(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】複合材シェル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A45C 11/00 20060101AFI20220927BHJP
B32B 5/10 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A45C11/00 Z
B32B5/10
(21)【出願番号】P 2021041585
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2020-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518349237
【氏名又は名称】科展材料科技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100219531
【氏名又は名称】南部 麻美
(72)【発明者】
【氏名】邱 紹禎
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-335370(JP,A)
【文献】特開2000-037819(JP,A)
【文献】特開平06-064115(JP,A)
【文献】特開平03-228854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0000602(US,A1)
【文献】米国特許第5834105(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C11/00-11/38
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂及び強化用繊維で作られたベースプレートと、
複数の装飾片と、
を備え、
前記複数の装飾片のそれぞれは、熱可塑性樹脂及び強化用繊維を含む複合材で作られており、
前記複数の装飾片のそれぞれの面積は、前記ベースプレートの面積よりも小さく、
各前記装飾片の前記強化用繊維は、互いに平行に配置されており、
前記複数の装飾片は、前記ベースプレート上に、
1つの前記装飾片の前記強化用繊維が、別の1つの前記装飾片の前記強化用繊維に対して非平行に延びるように、重ね合わせられ、かつ溶着されている、
複合材シェル。
【請求項2】
前記ベースプレートの前記強化用繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は金属繊維であり、
前記複数の装飾片のそれぞれの前記強化用繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は金属繊維である、
請求項1に記載の複合材シェル。
【請求項3】
ベースプレート準備ステップと、装飾片製造ステップと、装飾片敷き詰めステップと、熱間圧縮ステップとを含み、
前記ベースプレート準備ステップにおいて、熱可塑性樹脂及び強化用繊維で作られたプリプレグシートを積層してベースプレートを形成し、
前記装飾片製造ステップにおいて、熱可塑性樹脂及び強化用繊維で作られた複数の装飾片を準備し、前記複数の装飾片のそれぞれの面積は、前記ベースプレートの面積よりも小さく、
各前記装飾片の前記強化用繊維は、互いに平行に配置されており、
前記装飾片敷き詰めステップにおいて、前記ベースプレート上に前記複数の装飾片を敷き詰め、前記複数の装飾片は重ね合わせられ、かつ、1つの前記装飾片の前記強化用繊維は、別の1つの前記装飾片の前記強化用繊維に対して非平行に延びており、
前記熱間圧縮ステップにおいて、前記ベースプレート及び前記複数の装飾片を加熱し、その後、前記ベースプレート及び前記複数の装飾片を圧縮する、
複合材シェルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護のためのシェル、より具体的には、特有の反射及び様々な深さの視覚的効果を提供することができる複合材シェル、及び複合材シェルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の人気の高まりに伴い、人々は保護スリーブ又は保護ケースなどの保護シェルを購入し、高機能で高価な電子機器を保護するために保護シェルで覆っている。電子機器を保護することに加えて、保護シェルの模様は、個人の好みを表す装飾にもなる。
【0003】
従来の保護シェルは、シリコン、ポリカーボネート、又は熱可塑性ポリウレタンに加えて、繊維複合材でも作られている。繊維複合材で作られた従来の保護シェルは、軽量で剛性がある。また、縦縞又は格子などの規則的な模様によって、従来の保護シェルは顧客に人気がある。
【0004】
しかし、繊維複合材で作られた従来の保護シェルが一般的になるにつれて、従来の保護シェルの規則的な模様は、個人差を強調するための要求を満たすことが徐々にできなくなってきている。繊維複合材で作られた保護シェルの従来の製造方法には、多様な外観を有する保護シェルを作り出すための改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、特有の反射及び様々な深さの視覚的効果を有する複合材シェルを提供し、かつ、顧客に保護シェルの多様な外観の選択肢を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複合材シェルは、熱可塑性樹脂及び強化用繊維で作られたベースプレートと、複数の装飾片とを有する。複数の装飾片のそれぞれは、熱可塑性樹脂及び強化用繊維を含む複合材で作られている。複数の装飾片のそれぞれの面積は、ベースプレートの面積よりも小さく、複数の装飾片は、ベースプレート上に、無方向に配置され、重ね合わせられ、かつ溶着されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明に係る複合材シェルの製造方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、
図1の製造方法によって作られた複合材シェルの上面図であって、複数の装飾片を有する複合材シェルを示す。
【
図5】
図5は、
図4の複合材シェルの拡大上面図であって、各装飾片が正方形であることを示す。
【
図6】
図6は、
図1の製造方法によって作られた複合材シェルの拡大上面図であって、各装飾片が円形であることを示す。
【
図7】
図7は、
図1の製造方法によって作られた複合材シェルの拡大上面図であって、各装飾片が三角形であることを示す。
【
図8】
図8は、
図1の製造方法によって作られた複合材シェルの拡大上面図であって、各装飾片が長方形であることを示す。
【
図9】
図9は、
図1の製造方法で作られた電話ケースの拡大上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、複合材シェルの製造方法は、ベースプレート準備ステップS1、装飾片製造ステップS2、装飾片敷き詰めステップS3、及び熱間圧縮ステップS4のステップを含む。
【0010】
ベースプレート準備ステップS1では、まず、ベースプレート10が準備される。ベースプレート10は平らであり、ポリマーマトリックス及び強化用繊維で作られた積層プリプレグシートから構成されている。
図1及び
図2に関して、本発明の実施形態では、ポリマーマトリックスは熱可塑性樹脂であり、強化用繊維は炭素繊維である。実際には、強化用繊維は、炭素繊維の他に、ガラス繊維又は金属繊維であってもよい。
【0011】
装飾片製造ステップS2では、繊維を有する複合材で作られた複数の装飾片20が準備される。装飾片20のそれぞれは、ベースプレート10の面積よりも小さい面積を有する。本発明の実施形態では、各装飾片20は、熱可塑性樹脂及び強化用繊維21で作られている。各装飾片20の強化用繊維は、互いに平行に配置されている。各装飾片20の強化用繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又は金属繊維であってもよいが、これらに限定されない。
【0012】
図5、7、及び8に関して、各装飾片20の輪郭は、正方形、三角形、又は長方形であってもよい。各装飾片20の強化用繊維21は、装飾片20の縁201に平行である。実際には、各装飾片20の輪郭が、正方形、三角形、長方形、又は任意の多角形をなす場合、各装飾片20の強化用繊維は、装飾片20の縁201に対して非平行であってもよい。したがって、多様な模様を有する装飾片20を得るための装飾片製造ステップS2において、各強化用繊維21と装飾片20の縁201との間で角度が規定される。すなわち、強化用繊維21のそれぞれは、装飾片20の縁201に対して非平行である。
【0013】
装飾片敷き詰めステップS3では、複数の装飾片20がベースプレート10上に敷き詰められる。複数の装飾片20は、無方向に配置される。複数の装飾片20は重ね合わせられる。1つの装飾片20の強化用繊維は、別の1つの装飾片の強化用繊維に対して非平行に延びている。装飾片敷き詰めステップS3では、重なり合う複数の装飾片20の分量、及び、複数の装飾片20のうちそれぞれ2つの装飾片20の重ね合わせの面積は、調節可能である。
【0014】
熱間圧縮ステップS4では、ベースプレート10及び複数の装飾片20を加熱した後、ベースプレート10及び複数の装飾片20は圧縮される。したがって、ベースプレート10及び複数の装飾片20は、熱可塑性樹脂を介して互いに溶着される。
【0015】
本発明の実施形態では、ベースプレート準備ステップS1と装飾片製造ステップS2は交換されてもよい。本発明の製造方法によって複合材シェルを製造する場合には、最初に、ベースプレート10又は複数の装飾片20のどちらかが製造されてもよい。装飾片敷き詰めステップS3で、複数の装飾片20をベースプレート10上に敷き詰めることができさえすれば、ベースプレート準備ステップS1と装飾片製造ステップS2の順序は限定されない。
【0016】
また、装飾片製造ステップS2では、各装飾片20は、打抜機によってプリプレグシートを打ち抜くことにより形成される。実際には、各装飾片20は、切断又はトリミングなどの他の手段によって得られてもよい。
【0017】
図4及び
図5に関して、本発明の実施形態では、ベースプレート10の輪郭は長方形であり、各装飾片20の輪郭は実質的に正方形である。実際には、ベースプレート10の輪郭は限定されない。
図6から
図8に関して、各装飾片20の輪郭は、円形、三角形、長方形などであってもよい。実際には、各装飾片20は、ハート形、星形、トレードマーク、文字、植物若しくは動物、又は様々な自然の題材の輪郭を示すことさえできる。各装飾片20が、疾走する馬又は雲の輪郭を示す場合、複数の重ね合わせられた装飾片20は、疾走する馬の群れのシーンを構成するか、又は雲及び霧のシーンを表すことさえできる。
【0018】
図4から
図7に関して、本発明の製造方法によって作られた複合材シェルは、複数の装飾片20が繰り返し不規則に配置されており、繊維複合材で作られた従来のシェルとは異なる外観を顧客に提供する。さらに、複数の装飾片20の輪郭は、任意にかつそれぞれ、上述した輪郭から選択されることさえできる。
【0019】
本発明の製造方法で作られた複合材シェルの外観は、縦縞又は格子などの規則的な模様のみに限定されない。本発明の複合材シェルの複数の装飾片20は、1つの装飾片20の強化用繊維21が別の1つの装飾片20の強化用繊維21に対して、適宜、非平行に延びるように、無方向に配置されてもよい。複数の装飾片20に光が放射されると、光の多様な反射が形成される。本発明の複合材シェルは、わずかに撓められさえすれば、光の多様な反射を生み出し、異なる視覚効果を示す。
【0020】
その他の点では、
図5から
図8に関し、複数の装飾片20が重ね合わせられ、様々な深さの視覚的効果が形成される。さらに、本発明では、重なり合う複数の装飾片の分量、及び、複数の装飾片20のうちそれぞれ2つの装飾片20の重ね合わせの面積は、調節可能である。本発明では、光の多様な反射に加えて、様々な深さによる視覚的効果が生み出される。二次元の視覚的効果に関しては、複数の装飾片20の強化用繊維21の配向、複数の装飾片20の配向、及び複数の装飾片20の輪郭を任意に調節して、多様な視覚的効果を形成することができる。また、重なり合う複数の装飾片の分量、及び、複数の装飾片20のうちそれぞれ2つの装飾片20の重ね合わせの面積を調節することにより、様々な深さの三次元の視覚的効果を形成することができる。
図9に関して、本発明の製造方法によって作られた複合材シェルは、携帯電話を保護するための携帯電話の保護ケースに適用することができる。本発明の複合材は、様々な電子機器を保護するための様々な保護ケースに適用されてもよく、多様な特有の視覚的効果を顧客に提供する。