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▶ クァンタム デザインド マテリアルズ リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】高温超伝導体
(51)【国際特許分類】
   C01G 1/00 20060101AFI20220927BHJP
   C01G 3/00 20060101ALI20220927BHJP
   H01L 39/12 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C01G1/00 S ZAA
C01G3/00
H01L39/12 C
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2017541176
(86)(22)【出願日】2015-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-12-28
(86)【国際出願番号】 IB2015058288
(87)【国際公開番号】W WO2016067205
(87)【国際公開日】2016-05-06
【審査請求日】2018-10-24
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】62/069,212
(32)【優先日】2014-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517148028
【氏名又は名称】クァンタム デザインド マテリアルズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM DESIGNED MATERIALS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】リファエル ガット
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】関根 崇
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/098986(US,A1)
【文献】米国特許第5756427(US,A)
【文献】Physica C,1989年,Vol.161,p.561-566
【文献】Journal of Materials Science:Materials in Electronics,2014年, Vol.25,p.4476-4482
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(BB’1-x(ZZ’1-t (I)
の化合物であって、
nは、0~3の数(ただし、n=0除く)であり、
mは、0~6の数であり、
xは、0.4~1の数であり、
rは、1~8の数であり、
tは、0~1の数であり、
qは、0~6の数であり、
pは、1~7の数であり、
yは、1~20の数であり、
Lは、Biを含み、
Dは、Cを含み、
Bは、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1つの第1アルカリ金属イオンを含み、
B’は、CaまたはSrからなる第1イオンを含み、
Zは、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1つの第2アルカリ金属イオンを含み、
Z’は、CaまたはSrからなる第2イオンを含み、
ここで、B’がCaを含むときはZ’はSrを含み、B’がSrを含むときはZ’はCaを含み、
Mは、Cuを含み、
Aは、Oを含み、
前記化合物は、結晶性化合物であり、少なくとも150Kの臨界温度を有する超伝導体である、化合物。
【請求項2】
Bは、K、Rb、またはCsを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Zは、K、Rb、またはCsを含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
pは、1~3の数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物は、式(III):
(BB’1-x(ZZ’1-tCu(III)
の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
qは、1~2の数であり、rは、2~4の数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
nは、1、2、または3である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
mは、0~4の数である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Bは、K、Rb、またはCsを含む、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
tは、0である請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
前記化合物は、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-xCaCu、Bi(CsSr1-xCaCu、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-xCaCu、Bi(CsSr1-xCaCu、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-xCaCu、またはBi(CsSr1-xCaCuである、請求項9に記載の化合物。
【請求項12】
前記化合物は、Bi(KSr1-x(KCa1-t)Cu、Bi(RbSr1-x(RbCa1-t)Cu、Bi(CsSr1-x(CsCa1-t)Cu、Bi(KSr1-x(KCa1-t)Cu、Bi(RbSr1-x(RbCa1-t)Cu、およびBi(CsSr1-x(CsCa1-t)Cuである、請求項5に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物は、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-
CaCu、Bi(CsSr1-xCaCu、Bi(K
1-x(KCa1-tCu、Bi(RbSr1-x(Rb
Ca1-tCu、または、Bi(CsSr1-x(CsCa1-tCuである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
前記化合物は、少なくとも200Kの臨界温度を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
化合物であって、
前記化合物は、BiおよびCuからなる遷移金属イオンおよびCaおよびSrからなるアルカリ土類金属イオンを含む結晶性金属酸化物であり、前記アルカリ土類金属イオンの40%~100%は、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1つのアルカリ金属イオンによって置き換えられ、少なくとも150Kの臨界温度を有する超伝導体である、化合物。
【請求項16】
変態前の前記結晶性金属酸化物は、BiSrCaCuである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
前記アルカリ金属イオンは、K、Rb、またはCsを含む、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンの50%~100%は、前記アルカリ金属イオンによって置き換えられる、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
結晶性金属酸化物を、アルカリ金属イオンを含有するアルカリ金属塩と混合して混合物を形成するステップであって、前記金属酸化物は、BiおよびCuからなる遷移金属イオンおよびCaおよびSrからなるアルカリ土類金属イオンを含み、前記アルカリ金属イオンと前記アルカリ土類金属イオンとの間の原子比率は、1:1より高い、ステップと、
前記混合物を昇温で焼結して、前記アルカリ金属イオンを含有する結晶性化合物を形成するステップと、
を含む、請求項1の化合物の製造方法。
【請求項20】
前記結晶性金属酸化物は、BiSrCaCuである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンの50%~100%は、前記アルカリ金属イオンによって置き換えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記アルカリ金属イオンと前記少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンとの原子比率は、少なくとも2:1である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
請求項1に記載の化合物を含む装置。
【請求項24】
前記装置は、ケーブル、磁石、浮上装置、超伝導量子干渉素子、ボロメーター、薄膜素子、モーター、ジェネレータ、電流制限器、超伝導磁気エネルギー貯蔵装置、量子コンピュータ、通信装置、高速単一磁束量子装置、磁場閉じ込め核融合炉、ビームステアリングおよび閉じ込め磁石、RFフィルター、マイクロ波フィルター、または粒子検出器である、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
請求項1に記載の化合物を含む組成物。
【請求項26】
前記化合物は、BiRbSrCaCuである、請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本願は、2014年10月27日に出願された米国特許仮出願62/069,212号の優先権を主張するものであり、その開示全体をここに取込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、高温超伝導体、および、関連する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
1986年に、BednorzおよびMullerは、それ以前よりも大幅に高い臨界温度(Tc)を持つ新しい超伝導材料を発表して、固体物理学コミュニティを驚かせた[Bednorz, et al., Z. Phys. B 64, 189(1986)]。これらの材料は、緩衝液陽イオンで分離された酸化銅層からなるセラミックスである。BednorzおよびMullerの本来の化合物(LBCO)では、緩衝液陽イオンは、ランタンおよびバリウムである。彼らの研究に触発され、また、自身の圧力下臨界温度測定によって動機付けられて、Paul Chuは、緩衝液イオンがイットリウムおよびバリウムである類似の材料を合成した。この材料は、YBCOであって、液体窒素の沸点(77K)を超えるTcを持つ最初の超伝導体である[Wu, et al., Phys. Rev. Lett. 58, 908(1987)]。現在までに報告されている最高臨界温度は、164Kであり、圧力31GPaでの水銀系超伝導体によって得られる[Putilin, et al., Nature 362, 226(1993)、および、Chu, et al., Nature 365, 323(1993)]。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、その結晶構造にアルカリ金属イオンを含有する金属酸化物が極高温(例えば、約550Kまで)の超伝導体であるという予期しない発見に基づく。
【0005】
ある態様において、本発明は、式(I):
(BB’1-x(ZZ’1-t (I)
の化合物であって、nは、0~3の数であり、mは、0~6の数であり、xは、0.1~1の数であり、rは、1~8の数であり、tは、0~1の数であり、qは、0~6の数であり、pは、1~7の数であり、yは、1~20の数であり、Lは、遷移金属イオンおよびポスト遷移金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの金属イオンを含み、Dは、周期表における第IIIAおよびIVA族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、Bは、少なくとも1つの第1アルカリ金属イオンを含み、B’は、アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの第1イオンを含み、Zは、少なくとも1つの第2アルカリ金属イオンを含み、Z’は、アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの第2イオンを含み、Mは、少なくとも1つの遷移金属イオンを含み、Aは、少なくとも1つの陰イオンを含む。 式(I)の化合物は、結晶性化合物である。
【0006】
他の態様において、本発明は、化合物であって、前記化合物は、少なくとも1つの遷移金属イオン(例えば、Cuイオン)および少なくとも1つのアルカリ土類金属イオン(例えば、SrまたはCa)または少なくとも1つの希土類金属イオンを含む結晶性金属酸化物であり、前記少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンまたは少なくとも1つの希土類金属イオンの10%~100%は、アルカリ金属イオンによって置き換えられる。
【0007】
さらに他の態様において、本発明は、結晶構造を有する化合物であって、前記結晶構造は、複数のセルユニットを含み、前記セルユニットの少なくとも10%は、クラスターを含み、前記クラスターは、複数の陰イオンと、複数の遷移金属イオンと、少なくとも1つのアルカリ金属イオンとを含み、各遷移金属イオンは、少なくとも1つの陰イオンと共有結合を形成し、前記複数の陰イオンは、平面を定義し、前記少なくとも1つのアルカリ金属イオンは、前記平面に近似して位置し、前記少なくとも1つのアルカリ金属イオンと前記平面との間の距離は、前記少なくとも1つのアルカリ金属イオンの半径の2倍よりも小さく、前記複数の陰イオンのうちの少なくとも2つは、3.8Å~4.2Åの距離を有する。
【0008】
さらに他の態様において、本発明は、結晶性化合物であって、(1)遷移金属イオンおよびポスト遷移金属イオンからなる群から選択される第1金属イオンの1at%~30at%と、(2)アルカリ金属イオンである第2金属イオンの1at%~20at%と、(3)アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される第3金属イオンの0at%~30at%と、(4)アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される、前記第3金属イオンと異なる第4金属イオンの0at%~30at%と、(5)遷移金属イオンであり、前記第1金属イオンと異なる第5金属イオンの10at%~30at%と、(6)第IIIAまたはIVA族元素の0at%~30at%と、(7)陰イオンの10at%~60at%と、を含む。
【0009】
他の態様において、本発明は、方法であって、(1)結晶性金属酸化物を、アルカリ金属イオンを含有するアルカリ金属塩と混合して混合物を形成するステップであって、前記金属酸化物は、少なくとも1つの遷移金属イオンおよび少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンを含み、前記アルカリ金属イオンと前記少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンとの間の原子比率は、1:1より高い、ステップと、(2)前記混合物を昇温で焼結して、前記アルカリ金属イオンを含有する結晶性化合物を形成するステップと、を含む。
【0010】
他の態様において、本発明は、装置であって、少なくとも200K(例えば、少なくとも273K)の温度で超伝導である(例えば、超伝導電流を伝導可能である等の超伝導特性を示す)。
【0011】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に記載の超伝導化合物を含む組成である。
【0012】
その他の特徴、目的、および利点は、明細書、図面、および請求項から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本明細書に記載の超伝導化合物の結晶構造における八面体クラスタを示す図である。
図2A】Wilsonルール(Wilson規則)および本発明に係る材料のエネルギーバンドと、そのフェルミ準位と、その対応するコンダクタンスとの間の関係を示す図である。
図2B】単純金属および超伝導体のフェルミ状況を示す。左図:単純等方性2D金属。フェルミ面は1D円として現れる。右図:本発明に係る等方性2D超伝導体のフェルミ状況。フェルミ体積は2Dリングとして現れる。
図2C】現実的な等方性フェルミ状況を示す。左図:Bi2212[Norman et. al., Phys. Rev. B, 52, 615(1995)]の測定フェルミ状況を示す図。中央図:本発明者によって予測された可能なより高温の超伝導体のフェルミ状況を示す図。右図:本発明者によって予測された可能なさらにより高温の超伝導体のフェルミ状況を示す図。
図3図3a~3cは、ARPESによって測定された既知の電子構造結果を示す。
図4A】既知のクラスター計算を示す。エネルギー差2dは、緩衝液イオンと平面との間の距離の関数として表示される。a)2dに対する緩衝液イオンの影響。b)2dに対する緩衝液イオン電荷の影響。c)2dに対する緩衝液イオン柔軟度の影響。
図4B】既知の銅酸化物超伝導体の特性を示す表である。臨界温度は、本明細書に記載のモデルによって説明することができる。明確にするために、LBCOおよびYBCOの結晶構造を与える。臨界温度を決定する、方程式(1~8)から導出される因子p2(q)も提供する。
図5】室温および1テスラの場でのBi2212および実施例1~6に記載の3つの化合物族の磁気測定を含むグラフである。
図6】カリウム族における第1HTSサンプルの抵抗の温度依存を示すグラフである。
図7A図6に示す結果を得るために用いられるサンプルの温度50K~300Kの関数としての磁気モーメントを示すグラフである。
図7B図6に示す結果を得るために用いられるサンプルの温度約75K~300Kの関数としての磁気モーメントを示すグラフである。
図8図6を得るために用いられるサンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図9】カリウム族における第2HTSサンプルのエネルギー分散X線分光分析(EDS)分析によるSEM顕微鏡写真である。
図10図9に示す結果を得るために用いられる同じサンプルの他の部分で得られたEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図11図9および10に示す結果を得るために用いられるサンプルの温度依存抵抗を示す。
図12】ルビジウム族におけるHTSサンプルの微細構造を示すSEM顕微鏡写真である。
図13図12に示す結果を得るために用いられる同じサンプルの抵抗の温度依存を示すグラフである。
図14】ルビジウム族における第2サンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図15a】ルビジウム族における第3サンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図15b図15aに示す結果を得るために用いられるサンプルの抵抗対温度グラフである。
図15c図15aに示す結果を得るために用いられるサンプルのXRDデータを示すグラフである。
図16】セシウム族におけるサンプルの一部分のEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図17図16を得るために用いられる同じサンプルの他の部分のEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図18図16および17を得るために用いられる同じサンプルの抵抗の温度依存を示すグラフである。
図19図16および17を得るために用いられる同じサンプルの温度の関数としての磁気モーメントを示すグラフである。
図20図16および17を得るために用いられる同じサンプルのリートベルト法を含むXRDデータを示すスクリーンショットである。
図21】ルビジウム族におけるサンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。
図22A】FEIヘリオスデュアルビームシステムにおいてプローブに掛かっている結晶子を示すSEM顕微鏡写真である。
図22B図22aにおけるスポット番号14でのEDS分析結果を示すスペクトルである。
図23図22aに示す結晶子が得られた条件と同じ条件で成長させたサンプルの抵抗温度曲線を示すグラフである。
図24図22aに示す結晶子が得られた条件と同じ条件で成長させたサンプルの磁気モーメント温度曲線を示すグラフである。
図25A】長期イオン交換法によって成長させたルビジウム族のサンプルの磁気モーメント対温度を示すグラフである。
図25B】長期イオン交換法によって成長させたカリウム族のサンプルの磁気モーメント対温度を示すグラフである。
図26図22aの結晶等の微小結晶X線回折の結果を示す。左図:生データ、フレームの1つ。右図:結晶における原子位置。
図27】一年間にわたって得られた種々の結晶サイズを示す。グラフは、RTS材料の結晶サイズの大幅な増加を示す。 図面における同様の参照符号は、同様の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、概して、高温超伝導体(HTS)、すなわち、高温(例えば、273K~550K)で超伝導性を発揮する化合物、に関する。
【0015】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の高温超伝導体は、式(I):
(BB’1-x(ZZ’1-t (I)
の化合物であって、nは、0~3の数(例えば、0、1、2、3)であり、mは、0~6の数であり、xは、0.1~1の数であり、rは、1~8の数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8)であり、tは、0~1の数であり、qは、0~6の数(例えば、0、1、2、3、4、5、または6)であり、pは、1~7の数(例えば、1、2、3、4、5、6、または7)であり、yは、1~20の数であり、Lは、遷移金属イオンおよびポスト遷移金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの金属イオンを含み、Dは、周期表における第IIIA(例えば、N、P、As、Sb、またはBi)およびIVA(例えば、C、Si、Ge、Sn、またはPb)族の元素からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含み、Bは、少なくとも1つの第1アルカリ金属イオンを含み、B’は、アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの第1イオンを含み、Zは、少なくとも1つの第2アルカリ金属イオンを含み、Z’は、アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される少なくとも1つの第2イオンを含み、Mは、少なくとも1つの遷移金属イオンを含み、Aは、少なくとも1つの陰イオンを含む。式(I)の化合物は、結晶性化合物である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、単相化合物である。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、単結晶化合物である。
【0016】
一般的に、n、m、x、r、t、q、p、およびyは、整数でも非整数であってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、第1アルカリ金属イオンは、第2アルカリ金属イオンと異なる。いくつかの実施形態において、第1アルカリ金属イオンは、第2アルカリ金属イオンと同じである。いくつかの実施形態において、B’に割り当てられる第1イオンは、Z’に割り当てられる第2イオンと異なる。いくつかの実施形態において、B’に割り当てられる第1イオンは、Z’に割り当てられる第2イオンと同じである。
【0018】
いくつかの実施形態において、Dに割り当てられる元素は、Lに割り当てられる金属イオンと異なる。いくつかの実施形態において、Dに割り当てられる元素は、Lに割り当てられる金属イオンと同じである。
【0019】
本明細書において、「アルカリ金属イオン」は、周期表の第IA族から選択される元素、すなわち、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、またはそれらの組み合わせ、を含有するイオンを指す。一般的に、アルカリ金属イオンは、原子価数+1を有し得る。いくつかの実施形態において、アルカリ金属イオンは、+1~0の有効電荷を持つ分子クラスターを形成し得る。そのような実施形態において、分子クラスターは、アルカリ金属イオンの近くで1つ以上の負イオンを含むことができ、こうして、アルカリ金属イオン上の正電荷が負イオン上の負電荷によって補償される。
【0020】
本明細書において、「アルカリ土類金属イオン」は、原子価数+2を有し、周期表の第IIA族から選択される元素、すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、またはそれらの組み合わせ、を含有する金属イオンを指す。
【0021】
本明細書において、「遷移金属イオン」は、周期表の第IB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIIIB、IB、およびIIB族から選択される元素を含有する金属イオンを指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Mo、Rh、W、Au、Pt、Pd、Ag、Mn、Co、Cd、Hf、Ta、Re、Os、Ir、Hg、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態において、遷移金属は、Cuである。他の実施形態において、遷移金属は、FeまたはZnである。
【0022】
本明細書において、「ポスト遷移金属イオン」は、周期表の第IIIA、IVA、およびVA族から選択される元素を含有する金属イオンを指す。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のポスト遷移金属は、Al、Ga、In、Tl、Sn、Pb、Bi、Hg、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0023】
本明細書において、「希土類金属イオン」は、周期表におけるスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタニド系列金属(原子番号57~71)、およびアクチニド系列金属(原子番号89~103)から選択される元素を含有する金属イオンを指す。ランタニド系列における希土類金属の例には、La、Ce、Pr、Sm、Gd、Eu、Tb、Dy、Er、Tm、Nd、Yb、またはそれらの組み合わせがある。アクチニド系列における希土類金属の例には、Ac、Th、Pa、U、Np、Pu、Am、Cm、Bk、Cf、Es、Fm、Md、No、Lr、またはそれらの組み合わせがある。
【0024】
本明細書において、「陰イオン」は、単純陰イオン、ハロゲン化物陰イオン、カルコゲニド陰イオン、有機陰イオン、オキソ陰イオン、プニクチド陰イオン、またはそれらの組み合わせを含み得る。単純陰イオンの例には、O、S、Se、Te、N、P、As、またはSbを単一原子として含有するものがある。ハロゲン化物陰イオンの例には、F、Cl、Br、I、At、またはそれらの組み合わせ(例えば、IBr-3、Cl-3、Br-3、ICl-3)を含有するものがある。カルコゲニド陰イオンの例には、S、Se、Te、またはそれらの組み合わせを含有するものがある。有機陰イオンの例には、酢酸塩(CHCOO)、ギ酸塩(HCOO)、シュウ酸塩(C -2)、シアン化物(CN)、またはそれらの組み合わせを含有するものがある。オキソ陰イオンの例には、AsO -3、AsO -3、CO -2、HCO 、OH、NO 、NO 、PO -3、HPO -2、SO -2、HSO 、S -2、SO -2、ClO 、ClO 、ClO 、OCl、IO 、BrO 、OBr、CrO -2、Cr -2、またはそれらの組み合わせを含有するものがある。プニクチド陰イオンの例には、N、P、As、Sb、またはそれらの組み合わせを含有するものがある。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の陰イオンは、O、S、Se、Te、N、P、As、およびSbの任意の組み合わせを含有する陰イオンであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の陰イオンは、NCS、CN、またはNCOであり得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるLは、Bi、Tl、Cu、またはHgを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるDは、C、Si、Ge、Sn、Pb、またはAlを含み得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるBは、Li、Na、K、Rb、またはCsを含み得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるB’は、La、Mg、Ca、Sr、またはBaを含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるZは、Li、Na、K、Rb、またはCsを含み得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるZ’は、CaまたはYを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるMは、CuまたはFeを含み得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるAは、O、S、Se、P、またはAsを含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の化合物は、式(I)の複数の化合物の結晶構造を含み得る。この場合、化合物は、超構造または連晶と呼ばれる。
【0034】
いくつかの実施形態において、式(I)の超伝導化合物は、式(II):
(BB’1-x(ZZ’1-tCu(II)
の化合物であり得る。ここで、n、m、x、r、t、p、q、y、L、D、B、B’、Z、およびZ’は、上で定義される。そのような実施形態において、pは、1~3の任意の数であり得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、式(I)の超伝導化合物は、式(III):
(BB’1-x(ZZ’1-tCu(III)
の化合物であり得る。ここで、n、m、x、r、t、q、y、L、D、B、B’、Z、およびZ’は、上で定義される。そのような実施形態において、qは、1~2の任意の数であり得、rは、2~4の任意の数であり得る。
【0036】
式(II)について、超伝導化合物サブセットは、qが0または1、および、rが2~6の任意の数であるものである。そのような実施形態において、Lは、Bi、Tl、Cu、Pb、またはHgを含み得る;nは、0~4であり得る;Dは、炭素であり得る;mは、0~4の任意の数であり得る;Bは、K、Rb、またはCsを含み得る;B’は、Sr、Ba、Ca、およびYを含み得る;xは、0.1~1の数であり得る;および、pは、1、2、または3であり得る。そのような化合物の例には、Bi(KSr1-xCuO、Bi(RbSr1-xCuO、Bi(CsSr1-xCuO、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCaCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCaCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-x(SrCa1-t)Cu、Bi(RbSr1-x(SrCa1-t)Cuy、および、Bi(CsSr1-x(SrCa1-t)Cuがある。
【0037】
式(III)について、超伝導化合物サブセットは、qが1、および、rが2であるものである。そのような実施形態において、Lは、Bi、Tl、Cu、Pb、またはHgを含み得る;nは、0、1、または2であり得る;Dは、炭素であり得る;mは、0~4の任意の数であり得る;Bは、K、Rb、またはCsを含み得る;B’は、Srを含み得る;xは、0.1~1の数であり得る;tは、0であり得る;および、Z’は、Caを含み得る。そのような化合物の例には、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-xCaCu、Bi(CsSr1-xCaCu、Bi(KSr1-xCaCu、Bi(RbSr1-xCaCu、および、Bi(CsSr1-xCaCuがある。
【0038】
式(III)について、別の超伝導化合物サブセットは、qが1、rが2、および、tが0よりも大きい数であるものである。そのような実施形態において、Lは、Bi、Tl、またはHgを含み得る;nは、0、1、または2であり得る;Dは、炭素であり得る;mは、0~4の任意の数であり得る;Bは、K、Rb、またはCsを含み得る;B’は、Srを含み得る;xは、0.1~1の数であり得る;および、Z’は、Caを含み得る。そのような化合物の例には、Bi(KSr1-x(KCa1-t)Cu、Bi(RbSr1-x(RbCa1-t)Cu、またはBi(CsSr1-x(CsCa1-t)Cu、Bi(KSr1-x(KCa1-t)Cu、Bi(RbSr1-x(RbCa1-t)Cu、および、Bi(CsSr1-x(CsCa1-t)Cuがある。
【0039】
式(II)について、超伝導化合物サブセットは、nが2、mが0~4の数、rが2~8の数、qが0~3の数、pが4、LがBi、BがK、Rb、またはCs、B’sがSr、ZがK、Rb、またはCs、および、Z’がCaであるものである。そのような化合物の例には、Bi(KSr1-x(KCa1-tCu、Bi(RbSr1-x(RbCa1-tCu、Bi(CsSr1-x(CsCa1-tCuy、BiC(KSr1-xCu、BiC(RbSr1-xCu、BiC(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-xCu、Bi(RbSr1-xCu、Bi(CsSr1-xCu、Bi(KSr1-x)4(SrCa1-tCuy、Bi(RbSr1-x(SrCa1-tCuy、および、Bi(CsSr1-x(SrCa1-tCuがある。
【0040】
式(II)について、超伝導化合物サブセットは、nが0、mが0~4の数、xが1、tが1、rが4、qが2、pが4または7、BがK、Rb、またはCs、ZがNaであるものである。そのような化合物の例には、NaCu、NaRbCu、NaCsCu、NaCu、NaRbCu、NaCsCu、NaCu、NaRbCu、および、NaCsCuがある。
【0041】
式(II)について、別の超伝導化合物サブセットは、nが1、mが0~4の数、xが1、tが0または1、rが2、4、または6、qが0、1、または2、pが1、2、または3、LがHg、BがK、Rb、またはCs、ZがNa、およびZ’がBaであるものである。そのような化合物の例には、HgKNaCu、HgKCuO、HgCCu、HgCCu、HgBaCu、および、HgRbCsCuがある。
【0042】
式(II)について、別の超伝導化合物サブセットは、nが1、2、または3、mが0~4の数、xが1、tが0または1、rが2、4、または6、qが0、1、2、3、または4、pが1、2、3、4、または5、LがTl、BがK、Rb、またはCs、ZがNa、および、Z’がBaであるものである。そのような化合物の例には、TlKNaCu、TlKCuO、TlKNaCu、TlNaCu、TlCCu、TlCCu、TlBaCu、および、TlRbCsCuがある。
【0043】
式(II)について、別の超伝導化合物サブセットは、nが2、mが0~4の数、xが1、tが1、rが2、4、または6、qが0または2、pが1または3、LがBi、BがK、および、ZがNaであるものである。そのような化合物の例には、BiNaCuBiCuO、BiCu、および、BiCuOがある。
【0044】
式(II)について、別の超伝導化合物サブセットは、nが0~1の数、mが0~1の数、xが0.1~1の数、rが2または4、tが0~1の数、qが0、1、または2、pが2、3、または6、LがY、BがK、Rb、またはCs、B’がSrまたはBa、ZがNa、K、Rb、またはCs、および、Z’がYであるものである。そのような化合物の例には、Y(KBa1-xCu、Y(RbBa1-xCu、Y(CsBa1-xCu、(Y1-tNa)(Cs1-xBaCu、(Y1-tNa)(CsBa1-xCu、(Y1-tNa(CsBa1-xCu、Y((CsK)Ba1-xCu、(YSr1-n)(Cu1-m)(KSr1-xCu、(YSr1-n)(Cu1-m)(RbSr1-xCu、(YSr1-n)(Cu1-m)(CsSr1-xCu、および、(YSr1-n)(Cu1-m)(RbCs1-xCuがある。
【0045】
式(II)について、別の超伝導化合物サブセットは、nが0または1、mが0~1の数、xが0~1の数、rが2または4、tが0~1の数、qが1、pが2、3、4、5、または6、LがCu、BがK、Rb、またはCs、B’がBa、および、ZがNaであるものである。そのような化合物の例には、Na(KBa1-xCu、Na(RbBa1-xCu、Na(CsBa1-xCu、Na((CsK)Ba1-xCu、NaBaCu、NaBaCu、NaBaCu、(Cu1-m)(KSr1-x(NaSr1-t)Cu、(Cu1-m)(RbSr1-x(NaSr1-t)Cu、(Cu1-m)(CsSr1-x(NaSr1-t)Cu、(Cu1-m)(RbCs1-x(NaSr1-t)Cuy、CuC(KBa1-xCuy、CuC(RbBa1-xCu、および、CuC(CsBa1-xCuがある。
【0046】
いくつかの実施形態において、B’は、第1原子番号を有する金属イオンであり、Z’は、第2原子番号を有する金属イオンであり、前記第2原子番号は、前記第1原子番号よりも小さい。例えば、B’は、SrまたはBaを含有する金属イオンであり得、Z’は、Caを含有する金属イオンであり得る。
【0047】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるxは、0.1~1(例えば、0.2~1、0.3~1、0.4~1、0.5~1、0,55~1、0.6~1、0.65~1、0.7~1、0.75~1、0.8~1、0.85~1、0.9~1、0.95~1、0.97~1、0.98~1、または0.99~1)の範囲である。いくつかの実施形態において、式(I)におけるxは、1である。理論に縛られるわけではなく、xの値を増大することによって、Bイオン(すなわち、アルカリ金属イオン)によって置き換えられる式(I)の化合物における結晶構造のB’イオン(すなわち、アルカリ土類金属イオンまたは希土類金属イオン)が増えることから、式(I)の超伝導化合物の臨界温度(Tc)を高めることができると考えられている。
【0048】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるtは、0.1~1(例えば、0.2~1、0.3~1、0.4~1、0.5~1、0.6~1、0.7~1、0.8~1、0.9~1、0.95~1、0.98~1、または0.99~1)の範囲である。いくつかの実施形態において、式(I)におけるtは、1である。理論に縛られるわけではなく、tの値を増大することによって(例えば、tが0.5より大きい時)、Zイオン(すなわち、アルカリ金属イオン)によって置き換えられる式(I)の化合物における結晶構造のZ’イオン(すなわち、アルカリ土類金属イオンまたは希土類金属イオン)が増えることから、式(I)の超伝導化合物のTcを高めることができると考えられている。
【0049】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるnは、0~3の任意の数(例えば、整数または非整数)であり得る。例えば、nは、0.1~2.9(例えば、0.2~2.8、0.3~2.7、0.4~2.6、0.5~2.5、0.6~2.4、0.7~2.3、0.8~2.2、0.9~2.1、1~2、1.1~1.9、1.2~1.8、1.3~1.7、1.4~1.6、または1.5)の任意の数であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるmは、0~6の任意の数(例えば、整数または非整数)であり得る。例えば、nは、0.1~5.9(例えば、0.2~5.8、0.3~5.7、0.4~5.6、0.5~5.5、0.6~5.4、0.7~5.3、0.8~5.2、0.9~5.1、1~5、1.1~4.9、1.2~4.8、1.3~4.7、1.4~4.6、1.5~4.5、1.6~4.4、1.7~4.3、1.8~4.2、1.9~4.1、2~4、2.1~3.9、2.2~3.8、2.3~3.7、2.4~3.6、2.5~3.5、2.6~3.4、2.7~3.3、2.8~3.2、2.9~3.1、または3)の任意の数であり得る。いくつかの実施形態において、nおよびmの合計は、整数である。
【0051】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるrは、1~8の任意の数(例えば、整数または非整数)であり得る。例えば、rは、1.1~7.9(例えば、1.2~7.8、1.3~7.7、1.4~7.6、1.5~7.5、1.6~7.4、1.7~7.3、1.8~7.2、1.9~7.1、2~7、2.1~6.9、2.2~6.8、2.3~6.7、2.4~6.6、2.5~6.5、2.6~6.4、2.7~6.3、2.8~6.2、2.9~6.1、3~6、3.1~5.9、3.2~5.8、3.3~5.7、3.4~5.6、3.5~5.5、3.6~5.4、3.7~5.3、3.8~5.2、3.9~5.1、4~5、4.1~4.9、4.2~4.8、4.3~4.7、4.4~4.6、または4.5)の任意の数であり得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるqは、0~6の任意の数(例えば、整数または非整数)であり得る。例えば、qは、0.1~5.9(例えば、0.2~5.8、0.4~5.6、0.6~5.4、0.8~5.2、1~5、1.2~4.8、1.4~4.6、1.6~4.4、1.8~4.2、2~4、2.2~3.8、2.4~3.6、2.6~3.4、または2.8~3.2)の任意の数であり得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、式(I)におけるpは、0~7の任意の数(例えば、整数または非整数)であり得る。例えば、pは、0.1~6.9(例えば、0.2~6.8、0.4~6.6、0.6~6.4、0.8~6.2、1~6、1.2~5.8、1.4~5.6、1.6~5.4、1.8~5.2、2~5、2.2~4.8、2.4~4.6、2.6~4.4、2.8~4.2、3~4、3.2~3.8、3.4~3.6、または3.5)の任意の数であり得る。
【0054】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、少なくとも1つの遷移金属イオン(例えば、Cuイオン)および少なくとも1つのアルカリ土類金属イオン(例えば、SrまたはBaイオン)または少なくとも1つの希土類金属イオンを含有する結晶性金属酸化物であって、(結晶構造における)少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンまたは少なくとも1つの希土類金属イオンの10%~100%が、アルカリ金属イオン(例えば、Li、Na、K、Rb、またはCsイオン)によって置き換えられる。変態前の結晶性金属酸化物の例には、BiSrCaCu(Bi2212)およびYBaCu(YBCO)がある。いくつかの実施形態において、超伝導化合物は、上記の結晶性金属酸化物であって、結晶構造における少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンまたは少なくとも1つの希土類金属イオンの20%~100%(例えば、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、90%~100%、95%~100%、99%~100%、または100%)が、アルカリ金属イオンによって置き換えられる。理論に縛られるわけではなく、結晶構造におけるより多い量(例えば、50%超)のアルカリ土類金属イオンがアルカリ金属イオンによって置き換えられた超伝導金属酸化物は、下記のモデルに基づいてより高いTcを示すと考えられている。
【0055】
いくつかの実施形態において、上記の結晶性金属酸化物はさらに、上記したような、ポスト遷移金属イオン(例えば、BiまたはTlイオン)または遷移金属イオン(例えば、Hgイオン)を含み得る。いくつかの実施形態において、上記の結晶性金属酸化物は、上記したような、希土類金属イオンを含み得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、上記の結晶性金属酸化物は、2つ以上の(例えば、3または4つの)アルカリ土類金属イオン(例えば、Sr、Ba、および/またはCaイオン)を含み得る。そのような実施形態において、アルカリ土類金属イオンのうちの1つのみがアルカリ金属イオンによって置き換えられてもよく、または、アルカリ土類金属イオンのうちの2つ以上がアルカリ金属イオンによって置き換えられてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、結晶性金属酸化物における2つ以上のアルカリ土類金属イオンが2つ以上のアルカリ金属イオンによって置き換えられる場合、各アルカリ土類金属イオンが、2つ以上のアルカリ金属イオンのいずれか1つによって置き換えられ得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物(例えば、式(I)の化合物)は、結晶構造を有する化合物であって、結晶構造は、複数のセルユニットを含み、セルユニットの少なくとも10%は、クラスター(例えば、サブセルユニット)を含み、クラスターは、複数の陰イオン(例えば、O陰イオン)と、複数の遷移金属イオン(例えば、Cuイオン)と、少なくとも1つのアルカリ金属イオン(例えば、Li、Na、K、Rb、およびCsイオン)とを含み、各遷移金属イオンは、少なくとも1つの陰イオンと共有結合を形成し、複数の陰イオンは、平面を定義し、少なくとも1つのアルカリ金属イオンは、平面に近似して位置し、少なくとも1つのアルカリ金属イオンと平面との間の距離は、少なくとも1つのアルカリ金属イオンの半径の2倍よりも小さく、複数の陰イオンのうちの少なくとも2つは、3.8A~4.2Aの距離を有する。いくつかの実施形態において、複数の陰イオンのうちの少なくとも2つは、少なくとも3.8A(例えば、少なくとも3.85A、または少なくとも3.9A)および/または多くとも4.2A(例えば、多くとも4.15A、多くとも4.1A、多くとも4.05A、または多くとも4A)の距離を有し得る。いくつかの実施形態において、結晶構造におけるセルユニットの少なくとも20%(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)は、(少なくとも1つのアルカリ金属イオンを含有する)上記のクラスターを含む。いくつかの実施形態において、上記の他の陰イオンおよび金属イオンを、クラスターに加えて用いて、超伝導化合物を形成することができる。例えば、クラスターに加えて、電荷リザーバ層またはドーピングメカニズム(例えば、格子間イオン)を含むことによって、超伝導化合物を形成してもよい。
【0059】
図1は、4つの面内イオンと2つの緩衝液イオン(例えば、アルカリ金属イオンおよびアルカリ土類金属イオンまたは遷移金属イオン)とを含む上記の例示的クラスター(すなわち、八面クラスター)を含む結晶構造を示す。図1に示すように、クラスターは、陰イオン21、22、23、および24(例えば、O陰イオン)と、遷移金属イオン11、12、13、および14(例えば、Cuイオン)と、2つの緩衝液イオン31および32とを含み、そのうちの少なくとも1つはアルカリ金属イオン(例えば、Li、Na、K、Rb、およびCsイオン)である。各遷移金属イオン11、12、13、および14は、近傍の陰イオンと共有結合を形成する。遷移金属イオン11、12、13、および14および陰イオン21、22、23、および24は、平面を形成し、該平面において、金属イオン11、12、13、および14は平面の頂点に位置し、陰イオン21、22、23および24は平面のエッジに位置する。緩衝液イオン31または32と平面との間の距離34または35は、緩衝液イオンの半径の2倍より小さい。いくつかの実施形態において、アルカリ金属イオン31がアルカリ金属イオン32と同じである場合、距離34は、距離35と実質的に同様である。平面において対向する2つの陰イオン間の距離(すなわち、陰イオン21と23との間の距離、または、陰イオン22と24との間の距離)は、3.8A~4.2Aである。いくつかの実施形態において、イオン31は、アルカリ金属イオンであり、イオン32は、異なるイオン(例えば、アルカリ土類金属イオンまたは遷移金属イオン)である。アルカリ金属イオンRbを含有するそのようなクラスターの例は、図27に示すようにX線結晶解析で特定される。
【0060】
いくつかの実施形態において、式(I)の超伝導化合物は、式BZMAまたはBZ’MAを有するクラスター(例えば、化合物の結晶構造におけるサブセルユニット)を含み得る。ここで、B、Z、Z’、M、およびAは、上に定義される。
【0061】
理論に縛られるわけではなく、本明細書に記載のクラスター(例えば、BZMAまたはBZ’MAの構造を有するクラスター)は、高Tc、および、高温(例えば、少なくとも約150K)での超伝導活動/特性に、一次的に貢献すると考えられている。このように、理論に縛られるわけではなく、そのようなクラスターを有する全ての結晶性化合物(例えば、金属酸化物結晶性化合物)は、高Tcおよび高温での超伝導活動/特性を示すと考えられている。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、その結晶構造において上記のクラスター(例えば、図1に示す)を有するセルユニットの少なくとも15%(例えば、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)を含む。理論に縛られるわけではなく、上記のクラスターをより多く(例えば、50%超)含有する超伝導化合物は、下記のモデルに基づいて、より高いTcを示すと考えられている。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物はさらに、アルカリ金属イオンがアルカリ土類金属イオン(例えば、Ca、Sr、またはBa)または希土類金属イオン(例えば、La)によって置き換えられていることを除いて、図1に示すものと同様の1つ以上のクラスターを含有する。
【0063】
いくつかの実施形態において、上記のクラスターを含有する超伝導化合物はさらに、式(I)におけるLイオン等の、遷移金属イオンまたはポスト遷移金属イオンを含み得る。理論に縛られるわけではなく、Lイオンに付着する付加的陰イオンは、陰イオン21、22、23、および24によって形成された平面を伝導性にするように、上記のクラスターのドーピングイオンとして考えられている。さらに、理論に縛られるわけではなく、そのようなドーピング効果が化合物の超伝導性の形成を促進すると考えられている。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記のクラスターは、3.8A~4.2Aの距離を有する2つの陰イオンのみを有し得る。そのような実施形態において、クラスターにおける他の金属イオンは、2つの陰イオンを上記距離に保つべく、空間における任意の位置に位置し得る。上に定義される陰イオン21、22、23、および24によって形成された平面への参照は、これらの2つの陰イオンを結ぶ線によって置き換えられる。いくつかの実施形態において、そのようなクラスター(例えば、化合物の結晶構造におけるサブセルユニット)を有する超伝導化合物は、式BMAを有し得る。ここで、B、M、およびAは、上に定義される。
【0065】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、(1)遷移金属イオンおよびポスト遷移金属イオンからなる群から選択される第1金属イオンの0at%~30at%と、(2)アルカリ金属イオンである第2金属イオンの1at%~20at%と、(3) アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される第3金属イオンの0at%~30at%と、(4)アルカリ土類金属イオンおよび希土類金属イオンからなる群から選択される、前記第3金属イオンと異なる第4金属イオンの0at%~30at%と、(5)遷移金属イオンであり、前記第1金属イオンと異なる第5金属イオンの10at%~30at%と、(6)第IIIAまたはIVA族元素の0at%~30at%と、(7)陰イオンの10at%~60at%と、を含む。本明細書において、単位「at%」は、原子百分率を指す。遷移金属イオン、ポスト遷移金属イオン、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオン、および陰イオンは、上記のものと同じであり得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、第1金属イオンは、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも1at%(例えば、少なくとも2at%、少なくとも3at%、少なくとも4at%、少なくとも5at%、少なくとも6at%、少なくとも7at%、少なくとも8at%、少なくとも9at%、少なくとも10at%、少なくとも11at%、少なくとも12at%、少なくとも13at%、少なくとも14at%、または少なくとも15at%)、および/または、多くとも30at%(例えば、多くとも29at%、多くとも28at%、多くとも27at%、多くとも26at%、多くとも25at%、多くとも24at%、多くとも23at%、多くとも22at%、多くとも21at%、多くとも20at%、多くとも19at%、多くとも18at%、多くとも17at%、多くとも16at%、または多くとも15at%)であり得る。
【0067】
いくつかの実施形態において、第2金属イオンは、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも1at%(例えば、少なくとも2at%、少なくとも3at%、少なくとも4at%、少なくとも5at%、少なくとも6at%、少なくとも7at%、少なくとも8at%、少なくとも9at%、または少なくとも10at%)、および/または、多くとも20at%(例えば、多くとも19at%、多くとも18at%、多くとも17at%、多くとも16at%、多くとも15at%、多くとも14at%、多くとも13at%、多くとも12at%、多くとも11at%、または多くとも10at%)であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、各第3および4つの金属イオンは、独立して、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも0at%(例えば、少なくとも1at%、少なくとも2at%、少なくとも3at%、少なくとも4at%、少なくとも5at%、少なくとも6at%、少なくとも7at%、少なくとも8at%、少なくとも9at%、少なくとも10at%、少なくとも11at%、少なくとも12at%、少なくとも13at%、少なくとも14at%、または少なくとも15at%)、および/または、多くとも30at%(例えば、多くとも29at%、多くとも28at%、多くとも27at%、多くとも26at%、多くとも25at%、多くとも24at%、多くとも23at%、多くとも22at%、多くとも21at%、多くとも20at%、多くとも19at%、多くとも18at%、多くとも17at%、多くとも16at%、または多くとも15at%)であり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、第5金属イオンは、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも10at%(例えば、少なくとも11at%、少なくとも12at%、少なくとも13at%、少なくとも14at%、少なくとも15at%、少なくとも16at%、少なくとも17at%、少なくとも18at%、少なくとも19at%、または少なくとも20at%)、および/または、多くとも30at%(例えば、多くとも29at%、多くとも28at%、多くとも27at%、多くとも26at%、多くとも25at%、多くとも24at%、多くとも23at%、多くとも22at%、多くとも21at%、または多くとも20%)であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、第IIIAまたはIVA族元素は、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも0at%(例えば、少なくとも1at%、少なくとも2at%、少なくとも3at%、少なくとも4at%、少なくとも5at%、少なくとも6at%、少なくとも7at%、少なくとも8at%、少なくとも9at%、または少なくとも10at%)、および/または、多くとも30at%(例えば、多くとも29at%、多くとも28at%、多くとも27at%、多くとも26at%、または多くとも25at%、多くとも24at%、多くとも23at%、多くとも22at%、多くとも21at%、または多くとも20at%、多くとも19at%、多くとも18at%、多くとも17at%、多くとも16at%、または多くとも15at%)であり得る。
【0071】
いくつかの実施形態において、陰イオンは、本明細書に記載の超伝導化合物の少なくとも10at%(例えば、少なくとも11at%、少なくとも12at%、少なくとも13at%、少なくとも14at%、少なくとも15at%、少なくとも16at%、少なくとも17at%、少なくとも18at%、少なくとも19at%、少なくとも20at%、少なくとも21at%、少なくとも22at%、少なくとも23at%、少なくとも24at%、少なくとも25at%、少なくとも26at%、少なくとも27at%、少なくとも28at%、少なくとも29at%、少なくとも30at%、少なくとも31at%、少なくとも32at%、少なくとも33at%、少なくとも34at%、または少なくとも35at%)、および/または、多くとも60at%(例えば、少なくとも59at%、多くとも58at%、少なくとも57at%、多くとも56at%、少なくとも55at%、多くとも54at%、少なくとも53at%、多くとも52at%、少なくとも51at%、多くとも50at%、少なくとも49at%、多くとも48at%、少なくとも47at%、多くとも46at%、少なくとも45at%、多くとも44at%、少なくとも43at%、多くとも42at%、少なくとも41at%、多くとも40at%、少なくとも39at%、少なくとも38at%、少なくとも37at%、少なくとも36at%、または少なくとも35at%)であり得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、実質的に純粋である。例えば、超伝導化合物は、少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%)の純度を有し得る。
【0073】
一般的に、本明細書に記載の化合物は、比較的高温で超伝導体(例えば、超伝導電流を伝導可能)となることができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、少なくとも150K(例えば、少なくとも160K、少なくとも170K、少なくとも180K、少なくとも190K、少なくとも200K、少なくとも210K、少なくとも220K、少なくとも230K、少なくとも240K、少なくとも250K、少なくとも260K、少なくとも270K、少なくとも273K、少なくとも283K、少なくとも293K、少なくとも300K、少なくとも320K、少なくとも340K、少なくとも360K、少なくとも380K、または少なくとも400K)、および/または、多くとも約500K(例えば、多くとも約480K、多くとも約460K、多くとも約450K、多くとも約440K、多くとも約420K、または多くとも約400K)の温度で超伝導体であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の超伝導化合物は、少なくとも150K(例えば、少なくとも160K、少なくとも170K、少なくとも180K、少なくとも190K、少なくとも200K、少なくとも210K、少なくとも220K、少なくとも230K、少なくとも240K、少なくとも250K、少なくとも260K、少なくとも270K、少なくとも273K、少なくとも283K、少なくとも293K、少なくとも300K、少なくとも320K、少なくとも340K、少なくとも360K、少なくとも380K、または少なくとも400K)、および/または、多くとも500K(例えば、多くとも480K、多くとも460K、多くとも450K、多くとも440K、多くとも420K、または多くとも400K)のTcを有し得る。理論に縛られるわけではなく、上記のクラスター構造を有する結晶性化合物は、下記のモデルに基づいて、高Tcを示すことができると考えられている。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の超伝導化合物を含有する組成を特徴とする。そのような実施形態において、組成は、超伝導化合物の少なくとも1%(例えば、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%)、および/または、多くとも約99.9%(例えば、多くとも99%、多くとも98%、多くとも95%、多くとも90%、多くとも80%、多くとも70%、多くとも60%、または多くとも50%)を含有し得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、本発明は、超伝導化合物形成方法を特徴とする。該方法は、(1)結晶性金属酸化物を、アルカリ金属イオン(例えば、Li、Na、K、Rb、またはCsイオン)を含有するアルカリ金属塩と混合して、混合物を形成する、ここで、金属酸化物は少なくとも1つの遷移金属イオン(例えば、Cuイオン)と少なくとも1つのアルカリ土類金属イオン(例えば、Ca、Sr、またはBaイオン)とを含有し、アルカリ金属イオンと少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンとの原子比率は1:1より高い、(2)混合物を昇温で焼結して、アルカリ金属イオンを含有する結晶性化合物を形成する。本明細書に記載の超伝導化合物を調製するために出発物質として使用できる適切な結晶性金属酸化物は、例えば、Bi2212、YBCO、Bi2223、Tl2212、Tl2223、Hg1201、Hg1212、およびHg1223を含む。このように、いくつかの実施形態において、式(I)の超伝導化合物は、対応する金属酸化物および適切なアルカリ金属塩を出発物質として用いて、上記製造方法により調製することができる。
【0076】
いくつかの実施形態において、式(I)の超伝導化合物が元素Dを含有する場合、元素Dは、上記のステップ(1)に記載の混合物に元素Dを含有する塩(例えば、アルカリ金属塩)を添加することによって、超伝導化合物に導入することができる。本明細書に記載の超伝導化合物を調製するために使用できる元素Dを含有する適切な塩は、例えば、KCO、KSiO、K、RbCO、RbSiO、CsCO、CsSiO、KHCO、RbHCO、またはCsHCOを含む。例えば、Dが炭素である元素Dを含有する式(I)の超伝導化合物を調製するために、上記のステップ(1)において炭素を含有するアルカリ金属塩(例えば、KCO、RbCO、またはCsCO)を用いることができる。加えて、Dが炭素である本明細書に記載の超伝導化合物は、CO流下で結晶性金属酸化物およびアルカリ金属塩を焼結して構造内への炭素の取り込みを引き起こすことによって、調製し得る。炭素原子は、結晶構造に埋め込まれると、結晶におけるアルカリイオンの取り込みを促進することができると考えられている。
【0077】
いくつかの実施形態において、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属イオンと金属酸化物における少なくとも1つのアルカリ土類金属イオンとの原子比率(すなわち、モル比)は、少なくとも1.3:1(例えば、少なくとも1.5:1、少なくとも1.7:1、少なくとも2:1、少なくとも2.3:1、少なくとも2.5:1、少なくとも2.7:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも11:1、少なくとも12:1、少なくとも13:1、少なくとも14:1、少なくとも15:1、または少なくとも16:1)である。いくつかの実施形態において、金属酸化物出発物質が2つ以上のアルカリ土類金属イオンを含有する場合、上記の原子比率は、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属イオンと金属酸化物における2つ以上のアルカリ土類金属イオンのうちの1つとの比率であり得る。理論に縛られるわけではなく、上記の方法において過度の量(例えば、原子比率1:1超)のアルカリ金属塩を使用することによって、金属酸化物化合物の結晶構造におけるアルカリ土類金属イオンのアルカリ金属イオンによる置き換えが促進されると考えられている。さらに、理論に縛られるわけではなく、その結晶構造により多くの量のアルカリ金属イオンを含有する超伝導金属酸化物は、下記のモデルに基づいて、より高いTcを示すと考えられている。
【0078】
一般的に、上記の方法で用いられる焼結温度は、合成される化合物の構造およびその融解温度等の種々の要因に依存し得る。いくつかの実施形態において、焼結温度は、少なくとも300℃(例えば、少なくとも400℃、少なくとも500℃、少なくとも600℃、少なくとも700℃、少なくとも750℃、または少なくとも800℃)、および/または、多くとも1200℃(例えば、多くとも1100℃、多くとも1000℃、多くとも900℃、多くとも850℃、多くとも820℃、または多くとも800℃)である。焼結時間(または保圧時間)は、少なくとも20時間(例えば、少なくとも30時間、少なくとも40時間、少なくとも50時間、少なくとも100時間、または少なくとも150時間)、および/または、多くとも300時間(例えば、多くとも280時間、多くとも250時間、多くとも220時間、多くとも200時間、または多くとも150時間)であり得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、結晶性金属酸化物およびアルカリ金属塩の混合物は、第1温度で第1期間焼結され、その後、第1温度と異なる第2温度で第2期間焼結され得る。いくつかの実施形態において、第2温度は、第1温度より高くてもよい。第1または第2温度は、少なくとも750℃(例えば、少なくとも760℃、少なくとも770℃、少なくとも780℃、少なくとも790℃、少なくとも800℃、または少なくとも810℃)、および/または、多くとも850℃(例えば、多くとも840℃、多くとも830℃、多くとも820℃、多くとも810℃、多くとも800℃)であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも150K(例えば、少なくとも180K、少なくとも200K、少なくとも230K、少なくとも250K、少なくとも273K、少なくとも278K、少なくとも283K、少なくとも288K、少なくとも293K、少なくとも298K、少なくとも300K、少なくとも305K、または少なくとも310K)の温度で超伝導(例えば、超伝導電流を伝導する等の超伝導特性を示す)である装置を特徴とする。例示的装置は、ケーブル、磁石、浮上装置、超伝導量子干渉素子(SQUID)、ボロメーター、薄膜素子、モーター、ジェネレータ、電流制限器、超伝導磁気エネルギー貯蔵(SMES)装置、量子コンピュータ、通信装置、高速単一磁束量子装置、磁場閉じ込め核融合炉、ビームステアリングおよび閉じ込め磁石(粒子加速器で使用されるもの等)、RFおよびマイクロ波フィルター、および粒子検出器を含む。
【0081】
理論に縛られるわけではなく、本発明者は、高温超伝導化合物およびそのような化合物を作る方法は、以下により詳細に説明する原理およびモデルに基づくと考えている。
【0082】
電荷キャリアの超伝導挙動は、そのフェルミ準位に近接した、材料の近縮退分散関係ε(k)の結果起きると考えられている。したがって、Schrodinger方程式を介した超伝導挙動の予測と対応する材料組成の電子および化学構造とのつながりを維持しつつ、完全多体(complete多体)Hamiltonianは、周知のBCSモデル[Bardeen, et. al., Phys. Rev. 108, 1175(1957)]によって仮定される簡約(reduced)Hamiltonianと形式上類似する、残余(residual)Hamiltonianに単純化される。より具体的に、近縮退 分散 関係は、電子状態の重複の少なさの結果であってもよい。これにより、meV(ミリ電子ボルト(mili electron Volt))の妥当な精度を提供する小原子クラスターにおける電子状態の計算の結果として、超伝導挙動の予測が可能になる。
【0083】
このように、超伝導挙動を与えると思われる材料は、対応する原子クラスターに関連付けられる少なくとも2つの電子状態のエネルギーのエネルギー状態計算を用いることで特定されてもよい。そのような原子クラスターは、概して、中性原子、陽イオン、および陰イオンである少なくとも1つの候補元素/種の複数の原子を含む。計算は、クラスターの元素間の距離を含む原子構造の幾何学的特性化を利用する。尚、計算は、概して、1つ以上の距離のバリエーションを含んでもよく、これは、クラスターのある原子が他によって置き換えられることを示唆し得る。クラスターのフロンティア分子軌道は、適切な計算によって特定されるべきであり、比較的低重複のフロンティア分子軌道が検出され得る。フロンティア分子軌道は、概して、最高被占分子軌道(HOMO)および最低空分子軌道(LUMO)に関する。
【0084】
加えて、同様の超伝導化合物のバンド構造を計算して、対応するフェルミ準位の推定を提供することができる。原子クラスターを変化させて、特定された低重複フロンティア分子軌道のエネルギー準位にフェルミ準位が近接するとしてもよい。
【0085】
計算された原子クラスターが記載する化合物は、結合および反結合エネルギーが約150meV未満(例えば、100meV未満、または好ましくは50meV未満)、および/または、1meV超(例えば、5meV超または10meV超)で異なることを選択低重複フロンティア分子軌道が示す場合、超伝導挙動を示す高い確率を有すると決定されてもよい。通常、そのような原子クラスターは、隣接エネルギー準位間で高い分離を持つ。クラスターの最高準位、好ましくは基底状態および第1励起状態は、本質的に近縮退であるケースを探すべきである。
【0086】
いくつかの実施形態において、本発明者は、以下の分析が、超伝導材料およびそのような超伝導材料を作る方法を特定する基盤を提供すると考えている。
【0087】
運動エネルギーを含む完全Hamiltonian式から始めて、フォノン部分、電子・フォノン相互作用、および電子・電子相互作用は、
【数1】
である。ここで、は、(決定すべき)化学ポテンシャルであり、εは、正常準粒子エネルギーであり、はそれぞれ、電子生成および消滅演算子であり、はそれぞれ、フォノン生成および消滅演算子であり、ωは、フォノン周波数であり、Mは、電子・フォノン行列要素であり、v(q)は、スクリーニングされたクーロンポテンシャルである。方程式(1)のHamiltonianは、定常波仮定:
【数2】
を用いて単純化される。この仮定は、全ての電子k状態が縮退であること、すなわち、同様のエネルギーを有することを表す。加えて、方程式(1)の第2項が微小摂動であるという仮定に基づいて、以下の変換によって、繰り込まれたフォノン演算子が導入される:
【数3】
【0088】
電子密度演算子のために定常波仮定を用いることで、
【数4】
および、同様に、二乗密度演算子
【数5】
が与えられ、電子密度p1(q)が運動の定数であり、Aが正準関係(ボゾン交換関係):
【数6】
を保持することが示される。
【0089】
繰り込まれたフォノン密度式は、
【数7】
を与える。ここで、M-q =Mが用いられ、総和順序が並べ替えられる。
【0090】
方程式(1)のHamiltonianにおける繰り込まれたフォノン演算子を用いて、運動エネルギー項を摂動として無視しつつ、Hamiltonianを、方程式(2)の定常波条件下で対角化することができる:
【数8】
これによって、定常波仮定(2)および正準変換(3)の結果として対相関12(q)が与えられる。
【0091】
運動エネルギー項は、摂動として扱うことができる:
【数9】
すなわち、H=H+Hである。定常波HamiltonianHを対角化した後、電子残余が方程式に残る:
【数10】
これは、周知の簡約BCS Hamiltonian[Bardeen, et al., Phys. Rev. 108, 1175(1957)]に類似する。フォノンとのおよび自身の間での予想される準粒子相互作用は、低準粒子密度(低温)限界において無視される。BCSに続いて、これらの相互作用は、正常状態におけるものと類似すると考えることができる。尚、対形成は仮定されない。これは、定常波挙動の仮定から生じる。
【0092】
BCS理論に基づいて、
【数11】
ここで、λは、Lagrange乗数であり、一定二乗密度の制約に関する:
【数12】
【0093】
方程式(11)は、エネルギーギャップを導出する。これは、形式上、BCSによって予測されるものに類似する:
【数13】
【0094】
よって、BCS理論は、定常波理論に埋め込まれる。基底状態は、非分散定常電子波動関数のコンデンセートとなる。励起状態は、分散準粒子電子状態(bogolons)である。尚、方程式(9)における電子演算子cおよびcは、摂動定常波状態として理解される。
【0095】
加えて、超伝導材料の電気力学特性は、London方程式から導出可能である。本発明によれば、London方程式は、多体波動関数の硬直性を要することなく、定常波電子とベクトルポテンシャルとの間の微視的関係を提供し得る。
【0096】
単一定常波電子関数:
【数14】
から始めて、対形成を要することなく、以下の計算を利用して、London方程式を導出可能である。対角化HamiltonianHに見られるように、電子対は、概して、エネルギー的に有利であるため、単一対波動関数を得ることができる。これによって、実験的に観察される2e電荷の保存が可能である。電子対によって与えられる、T=0での超伝導定常波状態は、
【数15】
を与える。
対応する確率電流は、
【数16】

である。
ここで、J(r,t)は、位置(r)および時間(t)の関数としての電流密度であり、Reは、式の実部が考慮されることを表し、ΨおよびΨは、電子対波動関数およびその共役であり、mは、電子質量であり、qは、電子電荷であり、
は、2πで除算されるPlanck定数であり、i=(-1)の二乗根である。方程式(16)を展開して、以下を得ることができる:
【数17】
ここで、
【数18】
および
【数19】
上記では、London方程式が単一粒子微視的特性として現れる。これは、各超伝導対の確率電流とベクトルポテンシャルとの間の直線関係である。このように、全ての電子対は、個別に、London方程式に従う。全電流は、これらの状態の総和によって得られる。したがって、全電流とベクトルポテンシャルとの間の関係は、周知の非局所的Pippard積分によって得られ、巨視的London方程式を与える。加えて、London方程式の導出には、如何なる種類の巨視的コヒーレンスの仮定も必要としない。同じ導出が、単一定常波電子にも当てはまる。対形成は、London関係の導出に要するものではなく、同じ定常波仮定の結果(r2による)である。
【0097】
Pipard積分は、定常波状態の総和として現れる。全電流を得るために、総和が、単一電子確率電流に行われる。したがって、コヒーレンス長は、電流とベクトルポテンシャルとの関係が維持される非局所的長さスケールを与えるr2において現れるk状態総和の逆数である。Pippardにより、コヒーレンス長は、臨界温度の推定を与える。よって、フェルミ準位でのフラットバンド領域のk空間拡張は、臨界温度の推定値を与える。臨界温度のより正確な推定は、フェルミ準位に近接してk空間において低分散量を推定することによって得られる。これによって、パラメータr2、そして、DおよびTcが決定される。
【0098】
波動関数の対応する変換は、
【数20】
であり、電流密度は、
【数21】
であり、再度
【数22】
を与える。
【0099】
このように、本発明では、BCS処理によるエネルギーギャップによって維持される多体波動関数の硬直性が、Londonゲージにおける任意の実波動関数の特性である単一体関係によって置き換えられる。こうして、秩序パラメータの相硬直性として説明される長距離コヒーレンスを、単に、該単一電子挙動を反映するものとして理解することができる。
【0100】
理論に縛られるわけではなく、定常波理論は、超伝導体で観察されるゲージ対称性破壊の容易な理解を提供すると考えられている。この破壊対称性は、正常状態における電子波動関数の周期的境界条件の破壊から生じ、波動関数の任意の相を可能にする。定常波境界条件は、概して、バルクから、定常電子波動関数(方程式3~8)に対するフォノンクラウド(または、他のボソン)の緩和によって、得られる。これは、超伝導性のケースにおけるゲージ対称性破壊の提案される物理的理解である。粒界および他の欠陥は、これらの定常波状態を支持することで、超伝導性を助けるだけである。
【0101】
定常波処理における単一電子電流は、非発散ではなく、次のように表される:
【数23】
これは、定常波対状態が常時生成、破壊されるBCS様基底状態に従うものである。ここで、J(r,t)は、単一対の確率電流であり、全電流は、以下を与えると仮定される:
【数24】
【0102】
ゼロ分散の仮定を再度利用して、
【数25】
は、分離体における全電流が非発散であることを表す。
【0103】
方程式(23)から示されるように、超伝導体において、表面電流は非発散であるべきであり、波動関数▽|Ψ(r,t)|=0は、(Londonゲージにおける)超伝導体表面でヌル(null)である必要がある。
【0104】
本発明の理解は、準古典的見地から導き出してもよい。準古典的には、定常波は、群速度vg=0の波束である。そのような波束に作用する磁力は、F=v×B=0である。したがって、準古典的定常波状態は、磁界に影響されない。しかし、Aharonov-Bオーム効果に示されるように、波束のベクトルポテンシャル作用は、単一電子波動関数の相に影響することが知られている。よって、超電流現象は、適切な波束としての全ての超電子の電流であり、多体波動関数のコヒーレンスによる集合的な効果として作用するのではなく、単に相電流として作用する。そのような超電流は、電子・フォノン緩和に干渉せず、全ての超電子で均一電流である。
【0105】
Pipard積分は、ベクトルポテンシャルと巨視的電流との間の関係に由来する。巨視的電流を得るために、全ての定常波k状態に対する積分が必要である。これは、コヒーレンス長のオーダーでの領域の実空間積分に影響する。
【0106】
上記の理解の結果、本発明は、新たな改良超伝導材料を特定することができる一般規則を提供する。これは、概して、金属および絶縁体のためのWilson規則に類似する。Wilsonによると、単純な規則が、材料のエネルギーバンド構造に対するフェルミ準位を位置付けることによって、絶縁および導電材料を区別する。フェルミ準位がエネルギーバンドを切断する場合、材料は、金属である。ギャップに含まれる場合、材料は、絶縁体である。また、ギャップが熱エネルギーのオーダーである場合、材料は、半導体である。
【0107】
上記の理解に基づいて、本発明は、フェルミ準位がエネルギー準位ε(k)の非常に浅い領域に近接する(例えば、多くとも50meV)ところで、超伝導体は金属として挙動するという一般原理を提供する。この条件は、摂動としての方程式(9)における運動エネルギー項の上記処理に適合する。加えて、これは、HamiltonianHの上記対角化も可能にする。図2は、Wilson規則および本発明に係る、材料のエネルギーバンドと、そのフェルミ準位と、その対応するコンダクタンスとの関係を概略図示する。
【0108】
上記の理解にしたがって、超伝導効果(Tc)のための臨界温度は、成分p2(q)のサイズによって、したがって、低分散領域ε(k)のk空間における拡張によって、決定されると考えられる。方程式(5)は、方程式(1)~(13)の処理に関連する状態にかかるk空間における三次元和として、p2(q)を決定する。これらは、正常状態において摂動定常波状態として表され得るk状態である。これらの状態は、低分散領域ε(k)を構成する。このことは、既知の測定電子構造結果を示す図3aおよび3bから分かるように、フェルミ準位に近接した拡張低分散領域を示すARPESによる既知の超伝導体の測定と整合する。
【0109】
このように、上記の一般原理は、既存の超伝導材料よりも高い、広範囲温度で超伝導体として作用可能な新たな材料を特定することができる。
【0110】
加えて、本発明の一般原理は、既知の材料よりも高い臨界温度で超伝導挙動を示すことができる超伝導材料を提供する。例えば、本明細書に記載の超伝導材料は、150K超、200K超、250K超、273K超、および約室温(約300K)のTcを提供してもよい。
【0111】
上記の方程式(8)および(10)に示すように、超伝導状態におけるエネルギー利得は、方程式(8)の右辺の第3項によって決定されてもよい。臨界温度は、該エネルギー利得によって決定される。他の全ての項が同じ化学族の材料間で緩やかに変化することから、エネルギー利得は、方程式(5)に定義されるように、二乗密度項p2(q)に大いに依存する。p2(q)の大きさは、近フラットバンドのk空間における拡張によって決定される。一例として、図3bは、銅酸化物族のいくつかのメンバーの角度分解光電子放出測定の結果を示す。図示の通り、近フラット領域は、Brillouinゾーンの約1/3にわたる。該領域を広げることが可能である。このように、本発明によると、臨界温度は、銅酸化物構造(例えば、Bi2212またはYBCO)における緩衝液イオンをアルカリイオンで置き換えることによって、上げることができる。これらの緩衝液イオンは、以下に示すように、分散ε(k)を制御する。
【0112】
より具体的に、本発明の技術は、図1に示すように超伝導材料の設計のためのクラスター計算を利用する。液体窒素沸点(77K)を超える臨界温度を有するこれまでの全ての合成超伝導体において、図1における金属イオン11、12、13、および14のうちの少なくとも1つは銅であり、図1における陰イオン21、22、23、および24は全ての酸素である。但し、本発明は、金属イオン11、12、13、および14および陰イオン21、22、23、および24によって定義される平面における他のイオン種も含む。いくつかの実施形態において、陰イオン21、22、23、および24のうちの1つ以上は、他の第VI族元素(例えば、硫黄S、セレンSe、またはテルルTe)、または、第V族元素(第15族元素)(例えば、窒素N、リンP、またはヒ化物As)であり得る。そのような元素を含む理由は、それらのp軌道を用いて下記の通り近結合MO(分子軌道)を生成する能力にある。これらの近結合MOを用いて、上記の通り超伝導性に必要な近フラット電子バンドを生成することができると考えられている。
【0113】
本発明によると、正確な電子状態エネルギー計算を、合成すべき材料を表す、図1に示す八面構造に対して行うことができる。該計算は、金属イオン31および32と平面との間の距離34および35のいくつかの代表値において繰り返される。これらの値は、実際の層状材料に予測される範囲に含まれるように選択され、いずれにしても、距離34にとって金属イオン31のイオン半径の半分と金属イオン31のイオン半径の2倍との間であり、距離35にとって金属イオン32のイオン半径の半分と金属イオン32のイオン半径の2倍との間である。金属イオン31および32が同一ならば、距離34および35は、典型的に、各電子状態計算において等しい。超伝導性の1つの基準は、八面構造の電子状態のうちの少なくとも2つ、典型的には基底状態および第1励起状態、が、距離34および35の値のいくつかにおいてエネルギー的に十分に近く、上記の通り近フラット分散を生じることである。尚、上記の通り、最高被占分子軌道の構造を考慮することも同じく重要である。
【0114】
八面構造が近縮退の超伝導性基準(例えば、クラスターの基底状態と第1励起状態との間で多くとも50meV)およびフェルミ準位と対応するエネルギーバンドとの間の近接(例えば、多くとも50meV)を満たす場合、対応する材料は、(例えば、本明細書に記載の方法を用いて)合成される。理論に縛られるわけではなく、本発明者は、これらの計算の結果は、図4aに示すように、銅酸化物のための明確な傾向を示すと考えている。図4aに示すデータは、Panas et al.、Chem. Phys. Lett、259、247から収集されたものである。その中で最も重要なものは、緩衝液イオンのイオン電荷の効果である。電荷が小さいと、重複が減り、狭バンドの分散となる。より影響の低い他の傾向は、緩衝液イオンのイオン半径である。イオン半径が大きいと、重複が減る。量子化学計算の結果が、図4aに再現されている。これらの結果は、成分p2(q)に関して、明確な合成ルートを提供する。例えば、上記の通り、過度の量のアルカリイオンを有する前駆体を用いてイオン交換を行うことが、室温超伝導性を生じるのに効率的であることが分かっている。いくつかの実施形態において、酸化物および硝酸塩を前駆体として用いることができる。いくつかの実施形態において、酸素以外の第VI族陰イオンを含有する前駆体を用いる場合、対応するカルコゲニドを用いることができる。いくつかの実施形態において、酸素雰囲気において焼結混合物を加熱する付加的ステップが、正孔ドーピングのための格子間酸素を与えるために、必要である。いくつかの実施形態において、高温超伝導体が水銀またはタリウムを含有する場合、当技術分野で既知のように合成のための特別な処理を要し得る。超伝導体は、レーザービームアブレーション、スパッタリング、分子線エピタキシー、または薄膜方法を含む当技術分野で既知の他の方法によって、合成可能である。いくつかの実施形態において、上記クラスターおよび必要な電荷リザーバ層またはドーピング源を含む人工構造(超格子)は、本明細書に記載の合成方法によって得ることができる。
【0115】
上記の原理およびモデルに基づいて、本発明は、以下のように、高温超伝導体を特定する一般要件を提供する:(1)フェルミ準位に近接したε(k)の分散領域を低くする(例えば、50meV未満)、すなわち、クラスターにおける状態間のエネルギー差はできるだけ小さくあるべきである;(2)この低分散領域の状態を好ましくはフォノン(または他のボソン)と結合させるべきである;(3)これらの電子状態は遍歴であるべきである。尚、表面状態または局所状態は、超伝導性への寄与なしにまたは限定的な寄与を伴い、同様の効果を与えARPESスペクトルにおいて非分散である。加えて、銅酸化物におけるCu-Oシグマバンド等の分散バンドは、方程式(1)におけるクーロンポテンシャルv(q)のスクリーニングを提供する[Deutscher et al.,Chinese Journal of Physics,31,805,(1993)]。
【0116】
このように、本発明は、以下のステップに基づいて新規の超伝導材料を特定する方法を提供する:(1)ほぼ非結合であるフロンティア分子軌道を位置付ける、これは、適切な距離(例えば、銅酸化物化合物において3.8~4.2Å)で陰イオン原子中心を分離することによってなされ得る、また、分子軌道は、概して、平面における空間内を伸長するp軌道からなる;(2)平面に近似する近くの金属イオンの振動と結合されるフロンティア軌道を位置付ける。この点において、平面に近似する金属イオンのイオン電荷は、好ましくは、フロンティア軌道の結合および反結合準位間のエネルギー差が最小となるように、選択される。このエネルギー差が、極めて狭いバンドの分散を決定すると考えられている。適切なクラスター計算に基づいて、平面に近似する金属イオンのイオン電荷は、好ましくは、できるだけ小さい。例えば、銅酸化物化合物(すなわち、銅酸化物)において、平面に近似する金属イオンの好適なイオン電荷は、+1以下である。イオン電荷に加えて、銅酸化物系材料における平面に近似する金属イオンの半径も、好ましくは、高い(K、Rb、またはCsの半径等)。これによって、結合-反結合エネルギー準位分離を低減することができる。このエネルギー分離は、狭バンド分散、よって、成分p2(q)のサイズを決定する。成分p2(q)のサイズは、Tcを決定する。
【0117】
図4bの表は、周知の代表的なHTS材料を示す。列1は、Bサイト(すなわち、式(I)におけるBに対応するサイト)でのイオンのイオン電荷を示す。列2は、Bサイトでのイオンのイオン半径を示す。列3は、Zサイト(すなわち、式(I)におけるZに対応するサイト)でのイオンのイオン電荷を示す。列4は、Zサイトでのイオンのイオン半径を示す。列5は、周知の化合物名を示す。列6は、化合物におけるCuO層数を示す。列7は、異なる化合物のTcを示す。上記のモデルは、次のようにp2(q)上のイオン電荷およびイオン半径の効果によるこれらの化合物のTcの変化を定性的に説明することができる。最後の化合物は規則の例外であり、本パラグラフの最後で扱う。CuO層数の効果は、明らかである。層数の増加によって、より多くのk状態が総和(方程式5)に導入されて、p2(q)が増加する。これは、ドーピングメカニズムが有効である限り、機能する。CuO層数の増加はまた、電荷リザーバ層への距離の増加にもつながる。最適条件が、3つの層で見出される。したがって、良好な比較は、同じ層数の化合物でなされる。表の最初の2つの行は、単一層化合物LBCOおよびHg1201を比較する。Bサイトのイオン電荷は、LBCOの+3からHg1201の+2へと下がる。酸素バンド分散の推定としての2dの値は、約130meV(スカンジウムで計算)から約40meV(カルシウムで計算)へと下がる。この傾向は明らかであり、上記のモデルに基づいて、Tcは、約3倍、すなわちp2(q)における増加倍数で、増える。次の4つの行は、二重層化合物を比較する。Bi2212からYBCOへと、B位置のイオンは、その半径を増加させ、Z位置のイオンは、その電荷を増加させる。B位置は、p2(q)に支配的に影響すると考えられている。したがって、Tcは純増加する。しかし、本明細書に記載のモデルに基づいて、Tcのさらなる増加が、Z位置(Y)での+3イオンを+2イオン(Ca)で置き換えることによって得られると考えられる。これは、Tl2212およびHg1212を表示する次の2つの行に示される。Tl化合物に対するHg化合物の利点は、構造歪を緩和するHgの線形配位による。次に、3つの層化合物が表示される。Bi2223は、3層を有するが、B位置でのイオンはより小さい。したがって、Tc増加は、Bi2212については大きいが、二重層Ba化合物Tl2212およびHg1212についてはそうではない。同じことが3層Tl化合物に当てはまる。Tc増加は、二重層化合物Tl2212については大きいが、歪緩和Hg2212についてはそうではない。最後の3層化合物Hg2223は、全てのメリットを享受し、BおよびZ位置で+2イオンを有するメリットを全て消耗したように思われる。最終行は、単一層Bi2201の特性を示す。この化合物の比較的低いTcは、そのFermi表面およびFermi状況の詳細によって説明され得る。
【0118】
上記のモデルおよび原理に基づいて、次のステップは、以下の実施例1~8で示されるように、Bサイトで大きいイオン半径を有する+1緩衝液イオンを使用することである。緩衝液イオンとしてBa++の代わりにK+を使用するための2d値は約40meVから5meV未満に下がる。したがって、本発明者は、そのような材料は、p2(q)の大幅な増加により、Tcを大きく増加させることができると考えている。この増加は、B位置での+3緩衝液イオンからB位置での+2緩衝液イオンへの移行によって、1987に観察された、Tcの3倍増加よりも大きい。本発明者は、HgCsNaCu6+δまたはHgRbNaCu6+δ等の大きいイオン半径を持つ+1イオンを純粋に含有する緩和構造にとって最大Tcを伴う、BおよびZ位置での+1イオンに移行することによって、より高いTcが得られると考えている。
【0119】
このように、理論に縛られるわけではなく、上記の超伝導性の理解は、ある材料が比較的高温(例えば室温)で超伝導挙動を示すことができるという本発明者の考えにつながる。例えば、そのような材料は、銅酸化物層(すなわち、銅酸化物層)を含む結晶構造を有し、層の間にまたは層に近接してアルカリ金属イオンが位置する。いくつかの実施形態において、アルカリ金属イオンの分率は、本明細書に記載の超伝導体化合物の結晶構造における銅酸化物層に隣接する金属イオンの総量の0.1より高い(例えば、0.2より高い、0.3より高い、0.4より高い、0.5より高い、0.6より高い、0.7より高い、0.8より高い、0.9より高い、または0.95より高い)ものであってもよい。
【0120】
加えて、本発明の技術は、アルカリ金属イオンの少なくともいくつかと金属酸化物層の少なくともいくつか(例えば、図1の陰イオン21~24によって定義される平面)との間に位置する負イオン(例えば、FまたはO)を含有する材料を提供する。負イオンは、アルカリ金属イオン電荷のさらなるスクリーニングを提供し、よって、+1未満(例えば、多くとも0.8、多くとも0.6、多くとも0.5、多くとも0.4、多くとも0.2、多くとも0.1、または0)の有効電荷を持つイオンを提供する。
【0121】
本明細書で引用される全ての刊行物(例えば、特許、特許出願公報、記事)の内容全体を、ここに参照のために取り込む。本発明と参照のために取り込まれた文書(例えば、2014年10月27日に出願された米国特許仮出願62/069,212号)との間に矛盾がある場合、本発明が支配する。
【0122】
以下の実施例は、例示的であり、限定的ではない。
【0123】
実施例1:高温超伝導体の合成
本明細書に記載されるように、実施例に記載の化合物の化学組成は、エネルギー分散分光法(EDS)によって測定された。実施例に記載の化合物のTcは、真空オーブンにおける4プローブ法によって測定された[Low Level Measurements Handbook, 6th edition, Keithley]。
【0124】
上記のモデルから導出された以下の3つの化合物族が、合成されて、室温超伝導性特性を示した:Kを含有するように調整されたBi2212(すなわち、K族)、Rbを含有するように調整されたBi2212(すなわち、Rb族)、Csを含有するように調整されたBi2212(すなわち、Cs族)。
【0125】
上記3つの族に属する種々の化合物を、以下の一般手順によって合成した:Bi2212を、前駆体として調製した。具体的に、CuO、SrCO、BiおよびCaCOの化学量論量を、研削、プレス、および800~820℃で24~60時間焼結して、Bi2212(すなわち、BiSrCaCuOy)を調製した。その後、Bi2212前駆体を、アルカリ金属の炭酸塩と重量比1:1で混合し、800~820℃で60時間焼結した。アルカリ金属炭酸塩とBi2212前駆体とのモル比は、Kを用いた場合7:1、Rbを用いた場合4:1、Csを用いた場合3:1であった。いくつかの場合において、商用Bi2212(Alfa Aesar、Ward Hill、MA)を用いた。さらに、いくつかの場合において、研削、プレスおよび焼結の2つの段階で反応を行った。具体的に、第1段階における焼結は、24~60時間であり、第2段階における焼結は、60~96時間であった。ほとんどの場合において、混合物は、Ar充填グローブボックスにおいて研削され、グローブボックス内でプレスされ、800~820℃で焼結された。この一般手順に関する変形は、実施例で詳細に述べる。
【0126】
図5は、室温および1テスラの場での磁気測定を示す。連続線は、Bi2212前駆体常磁性応答を表す。該線の下の全てのデータ点は、異なる程度の反磁性応答を示す。これらは、実施例1~6に記載の3つの化合物族に属する。該線の上のデータ点は、反磁性応答の消失を引き起こす特別な処理(高酸素圧力、真空焼鈍、および異なる組成)で3つの化合物族を処理することによって得られた。
【0127】
実施例2:カリウム族における第1HTSサンプルの合成および特性
HTSのカリウム族におけるBi(KSr1-x(KCa1-t)CuOyおよびBi(KSr1-x(KCa1-tCuを含有するサンプルを、実施例1に記載の方法に基づいて調整された以下の方法で作成した。Bi2212前駆体を、Bi、SrCO、CaCOおよびCuOを混合、研削、および800℃で焼結して作成した。その後、前駆体を、KCOと混合する前に、真空で400℃で206時間焼成した。重量比1:1(すなわち、KCOとBi2212とのモル比7:1)での混合、研削、およびプレスを、Ar充填グローブボックスで行った。その後、ペレットを800℃で60時間焼結して、Bi(KSr1-x(KCa1-t)CuおよびBi(KSr1-x(KCa1-tCuを含有するサンプルを得た。
【0128】
図6は、このサンプルの抵抗の温度依存を示す。図6における電気測定は、真空オーブンにおける4プローブ法によって行った。グラフは、500Kを超えるTc開始温度と共に、超伝導遷移に典型的な、低下温度に伴う3桁を超える低下を示した。室温での残余抵抗は、15mΩであった。
【0129】
図7aは、同じバッチのサンプルの温度50K~300Kの関数としての磁気モーメントを示す。この図から分かるように、比較的低温Tc(すなわち、約100K)を有する相は、50Kでの磁気モーメント-1.3E-5EMUで、比較的高いMeissner分率を有した。室温を超えるTcを有する相は、300Kでの磁気モーメント約-4E-7で、低Meissner分率であった。同様の挙動が、他の族のサンプルでも見られた。この結果は、アルカリイオンが多く取り込まれたBi2212の低い分率および低濃度のアルカリイオンがドープされたBi2212の高い分率を示すEDSおよびXRD測定とよく相関している。図7bは、約75K~300Kの同じ測定を示す。連続線は、参照として用いられるサンプルホルダからの応答を表す。図7bに示すように、温度を約75Kから125Kに上げると、磁気モーメントは上昇したが、マイナスのままであり、参照線の下であった。温度を125より高く上げると、磁気モーメントは、通常BiSrCaCu(すなわち、Bi2212)で観察されるようにはプラスにならなかった。むしろ、磁気モーメントはマイナスのままで、300Kまでは参照線のかなり下であった。このように、図7aおよび7bの結果は、約100KのTcを有する多量超伝導相および室温を超えるTcを有する少量超伝導相を示唆している。したがって、多量超伝導相はBi(KSr1-x(KCa1-t)Cuを含有し、xおよびtはそれぞれ0.5未満であり、少量超伝導相はBi(KSr1-x(KCa1-tCu図8に示すBiSr0.8Ca1.2Cu等)を含有すると考えられる。他の測定は、RbおよびCs族における超伝導化合物の同様の挙動、すなわち、約100K以下での多量超伝導相および室温での少量超伝導相、を示した。X線回折(XRD)およびエネルギー分散分光法(EDS)(下記参照)は、この2つの相像を裏付けている。
【0130】
図8は、上記で得られたサンプルにおける新たな化合物の結晶子のEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。この新たな化合物は、カリウム族に属し、KCaCuOクラスターを含む。測定は、環境制御形SEM(ESEM)Quanta200(FEI)で行った。システムは、サンプルに提示される種々の元素の定量分析用EDSシステムを含む。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Kの原子比率が0%から約3.85%に上昇したことを示し、Kが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。原子分率は、次の式を示唆する:BiSr0.8Ca1.2Cu、これは、一般式:Bi(KSr1-x(KCa1-tCuに入る。この化合物は、該サンプルの小分率に現れる。結晶格子への炭素の取り込みが結晶格子におけるカリウムの高い取り込みを可能にしたと考えられる。
【0131】
実施例3:カリウム族における第2HTSサンプルの合成および特性
カリウム族における他のHTSサンプルを、実施例1に記載の方法と同様の方法で合成した。前駆体を、KCOと、N充填グローブボックスで、重量比1:1(すなわち、KCOとBi2212とのモル比7:1)で、混合および研削した。混合物を、グローブボックス外でペレットにプレスし、デシケーターに直ちに退避させた。その後、ペレットを、800℃で60時間焼結して、サンプルを得た。
【0132】
図9は、上記サンプルのエネルギー分散X線分光分析(EDS)によるSEM顕微鏡写真である。測定は、Schottky型電界放射電子銃を備えたMagellan T Extra High Resolution(XHR)SEMで行った。顕微鏡は、EDSシリコンドリフト検出器(Oxford X-Max)を備えたものである。電子ビームを、赤点にフォーカスした。顕微鏡写真の下の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。原子分率は、次の式の化合物を示唆する:Bi(KSr1-x(SrCa1-t)Cu。これは、化合物が3つの銅層を含むことを示唆する。該新たな化合物は、Kの高取り込みを伴う、超構造Bi1212/Bi1201の派生物(derivative)として理解することができる。Bi1212/Bi1201超構造は、BiSrCaCuy1(Bi1212)およびBiSrCuOy2(Bi1201)の連晶である。結果は、Kの原子比率が0%から約12.9%に上昇したことを示し、Kが結晶格子内に大幅に取り込まれたことを示唆している。また、結果は、Srの原子比率が理論値約20%(すなわち、Bi1212/Bi1201に基づくBiの原子比率の2倍またはCuの原子比率の4/3)から約7.8%に下がったこと、および、Caの原子比率が約5%(すなわち、Bi1212/Bi1201基づくCuの原子比率の1/3またはBiの原子比率の半分)から約4%に下がったことを示し、Srの約65%がKで置き換えられたことを示唆している(すなわち、12.9%/20%=0.65)。このように、SrおよびKは、xが約0.65である(KSr1-xを与えるのに必要な20%原子比率を少し上回る合計となる。余分Sr(0.8%)は、Caサイトに取り込まれたと考えられ該サイトの原子比率を必要とされる約5%にする。超構造を詳細に見ると、成分:Bi(KSr1-xCaCuy1(Bi1212)およびBi(KSr1-xCuOy2(Bi1201)からなる。理論に縛られるわけではなく、これらの2つの成分のうちの1つは、取り込み率x~1sでKを含むことができると考えられる。また、理論に縛られるわけではなく、そのようなxの高値によって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。
【0133】
図10は、同じサンプルでの他の相のEDS分析を示す。電子ビームを、赤点にフォーカスした。顕微鏡写真の下の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Kの原子比率が0%から約2%に上昇したことを示し、Kが結晶格子に取り込まれたことを示唆している。また、結果は、Srの原子比率が理論値約12.4%(すなわち、Cuの原子比率と同じ)から約10%に下がったことを示し、Srの約20%がKに置き換えられたことを示唆している。また、結果は、Caの原子比率(すなわち、Cuの原子比率の半分)の約6.6%への低下はないことを示し、SrサイトがKにとって好適な取り込みサイトであることを示唆している。上記結果は、この相が式Bi(KSr1-xCaCuOyを有することを示唆する。同様の挙動が、他の例、すなわち、2つの相への分離、でも見られた。低アルカリ取り込み相は、x<0.5で、Bi2212と類似し、高アルカリ取り込み相は、x>0.5である。高アルカリ取り込み相は、炭素取り込みを伴うまたは伴わない超構造と考えられる。超構造は、高レベルのアルカリ取り込みを促進し、高アルカリ取り込み相がこれらのサンプルで観察された室温超伝導性に寄与すると考えられる。
【0134】
図11は、このサンプルの温度依存抵抗を示す。測定は、真空オーブンにおける4プローブ法によってなされた。グラフは、超伝導遷移に典型的な、低下温度に伴う抵抗の3桁を超える低下を示した。図11に示すように、このサンプルは、500Kを超えるTcを有する。比較的高い残余抵抗率は、合成プロセスに帰するものであり、結晶子間に弱いリンクを生じる。サンプルは、300Kおよび1Tの場で負磁気モーメント-2.3E-7emuを示した。
【0135】
実施例4:ルビジウム族における第1HTSサンプルの合成および特性
図12は、ルビジウム族に属するHTS化合物の微細構造を示す。サンプルは、KCOがRbCOによって置き換えられた以外は、実施例3に記載の方法と同じ方法で合成された。画像は、後方散乱(Back Scattered(BS))モードで環境制御形SEM(ESEM)Quanta 200(FEI)によって撮影され、より高い原子番号の元素がより明るくなるように原子番号に基づいてコントラストを与えた。図12に示すように、サンプルの大きい領域は、均質化学で伝導性(帯電効果なし)であり、これは後方散乱電子画像コントラストから明らかである。この化合物の2つの点抵抗測定は、室温で数オームの値であった。加えて、図12は、異なる方向に配された結晶子を持つ多結晶性材料を示す。結果として、材料は、結晶子間の境界に対応する室温での残余抵抗を示した。EDSは、残余RbCOを伴うこれらの早期サンプル(X>0.5)における高レベルのルビジウム取り込みを示した。EDS結果は、次の式の3つの銅層を含有する化合物を示唆している:BiSrRb2.5Ca0.64Cu。理論に縛られるわけではなく、そのようなxの高値によって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。残余RbCOは、結晶子間でよく見られ、これら早期サンプルで観察された高残余抵抗を説明するものである。
【0136】
図13は、このサンプルの抵抗の温度依存を示す。抵抗は、4プローブ法によって測定された。銀ペーストおよびワイヤ結合を用いて、サンプルへの接触を行った。高T曲線は、真空オーブンでの高温測定を表す。低T曲線は、液体ヘリウム冷却プローブステーションでの低温測定を表す。図13に示すように、このサンプルは、約400Kの温度で超伝導遷移開始を示した。抵抗は、サンプルが室温に冷却されると、2桁下がった。約10をムの一定残余抵抗が、室温から温度20Kまで持続した。この残余抵抗の現象は、伝導性が結晶子間の弱いリンクで限定されることから、多結晶性サンプルで良く知られている。我々のモデルによると、サンプルが500Kから400Kに冷却された際の抵抗上昇は、半導体エネルギーギャップの開口によるものと考えられる。超伝導遷移前の冷却によるそのような抵抗上昇の他の例は、アンドープHTSBi2201にある。
【0137】
実施例5:ルビジウム族における第2HTSサンプルの合成および特性
図14は、Bi(RbSr1-xCaCuOyの化合物を含有するルビジウム族に属する他のサンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。サンプルは、成分を最初に800~820℃で30時間焼結して、その後再研削を行い、800~820℃で113時間第2焼結した以外は、実施例4に記載の方法と同じ方法で合成された。測定は、環境制御形SEM(ESEM)Quanta 200(FEI)で行った。システムは、サンプルに提示される種々の元素の定量分析用EDSシステムを含む。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Rbの原子比率が0%から約1.2%に上昇したことを示し、Rbが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。また、結果は、Srの原子比率が理論値約13.5%(すなわち、Cuの原子比率と同じ)から約9.8%に下がったことを示し、Caの原子比率が約6.75%(すなわち、Cuの原子比率の半分)から約7.9%へわずかに上がったことを示し、SrサイトでのCaの低取り込みを示唆している。本実施例は、アルカリオンの低取り込みパーセンテージを有すると考えられる(x>0、t=0)。
【0138】
実施例6:ルビジウム族における第3HTSサンプルの合成および特性
図15aは、ルビジウム族における他のサンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。サンプルは、実施例1の方法で合成された。図は、ルビジウム族に属し、RbCaCuOクラスターまたはRbCuOクラスターを含む新たな化合物の結晶子を示す。測定は、環境制御形SEM(ESEM)Quanta200(FEI)で行った。システムは、サンプルに提示される種々の元素の定量分析用EDSシステムを含む。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Rbの原子比率が0%から約20%に上昇したことを示し、Rbが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。原子分率は、次の式を示唆する:BiSrRb2.2Ca0.5Cu。Bi原子分率が単位セル当たり4つのBiイオンに対応することから、この化合物の結晶構造は、SrがRbおよびCaで置き換えられた、族BiSrCuO(C-Bi2201/C-Bi2201)の2つの異なるブロックの連晶であると考えられる。超構造Bi2201/Bi2201の順序付けは、2つのBi2201ブロック間の明確な違いを要すると考えられる。したがって、EDS結果は、この化合物の構造が次の2つの構造の連晶であることを示唆し得る:Bim1RbCuOy1/Bim2SrRb0.2Ca0.5CuOy2。理論に縛られるわけではなく、そのようなxの高値によって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。
【0139】
図15bは、このサンプルの抵抗対温度グラフである。測定は、真空オーブンにおける4プローブ法によってなされた。図は、このサンプルが550Kを超えるTcと30mΩの残余抵抗とを有することを示す。
【0140】
図15cは、図15aのルビジウムHTSサンプルのXRDデータを示す。上の粗線は、生データである。上の細線は、Rietveld分析によって得られた計算曲線である。下の粗線は、生データと計算曲線との間の残余差である。矢印は、Rb取り込みによって影響される主ピークを示す。分析は、次の2つの異なる超伝導相の存在を示す磁気測定およびEDSから得られたデータを用いた:Rb取り込みがないもしくはほとんどない相に割り当てられた比較的低温超伝導体、および、高Rb取り込みの相に割り当てられた高温超伝導体相(室温を超えるTcを持つ)。アスタリスクは、未知の不純物を指す。
【0141】
実施例7:セシウム族におけるHTSサンプルの合成および特性
セシウム族におけるHTSサンプルが、実施例1に記載の方法で合成された。具体的に、同じBi2212前駆体を用いた。前駆体を、CsCOと、重量比1:1(すなわち、CsCOとBi2212とのモル比3:1)で、Ar充填グローブボックスにおいて、混合および研削した。プレスは、グローブボックスで行った。図16は、CsCaCuO4クラスターを含む新たな化合物の結晶子のEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。測定は、環境制御形SEM(ESEM)Quanta200(FEI)で行った。システムは、サンプルに提示される種々の元素の定量分析用EDSシステムを含む。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Csの原子比率が0%から約4.3%に上昇したことを示し、Csが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。原子分率は、次の式を示唆する:BiSrCs0.7CaCu
【0142】
図17は、同じサンプルの他の結晶子のEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図の表は、EDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Csの原子比率が0%から約1.5%に上昇したことを示し、Csが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。原子分率は、次の式を示唆する:BiSrCs0.3Ca1.1Cu。この化合物において、xは0.5未満である。
【0143】
図18は、このサンプルの抵抗の温度依存を示す。高温測定は、真空オーブンで行い、低温測定は、液体窒素冷却プローブステーションで行った。室温から80Kの残余抵抗は、30mΩであった。3つのアルカリ族に属する低残余抵抗サンプルを得て、それらの抵抗の温度依存を測定した。室温から100Kの平均残余抵抗は、30~50ミリオームであり、最低残余抵抗は、10ミリオームであった。これらの値は、本発明者が作製した標準YBCOから20Kで測定された残余抵抗に匹敵する。
【0144】
図19は、上記のセシウムHTSサンプルの温度の関数としての磁気モーメントを示す。測定は、商用低温SQUIDシステムで行った。サンプルを、プラスチックストローにおけるゼラチンカプセル内に保持した。この測定における磁界を、1Tに保った。図19に示すように、この化合物の磁気モーメントはマイナスであり、反磁性応答を示している。連続曲線は、サンプルホルダから測定された参照応答を表す。図示の通り、セシウムHTSサンプルの反磁性応答は、参照応答のかなり下であり、真反磁性応答を示している。
【0145】
図19に示すように、セシウムHTSサンプルの反磁性応答は、測定システムの最大許容温度である320Kまで持続した。上記の通り、超伝導遷移は、約400Kで起こるため、図19では観察されなかった。しかし、室温でのセシウムHTSサンプルの反磁性応答は明らかである。
【0146】
図20は、セシウムRTSサンプルのXRDデータを示す。上の粗線は、生データである。上の細線は、Rietveld分析によって得られた計算曲線である。下の粗線は、生データと計算曲線との間の残余差である。矢印は、Cs取り込みによって影響される主ピークを示す。分析は、次の2つの異なる超伝導相の存在を示す磁気測定およびEDSから得られたデータを用いた:Cs取り込みがないもしくはほとんどない相に割り当てられた低温超伝導体、および、高Cs取り込みの相に割り当てられた室温超伝導体相。
【0147】
実施例8:イオン置き換え:ルビジウムおよびカリウム族のメンバー
図21は、ルビジウム族の他のサンプルのEDS分析によるSEM顕微鏡写真である。サンプルは、実施例1と同様の方法で合成された。RbCOとBi2212前駆体との重量比は8:2であった。研削混合物を、750℃に加熱して、そこで4~6時間静止した。その後、混合物を、810℃に加熱して、150~300時間焼結した。長い焼結時間によって、Srに対するRbの拡散およびイオン置き換えを可能にした。図21は、ルビジウム族に属しRbCaCuOクラスターまたはRbCuOクラスターを含む新たな化合物の結晶子を示す。測定は、環境制御形SEM(ESEM)Quanta200(FEI)で行った。システムは、サンプルに提示される種々の元素の定量分析用EDSシステムを含む。電子ビームを、赤点にフォーカスした。図21の表は、該スポットでEDS分析から得られた異なる元素の原子分率および重量分率を示す。結果は、Rbの原子比率が0%から約9%に上昇したことを示し、Rbが結晶格子内に取り込まれたことを示唆している。原子分率は、次の式を示唆する:BiCSrRbCaCu。したがって、EDS結果は、x>0.5を示唆している。理論に縛られるわけではなく、そのようなxの高値によって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。
【0148】
図22aは、FEIヘリオスデュアルビームシステムにおけるプローブに掛かっているそのような結晶子を示す。該システムは、集束イオンビーム(FIB)を電子ビーム(e-beam)と組み合わせたものである。微小結晶が、e-beamによって特定され、FIBおよびプローブによって取り出され、プローブ上でFIBによって洗浄され、e-beamおよびEDSによって分析された。図22bのスペクトルは、図22に示すスポット番号14でのEDS分析結果である。EDS結果は、次の一般式を示唆する:BiC(RbSr1-xCaCu。SrおよびRbの重量分率は、ほぼ同一であり、x~0.5であった。理論に縛られるわけではなく、そのようなxの高値によって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。
【0149】
図23は、図21に示すサンプルと同じ方法で作ったサンプルの抵抗対温度グラフである。測定は、Quantum Design PPMSシステムにおいて3プローブ法で行った。遷移温度約80Kは、残余前駆体Bi2212の存在を示す。図23は、このサンプルが350Kを超えるTcを有することを示す。ここで用いた3プローブ法に因って、残余抵抗は高い。
【0150】
図24は、図21に示すサンプルと同じ方法で作ったサンプルの磁気モーメント対温度グラフである。図示の通り、サンプルは、室温未満で反磁性応答(負磁気モーメント)を示す。磁気モーメントは、室温よりかなり高い、約370K(すなわち、Tc)の温度で、プラスになる。測定は、高温測定用オーブンを備えたQuantum Design MPMSシステムで行った。
【0151】
図25aは、180時間というより長い焼結時間以外は、図21に示すサンプルと同じ条件で成長させた、ルビジウム族のサンプルの磁気モーメント対温度グラフである。結晶のEDS測定は、原子比率Bi:Sr:Rb:Ca:Cuが約2:2:2:1:2であることを示した。磁気測定を、図24に示す結果を得るために用いたシステムと同じシステムで行った。図26aに示すように、遷移は、より急であり、約450KのTcを示した。
【0152】
図25bは、KCOとBi2212との重量比が2:8であり、810℃での保持時間が180時間である以外は、図21に示すサンプルと同じ方法で成長させた、カリウム族のサンプルの同種の磁気測定を示す。結晶のEDS測定は、原子比率Bi:Sr:K:Ca:Cuが約2:2:2:1:2であることを示した。ここで、遷移は、約400KのTcを示した。尚、ルビジウム化合物およびカリウム化合物のそのようなTc差は、本明細書に記載のモデルに従うものであり、ルビジウムのより大きいイオン半径が酸素p軌道間のより低い重複を生じ、計算においてより低いエネルギー差として測定される。そのようなより低い重複は、フェルミ準位でより浅いバンド、よって、より大きいp2(q)を生じ、より高いTcへとつながる。
【0153】
図26は、ルビジウム族に属するサンプルの微小結晶回折結果を示す。左図は、フレームの1つを示す。測定は、European Synchrotron Radiation Facility(ESRF)のID29ビームで行った。微小結晶上のEDSおよびX線蛍光(XRF)は、図21および22と同じ組成を示した。右図は、構造の改良結果を示す。中央の正方形は、本明細書に記載のクラスターを定義する。Cuイオンは、正方形の角に位置し、酸素イオンは、エッジに沿う。ルビジウムイオンは、正方形の中心の直ぐ上に位置し、本明細書に記載のモデルにしたがって、クラスターの頂点のSrイオンを置き換える。クラスターにおけるイオン間の距離は、銅酸化物に典型的なものであり、距離Cu-O距離は、約1.9Åである。格子パラメータは、歪銅酸化物構造にしたがって、a=5.3880(11)Å、b=5.3760(11)Å、およびc=15.484(3)Åである。CuO平面の上のRbイオンの高さは、約2.3Åである。そのようなクラスターで、本明細書に記載のモデルは、狭バンド分散の推定として、10meV未満の重複を予測する。この値は、Bi2212における40meVバンド分散の測定値と比較されるべきである。理論に縛られるわけではなく、バンド分散のそのような低値が、極めて高いp2(q)を生じ、これによって、このサンプルで観察された室温超伝導性が説明される。
【0154】
図27は、一年間にわたって得られた種々の結晶サイズを示す。グラフは、サンプルにおけるRTS材料の濃度結晶サイズの大幅な改善を示す。
【0155】
他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27