(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】インクリボンカセット
(51)【国際特許分類】
B41J 32/02 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
B41J32/02 A
(21)【出願番号】P 2019039177
(22)【出願日】2019-03-05
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237237
【氏名又は名称】フジコピアン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金田 富夫
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-135565(JP,A)
【文献】特開2008-229973(JP,A)
【文献】特開平08-192560(JP,A)
【文献】特開平07-089200(JP,A)
【文献】特開昭63-247268(JP,A)
【文献】特開平05-330210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、筐体と、前記筐体内のリボン収納部に折りたたまれて収納される無端状のインクリボンと、前記筐体の内部に回転自在に保持される巻取ギヤ及び従動ギヤと、前記筐体の開口部を覆うカセットカバーを有し、印字装置に着脱自在に装着され、前記巻取ギヤを回転させることによって前記巻取ギヤと前記従動ギヤ間に挟み込んだ前記インクリボンを前記リボン収納部内と前記印字装置の印字ヘッド前面間で周回させるインクリボンカセットにおいて、
前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心を結んだ直線である軸間線の方向を軸間線方向とし、前記巻取ギヤの回転軸と直交する前記筐体の内壁上で前記軸間線方向と直交し、前記巻取ギヤから前記リボン収納部へ向かう方向を送り出し方向とし、
前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤへ前記インクリボンが巻きつくことを防止するセパレータを有し、前記リボン収納部は、前記セパレータ又は、前記セパレータ及び前記筐体の側壁によって構成される導入部を有し、前記導入部は前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤから前記送り出し方向に向かって前記リボン収納部の前記軸間線方向の幅が徐々に広がる形状であり、
前記筐体の内壁と前記筐体の内壁と対向する前記カセットカバーの内壁間の距離である前記リボン収納部の内高を、前記インクリボンの幅よりも0.8mm以上1.3mm以下大きくし、前記筐体と前記カセットカバーの前記巻取ギヤと前記従動ギヤ付近において、前記筐体内壁と前記カセットカバーの内壁に凸部を設けることにより、前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤ付近のリボン収納部の内高のみを前記リボン収納部内高よりも0.4mm以上0.8mm以下小さくし、
前記軸間線上で前記巻取ギヤの回転中心から前記従動ギヤの回転中心に向かって、下記数式1で表わすCだけ移動した点をギヤ接点とし、
前記凸部は前記ギヤ接点から前記送り出し方向に向かって、前記凸部の前端位置までの前記リボン収納部全域に連続して設けられ、
前記ギヤ接点を通り前記送り出し方向と平行な直線を中央線とし、
前記導入部は前記巻取ギヤ側の形状と前記従動ギヤ側の形状からなり、前記巻取ギヤ側と前記従動ギヤ側のそれぞれの前記導入部形状においてリボン収納部の幅が最も広がった箇所を導入部終点とし、
前記巻取ギヤ側導入部終点と前記従動ギヤ側導入部終点までの前記ギヤ接点からの距離に差がある場合には、前記ギヤ接点から遠い方の前記導入部終点と前記ギヤ接点間の距離を導入部寸法とし、前記巻取ギヤ側導入部終点と前記従動ギヤ側導入部終点までの前記ギヤ接点からの距離に差がない場合には、前記従動ギヤ側導入部終点から前記ギヤ接点までの距離を導入部寸法とし、
前記導入部寸法の1.4倍が15mm以下の場合には、前記中央線上における前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離を15mmとし、
前記導入部寸法の1.4倍が15mmを超える場合には、前記中央線上における前記ギヤ接点からの前記凸部前端位置までの距離を15mm以上、前記導入部寸法の1.4倍以下とし、
前記中央線を挟んで前記軸間線方向の両側における前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線上と同じか、前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなることを特徴とするインクリボンカセット。
数式1:C=(前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心間の距離)×(前記巻取ギヤのピッチ円直径)/(前記巻取ギヤのピッチ円直径+前記従動ギヤのピッチ円直径)
【請求項2】
前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる場合において、前記ギヤ接点からの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる前記凸部の前端位置を繋いだ線が、曲線であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【請求項3】
前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる場合において、前記ギヤ接点からの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる前記凸部の前端位置を繋いだ線が、直線であることを特徴とする請求項1に記載のインクリボンカセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、インパクトプリンタ(ドットプリンタとも称せられる)に取付けられて使用されるインクリボンカセットの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のインクリボンカセットYは、カセットカバー(図示せず)を除去した状態を示した
図2(a)のような構成になっている。すなわちカセットケ-ス2の内部には、一対の巻取ギヤ3と従動ギヤ4が回転自在に設けられるとともに、両ギヤ3,4の近傍箇所にリボン収納部6が形成されている。カセットケ-ス2には、印字装置に装備されたときに印字装置の印字ヘッド30が入り込む空間10が形成されている。また、インクリボンカセットYには、金属製の板バネ8が装着され、空間10に引出されたインクリボン1が弛まないように張力が付与されているが、板バネ8を設けなくてもインクリボン1が弛まなければ、板バネ8は必ずしも設ける必要はない。
【0003】
インクリボンカセットの主体をなす無端状のインクリボン1は、ジグザグに折曲されて詰まった状態でリボン収納部6に収納されているとともに、両ギヤ3,4に挟持されてカセットケ-ス2の内部周壁に沿った所定のリボン走行路に巻き掛ける状態で装備されている。(
図2では簡易的にインクリボン1が折れ曲がった状態を示すため、インクリボン1が比較的疎な状態で収納されたように記載しているが、実際のインクリボンカセットでは、インクリボン1が詰まった状態で収納される。)このインクリボン1は、巻取ギヤ3の内部に差し込まれた印字装置のリボン駆動軸(図示せず)によって回転駆動される一対のギヤ3,4により、
図2における反時計方向に回送するよう周回されるとともに、空間10内に入り込んだ印字ヘッド30のワイヤドット部により紙面に叩打され、インクリボン1自体に含浸しているインクが紙面に転写され、印字される。
【0004】
図2では、巻取ギヤ3へのインクリボン1の巻き付きを防止するための巻取ギヤセパレータ12と、従動ギヤ4へのインクリボン1の巻き付きを防止するための従動ギヤセパレータ13が、別部品で設けられているが、これらの機能は、カセットケ-ス2及びそれと係合するカセットカバーに一体として設けることもできる。また、インクリボン1にインクを補給するインクパッドをカセットケ-ス2内に備え、巻取ギヤ3又は従動ギヤ4にインクを補給する構造としてもよい。
【0005】
図2(a)に示すように、巻取ギヤ3と従動ギヤ4とは外周に多数の歯車の歯3a、4aを有してインクリボン1を挟持しているので、巻取ギヤ3と従動ギヤ4が回転することで、リボン収納部6に収納されるインクリボン1はジグザグに折曲されて詰まった状態で収納される。リボン収納部6に収納されるインクリボン1の長さを長尺にすれば、インクリボンカセットを長寿命化することができるので、限られたリボン収納部に出来る限り長尺のインクリボン1を収納しようとする試みがされてきた。
【0006】
しかしながら、限られたリボン収納部6に長尺のインクリボン1を収納すると、インクリボン1が巻取ギヤ3、従動ギヤ4を押しつける力が大きくなる。インクリボン1が巻取ギヤ3や従動ギヤ4を押しつける力が強くなると、インクリボン1が巻取ギヤ3と巻取ギヤセパレータ12間、従動ギヤ4と従動ギヤセパレータ13間に入り込み易くなり、この結果、インクリボン1が巻取ギヤ3と従動ギヤ4に巻き付き、インクリボン1が走行不良となることがあった。
【0007】
また、限られたリボン収納部6に長尺のインクリボン1を収納すると、リボン収納部6に収納され、ジグザグに折曲されたインクリボン1の折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることがある。折れ幅が小さくなったインクリボン1は、だんご状態の塊となることがあり、塊となったインクリボン1がリボン収納部の出口などに詰まって、それ以上インクリボン1が走行できなくなる、所謂リボンジャムが発生することがあった。
【0008】
インクリボン1が巻取ギヤ3と従動ギヤ4に巻き付く問題を解決するために、特許文献1では、セパレータの送り歯車(前記巻取ギヤ3に相当)と押さえ歯車(前記従動ギヤ4に相当)と対向する側の反対側を覆う突起部が、セパレータに設けられているインクリボンカセットが提案されている。
【0009】
特許文献1のインクリボンカセットでは、セパレータに設けられた突起部に沿ってインクリボンが送り出されるため、リボン収納部のリボン容量に影響され難く、従来のインクリボンカセットに比べ、送り歯車及び押さえ歯車とセパレータとの間にインクリボンが入り込み難くなり、インクリボンが送り歯車及び押さえ歯車に巻き付くことを少なくできる。
しかしながら、特許文献1のインクリボンカセットでは、限られたリボン収納部6に長尺のインクリボン1を収納することにより、インクリボン1の折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることを防ぐことはできず、所謂リボンジャムの発生を防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、長尺のインクリボンを収納しても、従来のインクリボンカセットに比べて、インクリボン1の折れ幅が小さくなることがなく、リボンジャムが発生し難いインクリボンカセットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明は、少なくとも、筐体と、前記筐体内のリボン収納部に折りたたまれて収納される無端状のインクリボンと、前記筐体の内部に回転自在に保持される巻取ギヤ及び従動ギヤと、前記筐体の開口部を覆うカセットカバーを有し、印字装置に着脱自在に装着され、前記巻取ギヤを回転させることによって前記巻取ギヤと前記従動ギヤ間に挟み込んだ前記インクリボンを前記リボン収納部内と前記印字装置の印字ヘッド前面間で周回させるインクリボンカセットにおいて、
前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心を結んだ直線である軸間線の方向を軸間線方向とし、前記巻取ギヤの回転軸と直交する前記筐体の内壁上で前記軸間線方向と直交し、前記巻取ギヤから前記リボン収納部へ向かう方向を送り出し方向とし、
前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤへ前記インクリボンが巻きつくことを防止するセパレータを有し、前記リボン収納部は、前記セパレータ又は、前記セパレータ及び前記筐体の側壁によって構成される導入部を有し、前記導入部は前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤから前記送り出し方向に向かって前記リボン収納部の前記軸間線方向の幅が徐々に広がる形状であり、
前記筐体の内壁と前記筐体の内壁と対向する前記カセットカバーの内壁間の距離である前記リボン収納部の内高を、前記インクリボンの幅よりも0.8mm以上1.3mm以下大きくし、前記筐体と前記カセットカバーの前記巻取ギヤと前記従動ギヤ付近において、前記筐体内壁と前記カセットカバーの内壁に凸部を設けることにより、前記巻取ギヤ及び前記従動ギヤ付近のリボン収納部の内高のみを前記リボン収納部内高よりも0.4mm以上0.8mm以下小さくし、
前記軸間線上で前記巻取ギヤの回転中心から前記従動ギヤの回転中心に向かって、下記数式1で表わすCだけ移動した点をギヤ接点とし、
前記凸部は前記ギヤ接点から前記送り出し方向に向かって、前記凸部の前端位置までの前記リボン収納部全域に連続して設けられ、
前記ギヤ接点を通り前記送り出し方向と平行な直線を中央線とし、
前記導入部は前記巻取ギヤ側の形状と前記従動ギヤ側の形状からなり、前記巻取ギヤ側と前記従動ギヤ側のそれぞれの前記導入部形状においてリボン収納部の幅が最も広がった箇所を導入部終点とし、
前記巻取ギヤ側導入部終点と前記従動ギヤ側導入部終点までの前記ギヤ接点からの距離に差がある場合には、前記ギヤ接点から遠い方の前記導入部終点と前記ギヤ接点間の距離を導入部寸法とし、前記巻取ギヤ側導入部終点と前記従動ギヤ側導入部終点までの前記ギヤ接点からの距離に差がない場合には、前記従動ギヤ側導入部終点から前記ギヤ接点までの距離を導入部寸法とし、
前記導入部寸法の1.4倍が15mm以下の場合には、前記中央線上における前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離を15mmとし、
前記導入部寸法の1.4倍が15mmを超える場合には、前記中央線上における前記ギヤ接点からの前記凸部前端位置までの距離を15mm以上、前記導入部寸法の1.4倍以下とし、
前記中央線を挟んで前記軸間線方向の両側における前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線上と同じか、前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなることを特徴とするインクリボンカセットである。
数式1:C=(前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心間の距離)×(前記巻取ギヤのピッチ円直径)/(前記巻取ギヤのピッチ円直径+前記従動ギヤのピッチ円直径)
【0013】
第2発明は、前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる場合において、前記ギヤ接点からの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる前記凸部の前端位置を繋いだ線が、曲線であることを特徴とする第1発明に記載のインクリボンカセットである。
【0014】
第3発明は、前記ギヤ接点からの前記凸部の前端位置までの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる場合において、前記ギヤ接点からの距離が前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなる前記凸部の前端位置を繋いだ線が、直線であることを特徴とする第1発明に記載のインクリボンカセットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のインクリボンカセットでは、巻取ギヤと従動ギヤ付近のリボン収納部の幅が徐々に広がる部分において、筐体内壁とカセットカバーの内壁に凸部を設けることにより、巻取ギヤ及び従動ギヤ付近のリボン収納部の内高を、他のリボン収納部よりも小さくした。また、リボン収納部の中央部分である中央線上においては、凸部を巻取ギヤと従動ギヤが最も深く噛み合う点であるギヤ接点から送り出し方向(ギヤ接点からリボン収納部へ向かう方向)へ15mm以上、前記リボン収納部の幅が徐々に広がる部分の長さである導入部寸法の1.4倍以下(導入部寸法の1.4倍が15mm以下の場合には15mm)となる前端位置にまで設けたのに対して、中央線を挟んだ両側においては凸部の前端位置までのギヤ接点からの距離が前記中央線上と同じか、前記中央線から遠ざかるにつれて徐々に短くなるようにした。このため、本発明のインクリボンカセットでは、リボン収納部の中央線部分でのインクリボンの走行抵抗が、リボン収納部の中央線を挟んだ両側と同じか、リボン収納部の中央線を挟んだ両側に比べて大きくなり、従来のインクリボンカセットに比べて、リボン収納部の中央線を挟んだ両側の端部へ、中央線部分とより均等なインクリボン密度となるように、より多くのインクリボン送り出されるようになった。また、前記凸部を設けた位置においてもインクリボンカセットの内高はインクリボンの幅よりも僅かに大きく設定しているので、前記凸部がインクリボンの流れの大きな抵抗とはならず、インクリボンが走行不良となることもない。このため、本発明のインクリボンカセットは従来のインクリボンカセットに比べて、リボン収納部の面積が十分に生かせることができ、収納されたインクリボンはリボン収納部内により均等に収納される。この結果、長尺のインクリボンを収納しても、従来のインクリボンカセットに比べて、インクリボンの折れ幅が小さくなることがなく、リボンジャムが発生し難いインクリボンカセットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかるインクリボンカセットAを示す図である。
【
図2】従来のインクリボンカセットYであり、かつ比較例1のインクリボンカセットZ1であるインクリボンカセットを示す図である。
【
図3】従来のインクリボンカセットYの詳細図である。
図3(a)は
図2(a)のM矢視図、
図3(b)は
図2(a)を2倍に拡大し、カセットカバーを装着した状態のT-T断面図である。
【
図4】実施例2のインクリボンカセットX2を示す図であり、リボン収納部6の幅が段階的に広がる本発明の実施形態を示す図である。
【
図5】比較例4のインクリボンカセットZ4を示す図である。
【
図6】比較例5のインクリボンカセットZ5を示す図である。
【
図7】実施例9のインクリボンカセットX9、及び本発明の第2実施形態であるインクリボンカセットBを示す図である。
【
図8】実施例10のインクリボンカセットX10を示す図である。
【
図9】実施例15のインクリボンカセットX15を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき本発明の実施形態を説明するが、本発明は下記に限定されるものではない。
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係るインクリボンカセットAのカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図1(b)は、
図1(a)を2倍に拡大し、カセットカバーを装着した状態のT-T断面図である。
【0018】
図1に示すインクリボンカセットAは、少なくとも、インクリボン1、リボン収納部6と印字装置の印字ヘッド30(図示せず)が入り込む空間10(図示せず)を有するカセットケ-ス2、カセットケ-ス2内に回転自在に設けられた一対の巻取ギヤ3と従動ギヤ4、及び巻取ギヤセパレータ12、従動ギヤセパレータ13で構成される点は、従来のインクリボンカセットと同様である。本実施形態では、巻取ギヤセパレータ12、従動ギヤセパレータ13をカセットケース2とは別部品としているが、必ずしも別部品とする必要はなく、巻取ギヤセパレータと従動ギヤセパレータをカセットケース2に一体の設けてもよい。巻取ギヤ3の内部に差し込まれた印字装置のリボン駆動軸31(図示せず)によってギヤ3,4が回転されることにより、インクリボン1が、リボン収納部6から引き出され、
図1(a)における反時計方向に回送するよう周回されるとともに、空間10(図示せず)内に入り込んだ印字ヘッド30(図示せず)のワイヤドット部により紙面に叩打され、インクリボン1に含浸しているインクが紙面に転写印字された後に、再びリボン収納部6に収納される点も従来のインクリボンカセットと同様である。
【0019】
また、
図1(b)に示すように、インクリボンカセットAも従来のインクリボンカセットYと同様に、巻取ギヤ3と従動ギヤ4は各ギヤの回転軸方向の上下に少なくとも2枚に分離された歯車を有し、巻取ギヤ3と従動ギヤ4の各々にインクリボン1が巻き付くことを防止するセパレータ(12,13)が設けられ、セパレータは各ギヤの回転軸方向の両端部外側と少なくとも2枚に分離された歯車間に挿入されるセパレータ板(121、131)を有しているが、必ずしも、巻取ギヤ3と従動ギヤ4は各ギヤの回転軸方向の上下に少なくとも2枚に分離された歯車を有する必要はなく、分離されていない1枚の歯車で構成してもよい。歯車が1枚の場合には、セパレータ板は歯車の上下に設けられるよう構成すればよい。
【0020】
インクリボンカセットAは、無端状のインクリボン1を折り畳んだ状態で収納するリボン収納部6の内高が、巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近のみ、他の部分の内高よりも小さくなっている。リボン収納部6の内高はカセットケース2とカセットケース2の開口部を覆うカセットカバー7との距離であって、カセットケース2の内壁2cに凸部2aを、カセットカバー7の内壁7cに凸部7aを設けることにより、巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近のリボン収納部6の内高を、リボン収納部6の他の部分の内高よりも小さくすることができる。インクリボンカセットAでは、この凸部2aと凸部7aを設ける範囲に、特徴があるインクリボンカセットである。
【0021】
凸部2aと凸部7aは、巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近から、リボン収納部6のインクリボン1の走行方向前方に向かって、凸部前端2b、7bまでのリボン収納部6の全域に連続して設けられる。凸部2aと凸部7aのインクリボン1の走行方向前端である凸部前端2b、7bの形状は、巻取ギヤ3と従動ギヤ4が最も深く噛み合う位置であるギヤ接点11を中心とする円弧、または、リボン収納部6の中央部分(中央線33上)で前記ギヤ接点11から最も遠い位置にまで凸部2aと凸部7aを設け、リボン収納部の中央線33を挟んだ両側では、ギヤ接点11から凸部前端2b、7bまでの距離がリボン収納部6の中央部分よりも徐々に短くなる形状とすることが好ましい。ここで、ギヤ接点11は、巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線である軸間線32上で前記巻取ギヤ3の回転中心から前記従動ギヤ4の回転中心に向かって、下記数式1で表わすCだけ移動した点として、表わすことができる点である。
図1のインクリボンカセットAでは、凸部前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする円弧となっている。
数式1:C=(前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心間の距離)×(前記巻取ギヤのピッチ円直径)/(前記巻取ギヤのピッチ円直径+前記従動ギヤのピッチ円直径)
【0022】
本発明者は、凸部2aと凸部7aを設けることにより、凸部2aと凸部7aを設けない場合に比べて、巻取ギヤ3と従動ギヤ4でリボン収納部6に送り出された直後のインクリボン1がリボン収納部6の中央付近に密集せず、リボン収納部6の中央線33を挟んだ両側にも、より均等にインクリボン1が送り出され易くなることを見出した。すなわち、本発明者は、中央線33を挟んだ両側においては凸部2a、7aの前端位置2b、7bまでのギヤ接点11からの距離が前記中央線上と同じか、前記中央線33から遠ざかるにつれて徐々に短くなるようにすることによって、リボン収納部6の中央線33部分でのインクリボン1の走行抵抗が、リボン収納部6の中央線33を挟んだ両側と同じか、リボン収納部6の中央線33を挟んだ両側に比べて大きくなり、従来のインクリボンカセットに比べて、リボン収納部6の中央線33を挟んだ両側の端部へ、より多くのインクリボンが送り出され、中央線33を挟んだ収納部6の両端のインクリボン密度が中央線33付近の密度に近づくことを見出した。このように、凸部2a、7aを設けることにより、インクリボン1がリボン収納部6内でより均等に収納されるため、本発明のインクリボンカセットAでは、リボン収納部6の面積が有効に利用され、従来のインクリボンカセットに比べて、リボン収納部6に収納されたインクリボン1のリボン折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることを防ぐことができ、所謂リボンジャムの発生を防止できる。
【0023】
ギヤ接点11から凸部前端2b、7bまでの距離のうち、ギヤ接点11から最も遠い位置までの距離Rは15mm以上であることが好ましい。Rが15mm未満になると、リボン折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることを防ぐ効果が得られ難い。
【0024】
ところで、この種のインクリボンカセットでは、一般的に巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近のリボン収納部6の形状は、巻取ギヤ3と従動ギヤ4へのインクリボン1の巻きつきを防止する巻取ギヤセパレータ12と従動ギヤセパレータ13の形状により、前記ギヤ接点11からリボン収納部6へインクリボン1を送り出す方向に向かって、リボン収納部6の幅が徐々に広くなるようになっている導入部6cが設けられている。本発明者が鋭意検討した結果、リボン収納部6の幅が広がりつつある間である導入部6c付近であれば、凸部2a、7aを設けることにより、インクリボン1がリボン収納部6の中央線を挟んだ両側の端部へより多く送り出される効果が得られることを見出した。具体的には、導入部6cを形成する両端の導入部終点6eのうち、前記ギヤ接点からの距離の遠い方までの距離(ギヤ接点11からの両端の導入部終点6eまでの距離が同じときは、ギヤ接点11からどちらか一方の導入部終点6eまでの距離)をSとしたときに、前記凸部前端2b、7bまでの距離のうち、ギヤ接点から最も遠い位置までの距離RはSの1.4倍以下であることが好ましい。RがSの1.4倍を超えると、凸部2a、7aによるインクリボン1の走行抵抗が大きくなることにより、リボン収納部6に収納されたインクリボン1のリボン折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が、小さくなるおそれがあるので、好ましくない。なお、上記のように、凸部前端2b、7bまでの距離のうち、ギヤ接点から最も遠い位置までの距離Rは15mm以上であることが好ましい。したがって、ギヤ接点からの距離の遠い方の導入部終点6eまでの距離Sの1.4倍が15mm以下である場合には、Rは15mmであることが好ましく、Sの1.4倍が15mmを超える場合には、Rは15mm以上1.4Smm以下であることが好ましい。
図4のインクリボンカセットAでは、凸部前端2b、7bの形状は、R=15mmの円弧となっている。
【0025】
RがSの1.4倍を超えても、インクリボン1のリボン折れ幅が大きくなる効果が得られない原因は、インクリボン1の走行抵抗が大きくなるのに加えて、導入部6cを超えた箇所ではリボン収納部6の幅が広がらなくなっていることが挙げられる。導入部6cでは、リボン収納部6の幅が広がりつつあるため、凸部2a、7aを設けることにより、収納部6の中央線を挟んだ両側の端部へ、より多くインクリボン1が送り出される効果が得られるのに対して、導入部6cを超えた箇所ではリボン収納部6の幅が広がらなくなっているので、インクリボン1が中央線を挟んだ両側の端部へより多くのインクリボン1が送り出される余地がなく、RがSの1.4倍を超える範囲にまで凸部2a、7aを設けても、インクリボン1のリボン折れ幅が大きくなる効果は得られない。
【0026】
導入部6cの収納部6の幅が広がりつつある間の両端の壁は、巻取ギヤセパレータ12、従動ギヤセパレータ13のみで構成してもよいし、巻取ギヤセパレータ12、従動ギヤセパレータ13とカセットケース2などの他の部品とともに構成してもよい。また、リボン収納部6の幅の広がりは、必ずしも連続して広がる必要はなく、例えば
図4に示すように段階的にリボン収納部6の幅が広がる形状でもよいが、
図4に示すリボン収納部6の幅が広がる傾斜部分の斜線の長さ(V1、又はV2)の合計が、リボン収納部の幅が広がらない直線部分の直線の長さ(W1、又はW2)の合計よりも長いことが好ましい。直線部分の直線の長さ合計の方が長いインクリボンカセットでは、リボン折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることを防ぐ効果が得られ難い。また、段階的にリボン収納部の幅が広がる形状の段階は少ない方が好ましい。
図4のインクリボンカセットX2では、3段階でリボン収納部の幅が広がる形状となっているが、形状が変化する段階が多く複雑な形状になると、インクリボン1が走行する抵抗になるので好ましくない。段階的にリボン収納部の幅が広がる形状の段階は、7段階以下が好ましく、より好ましくは5段階以下である。
【0027】
図4に示す導入部始点6dと導入部終点6eを結んだ直線が、リボン収納部6におけるインクリボン1の送り出し方向である中央線33となす角度のうち鋭角である角度6fはπ/6ラジアン以上13π/36ラジアン以下が好ましい。角度6fがπ/6ラジアン未満になっても、13π/36ラジアンを超えても、本発明のリボン収納部6の中央線を挟んだ両側の端部へ、より多くのインクリボン1が送り出される効果が得られ難い。中央線33は、巻取ギヤ3の回転中心軸と直交するカセットケース2の内壁2c上で、巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線である軸間線32と直交する直線である。
【0028】
導入部6cの収納部6の幅が広がりつつある両端の壁の形状は、線対称の形状であることが好ましいが、必ずしも線対称である必要はなく、どちらか一方にでも収納部6の幅が広がりつつある壁が設けられていれば、少なくとも、収納部6の幅が広がりつつある壁が設けられている側では、リボン折れ幅(インクリボン1の隣接する折り位置間の距離)が小さくなることを防ぐ効果は得られる。
【0029】
リボン収納部6の内高は、インクリボン1のリボン収納部6内での移動抵抗が大きくならないよう、インクリボン1の幅よりも大きくすることが好ましい。このため、巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近以外のリボン収納部6(以下、後方リボン収納部6bとする。)の内高は、0.8mm以上1.3mm以下の範囲でインクリボン1の幅よりも大きくすることが好ましい。後方リボン収納部6bの内高とインクリボン1の幅の差が0.8mm未満になると、後方リボン収納部6b内でのインクリボン1の流れが悪くなり、インクリボン1の走行不良が発生し易くなる。一方、後方リボン収納部6bの内高とインクリボン1の幅の差が1.3mmを超えると、後方リボン収納部6b内でのインクリボン1が倒れ易くなり、インクリボン1が倒れることによって、インクリボン1の走行不良が発生し易くなる。
【0030】
巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近のリボン収納部6(導入部6cに相当)の内高は、前記凸部2a,7aを巻取ギヤ3と従動ギヤ4付近から凸部前端2b、7b間に連続して設けることにより、後方リボン収納部6bの内高よりも0.4mm以上0.8mm以下の範囲で小さくすることが好ましい。導入部6cの内高と後方リボン収納部6bの内高の差が0.4mm未満になると、本発明のリボン収納部6の中央線を挟んだ両側の端部へ、より多くのインクリボン1が送り出される効果が得られ難い。一方、導入部6cの内高と後方リボン収納部6bの内高の差が0.8mmを超えると、導入部6cでのインクリボン1の流れが悪くなり、インクリボン1の走行不良が発生し易くなる。凸部2aの高さと凸部7aの高さは必ずしも同じである必要はないが、凸部2aの高さと凸部7aの高さのどちらか一方が高くなると、導入部6cと後方リボン収納部6bとの段差が大きくなって、インクリボン1の走行が不安定になることがあるので、凸部2aの高さと凸部7aの高さはできる限り同じ高さにすることが好ましい。
【0031】
インクリボンカセットAに使用される巻取ギヤ3と従動ギヤ4の歯車の種類は、特に限定されず、歯の形状が3角形の3角歯や、インボリュートギヤなどの任意の歯車を使用することができるが、インクリボン1をリボン収納部6に送り出す力を十分に確保するという点では、インボリュートギヤを使用することが好ましい。
【0032】
巻取ギヤ3と従動ギヤ4の歯車としてインボリュートギヤを使用する場合、インボリュートギヤのモジュールは0.4以上0.75以下が好ましく、0.5以上0.6以下がより好ましい。モジュールが0.4未満になると、歯車の歯の高さが小さくなり、インクリボン1に大きな張力が作用すると、巻取ギヤ3と従動ギヤ4の歯車間でインクリボン1が滑って、インクリボン1をリボン収納部6へ送り出せなくなることがある。一方、モジュールが0.75を超えると、歯車の歯の高さが大きくなるが、一周に設けられる歯車の歯数が少なく、噛み合う歯車の歯数が少なくなるので、この場合にも、インクリボン1に大きな張力が作用すると、巻取ギヤ3と従動ギヤ4の歯車間でインクリボン1が滑って、インクリボン1をリボン収納部6へ送り出せなくなることがある。
【0033】
図7(a)は、本発明の第2実施形態に係るインクリボンカセットBのカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図である。インクリボンカセットAでは、中央線33を挟んだ両側において、ギヤ接点11から凸部2a、7aの前端2b、7bまでの距離が中央線33上と同じであるのに対して、インクリボンカセットBでは、中央線33を挟んだ両側において、凸部2a、7aの前端2b、7bまでのギヤ接点11からの距離が、中央線33から遠ざかるにつれて徐々に短くなっている以外は、インクリボンカセットBは、インクリボンカセットAと同様である。インクリボンカセットAでは、凸部2a、7aの前端2b、7bを繋いだ線が、ギヤ接点11を中心とした半径15mmの円弧となっているのに対して、インクリボンカセットBでは、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、中央線33上のギヤ接点11から1.4Smmリボン送り出し方向下流の点を頂点34とする3角形状である。頂点34を構成する2辺は、導入部始点6dよりリボン送り出し方向へ3mm前方の軸間線32と平行な直線と、導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12又は従動ギヤセパレータ13の外形線との交点を通る直線である。
【0034】
インクリボンカセットBでは、凸部2a、7aの前端2b、7bを繋いだ線が直線となっているが、ギヤ接点11から凸部2a、7aの前端2b、7bまでの距離が、中央線33から遠ざかるにつれて徐々に短くなっている形状であれば、曲線になってもよい。インクリボンカセットBでは、頂点34を構成する2辺が、導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12、又は従動ギヤセパレータ13の外形と交差する点35は、中央線33を基準として導入部始点6dよりも外側とすることが好ましい。点35が中央線33を基準として導入部始点6d上または、導入部始点6dよりも内側になると、巻取ギヤ3又は従動ギヤ4と、カセットケース2又はカセットカバー7との隙間にインクリボン1が入り込んで、インクリボン1が巻取ギヤ3又は従動ギヤ4に巻きつき易くなるので好ましくない。また同様の理由で、頂点34を構成する2辺は、点35を超えて、巻取ギヤセパレータ12又は従動ギヤセパレータ13の外形線よりも内側まで連続して設けられることが好ましい。なお、本発明において。導入部始点6dは導入部6cの軸間線方向の幅が広がり始める点を意味し、インクリボンカセットBにおいては、巻取ギヤの回転時に巻取ギヤ3のギヤの歯先円と巻取ギヤセパレータ12の外形が交差する点、及び従動ギヤ3の回転時に従動ギヤ3のギヤの歯先円と従動ギヤセパレータ13の外形が交差する点である。
【0035】
凸部2a、7aは、収納部6から軸間線32を挟んで、収納部と反対側まで連続して設けられることが好ましい。ギヤ接点11付近では、凸部2a、7aは、巻取ギヤ3及び従動ギヤ4の各ギヤの歯底円よりも内側にまで設けられることが好ましい。凸部2a、7aが軸間線32を挟んで収納部と反対側から収納部6まで連続して設けることにより、ギヤ接点11付近でのインクリボン1がリボン幅方向に蛇行し難くなる。また、ギヤ接点11付近において、凸部2a、7aを、巻取ギヤ3及び従動ギヤ4の各ギヤの歯底円よりも内側にまで設けることにより、インクリボン1が巻取ギヤ3又は従動ギヤ4と、カセットケース2又はカセットカバー7との隙間に入り込むことを防止でき、インクリボンが走行不良になることを防止することができる。
【0036】
インクリボンカセットBでは、導入部6cよりインクリボン1の走行方向下流側であるリボン収納部では、カセットケース2の両側の側壁2dは互いに平行に設けられているが、必ずしも、両側の側壁2dが互いに平行である必要はない。リボン収納部6の面積が、リボン収納部6に収納するインクリボン1の長さに対して十分な大きさであり、インクリボン1の走行抵抗となって、インクリボン1の流れを止め、リボンジャムを発生させるような形状でなければ、リボン収納部6の形状はどのような形状でもよい。ただし、リボン収納部6内でのインクリボン1の走行を考慮すると、リボン収納部6の側壁2dは中央線33と平行であることが好ましい。
【実施例】
【0037】
(比較例1)
比較例1として、
図2及び
図3に示すインクリボンカセットZ1(Y)を準備した。インクリボンカセットZ1の巻取ギヤ3、従動ギヤ4ともに、モジュール0.55、歯数26枚、歯の厚み4mmのインボリュートギヤが、各ギヤの回転軸方向に2mmの隙間を開けて2枚設けられている。各ギヤに設けられた2枚のギヤ同士は、ギヤの円周方向に位相のずれが無く設けられている。したがって、巻取ギヤ3と従動ギヤ4は、それぞれの2枚のギヤ同士が同時に噛み合った状態で、スムースに回転することができる。インクリボンカセットZ1に使用するインクリボンとしては、リボン幅が13mm、リボンの平均厚みが113μmのナイロン生地に液体インクを塗布したものを使用する。
【0038】
巻取ギヤ3と従動ギヤ4をカセットケース2に装着し、カセットカバー7(図示せず)が装着されると、巻取ギヤ3と従動ギヤ4は、カセットケース2に設けられた穴とカセットカバー7(図示せず)に設けられた穴又は軸によって、位置決めされる。位置決めされることにより、巻取ギヤ3と従動ギヤ4は一定の間隔を開けて回転可能に保持される。
【0039】
巻取ギヤ3と従動ギヤ4は、通常インボリュートギヤを使用する間隔よりも、僅かに広い間隔を開けて位置決めされる。巻取ギヤ3と従動ギヤ4間にインクリボン1を挟み込んでリボン収納部6に送り出すため、巻取ギヤ3と従動ギヤ4の間隔はインクリボン1を挟み込んでも、スムースに回転できるように、通常のインボリュートギヤの間隔よりもインクリボン1の厚み程度広く設定される。
【0040】
インクリボンカセットZ1には、巻取ギヤ3へのインクリボン1の巻き付きを防止する巻取ギヤセパレータ12が、従動ギヤ4へのインクリボン1の巻き付きを防止する従動ギヤセパレータ13が、それぞれのギヤに装着されている。巻取ギヤセパレータ12には3枚のセパレータ板121が設けられ、3枚のセパレータ板121が巻取ギヤ3の2枚のギヤを挟み込むように、巻取ギヤセパレータ12が巻取ギヤ3に装着される。巻取ギヤセパレータ12がカセットケース2に装着された際に、リボン収納部6側となる3枚のセパレータ板121の端面は3枚とも同じ形状となっている。
【0041】
従動ギヤセパレータ13にも3枚のセパレータ板131が設けられ、3枚のセパレータ板131が従動ギヤ4の2枚のギヤを挟み込むように、従動ギヤセパレータ13は従動ギヤ4に装着される。従動ギヤセパレータ13がカセットケース2に装着された際に、リボン収納部6側となる3枚のセパレータ板131の端面も3枚ともに同じ形状となっている。
【0042】
インクリボンカセットZ1では、巻取ギヤセパレータ12と巻取ギヤセパレータ12に連続するカセットケース2の側壁2d、及び従動ギヤセパレータ13と従動ギヤセパレータ13に連続するカセットケース2の側壁2dによって構成される導入部6cが設けられている。導入部6cは巻取ギヤ2及び従動ギヤ3からインクリボン1が送り出される方向である送り出し方向に向かってリボン収納部6の軸間線32(巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線)方向の幅が徐々に広がる形状である。インクリボンカセットZ1では、巻取ギヤセパレータ12側と従動ギヤセパレータ13側の両方とも、導入部始点6dと導入部終点6eを結んだ直線が、リボンの送り出し方向である中央線33となす角度のうち、鋭角である角度6fは5π/18ラジアンとなっている。
【0043】
前記中央線33は、インクリボンカセットZ1のリボン収納部6におけるインクリボン1が巻取ギヤ2と従動ギヤ3によって、送り出される方向であるが、本発明では、この中央線33を下記のように定義する。
【0044】
インクリボンカセットZ1の巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線を軸間線32とする。また軸間線32上で前記巻取ギヤ3の回転中心から前記従動ギヤ4の回転中心に向かって、下記数式1で表わすCだけ移動した点として、表わすことができる点であり、巻取ギヤ3と従動ギヤ4が最も深く噛み合う位置をギヤ接点11とする。ギヤ接点11を通り、軸間線32と直交するリボン収納部6の底面であるカセットケース2の内壁2c上の直線を中央線33とする。
数式1:C=(前記巻取ギヤの回転中心と前記従動ギヤの回転中心間の距離)×(前記巻取ギヤのピッチ円直径)/(前記巻取ギヤのピッチ円直径+前記従動ギヤのピッチ円直径)
【0045】
インクリボンカセットZ1では、巻取ギヤセパレータ12側と従動ギヤセパレータ13側の両方とも、導入部終点6eよりも、インクリボンの送り出し方向下流側では、カセットケース2の側壁2dは、中央線33と平行となる。また中央線33と平行な両側の側壁2dとの距離は、巻取セパレータ12側が18mmで、従動セパレータ13側が22mmである。
【0046】
インクリボンカセットZ1の収納部6の内高、すなわち、カセットケース2の内壁2cと内壁2cに対向するカセットカバー7の内壁7cとの距離は、
図3(c)に示すように、インクリボン1の幅13mmよりも1mm広い14mmである。インクリボンカセットZ1の導入部6c付近には、リボン収納部6の内高を小さくするように、カセットケース2側から凸部2aが、カセットカバー7側から凸部7aが設けられており、凸部2a、凸部7aともに、高さ0.3mmの凸部となっている。
図2に示すように、凸部2a、凸部7aの平面形状は、ギヤ接点11からリボン送り出し方向へ7mmの場所にある軸間線32と平行で、少なくとも巻取ギヤセパレータ12から従動ギヤセパレータ13間に連続して設けられた直線を、リボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bとする形状になっている。すなわち、凸部2a、7aは、凸部前端2b又は7bと両ギヤ3,4間のリボン収納部全域にわたって、設けられている。
【0047】
(比較例2)
比較例2のインクリボンカセットZ2は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットZ1と同様である。インクリボンカセットZ2の凸部2a、凸部7aの平面形状は、ギヤ接点11からリボン送り出し方向へ32mmの場所にある軸間線32と平行で、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた直線を、リボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bとする形状になっている。
【0048】
(比較例3)
比較例3のインクリボンカセットZ3は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットZ1と同様である。インクリボンカセットZ3の凸部2a、凸部7aの平面形状は、ギヤ接点11からリボン送り出し方向へ60mmの場所にある軸間線32と平行で、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた直線を、リボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bとする形状になっている。
【0049】
(比較例4)
図5に比較例4のインクリボンカセットZ4を示す。
図5(a)は、インクリボンカセットZ4のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図5(b)は、
図5(a)を2倍に拡大し、カセットカバー7を装着した状態のT-T断面図である。比較例4のインクリボンカセットZ4は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットZ1と同様である。インクリボンカセットZ4の凸部2a、凸部7aの平面形状は、ギヤ接点11を中心とする半径12mmで、少なくともインクリボンカセットZ4の導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12の外形線に相当する位置から従動ギヤセパレータ13の外形線に相当する位置の間に連続して設けられた円弧を、リボン送り出し方向下流の凸部前端2b、7bとする形状になっている。
【0050】
(比較例5)
図6に比較例5のインクリボンカセットZ5を示す。
図6(a)は、インクリボンカセットZ5のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図6(b)は、
図6(a)を2倍に拡大し、カセットカバー7を装着した状態のT-T断面図である。インクリボンカセットZ5がインクリボンカセットZ1と異なる点は、凸部2a、凸部7aの平面形状のみである。インクリボンカセットZ5でも、巻取ギヤセパレータ12と巻取ギヤセパレータ12に連続するカセットケース2の側壁2d、及び従動ギヤセパレータ13と従動ギヤセパレータ13に連続するカセットケース2の側壁2dによって構成される導入部6cが設けられている。導入部6cは巻取ギヤ2及び従動ギヤ3からインクリボン1が送り出される方向である送り出し方向に向かってリボン収納部6の軸間線32(巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線)方向の幅が徐々に広がる形状である。インクリボンカセットZ5では、巻取ギヤセパレータ12側の導入部形状と従動ギヤセパレータ13側の導入部形状は、異なる形状となっている。このため、ギヤ接点11から巻取ギヤセパレータ12側の導入部終点6eまでの距離と、ギヤ接点11から従動ギヤセパレータ13側の導入部終点6eまでの距離が異なっている。ギヤ接点11から遠い側の導入部終点6eまでの距離をSmmとすると、インクリボンカセットZ5の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bは、ギヤ接点11を中心とする半径1.5Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0051】
(比較例6)
比較例6のインクリボンカセットZ6は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットZ5と同様である。インクリボンカセットZ6の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径1.8Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0052】
(実施例1)
実施例1のインクリボンカセットX1は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットZ1と同様である。インクボンカセットX1の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bは、ギヤ接点11を中心とする半径15mmで、少なくともインクリボンカセットX1の導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12の外形線に相当する位置から従動ギヤセパレータ13の外形線に相当する位置の間に連続して設けられた円弧状になっている。
【0053】
(実施例2)
図4に、実施例2のインクリボンカセットX2を示す。
図4(a)は、インクリボンカセットX2のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図4(b)は、
図4(a)を2倍に拡大し、カセットカバー7を装着した状態のT-T断面図である。実施例2のインクリボンカセットX2は、導入部6cの形状の一部が異なる以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX2に使用する巻取ギヤセパレータ12と従動ギヤセパレータ13は、インクリボンカセットX1に使用するものと同様である。インクリボンカセットX2の導入部6cは、リボン収納部6の軸間線32(巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線)方向の幅が徐々に広がる形状が一直線に連続しておらず、段階的に広がる形状になっている以外は、インクリボンカセットX1の導入部6cと同様である。インクリボンカセットX2の導入部6cでは、巻取ギヤセパレータ12と従動ギヤセパレータ13の形状により、リボン収納部6の軸間線32(巻取ギヤ3の回転中心と従動ギヤ4の回転中心を結んだ直線)方向の幅が徐々に広がったのち、リボン収納部6の軸間線32方向の幅が広がらない部分が設けられていること以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX2では、導入部6cにリボン収納部6の軸間線32方向の幅が広がらない部分が設けられていることにより、導入部始点6dと導入部終点6eを結んだ直線が、リボン収納部6におけるインクリボン1の送り出し方向である中央線33となす角度のうち、鋭角である角度6fがπ/5ラジアンとなっている。また、インクリボンカセットX2における、
図4の2箇所のV1の合計は20.5mmであり、2箇所のV2の合計は15.6mmである。これに対して、W1は5.5mmであり、W2は9.4mmである。したがって、インクリボンカセットX2では、段階的に収納部6の幅が広がるリボン収納部形状において、傾斜部分の斜線の長さの合計は、収納部6の幅が広がらない直線部分の直線の長さの合計よりも長くなっている。
【0054】
(実施例3)
実施例3のインクリボンカセットX3は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX3の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径1.2Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0055】
(実施例4)
実施例4のインクリボンカセットX4は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX2と同様である。インクリボンカセットX4の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径1.2Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0056】
(実施例5)
実施例5のインクリボンカセットX5は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX5の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径0.9Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0057】
(実施例6)
実施例6のインクリボンカセットX6は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX2と同様である。インクリボンカセットX6の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径0.9Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dに相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0058】
(実施例7)
実施例7のインクリボンカセットX7は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX7の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径1.4Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dの相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0059】
(実施例8)
実施例8のインクリボンカセットX8は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX2と同様である。インクリボンカセットX8の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、ギヤ接点11を中心とする半径1.4Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dの相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0060】
(実施例9)
図7に実施例9のインクリボンカセットX9を示す。
図7(a)は、インクリボンカセットX9のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図7(b)は、
図7(a)を2倍に拡大し、カセットカバーを装着した状態のT-T断面図である。実施例9のインクリボンカセットX9は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX1と同様である。インクリボンカセットX9の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、中央線33上のギヤ接点11から1.4Smmリボン送り出し方向下流の点を頂点34とする3角形状である。頂点34を構成する2辺は、導入部始点6dよりリボン送り出し方向へ3mm前方(下流)の軸間線32と平行な直線と、導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12又は従動ギヤセパレータ13の外形線の交点を通る直線である。
【0061】
(実施例10)
図8に実施例10のインクリボンカセットX10を示す。
図8(a)は、インクリボンカセットX10のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図8(b)は、
図8(a)を2倍に拡大し、カセットカバーを装着した状態のT-T断面図である。実施例10のインクリボンカセットX10は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、リボンカセットX2と同様である。インクリボンカセットX10の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、中央線33上のギヤ接点11から1.4Smmリボン送り出し方向下流の点を頂点34とする3角形状である。頂点34を構成する2辺は、導入部始点6dよりリボン送り出し方向へ3mm前方(下流)の軸間線32と平行な直線と、導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ12又は従動ギヤセパレータ13の外形線の交点を通る直線である。
【0062】
(実施例11)
実施例11のインクリボンカセットX11は、頂点34の位置が異なる以外は実施例9のインクリボンカセットX9と同様である。インクリボンカセットX11の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から1.2Smmリボン送り出し方向下流の点である。
【0063】
(実施例12)
実施例12のインクリボンカセットX12は、頂点34の位置が異なる以外は実施例9のインクリボンカセットX9と同様である。インクリボンカセットX12の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から15mmリボン送り出し方向下流の点である。
【0064】
(実施例13)
実施例13のインクリボンカセットX13は、頂点34の位置が異なる以外は実施例10のインクリボンカセットX10と同様である。インクリボンカセットX13の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から1.2Smmリボン送り出し方向下流の点である。
【0065】
(実施例14)
実施例14のインクリボンカセットX14は、頂点34の位置が異なる以外は実施例10のインクリボンカセットX10と同様である。インクリボンカセットX14の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から15mmリボン送り出し方向下流の点である。
【0066】
(実施例15)
図9に実施例15のインクリボンカセットX15を示す。
図9(a)は、インクリボンカセットX15のカセットカバーを除去した状態の巻取ギヤと従動ギヤ付近の詳細図であり、
図9(b)は、
図9(a)を2倍に拡大し、カセットカバーを装着した状態のT-T断面図である。実施例15のインクリボンカセットX15は、凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状が異なる以外は、インクリボンカセットX2と同様である。インクリボンカセットX15の凸部2a、凸部7aのリボン送り出し方向下流の前端2b、7bの形状は、中央線33上のギヤ接点11から0.5Smmリボン送り出し方向下流の点を中心とし、中央線33上のギヤ接点11から1.2Smmリボン送り出し方向下流の点を通る半径0.7Smmで、カセットケース2の一方の側壁2dから他方の側壁2d間(カセットカバー7においては、カセットケース2の一方の側壁2dに相当する位置から他方の側壁2dの相当する位置の間)に連続して設けられた円弧状になっている。
【0067】
(比較例7)
比較例7のインクリボンカセットZ7は、頂点34の位置が異なる以外は実施例9のインクリボンカセットX9と同様である。インクリボンカセットZ7の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から12mmリボン送り出し方向下流の点である。
【0068】
(比較例8)
比較例8のインクリボンカセットZ8は、頂点34の位置が異なる以外は実施例10のインクリボンカセットX10と同様である。インクリボンカセットZ8の頂点34は、中央線33上のギヤ接点11から12mmリボン送り出し方向下流の点である。
【0069】
(折れ幅評価)
各インクリボンカセットに長さ40mのインクリボン1を収納し、インクリボン1の両端部を超音波溶着により接合し各実施例、各比較例のインクリボンカセットを準備した。各実施例、各比較例のインクリボンカセットを所定のプリンターに装着して、印字用紙ほかすべての印字条件を同様にして、印字試験を実施した。印字試験後の各実施例、各比較例のカセットカバーを開け、収納されているインクリボンの折れている位置にはさみで深さ約2mmの切り込みを入れた。すべての折位置に切り込みを入れたのち、各実施例、各比較例のインクリボンカセットからインクリボンを取り出し、すべての切り込みの間隔を実測することにより、各実施例、各比較例のインクリボンカセットのリボン折れ幅を測定した。測定は拡大率10倍、最小測定目盛0.1mmのルーペのガラス面でインクリボンを押さえることにより、インクリボンのしわを延ばした状態で実施した。この測定結果を下記基準で評価した結果を、表1に示す。
◎ :リボン折れ幅の平均値が5.3mm以上であった。
○ :リボン折れ幅の平均値が5.0mm以上5.3mm未満であった。
× :リボン折れ幅の平均値が4.5mm以上5.0mm未満であった。
××:リボン折れ幅の平均値が4.5mm未満であった。
【0070】
【符号の説明】
【0071】
A、B、X1~X15、Y、Z1~Z8 インクリボンカセット
1 インクリボン
2 カセットケース
2a凸部
2b凸部前端
2c内壁
2d側壁
3 巻取ギヤ
3a 歯車の歯(巻取ギヤ)
4 従動ギヤ
4a 歯車の歯(従動ギヤ)
6 リボン収納部
6a前方リボン収納部(リボン収納部6のうち、2a、7aが設けられた箇所)
6b後方リボン収納部
6c導入部
6d導入部始点
6e導入部終点
6f導入部始点6dと導入部終点6eを結んだ直線が、リボン収納部6におけるインクリボン1の送り出し方向(中央線33)となす角度のうち、鋭角である角度
7 カセットカバー
7a凸部
7b凸部前端
7c内壁
8 板バネ
10 (印字装置の印字ヘッドが入り込む)空間
11ギヤ接点
12巻取ギヤセパレータ
121(巻取ギヤセパレータの)セパレータ板
13従動ギヤセパレータ
131(従動ギヤセパレータの)セパレータ板
30 印字装置の印字ヘッド
31 印字装置のリボン駆動軸
32 軸間線
33 中央線
34 3角形状の頂点
35 頂点34を構成する2辺が、導入部6cを構成する巻取ギヤセパレータ
12の外形線、又は従動ギヤセパレータ13の外形線と交差する点
S ギヤ接点11から遠い側の導入部終点6eまでの距離
R ギヤ接点11から凸部前端2b、または凸部前端7bの最も遠い位置までの距離