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特許7146316人工イクラを含む食品の製造方法、及び人工イクラを含む食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】人工イクラを含む食品の製造方法、及び人工イクラを含む食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/30 20160101AFI20220927BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220927BHJP
【FI】
A23L17/30 A
A23L17/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022101770
(22)【出願日】2022-06-24
【審査請求日】2022-06-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522254594
【氏名又は名称】株式会社パワー・ブレン
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 英保
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-007241(JP,A)
【文献】特開昭54-113463(JP,A)
【文献】特開昭59-156267(JP,A)
【文献】特開2001-224343(JP,A)
【文献】特開平05-176725(JP,A)
【文献】特開平05-308931(JP,A)
【文献】特開平11-000137(JP,A)
【文献】特開昭59-159759(JP,A)
【文献】ぜいたく人造イクラ茶漬け,cookpad [online],2019年03月04日,pp.1-2,URL:https://cookpad.com/recipe/5537386,検索日:2022年7月20日
【文献】アボカドと偽装家族のチーズトースト,cookpad [online],2019年03月07日,pp.1-2,URL:https://cookpad.com/recipe/5542454,検索日:2022年7月20日
【文献】人造イクラと海鮮塩ラーメン,cookpad [online],2019年03月05日,pp.1-2,URL:https://cookpad.com/recipe/5539445,検索日:2022年7月20日
【文献】さけフレーク,INTERNET ARCHIVE Wayback Machine [online],2022年06月01日,pp.1-2,URL:https://web.archive.org/web/20220601113718/https://www.maruha-nichiro.co.jp/products/product?j=4902165585766,検索日:2022年7月20日
【文献】Ca鮭フレーク,INTERNET ARCHIVE Wayback Machine [online],2020年06月23日,pp.1-2,URL:https://web.archive.org/web/20200623114502/https://www.gyomusuper.jp/item/detail.php?go_id=3025,検索日:2022年7月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CookPad
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はらこ飯の製造方法であって、
塩化ナトリウムの含有量が3.5質量%の塩化ナトリウム含有鮭フレーク50質量部を白米150質量部、水200質量部と混合し、炊飯して鮭ご飯を調理し、当該鮭ご飯50質量部と人工イクラ50質量部をレトルト容器に充填し、120℃、0.1MPaで4分間加熱することを特徴とするはらこ飯の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたはらこ飯の製造方法により製造されることを特徴とするはらこ飯
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工イクラを含む食品の製造方法、及び人工イクラを含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
天然イクラ以外の加熱調理された天然食材に天然イクラが添えられている食品、例えば加熱調理された鮭ご飯に天然イクラが添えられた伝統食「はらこめし」は、常温で長期保存可能でない。
一方、アルギン酸ナトリウム水溶液とカルシウム塩水溶液を接触させてゲル皮膜を形成して得られる人工イクラが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
天然イクラに代えて人工イクラを使用し、前記天然食材に人工イクラが添えられ、加熱調理された食品は常温で長期保存可能であるが、人工イクラの食感が悪く、食品として好適なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-159759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、人工イクラと天然食材を加熱して得られる、常温で長期保存可能で食感の良い食品が希求されていたが、そのような食品は提供されていなかった。本発明が解決しようとする課題は、人工イクラと天然食材を加熱して得られる、常温で長期保存可能で食感の良い食品の製造方法と当該食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題に鑑みて検討を重ね、人工イクラと共に加熱される天然食材の塩化ナトリウムの含有量が特定の範囲内であると、人工イクラの食感が良くなることを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
【0007】
本発明は、塩化ナトリウムの含有量が3.5質量%の塩化ナトリウム含有鮭フレーク50質量部を白米150質量部、水200質量部と混合し、炊飯して鮭ご飯を調理し、当該鮭ご飯50質量部と人工イクラ50質量部をレトルト容器に充填し、120℃、0.1MPaで4分間加熱することを特徴とするはらこ飯の製造方法に関する。
【0008】
さらに本発明は、はらこ飯の前記製造方法により製造される、はらこ飯に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、人工イクラと天然食材を加熱して得られる、常温で長期保存可能で食感の良い食品の製造方法と当該食品を提供する
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について更に詳細に説明する。
<人工イクラ>
本発明の食品の製造方法で使用される人工イクラは、アルギン酸ナトリウム水溶液とカルシウム塩水溶液を接触させてゲル皮膜を形成して得られる周知のものであり、特定の人工イクラに限定されない。ゲル皮膜内のアルギン酸ナトリウム水溶液には、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、ごま油、ひまわり油、サフラワー油、米油、落花生油、椿油、オリーブ油等の植物油と、油溶性着色料(赤色、黄色、青色)を注入し、これらを混合してよい。
【0011】
<天然食材>
本発明の食品の製造方法で使用される天然食材は、特定の天然食材に限定されない。前記天然食材として、例えば魚介類、獣肉、穀類、野菜、果物、キノコ等が挙げられる。
前記魚介類として、例えば鮭、ブリ、マス、カツオ、サンマ、ニシン、イワシ、マグロ、タイ、タコ、イカ、サザエ、アサリ等が挙げられる。
前記獣肉として、牛肉、豚肉、鶏肉、羊肉等が挙げられる。
前記穀類として、例えば米、小麦、大麦、オーツ麦、トウモロコシ、大豆、粟、キビ、ひえ、小豆、落花生、ひよこ豆等が挙げられる。
【0012】
前記米は、うるち米、もち米からなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてよい。さらに前記米は白米、部付き米、玄米、胚芽米からなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでいてよい。
【0013】
前記天然食材は、塩化ナトリウムの含有量が3~4質量%である塩化ナトリウム含有食材を含む。前記塩化ナトリウム含有食材中の塩化ナトリウムの含有量が3質量%未満、又は4質量%超であると、人工イクラを含む食品の食感が悪くなる。前記塩化ナトリウム含有食材は、好ましくは魚介類を含み、より好ましくは魚肉を含み、更に好ましくは鮭、ブリ、マス、カツオ、サンマ、ニシン、イワシからなる群から選ばれる少なくとも1つを含み、特に好ましくは鮭を含む。ここで、前記塩化ナトリウム含有食材中の塩化ナトリウムの含有量は、前記塩化ナトリウム含有食材を乳鉢、ブレンダー、ミキサー、超音波破砕機等を用いて粉砕し、モール法、電位差滴定法、電気伝導度、原子吸光光度法、HPLC(高速液体クロマトグラフ法)を用いて測定する。
【0014】
前記天然食材は、前記塩化ナトリウム含有食材に加え、好ましくは更に穀類を含む。前記塩化ナトリウム含有食材と共に使用される前記穀類として、例えば米、小麦、大麦、オーツ麦、トウモロコシ、大豆、粟、キビ、ひえ、小豆、落花生、ひよこ豆等が挙げられる。前記穀類は、好ましくは米を含み、より好ましくは白米を含む。前記天然食材として、例えば鮭ご飯(鮭フレークと白米が炊飯されたもの)が例示される。
【0015】
本発明の人工イクラを含む食品には、添加素材が配合されていてもよい。前記添加素材としては、例えば醤油、酢、味噌等の調味料、アスコルビン酸脂肪酸エステル、リグナン、コエンザイムQ、γ-オリザノール、トコフェロール等の酸化防止剤、香料、香辛料、動物エキス等の風味付与材、乳化剤、シリコーンなどが挙げられる。
【0016】
<加熱工程>
前記人工イクラと前記天然食材は100~150℃で加熱される。加熱温度が100℃未満であると、滅菌が不十分になるおそれがある。さらに前記加熱温度が150℃を超えると、加熱設備が高価になり、人工イクラ及び/又は天然食材の食感が悪くなるおそれがある。
【0017】
前記加熱時間は特定の範囲に限定されない。前記加熱時間は、好ましくは30秒~2時間であり、より好ましくは1分~1時間であり、更に好ましくは5分~30分である。前記加熱工程は、加圧下で実施されてよい。
【0018】
前記加熱工程の形態は、特定の形態に限定されない。前記人工イクラと前記天然食材は、圧力鍋中で加熱されても、レトルト容器中で加熱されてもよい。
【0019】
<不可能・非実際的事情>
本発明の人工イクラを含む食品の食感の評価は、人による当該食品の喫食のみにより可能であり、当該食品の構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でない。したがって、本発明の人工イクラを含む食品は、当該食品の製造方法により特定されるべきである。
【実施例
【0020】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
実施例及び比較例において、各種物性は以下のとおりに測定ないし算出された。
<鮭フレーク中の塩化ナトリウムの含有量>
塩化ナトリウム含有量はモール法で測定された。測定には器具及び装置の準備をした。試薬の調整をし、滴定用指示薬と滴定用溶液を用意して標定した。試料溶液の調整は秤量した試料をメスフラスコ等の定量用容器に移し入れ全容を一定にした。なお、試料調整にあたっては、乳鉢、ブレンダー、ミキサー、超音波破砕機等を必要に応じて使用した。また、試料溶液の混濁度によりろ過法、遠心分離法などを用いて試料溶液を調整した。滴定は磁器蒸発皿や三角フラスコなどの容器に一定量採取し、滴定用指示薬を添加した。滴定用溶液を滴下して終点の観察をした。滴定値は小数点第二位まで計測した。空試料による空試験から測定値の補正をした。計算は「食塩分(%)={(T-B)/1000}×A×F×M×(定量用容器に移し入れ全容を一定にした量/秤量した試料)×(1/W)×100」の計算式にて算出した。なお、T:試料溶液の滴定に要した滴定用溶液の量(ml)、B:空試験の滴定に要した滴定用溶液の量(ml)、A:滴定に用いた滴定溶液の濃度(mol/L)、F:滴定溶液のファクター、M:塩化ナトリウムの式量(58.44)、W:試料採取量である。
また、モール法の再現性を比較する際は、原子吸光光度法とHPLC(高速液体クロマトグラフ法)を行った。この場合、試料溶液は適切な前処理(分離、濃縮等)を行い測定に供した。使用方法は機器の使用方法に準じた。
また、簡易測定では測定値の傾向を調べるため、電気伝導度を用いた。
【0022】
実施例1
三枚おろしにした鮭肉を粉砕し、鮭フレークを得た。当該鮭フレークに塩化ナトリウムを添加し、塩化ナトリウムの含有量が3.5質量%の塩化ナトリウム含有鮭フレークを調製した。白米150質量部、前記塩化ナトリウム含有鮭フレーク50質量部、及び水200質量部を混合して炊飯し、鮭ご飯を調理した。前記鮭ご飯50質量部と人工イクラ(株式会社パワー・ブレン製)50質量部をレトルト容器に充填し、120℃、0.1MPaで4分間加熱し、はらこめしを製造した。50名のパネルが当該はらこめしを喫食し、当該はらこめしの食感が良好であることを確認した。なお、上記人工イクラは、アルギン酸ナトリウム水溶液とカルシウム塩水溶液を接触させてゲル皮膜を形成し、当該ゲル皮膜内に植物油と油溶性着色料を注入し、これらを混合して得た、通常の製造方法により製造されたものであり、何人も株式会社パワー・ブレンから購入できたものである。
【0023】
比較例1
塩化ナトリウムの含有量が2.5質量%の塩化ナトリウム含有鮭フレークを調製した以外、実施例1と同様にしてはらこめしを製造した。50名のパネルが当該はらこめしを喫食し、当該はらこめしの食感が悪いことを確認した。
【0024】
比較例2
塩化ナトリウムの含有量が4.5質量%の塩化ナトリウム含有鮭フレークを調製した以外、実施例1と同様にしてはらこめしを製造した。50名のパネルが当該はらこめしを喫食し、当該はらこめしの食感が悪いことを確認した。
【要約】
【課題】人工イクラと天然食材を加熱して得られる、長期保存可能で食感の良い食品の製造方法と当該食品を提供する。
【解決手段】人工イクラを含む食品の製造方法が、人工イクラと天然食材を100~150℃で加熱する加熱工程を含み、この天然食材が、塩化ナトリウムの含有量が3~4質量%である塩化ナトリウム含有食材を含む。人工イクラを含む食品が、この製造方法により製造される。
【選択図】なし