(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ナノ秒パルスバーストのメガヘルツ圧縮
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20220927BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20220927BHJP
A61N 1/08 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
A61N1/08
(21)【出願番号】P 2021524318
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 US2019058847
(87)【国際公開番号】W WO2020096836
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-04-30
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513080302
【氏名又は名称】オールド ドミニオン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】OLD DOMINION UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】パコモフ,アンドレイ,ジー.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,シュウ
(72)【発明者】
【氏名】パコモヴァ,オルガ,エヌ.
(72)【発明者】
【氏名】カシオラ,マウラ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0161086(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0121728(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0109122(US,A1)
【文献】特表2017-518805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気パルスを送達して電気エネルギーの閾値を下げて生体効果を誘発するためのシステムであって、
コントローラと、
細胞または生体組織の近くに配置されるように適合された複数の電極を含むアプリケータと、
1つ以上のパルス発生器であって、前記1つ以上のパルス発生器が各々、1000ns未満の持続時間を有するサブマイクロ秒パルスを生成するように構成されている、1つ以上のパルス発生器と、を備え、
前記コントローラが、
1)前記アプリケータから、0.1メガヘルツ(MHz)以上の周波数でサブマイクロ秒パルスの列を印加する
とともに、2)前記細胞または生体組織に基づいてサブマイクロ秒パルスの列のパラメータを、自動的に選択しまたはユーザが選択できて、前記周波数が前記細胞または生体組織の有効放電時間よりも短くなるようにして、前記生体効果を誘発するのに必要な前記電気エネルギーの閾値を下げるように構成されている、システム。
【請求項2】
前記コントローラが、1MHz以上で前記サブマイクロ秒パルスの列を印加するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記サブマイクロ秒パルスの列が、1kV/cm未満の電界強度を有する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記サブマイクロ秒パルスの列が、サブマイクロ秒のバイポーラパルスの第1の列と、サブマイクロ秒のバイポーラパルスの第2の列とを含み、前記第1の列および前記第2の列は、生物学的に効果がなく、前記複数の電極から離れた領域において重ね合わせることにより生物学的に有効なユニポーラパルスが得られるように構成されている、請求項1~3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラが、前記サブマイクロ秒パルスの列の前記サブマイクロ秒パルスの電圧の振幅が20V以下であるように、前記1つ以上のパルス発生器を制御するように構成されている、請求項1~4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラが、前記サブマイクロ秒パルスの列の周波数を設定または選択するための1つ以上のユーザ入力を受信するように構成されている、請求項1~5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラが、前記サブマイクロ秒パルスの列の前記サブマイクロ秒パルスの電圧の振幅または持続時間を設定または選択するための1つ以上のユーザ入力を受信するように構成されている、請求項1~6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の電極が、針電極を備える、請求項1~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記アプリケータが、ハンドヘルドアプリケータであるように構成されている、請求項1~8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記1つ以上のパルス発生器が、1ns~900nsの持続時間を有する前記サブマイクロ秒パルスを生成するように構成されている、請求項1~9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記サブマイクロ秒パルスの列が少なくとも100以上のパルスを含む、請求項1~10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
生体組織を処置するためのシステムであって、
コントローラと、
細胞または生体組織の近くに配置されるように適合された複数の電極を含むアプリケータと、
1つ以上のパルス発生器であって、前記1つ以上のパルス発生器が各々、1000ns未満の持続時間を有するサブマイクロ秒パルスを生成するように構成されている、1つ以上のパルス発生器と、を備え、
前記コントローラが、前記アプリケータから、0.1メガヘルツ(MHz)以上の周波数で、サブマイクロ秒のバイポーラパルスの第1の列とサブマイクロ秒のバイポーラパルスの第2の列とを印可するように構成され、前記第1の列および前記第2の列は、生物学的に効果がなく、前記複数の電極から離れた領域において重ね合わせることにより生物学的に有効なユニポーラパルスが得られるように構成されている、システム。
【請求項13】
前記コントローラが、前記1つ以上のパルス発生器に、高周波数の、サブマイクロ秒のパルス電界の100を超えるパルスを送達させる
ように構成されている、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記1つ以上のパルス発生器が複数のパルス発生器を含み、前記コントローラが、前記複数のパルス発生器を調整し、前記複数のパルス発生器の各々からのサブマイクロパルスを組み合わせて、サブマイクロ秒のバイポーラパルスの前記第1の列およびサブマイクロ秒のバイポーラパルスの前記第2の列のうちの少なくとも一方を形成するように構成されている、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
前記高周波数の、サブマイクロ秒のパルス電界が、800V/cm以下の電界強度を有する、請求項
13または請求項13を引用する請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記高周波数の、サブマイクロ秒のパルス電界が、1メガヘルツ以上の周波数を有する、請求項
13、15および請求項13を引用する請求項14のいずれかに記載のシステム。
【請求項17】
前記第2の列が前記第1の列に対して位相シフトされている、請求項12~16のいずれかに記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラが命令のセットを格納している機械可読有形媒体を含み、前記命令のセットが、前記コントローラに、前記高周波数の、サブマイクロ秒のパルス電界の前記周波数、振幅、または前記持続時間を設定または選択するためのユーザ入力を受信させるように構成されている、請求項
13または請求項13を引用する請求項14~17のいずれかに記載のシステム。
【請求項19】
前記複数の電極が、電極の第1のセットと電極の第2のセットとを含む、請求項
12~18のいずれかに記載のシステム。
【請求項20】
前記
1つ以上のパルス発生器の各パルス発生器が、正相および逆相を有するサブマイクロ秒のバイポーラパルスを生成するように構成されている、請求項
1~19のいずれかに記載のシステム。
【請求項21】
前記複数の電極がタングステン棒電極を有する、請求項1~20のいずれかに記載のシステム。
【請求項22】
前記システムが、単離された細胞、腫瘍、皮膚、肝臓、腎臓、神経、脳、脊椎、肺、筋肉、脂肪組織、呼吸組織、胃腸組織、膀胱、および生殖組織のうちの1つ以上の処置のために構成されている、請求項1~21の
いずれかに記載のシステム。
【請求項23】
前記サブマイクロ秒パルスが減衰されている、請求項1~22のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許は、2018年11月8日に出願された、「MEGAHERTZ COMPRESSION OF NAMOSECOND PULSE BURSTS」と題された米国仮特許出願第62/757,739号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による援用
本明細書に記載されているすべての公開物および特許出願は、個々の公開物または特許出願ごとに参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
連邦政府が後援する研究に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH/NIHLBI)によって授与された助成金番号R01HL128381、および空軍科学研究局(AFOSR)、助成金番号FA9550-15-1-0517の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0004】
本明細書に記載の装置および方法は、低電圧(例えば、<20V)および高周波数(例えば、メガヘルツ)で一連のナノ秒電気パルスを印加するための生物学的処置装置および方法に関する。
【背景技術】
【0005】
ナノ秒範囲のパルスを使用した電気処置は、医学、研究、およびバイオテクノロジーで多くの用途を有する。用途には、例えば、細胞および組織の電気刺激および活性化、細胞分化および細胞死の誘導、腫瘍および組織の切除、除細動などが含まれる。通常、ナノ秒範囲の電気パルスを使用する処置は、所望の生体効果のために局所電界閾値を超えるために高電圧を使用する。例えば、所望の生体効果に応じて、単一ナノ秒パルスの閾値は、単一パルスの場合は約数kV/cmであり得、これは、より短いパルスの場合はより大きくなり得る。例えば、2.5kV/cmは、200nsパルスによる心筋細胞の活性化のための典型的な閾値であり、1.8kV/cmは、300nsのパルスでHEK293細胞におけるカルシウムトランジェントを誘導するための典型的な閾値であり、6kV/cmおよび1kV/cmは、それぞれ60nsおよび600nsのパルスによるCHO細胞の易透化のための典型的な閾値である。さらに、1Hz~1kHzの繰り返しレートで複数のナノ秒電気パルスを送達すると、通常は相加的に効果が増加するが、閾値電界を減少させることはなく、またはせいぜい閾値の適度な減少をもたらす(例えば、2~3倍)。
【0006】
低電圧でナノ秒パルスを使用して所望の生体効果を達成するように電気パルスを提供することが望ましく、これにより、より安全でより低コストの処置が可能になり得る。
【発明の概要】
【0007】
従来、サブマイクロ秒の電気療法は、生体効果を引き出すために、通常1~50kV/cm超の高電界を必要とすると考えられていた。本明細書に記載されるように、本発明者らは、著しく低い電界を使用して、パルスが、高速バースト、例えば、最大数MH、に圧縮されるときに、時間的加算を行うことによってこの要件を克服できることを見出した。強力なナノ秒パルス電界(nsPEF)を使用するこの技術は、細胞の活性化、ナノエレクトロポレーション、および特に心室心筋細胞や末梢神経線維などの神経を含む細胞の電気的励起、膜エレクトロポレーション、ならびに/または細胞の死滅に使用され得る。サブマイクロ秒の電気バースト(100~1000パルス)のメガヘルツ圧縮は、著しく低いエネルギー密度(例えば、約0.01~0.15kV/cm)での励起を可能にし、および/または以前よりも低いエネルギー密度(例えば、約0.4~0.6kV/cm)でのエレクトロポレーションを可能にし得る。いくつかの変形形態では、励起およびエレクトロポレーションの閾値が分離されているため、膜を破壊することなく複数の励起サイクルが実行され得る。エネルギーのこれらのサブマイクロ秒バーストの効率は、例えば、パルス持続時間または繰り返しレートのいずれかを増加させることによって、デューティサイクルとともに増加し得、および/または、例えば、パルス持続時間またはパルス数のいずれかを増加させることによって、「オン」の合計時間を増加させることによって増加し得る。いくつかの変形形態では、電気エネルギーのサブマイクロ秒バーストの効率は、振幅および持続時間がバーストの時間平均振幅および持続時間にほぼ等しい単一の「長い」パルスの効率と一致し得る。高周波数(例えば、5kHz以上、10kHz以上、100kHz以上、200kHz以上、500kHz以上、1MHz以上など)およびサブマイクロ秒の電気バーストを伴う低電界の使用は、したがって、励起閾値を下げる、および/またはエレクトロポレーションを容易にするための効率的な方法を提供し得る。
【0008】
したがって、本明細書に記載されるのは、非常に低い電界値(例えば、ターゲット組織で1kV/cm未満)であるが、高い周波数(例えば、メガヘルツ)で、サブマイクロ秒範囲のパルス電界を使用して、1つ以上の望ましい生体効果および/または生理学的効果を誘発し得る方法および装置(例えば、システム、デバイスなど)である。
【0009】
例えば、本明細書に記載されるのは、生体組織のターゲット領域を処置して生体効果を誘発するための方法であり、この方法は、サブマイクロ秒のパルス電界を生体組織に通すことを含み、パルス電界は、生体組織のターゲット領域で1kV/cm未満の振幅を有し、パルス電界は、0.1メガヘルツ以上(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)でパルス状にされる。サブマイクロ秒のパルス電界は、例えば、1000ns以下のナノ秒範囲のパルスを含み得る。
【0010】
生体効果は、電気刺激(例えば、活動電位の誘発、電圧感受性イオンチャネルの活性化、荷電イオンの流入の誘発、1つ以上の細胞の脱分極など)、ポレーション、免疫応答の誘発、細胞を介した物質の転送など、のうちの1つであり得る。
【0011】
皮膚、肝臓、腎臓、神経、脳、脊椎、肺、筋肉、脂肪、呼吸器、胃腸、膀胱、および生殖のうちのいずれか1つ以上を含む、任意の適切な生体組織をターゲットにすることができる。特に、組織は、癌を含むがこれに限定されない疾患組織であり得る。
【0012】
また本明細書に記載されるのは、本明細書に記載の方法のいずれかを実行するように構成されている生体組織を処置するための装置(例えば、システム)である。例えば、システムは、コントローラ、生体組織の近くに配置されるように適合された電極のセットを備えるアプリケータ、および1つ以上のパルス発生器を含み得、各パルス発生器は、サブマイクロ秒のパルス(例えば、1000ns以下の持続時間を有する)を生成するように構成され、コントローラは、0.1メガヘルツ超の周波数(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)で一連のサブマイクロ秒パルスを印加するように構成されている。システムは、1kV/cm未満、例えば、0.01~0.15kV/cm、または0.6kV/cm未満の電界強度を生成するように構成され得る。アプリケータによって印加される電圧の振幅は、20V以下であり得る。コントローラは、複数のパルス発生器を調整して、複数のパルス発生器の各々からのナノ秒パルスを組み合わせるように構成され得る。
【0013】
例えば、生体組織を処置するためのシステムは、複数のパルス発生器、および1つ以上のプロセッサを備えるコントローラを含み得、コントローラは、1つ以上のプロセッサに、ナノ秒のパルス電界を生体組織に通す動作を実行させるための命令を格納している機械可読有形媒体を含み、パルス電界は、1kV/cm未満の振幅を有し、パルス電界は、0.1メガヘルツ以上(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)でパルス状にされる。
【0014】
また本明細書に記載されるのは、組織のターゲット領域において生体効果を誘発する方法であり、複数の空間的に分離されたパルス電気エネルギー源が同時に駆動されて、パルス状(例えば、サブマイクロ秒パルス)の電気エネルギーを組織に印加する。例えば、生体組織を処置して生体効果を誘発するための方法は、第1のナノ秒パルス電界をターゲット領域に送達することであって、第1のナノ秒パルス電界の各パルスは、1マイクロ秒以下の持続時間である、送達することと、第1のナノ秒パルス電界と同時に、第2のナノ秒パルス電界をターゲット領域に送達することであって、第2のナノ秒パルス電界の各パルスは、1マイクロ秒以下の持続時間である、送達することと、ターゲット領域に合計パルス電界を形成することであって、合計パルス電界は、第1および第2のナノ秒パルス電界の重ね合わせを含み、かつ1kV/cm未満の振幅を有し、合計パルス電界は、0.1メガヘルツ以上(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)のパルス周波数を有するパルスを含む、形成することと、を含み得る。
【0015】
また本明細書に記載されるのは、パルス発生器の動作の方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、高周波数のサブマイクロ秒のパルス電界を生成することを含み、高周波数のサブマイクロ秒のパルス電界は、1kV/cm未満の電界強度、0.1メガヘルツ以上(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)の周波数を有し、各パルスは、1000ns未満の持続時間を有する。いくつかの実施形態では、1つ以上のパルス発生器の動作の方法は、第1のナノ秒パルス電界を送達することであって、各パルスは持続時間が1マイクロ秒未満である、送達することと、第1のナノ秒パルス電界と同時に、第2のナノ秒パルス電界を送達することであって、各パルスは持続時間が1マイクロ秒未満である、送達することと、第1および第2のパルス電界を合計して、1kV/cm未満の電界強度および0.1MHz以上(例えば、0.5MHz以上、1MHz以上など)の周波数を有する第1および第2のサブマイクロ秒パルス電界の重ね合わせを含む、高周波数のサブマイクロ秒パルス電界を送達することと、を含む。
【0016】
これらの方法のいずれかにおいて、第1および第2のナノ秒パルス電界のうちの少なくとも1つは、バイポーラパルスを含み得(および好ましくは両方とも)、これは、放出された電界の供給源(例えば、電極、アンテナなど)の近くの効果を低減し得る。
【0017】
また本明細書に記載されるのは、生体組織を処置するためのシステムであって、それは、複数のパルス発生器と、1つ以上のプロセッサを備えるコントローラとを含み、コントローラは、1つ以上のプロセッサに第1のナノ秒パルス電界を生体組織を通してターゲット領域に通過させることであって、第1のナノ秒パルス電界の各パルスは、持続時間が1000ns以下である、通過させることと、第1のナノ秒パルス電界と同時に、第2のナノ秒パルス電界を生体組織を通してターゲット領域に通過させることであって、第2のナノ秒パルス電界の各パルスは、持続時間が1000ns以下である、通過させることと、ターゲット領域に合計パルス電界を形成することであって、合計パルス電界は、第1および第2のナノ秒パルス電界の重ね合わせを含み、1kV/cm未満の振幅を有し、合計パルス電界は、0.1メガヘルツ以上のパルス周波数を有するモノポーラパルスを含み、さらに各パルスの持続時間が1000ns以下である、形成することと、の動作を実行させるための命令を格納している機械可読有形媒体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の新規の特徴は、以下の特許請求の範囲に具体的に記載されている。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、およびその添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【
図1】本明細書に記載のサブマイクロ秒(例えば、ナノ秒)の電気パルス列の例であり、低いピーク電圧(例えば、20V未満)、およびパルス間の高周波数(例えば、メガヘルツ)を有する(例えば、連続するナノ秒パルス間に通常500ns未満の間隔を有する)。本明細書に記載の方法および装置は、サブマイクロ秒パルスに言及し、これは、概して、約1マイクロ秒以下の持続時間を有するパルスを含むが、いくつかの変形形態では、10μs以下(例えば、10000ns以下)のパルスを含み得る。例えば、いくつかの用途では、サブマイクロ秒パルスは各々、0.1ns~1000ns(例えば、50~500ns、100~400nsなど)である場合がある。
【
図2A】例えば、パルス間に100μsの間隔を有する、周波数10kHzで100nsのパルス列(下)を示す例である。各パルスは、任意の単位で上のトレースに示されている細胞の膜内外電位差の増加と放電とを誘発し、この例では、細胞は、8μsの放電時間を有する。閾値レベルは、上部の破線によって示されている。
【
図2B】
図2Aと同様であるが、周波数200kHz、または各パルス間は5μsでパルス化している。
【
図2C】
図2Aおよび
図2Bと同様であるが、周波数1MHz、または各パルス間は1μsでパルスしている。示されているように、この周波数では、細胞膜は次のナノ秒パルスの前に完全に放電せず、その結果、膜電位は、わずか数パルス後に閾値(閾値1)を超え、追加のパルス後に第2の閾値(閾値2)を超え始めている。
【
図3】低エネルギー(例えば、低電界)および高周波数(例えば、メガヘルツ範囲)でナノ秒範囲の電気パルスを印加するための装置の一例の概略図である。例えば、装置は、電源を制御するコントローラと、約0.1ns~1000nsのパルス幅、0.1V~20Vの振幅、および0.1MHz~30MHzの周波数を有するパルスを印加するように構成された1つ以上のナノ秒パルス発生器とを含むように構成され得る。
【
図4A】
図3に示されるようなデバイス用のパルス発生器の回路図の一例を図示する。
【
図4B】1000ns未満に分離された(例えば、0.1MHz以上の周波数を有する)ナノ秒パルスの列を送達するためにコントローラによって制御され得る複数のパルス発生器を含む、低電界および高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒電気パルスを印加するための装置の概略図の例である。
【
図4C】
図4Bに示されるようなデバイスによって形成されるナノ秒の列の例であり、
図4Cでは、(
図4Bからの)パルス発生器が、パルス列内の各パルスの生成を担うことが示されている。
【
図5】低電界および高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒パルスを生成するように構成されたパルス発生装置の別の例である。
図5では、パルス発生器を使用して、バイポーラパルスを生成することができる。
【
図6】メガヘルツ範囲の低電圧で(例えば、異なるアプリケータおよび/または均一なアプリケータの異なる電極から)空間的に分離されたナノ秒パルスの印加を制御および/または調整するように構成されたパルス発生装置(例えば、システム)の別の変形形態の概略図である。このアプリケータは、本明細書に記載されているように、バイポーラナノ秒パルス化で特に有用であり得る。
【
図7】低電界およびメガヘルツ周波数でナノ秒パルスを細胞に印加するための実験用セットアップの例である。
図7のセットアップはまた、細胞の画像化を可能にする。
【
図8A】低電界(例えば、85V/cm)およびメガヘルツ周波数(例えば、3.33MHz)でのナノ秒パルスによるマウス心室心筋細胞の励起の例を図示する。
図8Aでは、3.33MHzで200nsパルスのパルス列(パルス間で100ns分離している)が10秒で印加された。
図8Aは、カルシウム活性化(Fluo-4色素放出、左の列)および結果として生じる細胞収縮(DIC、右の列)のタイムラプス記録を示す。画像は上から下まで0.24秒間隔で撮影された。同じ実験で撮影された次の画像(最大48秒、図示せず)は、追加の変更を明らかにしていない。バーストパラメータおよびバースト送達の開始(矢印)が示されている。
【
図8B】低電界(例えば、150V/cm)およびメガヘルツ周波数(例えば、3.33MHz)でナノ秒の電気パルスを印加することによる不可逆的な細胞損傷(例えば、細胞のポレーション、細胞死の誘発)の例を図示する。
図8Bでは、ナノ秒の電気パルスの列がマウス心室細胞に印加され、200nsパルスのパルス列が、10秒の時点で3.33MHz(パルス間で100ns分離している)で印加された。
図8Bは、より高い振幅バーストに起因する不可逆的な細胞膜損傷および細胞再成形の選択されたタイムラプスを示す。画像の各ペアが撮影された時間が、図の右側に示されている。
【
図9】160~340V/cmで1000ナノ秒のパルス(例えば、3.33MHz、200ns幅)のバーストによる心室心筋細胞の反復励起の効果を図示する。励起は、縦線によって示された時間に印加された。励起により、細胞質ゾルのカルシウム濃度が急上昇し、Fluo-4色素を使用して画像化された。励起の第1の閾値は160V/cmで達し、カルシウムの非破壊的な流入をもたらした。400V/cmより上で、細胞破壊が発生した。100V/cmでの同じバーストは、効果を引き起こさなかったが、400V/cmでは、励起に続いて長引くCa2+の増加があった(細胞膜へのエレクトロポレーション的損傷の兆候)。
【
図10】
図9に示したものと同様の心室心筋細胞の反復励起を示す別の例である。励起の閾値はわずかに異なるが、同様の効果が見られる。
【
図11】
図11Aは、1000ナノ秒のパルス(3.33MHz、200ns幅のパルス)の列(例えば、バースト)に曝されたマウス心室心筋細胞における励起、可能なエレクトロポレーション、および明確なエレクトロポレーションの閾値電界を示す棒グラフである。励起は、Fluo-4色素で画像化された細胞質ゾルCa2+濃度における短いスパイクによって証明された。刺激後の低振幅の自発的Ca2+変動の出現は、エレクトロポレーション的膜破壊(「おそらくエレクトロポレーション」)の可能性のある兆候と見なされた。観察の40秒以内に静止レベルに戻らないCa2+の制御されない増加(
図9の下部のトレースなど)は、エレクトロポレーションの証拠と見なされた。
図11B-11Eは、FluoVolt色素で測定した単離された心室心筋細胞(VCM)の活動電位閾値を図示する。
図11Bは、すべて100nsの間隔を有する、100ns、200ns、または400nsのパルスのバーストに対するパルス数の効果を示すグラフであり、パルス数を増やすと、すべての持続時間について同様に閾値が減少したことを示している。
図11Cは、「オン」の合計時間に対してプロットされた閾値がパルス持続時間に依存しなかったことを示すグラフである。
図11Dは、より低い時間平均電界でのより短い高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルス励起VCMのバーストを示すグラフである。
図11B~
図11Dのすべてについて、平均±s.e.、n=6~10。
図11Eは、持続時間が50~600nsの1000パルスのバーストについて、
図11Dと同じ結果を示すグラフである。パルス間間隔は、0.09から4.8μsまで変化させた。平均±s.e.、n=25~30。
【
図12A】CHO細胞に2MHzのナノ秒パルス列を印加した場合の効果をまとめたグラフ(この例では、ナノ秒パルスは580V/cmで300nsの持続時間である)。エラーバーを含めて、調べた8つの細胞すべての平均値を示す線が含まれている。
図12Aは、300nsのパルスの圧縮された列(例えば、バースト)によるCHO細胞のエレクトロポレーション、具体的には、バースト後の8つのCHO細胞の代表的なグループにおける細胞質ゾルCa 2+応答の時間経過を示す(矢印)。黒の実線は個々の細胞からのデータであり、点のある曲線はそれらの平均値+/-s.e.である。
【
図12B】
図12Aに示されるのと同じデータに基づく、ナノ秒パルスの印加後の経時的なCHO細胞のエレクトロポレーション(左がDIC画像、右がFluo-4発光)を図示する。この図は、示された時点での同じ細胞の代表的なDIC(左側)およびFluo-4発光(右側)の画像を示す。
【
図13】バイポーラキャンセルを図示する。
図13(下部)は、CHO細胞におけるバイポーラおよびユニポーラナノ秒パルスによるCa
2+活性化を示す(平均+/-s.e.、n=20~28)。
図13の上部は、バイポーラおよび単相のパルス形状および振幅を示す。
【
図14A】オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒パルス列(例えば、バースト)のメガヘルツ圧縮を図示し、これは、高周波数(例えば、メガヘルツ)の2つのバイポーラナノ秒パルス列を、高周波数(例えば、メガヘルツ)のユニポーラ電気ナノ秒パルス列に重ね合わせることによって遠隔刺激を提供し得る。このアプローチは、矩形列バイポーラパルスおよび刺激電極の線形アレイについて図示されている。2対の独立した接地絶縁電極(a-a’およびb-b’)は、右側に示すように、2つの同期したナノ秒のバイポーラ電気パルス列を送達する。ナノ秒バイポーラパルスの各々は、少なくとも部分的なバイポーラキャンセルのために電気刺激に対して本質的に非効率的であるが、オーバーラップするターゲット領域(c-c’)でのそれらの重ね合わせは、示されるように、a-a’とb-b’との間でパルス列の周波数を調整することによって高周波数(例えば、メガヘルツレート)で局所的に生物学的に有効なナノ秒ユニポーラパルス列を形成する。c-c’エリアにおけるユニポーラナノ秒パルス列の形成は、電極a-a’およびb-b’の間に印加されるエネルギーのタイミングおよび振幅を制御することによって達成され得る。バイポーラキャンセルは、電極付近のパルス電界の効果を低減することがあるため、電極またはその近くに関連していること、遠隔ターゲット領域では、モノポーラ場は、オーバーラップするターゲット領域において非常に高速な(例えば、メガヘルツ)パルシングを使用するときに、電荷の蓄積に起因する閾値の低下から恩恵を受けることがあることに留意されたい。
【
図14B】
図14Aと同様であるが、ターゲット領域c-c’で組み合わされるパルス列(例えば、サブマイクロ秒のパルス列)の使用を図示する。
【
図15A】一実施形態によるCANCANの概念を図示する概略図を示す。上部:A-A’およびB-B’は2つの独立した電極の対である。AとBとの間の線は、電極の各対から電界が送達されるエリアを表し、領域C-C’で互いに重なり合って無効になっている。下部:電極の各対は、それ自体が生物学的に非効率的な減衰正弦波(DSW)を送達する。B-B’からのDSWが位相シフトされると、2つのDSWがC-C’エリアで生物学的に有効なユニポーラパルスに重なる。この領域では、「キャンセルのキャンセル」またはCANCANがある。
【
図15B】
図15Aと同様であるが、ターゲット領域c-c’で組み合わされるパルス列(例えば、サブマイクロ秒のパルス列)の使用を図示する。
【
図16A】60%のデューティサイクルで印加されたパルス電気エネルギーの例を示す。
【
図16B】340nsパルス、5または100パルス/バーストのバーストによる励起の閾値に対するパルス繰り返しレートの効果を示すグラフである。
【
図16C】示されたサブマイクロ秒のパルス持続時間とは無関係に、閾値時間平均電界がバースト持続時間とともに減少することを図示するグラフである(この例では、11~18nsが最短設定の持続時間範囲である)。
【
図16D】示された持続時間の単一パルスおよび高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストの励起閾値の比較を示す棒グラフである。
図16B~
図16Dにおいて、平均±s.e.、n=5~9、および単離されたカエル坐骨神経を使用して収集されたデータ。
【
図17】
図17A-17Fは、Ca
2+取り込みまたはYO-PRO-1色素取り込みによって証明された高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストによるCHOおよびHEK細胞のエレクトロポレーションの一例を図示する。
図17Aは、(CHO細胞において)100パルス、400nsのバーストが0.1~0.3MHzを超えるとますます効率的になることを示すグラフである。ラベルは、電界をkV/cmで示し、データポイントあたり20~30細胞。
図17Bは、示されたデューティサイクル(矢印)で500ns、0.64kV/cmの1000パルスによって誘発された、(HEK細胞における)YO-PRO-1取り込みの時間経過を示すグラフである。
図17Cは、繰り返しレートに対してプロットされた
図17Bからの最後のデータポイントを示すグラフであり、1MHz未満では効果がないことを示している。
図17Dは、HEK細胞において同じバースト(矢印)によって誘発された、Ca
2+トランジェントを示すグラフである。
図17Eは、示された電界で1つの500μsパルスによって誘発された同様のCa
2+トランジェントを示すグラフである。
図17Fは、単一の500μsパルスの電界に対して(および高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストのデューティサイクルに対して)プロットされた
図17Dおよび
図17EのグラフからCa
2+トランジェントの最大振幅を示す。すべてのパネルについて、平均±s.e.、n=11~27。HEK細胞は、低コンダクタンス溶液において刺激された。
【
図18】
図18A-18Dは、高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストに24時間暴露した後のEL-4細胞の生存率を図示するグラフである。
図18Aは、エレクトロポレーションキュベットに送達される高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスの形状を図示する。破線は、時間平均振幅を示す。
図18Bは、約1.9kV/cmの低電界に対する100Hzおよび3MHzバーストのパルス数の効果を図示する。
図18Cは、5kV/cmの高電界に対して同じ依存性を示すグラフである。
図18Dは、示されたパラメータでの高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストが細胞の約50%を殺すのに対し、単一パルス(その持続時間はバースト持続時間に等しく、振幅はバーストの平均に等しい)の効果は小さいことを図示する棒グラフである。平均±s.e.、n=5~6。*p<0.0001、t検定。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書に記載されているのは、0.1メガヘルツ以上(MHz)の周波数でサブマイクロ秒(例えば、ナノ秒)範囲の電気パルスを使用して1つ以上の望ましい生体効果よび/または生理学的効果を誘発し得る方法および装置(システム、デバイスなど)であり、これは、他の技術と比較して実質的により低い電界の使用を可能にし得る。便宜上、本開示によるこの電気パルシングは、メガヘルツ圧縮、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮、またはナノ秒パルス列(例えば、バースト)のメガヘルツ圧縮と呼ばれる場合がある。通常、非常に短く、高強度のパルス(例えば、高電界、典型的には1kV/cmよりはるかに大きい)を指す従来のナノ秒パルス電界処置とは異なり、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮は、はるかに低い強度を使用し得、例えば、5~10倍以上の減少となる。例えば、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮は、1kV/cm未満(例えば、900V/cm未満、800V/cm未満、750V/cm未満、700V/cm未満、600V/cm未満、500V/cm未満など)である非常に低い電界値を使用し得(例えば、ターゲット部位で)、これは、ナノ秒電気パルスを非常に速いレートで、例えば、メガヘルツ(MHz)の範囲で印加することによって可能になる。メガヘルツの範囲には、0.1MHz以上(例えば、0.2MHz以上、0.4MHz以上、0.5MHz以上、0.7MHz以上、1MHz以上など)が含まれ得る。驚くべきことに、本明細書に記載の装置および方法は、ナノ秒電気パルスの生物学的効率をもたらし、非常に低い電界値で、具体的には、以前は効果がないと考えられていた電界値で、生体効果を誘導することが示されている。本明細書に記載の装置は、例えば、典型的には、1マイクロ秒以下(例えば、約900ns未満、約800ns未満、約700ns未満、約600ns未満、約500ns未満、450ns未満、400ns未満、350ns未満、300ns未満など)である、連続するナノ秒電気パルス間の間隔を有する、メガヘルツ範囲の低振幅ナノ秒電気パルスのパルス列(例えば、バースト)を送達するように特に構成されている。
【0020】
上記のように、従来の高強度、サブマイクロ秒パルシングは、短いパルス持続時間で電界(EF)閾値を超えるために、高パルス電圧に制限されていた(例えば、サブマイクロ秒パルシングを印加する場合)。この閾値は、パルスが短くなると数十kV/cmまで増加する。ナノ秒範囲内の神経刺激の強度-持続時間曲線は、通常、100nsおよび1nsのパルスに対してそれぞれ約1~240kV/cmの閾値を必要とする。例えば、単一の高強度、サブマイクロ秒のパルス電界刺激について報告された閾値には、1.4~2.4kV/cm(例えば、200nsパルスによる心筋細胞の活性化の場合)、1.8kV/cm超(例えば、300nsパルスでHEK293細胞にカルシウムトランジェントを誘導する場合)、6kV/cm~1kV/cm(例えば、60nsおよび600nsパルスによるCHO細胞の易透化の場合)が含まれる。したがって、これらの閾値に到達するために必要なパルス電圧は法外に高いと長い間信じられてきた。例えば、2cmのギャップを有する2つの平行平板電極間の腫瘍を切除するために10kV/cmを達成するには、通常、電極に20kVを印加する必要がある。このような電圧は、ほとんどのパルス発生器の能力を超えており、高電圧の危険を提示し得る。本明細書に記載の方法および装置は、これらの問題を回避し得る。
【0021】
例えば、本明細書に記載の方法および装置は、同等または優れた効果を提供しながら、より低い電界強度を使用し得る。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、多様な細胞および組織タイプの非化学的活性化を引き起こし、高用量では、壊死および/またはアポトーシス経路による高度に選択的な細胞殺傷をもたらすために、例えば、イオン選択性ナノポアの活性化(例えば、興奮性細胞と非興奮性細胞の両方での細胞質ゾルCa2+の動員、および細胞膜の内向き整流性およびイオン選択性安定ナノポアの開放)を含む神経筋刺激のために、高強度、サブマイクロ秒パルスの電界が効果的に使用されることが以前に示された場所に使用され得る。したがって、本明細書に記載の方法および装置はまた、除細動、末梢神経および脳深部刺激、ならびに組織または細胞の切除(例えば、癌の切除)にも使用され得る。
【0022】
複数の刺激を送達すると、ターゲット細胞の膜に段階的な電圧が蓄積し、パルス間間隔が、誘導された膜内外電位差の緩和よりも短い場合、最終的に励起またはエレクトロポレーションの閾値に達する結果になり得る。哺乳類細胞の充電時定数は、通常0.1~1μsである。時間的加算は、3~5時定数(連続パルス間で95および99%の放電に対応)よりも小さいパルス間間隔でのみ期待でき、これは、数十kHzから1MHzを超える繰り返しレートに変換される。本明細書に記載されるように、1Hz~5kHzの繰り返しレートで複数のサブマイクロ秒パルス電気エネルギーを送達することは、単一パルスよりも強い効果を引き起こし得るが、閾値を下げることはないか、または閾値を適度に下げるかのどちらかである。
【0023】
例えば、本明細書に記載されているのは、例えば、10~150V/cmの電界レベルでの励起およびエレクトロポレーションを容易にするサブマイクロ秒の電気パルスバーストのMHz圧縮である。記載したように、効率はパルスおよびバーストのパラメータに依存し得、これも従来の(「長い」)サブマイクロ秒の電気刺激とは異なる。
【0024】
図1は、低電圧(または低電気密度、V/cm)および高周波数、例えば、メガヘルツ、で印加されたナノ秒パルス列(例えば、ナノ秒電気パルス列)の一例を図示する。
図1において、パルス列は、各々がナノ秒範囲108以内の持続時間(例えば、持続時間約0.1ns~1000ns、例えば、約0.1ns~約950ns、約1ns~約900ns、約1ns~約800ns、約1ns~約750ns、約1ns~約700ns、約1ns~約600ns、約1000ns未満、約900ns未満、約800ns未満、約750ns未満、約600ns未満、約500ns未満など)を有する複数のナノ秒パルス101を含み得る。ナノ秒パルスは、約1000ns未満、約900ns未満、約800ns未満、約750ns未満、約700ns未満、約600ns未満、約500ns未満など、のパルス間隔106によって分離され得る。このため、ナノ秒電気パルスの周波数は、約0.1MHz~約50MHz、約0.1MHz~約40MHz、約0.1MHz~約30MHz、約0.1MHz~約25MHz、約0.1MHz~約20MHz、約1MHz~約50MHz、約1MHz~約40MHz、約1MHz~約30MHz、約1MHz~約25MHz、約1MHz~約20MHz、0.1MHz超、0.2MHz超、0.5MHz超、0.1MHz超、1.5MHz超、2MHz超、2.5MHz超など、メガヘルツの範囲にあり得る。
【0025】
図1に示されるようなパルス列のナノ秒パルスによって印加されるエネルギーは、比較的低くてもよい。例えば、各ナノ秒パルスによって印加されるピーク電圧は、約500V未満、約100V未満、約50V未満、約40V未満、約30V未満、約25V未満、約20V未満、約0.5V~50V、約1V~25Vなどであり得る。同様に、印加されたナノ秒パルスの結果として生じる電界(例えば、組織での)は、例えば、約1000V/cm未満、約900V/cm未満、約800V/cm未満、約700V/cm未満、約600V/cm未満、約550V/cm未満、約1V/cm~約1000V/cm、約10V/cm~約900V/cmなどであり得る。
【0026】
一般に、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮は、直接または間接的に生体細胞および/または組織に印加され得る。例えば、印加は、1つ以上の組織貫通電極を介して、および/または表面電極を介して、患者の体内に行われ得る。いくつかの変形形態では、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮を使用する電気刺激が、単離された細胞および/または単離された組織に印加され得る。
【0027】
特定の作用理論によって拘束されることなく、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮を使用するナノ秒パルスの印加は、印加された電気エネルギーがターゲット細胞または細胞領域に蓄積することを可能にし得、複数の小振幅(例えば、約500V未満、約100V未満、約50V未満、約40V未満、約30V未満、約20V未満、約0.1V~50V、約1V~30V、約1V~20Vなど)パルスを合計して、生体効果の閾値を超えるレベルにすることを可能にする。例えば、生細胞の有効放電時間よりも短い周波数でメガヘルツ範囲で印加されるナノ秒電気パルスは、所望の効果のための閾値を超えるまで電荷を合計する結果となり得る。異なる哺乳動物細胞の場合、細胞(例えば、細胞膜)の放電時定数(τ)は、通常、小さい細胞の場合の約100nsから大きい細胞の場合の約1マイクロ秒まで変化し(そして、組織内に密に詰まった細胞の場合はさらに長くなることがあり)、したがって、放電持続時間が1τ、2τ、3τ、および4τに等しい場合、誘導膜電位はそれぞれ約37%、15%、および5%、2%に減少する。ナノ秒電気パルスが放電速度よりも速い速度でパルス列に印加される場合(例えば、膜が完全に放電されていない場合)、誘導電位が、残りの電位の上に加わり得ることが可能である。複数のパルスがすべて十分に短いパルス間間隔で印加されると、誘導膜電位は徐々に上昇し、閾値電位を超えて生体効果を誘導することができる。例えば、
図2A~
図2Cを参照。例えば、誘導電位の時間的合計を可能にするために、4τがパルス間の最長の時間間隔であると仮定すると、パルス間間隔は、小さい細胞の場合は400ns、大きい細胞の場合は2,500nsを超えることはない(不規則な形状を有するさらに大きな細胞の場合は、おそらく最大10,000)。より短いパルス間間隔は、閾値膜内外電位差のより速い蓄積を可能にし得る。実際には、これは、ナノ秒電気パルス列を圧縮して、0.1~2MHzの高い繰り返しレートで刺激を送達し得ることを意味し、これよりさらに高いレート(最大1,000MHz)を用いると、より短いナノ秒電気パルスおよびより小さな細胞の振幅閾値をさらに下げるのに役立つ。
【0028】
図2Aの例では、ナノ秒パルスが、10kHzの周波数のパルス列で細胞または組織に印加される(例えば、各パルス間で約100μs分離されている)。下部のトレースに示すように、個々のパルスの持続時間は10nsである。上部のトレースは、各パルスの結果として課せられた膜電位(任意の単位)を示す。この例の組織または細胞の場合、放電時間は約8μsである。水平の破線203は、生体効果(例えば、刺激、ポレーションなど)の最小閾値を表し、これは、膜(外側の細胞膜および/または1つ以上の内側の細胞膜を含み得る)の電位が閾値に達したときにトリガーされ得る。組織または細胞は、異なるまたは増加する効果に対応する複数の閾値を有する場合がある。
【0029】
図2Bおよび
図2Cは、ナノ秒パルスバーストのメガヘルツ圧縮を図示し、メガヘルツ圧縮が、パルス振幅を増加させることなく、細胞または組織が生体効果の1つ以上の閾値に到達し、それを超えることを可能にすることを示す。例えば、
図2Bでは、各100nsパルス(下部のトレース)が、膜内外電位差(上部のトレース、任意の単位)を誘導する。エネルギーはパルス間間隔ほど速く放電されないため、示されるように、ナノ秒パルスの継続的な印加により、課せられた膜電位が閾値203を超えるまで、エネルギーは蓄積し、これは、対応する生物効果をもたらし得る。
図2Bでは、わずかに高いレート(例えば、各パルス間が約5μsの100nsパルス)が、何らかの生体効果を誘導し得る低い閾値203に到達するのを助けるより少ない時間的合計をもたらす。
図2Cでは、高い繰り返しレート(例えば、1MHz、パルス間が1μs)が適用されるとき、課せられた膜電位は、より速く蓄積し、はるかに高い閾値205に到達し得る。
【0030】
ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮を適用するためのシステム
図3~
図5は、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮を提供するために使用され得るシステムの例を図示する。例えば、
図3は、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮を使用してナノ秒パルシングを適用するためのシステム301の一例の概略図である。
図3において、システムは、少なくともコントローラ303、1つ以上のパルス発生器305、電源、および1つ以上のアプリケータ309を含み得る。システムは携帯型であり得、電源は、電池および/または壁電源(例えば、コンセント)から電力を受け取る電力調節回路を含み得る。電池は、充電式であってもよい。システムは、少なくとも部分的に囲まれていてもよい。いくつかの変形形態では、アプリケータは、1つ以上のケーブルを介して接続され得る。あるいは、アプリケータは、コンパクトなハンドヘルド構成でシステムの残りの部分と統合されてもよい。
【0031】
コントローラは、周波数がメガヘルツ範囲(例えば、約0.9MHz~100MHz)にあるように、個々のパルスが固定または調整可能なパルス間間隔によって分離される、固定または調整可能なナノ秒パルス列を印加するように構成され得る。パルス間間隔は、約1000ns~50ns、約1000ns~75ns、約1000ns~80ns、約1000ns~90ns、約1000ns~100nsなどのように、例えば、1200ns~50ns(例えば、メガヘルツ周波数範囲内)であり得る。いくつかの変形形態では、コントローラは、印加される刺激をこの周波数範囲内に制限するように構成または適合され、いくつかの変形形態では、装置は、ユーザがこのメガヘルツ範囲内で適用される周波数/パルス間間隔を調整することを可能にするように、コントローラと通信する1つ以上のユーザ入力(ノブ、ダイヤル、タッチスクリーンなど)を含み得る。代替的または追加的に、コントローラは、ユーザが、パルスの数、パルスが印加される持続時間、および/または印加される電圧を調整することを可能にするように構成され得る。印加される電圧は、典型的には、所定の範囲内であり得る(例えば、約0.1V~約50V、約0.1V~40V、約0.5V~30V、約1V~約20V、約50未満、約40V未満、約30V未満、約25V未満、約20V未満などの電圧振幅)。いくつかの変形形態では、電界の強度は、選択され得る(例えば、約1V/cm~約900V/cm、約1V/cm~約800V/cm、約10V/cm~約750V/cm、約10V/cm~約700V/cm、約50V/cm~約650V/cm、1000V/cm未満、900V/cm未満、800V/cm未満、750V/cm未満、700V/cm未満、600V/cm未満、500V/cm未満など)。これらの範囲のいずれも、低電圧範囲内と見なされ得る。述べたように、いくつかの変形形態では、コントローラは、ユーザ(例えば、医師、外科医、技師など)が、本明細書に記載の範囲のいずれかを含む、所定の値のセットまたは範囲から選択することを可能にし得る。いくつかの変形形態では、ユーザは、パルス数、パルス持続時間(ナノ秒範囲内)、パルス振幅(例えば、所定の低電圧範囲内のピーク電圧)、パルス間間隔、および/または周波数(例えば、メガヘルツ範囲内)などのうちの1つ以上のプリセット値を提供され得る。いくつかの変形形態では、装置は、プリセットされ得るか、または適切なパラメータを自動的に選択し得、ユーザは、開始もしくは停止のみを選択し得るか、または限られた数のパラメータ状態から選択し得る。
【0032】
コントローラは、システムの動作を制御すること、および/またはユーザから制御入力を受け取ることを可能にするために、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアを含み得る。例えば、コントローラは、1つ以上のプロセッサ、1つ以上のタイミング回路、1つ以上のメモリなどを含む回路を含み得る。述べたように、システムは、1つ以上の入力(例えば、制御)を含み得、および/または別のデバイスからの入力(例えば、有線または無線接続を介して)を受け取り得る。システムは、デバイス動作のインジケータ(例えば、準備完了、スタンバイなど)および/または設定(パルス数、周波数、電圧振幅など)を含む、1つ以上の出力(例えば、モニター、ディスプレイ、LEDなど)を含み得る。
【0033】
述べたように、本明細書に記載のシステムのいずれかは、1つ以上のアプリケータを含み得る。アプリケータは、電極のアレイを含む2つ以上の電極を含み得る。電極は、組織貫通型または非組織貫通型であり得る。例えば、組織貫通電極は針電極であり得、非組織貫通型は、1つ以上の表面電極であり得る。
【0034】
本明細書に記載の装置のいずれかにおいて、コントローラは、
図3に示すように、1つ以上(例えば、複数)のパルス発生器の起動を調整し得る。n個のパルス発生器の各々は、調整された時間にナノ秒パルスを印加するように構成され得、これらのパルスは、単一の刺激に組み合わされ得る。個々のプリーズ発生器は、上記のような低電圧範囲内のピーク電圧で、ナノ秒範囲(例えば、約0.1ns~約1000ns)のパルス持続時間を有するパルスを送達するように構成され得る。
図3は複数のパルス発生器を図示しているが、様々な用途では1つのパルス発生器のみが使用されてもよいことを理解されたい。
【0035】
例えば、
図4Aは、使用され得るパルス発生器回路の例を概略的に図示する。
図4Aでは、回路400は、N型(nチャネル)MOSFETスイッチ(M1)によって切り替えられるプリチャージコンデンサ(C1)を含む。スイッチは、1つ以上の低電圧MOSFETドライバによってトリガーされ得る。この例では、ツェナーダイオード403を変圧器出力に配置して、電圧をクランプし得る。出力電圧は、(例えば、上記の低電圧範囲内に)設定され得る。設定は、R、L、Cおよび値を選択することによって変更され得、超高速パルシングに好都合の臨界減衰モードを作成する。
【0036】
図4Bに図示されるように、いくつかの実施形態では、
図4Aに概略的に示されるパルス発生器回路などの複数のパルス発生器回路は、上記のように、一緒に結合され、コントローラによって制御され得る。
図4Bでは、各ブロック(1、2、3、および4)は、コントローラによって制御され、かつ低電界(例えば、低電圧範囲)を有するメガヘルツパルシング周波数内のパルスの複合され/組み合わされたナノ秒パルス列を形成するために使用され得るパルス発生器を表す。
図4Bでは、単一のパルス発生器は、高周波数で(例えば、マルチMHz範囲内で)ナノ秒持続時間のパルスを生成する必要はなく、代わりに、いくつかのパルス発生器がグループ化されてパルスを生成する。パルスレジームにおいて比較的低い電圧(例えば、<1kV、上記の低電圧範囲を含む)を使用する場合、RCスイッチモジュールを横方向に組み合わせて、任意の振幅、幅、および間隔の多相のパルスを生成することができる。各モジュールは異なるDC電源で充電できるため、異なる出力電圧を提供することができる。各モジュールは個別にトリガーできるため、様々なパルス幅(PW)と遅延が可能である。あるいは、モジュールのすべてまたは一部が同一のパルスを生成し得、これは、上記のように組み合わされ得る。
図4Cは、
図4Bに示されるような、4つの別個であるがリンクされたパルス発生器から発生するナノ秒持続時間パルスの組み合わされた列の一例を図示する。この例では、パルスは無極性であり(例えば、すべて正またはすべて負になる)、同等のパルスとして示されており、述べたように、いくつかの変形形態では、異なる持続時間および/または異なる電圧を有するパルスが、同じパルス列内に適用され得る。いくつかの変形形態では、以下でより詳細に説明するように、ナノ秒の持続時間のバイポーラパルスがメガヘルツ周波数範囲で送達され得る。
【0037】
例えば、
図5は、バイポーラ刺激を提供するように構成されたパルス発生器の概略図の別の例を図示する。
図5では、パルス発生器500は、正のパルシング回路と負のパルシング回路とを組み合わせて、バイポーラパルス発生器を作成した。
図5において、負のパルシング回路のスイッチ接続は、ドレインから接地への(および電源から負への)充電であり、これは、正のパルシング回路に示されているものと反対である。同じ負荷抵抗を、正および負の両方のパルシング回路に使用できる。電圧およびパルス幅は、差動で調整することができる。正または負のパルシング回路のうちの1つだけをトリガーすることもでき、それにより、正または負のパルスのどちらかが送達される。任意の長さの遅延を、任意の間隔で挿入することができる。
図5に示されるような複数のバイポーラ刺激装置は、
図4Bに示されるように組み合わされ得、メガヘルツ周波数刺激を可能にする。
図4A~
図5Bに示されるパルス発生器は、本明細書に記載の方法を実行するために使用され得るパルス発生器の単なる非限定的な例を表す。記載された周波数でナノ秒パルスの列を生成するために、他のパルス発生器が使用または構成されてもよい。
【0038】
本明細書に記載のシステムのいずれも、
図6に示すように構成することもでき、単一のコントローラが、異なる場所(例えば、体上または体内の)からナノ秒電気パルスを印加するために使用され得るパルス発生器の2つ以上のセットを制御する。
図6において、システム601は、単一のコントローラ603(いくつかの変形形態では、2つ以上のリンクされたコントローラであってもよい)を含み、パルス発生器605..605’および615..615’の2つ(または2つのセット)の各々からメガヘルツ周波数範囲の低電圧でナノ秒パルスを印加することによって、電気刺激を制御および調整する。バイポーラパルシングの文脈で以下により詳細に説明されるように、これは、電極付近の効果を最小限に抑えた非侵襲的電気刺激を可能にし得る。同じ電源607または異なる電源を使用して、電力を供給することができる(例えば、パルス発生器に)。各々がナノ秒パルスを印加するための電極を含む1つ以上のアプリケータ609、609’を使用することができる。いくつかの変形形態では、既知のまたは所定の距離および/または幾何形状によって分離され得る、異なる電極セットを有する単一のアプリケータが使用され得る。
図7に示される例の1つの変形形態では、電極の先端間の約140μmで、約16Vを印加するパルスは、約570V/cmに相当した。
【0039】
低電圧ナノ秒パルスが高周波数(例えば、メガヘルツ)で適用される、ナノ秒パルスバーストのメガヘルツ圧縮の適用が、効果を実証するためにインビトロモデルを使用して調べられた。例えば、
図7は、
図5に示されるようなシステムに結合された一対の電極707、707’を通して高周波数で低電圧ナノ秒パルスを印加しながら、1つ以上の培養または外植された細胞を光学的に(例えば、顕微鏡画像化システム705に結合されたレーザー703を使用して)検査した試験装置700の一構成を図示する。
図7に示されるものと同様のシステムを使用して、メガヘルツバースト圧縮の使用が、インビトロでいくつかのタイプの哺乳動物細胞(例えば、CHO、HEK293、および酵素的に単離されたマウスの主要心室心筋細胞、VCM)において検証された。ナノ秒範囲の電気パルスの効果が、Fluo-4蛍光インジケータを使用した細胞質ゾルCa2+活性化のタイムラプス記録および細胞形状変化の透視記録によって記録された。細胞のタイプやその他の条件、およびナノ秒範囲の電気パルスの強度に応じて、これらの観察結果は、細胞膜の易透化、電位依存性カルシウムチャネルの開放、収縮活動、および/または細胞再形成、または膜破壊による他のタイプの生体効果を反映していた。
【0040】
図8A~
図8B、
図9、
図10、
図11A、および
図12A~
図12Bは、サブマイクロ秒(例えば、ナノ秒)パルスの試験の例を図示し、例えば、パルス持続時間が50~300nsであり、主に200nsおよび300nsの刺激に焦点を合わせている。パルスは、約150~450nsのパルス間間隔に対応する、約1.6~3.33MHzの繰り返しレートで、100~5,900パルスのバーストで送達された。パルス振幅は約2~17Vの間で変化し、結果として生じる電界は、細胞位置でそれぞれ約70~570V/cmであった。26個の個々のVCMでのナノ秒範囲の処置における合計約200パルスの電気刺激および他の細胞タイプ(>120個の個々の細胞)での処置における80ナノ秒を超えるパルスが検査された。(ナノ秒範囲のパルス電界を使用する標準的な処置と比較して)非常に低いパルス振幅にもかかわらず、細胞応答は一貫して記録された(
図8A~
図12Bに示されるように)。VCMの活性化および収縮を引き起こした最低の電界は、わずか85V/cmであった(例えば、
図8A、1,000パルスのバースト、200nsのパルス持続時間、3.33MHzを示す)。これは、200nsのパルス(単一の200nsパルスを含む)に対する約2.5kV/cmの公開された閾値と比較して、電界の>30分の1への減少であった。わずかに高い電界、約160V/cmは、試験された18VCMのうち17VCMでカルシウム活性化(励起)および細胞収縮を引き起こし、機能的であり、このタイプの応答を生成できることが試験され、証明された。閾値は、細胞が電界に対して平行もしくは垂直に配向されているか、またはいずれか他の角度に配向されているかについての有意な依存性を示さなかった。メガヘルツ周波数範囲のナノ秒パルスを使用するこの低電界では、個々のVCMでの励起を、エレクトロポレーションまたは損傷の兆候なしに、複数回繰り返すことができる(例えば、
図8Bを参照)。電界を励起閾値を超えて約2倍に増加させると、結果として、自発的なスパークレットや細胞質ゾルのCa2+の静止レベルの上昇などの適度な膜破壊が観察された。電界がわずか約400+/-18V/cmにさらに増加すると、不可逆的なVCMエレクトロポレーションが引き起こされ、細胞質ゾルのCa2+は回復せず、VCMは健全な「レンガの形」から「ミートボールの形」に変形し、恒久的なVCM損傷の兆候が認められた。例えば、
図8Bおよび
図11Aならびに
図9の最後のトレースを参照)。一般に、励起応答はまた、400または500パルス、0.16kV/cmで3.33MHzなどのより短いパルス列で、ならびにより短い100nsパルス(3900パルス、2MHz、570V/cm)で観察された。VCMは、2秒ごとに印加される数十の圧縮ナノ秒電気パルスバーストの列によって繰り返し励起された(データは示していない)。
【0041】
図8A~
図8Bに示されるように、高周波数、サブマイクロ秒、低電界電気エネルギーのバーストは、マウス心室心筋細胞(VCM)の刺激および/またはエレクトロポレーションに使用され得る。いくつかの変形形態では、高周波数、サブマイクロ秒、低電界刺激が、除細動に使用され得る。本明細書に記載されるように、以前に制限された高電圧の必要性は、高速バーストを印加することによって相殺することができる。例えば、
図8A、
図9、および
図11Aに示すように、1000、200nsのパルスを3.33MHzのバーストに圧縮すると、わずか80~200V/cmでの励起が可能になり、これは、単一の200nsの衝撃を用いるよりも10~20倍低い。そのような高周波数、サブマイクロ秒、低電界刺激バーストによる励起(
図8Aおよび
図9に示すような)は、より強い電界による膜損傷後の持続するCa2
2+上昇および細胞収縮とは明らかに異なっていた(
図8Bに示されるように)。単一の低周波数(例えば、<1MHz)、サブマイクロ秒、高電界(例えば、1kV/cm超)の刺激パルスによるVCM励起は、励起閾値で損傷を与え、異常な活動電位と長続きするCa
2+上昇とを引き起こした。この現象は、概して真実であり、低周波数、サブマイクロ秒、高電界刺激とは対照的に、本明細書に記載の高周波数、サブマイクロ秒、低電界刺激は、実質的に損傷が少なく、一方非常に効果的であった。
【0042】
例えば、
図9に示すように、MHzバーストによる繰り返しの刺激は損傷を引き起こさなかった。エレクトロポレーションの最初の兆候は、350~400V/cmで観察され(例えば、
図8Bおよび
図11Aを参照)、つまり、励起閾値の2~3倍(p<0.001)であり、大きな安全ウィンドウを可能にする。サブマイクロ秒のパルス刺激間の固定された100ns間隔で、閾値は、100nsから400nsまでのパルス幅のべき関数として減少した(例えば、
図11Bを参照)。閾値は、バースト内の「オン」の合計時間によって決定されたのに対し、個々の高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルス持続時間は重要ではなかった(例えば、
図11Cを参照)。バースト持続時間に対してプロットされた閾値時間平均電界は、より短いパルスに対してより小さかった(
図11D)。
【0043】
この予期しない結果は、VCMが1000パルスのバーストによって励起された別のセットの実験で検証され、パルス持続時間は50nsから600nsまで異なり、パルス間間隔は90nsから4.8μsまで変えられた。バースト持続時間に対して時間平均閾値電界値をプロットすると、より短いパルスに対して有意により小さい値が得られ(
図11E)、VCMでの以前の実験と一致するが、神経励起が対照的である(例えば、以下の
図16A~
図16Dを参照)。これは、サブマイクロ秒パルシングの特定の効果を示し、従来のパルスとは明らかに異なり得る。
【0044】
HEK293およびCHO細胞では、ナノ秒範囲のパルスのバーストのメガヘルツ圧縮により、Ca2+トランジェントが誘発され、
図12A~
図12Bに示すように、刺激後40秒以内に完全または部分的な回復が観察された。一度に1つの細胞としてナノ秒範囲のパルスを受けたVCMとは対照的に、これらの培養細胞は小集団として暴露された。応答の確率および振幅は、より高い電界(試験された範囲:130~570V/cm)、より高いパルス数(試験された範囲:100~1,000)、およびより短いパルス間間隔(試験された範囲:150~300ns)で増加した。公開されている研究との比較を容易にするために、パルス持続時間は300nsで一定に保たれた。より低い周波数での典型的なナノ秒パルシング(単一パルシングを含む)は、約1.8kV/cmで300nsパルス(複数可)に対する応答の閾値を有していた。CHO細胞は電位依存性Ca2+チャネルを発現しないため、Ca2+トランジェントはエレクトロポレーションの結果であると考えられる。
【0045】
この実験的研究に基づいて、ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮(例えば、メガヘルツ周波数範囲での低電圧ナノ秒パルスの印加)は、励起およびエレクトロポレーションの両方の電気エネルギー閾値の大幅な低減を可能にした。驚くべきことに、励起およびエレクトロポレーションの閾値の明確な分離(例えば、
図11Aを参照)、ならびに損傷のない繰り返し励起もあり、これは、ナノ秒範囲の従来の電気パルス場を使用する場合に問題であった。
【0046】
ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮の適用
上で簡単に論じたように、本明細書に記載の方法および装置(例えば、デバイス、システム、アプリケータなど)のいずれかを使用して、組織を処置することができる。腫瘍組織を含めて、皮膚、肝臓、腎臓、神経(脳、脊椎、末梢)、肺、筋肉、脂肪、呼吸器、胃腸、膀胱、生殖などの組織を含むがこれらに限定されない任意の適切な組織を処置することができる。本明細書に記載の低電界(例えば、低電圧)および高周波数(例えば、メガヘルツ)でのナノ秒パルスは、生物学的機能を操り、疾患を処置するために使用され得る。このような電気刺激に対する応答には、神経および筋肉の励起、免疫細胞(または別様に免疫応答を刺激すること)および内分泌細胞の活性化、細胞分化、エレクトロポレーション、壊死およびアポトーシス細胞死を含むがこれらに限定されない、様々な生体効果が含まれ得る。したがって、低電界およびメガヘルツ周波数でのナノ秒パルスの使用は、電気刺激が適用され得る事実上すべての適応症で使用され得る。一般に、本明細書に記載の高周波数ナノ秒パルス発生器およびそれらを使用する方法のいずれも、医学療法に使用することができる。
【0047】
例えば、本開示の方法および装置は、心臓ペーシング、除細動、筋力トレーニングおよびリハビリテーション、疼痛管理、パーキンソン病の症状の緩和、精神障害、および癌の切除に使用され得る。それらはまた、神経筋および精神疾患の診断および研究に使用され得る。
【0048】
例えば、本明細書に記載のデバイス、システム、および方法は、様々な切除処置(例えば、放射線ベース)、皮膚科処置(例えば、皮膚癌などの様々な皮膚状態の処置)、一般外科処置(例えば、膵切除)、心臓病学(例えば、弁修復)、婦人科(例えば、子宮摘出術)、脳神経外科(例えば、腫瘍切除)など、において利用され得る。
【0049】
本明細書に記載の方法のいずれも、励起および/または切除もしくは他の組織処置のいずれかのために、興奮性組織(神経組織を含むがこれに限定されない)に適用され得る。例えば、本明細書に記載されているのは、神経および心筋などの興奮性組織の刺激、てんかん、パーキンソン病および脳卒中などの神経障害の処置のための方法および装置である。心臓障害には、心房細動および心室細動を含むことができる。上で実証したように、1つまたはグループの細胞の膜電位は、本明細書に記載の方法を使用して直接励起することができる。本明細書に記載の方法および装置は、血小板などの細胞における分泌を刺激するために使用することができる。
【0050】
本明細書に記載の方法および装置は、特に、脳、末梢神経、筋肉、および心臓の処置における使用が見出され得る。上記のように、これらの方法は、心臓ペーシング、除細動、パーキンソン病の脳深部刺激療法、骨格筋の機能を回復するための機能的ナノ秒電気パルス、ならびに線維筋痛症、うつ病、認知症、てんかん、糖尿病性ニューロパチー、および他の多くの新たな用途のための疼痛管理に使用され得る。特に、本明細書に記載の低電界(例えば、低電圧)および高周波数(例えば、メガヘルツ)でのナノ秒パルスは、神経および筋肉のターゲットにおいて活動電位(AP)を調節または導入することが有益であり得る任意の適応症を処置するために使用され得る。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、静止電位の調節(例えば、シフト)のために使用され、シナプス効率を変えることができる。AP誘導は、挿入もしくは埋め込まれた電極を通して、または表面から非侵襲的に、ターゲットに過渡電圧勾配を生み出すことによって達成される。代替的または追加的に、本明細書に記載の方法および装置のいずれもエレクトロポレーションに使用することができる。
【0051】
本明細書に記載の組織のいずれも、メガヘルツ周波数範囲の低電圧ナノ秒パルスの列を印加することにより、ナノ秒パルスのメガヘルツ圧縮の適用を使用して選択的に調節され得る。いくつかの変形形態では、本明細書に記載の方法は、少なくとも部分的に、細胞のサイズおよび/または細胞の膜含有量に基づいて細胞を調節し得る。例えば、これらの方法は、他の細胞と比較して、放電のための高い時定数(例えば、より高い静電容量)を有する細胞に影響を及ぼし得、これは、細胞の組成および/またはサイズの関数であり得る。
【0052】
例えば、低電界およびメガヘルツ周波数でのナノ秒電気パルスは、にきび、脂漏性角化症、ケロイド、伝染性軟属腫、アクロコルドン、乾癬、乳頭腫、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)、黒色腫、黒皮症、脂漏性過形成、シリンゴマ、先天性毛細血管奇形(ポートワインしみ)、メラスマ、光線性角化症、黒色丘疹性皮膚炎、血管線維腫、皮膚腫瘍、皮膚の老化、しわの寄った皮膚、老年性血管腫、表皮/皮脂嚢胞、基底細胞癌腫、皮膚の老化、良性腫瘍、前癌性腫瘍、癌、およびいぼ、のうちの1つ以上の処置を含む、患者の皮膚を処置するために使用され得る。これらの方法および装置はまた、刺青除去、毛包破壊、瘢痕/ケロイドの減少、脂肪の減少、およびしわの減少を含む美容皮膚処置にも使用され得る。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、黒色腫を自己破壊させることによって処置するのに有用であり得る。一般に、これらの方法は、皮膚病変のインビトロ処置に有用であり得る。
【0053】
低電界(例えば、低電圧)および高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒電気パルスを印加するための本明細書に記載の方法および装置は、ナノ電気切除およびワクチン接種に有用であり得る。
【0054】
したがって、本明細書に記載の方法およびデバイスは、様々な疾患の処置に使用され得る。「疾患」は、癌性、前癌性、および良性、または当技術分野で知られている他の疾患を含む、組織の異常な、制御されていない成長に関連付けられる対象内または対象上の任意の異常な状態を含む。本発明の方法およびデバイスは、悪性、良性、軟組織、または固形として特徴付けられるかどうかにかかわらず、あらゆるタイプの癌、ならびに転移前および転移後の癌を含むすべての病期およびグレードの癌の処置に使用することができる。異なるタイプの癌の例には、胃癌(例えば、腹部癌)、結腸直腸癌、消化管間質腫瘍、消化管カルチノイド腫瘍、結腸癌、直腸癌、肛門癌、胆管癌、小腸癌、および食道癌などの消化器癌および胃腸癌、乳癌、肺癌、胆嚢癌、肝臓癌、膵臓癌、虫垂癌、前立腺癌、卵巣癌、腎癌(例えば、腎細胞癌)、中枢神経系の癌、皮膚癌(例えば、黒色腫)、リンパ腫、神経膠腫、絨毛癌、頭頸部癌、骨肉腫、ならびに血液癌、が含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
これらの方法および装置はまた、または代替的に、癌を切除し、腫瘍の処置を含む、新しい癌の成長に対する耐性を生成するために有用であり得る。腫瘍の例には、良性前立腺肥大症(BPH)、子宮筋腫、膵臓癌腫、肝癌腫、腎臓癌腫、結腸癌腫、基底前細胞癌腫、およびバレット食道に関連付けられた組織が含まれる。
【0056】
本明細書に記載の方法および装置は、遺伝子エレクトロトランスファーまたは「GET」に使用することができる。いくつかの変形形態では、癌を含む疾患は、腫瘍に導入される遺伝子(例えば、免疫応答を刺激する可能性のある遺伝子をコードする1つ以上のプラスミド)の移送によって処置され得る。例えば、黒色腫は、インターロイキン12(IL-12)の遺伝子を含むプラスミドを使用して処置され得、これは、ナイーブT細胞のTh1細胞への分化、ならびにインターフェロンガンマおよび腫瘍壊死因子アルファの産生を刺激し得る。あるいは、本明細書に記載の方法および装置のいずれかを使用して、特に腫瘍細胞を含む組織の細胞を穿孔し得る。これは、原形質膜を横切る小分子の輸送を可能にするのに十分な大きさの細孔を生成することによって細胞を透過性にし得る。
図8A~
図8Bに示されるように、可逆的および不可逆的エレクトロポレーションの両方が達成され得る。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、電気化学療法(ECT)に使用することができ、黒色腫、基底細胞癌腫、乳癌、およびカポジ肉腫を含むいくつかの皮膚腫瘍ターゲットの処置に使用することができる(ブレオマイシン、シスプラチン、または他の薬物の使用を含む場合がある)。本明細書に記載の方法および装置は、壊死につながることがある不可逆エレクトロポレーション(IRE)を引き起こすために使用され得る。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、他の適応症の中でもとりわけ、前立腺、脳腫瘍切除(神経膠腫を含む)、膵臓癌、結腸直腸肝転移、切除不能な腎腫瘍、および直腸新生物を処置するのに有効であり得る。
【0057】
本明細書に記載のナノ秒パルス列のメガヘルツ圧縮は、それらが細胞(複数可)の細胞内領域に浸透し得るため、癌を含む疾患の処置に特に有効であり得る。原形質膜を越えて浸透する能力(おそらくナノ秒範囲で最大振幅に達するパルス立ち上がり時間のため)は、通常、細胞内および細胞小器官内電荷が再分配されて、課された場をキャンセルするのに必要な時間よりもはるかに速い。これは、本明細書に記載の方法および装置が、ナノ秒範囲の電気パルスを印加することによって小さな細胞小器官を透過性にすることを可能にし得る(例えば、小胞、ミトコンドリア、小胞体、および核を含む)。
【0058】
本明細書に記載の方法および装置はまた、血小板の活性化に有用であり得(トロンビンの非存在下において)、例えば、これらの方法は、多血小板血漿のナノ秒範囲で電気パルスを印加して、創傷治癒を改善し、血流を増強するために使用することができる。
【0059】
上記のように、本明細書に記載のナノ秒パルスバーストのメガヘルツ圧縮を使用して、腫瘍の成長に影響を与えることができ、例えば、低電界および高周波数、例えば、メガヘルツで、ナノ秒範囲の電気パルスを用いて腫瘍を処置し、それにより、腫瘍が数日から数週間で消失し、免疫原性細胞死(ICD)の特徴を提示することがあり、例えば、ERから細胞表面へのカルレティキュリン転座、ATP放出、およびHMGB1放出などのDAMPを放出する。これらの方法はまた、転移を抑制するために使用され得る。
【0060】
高電圧(例えば、30kV/cm)を使用したナノ秒範囲のパルス電界の使用と同様に、本明細書に記載の方法はまた、薬物を使用せず、非常に速く、瘢痕を残さない処置を提供し得、1回または数回の処置だけで処置し得る。しかしながら、他のパルスレジームとは異なり、本明細書に記載の方法および装置は、所望の効果(免疫原性細胞死効果を含む)を達成するために大きな電界を必要としない。したがって、切除帯のサイズはより大きくなり得、より容易に適用され、および/または組織に耐性があり得る。
【0061】
本明細書で与えられる例は、図示および例示のみを目的とするものであり、記載される説明は、網羅的または限定的であることを意図するものではないことに留意されたい。
【0062】
バイポーラパルスターゲティングによるナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮
一般に、ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮、例えば、低電界および高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒パルスを提供するための本明細書に記載の方法および装置は、印加電気エネルギーのための複数の供給源(例えば、電極、アンテナなど)と共に使用され得る。例えば、二組の電極を使用して、組織上、組織内、または組織周辺の別々の領域から、印加されたエネルギーが合計される(例えば、重ね合わせによって)領域にエネルギーを印加し、メガヘルツ範囲(例えば、約1メガヘルツ以上)にある周波数でサブマイクロ秒パルスのパルス列を生成すると、おそらく細胞膜(複数可)で電荷の蓄積が起こり得、結果として生じるメガヘルツ圧縮は、単一パルスを含めてより低いレートでパルス状にされた印加電界と比較して、実質的により低い閾値で生体効果をトリガ-する結果となり得る。上記のように、これは、印加されるエネルギーの量に関連して、生体効果をトリガ-するための閾値の明らかな低下と見なされ得る。
【0063】
本出願のいくつかの実施形態において、ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮のための、例えば、低電界および高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒パルスを提供するための本明細書に記載の方法および装置は、電極またはその近く(非ターゲット領域)での電気パルシングの影響を最小限に抑えながら、電気パルスの印加から離れた処置ゾーンを特にターゲットにするために、バイポーラパルスの使用と組み合わせて適用され得る。2018年8月16日に出願された、米国出願第16/104,089号(「TARGETED REMOTE ELECTROSTIMULATION BY INTERFERENCE OF BIPOLAR NANOSECOND PULSES」)は、異なるがオーバーラップする組織の領域から特にターゲットのオーバーラップする領域(CANCANと呼ばれる)まで高電圧でバイポーラナノ秒パルスを使用することについて説明している。興味深いことに、
図13に示されるように、高電圧(例えば、高電界強度)でバイポーラナノ秒パルスを使用するナノ秒パルス活性化は、細胞膜における生体効果の活性化をもたらさない。以下により詳細に説明される
図13に示されるように、バイポーラナノ秒パルスの使用は、おそらくパルスのバイポーラの性質のために、組織に対するナノ秒パルスの効果を相殺するように見え、後半(例えば、パルスの負方向の部分)は、パルスの前半(例えば、正方向)部分に起因する電荷の移動を元に戻す。しかしながら、2つのバイポーラパルスが重なり合って同期していない場合、これは、例えば、パルスが組織の2つの異なる領域から異なる時間に印加される場合に発生し得、オーバーラップ領域の電界が重なって、オーバーラップ領域においてモノポーラパルスになり得る。したがって、オーバーラップ領域は、組織の残りの部分がバイポーラナノ秒パルシングの影響を受けない場合でも、結果として生じるモノポーラナノ秒パルシングの影響を受け得る。
【0064】
ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮をこのCANCAN効果と組み合わせて、深部組織領域でも非常に効果的な電気パルス(例えば、電気刺激を含むがこれに限定されない)を提供し得る。このメガヘルツ圧縮CANCAN技術は、ナノ秒パルシングのメガヘルツ圧縮を使用するときに効果を誘発するのに必要とされるエネルギーが、メガヘルツ圧縮なしで必要とされるエネルギーよりも劇的に低いため、特に効果的であり得る。この効果は、アンテナを使用してナノ秒バーストを高周波数(例えば、メガヘルツ範囲内)で放出することによってさらに強化され得る。
【0065】
したがって、本明細書では、異なる場所から高いレート(例えば、メガヘルツ)でバイポーラナノ秒電気パルスの複数の列を放出して、複数のバイポーラナノ秒パルス列が重なって、低電界でモノポーラナノ秒パルスの局所的な列を形成するオーバーラップの領域を形成するための方法および装置(例えば、
図7を参照)についても記載される。低電界で結果として生じる重ねられたモノポーラナノ秒パルスは、局所的なオーバーラップ領域において生体効果(例えば、刺激、ポレーションなど)を誘発する閾値を超えることがある。
【0066】
CANCANでナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮を使用すると、CANCAN効果が鮮明になる場合がある。CANCANのバイポーラキャンセルの使用をナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮と組み合わせるのはやや反直感的であり、メガヘルツ圧縮が単一の供給源からのバイポーラパルシング(例えば、低電界強度でのバイポーラのナノ秒パルスの単一列)に影響を与える可能性は低いためである。(従来のバイポーラナノ秒パルシングのように)すべてのパルスで即時放電があるため、バイポーラパルス列は、メガヘルツ圧縮を受ける必要がなく、これは、パルス間の電荷を時間的に合計することによって膜での電圧効果を高め得る。加えて、メガヘルツの繰り返しレートを使用すると、実質的に低い電界強度を適用して同等の生体効果を達成することが可能になるので、これらの方法および装置は、組織の厚さによる減衰を補償し得る。加えて、バイポーラパルスとユニポーラパルスの間にはるかに強い(例えば、より鮮明な)違いがあり得、これによりターゲティングの改善が可能になり得る。これは、例えば、興奮性組織(例えば、神経組織)において、電気的損傷なしに、電気パルスからの増強された生体効果(例えば、刺激)をさらに可能にし得る。例えば、いくつかの変形形態では、2つの同期された「CANCAN」パルス列が、4対の電極から生成され得、組織の深さ内でより長いパルスにオーバーラップし得る。
【0067】
本明細書に記載のメガヘルツ圧縮方法および装置は、パルスを放出する電極の複数のセットでのパルス電気エネルギーの効果を低減するためにバイポーラキャンセルと組み合わせて使用することができるが、これらの方法および装置は、バイポーラキャンセルを使用する必要がないことを理解されたい。上記のように、これらの方法および装置は、組み合わせ得る複数の場所からのパルス電界を適用する方法および装置を含めて、組織内での重ね合わせによって生体効果を生み出すためにパルスサブマイクロ秒エネルギーを適用する任意の方法または装置で使用され得る。
【0068】
したがって、本明細書に記載されているのは、高周波数での複数のオフセットナノ秒のバイポーラ電気パルス間のオーバーラップが、オーバーラップのターゲット領域に局在化される高周波数(例えば、メガヘルツ)を有するナノ秒のモノポーラ電気パルス列をもたらす複数の異なる場所から離れたオーバーラップの領域をターゲットにするために、オフセットされた複数の異なる場所の各々から高周波数(例えば、メガヘルツ)でナノ秒のバイポーラ電気パルスを実行するための方法および装置である。便宜上、それらを実行するためのこれらの方法および装置は、本明細書では、オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮と呼ばれ得る。
【0069】
例えば、本明細書に記載されているのは、電極を挿入せずに深部組織および器官において生体効果を選択的に誘発するために、電気パルスの印加から離れたナノ秒電気パルスの印加を特にターゲットにするためのオフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮である。ナノ秒の持続時間(およびメガヘルツの繰り返しレート)のバイポーラ刺激の局所的な重ね合わせは、ナノ秒電気パルスを利用する治療および診断処置の浸透の深さおよび精度を高め得る。これらの方法および装置の例示的な用途には、とりわけ、精神障害、パーキンソン病、および深部腫瘍のターゲット切除に対する疼痛管理を含むがこれらに限定されない、上記のもののいずれかが含まれ得る。
【0070】
オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮は、深いターゲットの選択的、非侵襲的、局所的な電気刺激を可能し得る。特定の実施形態では、本開示は、刺激極性の反転に続くそれらの刺激効果をキャンセルするためのナノ秒電気パルスの固有の特性の使用、ならびに所望の生物学的反応を誘発するための閾値を低下させ得る高周波数(メガヘルツ)刺激に関連する。いくつかの実施形態では、
図13に図示されるように、バイポーラナノ秒電気パルスの第2の位相は、第1の位相の刺激効果をキャンセルし、したがって、バイポーラ刺激全体がその半分よりも弱くなる。次に、2つのバイポーラ刺激をモノポーラ刺激に重ねると、キャンセルがキャンセルされ(「CANCAN」)、刺激効率が回復する。
図14Aの例は、2つのバイポーラパルス列が、電極から離れたエリアc-c’においてどのようにモノポーラ刺激を生成することができるかを示す。バイポーラパルスは、メガヘルツ周波数で繰り返され得る。この技術は、結果として生じる電界が低い(例えば、1kV/cm未満)場合でも、電極から離れた場所で選択的な電気刺激を可能にし得る。
【0071】
オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮のための方法および装置は、破壊が最小限であり得る(例えば、非侵襲的)。本明細書に開示される方法および装置はまた、典型的には、既存のアプローチよりも少ない手順ステップ、より低いコスト、およびより少ない細胞を伴う。加えて、本明細書に開示される方法および関連する態様はまた、一貫した正確に定義された電界の使用、効率的な媒体交換、および薬物の適用/除去、ならびに加えて無菌状態を伴い得る。
【0072】
図14Aにおいて、要素a-a’間の第1のナノ秒パルス列および要素b-b’間の第2のナノ秒パルス列は、相互の高調波として構成され得、その結果、領域c-c’における2つのパルス列の合計は、十分に高い周波数となり、その結果、生体効果(例えば、脱分極、ポレーションなど)をトリガ-するための電界の閾値は、合計されたパルス列によって満たされる。
図14Bは、同様の効果を図示し、組織のターゲットc-c’領域において約1メガヘルツを超える周波数のモノポーラパルス列を形成するために組み合わされるパルス列の使用を示しており、電界は比較的低くてもよい(例えば、<1kV/cm)が、それでも本明細書に記載されているような生体効果をトリガ-し得る。
【0073】
本明細書に記載のオフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮のための方法および装置は、目標とする非侵襲的エレクトロポレーションまたは電気刺激のためにバイポーラナノ秒電気パルスの固有の非効率性を克服し得る。本明細書に記載のオフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮は、バイポーラ電気パルスは単独で、低い生体効率を有するという事実を利用している。
図15Aに示されるように、1対の電極(A-A’)の間に適用される減衰波(例えば、減衰正弦波、DSWとして示される)は、生物学的に効果がない。位相シフトされた(電極B-B’の間に適用された)第2のDSWも同様に効果がない。しかしながら、2つのDSWの重ね合わせおよび同期により、2対の電極(C-C’)から離れた領域に生物学的に有効なユニポーラパルスが作成される。言い換えると、2つの生物学的に無効なDSWを重ね合わせる効果は、バイポーラナノ秒電気パルスのキャンセル効果をキャンセルし、ユニポーラパルスを作成する。この概念は、「キャンセルのキャンセル」またはCANCAN効果と呼ばれる。
図15Bは、同様の例であり、ターゲットc-c’領域において組み合わされて約0.1メガヘルツ以上の周波数(例えば、0.2MHz以上、0.5MHz以上、1MHz以上など)のモノポーラパルス列を形成するパルス列の使用を示しており、電界は比較的低くてもよい(例えば、<1kV/cm)が、それでも本明細書に記載されているような生体効果をトリガ-し得る。
【0074】
それ自体は非効率的である、2つの適切に成形されたバイポーラナノ秒電気パルス列の重ね合わせおよび同期は、生物学的に有効なユニポーラパルス列を遠隔で復元する。これは、電極から離れた特定の場所で、時間的に一致する後続の各位相中に生成された電界が互いに無効になるためであり、その結果、残っているのはユニポーラパルスとしての第1の位相だけである。この無効化は、2つの独立したナノ秒パルス列からの電界成分の方向が反対である場合に発生し、その領域において0kV/cmの|E|強度を生成する。
【0075】
CANCANを成功させるための主な目標の1つは、ナノ秒の電気パルス送達電極近くでユニポーラパルスと比較して低い効果を有しながら、遠隔でユニポーラと同等の効果を生み出すことである。電界モデリングの結果は、70%の第2の位相振幅が、50%の第2の位相振幅よりも電極の近くでより少ない電界無効化を提供し得ることを予測している。これは、次に、2つのナノ秒の電気パルス列が同期して送達されるときに、電極の近くでより良いバイポーラキャンセルをもたらし得る。したがって、いくつかの変形形態では、第1のパルス列の第2の位相のみの振幅は、位相Aの70%であり得、一方、第3の位相の振幅は、25%のままである。70%の第2の位相振幅では、電極付近の電界の無効化が少なくなり、バイポーラキャンセル効果が優勢になる。対照的に、電極間の中央では、効果は非同期送達とは最大に異なり、最大の電界無効化およびCANCANを示している。
【0076】
2つの生物学的に無効なバイポーラナノ秒パルス列を生物学的に有効なユニポーラパルス列に重ね合わせることによる遠隔エレクトロポレーション。キャンセルのキャンセル、またはCANCANと呼ばれるこの効果は、各バイポーラナノ秒パルスの同時位相中に生成された電界の方向が反対であり、お互いを無効にするときに発生し、電極から離れた領域にユニポーラ曝露のみを残し、一方、他の場所ではバイポーラのままである。その結果、CANCANは、ターゲットエレクトロポレーションのためのバイポーラナノ秒電気パルシングの固有の非効率性に依拠する。CANCANの効率は、達成されるバイポーラキャンセルの程度に正比例すると予想される。
【0077】
オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮による遠隔でのユニポーラパルスの形成は、非侵襲的に深いターゲットにアクセスする可能性を提示する。オフセットおよびオーバーラップするバイポーラナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮は、同様に電気刺激にまで及ぶことがある。
【0078】
上記のようなメガヘルツ圧縮および空間加算を利用した同様の効果は、バイポーラパルシングがなくても適用され得る。例えば、いくつかの変形形態では、ギガヘルツ周波数未満の複数の低電界モノポーラパルス列が放出され得、それ自体では生体効果はほとんどないが、ターゲット領域で空間的に合計すると、ナノ秒バーストのメガヘルツ圧縮をもたらすのに十分な高周波数(例えば、メガヘルツ範囲)のパルス列をもたらし、合計を考えると、領域において生体効果をトリガ-し得る。
【実施例】
【0079】
上記のように、組織または細胞(例えば、場合によっては、単離された組織または細胞、例えば、体から除去されたもの)を使用して、本明細書に記載の方法および装置が、細胞および組織を効果的に処置するために使用され得ることを確認した。単離された組織および細胞の例は例証のためのみであり、本明細書に記載のこれらの技術、方法、および装置(例えば、デバイス、システムなど)は、生きている人間または動物の無傷または半無傷の組織(例えば、器官など)で使用され得ることを理解されたい。
【0080】
例えば、
図7~
図13を参照して上で説明したように、本明細書で説明した方法および装置を例証するために細胞を使用した。例えば、付着細胞株を含む細胞:HEK293(ヒト上皮腎臓)、CHO-K1(チャイニーズハムスター卵巣)、およびマウス心室心筋細胞(VCM)が、タイムラプス蛍光イメージングアッセイに使用され、懸濁液ベースのEL-4細胞(例えば、マウスリンパ腫)が、生存率研究に使用された。VCMは、ランゲンドルフ灌流中の酵素消化によって成体DBA/2Jマウスから分離された。VCMは、ラミニンでコーティングされた10mmガラスカバースリップに播種され、48時間以内に実験に使用された。
【0081】
本明細書に記載の方法および装置は、電気的に興奮性細胞を刺激するために使用され得る。例えば、神経複合活動電位(CAP)は、ウシガエルアメリカ食用ガエルの神経(n.坐骨神経+n.腓骨筋)から誘発され、CAP記録が実行された。単離された神経が、両端で結紮され、140NaCl、5.4KCL、1.5MgCl2、2CaCl2、10グルコース、および10HEPES(pH7.3、290~300mOsm/kg、1.6S/m)を含む冷却生理溶液(mM)内に入れられた。CAPは、以下に説明する様々な発生器で誘発され、MP160データ収集システム(BIOCAP Systems、カリフォルニア州ゴリ-タ)で記録された。
【0082】
一部の実験では、1Hz~3ないし4MHzの繰り返しレートで5~1000パルスのバーストが使用され、個々のサブマイクロ秒パルシング持続時間は、11~500nsの範囲であった。持続時間が最大1msの単一パルスを使用して、様々なタイミングおよび強度パラメータでのサブマイクロ秒バーストによる生体効果を比較した。このような多様な刺激を様々な生物学的負荷(8~200オームのインピーダンス)に送達するために、本明細書に記載のようないくつかの高出力サブマイクロ秒発生器が使用され、場合によっては低電力モデル577デジタル遅延発生器(Berkley Nucleonics、カリフォルニア州サンラファエル)が、比較のために使用された(パルスパラメータの設定には柔軟性があるが、モデル577のパルス振幅の出力は200オーム負荷でわずか20Vに制限されていた)。本明細書で説明するように構成されたパルス発生器は、バースト持続時間および最小パルス持続時間を制限する場合があるが、100~200オームの負荷(カバースリップ上の付着細胞など)で最大約3kV、または8~10オームの負荷(細胞増殖培地を有するエレクトロポレーションキュベットなど)で最大500Vを送達することができる。キュベット曝露を除いて、これらの実験のパルスは通常、ユニポーラでほぼ矩形であり、立ち上がりおよび立ち下がり時間はパルス持続時間の15%未満であった(例えば、
図16Aを参照)。キュベット曝露の場合、200nsの持続時間(高さ50%)の採用設定での長い立ち上がりおよび立ち下がり時間は、三角形のパルス形状をもたらした。いくつかの実施例では、単一の、ほぼ矩形の、ユニポーラの長いパルス(例えば、数百マイクロ秒のパルス持続時間)の生成には、モデルS88刺激装置または特注のMOSFETベースの発生器のいずれかを利用した。いくつかの実施例では、パルスの形状および振幅は、TDS3052オシロスコープ(Tektronix、オレゴン州ビーバートン)を用いて制御された。
【0083】
細胞の刺激および易透化を示す実施例では、サブナノ秒パルシングに対する細胞応答は、タイムラプス蛍光イメージングによってモニターされて、膜電位の変化(例えば、FluoVolt色素で)または細胞質ゾルCa2+の増加(例えば、Fluo-4もしくはFluo-8色素、またはYO-PRO-1色素の取り込みで)のいずれかを検出した。膜電位およびCa2+インジケータは、細胞に事前にロードされていたが、YO-PRO-1は、実験全体を通して1μMで浴溶液に加えられた。いくつかの実施例では、浴溶液は、コンダクタンスを低下させ、エレクトロポレーションを促進にするために、上で定義された生理溶液、または(示された場合)等浸透圧ショ糖溶液と1:9で混合された同じ溶液のいずれかであった。パルス発生器に接続された一対のタングステン棒電極(直径100μm、ギャップ140~170μm)を、選択した細胞(または細胞の小集団)がそれらの先端間の中央にくるように顕微鏡の視野内に位置付け、次に、電極をカバースリップ表面の上50μmに正確に持ち上げた。パルスパワーシステムは、例えば、Digidata 1440AボードおよびClampexソフトウェア(Molecular Devices、カリフォルニア州フォスターシティ)を使用したTLLパルスプロトコルによって、トリガ-され、画像取得と同期された。電界は、有限要素ソルバーCOMSOL Multiphysics(ストックホルム、スウェーデン)を使用した3D数値シミュレーションによって計算された。
【0084】
いくつかの実施例では、細胞生存率アッセイが実行された。EL-4細胞を増殖培地(10%FBSを含むDMEM)に1.2 106/mlで再懸濁し、100μlのアリコートを1mmギャップのエレクトロポレーションキュベットに入れた。サブマイクロ秒パルスのバーストが室温で印加され、曝露による最大(断熱)加熱が、他の場所で説明されているように計算され、摂氏6度を超えなかった。細胞をインキュベータに戻し、Presto Blue代謝アッセイ(ThermoFisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して24時間での生存率を測定した。
【0085】
末梢神経刺激
本明細書に記載の方法、装置は、興奮性細胞を刺激するために使用され得る。例えば、末梢神経が、上記の方法および装置を使用して刺激された。神経線維は、神経に損傷を与えることなく、高周波数(例えば、メガヘルツ)、サブマイクロ秒、低電界(例えば、1kV/cm未満)の刺激によって繰り返し励起することができる。例えば、
図16B~
図16Dに示されるように、神経は、サブマイクロ秒の刺激(
図16Aに示されるものと同様)を使用して励起された。
図16Bでは、340nsのパルスが、5パルスおよび100パルスのバーストで、1Hz~2MHzの繰り返しレートで印加された。この実施例では、約7kHzまでのレートで加算がなかったため、バーストの閾値は、単一の340nsパルスの閾値とおそらく等しい。10kHzを超えるレートでの加算は、べき関数に続く閾値の低下によって見られ、100パルスのバーストではより高速であり、これにより、多数のより小さなパルスからの膜内外電位差の蓄積が可能になった。約2MHzで、100パルスバーストの閾値は、これらの細胞の場合400~500から10V/cmに低下した。5パルスバーストの閾値は、すでに0.3MHzで理論上の最小値(単一パルスの閾値の1/5)に低下し、パルス間に感知できるほどの放電がないことを示唆している。
【0086】
サブマイクロ秒バーストによって誘導される膜電位は、バースト中の時間平均電界によって決定され得る。この値は、閾値電界にデューティサイクルを掛けたものとして計算することができる。
図16Cに示されるように、バースト持続時間に対してプロットされた時間平均電界の閾値は、サブマイクロ秒のパルス持続時間に関係なくほぼ同じであることが見出された。したがって、持続時間がバースト持続時間に等しい単一の「長い」パルスの閾値を予測することができる。
図16Dに図示するように、3.3MHzで1000、200nsパルスのバースト(デューティサイクル67%、バースト持続時間300μs)により、神経励起閾値が360±4V/cm(単一の200nsパルスの場合)から1.63±0.2V/cmに減少した。このようなバースト中の時間平均電界は、約1.63x 0.67=1.1V/cmであった。これは、単一の300μsパルスの測定閾値であった(1.04±0.2V/cm)。1つの200μsパルス(パルス持続時間はバーストの「オン」の合計時間に等しい)の測定閾値は、ほんのわずかばかり高く、例えば、1.21+/-0.17V/cmであった。しかしながら、高周波数、サブマイクロ秒、低電界バーストの効率と単一の長いパルスとの間の単純な関係は、常に有効であるとは限らない。一般に、効果を生み出すために必要な電界(例えば、
図16B~
図16Dにおいて、電気的に興奮性の細胞膜を励起するために)は、通常、パルスバースト内の繰り返しレートが増加する(例えば、隣接するパルス間の遅延を減少させる)につれて減少する。パルシングパラメータ(例えば、周波数、繰り返しレート/パルス間間隔など)の正確な値は、異なる組織のタイプや細胞のタイプによって変わり得るが、同じ一般的な傾向が当てはまり得る。
【0087】
上記のように、高周波数(例えば、メガヘルツ)、サブマイクロ秒、低電界(例えば、1kV/cm未満)のパルス刺激のための方法および装置は、興奮性および非興奮性細胞のエレクトロポレーションに使用され得る。例えば、
図17A~
図17Fは、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバーストによる非興奮性細胞のエレクトロポレーションを図示している。
図17A~
図17Fにおいて、エレクトロパーミアビリゼーションは、電位依存性チャネルを発現しないCHOおよびHEK細胞において測定された。
図17Aでは、100、400nsのパルスのバーストがCa
2+インジケータFluo-4を入れたCHO細胞に送達された。様々な電界強度について、1kHz~1MHzのパルス繰り返しレートを試験し、検出可能なCa
2+の上昇に応答した細胞と応答しなかった細胞の数をカウントした。
図17Aの各データポイントは、3つ以上の独立した実験からの合計20~30個の細胞からの応答画分を表す。約0.96~1.47kV/cmの電界値は、低い繰り返しレートではCa
2+応答を引き起こさなかったが、約0.3MHz以上でますます効率的になった。この周波数は、神経刺激の場合よりも約2桁高く(例えば、
図16Bと比較)、約1μsの推定充電時定数と一致していた。約1.83kV/cmのより高い電界は、1kHzで細胞の70%において効率的であった。単に10kHzおよび100kHzでの応答画分の増加は完全には理解されておらず、Ca
2+トランジェントも激しくなったため、検出が向上した結果である場合がある。
【0088】
約0.64kV/cmの低電界で、1000、500nsのパルスのバーストは、約0.8~1MHz未満のCa
2+イオンまたはYO-PRO-1へのHEK細胞の易透化を引き起こさなかった(例えば、
図17B~
図17Dを参照)。この周波数を超えると、この実施例ではエレクトロパーミアビリゼーションが急激に増加した。MHzバースト(
図17D)と単一の長いパルス(
図17E)とによって誘発されるCa
2+トランジェントの時間経過と形状は類似しており、エレクトロポレーションの同じ基本的なメカニズムを示唆している。
図17Fに示されているように、MHzバーストによって誘導されるCa
2+応答の大きさは、その持続時間がバースト中の「オン」の合計時間(バーストの合計持続時間ではなく)に等しくなるようにされた単一の「長い」パルスの大きさに一致する可能性がある。応答を誘発するための一致条件は、次式のとおりであることがわかった。
【0089】
E
lp=(E
nsPEF)x(デューティサイクル)+0.05 [1]
ここで、E
lpおよびE
nsPEFは、それぞれ、細胞場所での長いパルス(500μs)によって、およびサブマイクロ秒パルス(500ns)によって生成される電界値(kV/cm)である。このような関連は、サブマイクロ秒バーストと一致する単一パルスとが、重度にエレクトロポレーションされた細胞での生存率の低下など、同等の生理学的結果を有するはずであることを示唆した。しかしながら、実験はこれを確認しなかった。高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルシングによってエレクトロポレーションされたEL4細胞の生存率も調べた。例えば、エレクトロポレーションキュベット内の比較的大きな細胞集団の高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルス処理の生存率実験が実行され、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバーストは三角形の形状をしており、高さ50%で幅200nsであり、印加電圧はパルス間で常に完全にゼロに低下するとは限らなかった(
図18A)。1000の高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスのバーストを、2つの異なるピーク振幅(190および500V、細胞懸濁液で1.9および5kVに変換)で、および低または高繰り返しレート(100Hzおよび3MHz)で、印加した。1.9kV/cmの電界は、100Hzで印加された200nsパルスのエレクトロポレーション閾値を下回っていたため、最大4000パルスのバーストは細胞の生存率を低下させなかった。3MHzで印加された同じパルスは、閾値を上回り、試験されたすべてのパルス数で生存率が約2分の1に減少した(
図18B、100Hzと比較してp<0.001、t検定)。約5kV/cmでは、はるかに少ないパルス数が、100Hzバーストおよび3MHzバーストの両方について生存率を低下させたが、3MHzバーストの方がはるかに効率的であった(
図18C、p <0.001)。
【0090】
不規則なパルス形状では、バースト中の時間平均電圧および電界は、高周波数、サブマイクロ秒、低電界のパルス振幅にデューティサイクルを掛けることによって計算できなかった。代わりに、電圧はバースト中に0.2nsの分解能でデジタル化され、それらの平均が計算され、これは、バースト内の高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスのピーク電圧が190V(1.9kV/cm)の場合、108V(1.08kV/cm)に相当した。別の一連の実験(
図18D)では、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバースト(1000パルス、400ns、3MHz、1.9kV/cm)で処置された細胞の生存率が、持続時間がバースト持続時間(333μs)に等しく、電界がバーストの時間平均値(1.08kV/cm)に等しい単一パルスと並べて比較された。高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバースト後の生存率は約50%であり、前のセット(
図17B)と一致していたが、「同等の」単一パルスは効率が大幅に低下し、生存率が87.6±1.4%、p<0.0001に低下した。したがって、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスのMHzバーストは、時間平均振幅によって予測されるよりも効率的で、潜在的に、未知の高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルス固有の効果に起因する。
【0091】
これらの実験は、最大MHzの繰り返しレートの高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバーストによる励起およびエレクトロポレーションが、効果的であり、かつ効率的であることを例証した。多様なターゲットおよびエンドポイントはすべて、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスの効率の増加および閾値の低下を示した。高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバーストの効率は、概して、バーストあたりのパルス数、それらの振幅、およびデューティサイクルとともに増加した。効率は、持続時間および振幅が、高周波数、サブマイクロ秒、低電界パルスバーストの持続時間および時間平均振幅にそれぞれ等しい、単一の長いパルスとは大幅に異なり得る。
【0092】
本明細書に記載の方法(ユーザインターフェースを含む)のいずれも、ソフトウェア、ハードウェア、またはファームウェアとして実装することができ、プロセッサ(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォンなど)によって実行され得る一連の命令を格納する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体として説明され得、プロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、表示、ユーザとの通信、分析、パラメータ(タイミング、周波数、強度などを含む)の修正、決定、警告などを含むがこれらに限定されないステップのいずれかの実行を制御させる。
【0093】
特徴または要素が、本明細書で別の特徴または要素「上にある」と言及される場合、それは他の特徴または要素上に直接存在することができ、または介在する特徴および/または要素も存在し得る。対照的に、機能または要素が、別の機能または要素に「直接存在する」と言及される場合、介在する機能または要素は存在しない。特徴または要素が、別の特徴または要素に「接続されている」、「取り付けられている」または「結合されている」と言及される場合、それは他の特徴または要素に直接接続、取り付け、または結合され得、または介在する機能または要素が存在する場合がある。対照的に、機能または要素が別の機能または要素に「直接接続されている」、「直接取り付けられている」、または「直接結合されている」と言及される場合、介在する機能または要素は存在しない。一実施形態に関して説明または示されているが、そのように説明または示されている特徴および要素は、他の実施形態に適用することができる。別の特徴に「隣接して」配設された構造または特徴への言及は、隣接する特徴と重複するか、またはその下にある部分を有し得ることも当業者には理解されるであろう。
【0094】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。例えば、本明細書で使用される場合、単数形の「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連するリストされたアイテムの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含み、「/」と省略され得る。
【0095】
「下(under)」、「下(below)」、「下方(lower)」、「上(over)」、「上方(upper)」などのような空間的に相対的な用語は、説明を容易にするために、図に示されるように、ある要素または特徴の、別の要素(複数可)または特徴(複数可)との関係を説明するために、本明細書で使用され得る。空間的に相対的な用語は、図に示されている方向に加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる方向を包含することを意図していることが理解されよう。例えば、図のデバイスが反転している場合、他の要素または特徴の「下(under)」または「下(beneath)」として記述されている要素は、他の要素または特徴の「上(over)」に向けられる。したがって、「下(under)」という例示的な用語は、上と下の両方の方向を包含することができる。デバイスは、他の方法で方向付けられ(90度または他の方向に回転され)てもよく、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、それに応じて解釈され得る。同様に、「上向き(upwardly)」、「下向き(downwardly)」、「垂直(vertical)」、「水平(horizontal)」などの用語は、特に明記されていない限り、説明の目的でのみ本明細書で使用される。
【0096】
「第1の」および「第2の」という用語は、本明細書では様々な特徴/要素(ステップを含む)を説明するために使用され得るが、文脈が別段の指示をしない限り、これらの特徴/要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、ある特徴/要素を別の特徴/要素から区別するために使用される場合がある。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下で論じる第1の特徴/要素は、第2の特徴/要素と呼ぶことができ、同様に、以下で論じる第2の特徴/要素は、第1の特徴/要素と呼ぶことができる。
【0097】
本明細書および以下の特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、「備える(comprise)」という単語、および「備える(comprises)」および「備える(comprising)」などの変形は、様々な構成要素を、方法および物品(例えば、デバイスおよび方法を含む組成物および装置)において共同で使用することができることを意味する。例えば、「備える(comprising)」という用語は、述べられた要素またはステップを含むことを意味するが、他の要素またはステップを除外することを意味しないと理解されるであろう。
【0098】
一般に、本明細書に記載の装置および方法のいずれも包括的であると理解されるべきであるが、構成要素および/またはステップのすべてまたはサブセットは、代わりに排他的であり得、様々な構成要素、ステップ、サブコンポーネントまたはサブステップ「からなる(consisting of)」または代わりに「本質的にからなる(consisting essentially of)」として表現される場合がある。
【0099】
本明細書の明細書および特許請求の範囲で使用される場合、実施例で使用される場合を含み、特に明記されていない限り、すべての数は、その用語が明示的に表示されない場合でも、「約」または「おおよそ」という単語が前に付いているかのように読むことができる。「約」または「おおよそ」という言い回しは、大きさおよび/または位置を説明するときに、説明される値および/または位置が、値および/または位置の合理的な予想範囲内にあることを示すために使用され得る。例えば、数値は、記述された値(または値の範囲)の+/-0.1%、記述された値(または値の範囲)の+/-1%、記述された値(または値の範囲)の+/-2%、記述された値(または値の範囲)の+/-5%、記述された値(または値の範囲)の+/-10%などの値を有し得る。本明細書に与えられた任意の数値はまた、文脈が別段の指示をしない限り、その値の約またはおおよそを含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。本明細書に列挙されている任意の数値範囲は、そこに含まれるすべてのサブ範囲を含むことを意図している。また、当業者が適切に理解するように、値が開示されているとき、値「以下」、「値以上」、および値間の可能な範囲も開示されていることを理解されたい。例えば、値「X」が開示されている場合、「X以下」ならびに「X以上」(例えば、ここでXは数値である)も開示されている。また、用途全体を通じて、データはいくつかの様々なフォーマットで提供され、このデータは、終了点および開始点、ならびにデータポイントの任意の組み合わせの範囲を表すことも理解されたい。例えば、特定のデータポイント「10」および特定のデータポイント「15」が開示されている場合、10および15の間と同時に、10および15超、10および15以上、10および15未満、10および15以下、および10および15に等しいことが開示されていると見なされると理解される。2つの特定のユニット間の各ユニットもまた開示されていることも理解される。例えば、10と15とが開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示されている。
【0100】
様々な例示的な実施形態が上に記載されているが、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態に対していくつかの変更のいずれかを行うことができる。例えば、記載された様々な方法のステップが実行される順序は、代替の実施形態ではしばしば変更され得、他の代替の実施形態では、1つ以上の方法のステップは完全にスキップされ得る。様々なデバイスおよびシステムの実施形態のオプションの特徴は、いくつかの実施形態に含まれ得、他の実施形態には含まれ得ない。したがって、前述の説明は、主に例示的な目的で提供されており、特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0101】
本明細書に含まれる実施例および例示は、限定ではなく例示として、主題が実施され得る特定の実施形態を示している。前述のように、他の実施形態を利用し、そこから導き出すことができ、その結果、構造的および論理的な置換ならびに変更を、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。本発明の主題のそのような実施形態は、実際、複数が開示されている場合、本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することを意図することなく、単に便宜のために「発明」という用語によって本明細書で個別にまたは集合的に言及され得る。したがって、特定の実施形態が本明細書で例示および説明されてきたが、同じ目的を達成するように計算された任意の構成を、示された特定の実施形態の代わりに用いることができる。本開示は、様々な実施形態のありとあらゆる適応または変形を網羅することを意図している。上記の実施形態、および本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、上記の説明を検討すると当業者には明らかであろう。