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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】蓄電素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20220927BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20220927BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20220927BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20220927BHJP
   H01M 6/10 20060101ALN20220927BHJP
   H01M 6/16 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01G11/52
H01G11/84
H01M10/0587
H01M6/10 Z
H01M6/16 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017222044
(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公開番号】P2019096386
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】川副 雄大
(72)【発明者】
【氏名】長嶺 健太
(72)【発明者】
【氏名】小林 徹大
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0118759(KR,A)
【文献】特表2019-530176(JP,A)
【文献】特開2009-009919(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03242346(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0189569(US,A1)
【文献】特開2012-039068(JP,A)
【文献】特開2010-161249(JP,A)
【文献】特表2013-507732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/05
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のセパレータである第一セパレータ及び第二セパレータを、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に複数の第一極板を挟んだ状態で重ね合わせて複合体を形成することと、
前記複合体と、前記複合体の外側の同じ側のみに配置した前記第一極板とは逆の極性を有する複数の第二極板とを共に巻回して電極体を形成すること、とを含み、
巻回された前記セパレータは、平坦部と、前記平坦部に隣り合う湾曲部とを含み、
前記第一極板及び前記第二極板は、前記平坦部に対向するように配置される
蓄電素子の製造方法。
【請求項2】
対向する前記セパレータ同士を接合して第一接合部を形成することをさらに含み、
前記第一接合部は、前記第一極板と前記セパレータの長手方向で隣り合って位置する
請求項1に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項3】
前記セパレータの長手方向における前記第二極板の寸法は前記第一極板よりも大きい
請求項2に記載の蓄電素子の製造方法。
【請求項4】
互いに対向する前記セパレータと前記第一極板及び前記第二極板の少なくとも一方とを接合する第二接合部を形成することをさらに含む
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の蓄電素子には、電気的な絶縁性を有するセパレータを介して正極電極と負極電極とを積層して形成される電極体を有するものがある。例えば、特許文献1には、電極体として、電極組立体が記載されている。電極組立体では、カソードを構成する複数の正極電極ユニットと、アノードを構成する単一の負極電極シートとが、分離膜シートの間に配置され、これらが互いに対向するように巻かれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2013-524431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電極組立体では、負極電極シートと各正極電極ユニットとが対向して配置される。負極電極シートよりも小さい正極電極ユニットそれぞれを、負極電極シートに対して正確に位置決めし、それぞれの位置を保持することは難しい。さらに、巻回後の電極組立体に対して、衝撃等の外力が作用すると、正極電極ユニットが負極電極シートに対して位置ずれする可能性がある。また、電極組立体において、負極電極シートが曲げられる部分では、負極電極シートは、ストレスを受け、その耐久性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明は、一緒に巻回される2つの極板の相対的な位置を保持し且つ耐久性を向上する蓄電素子の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、帯状の第一セパレータ及び第二セパレータを、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に複数の第一極板を挟んだ状態で重ね合わせて複合体を形成することと、前記複合体と、前記複合体の外側に配置した前記第一極板とは逆の極性を有する複数の第二極板とを共に巻回して電極体を形成すること、とを含み、巻回された前記セパレータは、平坦部と、前記平坦部に隣り合う湾曲部とを含み、前記第一極板及び前記第二極板は、前記平坦部に対向するように配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る蓄電素子の製造方法によれば、一緒に巻回される2つの極板の相対的な位置を保持し且つ耐久性を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態に係る蓄電素子の外観を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、図1の蓄電素子の模式的な分解斜視図である。
図3図3は、図2の電極体の模式的な斜視図である。
図4図4は、実施の形態に係る電極体の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施の形態に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図6図6は、実施の形態に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図7図7は、実施の形態に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図8図8は、実施の形態に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図9図9は、実施の形態に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図10図10は、実施の形態の変形例に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図11図11は、実施の形態の変形例に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図12図12は、実施の形態の変形例に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図13図13は、実施の形態の変形例に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
図14図14は、実施の形態の変形例に係る電極体の製造方法における工程の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本出願に係る発明者(以下、本発明者と呼ぶ)は、「背景技術」の欄でも記載したように、特許文献1に記載される電極組立体に関して、以下のような見解に至った。具体的には、特許文献1の電極組立体では、負極電極シートと正極電極ユニットとが対向して配置される。対向面の面積に関して、正極電極ユニットの方が負極電極シートよりも小さい。このため、負極電極シートに対して、複数の正極電極ユニットそれぞれを正確に位置決めし、それぞれの位置を保持することは難しい。さらに、巻回後の電極組立体に対して、衝撃等の外力が作用すると、正極電極ユニットが負極電極シートに対して位置ずれする可能性がある。
【0010】
また、特許文献1に記載された電極組立体において、正極電極ユニットは、負極電極シートと共に積層構造を構成する。正極電極ユニット及び負極電極シートの積層部分は、複数の正極及び負極が積層された構造のスタック型の電極体のような構造を有する。上記の積層部分以外の部分では、負極電極シート及び分離膜シートが積層されている。積層部分以外の部分の負極電極シートは、正極電極ユニットと対向していないため、電極組立体の容量向上に寄与しない。さらに、巻回される負極電極シートは、積層部分以外の部分において曲げられる。この場合、曲げられた負極電極シートを構成する基材及び活物質層にストレスがかかり、これらの耐久性が低下する可能性がある。本発明者らは、上述のような問題を解決する技術を検討し、以下に示すような技術を創案した。
【0011】
そこで、本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、帯状の第一セパレータ及び第二セパレータを、前記第一セパレータ及び前記第二セパレータの間に複数の第一極板を挟んだ状態で重ね合わせて複合体を形成することと、前記複合体と、前記複合体の外側に配置した前記第一極板とは逆の極性を有する複数の第二極板とを共に巻回して電極体を形成すること、とを含み、巻回された前記セパレータは、平坦部と、前記平坦部に隣り合う湾曲部とを含み、前記第一極板及び前記第二極板は、前記平坦部に対向するように配置される。
【0012】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、対向する前記セパレータ同士を接合して第一接合部を形成することをさらに含み、前記第一接合部は、前記第一極板と前記セパレータの長手方向で隣り合って位置してもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法において、前記セパレータの長手方向における前記第二極板の寸法は前記第一極板よりも大きくてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る蓄電素子の製造方法は、互いに対向する前記セパレータと前記第一極板及び前記第二極板の少なくとも一方とを接合する第二接合部を形成することをさらに含んでもよい。
【0015】
[実施の形態]
次いで、以下において、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る蓄電素子等を説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、並びに、工程の順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0016】
また、添付の図面における各図は、模式的な図であり、必ずしも厳密に図示されたものでない。さらに、各図において、同一又は同様な構成要素については同じ符号を付している。また、以下の実施の形態の説明において、略平行、略直交のような「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、略垂直とは、完全に垂直であることを意味するだけでなく、実質的に垂直である、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0017】
図1及び図2を参照して、実施の形態に係る蓄電素子100の構成を説明する。図1は、実施の形態に係る蓄電素子100の外観を模式的に示す斜視図である。図2は、図1の蓄電素子100の模式的な分解斜視図である。蓄電素子100は、外部からの電気を充電すること、及び外部へ電気を放電することができる。例えば、蓄電素子100は、電力貯蔵用途又は電源用途等に使用される。例えば、蓄電素子100は、据置用の電源装置として使用されてもよく、電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、無人搬送車(AGV)、鉄道等の車両用電源として車両に搭載されてもよい。
【0018】
本実施の形態では、蓄電素子100は、充放電可能な二次電池である。例えば、蓄電素子100は、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池である。しかしながら、蓄電素子100は、非水電解質二次電池に限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよく、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよく、キャパシタであってもよい。
【0019】
図1及び図2に示すように、蓄電素子100は、容器10と、容器10に配置された正極端子31及び負極端子41と、正極集電部材32及び負極集電部材42と、容器10の内部に配設された電極体20とを備えている。蓄電素子100はさらに、容器10の内部に、電解液(本実施の形態では、非水電解液)等の電解質を有するが、当該電解質の図示は省略する。本実施の形態では、容器10の外形は、直方体状であるが、これに限定されない。本実施の形態では、電極体20は、正極と負極とを含む電気を蓄積可能な蓄電要素(発電要素とも呼ばれる)であるが、これに限定されない。
【0020】
正極端子31及び負極端子41はそれぞれ、導電性を有する材料で構成される。正極端子31及び負極端子41はそれぞれ、電極体20の正極及び負極と電気的に接続されている。具体的には、正極端子31は正極集電部材32と接続され、正極集電部材32が電極体20の正極と接続されている。負極端子41は負極集電部材42と接続され、負極集電部材42が電極体20の負極と接続されている。正極集電部材32及び負極集電部材42は、導電性を有する材料で構成される。正極端子31及び負極端子41は、電極体20に蓄えられている電気エネルギーを蓄電素子100の外部に導出すること、及び、電気を蓄えるために蓄電素子100内の電極体20に電気エネルギーを導入することを仲介する。なお、正極端子31及び負極端子41は、正極集電部材32及び負極集電部材42を介さずに電極体20と直接接続されてもよい。
【0021】
図2及び図3を参照して、電極体20の構成を説明する。なお、図3は、図2の電極体20の模式的な斜視図である。電極体20は、正極板と負極板とセパレータとを、層状に重ねるように含んでいる。そして、電極体20は、重ね合わされた正極板、負極板及びセパレータを一緒に、巻回軸Aを中心に巻回されることによって、形成される。巻回軸Aは、図2及び図3において一点鎖線で示される仮想の軸であり、電極体20は、巻回軸Aに関して略対称な構成を有している。巻回後の電極体20では、正極板、負極板及びセパレータは、正極板と負極板との間にセパレータを介在させた状態で、巻回軸Aに垂直な方向に多層に積層されている。本実施の形態では、電極体20は、巻回軸Aに垂直な断面が扁平な長円形状である扁平な外形を有している。しかしながら、電極体20の断面形状は、特に限定されず、長円形以外であってもよく、円形、楕円形、矩形、又はその他の多角形であってもよい。
【0022】
正極板は、正極基材と正極活物質層とを含む。正極基材は、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属からなる金属箔であり、正極活物質層は、正極基材の表面上に塗工等の方法で積層されている。負極板は、負極基材と負極活物質層とを含む。負極基材は、銅、銅合金等の金属からなる金属箔であり、負極活物質層は、負極基材の表面上に塗工等の方法で積層されている。セパレータは、樹脂等の電気的な絶縁性を有する材料からなる微多孔性のシートである。正極活物質層に用いられる正極活物質又は負極活物質層に用いられる負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な正極活物質又は負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。
【0023】
電極体20は、巻回軸A方向に位置する端部20a及び20bを有している。これに限定するものではないが、例えば、端部20a及び20bは、巻回軸Aと略垂直な方向に延びる。さらに、電極体20は、端部20a及び20bの間に、平坦部20cと、湾曲部20d及び20eを有している。平坦部20cは、巻回軸A方向に沿って平坦になった部分である。詳細は後述するが、平坦部20cは、積層された正極板、負極板及びセパレータで構成される。湾曲部20d及び20eは、平坦部20cの両端部に隣り合って位置する。上記の平坦部20cの両端部は、巻回軸Aに略垂直であり且つ平坦部20cの平坦面に沿う方向での平坦部20cの2つの端部である。湾曲部20d及び20eは、巻回軸Aを中心とする巻回方向に沿って湾曲している。湾曲部20d及び20eは、例えば、弧状に湾曲し、湾曲部20d及び20eの外表面は、凸曲面を形成する。詳細は後述するが、湾曲部20d及び20eは、積層されたセパレータで構成される。
【0024】
電極体20は、端部20aから突出する正極活物質非形成部20fa及び20fbと、端部20bから突出する負極活物質非形成部20ga及び20gbとを有している。正極活物質非形成部20fa及び20fbは、正極活物質層が形成されていない正極基材で構成される。正極活物質非形成部20fa及び20fbは、正極基材における突出片である正極タブが積層されることによって、形成されている。負極活物質非形成部20ga及び20gbは、負極活物質層が形成されていない負極基材で構成される。負極活物質非形成部20ga及び20gbは、負極基材における突出片である負極タブが積層されることによって、形成されている。正極活物質非形成部20fa及び20fbは、溶接及びかしめ等の接合方法で、正極集電部材32と接合され、負極活物質非形成部20ga及び20gbは、溶接及びかしめ等の接合方法で、負極集電部材42と接合される。これにより、電極体20が、正極集電部材32及び負極集電部材42を介して、正極端子31及び負極端子41と電気的に接続される。溶接の例は、超音波溶接、抵抗溶接及びレーザ溶接である。かしめは、部材の塑性変形を利用した接合方法である。
【0025】
なお、図2及び図3の例では、2つの正極活物質非形成部20fa及び20fb、並びに、2つの負極活物質非形成部20ga及び20gbが形成されていたが、正極活物質非形成部及び負極活物質非形成部の構成は、これに限定されない。正極活物質非形成部及び負極活物質非形成部それぞれの数量は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。また、正極活物質非形成部及び負極活物質非形成部は、電極体20の端部20a及び20bに分かれて配置されず、端部20a又は20bに一緒に配置されてもよい。
【0026】
さらに、実施の形態に係る電極体20の製造方法を、図4のフローチャートを参照しつつ、説明する。図4は、電極体20の製造方法の流れの一例を示すフローチャートである。なお、電極体20は、複数の正極板21と、複数の負極板22と、2つの帯状のセパレータ23及び24とが一緒に巻回されることによって生成される。各正極板21及び各負極板22は、電極体20の平坦部20cの平面形状に対応する形状及び寸法で形成される。平坦部20cの平面形状は、平坦部20cの平坦面に垂直な方向から平坦部20cを見たときの形状である。
【0027】
まず、ステップS001において、図5に示すように、1つのセパレータ23が延ばして配置され、セパレータ23の上に、複数の正極板21が予め決められた位置に載置される。なお、図5図9は、実施の形態に係る電極体20の製造方法における工程の一部を示す模式図である。複数の正極板21は、帯状のセパレータ23の長手方向Lで、互いに間隔をあけて配置される。各正極板21は、薄い矩形板状の本体21aと、本体21aの1つの縁から突出する2つの正極タブ21b及び21cとを一体的に有する。本体21aは、正極基材及び正極活物質層で構成され、正極タブ21b及び21cは、正極基材で構成される。各正極板21の形状及び寸法は、同等である。各正極板21は、本体21aの全体をセパレータ23上に位置させ、且つ、正極タブ21b及び21cを、長手方向Lに沿うセパレータ23の2つの縁の一方から突出させて配置される。ここで、セパレータ23は、第一セパレータの一例である。
【0028】
次いで、ステップS002において、図5に示すように、セパレータ23上に、接着剤25が塗布される。接着剤25は、各正極板21に対して、長手方向Lで隣り合う位置に塗布される。具体的には、セパレータ23の長手方向Lの端部、及び、正極板21同士の間に、接着剤25が配置される。さらに、図5及び図6に示すように、セパレータ23とは別のセパレータ24が、正極板21及びセパレータ23の上に重ねて配置される。セパレータ24はセパレータ23に押しつけられ、それにより、接着剤25が、セパレータ23及び24を接合する。接着剤25は、硬化することによって、セパレータ23及び24の接合部26を形成する。なお、接合部26を形成する接着剤25の硬化状態は、完全な硬化状態でなくてもよく、セパレータ23及び24が離れないように接合する程度の不完全な硬化状態であってもよい。不完全な硬化状態で、次のステップS003が行われてもよい。
【0029】
接着剤25が接合部26を形成することによって、正極板21、並びに、セパレータ23及び24からなる複合体27が形成される。複合体27では、セパレータ23及び24の間に複数の正極板21が挟まれている。ここで、正極板21は第一極板の一例であり、セパレータ24は第二セパレータの一例であり、接合部26は第一接合部の一例である。
【0030】
複合体27では、接合部26は、長手方向Lで正極板21と隣接するため、各正極板21は、接合部26によって長手方向Lに拘束される。つまり、各正極板21は、セパレータ23及び24に対して、位置決めされると共に、その位置が保持される。接着剤25が硬化することにより、セパレータ23及び24が、互いに対して固定され、各正極板21の位置が、セパレータ23及び24に対して固定される。なお、接着剤25は、セパレータ23のみに塗布されず、正極板21にも塗布されてもよい。この場合、接着剤25は、正極板21をセパレータ23又は24に直接接合する。
【0031】
なお、セパレータ23及び24の接合は、接着剤25による接着接合に限定されない。例えば、溶着又は縫い付け等によって、セパレータ23及び24を接合してもよい。この場合、正極板21が載置されたセパレータ23の上にセパレータ24が重ね合わされた後に、接着剤25の塗布部分と同様の位置で、セパレータ23及び24が互いに溶着される、又は、セパレータ23及び24が一緒に縫い付けられる。
【0032】
次いで、ステップS003において、図7及び図8に示すように、複合体27の外側に、複数の負極板22が配置される。具体的には、複合体27の外側において、セパレータ24の上に、複数の負極板22が載置される。各負極板22は、薄い矩形板状の本体22aと、本体22aの1つの縁から突出する2つの負極タブ22b及び22cとを一体的に有する。本体22aは、負極基材及び負極活物質層で構成され、負極タブ22b及び22cは、負極基材で構成される。各負極板22の形状及び寸法は、同等である。本体22aは、正極板21の本体21aの全体を覆うことができる程度の大きさで形成されている。具体的には、本体22aの寸法は、少なくとも長手方向Lで、本体21aの寸法よりも大きい。長手方向Lと垂直な方向でも、本体22aの寸法が本体21aの寸法よりも大きくてもよい。
【0033】
各負極板22は、セパレータ24を介して、各正極板21の上に重ねて配置される。このとき、本体22aの全体が、セパレータ24上に位置し、本体22aは、セパレータ24を介して、正極板21の本体21aの全体を覆う。負極タブ22b及び22cは、長手方向Lに沿うセパレータ23及び24の縁から突出する。負極タブ22b及び22cが突出する縁は、正極タブ21b及び21cが突出する縁と反対側である。
【0034】
次いで、ステップS004において、図9に示すように、複合体27と複数の負極板22とが一緒に巻回される。具体的には、セパレータ23及び24、正極板21並びに負極板22が一緒に、巻回される。この際、セパレータ23及び24の長手方向Lの端部から、各接合部26を折り曲げる又は湾曲させる等で曲げつつ、巻回が行われる。負極板22及びセパレータ24が曲がり部分の内側に位置するように、曲げられる。
【0035】
具体的には、まず、複合体27の端部の第1の正極板21が、隣の接合部26を曲げつつ、隣の第2の負極板22の上に重ねられる。さらに、第1の正極板21、第2の負極板22及び第2の正極板21からなる巻回部分が、隣の接合部26を曲げつつ、巻回部分の隣の第3の負極板22の上に重ねられる。このとき、巻回部分の第1の正極板21が、第3の負極板22と対向する。このように、巻回部分の隣の接合部26を曲げつつ、巻回部分の最も外周側の正極板21を巻回部分の隣の負極板22に重ねるように、巻回が行われ、このような巻回が繰り返される。その結果、図3に示すような電極体20が得られる。
【0036】
電極体20では、セパレータ23及び24は、電極体20の全巻回にわたって連続的に延びる。つまり、セパレータ23及び24は、電極体20の平坦部20c並びに湾曲部20d及び20eにわたって連続的に延びる。正極板21及び負極板22は、交互に積層され、互いに対向する。正極板21及び負極板22の間には、セパレータ23又は24が介在する。正極板21、負極板22、並びにセパレータ23及び24の積層部分は、略直方体状の形状を形成し、電極体20の平坦部20cを形成する。上記積層部分では、各正極板21、各負極板22、並びにセパレータ23及び24それぞれは、平坦な状態で積層されている。
【0037】
巻回時に曲げられた接合部26のセパレータ23及び24は、電極体20の湾曲部20d及び20eを形成する。セパレータ23及び24は柔軟であるため、巻回時の曲げに起因する引張力等の力を吸収し、正極板21及び負極板22への当該力の伝達を抑える。このため、正極板21及び負極板22は平坦さを維持できる。湾曲部20d及び20eでは、外周側に向かうに従って、1巻回当たりのセパレータ23及び24の長さが長くなる。このため、ステップS001では、正極板21の配置間隔は、巻回の外周側に向かうに従って大きくなるように、設定される。
【0038】
上述のようなセパレータ23及び24は、電極体20において、平坦部と、当該平坦部に隣り合う湾曲部とを含む。正極板21及び負極板22は、セパレータ23及び24の平坦部と対向するように配置されている。
【0039】
上述したように、実施の形態に係る蓄電素子100の製造方法は、帯状のセパレータ23及び24を、セパレータ23及び24の間に複数の正極板21を挟んだ状態で重ね合わせて複合体27を形成することと、複合体27と、複合体27の外側に配置した複数の負極板22とを共に巻回して電極体20を形成することとを含む。巻回されたセパレータ23及び24は、平坦部と、当該平坦部に隣り合う湾曲部とを含み、正極板21及び負極板22は、セパレータ23及び24の平坦部に対向するように配置される。
【0040】
上記態様によると、巻回前に、セパレータ23及び24並びに複数の正極板21によって複合体27が形成されるため、セパレータ23及び24に対する複数の正極板21の位置決めが容易になる。また、複数の負極板22は、複合体27の外側に配置されるため、複合体27に対する負極板22の位置決めが容易になる。さらに、複合体27と負極板22との2つの部材が一緒に巻回されるため、巻回時における負極板22の位置ずれを抑制することが容易である。また、複数の正極板21は、複合体27に含まれた状態で巻回されるため、巻回時における正極板21の位置ずれを抑制することができる。特に、巻回時、正極板21及び負極板22は急な角度で曲げられず、柔軟なセパレータ23及び24が曲げられる。このため、巻回方向、つまり、セパレータ23及び24の長手方向Lで正極板21及び負極板22に作用する引張力等の力が抑えられる。よって、正極板21及び負極板22の移動が抑えられるため、正極板21及び負極板22の互いの間での相対的な移動を抑制することが可能になる。さらに、正極板21及び負極板22は、急な角度で曲げられると、活物質層の基材からの脱離等が起きやすい。当該活物質層の基材からの脱離は、特に巻回時に生じやすい。本発明に係る蓄電素子の製造方法によれば、当該活物質層の脱離が抑制できる。
【0041】
また、電極体20の湾曲部20d及び20eにおいて、正極板及び負極板の一方のみが存在する場合、存在する正極板又は負極板は、対向する極板が存在しないため、電極体20の容量に寄与しない。また、湾曲部20d及び20eにおいて存在する正極板又は負極板の積層間隔は、存在しない負極板又は正極板の分だけ空けられる。このため、存在する正極板又は負極板は、変形しやすくなり、耐久性が低下する。しかしながら、本実施の形態に係る電極体20では、湾曲部20d及び20eでは正極板21及び負極板22のいずれもが存在しないため、湾曲部に起因するエネルギー密度のロスの抑制、及び極板の耐久性の低下の抑制が可能になる。また、電極体20は、複合体27を、負極板22と共に巻回することによって、生成されるため、複数の正極板及び複数の負極板を交互に積層して生成される一般的なスタック型の電極体よりも容易に製造される。実施の形態に係る蓄電素子100の製造方法では、複数の正極板21及び複数の負極板22を積層するため、一部の正極板21及び負極板22を取り換えることが可能である。具体的には、例えば、正極板21及び負極板22の一部に欠陥があることが巻回前に判明した場合に、当該欠陥のある正極板21又は負極板22のみを交換することが可能である。
【0042】
また、実施の形態に係る蓄電素子100の製造方法において、対向するセパレータ23及び24の接合部26が、正極板21と、セパレータ23及び24の長手方向Lで隣り合って位置して形成される。このため、接合部26は、セパレータ23及び24の間の正極板21が、セパレータ23及び24に対して長手方向Lに移動することを抑制する。
【0043】
また、実施の形態に係る蓄電素子100の製造方法において、セパレータ23及び24の長手方向Lにおける負極板22の寸法は、長手方向Lにおける正極板21の寸法よりも大きい。このため、複合体27と共に負極板22を巻回する際、正極板21の本体21aの全体が負極板22に対向するように、負極板22を配置することが容易になる。正極板21の本体21aの一部に負極板22に対向しない部分があると、電極反応が不均一となり、その結果、蓄電素子100の容量が低下するおそれがある。実施の形態に係る蓄電素子100の製造方法では、当該容量の低下を抑制できる。
【0044】
次に、実施の形態の変形例に係る電極体20の製造方法を、説明する。本変形例では、電極体20は、実施の形態と同様に、図4のフローチャートに示すステップS001~S004の工程に従って製造される。本変形例では、接合部が実施の形態と異なる。
【0045】
まず、ステップS001において、図10に示すように、延ばして配置されたセパレータ23の上に、複数の正極板21が予め決められた位置に載置される。なお、図10図14は、実施の形態の変形例に係る電極体20の製造方法における工程の一部を示す模式図である。複数の正極板21は、図5に示す実施の形態と同様に配置される。
【0046】
次いで、ステップS002において、図10に示すように、正極板21上に、接着剤25が塗布される。具体的には、接着剤25は、各正極板21に対して、本体21aにおける正極タブ21b及び21cから近位の縁21aa及びその近傍に塗布される。なお、接着剤25は、本体21aにおけるその他の縁に塗布されてもよく、本体21aの中央に塗布されてもよく、本体21aの全体に塗布されてもよい。また、本例では、接着剤25は、本体21aにおけるセパレータ23と当接する面と反対側の面に塗布されるが、当該当接する面に塗布されてもよく、両方の面に塗布されてもよい。接着剤25を本体21aに部分的に塗布することは、後述するセパレータ24の配置の際の位置調整を容易にする。また、接着剤25は、正極板21のみに塗布されず、セパレータ23にも塗布されてもよい。なお、セパレータ24と対向しない正極タブ21b及び21cには、接着剤25が塗布されないことが好ましい。
【0047】
接着剤25の塗布後、図10及び図11に示すように、別のセパレータ24が、正極板21及びセパレータ23の上に重ねて配置される。セパレータ24がセパレータ23に向かって押しつけられ、それにより、接着剤25が、正極板21及びセパレータ24を接合する。接着剤25は、硬化することによって、接合部226を形成する。これにより、正極板21、並びに、セパレータ23及び24からなる複合体27が形成される。複合体27では、各正極板21は、接合部226によってセパレータ24に固定される。これにより、各正極板21は、セパレータ24に対して位置決めされると共に、その位置が保持される。ここで、接合部226は、第二接合部の一例である。
【0048】
なお、正極板21及びセパレータ24の接合は、接着剤25による接着接合に限定されない。例えば、溶着等によって、セパレータ24を正極板21に接合してもよい。この場合、正極板21が載置されたセパレータ23の上にセパレータ24が重ね合わされた後に、接着剤25の塗布部分と同様の位置で、セパレータ24が正極板21に溶着される。
【0049】
以降のステップS003及びステップS004の工程は、図12図14に示すように、実施の形態と同様であるため、その説明を省略する。なお、ステップS003において、複数の負極板22をセパレータ24上に載置する際、接着剤等の接合手段によって、負極板22をセパレータ24に接合してもよい。負極板22の接合位置は、正極板21に関して上述した接着剤25の塗布位置と同様の位置が適用されてもよい。また、正極板21をセパレータ24に接合せずに、負極板22のみがセパレータ24と接合されてもよい。
【0050】
上述から、変形例に係る蓄電素子100の製造方法によれば、実施の形態と同様の効果が得られる。さらに、変形例に係る蓄電素子100の製造方法において、接合部226が、互いに対向するセパレータ23及び24と、正極板21及び負極板22の少なくとも一方とを接合する。このため、接合部226は、セパレータ23及び24に対向する正極板21が、セパレータ24に対して移動することを抑制する。よって、セパレータ23及び24と、正極板21又は負極板22とを接合する簡易な構成で、正極板21及び負極板22の位置ずれの抑制が可能になる。
【0051】
[その他]
以上、本発明の実施の形態及び変形例に係る蓄電素子等について説明したが、本発明は、上記実施の形態及び変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及び変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。また、実施の形態及び変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0052】
例えば、実施の形態及び変形例では、蓄電素子100の電極体20の製造時、複合体27において、セパレータ23及び24の間に正極板21が配置されていたが、これに限定されない。負極板22がセパレータ23及び24の間に配置され、正極板21が複合体27の外側に配置されてもよい。
【0053】
また、実施の形態及び変形例では、蓄電素子100の電極体20の製造時、複合体27は、セパレータ23及び24の間に複数の正極板21を含んだ状態で形成されたが、これに限定されない。例えば、セパレータ23及び24の間に1つの正極板21を含んだ状態での複合体27の形成と、複合体27の巻回とが、同時に且つ互いに連動して行われてもよい。つまり、1つの正極板21を含む複合体27が形成されると直ぐに、当該複合体27の巻回が開始され、これと並行して、隣に複合体27が形成されてもよい。
【0054】
また、実施の形態及び変形例では、蓄電素子100の電極体20の製造時、接合部26及び226の一方が形成されたが、両方が形成されてもよい。また、接合部26及び接合部226の形成が省略されてもよい。
【0055】
また、実施の形態及び変形例では、正極板21及び負極板22の全体が電極体20の平坦部20cと対向しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、正極板21及び負極板22の一部が湾曲部20d及び20eに配置されてもよい。
【0056】
また、実施の形態及び変形例では、セパレータ23及び24のように、第一セパレータと第二セパレータとは別体としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、一枚のセパレータを折り返すことで、第一セパレータと第二セパレータとを構成してもよい。
【0057】
また、実施の形態及び変形例に係る蓄電素子の製造方法において、上述の電極体20を容器10に収容すること、及び電極体20を収容した容器10に電解液を注液することを含んでもよい。実施の形態及び変形例の電極体20では、湾曲部20d及び20eを電解液が透過しやすいため、電解液の注液速度が、正極板21又は負極板22のいずれかが湾曲部20d及び20eに存在する場合よりも大きくなる。そのため、生産性が向上する。
【0058】
また、実施の形態及び変形例に係る蓄電素子の製造方法において、複数の正極板21及び複数の負極板22の各重量を測定することを含んでもよい。対向する極板重量を細かく管理することが可能となり、正極及び負極のバランスを厳密に管理できるため、極板重量のアンバランスに起因する容量の低下等が抑制できる。
【0059】
さらに、実施の形態及び変形例に係る蓄電素子の製造方法において、各正極板21の形状及び寸法は同等であるとしたが、各正極板21の形状及び寸法は、互いに異なっていてもよい。具体的には、各正極板21は、電極体20の径方向外側、つまり巻回の内側から外側に向かうにつれて、セパレータの長手方向での寸法が大きくなってもよい。各負極板22も同様に、各負極板22の形状及び寸法が、互いに異なっていてもよい。具体的には、各負極板22は、電極体20の径方向外側に向かうにつれて、セパレータの長手方向での寸法が大きくなってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、正極及び負極を有する電極体、当該電極体を備えるリチウムイオン二次電池等の蓄電素子、並びに、当該蓄電素子を備える蓄電装置に適用できる。
【符号の説明】
【0061】
20 電極体
20c 平坦部
20d 湾曲部
21 正極板(第一極板)
22 負極板(第二極板)
23 セパレータ(第一セパレータ)
24 セパレータ(第二セパレータ)
26 接合部(第一接合部)
27 複合体
100 蓄電素子
226 接合部(第二接合部)
L 長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14