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特許7146369電動アクチュエータおよび電動アクチュエータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】電動アクチュエータおよび電動アクチュエータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20220927BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20220927BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220927BHJP
   F16H 25/22 20060101ALI20220927BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20220927BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20220927BHJP
   B60T 13/74 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16D65/16
F16H25/20 E
F16H25/22 C
H02K5/22
B62D5/04
B60T13/74 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017065447
(22)【出願日】2017-03-29
(65)【公開番号】P2018170839
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰徳
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033400(JP,A)
【文献】特開2015-233388(JP,A)
【文献】特開2008-022653(JP,A)
【文献】特開2005-291154(JP,A)
【文献】特許第4885320(JP,B1)
【文献】特開2015-198573(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065736(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/06
F16D 65/16
F16H 25/20
F16H 25/22
H02K 5/22
B62D 5/04
B60T 13/74
F16D 121/24
F16D 125/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータを有する駆動部と、該駆動部の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部とを備え、前記運動変換機構部が、前記駆動部の回転運動を受けて回転するナットと、該ナットの内周に配置され、前記ナットの回転に伴って直線運動するねじ軸とを有する電動アクチュエータにおいて、
ケースと、
前記ケースと一体に形成された導電部材とを備え、
前記導電部材は、前記電動モータのモータ端子が挿入されて導通可能に接続される挿入部を有し、
前記挿入部は、前記モータ端子の第1面に接触する底部と、前記モータ端子の前記第1面とは反対側の第2面に接触する一対の押さえ部とを有し、
前記一対の押さえ部は、前記底部の幅方向両端から前記底部とは交差する方向に立ち上がると共に、湾曲して先端が前記底部を向くように形成され、
前記モータ端子が、前記底部と前記一対の押さえ部の各先端とによって挟まれて保持され、
前記底部は、前記モータ端子に設けられた凸部と係合する凹部を有し、
前記凸部と前記凹部は、前記導電部材に対する前記モータ端子の挿入方向とは交差する方向に係合することを特徴とする電動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ケースは、前記電動モータと嵌合したモータ嵌合部を有し、
前記モータ嵌合部に対する前記電動モータの嵌合方向と、前記挿入部に対する前記モータ端子の挿入方向とを同じ方向とした請求項1に記載の電動アクチュエータ。
【請求項3】
電動モータを有する駆動部と、該駆動部の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部とを備え、前記運動変換機構部が、前記駆動部の回転運動を受けて回転するナットと、該ナットの内周に配置され、前記ナットの回転に伴って直線運動するねじ軸とを有する電動アクチュエータの製造方法において、
挿入部を有する導電部材をケースと一体に形成し、
前記挿入部は、前記電動モータのモータ端子の第1面に接触する底部と、前記モータ端子の前記第1面とは反対側の第2面に接触する一対の押さえ部とを有し、
前記一対の押さえ部は、前記底部の幅方向両端から前記底部とは交差する方向に立ち上がると共に、湾曲して先端が前記底部を向くように形成され、
前記モータ端子を前記挿入部に挿入して、前記底部と前記一対の押さえ部の各先端とによって前記モータ端子を挟んで保持し、前記底部に、前記モータ端子に設けられた凸部と係合する凹部が形成されると共に前記凸部と前記凹部が、前記導電部材に対する前記モータ端子の挿入方向とは交差する方向に係合し、前記モータ端子と前記挿入部を導通可能に接続することを特徴とする電動アクチュエータの製造方法。
【請求項4】
前記挿入部に前記モータ端子を挿入する際に、前記挿入部が塑性変形することで、前記挿入部と前記モータ端子とを密着させる請求項3に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【請求項5】
前記ケースに対して前記導電部材をインサート成型する請求項3又は4に記載の電動アクチュエータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アクチュエータおよび電動アクチュエータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、その省力化や低燃費化のために電動化が進展し、例えば、自動変速機、ブレーキ、ステアリング等の操作を電動モータの力を利用して行うシステムが開発され、市場に投入されている。このような用途に使用されるいわゆる直線運動型の電動アクチュエータとして、モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構にボールねじを用いたものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、運動変換機構部にボールねじを採用した直線運動型の電動アクチュエータにおいて、モータの配線を駆動回路に接続するために、ハウジングに配線を通す開口部を設けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5218817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のような構成では、電動アクチュエータの組み立て工程において、配線をハウジングの開口部を通して取り出す作業が必要となるため、組み立て工数が増加するといった課題がある。また、開口部と配線との隙間からハウジング内に粉塵や水等の異物が侵入する虞があり、これを防止するには、開口部と配線との隙間を密閉する処理が必要となるため、コストが増加するといった課題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、電動モータに対する導電部材の接続作業を容易に行うことができると共に、導電部材とケースとの間の密閉処理が不要な電動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための技術的手段として、本発明は、電動モータを有する駆動部と、駆動部の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部とを備え、運動変換機構部が、駆動部の回転運動を受けて回転するナットと、ナットの内周に配置され、ナットの回転に伴って直線運動するねじ軸とを有する電動アクチュエータにおいて、ケースと、ケースと一体に形成された導電部材とを備え、導電部材は挿入部を有し、挿入部に電動モータのモータ端子が挿入されて導通可能に接続されたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る電動アクチュエータにおいては、挿入部にモータ端子を挿入するだけでこれらを導通可能に接続することができるので、導電部材とモータ端子との接続作業を容易に行うことができる。また、導電部材がケースと一体に形成されていることで、ケースに対する導電部材の取付作業を別途行わなくてもよくなり、組立工数を削減できる。また、導電部材をケースと一体に形成することで、これらを別体で形成した場合のような、導電部材とケースとの間の隙間の発生を防止できるので、隙間を塞ぐ密閉処理を別途行わなくてもケース内への異物の侵入を防止できる。
【0009】
導電部材とモータ端子とを接続するにあたっては、挿入部によってモータ端子を挟んで保持することが好ましい。このように、挿入部によってモータ端子を挟んで保持することで、モータ端子と導電部材とが強固に接続され、振動などに対する接続強度が向上する。
【0010】
例えば、挿入部が、モータ端子の第1面に接触する底部と、底部からこれと交差する方向に立ち上がってモータ端子の第1面とは反対側の第2面に接触する一対の押さえ部とを有することで、底部と押さえ部とによってモータ端子を挟んで保持することができる。
【0011】
また、ケースが、電動モータと嵌合するモータ嵌合部を有する構成においては、モータ嵌合部に対する電動モータの嵌合方向と、挿入部に対するモータ端子の挿入方向とを同じ方向にすることで、嵌合作業と挿入作業とを一連の動作で行うことが可能となり、作業性が向上する。
【0012】
また、前記課題を解決するため、本発明は、電動モータを有する駆動部と、駆動部の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部とを備え、運動変換機構部が、駆動部の回転運動を受けて回転するナットと、ナットの内周に配置され、ナットの回転に伴って直線運動するねじ軸とを有する電動アクチュエータの製造方法において、挿入部を有する導電部材をケースと一体に形成し、電動モータのモータ端子を挿入部に挿入して導通可能に接続することを特徴とする。
【0013】
このように、挿入部にモータ端子を挿入するだけでこれらを導通可能に接続することができるので、導電部材とモータ端子との接続作業が容易になる。また、導電部材がケースと一体に形成されていることで、導電部材の取付作業が不要になって、組立工数を削減できると共に、導電部材とケースとの間の隙間の発生を防止できるので、隙間を塞ぐ密閉処理を行わなくてもケース内への異物の侵入を防止できる。
【0014】
また、挿入部にモータ端子を挿入する際に、挿入部を塑性変形させることで、モータ端子を導電部材にはんだ付けしたり、導電部材を加締めてモータ端子に圧着させたりしなくても、挿入部とモータ端子とを密着させることができる。これにより、モータ端子と導電部材とがより強固に接続され、振動などに対する接続強度が向上する。
【0015】
導電部材とケースとは、ケースに対して導電部材をインサート成型することで一体に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電動モータに対する導電部材の接続作業を容易に行うことができる。また、本発明によれば、導電部材とケースとの間での密閉処理を行う必要がないので、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図である。
図2図1に示す電動アクチュエータの一部分解斜視図である。
図3図1に示す電動アクチュエータの一部分解斜視図である。
図4図1に示す電動アクチュエータの一部分解斜視図である。
図5】永久磁石が取り付けられた状態のねじ軸の分解斜視図である。
図6】第2ケースおよびバスバーの斜視図である。
図7】モータ端子が挿入される前の挿入部の断面図である。
図8】モータ端子の拡大図である。
図9】モータ端子の拡大図である。
図10】バスバーとモータ端子とが接続された状態を示す図である。
図11図10のC-C線矢視断面図である
図12図10のD-D線矢視断面図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動アクチュエータの縦断面図、図2は、第1実施形態に係る電動アクチュエータの分解斜視図である。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態に係る電動アクチュエータ1は、駆動部2と、駆動部2の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構部3と、運動変換機構部3の直線運動を出力して図示外の操作対象を操作する操作部6とを備える。本実施形態の駆動部2は、電動モータ7を有する。なお、以下でいう「軸方向」とは、図1に示す電動モータ7の回転中心Xに沿う方向である。また、以下では、軸方向の方向性を説明する上での便宜から、駆動部2が配置された側(図1において紙面右側)および操作部6が配置された側(図1において紙面左側)を、それぞれ、軸方向一方側および軸方向他方側という。
【0021】
図1および図2に示すように、駆動部2および運動変換機構部3のそれぞれは、電動アクチュエータ1の筐体1Aを構成する部材を有する。具体的に説明すると、駆動部2は、電動モータ7を収容した第1ケース9と、図示しない動力電源と電動モータ7とを電気的に接続する導電部材としての一対のバスバー19が設けられた第2ケース10を有し、運動変換機構部3は、運動変換機構としてのボールねじ12を収容した第3ケース11を有する。筐体1Aは、軸方向に連ねて配置された上記の各ケース9~11を、図2に示すボルト部材27を用いて結合一体化することよって完成する。
【0022】
隣り合うケース間の密封性を高めるため、第1ケース9のフランジ部16と第2ケース10のフランジ部25との間、および第2ケース10のフランジ部25と第3ケース11のフランジ部26との間には、Oリング28,29がそれぞれ介在している。
【0023】
駆動部2は、駆動力(回転駆動力)を発生させる電動モータ7と、電動モータ7を収容した第1ケース9と、バスバー19と、バスバー19が設けられた第2ケース10とを備える。第1ケース9は、有底筒状のケース本体15と、図2に示すボルト部材27の挿通孔が設けられたフランジ部16とを一体に備える。
【0024】
ケース本体15の内周面15aは、軸方向他方側(ケース本体15の開口側)から軸方向一方側(ケース本体15の底側)に向けて漸次縮径しており、電動モータ7の軸方向一方側の端部外周は、ケース本体15の内周面15aの軸方向一方側の端部と面当たりを避けた状態で接触している。また、電動モータ7は、後述する第2ケース10のモータ嵌合部17の内周に嵌合された突起部7aを有する。従って、電動モータ7は、第1ケース9のケース本体15と第2ケース10のモータ嵌合部17とで支持されている。電動モータ7とケース本体15の内底面15bとの間には、電動モータ7の軸方向のがたつきや、グリース等の潤滑剤の外部漏洩を防止するためのOリング18を介在させている。
【0025】
第2ケース10は、筒状のケース本体23と、第3ケース11の内周に嵌合された筒状の嵌合部24と、内周に電動モータ7の突起部7aが嵌合された環状のモータ嵌合部17と、図2に示すボルト部材27の挿通孔が設けられたフランジ部25とを一体に有する。第2ケース10が上記の嵌合部24およびモータ嵌合部17を一体に有することにより、第1ケース9~第3ケース11間の芯出しを容易に行うことができるので、電動モータ7の回転中心Xと、後述するボールねじ12のナット30の回転中心とを容易に一致させることができる。
【0026】
図3に示すように、第2ケース10のケース本体23に、一対のバスバー19が設けられている。各バスバー19の一端部19aはケース本体23から軸方向に突出して外部に露出し、他端部19bはケース本体23から径方向に突出して外部に露出している。各バスバー19の軸方向に突出する一端部19aは略筒状に形成されており、この略筒状に形成された一端部19aに対して電動モータ7に設けられた一対のモータ端子7cが軸方向に挿入されることでモータ端子7cと各バスバー19とが互いに接続される。また、各バスバー19の径方向に突出する他端部19bは図示しない動力電源と接続される。
【0027】
図1に示すように、運動変換機構部3は、ボールねじ12と、ボールねじ12を収容した第3ケース11とを備える。ボールねじ12は、電動モータ7の出力軸7bと同軸(直列)に配置されたねじ軸31と、多数のボール32を介してねじ軸31の外周に回転可能に嵌合されたナット30と、循環部材としてのこま33とを備える。ナット30の内周面に形成された螺旋状溝30aとねじ軸31の外周面に形成された螺旋状溝31aの間に多数のボール32が充填され、こま33が組み込まれている。このような構成により、ナット30が回転するのに伴ってねじ軸31が軸方向に進退移動(直線運動)する際には、両螺旋状溝30a,31aの間でボール32が循環する。
【0028】
電動モータ7の出力軸7bには、出力軸7bと一体回転可能にカップリング62が設けられており、カップリング62を介して電動モータ7とボールねじ12のナット30とが連結されている。図2に示すように、カップリング62は外周に平坦面62aを有しており、ナット30の軸方向他端側の内周面30b(図1参照)に嵌め合い等により嵌合固定される。これにより、電動モータ7の回転駆動力は、カップリング62を介してナット30に伝達され、ナット30は、正逆何れかの方向に回転する。一方、ねじ軸31は、後述する回り止めによって回転が規制されている。このため、駆動部2の回転駆動力を受けてナット30が回転すると、ねじ軸31は、ナット30の回転方向に応じて軸方向に進退移動する。ねじ軸31の軸方向他方側の端部は、図示しない操作対象を操作する操作部(アクチュエータヘッド)6として機能する。従って、ねじ軸31が軸方向に進退移動するのに伴って、操作対象が軸方向に操作される。
【0029】
第3ケース11は、大径筒部35と、大径筒部35の軸方向他方側に位置した小径筒部36と、図2に示すボルト部材27の挿通孔が設けられた環状のフランジ部26とを一体に有する。大径筒部35の内周面37は径一定の円筒面に形成されており、この内周面37には、ナット30を筐体1A(第3ケース11)に対して回転自在に支持するための軸受(玉軸受)13,14が軸方向に離間して取り付け固定されている。
【0030】
第3ケース11は、大径筒部35の内周に配置された金属製の筒状部材38を有し、軸受13,14(の外輪)が取り付け固定された上記の内周面37は、筒状部材38の内周面で構成されている。筒状部材38の軸方向他方側の端部には、径方向内側に延びた環状部39が一体的に設けられており、この環状部39と軸受13の対向二面間に、軸方向に圧縮変形した環状の弾性部材である波ワッシャ42と、環状のスペーサワッシャ43とが介在している。また、軸方向一方側に位置する軸受14は、第2ケース10の嵌合部24によって軸方向他方側に付勢されている。以上の構成により、転がり軸受からなる軸受13,14に軸方向の予圧が付与されている。
【0031】
図1に示すように、第3ケース11を構成する小径筒部36の内周には、焼結金属で形成され、内周にねじ軸31が挿通された筒状のすべり軸受40が設けられている。すべり軸受40の内周面には、ねじ軸31が摺動可能な摺動面34が設けられている。焼結金属の多孔質体からなるすべり軸受40の内部気孔には、グリースや潤滑油などの潤滑剤を含浸させておくのが好ましい。このようにすれば、すべり軸受40の内周面(摺動面34)とねじ軸31の外周面との間に油膜を形成することができるので、ねじ軸31を円滑に直線運動させることができる。ねじ軸31の軸方向所定位置には、すべり軸受40を軸方向で位置決めするための止め輪41が固定されている。
【0032】
本実施形態では、すべり軸受40の内周面(摺動面34)にねじ軸31の回り止め機能が付与されている。具体的に説明すると、摺動面34は、図4に示すように、周方向の一部領域に設けられた一つの平坦面34aと、円弧面(部分円筒面)34bとからなる。一方、ねじ軸31の外周面のうち摺動面34と摺動する摺動領域31bには、摺動面34の平坦面34aに対向する平坦面部31b1と、部分円筒面34bに対向する部分円筒面部31b2とが設けられている。
【0033】
以上の構成を有する本実施形態の第3ケース11は、筒状部材38およびすべり軸受40をインサート部品とした樹脂の射出成形品とされる。この場合、第3ケース11には、型内での筒状部材38の軸方向の位置決めを行った位置決めピンの外周面に倣うかたちで孔11aが設けられる。なお、樹脂製の第3ケース11、金属製の筒状部材38および焼結金属製のすべり軸受40を個別に作製した後、これらを適宜の手段で固定しても構わない。
【0034】
図1に示すように、第3ケース11の小径筒部36とねじ軸31の間には、第3ケース11内への異物侵入を防止するためのブーツ44が取り付けられている。ブーツ44は樹脂製又はゴム製とされ、大径筒部44aおよび小径筒部44bと、両筒部44a,44b間に介在する蛇腹部44cとを一体に有する。ブーツ44の大径筒部44aおよび小径筒部44bは、それぞれ、第3ケース11の小径筒部36の外周面およびねじ軸31の外周面にブーツバンド45,46を用いて締め付け固定される。ブーツ44の外周には、ブーツ44を覆うブーツカバー47が配置されており、このブーツカバー47は、例えば軸方向に隣接する第3ケース11に取り付けられる。
【0035】
また、電動アクチュエータ1には、ねじ軸31の軸方向位置(軸方向の移動量)を検出するための位置検出装置が設けられている。位置検出装置は、図1に示すように、ねじ軸31に設けられるセンサターゲットとしての永久磁石53と、ブーツカバー47に設けられる位置検出センサとしての磁気センサ54とを有する。磁気センサ54としては、任意のタイプが使用でき、その中でもホールIC、リニアホールICなどホール効果を利用して磁場の向きおよび大きさを検出可能なタイプが好適に使用可能である。
【0036】
磁気センサ54は、図1および図4に示すように、センサ基板55と一体的に形成されており、このセンサ基板55は連結部材56によりセンサケース57に固定されている。そして、このセンサ基板55をセンサケース57に取り付けてなるセンサアセンブリ58をブーツカバー47の周方向所定位置に設けられたセンサ取付け部47aに取り付けることにより、磁気センサ54は、ブーツカバー47の周方向所定位置に設置されると共に、ブーツ44およびブーツカバー47を介して永久磁石53と対向した状態となる。この場合、磁気センサ54は、図1に示すように、ブーツカバー47とセンサケース57とで覆われた状態となる。なお、磁気センサ54の周囲を覆うセンサケース57およびブーツカバー47は、何れも、樹脂材料等の非磁性材料で形成される。
【0037】
図5は、永久磁石53を含むセンサターゲットユニット59と、ねじ軸31の分解斜視図を示している。図5に示すように、ねじ軸31の軸方向所定位置には切欠き31cが形成されており、この切欠き31cにセンサターゲットユニット59が取り付けられる。
【0038】
センサターゲットユニット59は、永久磁石53と、永久磁石53を保持する第1および第2の磁石ホルダ60,61とを備える。第1の磁石ホルダ60は、全体として略円弧状に形成され、ねじ軸31の切欠き31cに嵌合される嵌合爪60aと、永久磁石53を収容可能な収容部60bとを有する。収容部60bは、その軸方向他方側の端部が第1の磁石ホルダ60の軸方向他方側の端面に開口している。そして、永久磁石53は、上記開口部の側から磁石ホルダ60の収容部60bに挿入され、その後、上記開口部を塞ぐように円弧状に形成された第2の磁石ホルダ61をねじ軸31の切欠き31cに嵌め込むことによって軸方向で位置決めされる。
【0039】
第1および第2の磁石ホルダ60,61の材質は基本的に任意である。例えば永久磁石53がその周囲に形成する磁場に及ぼす影響を考慮した場合、各磁石ホルダ60,61は非磁性材料で形成するのが良く、ねじ軸31に対する磁石ホルダ60,61の取り付け性(嵌合爪60aの弾性変形性)を併せて考慮すると、樹脂製とするのが好ましい。
【0040】
位置検出装置は以上のように構成されていることから、ねじ軸31が軸方向に進退移動すると、磁気センサ54に対する永久磁石53の軸方向相対位置が変化し、これに伴って磁気センサ54の配設箇所における磁場も変化する。磁気センサ54は、この磁場(例えば磁束密度の向きおよび強さ)の変化を検出し、永久磁石53の軸方向位置、ひいてはねじ軸31(操作部6)の軸方向位置を取得する。
【0041】
以下、本実施形態に係る電動アクチュエータ1に関して、バスバー19の構成およびバスバー19とモータ端子7cとの接続方法について詳しく説明する。
【0042】
図6に示すように、一対のバスバー19は、真鍮又は銅等の金属材料から成る帯状の部材を所定形状に曲げ加工して構成されており、これを樹脂製の第2ケース10に対してインサート成型することにより第2ケース10と一体に形成されている。
【0043】
各バスバー19は、第2ケース10のケース本体23に埋め込まれると共に、ケース本体23の周方向に延びる周方向延伸部191と、周方向延伸部191の一端部からケース本体23の径方向へ延びて外側へ突出する径方向延伸部192と、周方向延伸部191の他端部からケース本体23の軸方向へ延びて外側へ突出する軸方向延伸部193とを有する。径方向延伸部192の先端側の部分(ケース本体23外に露出する部分)は、図示しない動力電源と接続される部分である。これに対し、軸方向延伸部193の先端側の部分(ケース本体23外に露出する部分)は、モータ端子と接続される部分であり、ここには、モータ端子が挿入される略筒状の挿入部194が設けられている。
【0044】
挿入部194は、底部194aと、底部194aからこれと交差する方向に立ち上がる一対の押さえ部194bとを有する。一対の押さえ部194bは、底部194aの幅方向に互いに間隔G(図7参照)をあけて設けられている。また、各押さえ部194bの先端部側は、互いに接近するように円弧状又は曲線状に曲げられており、これらの先端部は、底部194aに対して高さ方向に間隔H(図7参照)をあけて対向するように配置されている。このように、一対の押さえ部194b同士が幅方向の間隔Gをあけて設けられていると共に、底部194aに対して各押さえ部194bの先端部が高さ方向の間隔Hをあけて配置されていることで、挿入部194の内側にモータ端子が挿入される挿入空間Jが形成されている。
【0045】
また、挿入空間Jの幅方向の間隔Gおよび高さ方向の間隔Hは、モータ端子の幅寸法および厚さ寸法に対して次のように設定されている。
【0046】
まず、挿入空間Jの幅方向の間隔Gは、図8に示すモータ端子7cの幅寸法Wよりも大きく設定されている。これに対して、挿入空間Jの高さ方向の間隔Hは、図9に示すモータ端子7cの厚さ寸法T1よりも小さく形成されている。また、図9に示すように、モータ端子7cには、厚さ方向に突出する凸部7eが設けられており、この凸部7eが設けられた箇所の厚さT2よりも、挿入部Jの高さ方向の間隔Hは小さく設定されている。
【0047】
このように、挿入空間Jの高さ方向の間隔Hが、モータ端子7cの各部分の厚さ寸法T1,T2よりも小さく設定されていることで、図10に示すように、モータ端子7cを挿入部194に対して挿入すると、モータ端子7cの挿入(圧入)によって挿入部194は塑性変形させられる。
【0048】
すなわち、図11に示すように、挿入部194は、図中の破線で示す状態から実線で示す状態へ、高さ方向に押し広げられて塑性変形させられる。なお、図11は、挿入部194をモータ端子7cの凸部7eが設けられていない箇所で切断した、図10のC-C線矢視断面図である。
【0049】
また、図12図10のD-D線矢視断面図)に示すように、モータ端子7cの凸部7eが設けられた箇所では、挿入部194が、厚さ方向に押し広げられることに加え、凸部7eが挿入部194の底部194aに食い込むことによって底部194aが塑性変形し、底部194aに凹部194cが形成される。
【0050】
このように、本実施形態に係る電動アクチュエータにおいては、モータ端子7cの挿入によってバスバー19の挿入部194が塑性変形させられることで、挿入部194とモータ端子7cとを密着させることができ、バスバー19と電動モータ7とを確実に導通可能に接続することができる。また、接続状態では、モータ端子7cが挿入部194によって挟んで保持される。すなわち、接続状態では、挿入部194の底部194aがモータ端子7cの厚さ方向の一面(第1面)に対して接触し、これとは反対側の面(第2面)に対しては一対の押さえ部194bが接触するため、底部194aと押さえ部194bとによってモータ端子7cが挟まれた状態で保持される。これにより、モータ端子7cとバスバー19とが強固に接続され、振動などに対する接続強度が向上する。
【0051】
さらに、モータ端子7cの凸部7eが設けられた箇所では、凸部7eが挿入部194の底部194aに食い込むことによって、モータ端子7cとバスバー19との密着性がより向上する。また、モータ端子7cの凸部7eと底部194aに設けられた凹部194cとが係合していることで、振動などに伴うモータ端子7cと挿入部194との間でのずれを抑制でき、良好な接続状態を長期に亘って維持できる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る電動アクチュエータにおいては、モータ端子7cをバスバー19の挿入部194に挿入するだけで、挿入部194を塑性変形させて両部材を密着させることができるので、モータ端子7cをバスバー19にはんだ付けしたり、バスバー19を加締めてモータ端子7cに圧着させたりする工程が不要となり、接続作業が容易に行えるようになる。
【0053】
また、本実施形態に係る電動アクチュエータにおいては、バスバー19が第2ケース10と一体に形成されているので、第2ケース10に対するバスバー19の取付作業を別途行わなくてもよくなり、組立工数を削減できる。また、バスバー19が第2ケース10と一体に形成されていることで、これらを別体で形成した場合のような、バスバーとケースとの間の隙間の発生を防止できる。これにより、隙間を塞ぐ密閉処理を別途行わなくてもケース内への異物の侵入を防止できるので、製造コストを低減することが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、上記第2ケース10のモータ嵌合部17に対する電動モータ7の嵌合方向と、挿入部194に対するモータ端子7cの挿入方向とが、同じ方向(軸方向)となるように構成されている。このため、電動モータ7をモータ嵌合部17に嵌合させる際に、モータ端子7cを挿入部194に挿入することができ、嵌合作業と挿入作業とを一連の動作で行うことができるので、作業性が向上する。
【0055】
以上、本発明に係る電動アクチュエータの実施形態について説明を行ったが、本発明に係る電動アクチュエータは上述の実施形態に限られない。例えば、挿入部はモータ端子の挿入によって塑性変形する場合に限らず弾性変形するものであってもよい。この場合も、弾性変形させられた挿入部がモータ端子に密着することで、これらを導通可能に接続することができる。
【0056】
また、上述の実施形態では、給電用の導電部材(バスバー19)の接続構造および接続方法について説明したが、このような接続構造および接続方法は、給電用の導電部材に限らず、制御装置と電動モータとの間で信号を送るために用いられる制御信号用の導電部材にも適用可能である。
【0057】
また、本発明に係る電動アクチュエータは、電動モータからボールねじへ駆動力(回転)を減速して伝達する減速機を備えるものであってもよい。また、減速機としては、例えば、遊星歯車減速機や、トラクションドライブ式の遊星減速機(遊星ローラ減速機)、あるいはその他の種々の減速機を採用することができる。
【0058】
また、上述の実施形態においては、運動変換機構部3としてボールねじ12を採用しているが、ボールねじ12に代えて、ナットがボールを介することなくねじ軸に組み付けられた、いわゆるすべりねじを採用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 電動アクチュエータ
2 駆動部
3 運動変換機構部
7 電動モータ
7c モータ端子
9 第1ケース
10 第2ケース
11 第3ケース
12 ボールねじ
17 モータ嵌合部
19 バスバー(導電部材)
194 挿入部
194a 底部
194b 押さえ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12