(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】フルオレン骨格を有するアルコール化合物を含む樹脂原料用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220927BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C08L101/00
C07C43/23 D
(21)【出願番号】P 2018166516
(22)【出願日】2018-09-06
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】平林 俊一
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210471(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104263287(CN,A)
【文献】国際公開第2017/078074(WO,A1)
【文献】特開2018-076238(JP,A)
【文献】特開2018-028036(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051114(WO,A1)
【文献】特開2018-104353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08G 63/00-63/91
C07C 43/00-43/32
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下式(1):
【化1】
で表されるアルコール化合物を85.0~99.9重量%、以下式(2):
【化2】
で表されるアルコール化合物を0.01~0.5重量%含み、
芳香族炭化水素類の含量が1重量%未満であり、示差走査熱量分析による融解吸熱最大温度が148~151℃である、樹脂原料用組成物。
【請求項2】
更に以下式(3):
【化3】
で表されるアルコール化合物の含量が0.1重量%以下である、請求項1に記載の樹脂原料用組成物。
【請求項3】
ゆるめ嵩密度が0.4g/cm
3以上である、請求項1又は2に記載の樹脂原料用組成物。
【請求項4】
以下式(2):
【化4】
で表される
嵩密度改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学レンズ、光学フィルム等の光学部材を構成する樹脂(光学樹脂)の原料モノマーとして好適で、加工性、生産性に優れた樹脂原料用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格を有するアルコール類を原料モノマーとするポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、エポキシなどの樹脂材料は、光学特性、耐熱性等に優れることから、近年、光学レンズや光学シートなどの新たな光学材料として注目されている。中でも以下式(1):
【0003】
【化1】
で表される構造を有するアルコール化合物は、該アルコール化合物及びその誘導体から製造される樹脂が屈折率等の光学特性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、電気特性、機械特性、溶解性等の諸特性に優れることから、特に光学樹脂の原材料として着目されている(例えば特許文献1)。
【0004】
一方、上記式(1)で表されるアルコール化合物は、その製造工程で使用する芳香族炭化水素類を包接して包接化合物を形成し、該包接化合物を減圧乾燥する際に包接している芳香族炭化水素類の除去が困難であることが知られており、芳香族炭化水素類を包接しない上記式(1)で表されるアルコール化合物の製造方法が複数報告されている(例えば特許文献2~4)。
【0005】
特許文献2では、特定条件下にて上記式(1)で表されるアルコール化合物を製造した後、芳香族炭化水素類とメタノールを含む溶液から特定温度で上記式(1)で表される化合物の結晶を析出させることにより、芳香族炭化水素類を包接していない上記式(1)で表される化合物を得る方法が記載されている。また、特許文献3では、水溶性ケトン及び水溶性アルコールの混合溶媒から上記式(1)で表されるアルコール化合物を晶析させることにより、芳香族炭化水素類を包接していない、上記式(1)で表される化合物を得る方法が記載されている。両文献に記載される方法によって得られる上記式(1)で表される化合物の結晶の融点は共に148~151℃(示差走査熱量分析による融解吸熱最大温度。)と、芳香族炭化水素類を包接している上記式(1)で表される化合物と同程度の融点を示すことが記載されている。
【0006】
特許文献4では、炭素数が4以上の鎖状ケトン類を含有し、かつ芳香族炭化水素類及び環状ケトン類の合計含有量が10重量%未満である晶析溶液から特定温度で、上記式(1)で表される化合物の結晶を析出させることにより、芳香族炭化水素類を包接していない、上記式(1)で表される化合物を得る方法が記載されている。前記方法では複数の結晶多形体が得られることが記載されており、これら結晶多形体の融点は167~196℃の間と、芳香族炭化水素類を包接している上記式(1)で表される化合物の融点より高融点を示すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平07―149881号公報
【文献】特開2017-200900号公報
【文献】特開2017-141182号公報
【文献】特開2017-200901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明者らが特許文献2及び3の方法を追試したところ、該方法により製造される結晶は、その嵩密度(ゆるめ嵩密度)が0.25~0.29g/cm3と小さく、使用時や輸送時の取扱性に劣るといった問題があることが判明した。一方、特許文献4の方法で製造される結晶は、その嵩密度が0.5~1.5g/cm3であることが記載され、特許文献2及び3に記載される結晶に比べ嵩密度は改善されているものの、前述の通り融点が高いことから、溶融重合等、結晶を一旦溶融して使用する際にはより多くのエネルギーが必要であったり、より高い温度とすることが可能な反応容器が必要である等、殊に工業的使用においては、融点の低い結晶に比べ使い勝手に劣るといった問題がある。
【0009】
本発明の目的は、芳香族炭化水素類の含有量が少なく、かつ嵩密度が比較的高く、更にはその融点が芳香族炭化水素類を包接する包接体と同程度の、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む樹脂原料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、上記式(1)で表されるアルコール化合物に、以下式(2)で表されるアルコール化合物を一定量含有させ樹脂原料用組成物とすることによって前記課題が解決可能であることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
【0011】
[1]
以下式(1):
【0012】
【化2】
で表されるアルコール化合物を85.0~99.9重量%、以下式(2):
【0013】
【化3】
で表されるアルコール化合物を0.01~0.5重量%含み、
芳香族炭化水素類の含量が1重量%未満であり、示差走査熱量分析による融解吸熱最大温度が148~151℃である、樹脂原料用組成物。
【0014】
[2]
更に以下式(3):
【0015】
【化4】
で表されるアルコール化合物の含量が0.1重量%以下である、[1]に記載の樹脂原料用組成物。
【0016】
[3]
ゆるめ嵩密度が0.4g/cm3以上である、[1]又は[2]に記載の樹脂原料用組成物。
【0017】
[4]
以下式(2):
【0018】
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、芳香族炭化水素類の含有量が少なく、かつ嵩密度が比較的高く、更にはその融点が芳香族炭化水素類を包接する包接体と同程度の、上記式(1)で表されるアルコール化合物を含む樹脂原料用組成物が提供可能となる。
【0020】
また、本発明の樹脂原料用組成物は、上記式(2)で表されるアルコール化合物を一定量含むためか、該樹脂原料用組成物を製造する際、ろ過性に優れるとの特徴を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】製造例1で得られた、上記式(2)で表されるアルコール化合物のLC-MSチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<本発明の樹脂原料用組成物>
本発明の樹脂原料用組成物は、上記式(1)で表されるアルコール化合物を85.0~99.9重量%含む。含量が85.0重量%より少ない場合、樹脂原料用組成物として好適に使用できない場合がある。
【0023】
本発明の樹脂原料用組成物には、上記式(2)で表されるアルコール化合物を0.01~0.5重量%含む必要がある。含量が0.01重量%未満、あるいは0.5重量%より多い場合、嵩密度が改善せず、本発明の課題が解決できない恐れがある。
【0024】
本発明の樹脂原料用組成物に含まれる、上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量は0.1重量%以下であることが好ましい。0.1重量%以下とすることにより、本発明の樹脂原料用組成物を用いて製造される樹脂の強度、耐熱性(ガラス転移温度)をより向上させることが可能となる。
【0025】
上記式(1)で表されるアルコール化合物が芳香族炭化水素類を包接する場合、その含有量は1~6重量%程度となる(特許文献3、[0005])。従って、本発明の樹脂原料用組成物に含まれる上記式(1)で表されるアルコール化合物は主に非包接体である必要がある。非包接体である上記式(1)で表されるアルコール化合物は例えば、特許文献2、3記載の方法により製造することができる。また、主に非包接体である上記式(1)で表されるアルコール化合物を使用することから、本発明の樹脂原料用組成物に含まれる芳香族炭化水素類は通常1重量%未満であり、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下である。
【0026】
本発明の樹脂原料用組成物の示差走査熱量分析による融解吸熱最大温度は148~151℃である。本発明における示差走査熱量分析による融解吸熱最大温度とは、後述する条件にて示差走査熱量分析を実施した際、最大吸熱ピークが観測される温度のことをいう。
【0027】
本発明の樹脂原料用組成物は、示差走査熱量分析により得られる吸熱ピークを165~200℃の範囲に含まないことが好ましい。前記範囲に吸熱ピークを含む場合、高融点である他の結晶形(特許文献4記載の結晶多形体)を含むことが示唆されることから、その含有量によっては結晶溶融の際、吸熱ピークを含まない樹脂原料用組成物に比べより多くのエネルギーが必要となる場合がある。
【0028】
本発明の樹脂原料用組成物のゆるめ嵩密度は0.4g/cm3以上、具体的には0.4~0.5g/cm3である。なお、本発明におけるゆるめ嵩密度とは、後述する方法によって測定される嵩密度のことをいう。
【0029】
<本発明の樹脂原料用組成物の製造方法>
本発明の樹脂原料用組成物は例えば、特許文献2記載の方法により上記式(1)で表されるアルコール化合物を製造し、再晶析等の精製操作によって上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量を上述する範囲となるまで精製操作を繰り返すことによって製造することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は何ら限定されるものではない。なお、例中、各種測定は下記の方法で実施した。また、以下実施例等に記載した各成分の含量は、下記条件で測定した高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって得られた面積値に基づき、絶対検量線法により求めた値であり、また、芳香族炭化水素類の含量については下記条件に基づくガスクロマトグラフィー(GC)によって得られた面積値に基づき、内部標準法(内標:1,2-ジメトキシエタン)により求めた値である。
【0031】
(1)HPLC測定条件
装置 :島津製作所製 LC-2010A
カラム:Waters XBridge Shield RP18(3.5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:純水/アセトニトリル(アセトニトリル70%→100%)
流量 :1.0ml/min
カラム温度:40℃
検出波長:UV 254nm
【0032】
(2)GC測定条件
装置:島津製作所製 GC-2014
カラム:DB-1(0.25μm、0.25mmID×30m)
昇温:40℃(5分保持)→20℃/min→250℃(10分保持)
Inj温度:250℃
Det温度:300℃
スプリット比 1:10
キャリアー:窒素54.4kPa(一定)
【0033】
(3)示差走査熱量測定(DSC)による融解吸熱最大温度の測定条件
サンプル5mgをアルミパンに精密に秤取し、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社:DSC7020)を用い、酸化アルミニウムを対照として下記操作条件で測定し、検出された融解吸熱最大温度を融点として下記した。
(操作条件)
昇温速度:10℃/min
測定範囲:30-250℃
雰囲気 :開放、窒素40ml/min
【0034】
(4)ゆるめ嵩密度の測定条件
ホソカワミクロン社製パウダーテスター PT-X型を使用して、ゆるめ嵩密度を測定した。
【0035】
(5)LC-MS測定条件
装置:Waters社製 Xevo G2 Q-Tof
カラム:Waters社製 X SELECT CSH C18(3.5μm、4.6mmφ×150mm)
カラム温度:40℃
検出波長:UV 254nm
移動相:A液=純水、B液=アセトニトリル。なお、B液濃度に付、下記の通り濃度を変化させ分析を行った。
B液濃度:50%(0min)→70%(10min)→70%(18min)→
100%(25min)→100%(35min)
移動相流量:0.8ml/min
検出法:Q-Tof
イオン化法:APCI(-)法
Ion Source:コロナ電流 20.0μA、温度 150℃
Sampling Cone:電圧 30V、ガスフロー 50L/h
Desolvation Gas:温度 600℃、ガスフロー 1200L/h
Mass range:100-1300
【0036】
<比較例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン900g、炭酸カリウム20.4g、エチレンカーボネート361g、トルエン1350g、およびトリエチレングリコールジメチルエーテル90gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で8時間撹拌した。
得られた反応液を90℃まで冷却した後、水1350gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を濃縮することにより溶媒を除去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物にトルエン294g、メタノール1128gを添加し晶析溶液を得た。
得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.1℃/分で冷却することにより44℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。更に20℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。
得られた結晶を内圧1.3kPaの減圧下、内温を68℃~73℃で5時間乾燥することにより、上記式(1)で表されるアルコール化合物860gを得た。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の各分析値は以下の通りであった。
【0037】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.20重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.74重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.03重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.253g/cm3
【0038】
<比較例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、9,9’-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレン)900g、炭酸カリウム20.4g、エチレンカーボネート361g、トルエン1350g、およびトリエチレングリコールジメチルエーテル900gを仕込み、115℃まで昇温し、同温度で13時間撹拌した。
得られた反応液を85℃まで冷却した後、水1350gを加え、80~85℃で30分撹拌し、静置後、水層を分離した。同じ操作を3回繰り返した後、得られた有機溶媒層を一部濃縮し、上記式(1)で表されるアルコール化合物、トルエン及びメチルジグライムを含む溶液を得た。該溶液にトルエン330g、メタノール510gを添加し晶析溶液を得た後、得られた晶析溶液を65℃まで昇温し、同温度で1時間撹拌して結晶を完溶させた後、0.15℃/分で冷却し40℃とした時点で、比較例1で得られた結晶0.1gを種晶として添加した所、結晶が析出した。その後、同温度で1時間撹拌した。撹拌後、更に25℃まで冷却した後、濾過し、結晶を得た。
得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、内温を68℃~73℃で5時間乾燥することにより、上記式(1)で表されるアルコール化合物801gを得た。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の各分析値は以下の通りであった。
【0039】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.40重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.56重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.05重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.290g/cm3
【0040】
<比較例3~6>
反応、水洗、濃縮後、得られた濃縮物に添加するトルエン及びメタノール量を以下表1に示す量に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、上記式(1)で表される化合物を製造した。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の各分析値は以下表1に示す通りであった。
【0041】
【表1】
なお、上記表(1)中、式(3)で表される化合物のピークは検出されなかったため、その含量を0.00%とした。また、融点とはDSC融解吸熱最大温度を表し、いずれの比較例においても165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在しなかった。
【0042】
<比較例7>
特開2017-141182号実施例1と同様の操作を行い、上記式(1)で表される化合物を製造した。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の各分析値は以下の通りであった。
【0043】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.60重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.19重量%
トルエン含量:0.05重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.260g/cm3
【0044】
<比較例8>
特開2017-141182号実施例2と同様の操作を行い、上記式(1)で表される化合物を製造した。得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物の各分析値は以下の通りであった。
【0045】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.70重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.12重量%
トルエン含量:0.03重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.242g/cm3
【0046】
<製造例1 上記式(2)で表されるアルコール化合物の単離、同定>
比較例1~6のろ過操作時に得られたろ液を濃縮することにより濃縮物を得、濃縮物をメチル-tert-ブチルエーテルに溶解した後、PLCプレート(メルク社製シリカゲル60PLCプレート)にて分取することにより上記式(2)で表されるアルコール化合物を単離した。得られた上記式(2)で表されるアルコール化合物は上記した条件にてLC-MS分析をすることにより、上記式(2)で表される構造を有することを確認した。
図1にLC-MSチャートを示すと共に、分析結果を下記する。
分析値:545.21([M-H]
-)
【0047】
<実施例1>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、比較例1で得られた上記式(1)で表されるアルコール化合物700g、トルエン770g、メタノール770gを加え、65℃まで昇温後、同温度で2時間撹拌することにより上記式(1)で表されるアルコール化合物を溶解させた。その後、0.1℃/分で冷却することにより44℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。更に20℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。
得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、内温を68℃~73℃で5時間乾燥することにより、本発明の樹脂原料用組成物641gを得た。得られた樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0048】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.50重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.31重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.03重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.442g/cm3
【0049】
<実施例2>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、実施例1で得られた樹脂原料用組成物490g、トルエン539g、メタノール539gを加え、65℃まで昇温後、同温度で2時間撹拌することにより樹脂原料用組成物を溶解させた。その後、0.1℃/分で冷却することにより42℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。更に20℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。
得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、内温を68℃~73℃で5時間乾燥することにより、本発明の樹脂原料用組成物451gを得た。得られた樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0050】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.70重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.11重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.04重量%
DSC融解吸熱最大温度:149℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.433g/cm3
【0051】
<実施例3>
攪拌器、加熱冷却器、および温度計を備えたガラス製反応器に、実施例2で得られた樹脂原料用組成物300g、トルエン330g、メタノール330gを加え、65℃まで昇温後、同温度で2時間撹拌することにより樹脂原料用組成物を溶解させた。その後、0.1℃/分で冷却することにより43℃で結晶を析出させ、同温度で2時間撹拌した。更に20℃まで冷却した後、濾過し結晶を得た。
得られた結晶を内圧1.1kPaの減圧下、内温を68℃~73℃で5時間乾燥することにより、本発明の樹脂原料用組成物272gを得た。得られた上樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0052】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:99.10重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.01重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.02重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.490g/cm3
【0053】
<実施例4>
上記式(1)で表されるアルコール化合物を比較例2で得られたものに変更し、その使用量を600gとし、トルエンの使用量を660g、メタノールの使用量を660gとする以外は実施例1と同様に精製操作を行い、本発明の樹脂原料用組成物546gを得た。得られた樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0054】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.60重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.19重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.03重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.463g/cm3
【0055】
<実施例5>
上記式(1)で表されるアルコール化合物を比較例3で得られたものに変更し、トルエンの使用量を850g、メタノールの使用量を470gとする以外は実施例1と同様に精製操作を行い、本発明の樹脂原料用組成物617gを得た。得られた樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0056】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.50重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.37重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.04重量%
DSC融解吸熱最大温度:149℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.424g/cm3
【0057】
<実施例6>
上記式(1)で表されるアルコール化合物を比較例6で得られたものに変更する以外は実施例5と同様に精製操作を行い、本発明の樹脂原料用組成物613gを得た。得られた樹脂原料用組成物の各分析値は以下の通りであった。
【0058】
上記式(1)で表されるアルコール化合物の含量:98.50重量%
上記式(2)で表されるアルコール化合物の含量:0.41重量%
上記式(3)で表されるアルコール化合物の含量:0.00重量%(検出せず)
トルエン含量:0.04重量%
DSC融解吸熱最大温度:150℃(165~200℃の範囲に吸熱ピークは存在せず)
ゆるめ嵩密度:0.401g/cm3