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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】油中水型日焼け止め料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20220927BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/27
A61K8/365
A61K8/31
A61K8/891
A61K8/06
A61Q17/04
A61K8/37
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017211546
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2018076313
(43)【公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2016215266
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】松友 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朗見
(72)【発明者】
【氏名】井上 修一
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-137263(JP,A)
【文献】特開2016-153437(JP,A)
【文献】特開2014-172837(JP,A)
【文献】特開2012-184178(JP,A)
【文献】特開2015-030712(JP,A)
【文献】特開2007-217361(JP,A)
【文献】特開2007-291094(JP,A)
【文献】特開2002-060329(JP,A)
【文献】特表2009-515946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(D);
(A)煙霧状無水ケイ酸
(B)トリアルコキシアルキルシラン、アルキルチタネート、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンから選ばれる疎水化処理剤のみで疎水化処理された微粒子酸化亜鉛
(C)ポリヒドロキシステアリン酸
(D)油溶性紫外線吸収剤
を含有する油中水型日焼け止め料。
【請求項2】
前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合(A)/(C)が4.0~10.5である、請求項1に記載の油中水型日焼け止め料。
【請求項3】
前記成分(A)の含有量が3.5~4.0質量%、前記成分(B)の含有量が6.0~8.0質量%である、請求項1又は2に記載の油中水型日焼け止め料。
【請求項4】
さらに軽質イソパラフィン及び/またはデカメチルシクロペンタシロキサンを1~10質量%含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の油中水型日焼け止め料。
【請求項5】
成分(A)煙霧状無水ケイ酸の比表面積が150~300m/gである請求項1~4のいずれか一項に記載の油中水型日焼け止め料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型日焼け止め料に関するものであり、さらに詳しくは、耐水性に優れ、水にぬれても白くならない化粧膜を形成するものであり、また経時安定性や油感のなさといった感触にも優れた油中水型日焼け止め料に関する。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め料はプールや海水浴で使用されたり、汗をかくシーンで使用されることが多く、紫外線防御効果持続の観点から、耐水性に優れたものが求められている。従来より、油中水型日焼け止め料に疎水性粉体を含有することで耐水性を高める技術が知られており、例えば、疎水化処理酸化亜鉛と揮発性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンとを組み合わせて耐水性を向上させる技術(特許文献1)や、アルキルアルコキシシランで表面処理された金属酸化物粉体とフッ素変性シリコーンを組み合わせて優れた耐水性を得る技術(特許文献2)等が開示されている。
しかし、金属酸化物を含む塗布膜を多量の水に接触させると、金属酸化物が凝集して塗布膜が白くなったり、紫外線防御効果が低下したりするなど、化粧持ちに劣るという問題があった。
【0003】
一方、日焼け止め料の塗布時の白浮きを抑制する技術として、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛とシリコーン分岐型ポリグリセリン変性シリコーンと、イソステアリン酸とを組み合わせる技術(特許文献3)や、金属酸化物とシリコーン分岐型変性シリコーン、シリコーンレジン被覆シリコーンゴム粉末、ヒドロキシ脂肪酸縮合物を組み合わせる技術(特許文献4)が開示されている。
しかし、これらの技術では肌に塗布したときの金属酸化物の白浮きはないが、水に濡れたときの白浮きを防げるものではなかった。
また、疎水性粉体を含有せずに、耐水性を向上させる方法として、有機紫外線吸収剤とデキストリン脂肪酸エステル、揮発性油分を組み合わせて塗布膜をゲル化させ耐水性を付与する技術(特許文献5)が開示されている。しかし、疎水性微粒子金属酸化物を含有せずに有機紫外線吸収剤のみで高い紫外線防御効果を得るためには、多量の有機紫外線吸収剤が必要となり、それに起因するベタつきや油感が生じるために、満足のいく使用感が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-232068号公報
【文献】特開2010-111627号公報
【文献】特開2010-159229号公報
【文献】特開2015-187090号公報
【文献】特開2011-126832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑み、高い耐水性を持ち、微粒子酸化亜鉛を含有しながらも塗布後の化粧膜が水に濡れても白浮きせず、更には経時安定性や油感のなさといった感触にも優れた油中水型日焼け止め料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような事情に鑑み、本発明者らは、化粧膜の耐水性に着目して鋭意研究を行った結果、油中水型日焼け止め料において、疎水化処理された微粒子酸化亜鉛と油溶性紫外線吸収剤を含む油性成分を塗布膜として固化させるために、ゲル化剤として無水ケイ酸を選択することで、高い耐水性を付与でき、更には疎水化処理された微粒子酸化亜鉛の凝集を防ぐことで、水に濡れても白浮きしない化粧膜を形成することができることを見出した。また、更にポリヒドロキシステアリン酸を併用することにより、経時安定性や油感のなさといった感触にも優れた油中水型日焼け止め料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(A)~(D);
(A)煙霧状無水ケイ酸
(B)疎水化処理された微粒子酸化亜鉛
(C)ポリヒドロキシステアリン酸
(D)油溶性紫外線吸収剤
を含有する油中水型日焼け止め料に関する。
【0008】
前記成分(A)と前記成分(C)の含有質量割合(A)/(C)が4.0~10.5である、油中水型日焼け止め料に関する。
【0009】
前記成分(A)の含有量が3.5~4.0質量%、前記成分(B)の含有量が6.0~8.0質量%である、油中水型日焼け止め料に関する。
【0010】
揮発性油剤の含有量が1~10質量%である、油中水型日焼け止め料に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油中水型日焼け止め料は、汗や水に対する耐久性の高い化粧膜を形成し、水に濡れても塗布膜が白くならないため、真夏のスポーツシーンにおいても、高い紫外線防御効果と、白浮きのない美しい仕上がりが持続するものである。そのため、高SPFの日焼け止め料はもちろんのこと、紫外線防御効果を目的としたメークアップ化粧料や日中美容液といった化粧料においても有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述する。
本発明に用いられる成分(A)煙霧状無水ケイ酸は、平均粒子径が50nm以下の非晶質の無水ケイ酸であり、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、四塩化ケイ素を酸水素炎中で加水分解して得られるものが挙げられる。また、前記煙霧状無水ケイ酸は、疎水化処理してもよく、その処理方法としては、例えばジメチルジクロルシランによるジメチルシリル化処理、トリメチルシリルクロライドやヘキサメチルジシラザンによるトリメチルシロキシ処理、オクチルシラン化処理、メチルハイドロジェンポリシロキサンを用いたコーティング焼き付け処理、金属石鹸によるコーティング等が挙げられる。市販品としては、AEROSIL 200、AEROSIL 300、AEROSIL 380、AEROSIL R-972、AEROSIL R-974、AEROSIL R-976(日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL TS-530(キャボット社製)等が挙げられ、これらを一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、経時安定性の観点からジメチルシリル化処理のものが、より好ましい。また、これらの煙霧状無水ケイ酸の比表面積は特に限定されないが、塗布膜の耐水性向上の観点から、80~600m2/gが好ましく、150~300m2/gがより好ましい。なお、一次粒子の粒度分布は電子顕微鏡写真から求めることができ、比表面積は液体窒素の常圧沸点における窒素ガスの吸着を用いたBET法により測定することができる。
【0013】
本発明における成分(A)の含有量は、特に限定されないが、3.0~4.5質量%(以下単に「%」と略す)が好ましく、特に好ましくは、3.5~4.0%である。この範囲であると、耐水性がより向上し、油感のなさといった感触がより良好となる。
【0014】
本発明に用いられる成分(B)疎水化処理された微粒子酸化亜鉛は、疎水化処理剤を用いて表面被覆処理することにより、油相中への分散性を向上させるものである。成分(B)の微粒子酸化亜鉛は、紫外線を吸収、散乱、反射、消光等することにより紫外線を遮断する粉体であり、形状は特に限定はされないが、平均粒子径は、紫外線防御効果と使用感の観点より、10~200nmであり、20~100nmが好ましい。これらの粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置により測定可能である。
【0015】
成分(B)に用いられる疎水化処理剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればよく、例えば、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、有機チタネート化合物、金属石鹸、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤等が挙げられ、これらを組み合わせた複合処理を行ってもよい。これらの中でも、トリアルコキシアルキルシラン、アルキルチタネート、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンから選ばれる疎水化処理剤が好ましい。
【0016】
トリアルコキシアルキルシランとは、ケイ素原子に三つのアルコキシ基と一つのアルキル基が結合した化合物であり、該アルコキシ基が粉体表面の水酸基等と反応することにより、粉体表面を被覆する化合物である。成分(B)に用いられるトリアルコキシアルキルシランにおける、アルコキシ基は、炭素数1~3のアルコキシ基であるメトキシ、エトキシ、プロポキシ等が好ましい。また、該トリアルコキシアルキルシランにおける、アルキル基は、炭素数6~18のアルキル基であるヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基等が好ましい。このようなトリアルコキシアルキルシランは、例えば、トリメトキシヘキシルシラン、トリメトキシオクチルシラン、トリメトキシデシルシラン、トリメトキシオクタデシルシラン、トリエトキシヘキシルシラン、トリエトキシオクチルシラン、トリエトキシデシルシラン、トリエトキシオクタデシルシラン等が挙げられ、成分(B)の油相中での分散性が非常に優れたものとなるため、トリエトキシカプリリルシランが特に好ましい。これらより1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
アルキルチタネートは、例えば、長鎖カルボン酸型、ピロリン酸型、亜リン酸型、アミノ酸型等のアルキルチタネート等が挙げられるが、分散安定化の観点より、成分(B)においては、炭素数8~24のアルキル基を有するアルキルチタネートが好ましく、これらは下記一般式(1)
(R1O)-Ti-(OCOR2)3 (1)
(式中、R1は炭素数1~4のアルキル基、R2は炭素数8~24のアルキル基を表し、これらのアルキル基は、直鎖でも分岐していても良い。)で示される化合物が例示できる。前記アルキルチタネートは、具体的には、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N-アミドエチル・アミノエチル)チタネート等が挙げられ、これらより1種または2種以上を用いることができる。これらのアルキルチタネートの中でも、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートを用いると、成分(B)の油相中での分散性が良好となるため好ましい。
【0018】
成分(B)の表面被覆処理量は、質量割合で(疎水化処理剤/微粒子酸化亜鉛)=0.02~0.25が好ましく、更に好ましくは、0.03~0.18である。この範囲であれば、成分(B)を含有する油中水型日焼け止め料は、使用時の油感のなさに優れ、経時安定性も向上する。
【0019】
本発明において微粒子酸化亜鉛の表面に疎水化処理剤を被覆する方法は、特に限定されず、通常公知の処理方法が用いられる。具体的には、疎水化処理剤と微粒子酸化亜鉛とを直接混合し(加熱して)被覆する乾式被覆方法、エタノール、イソプロピルアルコール、n-ヘキサン、塩化メチレン、ベンゼン、トルエン等の溶媒にトリアルコキシアルキルシランを溶解又は分散し、この溶液又は分散液に微粒子酸化亜鉛を添加し、混合後、前記溶媒を乾燥等により除去、加熱、粉砕する湿式被覆方法、溶媒に溶解又は分散した疎水化処理剤を流動層中で粉体にスプレーコートする気相被覆方法、メカノケミカル方法等が挙げられる。これらの中でも湿式被覆方法が好ましい。
【0020】
本発明における成分(B)の含有量は、特に限定されないが、3~10%が好ましく、特に好ましくは、6~8%である。この範囲であると、耐水性の高い塗布膜を形成する観点でより優れ、また油感のなさなどの使用感にも優れる。
【0021】
本発明に用いられる成分(C)ポリヒドロキシステアリン酸は、通常日焼け止め化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、微粒子酸化亜鉛の分散性の観点から、水酸基は12位が好ましく、ヒドロキシステアリン酸の重合度は3~12が好ましく、更に好ましくは重合度4~8である。市販品としては、ARLACEL P-100(ユニケマ社製)、サラコスHS-6C(日清オイリオ社製)等を挙げることが出来る。
【0022】
本発明における成分(C)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)と成分(C)の含有質量割合(A)/(C)が2~20であることが好ましく、4~10.5であることがより好ましい。この範囲であると、経時安定性や使用感がより良好となる。
【0023】
本発明に用いられる成分(D)油溶性紫外線吸収剤としては、通常日焼け止め化粧料に用いられるものであれば何れのものでも含有することが可能であり、具体的には、例えば、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、サリチル酸-2-エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル、パラメトキシケイヒ酸-2エチルヘキシル、4-tert-4’-メトキシジベンゾイルメタン、2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]安息香酸ヘキシルエステル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2,4-ビス[{4-(2-エチルヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ}-フェニル]-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、ジメチコジエチルベンザルマロネート、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸及びそのナトリウム塩等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。
【0024】
本発明における成分(D)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~20%、さらに好ましくは10~16%である。この範囲であると、紫外線防御効果に優れ、使用感もより良好となる。
【0025】
本発明の油中水型日焼け止め料には、通常の化粧料に使用される成分を、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、必要に応じて含有することができる。例えば、油中水型日焼け止め料を構成するための水性成分、油性成分、成分(C)以外の界面活性剤、さらに成分(D)以外の紫外線吸収剤、成分(A)、(B)以外の粉体、水溶性高分子、保湿剤、酸化防止剤、美容成分、防腐剤、香料、清涼剤等を含有することができる。
【0026】
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、ソルビトール、マルチトール、グルコースなどの糖アルコール類、エタノール等の低級アルコール類、等が挙げられる。水としては、特に制限されず、常水、精製水、温泉水、深層水、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられ、一種又は二種以上を用いることができる。
本発明における水性成分の含有量は、特に限定されないが、好ましくは30~80%である。この範囲であると、経時安定性がより良好である。
【0027】
油性成分としては、化粧品に一般に使用される動物油、植物油、合成油等の起源、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられる。具体的には、軽質イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、ゲイロウ等のロウ類、ホホバ油、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ロジン酸ペンタエリトリットエステル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、フィトステロール脂肪酸エステル、トリグリセライド、ジ(カプリル/カプリン酸)プロプレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、トリメチルシロキシケイ酸、高重合度メチルフェニルポリシロキサン、メタクリル変性オルガノポリシロキサン、ステアリル変性オルガノポリシロキサン、オレイル変性オルガノポリシロキサン、ベヘニル変性オルガノポリシロキサン、高重合度ジメチルポリシロキサン、アルコキシ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、イソステアリン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸等の油性ゲル化剤類等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリルやジカプリン酸プロピレングリコールが、成分(A)や成分(C)との相溶性がよいため好ましい。
【0028】
また、使用時の油感のなさに優れることから、軽質イソパラフィンやデカメチルシクロペンタシロキサンなどの揮発性油剤を含有することも好ましいが、その場合、塗布膜への耐水性付与の観点から、揮発性油剤の含有量は1~10%であることが好ましい。更に成分(D)との相溶性の観点から、含有する揮発性油剤は軽質イソパラフィンであることがより好ましい。
【0029】
本発明の油中水型日焼け止め料の製造方法としては、通常公知の方法で製造可能であり、製造機器としては、一般のディスパーションのような分散・乳化機器であればいずれでもよい。
本発明の油中水型日焼け止め料の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば液状、乳液状、クリーム剤状、固形状等が挙げられる。特に液状であり、使用時にシェーキングするタイプの日焼け止め料が、肌に均一に塗布しやすく、より少ない界面活性剤で経時安定性を確保できる点で好適である。また本発明の油中水型日焼け止め料は、下地、ファンデーション、日中用美容液などにも適用可能である。
【実施例
【0030】
以下に実施例をあげて本発明を詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0031】
実施例1~13および比較例1~8:油中水型日焼け止め料(シェーキングタイプ)
表1~3に示す組成および下記製造方法にて日焼け止め料を調製した。得られた日焼け止め料の、耐水性、水に濡れたときの白浮きのなさ、油感のなさ、経時安定性について、下記の方法により評価し、結果を併せて表1~3に示した。
【0032】
【表1】
(注1)TINOSORB S(BASF社製)
(注2)UVINUL Aplus(BASF社製)
(注3)PARSOL SLX(DSM NUTRITIONAL PRODUCTS社製)
(注4)AEROSIL R-972(日本アエロジル社製)
(注5)AEROSIL R-976S(日本アエロジル社製)
(注6)X-21-5250(信越化学工業社製)
(注7)KP-545(信越化学工業社製)
(注8)ニッセツ U-3710A(日本カーバイド工業社製)
(注9)KF-6028P(信越化学工業社製)
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
(製造方法)
A:成分(1)~(4)を均一に加温溶解する。
B:成分(6)~(18)を混合分散する。
C:A、B、(5)、(19)~(21)を混合し均一に分散する。
D:成分(22)~(23)を混合する。
E:CにDを加えて分散、乳化し、油中水型日焼け止め料を得た。
【0036】
(評価方法1:耐水性)
表1に記載の各サンプル98%に青色1号2%を添加混合し、耐水性評価用サンプルとした。健常人の前腕内側を評価部位とし、デジタル一眼レフカメラ(EOS Kiss、キャノン社製)にて撮影した(写真A)。5mg/cm2のサンプルを均一に塗布後、前記カメラにて撮影した(写真B)。評価部位を25℃の流水に15秒間暴露し、再度前記カメラにて撮影した(写真C)。得られた画像をPhotoshop(Adobe社製)を用いて二値化した後、ヒストグラムにて輝度値を得た。写真A、B、Cから得られた輝度値をそれぞれV(A)、V(B)、V(C)として、下記式(2)にて水負荷後残存量を算出した。水負荷後残存量が大きいほど、耐水性が高いことを示す。

水負荷後残存率(%)={V(B)-V(C)}/{V(A)-V(C)}×100 式(2)

<判定基準>
(水負荷後残存率(%)) :(判定)
90以上 :◎
80以上、90未満 :○
70以上、80未満 :△
70未満 :×
【0037】
(評価方法2:水に濡れたときの白浮きのなさ)
表1~3に記載の各サンプルを、手首に0.2g塗布した後、水に浸漬させた状態で20回手首を曲げ伸ばした後の化粧膜の状態を、目視とマイクロスコープで観察し、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
(評価) :(判定)
変化なし :◎
手首の一番深いシワのみ若干の白浮きが確認できた :○
手首の一番深いシワに白浮きが確認できた :△
手首のシワすべてで白浮きが確認できた :×
【0038】
(評価方法3:油感のなさ)
専門パネル10名に、表1~3に記載の各サンプルを使用してもらい、以下の評価基準に基づいて評点を付け、その平均値を下記の判定基準に従って判定した。
<評価基準>
(評価結果) :(評点)
非常に感じる :5点
やや感じる :4点
普通 :3点
あまり感じない :2点
全く感じない :1点
<判定基準>
(評点の平均点) :(判定)
4.5点以上 :◎
3.5点以上~4.5点未満 :○
1.5点以上~3.5点未満 :△
1.5点未満 :×
【0039】
(評価方法4:経時安定性)
表1~3に記載の各サンプルを30℃の恒温槽にセットして、1ヶ月後における状態の外観について製造直後からの変化を観察し、以下の判定基準に従って判定した。
<判定基準>
(評価) :(判定)
変化なし :○
ゲル化や沈殿がやや観察される :△
明らかにゲル化や沈殿が観察される :×
【0040】
実施例1~13の油中水型日焼け止め料は、紫外線防御能に優れ、その化粧膜は耐水性に優れて水に濡れたときの白浮きがなく、更には経時安定性や油感のなさといった使用感にも優れた油中水型日焼け止め料であった。これに対して成分(A)の代わりに他のゲル化剤を含有した比較例1~6では、塗布膜の皮膚への付着性に劣り、耐水性が低く、また水に濡れたときの白浮きが生じるものであった。また、成分(B)の代わりに疎水化処理されていない微粒子酸化亜鉛含有した比較例7は、耐水性に劣り、水に濡れたときに白浮きが生じるものであった。また、成分(C)を含有しない比較例8は経時でゲル化し経時安定性に劣り、また耐水性や水に濡れたときの白浮きのなさにも劣るものであった。
【0041】
実施例14:油中水型日焼け止め料(クリーム状)
(成分) (%)
1.2-[4-(ジエチルアミノ)-2-ヒドロキシベンゾイル]
安息香酸ヘキシルエステル (注2) 2
2.2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}
-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン(注1) 1
3.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7
4.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注3) 2
5.(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマー混合物(注10) 10
6.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 2
7.トリエトキシカプリリルシラン3%、ジメチルポリシロキサン10%処理
微粒子酸化亜鉛(平均粒子径:25nm) 3
8.ポリヒドロキシステアリン酸 0.2
9.ジメチルシリル化処理煙霧状無水ケイ酸 (注5) 1
10.ジメチルポリシロキサン(6cs) 1.5
11.ポリメチルシルセスキオキサン 3
12.香料 0.1
13.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注9) 1.5
14.ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン (注11) 0.5
15.ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト(注12) 0.9
16.デカメチルシクロペンタシロキサン 4
17.精製水 残 量
18.エタノール 5
19.塩化ナトリウム 0.1
(注10)KSG-210(信越化学工業社製)
(注11)KF-6038(信越化学工業社製)
(注12)BENTONE 38V BC(エレメンティス社製)
【0042】
(製造方法)
A:成分(1)~(10)を均一に加温溶解する。
B:Aと成分(11)、(12)を加えて、混合分散する。
C:Bに成分(13)~(16)を加えて、混合分散する。
D:Cに(17)~(19)を加えて乳化し、油中水型日焼け止め化粧料(クリーム状)を得た。
(結果)
実施例14の油中水型日焼け止め化粧料(クリーム状)は、耐水性に優れて水に濡れたときの白浮きがなく、更には経時安定性や油感のなさといった使用感にも優れたものであった。
【0043】
実施例15:油中水型日焼け止め料(エアゾールタイプ)
(成分) (%)
1.2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}
-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン(注1) 3
2.ジメチコジエチルベンザルマロネート 3
3.(ジメチコン/(PEG-10/15)クロスポリマー混合物(注10) 15
4.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 8
5.ジカプリン酸プロピレングリコール 12
6.トリエトキシカプリリルシラン3%、ジメチルポリシロキサン10%処理
微粒子酸化亜鉛(平均粒子径:25nm) 5
7.ポリヒドロキシステアリン酸 0.5
8.ジメチルシリル化処理煙霧状無水ケイ酸 (注5) 0.5
9.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注9) 1.5
10.ポリメチルシルセスキオキサン 5
11.香料 0.1
12.精製水 残 量
13.エタノール 5
14.ジプロピレングリコール 2
【0044】
(製造方法)
A:成分(1)~(8)を均一に加温溶解する。
B:Aに成分(9)~(11)を混合する。
C:Bに成分(12)~(14)を加え乳化する。
D:Cで得られた原液15gをアルミ製耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じてLPG0.15 35gを耐圧容器に充填し、油中水型日焼け止め化粧料(エアゾールタイプ)を得た。
(結果)
実施例15の油中水型日焼け止め化粧料(エアゾールタイプ)は、耐水性に優れて水に濡れたときの白浮きがなく、更には経時安定性や油感のなさといった使用感にも優れたものであった。
【0045】
実施例16:油中水型日焼け止め料(シェーキングタイプ)
(成分) (%)
1.2,4-ビス{[4-(2-エチル-ヘキシロキシ)-2-ヒドロキシ]-フェニル}
-6-(4-メトキシフェニル)-(1,3,5)-トリアジン(注1) 1
2.パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル 7
3.ジメチコジエチルベンザルマロネート(注3) 2
4.トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル 2
5.トリエトキシカプリリルシラン3%、ジメチルポリシロキサン10%処理
微粒子酸化亜鉛(平均粒子径:25nm) 3
6.ポリヒドロキシステアリン酸 0.2
7.ジメチルシリル化処理煙霧状無水ケイ酸 (注5) 1
8.ジメチルポリシロキサン(6cs) 1.5
9.ポリメチルシルセスキオキサン 3
10.香料 0.1
11.PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(注9) 1.5
12.デカメチルシクロペンタシロキサン 2
13.軽質イソパラフィン 2
14.精製水 残 量
15.フェニルベンズイミダゾールスルホン酸 2
16.トリエタノールアミン 1.12
17.エタノール 5
18.塩化ナトリウム 0.1
【0046】
(製造方法)
A:成分(1)~(3)を均一に加温溶解する。
B:成分(4)~(13)を混合分散する。
C:A、Bを混合し均一に分散する。
D:成分(14)~(18)を混合する。
E:CにDを加えて分散、乳化し、油中水型日焼け止め料を得た。
(結果)
実施例16の油中水型日焼け止め化粧料(シェーキングタイプ)は、耐水性に優れて水に濡れたときの白浮きがなく、更には経時安定性や油感のなさといった使用感にも優れたものであった。