駆動して、ハムをずらしながら重ね、その後、コンベアを高速で駆動することによって、半完成のスライス食品を下流側のコンベアに引き渡している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020-66441号公報
【文献】特開2001-121475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、食品原木については、ロースハムのように断面が円形のものや、ハーフベーコンや一部の生ハムのように断面が扁平なものがある。ハーフベーコンのように断面が扁平な原木については、スライスされたベーコンを短辺方向にずらしてシングリング状態のスライス食品を製造している。
【0010】
断面が扁平な食品原木を用いてシングリング状態のスライス食品を製造する場合、通常、断面の長辺方向が水平方向を向いた状態で原木をスライスするが、同じ断面積で断面が円形の原木に比較し、同時にスライスできる原木の数が減るため(例えば円形の場合3本に対して扁平の場合2本)、スライス食品の生産性が低下する。
【0011】
これに対し、断面の短辺方向が水平方向を向いた状態で、かつスライスされた食品を搬送方向と直交する方向にずらしながら積み重ねる場合、同時にスライスできる原木の数を増やすことができ、結果として、スライス食品の生産性が向上する。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、断面が扁平な食品原木を、短辺方向が水平方向を向いた状態でスライスすることができるスライス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係るスライス装置は、
柱状の食品原木を長手方向に移送し、所定の厚さにスライスするスライサーと、
前記スライサーでスライスされた食品を受け止めると共に、当該スライスされた複数枚の食品を積み重ねてスライス食品を製造し、かつ当該スライス食品を下流に搬送する搬送手段とを備え、
前記搬送手段は、搬送方向に並置され、かつそれぞれが搬送方向と直交する方向に移動可能な第1および第2のコンベアで構成され、
前記第1のコンベアは、前記スライサーでスライスされた食品原木を受け止める毎に、搬送方向と直交する方向に所定のピッチ移動して、当該第1のコンベア上にシングリング状態で積み重ねられたスライス食品が製造され、
また前記第1のコンベアは、前記スライス食品の製造が終了した後、前記第2のコンベアと同期して初期の位置まで戻ると共に、移動の途中で前記スライス食品の前記第2のコンベアへの引き渡しを行うことを特徴する。
【0016】
ここで、前記第1および第2のコンベアが初期の位置に戻った時点で両方のコンベアの移動を停止し、前記第2のコンベアに引き渡されたスライス食品を、当該第2のコンベアの下流に設置された第3のコンベアに引き渡すと共に、前記スライサーによる食品原木のスライスを再開することが好ましい。
【0017】
また前記食品原木として断面が扁平な食品原木を用い、前記スライサーは、前記食品原木の断面の短辺方向が水平方向を向いた状態でスライスを行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るスライス装置を用いれば、第1のコンベアを用いて、原木の短辺方向が水平方向を向いた状態で、かつスライスされた食品を搬送方向と直交する方向にずらしながら積み重ねることができるため、シングリング状態のスライス食品の生産性を高めることができる。
【0019】
更に、第1のコンベアから第2のコンベアへのスライス食品の引き渡しと、2つのコンベアの初期位置への移動とを同時に行っており、コンベアが初期の位置に戻った時点で、すぐにスライス食品の製造を再開できるため、装置の稼働率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスライス装置の全体構成を示す正面図である。
【
図2】
図1のスライス装置のうち搬送手段の平面図である。
【
図3】本実施の形態に係るスライス装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図4】シングリング状態のスライス食品の製造と第3のコンベアへの搬送における各ステップを示すフローチャートである。
【
図5】
図4に示したフローチャートの各ステップにおける第1および第2のコンベアの動作を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係るスライス装置について、図面を参照して説明する。以下の説明では、ハーフベーコンの原木をスライスしてシングリング状態のスライス食品を生産するものとする。
【0022】
図1は、本実施の形態に係るスライス装置1の全体構成を示す図、
図2は、スライス装置1のうち搬送装置3を上から見た図、
図3は、スライス装置1の制御系の構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施の形態に係るスライス装置1は、スライサー2と搬送装置3で構成されている。スライサー2は、断面が略四角形の柱状のハーフベーコンの原木Wを長手方向に移送し、所定の厚さにスライスしてスライス食品を製造するものである。
【0024】
一方、搬送装置3は、一組のコンベア4および5で構成されている。これらのうち第1のコンベア4は、スライサー2でスライスされたハーフベーコンを受け止め、下流に搬送するものである。また第1のコンベア4は、搬送方向と直交する方向に移動可能に構成されており、スライサー2と協働してシングリング状態のスライス食品を製造する。
【0025】
第2のコンベア5は、第1のコンベア4の下流に設置され、第1のコンベア4から引き渡されたシングリング状態のスライス食品を下流に搬送するものである。第2のコンベア5は、第1のコンベア4と同様に、搬送方向と直交する方向に移動可能に構成されており、第1のコンベア4と協働してシングリング状態のスライス食品を下流に搬送する。
【0026】
なお、第2のコンベア5の下流に設置された第3のコンベア6は、スライス装置1で製造されたスライス食品を、図示しない包装機に向けて搬送するものである。前述したように、包装機まで搬送されたスライス食品は、包装用の下フィルムに形成されたポケットに収納された後、上フィルムで封止され、完成したスライス食品となる。
【0027】
図では省略しているが、搬送手段3と包装機の間には、第3のコンベア6を含む複数のコンベアで構成された自動投入装置が設置され、スライス装置1で製造されたシングリング状態のスライス食品を、搬送方向およびそれと直交する方向に位置を調整して整列させた後、包装機まで搬送し、包装用下フィルムのポケットに自動投入している。
【0028】
図3に示すように、スライサー2および搬送手段3には、それぞれの動作を制御するコントローラ23および31が設置されており、位置センサや回転センサで検出した信号に基づいてモータやアクチュエータの動作を制御して、後述する切断刃やコンベア、その他の部材を駆動する。
【0029】
またコントローラ23とコントローラ31は相互に交信を行ない、切断刃やコンベア、その他の駆動部材の動作タイミングを調節して、スライサー2で製造されたスライス食品が第3のコンベア6まで円滑に搬送されるよう制御している。
【0030】
<スライサーの構成と機能>
最初に、
図1および
図2を参照して、スライサー2の構成と各部の機能を説明する。スライサー2は、ベース20上に設置されたサポートステーション21とスライスステーション22とで構成されている。本実施の形態で用いるスライサー2は、3本のハーフベーコンの原木を同時にスライスする機能を備えている。
【0031】
サポートステーション21に設けられた支持レーン211に収容されたハーフベーコンの原木(以降、「ベーコン原木」と略す)Wは、矢印で示すように、スライスステーション22の回転刃221に向けて移送され、一定の厚みにスライスされる。
【0032】
スライスされたベーコンは、搬送手段3の第1のコンベア4上に落下し、スライサー2との協働によってシングリング状態のスライス食品に加工された後、第2のコンベア5に引き渡され、最終的に第2のコンベア5から第3のコンベア6に引き渡される。以下、各ステーションについて具体的に説明する。
【0033】
サポートステーション21は、支柱201および202によってベース20上に傾斜して設置された長尺のガイド部212を備え、ガイド部212には、長尺のベーコン原木Wを収容する、断面が略四角形状の3本の支持レーン211が設置されている。
【0034】
ガイド部212には、ベーコン原木Wの上端部をホルダー213で係止した状態で下方に移送する送り部材214が設置されている。送り部材214は、ガイド部212の上端に取り付けられた駆動部(モータとボールネジで構成)215により、ガイド部212に沿って下方に移動する。送り部材214の移動量はコントローラ23(
図3参照)によって調節が可能である。
【0035】
支柱202に支持されたスライスステーション22は、ベーコン原木Wをスライスする円板状の回転刃221、回転刃221を自転させながら公転させる回転刃駆動部材222を備えている。回転刃駆動部材222を用いて、回転刃221を自転させながら公転させることにより、支持レーン211上を移送されてきたベーコン原木Wは一定の厚さにスライスされる。そのため、回転刃221の回転軸223は、回転板224の一端に、回転刃駆動部材222の回転軸より所定距離離した状態で、回転自在に支承されている。
【0036】
サポートステーション21およびスライスステーション22の動作は、コントローラ23のメモリに格納されたプログラムによって制御される。
図3に示すように、コントローラ23は、各部材に設置された位置センサ24や回転センサ25の出力信号に基づいて、各部材を駆動するモータ26やアクチュエータ27の動作タイミングを調節して、上述の動作を実現する。
【0037】
<搬送手段の構成と機能>
次に、搬送手段3について説明する。
図2に示すように、搬送手段3は、略同一の構成を有する第1のコンベア4と第2のコンベア5で構成され、これらのコンベア4および5は、搬送方向に並置されている。
【0038】
第1のコンベア4は、四角形状のフレーム42の前後に取り付けられた一対のプーリ43、44に平ベルト41が捲回されて構成されており、一方のプーリ44の軸に、ジョイント45を介して回転駆動用のモータ(後述するスライダー46の筐体内に収容)が取り付けられている。
【0039】
またフレーム42の一方の側(図では下側)には、コンベア4を、矢印で示した搬送方向と直交する方向(白抜きの矢印で示す)に移送するスライダー46が取り付けられている。
【0040】
図1に示すように、スライダー46は、スライサー2のベース20上に設置されたシャーシ30上に取り付けられ、シャーシ30内に収容されたボールネジ(図示せず)により、水平方向に移動が可能である。スライダー46の移動量および移動速度は、コントローラ31によって、ボールネジを回転させるモータ34の回転数を制御することにより調整される。
【0041】
後に、
図5を用いて詳述するが、スライサー2でスライスされたベーコンを第1のコンベア4で受け止める毎に、コンベア4を、スライダー44によって搬送方向と直交する方向に移送すると、平ベルト41上に、スライスベーコンが1ピッチずつずれたシングリング状態のスライス食品Sを製造できる。
【0042】
第2のコンベア5についても、第1のコンベア4と同様に、四角形状のフレーム52の前後に取り付けられた一対のプーリ53、54に平ベルト51が捲回されて構成されており、一方のプーリ54の軸に、ジョイント55を介して回転駆動用のモータ(後述のスライダー56の筐体内に収容)が取り付けられている。
【0043】
更に、フレーム52の一方の端には、コンベア5を、矢印で示した搬送方向と直交する方向(白抜きの矢印で示す)に移送するスライダー56が取り付けられている。
【0044】
スライダー56も、スライダー46と同様に、シャーシ30内に収容されたボールネジ(図示せず)により水平方向に移動が可能であり、スライダー56の移動量および移動速度は、コントローラ31によって、ボールネジを回転させるモータ34の回転数を制御することにより調整される。
【0045】
上述したように、第2のコンベア5も、第1のコンベア4と同様の機能を備えているが、機能は異なっている。すなわち、第2のコンベア5は、第1のコンベア4によって製造されたシングリング状のスライス食品Sを最短の時間で第3のコンベア6に引き渡すために用いられる。第2のコンベア5の機能については、後に
図5を用いて詳述する。
【0046】
なお、スライサー2と同様に、コンベア4および5の各部の動作は、コントローラ31のメモリに格納されたプログラムによって制御される。
図3に示すように、コントローラ31は、各部材に設置された位置センサ32や回転センサ33の出力信号に基づいて、各部材を駆動するモータ34の動作タイミングを調節して、上述の動作を実現する。
【0047】
また、本実施の形態では、スライダー46、56を駆動する手段としてボールネジを用いたが、駆動手段はこれに限定されない。例えば、ラックアンドピニオン機構を用いてスライダー46、56を駆動してもよい。
【0048】
第3のコンベア6は、本実施の形態に係るスライス装置1の構成部材ではないが、スライス装置1の動作と密接に関係しているため、簡単に構成と機能を説明する。
【0049】
第3のコンベア6は、スライス装置1で製造されたシングリング状態のスサイス食品を、第2のコンベア5から受け取り、下流に設置された包装機(図示せず)に向けて搬送するもので、一対のプーリ63間に長尺の平ベルト62が捲回されたものである。
【0050】
第3のコンベア6は、シャーシ60上に設置されたフレーム61に支持され、ボックス64内に収容されたモータ(図示せず)の回転を、ジョイント65を介してプーリ63に伝達することにより駆動される。
【0051】
<スライス食品の製造と搬送>
次に、
図4および
図5を参照して、シングリング状態のスライス食品の製造と搬送について説明する。
【0052】
図4は、シングリング状態のスライス食品の製造から第3のコンベアへの引き渡しまでの各ステップを示すフォローチャート、
図5は、上述の各ステップにおける第1および第2のコンベア4、5の動作を説明する図である。
【0053】
図5において、一点鎖線A、Bは、第1および第2のコンベア4、5が搬送方向と直交する方向に移動する場合の移動範囲を示している。
図5(a)に示すように、動作開始時点では、第1のコンベア4は左端が直線Aに接する位置にあり、第2のコンベア5は右端が直線Bに接する位置にある。
【0054】
この状態において、スライサー2はベーコン原木Wのスライスを開始する(ステップS1)。
図5(a)に、スライスされた1枚目のベーコンSが第1のコンベア4上に落下し、受け止められた状態を示す。
【0055】
次に、第1のコンベア4は、コントローラ31の制御に従い、白抜きの矢印で示したように、右方向に1ピッチ分移動する(ステップS2)。その後、スライサー2を駆動して2枚目のベーコンをスライスすると、
図5(b)に示すように、2枚のスライスベーコンが1ピッチずれた状態でコンベア上に載置される。
【0056】
スライサー2と第1のコンベア4は、ステップ1とステップ2の動作を5回繰り返す(ステップS3においてNo)。すると、
図5(b)~(e)に示すように、スライスされたベーコンが横方向に1ピッチずつずれた状態で積み重ねられ、シングリング状態のスライス食品Sが製造される。
【0057】
図5(e)に示すように、ベーコン原木Wが5回スライスされた時点(ステッS3においてYes)で、第1のコンベア5の右端が直線Bに接する位置まで移動し、第2のコンベア5と横方向の位置が一致する。
【0058】
次に、
図5(f)に示すように、第1および第2のコンベア4、5は同期して左端まで移動し、かつ移動しながら第1のコンベア4上に載置されたシングリング状のスライス食品Sを第2のコンベア5に引き渡す(ステップS4)。
【0059】
図5(g)に、スライス食品Sが第2のコンベア5に引き渡され、かつ第1および第2のコンベア4、5が初期の位置、すなわち直線Aに接する位置まで移動した状態を示す。
【0060】
前述の
図2に示したように、この状態では、コンベア4、5および6は、搬送方向と直交する方向の位置が一致しているため、第2のコンベア5から第3のコンベア6への引き渡しは問題なく行われる(ステップS5)。
【0061】
この後、引き渡しを終了した第2のコンベア5は右端、すなわちコンベアの右端が直線Bに接する位置まで移動し、そこで待機する(ステップS6)。
【0062】
一方、搬送手段3のコントローラ31は、第1のコンベア4が左端に戻った時点で、そのことをスライサー2のコントローラ23に通知する。この時点では、第1のコンベア4上にはスライス食品Sは載置されていないため、スライサー2は、コントローラ23の指示に従ってスライスを再開する(ステップS1)。
【0063】
スライサー2によるベーコン原木Wのスライスと、コンベア4、5によるスライス食品Sの製造と搬送が続き(ステップS7においてNo)、ベーコン原木Wの終端近くまでスライスされた時点で(ステップS7においてYes)、スライサー2とコンベア4、5の駆動が停止し、スライス食品の製造と搬送が終了する。
【0064】
上述したように、本実施の形態に係るスライス装置は、ハーフベーコンのような断面が扁平な原木を用いてシングリング状態のスライス食品を製造する場合に、断面の設置方向を調整することによって、同時にスライスできる食品原木の数を増やすことができるため、スライス装置の生産性を向上させることができる。
【0065】
更に、本実施の形態に係るスライス装置では、搬送方向と直交する方向に移動可能な一組のコンベアを用いてスライス食品を製造しており、スライサーを止めることなく、シングリング状態のスライス食品を連続して製造できるため、装置の稼働率を高めることができる。
【0066】
具体的には、2台のコンベアを同期して移動させることによって、コンベアの初期位置への移動と第1のコンベアから第2のコンベアへの引き渡しを同時に行うことができるために、製造されたスライス食品の引き渡しを最短の時間で行うことができる。
【0067】
また、スライス食品が引き渡され、空いた第1のコンベアを用いて、スライス食品の製造を再開できることから、スライサーの連続稼働が可能となる。
【0068】
ちなみに、シングリング状態のスライス食品の製造は、搬送手段を第1のコンベアだけで構成しても実現可能である。このような構成を採用すれば、装置コストを低減できる。
【0069】
しかし、このような構成を採用した場合、コンベアが初期の位置に戻った時点で、コンベア上にスライス食品が残っており、それを第3のコンベアに引き渡すまで、スライス食品の製造を再開できないため、スライサーの連続運転を実現できず、装置の稼働率が低下する。
【0070】
なお、本実施の形態では、ハーフベーコンの原木を用いてシングリング状態のスライス食品を製造する場合について説明したが、本発明に係るスライス装置は、断面が扁平な食品原木だけでなく、断面が円形の食品原木を斜めにスライスしてシングリング状態のスライス食品を製造する場合にも、適用が可能である。
【符号の説明】
【0071】
S スライス食品
W ベーコン原木
1 スライス装置
2 スライサー
3 搬送装置
4、5、6 コンベア
21 サポートステーション
22 スライスステーション
23、31 コントローラ
24、32 位置センサ
25、33 回転センサ
26、34 モータ
27 アクチュエータ
30、60 シャーシ
41、51、62 平ベルト
42、52、61フレーム
43、44、53、543、63 プーリ
45、55、65 ジョイント
46、56 スライダー
211 支持レーン
212 ガイド部
213 ホルダ-
214 送り部材
215 駆動部
221 回転刃
222 回転刃駆動部材
223 回転軸
224 円板