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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】改変γδT細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220927BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220927BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220927BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220927BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20220927BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20220927BHJP
   C40B 40/10 20060101ALI20220927BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20220927BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/17 Z
A61P35/00
A61P35/02
C07K14/705
C07K16/28
C12N15/00 A
C40B40/10
C12N5/09
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2017545528
(86)(22)【出願日】2015-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-30
(86)【国際出願番号】 US2015061189
(87)【国際公開番号】W WO2016081518
(87)【国際公開日】2016-05-26
【審査請求日】2018-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】62/080,500
(32)【優先日】2014-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517171347
【氏名又は名称】アディセット バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャコボヴィッツ, アヤ
(72)【発明者】
【氏名】フォード, オリット
(72)【発明者】
【氏名】リン, アンディ アン-デ
(72)【発明者】
【氏名】サンタギダ, マリアンヌ テリーサ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】上條 肇
【審判官】川合 理恵
(56)【参考文献】
【文献】Clinical Cancer Research,2014年 6月,Vol.20,Issue22,p5720-5732
【文献】Molecular Therapy,2013年,Vol.21,No.3,p.638-647
【文献】Scandinavian Journal of Immunology,2003年,Vol.58,No.2,p.211-220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00 - 35/768
C12N 5/00 - 5/28
C07K 16/00 - 16/46
C40B 40/02
CAPlus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増殖したγδT細胞集団を含む医薬を製造するための方法であって、γδT細胞集団の増殖が、δ1γδT細胞又はδ2γδT細胞亜集団の選択的な増殖を刺激する作用物質によって活性化されており、
作用物質が、δ1又はδ2γδT細胞を増殖させ、かつそれぞれ:
i.δ1TCR鎖の特異的エピトープに結合し、δ1γδT細胞を選択的に増殖させ、かつ増殖したδ1γδT細胞集団を製造する、TS8.2又はTS-1抗体、又は
ii.δ2TCR鎖の特異的エピトープに結合し、δ2γδT細胞を選択的に増殖させ、かつ増殖したδ2γδT細胞集団を製造する、B6又は15D抗体
から選択され、並びに:
a.増殖したγδT細胞集団が、δ1T細胞のあるパーセンテージを含み、δ1T細胞のパーセンテージが、80%より高く、かつ増殖したγδT細胞集団が、少なくとも1×10 個のδ1γδT細胞を含む;又は
b.増殖したγδT細胞集団が、δ2T細胞のあるパーセンテージを含み、δ2T細胞のパーセンテージが、80%より高く、かつ増殖したγδT細胞集団が、少なくとも1×10 個のδ2γδT細胞を含む
方法。
【請求項2】
a.増殖したγδT細胞集団が、δ1T細胞のあるパーセンテージを含み、増殖したγδT細胞集団中のδ1T細胞のパーセンテージが、90%より高い;
b.増殖したγδT細胞集団が、δ2T細胞のあるパーセンテージを含み、増殖したγδT細胞集団中のδ2T細胞のパーセンテージが、90%より高い;
c.増殖したγδT細胞集団が、δ3T細胞のあるパーセンテージを含み、増殖したγδT細胞集団中のδ3T細胞のパーセンテージが、5%より高い;又は
d.抗体は、γδT細胞集団の増殖を24時間未満に1細胞分裂の平均速度で刺激する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a.抗体が、表面上に固定され;かつ/又は
b.γδT細胞集団のγδT細胞が、血液試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検試料、組織、リンパ球、及び外部環境と直接接触する対象の上皮部位からなる群から選択される対象の複合試料から単離されたγδT細胞に由来する
請求項に記載の方法。
【請求項4】
γδT細胞集団が、腫瘍認識部分を発現するように改変されたγδT細胞のある量をさらに含む、請求項1-のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
a.改変されたγδT細胞が、ヒトHLA遺伝子座を欠いている;
b.改変γδT細胞が、万能ドナー細胞である;
c.改変γδT細胞が、腫瘍特異的アロジェニックγδT細胞である;
d.改変γδT細胞が、2つ以上の腫瘍認識部分を発現するように改変されており、
(i)2つ以上の腫瘍認識部分が、異なっており、それぞれの異なる腫瘍認識部分が、同じ抗原の異なるエピトープを認識するように改変されているか、若しくは
(ii)2つ以上の腫瘍認識部分が、異なっており、それぞれの異なる腫瘍認識部分が、異なる抗原の異なるエピトープを認識するように改変されている;
e.改変γδT細胞が、Vδ1T細胞、Vδ2T細胞、若しくはVδ3T細胞、又はそれらの混合物に由来する;
f.改変γδT細胞が、血液試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検試料、組織、リンパ球、及び外部環境と直接接触する対象の上皮部位からなる群から選択される対象の複合試料から単離されたγδT細胞に由来する;又は
g.改変γδT細胞が、約2~約20時間以内に1細胞分裂の平均速度で増殖する請求項に記載の方法。
【請求項6】
a.腫瘍認識部分が、腫瘍浸潤リンパ球に由来する;又は
b.腫瘍認識部分が、T細胞からクローンされる;又は
c.腫瘍認識部分が、改変T細胞受容体であり、
i.改変T細胞受容体が、ヒト若しくはマウスT細胞受容体に由来する、
ii.改変T細胞受容体が、改変αβTCRである、若しくは
iii.改変T細胞受容体が、改変γδTCRである;
d.腫瘍認識部分が、腫瘍抗原を認識する、キメラ抗原受容体(CAR)、抗体、単一鎖可変断片(scFV)、単一ドメイン抗体(sdAb)、抗体断片、Fab、若しくはF(ab) であり、腫瘍認識部分が、ヒトB細胞、ラクダB細胞ラマB細胞、ラットB細胞、若しくはマウスB細胞に由来する;
e.腫瘍抗原が、ペプチド-MHC複合体であり、かつ腫瘍認識部分が、ペプチド-MHC複合体を認識する;又は
f.腫瘍認識部分が、腫瘍細胞表面上に発現される外来性抗原、又はMHCクラス分子との複合体として細胞表面に呈示される派生ペプチドを認識する
請求項に記載の方法。
【請求項7】
γδT細胞集団が、抗原認識部分を発現するように改変されているγδT細胞のある量をさらに含み、抗原認識部分が、自己免疫疾患に関連する抗原又は病原性抗原を認識する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
a.改変γδT細胞が、2つ以上の抗原認識部分を発現するように改変されており、それぞれの抗原認識部分が、同じ又は異なる自己免疫抗原を認識する;
b.改変γδT細胞が、2つ以上の抗原認識部分を発現するように改変されており、それぞれの抗原認識部分が、同じ又は異なる自己免疫抗原の異なるエピトープを認識する;
c.改変γδT細胞が、抗原認識部分を発現するように改変されており、抗原認識部分が、細菌性抗原又はウイルス性抗原である病原性抗原を認識する;
d.改変γδT細胞が、2つ以上の抗原認識部分を発現するように改変されており、それぞれの抗原認識部分が、同じ病原性抗原の異なるエピトープを認識する;又は
e.改変γδT細胞が、2つ以上の抗原認識部分を発現するように改変されており、それぞれの抗原認識部分が、異なる病原性抗原を認識し、
i.病原性抗原が、細菌蛋白質である;若しくは
ii.病原性抗原が、ウイルス蛋白質である
請求項に記載の方法。
【請求項9】
δ1γδT細胞又はδ2γδT細胞亜集団の選択的なインビトロにおける増殖のための方法であって、
γδT細胞亜集団の選択的な増殖を刺激する活性化剤にγδT細胞集団を接触させることを含み、活性化剤がδ1又はδ2γδT細胞を選択的に増殖させる抗体であり、前記方法が、
a.60パーセントより高い、増殖したγδT細胞集団中のδ1T細胞のパーセンテージであって、増殖したγδT細胞集団が、少なくとも1×10 個のδ1γδT細胞を含み、δ1γδT細胞を選択的に増殖させる抗体がTS8.2及びTS-1抗体からなる群から選択されるパーセンテージ;又は
b.80パーセントより高い、増殖したγδT細胞集団中のδ2T細胞のパーセンテージであって、増殖したγδT細胞集団が、少なくとも1×10 個のδ2γδT細胞を含み、δ2γδT細胞を選択的に増殖させる抗体が15D及びB6抗体からなる群から選択されるパーセンテージ
を含む増殖したγδT細胞集団を生成することを含む、方法。
【請求項10】
抗体が、表面上に固定化されている、請求項に記載の方法。
【請求項11】
γδT細胞が、血液試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検試料、組織、リンパ球、及び外部環境と直接接触する対象の上皮部位からなる群から選択される対象の複合試料から単離されたγδT細胞に由来する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
γδT細胞集団のγδT細胞が、腫瘍認識部位を発現するように改変されており、
a.改変γδT細胞が、万能ドナー細胞である;
b.改変γδT細胞が、腫瘍特異的アロジェニックγδT細胞である;
c.改変γδT細胞が、2つ以上の腫瘍認識部分を発現するように改変されており、
i.2つ以上の腫瘍認識部分が、異なっており、それぞれの異なる腫瘍認識部分が、同じ抗原の異なるエピトープを認識するように改変されている、若しくは
ii.2つ以上の腫瘍認識部分が、異なっており、それぞれの異なる腫瘍認識部分が、異なる抗原の異なるエピトープを認識するように改変されている;
d.改変γδT細胞が、Vδ1T細胞、Vδ2T細胞、若しくはVδ3T細胞、又はそれらの混合物に由来する;又は
e.改変γδT細胞が、血液試料、臍帯血試料、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検試料、組織、リンパ球、及び外部環境と直接接触する対象の上皮部位からなる群から選択される対象の複合試料から単離されたγδT細胞に由来する
請求項9-11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
a.腫瘍認識部分が、腫瘍浸潤リンパ球に由来する
b.腫瘍認識部分が、T細胞からクローンされる
c.腫瘍認識部分が、改変T細胞受容体であり、
i.改変T細胞受容体が、ヒト若しくはマウスT細胞受容体に由来する
ii.改変T細胞受容体が、改変αβTCRである、若しくは
iii.改変T細胞受容体が、改変γδTCRである
d.腫瘍認識部分が、腫瘍抗原を認識する、キメラ抗原受容体(CAR)、抗体、単一鎖可変断片(scFV)、単一ドメイン抗体(sdAb)、抗体断片、Fab、若しくはF(ab) であり、腫瘍認識部分が、ヒトB細胞、ラクダB細胞ラマB細胞、ラットB細胞、若しくはマウスB細胞に由来する
e.腫瘍抗原が、ペプチド-MHC複合体であり、かつ腫瘍認識部分が、ペプチド-MHC複合体を認識する;又は
f.腫瘍認識部分が、腫瘍細胞表面上に発現される外来性抗原、又はMHCクラス分子との複合体として細胞表面に呈示される派生ペプチドを認識する
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、γδT細胞集団の増殖を24時間未満に1細胞分裂の平均速度で刺激する、請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
Tリンパ球による抗原認識は、多様性の高いヘテロ二量体受容体であるT細胞受容体(TCR)によって達成され得る。血中及びリンパ器官中のヒトT細胞のおよそ95%はヘテロ二量体αβTCR受容体(αβT細胞系統)を発現する。血中及びリンパ器官中のヒトT細胞のおよそ5%はヘテロ二量体γδTCR受容体(γδT細胞系統)を発現する。これらのT細胞サブセットはそれぞれ「αβ」及び「γδ」T細胞と呼ばれることもある。αβ及びγδT細胞は機能が異なる。αβT細胞はMHC拘束性養子免疫を誘導し、γδT細胞は先天免疫及び非MHC拘束性養子免疫を橋渡しする。抗原提示細胞(APC)がクラスI/II MHCとの関連で抗原を提示すると、αβT細胞の活性化が生じる。樹状細胞がナイーブT細胞の最も強力な公知のアクティベーターである。完全なαβT細胞活性化には2つのシグナルが必要であり、a)MHC-ペプチドとTCR-CD3複合体との相互作用によって生じるシグナル;及びb)T細胞上のCD28とAPC上のB7ファミリーのメンバーとの相互作用によって生じるシグナル(共刺激シグナル)である。αβT細胞とは対照的に、γδT細胞は抗原を直接認識することができ、MHC-ペプチドとTCR-CD3複合体との相互作用を必要としない。したがって、γδT細胞はMHC拘束性ではないと言われる。内因性T細胞において、共刺激シグナルの欠如はクローンアネルギーをもたらす。
【0002】
内因性γδT細胞の抗原を直接認識する能力がγδT細胞を魅力的な治療用手段としている。しかし、内因性γδT細胞の操作及び誘導が困難であることが、臨床における患者由来γδT細胞の治療上の有用性を制限している。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態において、本開示は改変γδT細胞を提供し、改変γδT細胞は1つ、2つ、またはそれ以上の異なる腫瘍認識部分を発現するように改変されており、各腫瘍認識部分は腫瘍抗原を認識する。腫瘍認識部分は、同一腫瘍抗原の異なるエピトープ、異なる腫瘍の抗原、腫瘍抗原及び活性化もしくは不活性化共刺激/免疫調節受容体、MHC分子と複合体化した抗原、またはホーミング受容体を認識するように設計することができる。場合によっては、本開示は改変γδT細胞で癌を治療する方法を提供する。改変γδT細胞は被検者に対してアロジェニックに設計することができ、改変γδT細胞は腫瘍特異的アロジェニックγδT細胞とすることができる。場合によっては、改変γδT細胞はヒトHLA遺伝子座を欠く。HLA遺伝子座はHLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA-DRからなる群から選択することができ、改変γδT細胞は2つ以上のHLA遺伝子座からの発現を欠くように設計改変することができる。場合によっては、少なくとも1つの改変腫瘍認識部分は改変T細胞受容体である。T細胞受容体はヒトT細胞受容体、マウスT細胞受容体、ラットT細胞受容体、またはキメラT細胞受容体とすることができる。改変T細胞受容体は改変αβTCRとすることができ、2つの異なる改変αβTCRが同一抗原の異なるエピトープを認識するように設計することができる。他の場合では、改変T細胞受容体は改変γδTCRである。いくつかの実施形態において、固形腫瘍に浸潤するように改変γδT細胞を設計する。改変γδT細胞は、腫瘍細胞において細胞内または細胞外発現した腫瘍抗原を認識するように設計することができる。細胞外発現した腫瘍抗原の場合、改変γδT細胞は、MHC分子と複合体化したペプチドである抗原を認識するように構成することができる。場合によっては、腫瘍抗原はリンパ腫抗原、白血病抗原、多発性骨髄腫抗原、乳癌抗原、前立腺癌抗原、膀胱癌抗原、結腸及び直腸癌抗原、脳癌抗原、胃癌抗原、頭頸部癌抗原、腎臓癌抗原、肺癌抗原、膵臓癌抗原、肉腫抗原、中皮腫抗原、卵巣癌抗原または黒色腫抗原である。場合によっては、改変γδT細胞は、Vδ1T細胞、Vδ2T細胞もしくはVδ3T細胞、またはVδ1、Vδ2、もしくはVδ3T細胞の混合物に由来する。改変γδT細胞は、CD3T細胞またはCD3T細胞に由来することができる。改変γδT細胞は同一抗原の異なるエピトープを認識するように設計することができる。
【0004】
場合によっては、2つ以上の異なる腫瘍認識部分は異なるポリヌクレオチド配列によってコードされ、異なるポリヌクレオチド配列それぞれが同一抗原の異なるエピトープを認識するように改変する。場合によっては、少なくとも1つの腫瘍認識部分を腫瘍細胞からクローニングする。他の場合では、少なくとも1つの腫瘍認識部分を合成的に改変する。場合によっては、少なくとも1つの腫瘍認識部分は腫瘍抗原を認識する抗体断片、またはその抗原結合断片である。腫瘍認識部分は改変免疫グロブリン軽鎖、改変免疫グロブリン重鎖、またはこれらの任意の断片とすることができる。場合によっては、改変γδT細胞は遊走及びホーミング受容体も発現する。ホーミング分子は改変γδT細胞を固形腫瘍に接着することができる。場合によっては、少なくとも1つの免疫チェックポイント遺伝子を欠くように改変γδT細胞をさらに改変し、免疫チェックポイント遺伝子はCTLA-4遺伝子、PD-1遺伝子、LAG3遺伝子、CEACAM-1遺伝子、または別の遺伝子とすることができる。場合によっては、腫瘍抗原は、CD19、CD30、CD22、CD37、CD38、CD56、CD33、CD30、CD138、CD123、CD79b、CD70、CD75、CA6、GD2、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CEACAM5、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、PLIF、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、メソテリン、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質/受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、SLTRK6、gp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、MAGEAファミリー遺伝子(例えばMAGE3A、MAGE4Aなど)、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MHCクラスI鎖関連分子A(MICA)、MHCクラスI鎖関連分子B(MICB)、HPV、またはCMVから選択される。他の場合では、少なくとも1つの腫瘍認識部分は、本明細書に記載の任意の抗原、抗原の一部または断片を認識するように設計されたキメラ抗原受容体(CAR)である。
【0005】
他の実施形態において、改変γδT細胞は抗原認識部分を発現するように改変されており、抗原認識部分は自己免疫疾患に関連する抗原を認識する。そのような細胞は1つ、2つ、またはそれ以上の抗原認識部分を発現するように改変され、各抗原認識部分は同一自己免疫抗原の異なるエピトープを認識し得る。場合によっては、腫瘍認識部分は異なる抗原、抗原及び活性化もしくは不活性化共刺激/免疫調節受容体、MHC分子と複合体化した抗原、または自己免疫疾患に関連するホーミング受容体を認識する。
【0006】
代替的実施形態では、改変γδT細胞は抗原認識部分を発現するように改変されており、抗原認識部分は病原性抗原を認識する。そのような細胞は2つ以上の抗原認識部分を発現するように改変され、各抗原認識部分は同一病原性抗原の異なるエピトープを認識し得る。場合によっては、腫瘍認識部分は異なる抗原、抗原及び活性化もしくは不活性化共刺激/免疫調節受容体、MHC分子と複合体化した抗原、または病原性抗原に関連するホーミング受容体を認識する。
【0007】
病原性抗原は細菌分子またはウイルス分子、例えば細菌タンパク質またはウイルスタンパク質などとすることができる。
【0008】
他の場合では、本開示は、24時間未満に約1回の細胞分裂の平均速度でγδT細胞集団の増殖を刺激する作用物質によって、γδT細胞集団の増殖が活性化されるγδT細胞集団を提供する。場合によっては、増殖したγδT細胞集団はあるパーセンテージのδ1T細胞、δ2T細胞、またはδ3T細胞を含み、上述の増殖したγδT細胞の任意の1つのパーセンテージを5%より高くすることができる。場合によっては、γδT細胞集団中のδ1、δ2、またはδ3T細胞のパーセンテージは、インビトロまたはインビボで24時間未満に約1回の細胞分裂の平均速度で拡大する。場合によっては、γδT細胞集団はある量の改変γδT細胞をさらに含み、改変γδT細胞は抗原認識部分を発現するように改変されている。改変γδT細胞はヒトHLA遺伝子座を欠くように設計することもできる。γδT細胞集団の増殖を刺激する作用物質は抗体とすることができ、抗体は5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、γ3.20、7A5、IMMU510、R9.12、及び11F2抗体からなる群から選択することができる。場合によっては、抗体は表面上に固定化されている。
【0009】
場合によっては、本開示はγδT細胞の活性化エピトープに関する。場合によっては、活性化エピトープは、24時間未満、またはγδT細胞の集団の急速な増殖に堪える別の好適な時間に1回の細胞分裂の平均速度で、γδT細胞集団の増殖を刺激する。場合によっては、活性化エピトープはδTCR、例えばδ1、δ2、またはδ3TCRなどのアミノ酸配列である。場合によっては、活性化エピトープは5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、γ3.20、7A5、IMMU510、R9.12、及び11F2抗体からなる群から選択される抗体の任意の1種によって結合されるエピトープである。活性化エピトープはVδ1遺伝子セグメント及びJδ1、Jδ2、Jδ3、またはJδ4遺伝子セグメントからのアミノ配列を含むことができる。場合によっては、活性化エピトープは立体構造エピトープであり、他の場合では、活性化エピトープは直線状エピトープである。
【0010】
場合によっては、本開示はγδT細胞受容体のエピトープの決定方法を提供するが、この方法は(a)γδT細胞受容体からエピトープのライブラリーを調製すること;(b)エピトープのライブラリーを抗体と接触させること;及び(c)エピトープのライブラリー中の、抗体が結合した少なくとも1つのエピトープのアミノ酸配列を同定することを含む。抗体は5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、γ3.20、7A5、IMMU510、R9.12、11F2抗体からなる群から選択することができる。場合によっては、抗体は固体支持体に付着している。T細胞受容体のエピトープはT細胞受容体中のアミノ酸の連続配列または不連続配列に対応することができる。エピトープのライブラリーは、約10アミノ酸長~約30アミノ酸長、約10アミノ酸長~約20アミノ酸長、約5アミノ酸長~約12アミノ酸長の範囲の断片を含むことができる。場合によっては、抗体を標識する。標識は放射性分子、発光分子、蛍光分子、酵素、またはビオチンとすることができる。場合によっては、エピトープのライブラリーは合成的に設計されたcDNAから翻訳されたペプチドを含み、合成的に設計されたcDNAは複数の合成的に設計されたγTCR及び複数の合成的に設計されたδTCRのセグメントを含む。他の場合では、エピトープのライブラリーは、ヒトPBMC、またはヒト悪性もしくは正常上皮組織から単離したリンパ球起源のヒトδγT細胞から抽出された全RNAから増幅されたペプチドを含む。合成的に設計されたcDNAのライブラリーは、そのJδ領域において異なっている複数のVδ1、Vδ2、及びVδ3遺伝子セグメントを含むことができ、また、このライブラリーは複数のVγ2、Vγ3、Vγ4、Vγ5、Vγ8、Vγ9、Vγ10、δ1、δ2、及びδ3遺伝子セグメントを含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、本開示は必要としている被検者の治療方法を提供するが、この方法は前記被検者に本明細書に記載のγδT細胞を投与することを含む。本開示のさらなる態様及び利点が以下の発明を実施するための形態から当業者には容易に明らかとなるが、本開示の例示的実施形態のみを提示及び記載する。理解されるように、本開示は他の及び異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細はすべて本開示から逸脱することなく変更可能である。したがって、図面及び説明は本質的に限定ではなく例示とみなされるべきである。
【0012】
参照による援用
本明細書で言及するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個別の刊行物、特許、または特許出願をそれぞれ参照により援用すると具体的かつ個別に示した場合と同様に、参照により本明細書に援用する。
【0013】
本発明の新規な特徴は添付の特許請求の範囲に詳細に記載する。本発明の原理を利用した例示的実施形態を示す以下の発明を実施するための形態、ならびに添付図面(本明細書では「figure(図)」及び「FIG.(図)」ともいう)を参照することによって、本発明の特徴及び利点のより深い理解が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】改変γδT細胞を概略的に示す。パネルAは1つの腫瘍認識部分を発現している改変γδT細胞を示す。パネルBは2つの腫瘍認識部分を発現している改変γδT細胞を示す。
図2】被検者の治療方法を概略的に示す。
図3】改変γδT細胞の集団を被検者に投与する方法を概略的に示す。
図4】肝臓転移結腸腺癌(TIL1)及び腎腫瘍(TIL2)から単離した、CCR4及びCCR7を発現することがわかっているγδ1及びγδ2リンパ球の成長を図示するグラフを示す。
図5】血清含有培地及び無血清培地でのγδT細胞成長を図示するグラフを示す。
図6】5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B3、B6、TS-1、γ3.20、IMMU510、または11F2での抗γδTCR抗体遮断実験を図示するグラフを示す。
図7】5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B3、B6、TS-1、γ3.20、IMMU510、または11F2での抗γδTCR抗体遮断実験を図示するグラフを示す。
図8】抗TCR Vδ1 TS-1抗体での競合実験を示す。
図9】抗TCR Vδ1 TS8-2抗体での競合実験を示す。
図10】PBMC由来のδ1T細胞の活性化及び増殖を図示するグラフを示す。
図11】PBMC由来のδ2T細胞の活性化及び増殖を図示するグラフを示す。
図12】PBMC由来のδ1T細胞の増殖倍率を図示するグラフを示す。
図13】PBMC由来のδ2T細胞の増殖倍率を図示するグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の様々な実施形態を本明細書に提示及び記載したが、そのような実施形態は例示のみを目的として提供されていることが当業者には明らかであろう。当業者は本発明から逸脱することなく多数の変形、変更、及び置換を容易に考え出し得る。本明細書に記載の発明の実施形態に対する様々な代替が採用され得ると理解すべきである。
【0016】
概要
ヒトにおいて、γδT細胞(複数可)は先天免疫応答と適応免疫応答との間を結びつけるT細胞のサブセットである。これらの細胞はV-(D)-Jセグメント再構成を経て抗原特異的γδT細胞受容体(γδTCR)を生成し、γδT細胞(複数可)は、γδT細胞エフェクタ-機能を活性化するように独立してまたは一緒に作用するγδTCRまたは他の非TCRタンパク質のいずれかによる抗原の認識を介して、直接活性化され得る。哺乳類においてγδT細胞はT細胞集団全体の小部分を占め、末梢血及びリンパ器官中のT細胞のおよそ1~5%であり、主に皮膚、肝臓、消化路、気道、及び生殖道のような上皮細胞リッチ区画に存在すると思われる。主要組織適合抗原複合体分子(MHC)に結合した抗原を認識するαβTCRとは異なり、γδTCRは、インタクトタンパク質または非ペプチド化合物の形態の細菌抗原、ウイルス抗原、疾患細胞によって発現されているストレス抗原、及び腫瘍抗原を直接認識することができる。
【0017】
γδT細胞の広域スペクトルの抗原を認識する能力はγδT細胞の遺伝子改変によって強化することができる。γδT細胞(複数可)を改変することにより、インビボで選択された抗原を認識する万能アロジェニック治療が可能となる。膜貫通ドメイン及び/または細胞内T細胞活性化ドメインに結合した少なくとも1つの腫瘍認識部分、例えばαβTCRまたはγδTCRなどを含む発現カセットを発現するように改変されたγδT細胞(複数可)を本明細書に記載する。活性化ドメインはT細胞のαβTCRまたはγδTCR装置に由来することができる。例えば、活性化ドメインはCD28、CD2、CTLA-4、ICOS、JAMAL、PD-1、41-BB、CD27、CD30、OX40、NKG2D、HVEM、またはCD46分子に由来することができる。γδT細胞は、同一抗原の異なるエピトープを認識する2つ以上の異なるTCR、異なる抗体、または抗原結合断片を発現するように改変することができる。被検者に投与した場合、改変αβTCR、γδTCR、抗体、またはキメラ抗原受容体CARの抗原との結合により、インビボでγδT細胞に著しい細胞傷害性が効果的に付与される。TCRはヒトT細胞、マウスT細胞、ラットT細胞、ヒト化マウス、ヒト化ラット、免疫化哺乳類、またはファージもしくは酵母ライブラリーに由来することができる。抗体、CAR、または任意の抗原結合断片はヒトB細胞、マウスB細胞、ラットB細胞、ラクダB細胞、ラマB細胞、免疫化哺乳類、またはファージもしくは酵母ライブラリーに由来することができる。改変γδT細胞によって発現される腫瘍認識部分は、疾患細胞によって細胞内または細胞外発現される抗原を認識することができる。例えば、細胞は発癌性ウイルス、例えばヒト乳頭腫ウイルスなどに感染する場合があり、疾患細胞は1種以上のHPV抗原を細胞内発現し得る。疾患細胞は細胞内発現したHPV抗原を小さな断片にプロセシングし、抗原性ペプチドのMHCクラスI分子との結合及び細胞表面への輸送を可能とし得る。改変γδT細胞の腫瘍認識部分は、疾患細胞によって細胞内発現されてMHCクラスIまたはII分子と複合体化して細胞表面上に提示される様々な抗原断片、またはエピトープを認識するように設計することができる。あるいは、改変γδT細胞の腫瘍認識部分は、腫瘍細胞表面上に発現される外因性抗原またはMHCクラス分子と複合体化して細胞表面上に掲示された誘導ペプチドを認識するように設計することができる。
【0018】
改変γδT細胞(複数可)ならびに疾患細胞上の選択された抗原を標的化する効力及び選択能力を有する治療用製品としてのその使用方法を本明細書で提供する。標準的な技術により腫瘍抗原(複数可)、細菌抗原(複数可)、ウイルス抗原(複数可)、またはストレス抗原(複数可)と結合した1つまたは複数のαβまたはγδT細胞(複数可)からαβまたはγδTCRのポリヌクレオチドまたはタンパク質配列をクローニングすることができる。あるいは、αβまたはγδTCRのポリヌクレオチド配列はコンピュータプログラム製品上でインシリコ設計することができる。改変γδTCRを含む発現カセットを例えばオリゴヌクレオチド合成法によって合成することができる。ハイスループットスクリーニング技術を用いて改変TCRの腫瘍抗原への結合特性を評価することができる。αβまたはγδTCR、膜貫通ドメイン及び活性化ドメインを含む発現カセットの改変がγδT細胞の活性及び細胞傷害性を増加させ、それによって改変γδT細胞に強力な細胞傷害性が付与される。
【0019】
改変γδT細胞は、血液、臍帯血、幹細胞、腫瘍、または腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から単離した非改変T細胞に由来し得る。単離されたT細胞は哺乳類、例えばヒトに由来し得る。単離されたT細胞集団中の1つ以上の細胞は、例えばT細胞活性化または不活性化ドメインと結合した腫瘍認識部分を含む発現カセットのポリヌクレオチド(複数可)を発現するように改変され得る。腫瘍認識部分は、標的腫瘍抗原、腫瘍細胞不活性化またはT細胞不活性化ドメインを認識するように設計する。腫瘍認識部分は、標的腫瘍抗原、活性化もしくは不活性化共刺激/免疫調節受容体、またはホーミング受容体を認識するように設計する。腫瘍抗原は、例えば、主要組織適合抗原複合体(MHC)と複合体化して細胞表面上に発現された細胞内または細胞外タンパク質に由来するペプチドとすることができる。場合によっては、腫瘍認識部分はαβTCRであり、抗原は腫瘍細胞によって提示されたMHCと複合体化したペプチドである。抗原は、危険な状態の細胞、例えば癌細胞などに、または細胞内で複製する病原体、例えばウイルスもしくは細胞内細菌などに、もしくは細胞が細胞外液からエンドサイトーシスによって内在化した病原体もしくはその産物に由来する分子とすることができる。場合によっては、改変γδT細胞が2つ以上の異なる腫瘍認識部分を発現するように設計し、各腫瘍認識部分が同一抗原の異なるエピトープを認識するように設計する。万能改変γδT細胞は、異なるMHCハプロタイプを伴う抗原を認識することができる腫瘍認識部分を発現することができる。腫瘍認識部分はTCR(αβもしくはγδTCR)またはペプチド-MHC複合体を認識する抗体のいずれかを含むことができる。例えば、所与の抗原に対して、TCRまたは抗体のいずれかである異なる腫瘍認識部分は、異なるHLAハプロタイプと複合体化した同一のまたは異なる抗原由来ペプチドを認識することができる。
【0020】
改変γδT細胞は被検者に投与された場合、標的抗原を発現する細胞を弱体化または死滅させる。改変γδT細胞(複数可)は疾患の治療を必要とするヒトに導入され得る。好ましい実施形態において、癌を有する人間にこの細胞を投与するが、そのような場合、この細胞は腫瘍抗原または他の疾患関連抗原を認識するように改変されている。図1はγδT細胞を概略的に示す。パネルAは1つの腫瘍認識部分を発現している改変γδT細胞を示す。パネルBは2つの腫瘍認識部分を発現している改変γδT細胞を示す。
【0021】
発現カセットによってコードされる認識部分、例えばキメラ抗原受容体(CAR)などは、細胞表面腫瘍抗原、MHCとの複合体(ペプチド-MHC複合体)として細胞表面上に発現される腫瘍抗原に由来するペプチドに結合する完全な抗体、抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、Fab、F(ab)、Fc、抗体上の軽鎖もしくは重鎖、抗体の可変領域もしくは定常領域、もしくはこれらの任意の組合せ、または2つの異なる抗原、同一抗原の異なるエピトープ、もしくは腫瘍抗原及び共刺激/活性化分子、免疫調節分子(複数可)、もしくはホーミング受容体(複数可)を対象とする2つの異なる抗体を含む二重特異性構築体とすることができる。抗体は例えば、ヒトB細胞、マウスB細胞、ラットB細胞、またはハイブリドーマ細胞株に由来することができる。マウスハイブリドーマ細胞株は、免疫化野生型もしくはヒト化マウス、ラットB細胞、免疫化野生型もしくはヒト化ラットから単離されたラットハイブリドーマ細胞、またはヒト、マウス、ラット、ラクダ、もしくはラマに由来する抗体ライブラリーに由来することができる。改変腫瘍認識部分は、細胞表面抗原またはペプチドMHC-抗原複合体を認識するCARとすることができる。改変腫瘍認識部分は、MHCクラスIまたはIIと複合体化した腫瘍特異的抗原を認識する改変αβTCRとすることができる。認識部分は、非MHC拘束的に腫瘍特異的抗原を認識するγδTCRとすることもできる。腫瘍認識部分は、細胞表面抗原、ペプチド-MHC複合体、炭水化物、または脂質を認識する改変TCRまたはCARとすることができる。
【0022】
1つ、2つ、またはそれ以上の腫瘍認識部分が同一のまたは異なる抗原を認識するように設計することができる。1つ、2つ、またはそれ以上の腫瘍認識部分が同一のまたは異なる抗原の異なるエピトープを認識するように設計することができる。場合によっては、腫瘍認識部分はγδT細胞のゲノム中に設計された発現カセットによって発現されるαβTCR受容体である。場合によっては、腫瘍細胞または別の疾患細胞によって細胞内もしくは細胞外または細胞表面上に発現される抗原に由来するペプチド、またはペプチドマー(例えば9マーなど)を認識するように、改変γδT細胞によって発現される改変αβTCRを設計する。細胞内抗原は、例えば感染細胞内で複製するウイルス及び細菌、または被検者自身のタンパク質によって産生され得る。被検者の細胞は抗原をペプチドにプロセシングし、MHCクラスIまたはII分子と複合体化させてペプチドを提示し得る。本開示の改変γδT細胞(複数可)は、様々な異なる細胞内抗原の様々な異なるエピトープを認識するように設計することができる。細胞外もしくは外因性抗原、例えば細菌、寄生体、ウイルスなど、または癌細胞までもが抗原提示細胞によって貪食され、小さい断片にプロセシングされ、MHCクラスII分子と複合体化して提示され得る。本開示の改変γδT細胞(複数可)は、様々な異なる細胞外抗原の様々な異なるエピトープを認識するように設計することができる。場合によっては、腫瘍認識部分は細胞に新たな抗原認識をもたらすγδTCR受容体である。発現カセットは、例えば抗体またはリガンドを発現するCARを含み得るが、これをγδT細胞のゲノムに組み込み、γδT細胞によって発現させる。場合によっては、腫瘍認識部分は、例えば本明細書に記載の抗体、TCR、抗原結合断片、またはこれらの任意の組合せを含む二重特異性構築体であり得る。γδT細胞は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)から改変することができる、及び/または発現カセットによってコードされる腫瘍認識部分はTILから単離することができる。TILから改変されたγδT細胞は、効果的に遊走、ホーミングし、腫瘍微小環境と相互作用する腫瘍特異的アロジェニック細胞とすることができる。改変γδT細胞は、特定の腫瘍、例えば乳癌、前立腺癌、膀胱癌、結腸及び直腸癌、脳癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、肉腫、中皮腫、卵巣癌抗原または黒色腫などから単離したTILから改変することができる。腫瘍認識部分は合成ライブラリーに由来することができる、または腫瘍認識部分は、例えばリンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、乳癌、前立腺癌、膀胱癌、結腸及び直腸癌、脳癌、胃癌、頭頸部癌、腎臓癌、肺癌、膵臓癌、肉腫、中皮腫、卵巣癌抗原もしくは黒色腫から単離されたB細胞、T細胞に由来することができる。場合によっては、腫瘍認識部分は癌から単離された腫瘍浸潤リンパ球に由来する。
【0023】
改変γδT細胞はT細胞共刺激/活性化ドメインをさらに含み得る。T細胞活性化ドメインはαβT細胞及び/またはγδT細胞に由来することができる。例えば、γδ共刺激/活性化ドメインまたはαβ共刺激/活性化ドメインのいずれかと連結するように改変αβTCRを設計することができる。αβ共刺激/活性化ドメインの非限定例としては、CD28、CD2、CTLA4、ICOS、PD-1、4-1 BB(CD137)、OX40、CD27、HVEMが挙げられる。γδ共刺激/活性化ドメインの非限定例としては、CD28、CD2、ICOS、JAMAL、CD27、CD30、OX40、NKG2D、CD46が挙げられる。腫瘍認識部分をT細胞活性化ドメインまたは任意の他の好適なドメインに連結することができる。T細胞活性化ドメインはCD3ζドメイン、CD28ドメイン、またはCD2、ICOS、4-1 BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、CD30、CD46、CD70、CD80、CD86、DAP、CD122、CTLA4、CD152、PD-1、JAMAL、NKG2D、CD314、及び/またはFceRIgをはじめとする別の好適な活性化ドメインであり得る。膜貫通ドメインとしては、例えば、CD28、CD4、CD3e、CD16及び免疫グロブリンの関連ドメインを挙げることができる。
【0024】
本明細書に開示の発明は好ましくは、認識分子をコードする発現カセットを発現する改変γδT細胞を提供する。場合によっては、発現カセットに対応する核酸配列をクローニングして改変γδT細胞のゲノムに安定導入する。腫瘍認識部分及び関連する活性化ドメインを含むことができる発現カセットを含む核酸配列は、合成的に改変して改変γδT細胞のゲノムに安定導入してもよい。2つ以上の異なる腫瘍認識部分は同一のまたは異なる発現カセットから発現され得る。
【0025】
こうした細胞を改変するために様々な技術が用いられ得る。例えば、改変ヌクレアーゼ、例えばa)CRISPR/Cas系;b)転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN);c)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);d)及び改変メガヌクレアーゼホーミングエンドヌクレアーゼなどでのゲノム編集法によって、クローニングまたは合成的に改変したDNAを挿入、置換、または除去して改変γδT細胞を生成することができる。スリーピングビューティートランスポゾンシステムを用いて腫瘍認識部分のコードを含む核酸を転移させ、改変γδT細胞を生成することができる。当該技術分野において公知の様々な他のポリヌクレオチド送達方法がγδT細胞の改変に好適であり得るが、例えば形質移入、エレクトロポレーション、形質導入、リポフェクション、ナノ加工物質、例えばオルモシルなど、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスを含むウイルス送達方法、または別の好適な方法などである。
【0026】
場合によっては、認識部分は単一または複数の種に由来し、例えば、認識部分のポリヌクレオチド配列は、例えばヒト(Homo sapiens)、マウス(例えばMus musculus)、ラット(例えばRattus norvegicusもしくはRattus rattus)、ラクダ(例えばCamelus dromedariusもしくはCamelus bactrianus)、もしくはラマ(Lama vicugna)に由来することができるか、または認識部分のポリヌクレオチド配列は両方のキメラ結合体とすることができる。腫瘍認識部分はヒトに由来することが好ましいが、場合によっては、マウスまたは他の種、好ましくは哺乳類に由来してもよい。場合によっては、腫瘍認識部分はキメラTCR受容体またはキメラCARである。場合によっては、ヒト種由来のポリヌクレオチド配列に対する類似性を増加させ、それによって腫瘍認識部分を「ヒト化」するように非ヒト種に由来する腫瘍認識部分のポリヌクレオチド配列を改変する。場合によっては、マウス及びラットなどの種を「ヒト化」させて、例えばヒト化抗体及びTCRを得る。
【0027】
腫瘍認識部分は改変γδT細胞中の発現カセットから恒常的発現されることが好ましい。場合によっては、腫瘍認識部分は誘導発現系、例えばテトラサイクリン調節性T-REx(商標)哺乳類発現系、好適なTet-on/Tet-off発現系、または別の好適な系などの発現下にある。ある特定の場合において、改変γδT細胞は、ヒトVδ1T細胞、ヒトVδ2T細胞、ヒトVδ3T細胞、ヒトCD3T細胞、またはヒトCD3T細胞に由来する。
【0028】
本開示は、被検者の体内で特定の抗原を感知及び標的化することができる発現カセットからの腫瘍認識部分を発現する方法及び改変γδT細胞(複数可)を提供する。被検者は、特定の抗原を発現する細胞(複数可)を有効かつ選択的に認識して死滅または弱体化させることのできる治療薬による治療を必要とする被検者とすることができる。好ましい場合において、抗原は癌に関連する。抗原は系列特異的腫瘍抗原とすることができる。一実施形態において、抗原は、CD19、CD30、CD22、CD37、CD38、CD56、CD33、CD30、CD138、CD123、CD79b、CD70、CD75、CA6、GD2、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CEACAM5、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、PLIF、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、メソテリン、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質/受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、SLTRK6、gp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、MAGEAファミリー遺伝子(例えばMAGE3A、MAGE4Aなど)、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MHCクラスI鎖関連分子A(MICA)、MHCクラスI鎖関連分子B(MICB)、HPV、またはCMVなどの腫瘍抗原である。
【0029】
本開示の改変γδT細胞は、被検者のMHC遺伝子座に対してオートロガスまたはアロジェニックとすることができる。例えば、オートロガス及びアロジェニック骨髄移植(BMT)がいくつかの病態、特に血液悪性腫瘍に対する治療として用いられている。しかし、アロジェニックBMTについては急性移植片対宿主病(GVHD)及び宿主対移植片病(HVGD)が依然として最も重要なBMT合併症である。
【0030】
ドナーT細胞及び宿主抗原提示細胞(APC)がGVHDの誘発に決定的である。γδT細胞は宿主由来のMHC分子を認識しないので、本発明の改変γδT細胞による抗原認識はGVHDを誘発し得ない。本開示の改変γδT細胞は、移植片対宿主病を誘発することなく非オートロガス被検者に投与されるように設計することができる。さらに、改変γδT細胞は1つ以上のMHC遺伝子座からの遺伝子発現を欠くように設計することができる。あるいは、1つ以上のMHC遺伝子座(複数可)を欠くようにγδT細胞を改変することができる。改変γδT細胞中のMHC遺伝子座の欠失、または遺伝子発現の破壊は、遺伝子編集技術、例えばジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR、及び改変メガヌクレアーゼなどによって、またはβ2m欠失によって実現することができる。場合によっては、本開示の改変γδT細胞は、複数のMHC遺伝子座の遺伝子発現を欠くまたは破壊するように改変される。他の場合では、少なくとも1つのMHCクラスI遺伝子座、少なくとも1つのMHCクラスII遺伝子座、または両方において遺伝子発現を欠くまたは破壊するように改変γδT細胞を改変する。1つ以上のMHC遺伝子座の欠失により、宿主対移植片病を誘発することなく任意のMHCハプロタイプを有する任意の被検者に対して万能ドナーである改変γδT細胞が得られ、それゆえに宿主の免疫系の標的とされることなく宿主内で成長、生存、増殖、及び機能することのできる改変γδT細胞が得られ得る。
【0031】
本明細書に記載の教示及び組成物は様々な用途に用いられ得る。好ましい実施形態において、腫瘍抗原は乳癌抗原、前立腺癌抗原、膀胱癌抗原、結腸及び直腸癌抗原、脳癌抗原、胃癌抗原、頭頸部癌抗原、腎臓癌抗原、肺癌抗原、膵臓癌抗原、肉腫抗原、中皮腫抗原、卵巣癌抗原または黒色腫抗原である。そのような場合において、腫瘍認識部分は改変αβTCR、またはクラスIまたはクラスII MHCと複合体化して腫瘍細胞表面上に提示される細胞内または細胞外腫瘍抗原に由来するエピトープを認識するように設計された抗体であり得る。改変αβTCRは、例えば、HLA-A、HLA-B、またはHLA-C複合体との関連で、またはHLA-DP、HLA-DQ、HLA-DR、HLA-DM、HLA-DO、もしくは他のHLA分子との関連で腫瘍またはAPCによって提示された細胞内腫瘍抗原を認識することができる。
【0032】
場合によっては、抗原は自己抗原である。自己抗原は、例えば免疫グロブリン、T細胞受容体、細胞内腫瘍抗原、細胞外腫瘍抗原、MHC分子、または病態に関連する細胞外部分であり得る。例えば、ヒトHLA DR2の細胞発現は全身性ループス及び多発性硬化症に関連し、ヒトHLA DR4の細胞発現は関節リウマチ及び真性糖尿病に関連する。
【0033】
他の場合では、抗原は外来抗原である。外来抗原は、例えばウイルス、細菌、原生動物、またはアレルゲン、例えば花粉もしくは食物などであり得る。外来抗原は、例えば感染症、自己免疫障害、または組織傷害に関連し得る。
【0034】
本開示の改変γδT細胞は被検者の体内の特定の身体的部位にホーミングするように設計することができ、したがって、特定の組織、器官または身体部位における抗原を標的化することができる。内因性T細胞は、その遊走パターンに影響を与える異なるレパートリーの輸送リガンド及び受容体を有する。本開示の改変γδT細胞は、腫瘍認識部分を含む発現カセットから、または別個の発現カセットから、特定の組織、器官、または身体部位への改変γδT細胞の遊走を誘導する1つ以上の輸送リガンド(複数可)、または受容体(複数可)を発現するように設計することができる。
【0035】
本開示の改変γδT細胞は腫瘍特異的アロジェニック細胞とすることができる。例えば、改変γδT細胞は腫瘍から単離された腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である非改変γδT細胞に由来し得る。異なる腫瘍タイプから異なるTILを単離することができる。腫瘍認識部分、及び活性化ドメイン、または別の改変特徴をコードする発現カセットを様々な腫瘍から単離したTILのゲノムに挿入することができる。そのようなγδT細胞は、固形腫瘍に浸潤し、1つ以上の標的抗原を発現している腫瘍細胞を弱体化及び死滅させることができ、悪性腫瘍に対して効果的な治療をもたらすことができる。腫瘍特異的アロジェニックγδT細胞は、選択されたエピトープを認識する少なくとも1つの腫瘍認識部分を発現するように改変することができる。場合によっては、腫瘍特異的アロジェニックγδT細胞が少なくとも2つの異なる腫瘍認識部分を発現するように設計し、異なる腫瘍認識部分それぞれが同一抗原の異なるエピトープ、異なる抗原、抗原及び活性化もしくは不活性化共刺激/免疫調節受容体(複数可)、MHC分子と複合体化した抗原、またはホーミング受容体を認識するように設計する。
【0036】
場合によっては、本開示の改変γδT細胞はTCRδ及びTCRγ受容体鎖の特定の対立遺伝子を発現するように設計される。改変γδT細胞のTCRδ及びTCRγ受容体鎖の特定の対立遺伝子は、被検者の体内の1つ以上の身体的部位への改変γδT細胞の遊走またはホーミングを誘導し得る。例えば、ヒトにおいて、Vδ1TCRを発現するγδT細胞は、主に皮膚の上皮組織または上皮関連/粘膜組織、気道、消化管及び尿生殖器管ならびにいくつかの内臓に限局してホーミングする。Vδ3TCRを発現するヒトγδT細胞は肝臓で豊富である。本開示の改変γδT細胞は恒常的に活性化している場合もある。野生型T細胞では、TCRは複数のタンパク質の複合体として存在し、これにはCD3タンパク質、例えばCD3εγ、CD3εδ、及びζ鎖(CD3ζホモ二量体)が挙げられる。ζ鎖上の複数の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)がリン酸化されてTリンパ球に活性化シグナルを発生させることができる。それぞれMHCクラスIまたはクラスII分子と会合した特定の抗原を認識した際に活性化するα/βTCR CD8及びCD4細胞とは異なり、γδT細胞は非MHC拘束的に抗原を直接認識することによって活性化する。そのような抗原には、腫瘍細胞によって発現される抗原、例えばMHCクラスI鎖関連分子A及びB(MICA及びMICB)、CD1、NKG2A、ULBP1-3、脂質、ならびにリン酸化抗原などが含まれる。本開示の改変γδT細胞は恒常的に活性化するように改変され得る。場合によっては、本開示の改変γδT細胞は腫瘍認識部分及び活性化部分を含むように改変される。活性化部分はTCR-CD3複合体中のタンパク質であり得る。場合によっては、本開示の改変γδT細胞は遺伝子組換えCD3ζ遺伝子を恒常的発現するが、この場合、CD3ζ遺伝子の免疫受容体チロシン活性化モチーフはYxxL/Iモチーフ中のチロシンのリン酸化模倣体を含むように改変されている。様々なT細胞活性化ドメイン及び膜貫通ドメイン、例えばCD3ζ、CD28、CD2、ICOS、4-1 BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、CD70、CD80、CD86、DAP、CD122、FceRIg、CD4、CD3e、JAMAL、NKG2D、またはCD16などは、例えばリン酸化模倣体または別の核酸変異を含むように改変され得る。
【0037】
本開示の改変γδT細胞のインビトロ(エクスビボ)増殖方法をさらに本明細書で開示する。場合によっては、抗原提示細胞またはアミノホスフェート(複数可)による刺激なしで改変γδT細胞をエクスビボ増殖させることができる。本開示の抗原反応性改変T細胞はエクスビボ及びインビボで増殖させられ得る。場合によっては、本開示の改変γδT細胞の活性集団は、抗原提示細胞、抗原性ペプチド、非ペプチド分子、または低分子化合物、例えばアミノホスフェート(複数可)などによる抗原刺激なしで、しかし、特定の抗体、サイトカイン、分裂促進因子、または融合タンパク質、例えばIL-17 Fc融合、MICA Fc融合、及びCD70 Fc融合などを用いてエクスビボ増殖させられ得る。γδT細胞集団の増殖に用いることのできる抗体の例としては、抗CD3、抗CD27、抗CD30、抗CD70、抗OX40、抗NKG2D、または抗CD2抗体が挙げられ、サイトカインの例としては、IL-2、IL-15、IL-12、またはIL-21、IL-18、IL-9、IL-7、IL-33が挙げられ、また、分裂促進因子の例としては、ヒトCD27のリガンドであるCD70、フィトヘムアグルチニン(PHA)、コンカバリン(concavalin)A(ConA)、ポークウィードマイトジェン(PWM)、タンパク質ピーナッツアグルチニン(PNA)、大豆アグルチニン(SBA)、les culinarisアグルチニン(LCA)、pisum sativumアグルチニン(PSA)、Helix pomatiaアグルチニン(HPA)、Vicia gramineaレクチン(VGA)またはT細胞増殖を刺激可能な別の好適な分裂促進因子が挙げられる。場合によっては、改変γδT細胞の集団は、60日未満、48日未満、36日、24日未満、12日未満、または6日未満で増殖させることができる。
【0038】
様々な病態を本開示の改変γδT細胞(複数可)で治療する方法をさらに本明細書で開示する。本開示の改変γδT細胞は病態の治療を必要とする被検者を治療するために用いられ得る。病態は癌、例えば膀胱癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、肝臓癌、皮膚癌、結腸及び直腸癌、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、卵巣癌、肉腫、頭頸部癌、中皮腫、脳癌、肉腫または別の癌などであり得る。病態は感染症、自己免疫障害、移植、または敗血症であり得る。改変γδT細胞を被検者に与える方法も本明細書に開示する。場合によっては、改変γδT細胞は病態にかかっている被検者に投与され得る。場合によっては、改変γδT細胞は手術、例えば骨髄移植などの間に被検者に投与され得る。本開示は、調節性サイトカイン、例えばIL-2などの共投与なしで改変γδT細胞を被検者に投与する方法をさらに提供する。場合によっては、エクスビボ増殖してインビボ投与した場合に増殖、生存、及び機能を向上させることのできる1種以上のサイトカインまたはホルモン、例えばIL-2、IL-7、IL-15、IL-21、IL-12、IL-18、IL-9などを発現するようにγδT細胞を改変する。γδT細胞は、認識部分を含む同一のまたは異なる発現カセットから1種以上のサイトカインまたはホルモンを発現するように改変することができる。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、及び腫瘍壊死因子が含まれる。サイトカインの非限定例としては、IL-2、IL-7、IL-15、IL-21、IL-12、IL-18、IL-9、エリスロポエチン(EPO)、G-CSF、GM-CSF、トロンボポエチン(TPO)、及びインターフェロン(IFN)サブファミリーのメンバーが挙げられる。
【0039】
場合によっては、改変γδT細胞は併用療法として被検者に投与され得る。場合によっては、併用療法は、a)本開示の改変γδT細胞;及びb)免疫チェックポイント療法を含む。
【0040】
改変γδT細胞
改変γδT細胞は当該技術分野において公知の様々な方法で生成され得る。改変γδT細胞は特定の腫瘍認識部分を安定発現するように設計され得る。トランスポゾン/トランスポザーゼシステム、もしくはウイルスベースの遺伝子移入システム、例えばレンチウイルスもしくはレトロウイルスシステムなど、または別の好適な方法、例えば形質移入、エレクトロポレーション、形質導入、リポフェクション、リン酸カルシウム(CaPO)、ナノ加工物質、例えばオルモシルなど、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルスを含むウイルス送達方法、もしくは別の好適な方法などによって、腫瘍認識または別のタイプの認識部分を含む発現カセットをコードするポリヌクレオチドをγδT細胞に安定導入することができる。抗原特異的TCR、αβまたはγδのいずれかは、抗原特異的TCRの遺伝子コードを含むポリヌクレオチドをγδT細胞のゲノム中に安定挿入することによって、改変γδT細胞に導入することができる。腫瘍認識部分とともにCARをコードするポリヌクレオチドが、そのポリヌクレオチドをγδT細胞のゲノム中に安定挿入することによって改変γδT細胞に導入され得る。場合によっては、改変腫瘍認識部分は改変T細胞受容体であり、改変γδT細胞のゲノムに組み込まれる発現カセットは、改変TCRα(TCRアルファ)遺伝子、改変TCRβ(TCRベータ)遺伝子、TCRδ(TCRデルタ)遺伝子、または改変TCRγ(TCRガンマ)遺伝子をコードするポリヌクレオチドを含む。場合によっては、改変γδT細胞のゲノムに組み込まれる発現カセットは、抗体断片またはその抗原結合部分をコードするポリヌクレオチドを含む。場合によっては、抗体断片またはその抗原結合断片は、完全な抗体、抗体断片、一本鎖可変断片(scFv)、シングルドメイン抗体(sdAb)、Fab、F(ab)、Fc、抗体上の軽鎖もしくは重鎖、抗体の可変領域もしくは定常領域、またはこれらの任意の組合せでCAR及びT細胞受容体(TCR)、もしくは異なる抗原を対象とする抗体を有する複数のCARを含むキメラ抗原受容体(CAR)構築体、もしくは二重特異性構築体の一部として細胞表面腫瘍抗原に結合するものをコードするポリヌクレオチドである。場合によっては、ポリヌクレオチドはヒトまたは別の種に由来する。非ヒト種に由来する抗体断片またはその抗原結合断片ポリヌクレオチドは、ヒトにおいて天然産生される抗体バリアントに対する類似性を増加させるように改変することができ、抗体断片または抗原結合断片は部分的にまたは完全にヒト化することができる。抗体断片またはその抗原結合断片ポリヌクレオチドはキメラ、例えばマウス-ヒト抗体キメラとすることもできる。CARを発現する改変γδT細胞は、腫瘍認識部分によって認識される抗原に対するリガンドを発現するように改変することもできる。
【0041】
腫瘍認識部分の遺伝子コードを含むクローニングまたは合成的に改変した核酸を改変γδT細胞のゲノム中の特定の位置に導入するために、当該技術分野において公知の様々な技術を用いることができる。WO201409370、WO2003087341、WO2014134412、及びWO2011090804(それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する)にそれぞれ記載されている微生物クラスター化等間隔短回文反復配列(CRISPR)系由来のRNA誘導型Cas9ヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びメガヌクレアーゼ技術を用いることにより、γδT細胞におけるゲノム改変を効率的に行うことができる。本明細書に記載の技術を用いて、ある遺伝子のノックアウト及び別の遺伝子のノックインを同時にもたらすゲノム位置に発現カセットを挿入することもできる。例えば、MHC遺伝子をコードするゲノム領域に本開示の発現カセットを含むポリヌクレオチドを挿入することができる。そのような改変は、1つ以上の遺伝子、例えば発現カセットに含まれる遺伝子のノックイン、及び別の遺伝子、例えばMHC遺伝子座のノックアウトを同時にもたらす。
【0042】
ある場合において、腫瘍認識部分をコードする核酸を含むスリーピングビューティートランスポゾンを改変しているγδT細胞に導入する。野生型スリーピングビューティーと比較して向上した組込みをもたらす変異型スリーピングビューティートランスポザーゼ、例えばUS7,985,739(その全体を参照により本明細書に援用する)に記載されているトランスポザーゼなどを用いてポリヌクレオチドが改変γδT細胞に導入され得る。
【0043】
場合によっては、ウイルス法を用いて腫瘍認識部分を含むポリヌクレオチドを改変γδT細胞のゲノム中に導入する。複数のウイルス法がヒト遺伝子治療に用いられており、例えばWO1993020221に記載されている方法などであり、その全体を本明細書に援用する。γδT細胞を改変するために用いることのできるウイルス法の非限定例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、レンチウイルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス、またはアデノウイルス随伴ウイルス法が挙げられる。
【0044】
腫瘍認識部分の遺伝子コードを含むポリヌクレオチドは、改変γδT細胞、または腫瘍細胞に特異的な抗原、例えば精巣特異的癌抗原などの成長、増殖、活性化状態に影響を及ぼす変異または他の導入遺伝子を含み得る。本開示のγδT細胞は、抗原認識部分に連結した活性化ドメイン、例えばTCR-CD3複合体中の分子または共刺激因子などを含むポリヌクレオチドを発現するように改変され得る。改変γδT細胞はTリンパ球活性化ドメインである細胞内シグナル伝達ドメインを発現することができる。γδT細胞は、細胞内活性化ドメイン遺伝子または細胞内シグナル伝達ドメインを発現するように改変され得る。細胞内シグナル伝達ドメイン遺伝子は例えばCD3ζ、CD28、CD2、ICOS、JAMAL、CD27、CD30、OX40、NKG2D、CD4、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIγ、ILRB/CD122、IL-2RG/CD132、DAP分子、CD70、サイトカイン受容体、CD40、またはこれらの任意の組合せであり得る。場合によっては、改変γδT細胞がサイトカイン、抗原、細胞受容体、または他の免疫調節分子を発現するようにも改変する。
【0045】
改変γδT細胞によって発現させる適切な腫瘍認識部分は、治療しようとする疾患に基づいて選択することができる。例えば、場合によっては、腫瘍認識部分はTCRである。場合によっては、腫瘍認識部分は癌細胞上で発現されるリガンドに対する受容体である。好適な受容体の非限定例としては、NKG2D、NKG2A、NKG2C、NKG2F、LLT1、AICL、CD26、NKRP1、NKp30、NKp44、NKp46、CD244(2B4)、DNAM-1、及びNKp80が挙げられる。場合によっては、腫瘍認識部分は腫瘍抗原に対するリガンド、例えばIL-13リガンド、またはリガンド模倣体、例えばIL13Rに対するIL-13模倣体などを含むことができる。
【0046】
γδT細胞は、NKG2D、NKG2A、NKG2C、NKG2F、LLT1、AICL、CD26、NKRP1、NKp30、NKp44、NKp46、CD244(2B4)、DNAM-1、及びNKp80に由来するリガンド結合ドメイン、または抗腫瘍抗体、例えば抗Her2neuまたは抗EGFRなど、及びCD3-ζ、Dap10、CD28、4 IBB、及びCD40Lから得られるシグナル伝達ドメインを含むキメラ腫瘍認識部分を発現するように改変され得る。いくつかの例では、キメラ受容体はMICA、MICB、Her2neu、EGFR、メソテリン、CD38、CD20、CD19、PSA、RON、CD30、CD22、CD37、CD38、CD56、CD33、CD30、CD138、CD123、CD79b、CD70、CD75、CA6、GD2、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CEACAM5、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、PLIF、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質/受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、SLTRK6、gp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、MAGEAファミリー遺伝子(例えばMAGE3A、MAGE4Aなど)、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MHCクラスI鎖関連分子A(MICA)、またはMHCクラスI鎖関連分子B(MICB)、HPV、CMVに結合する。
【0047】
γδT細胞において、改変γδT細胞から安定発現される遺伝的に異なる、実質的に異なる、もしくは実質的に同一のαβTCRポリヌクレオチドから、または改変γδT細胞に安定導入された遺伝的に異なるαβTCRポリヌクレオチドから2つ以上の腫瘍認識部分が発現され得る。遺伝的に異なるαβTCR(複数可)の場合、同一の病態に関連する異なる抗原を認識するαβTCR(複数可)が利用され得る。好ましい一実施形態において、1つ以上の発現カセットから、異なるMHCハプロタイプとの関連で同一抗原を認識するヒトまたはマウス起源由来の異なるTCRを発現するようにγδT細胞を改変する。別の好ましい実施形態では、1つのTCR及び異なるMHCハプロタイプと複合体化した所与の抗原由来の同一のまたは異なるペプチドを対象とする2つ以上の抗体を発現するようにγδT細胞を改変する。場合によっては、改変γδT細胞による単一のTCRの発現が適切なTCR対合を容易とする。異なるTCRを発現する改変γδT細胞により、万能アロジェニック改変γδT細胞を得ることができる。第2の好ましい実施形態において、ペプチド-MHC複合体を対象とする1つ以上の異なる抗体を発現するようにγδT細胞を改変するが、それぞれの抗体は同一のまたは異なるMHCハプロタイプと複合体化した同一のまたは異なるペプチドを対象とする。場合によっては、腫瘍認識部分はペプチド-MHC複合体に結合する抗体とすることができる。
【0048】
γδT細胞は、1つ以上の発現カセットから、異なるMHCハプロタイプとの関連で同一抗原を認識するTCRを発現するように改変することができる。場合によっては、改変細胞内で単一のTCRを発現するように、またはTCR誤対合の可能性を最小限にするためのCARとともにTCRを発現するように改変γδT細胞を設計する。2つ以上の発現カセットから発現される腫瘍認識部分は、異なるポリヌクレオチド配列を有し、同一標的の異なるエピトープを認識する腫瘍認識部分をコードすることが好ましい。そのような異なるTCRまたはCARを発現する改変γδT細胞により、万能アロジェニック改変γδT細胞を得ることができる。
【0049】
場合によっては、1つ以上の腫瘍認識部分を発現するようにγδT細胞を改変する。2つ以上の腫瘍認識部分は、γδT細胞内に改変された遺伝的に同一、または実質的に同一の抗原特異的キメラ(CAR)ポリヌクレオチドから発現され得る。2つ以上の腫瘍認識部分は、γδT細胞内に改変された遺伝的に異なるCARポリヌクレオチドから発現され得る。遺伝的に異なるCAR(複数可)は同一病態に関連する異なる抗原を認識するように設計され得る。
【0050】
γδT細胞は代替として二重特異性としてもよい。二重特異性改変γδT細胞は2つ以上の腫瘍認識部分を発現することができる。二重特異性改変γδT細胞はTCR及びCAR腫瘍認識部分の両方を発現することができる。二重特異性改変γδT細胞は同一病態に関連する異なる抗原を認識するように設計することができる。改変γδT細胞は、同一または実質的に同一の抗原を認識する2つ以上のCAR/TCR(複数可)二重特異性ポリヌクレオチドを発現することができる。改変γδT細胞は、異なる抗原を認識する2つ以上のCAR/TCR(複数可)二重特異性構築体を発現することができる。場合によっては、本開示の二重特異性構築体は標的細胞の活性化及び不活性化ドメインに結合し、その結果、標的特異性が増加する。γδT細胞は、少なくとも1種の腫瘍認識部分、少なくとも2種の腫瘍認識部分、少なくとも3種の腫瘍認識部分、少なくとも4種の腫瘍認識部分、少なくとも5種の腫瘍認識部分、少なくとも6種の腫瘍認識部分、少なくとも7種の腫瘍認識部分、少なくとも8種の腫瘍認識部分、少なくとも9種の腫瘍認識部分、少なくとも10種の腫瘍認識部分、少なくとも11種の腫瘍認識部分、少なくとも12種の腫瘍認識部分、または別の好適な数の腫瘍認識部分を発現するように改変され得る。
【0051】
適切なTCR機能はITAMモチーフを含む2つの機能性ζ(ゼータ)タンパク質によって強化され得る。適切なTCR機能はαβまたはγδ活性化ドメイン、例えばCD28、CD2、CTLA4、ICOS、JAMAL、PD-1、CD27、CD30、41-BB、OX40、NKG2D、HVEM、またはCD46などの発現によっても強化され得る。発現されるポリヌクレオチドは腫瘍認識部分の遺伝子コード、リンカー部分、及び活性化ドメインを含み得る。改変γδT細胞によるポリヌクレオチドの翻訳でタンパク質リンカーによって連結された腫瘍認識部分及び活性化ドメインが得られ得る。多くの場合、リンカーは腫瘍認識部分及び活性化ドメインのフォールディングを妨害しないアミノ酸を含む。リンカー分子は少なくとも約5アミノ酸、約6アミノ酸、約7アミノ酸、約8アミノ酸、約9アミノ酸、約10アミノ酸、約11アミノ酸、約12アミノ酸、約13アミノ酸、約14アミノ酸、約15アミノ酸、約16アミノ酸、約17アミノ酸、約18アミノ酸、約19アミノ酸、または約20アミノ酸の長さとすることができる。場合によっては、リンカー中のアミノ酸の少なくとも50%、少なくとも70%、または少なくとも90%はセリンまたはグリシンである。
【0052】
場合によっては、活性化ドメインは1つ以上の変異を含むことができる。好適な変異は例えば、活性化ドメインを恒常的活性型とする変異であり得る。1つ以上の核酸の同一性の改変により翻訳されるアミノ酸のアミノ酸配列が変化する。コードされるアミノ酸が極性、非極性、塩基性または酸性アミノ酸に改質されるように核酸を変異させることができる。腫瘍認識部分が腫瘍由来のエピトープ認識に最適化されるように核酸を変異させることができる。γδT細胞の改変腫瘍認識部分、改変活性化ドメイン、または別の改変コンポーネントは、1アミノ酸変異、2アミノ酸変異、3アミノ酸変異、4アミノ酸変異、5アミノ酸変異、6アミノ酸変異、7アミノ酸変異、8アミノ酸変異、9アミノ酸変異、10アミノ酸変異、11アミノ酸変異、12アミノ酸変異、13アミノ酸変異、14アミノ酸変異、15アミノ酸変異、16アミノ酸変異、17アミノ酸変異、18アミノ酸変異、19アミノ酸変異、20アミノ酸変異、21アミノ酸変異、22アミノ酸変異、23アミノ酸変異、24アミノ酸変異、25アミノ酸変異、26アミノ酸変異、27アミノ酸変異、28アミノ酸変異、29アミノ酸変異、30アミノ酸変異、31アミノ酸変異、32アミノ酸変異、33アミノ酸変異、34アミノ酸変異、35アミノ酸変異、36アミノ酸変異、37アミノ酸変異、38アミノ酸変異、39アミノ酸変異、40アミノ酸変異、41アミノ酸変異、42アミノ酸変異、43アミノ酸変異、44アミノ酸変異、45アミノ酸変異、46アミノ酸変異、47アミノ酸変異、48アミノ酸変異、49アミノ酸変異、または50アミノ酸変異より多くのアミノ酸変異を含み得る。
【0053】
場合によっては、本開示のγδT細胞は1つ以上のMHC分子を発現しない。改変γδT細胞における1つ以上のMHC遺伝子座の欠失により、改変γδT細胞が宿主免疫系によって認識される可能性を減少させることができる。ヒト白血球抗原(HLA)系として知られているヒト主要組織適合抗原複合体(MHC)遺伝子座は、γδT細胞を含めた抗原提示細胞中で発現される大きな遺伝子ファミリーを含む。HLA-A、HLA-B、及びHLA-C分子は細胞内ペプチドを抗原として抗原提示細胞に提示するように機能する。HLA-DP、HLA-DM、HLA-DOA、HLA-DOB、HLA-DQ、及びHLA DR分子は細胞外ペプチドを抗原として抗原提示細胞に提示するように機能する。HLA遺伝子のいくつかの対立遺伝子がGVHD、自己免疫障害、及び癌に関連付けられている。本明細書に記載の改変γδT細胞は、1つ以上のHLA遺伝子の遺伝子発現を欠くように、または破壊するようにさらに改変することができる。本明細書に記載の改変γδT細胞は、MHC複合体の1つ以上のコンポーネントの遺伝子発現を欠くように、または破壊するようにさらに改変することができ、例えばMHC遺伝子の1つ以上の完全欠失、特定のエキソンの欠失、またはβミクログロブリン(B2m)の欠失などである。少なくとも1つのHLA遺伝子の遺伝子除去または遺伝子破壊により、宿主対移植片病を引き起こすことなく任意のHLAハプロタイプの被検者に投与することができる臨床治療用γδT細胞を得ることができる。本明細書に記載の改変γδT細胞は任意のHLAハプロタイプのヒト被検者に対する万能ドナーとすることができる。
【0054】
1つのまたは様々なHLA遺伝子座(複数可)を欠くようにγδT細胞を改変することができる。改変γδT細胞はHLA-A対立遺伝子、HLA-B対立遺伝子、HLA-C対立遺伝子、HLA-DR対立遺伝子、HLA-DQ対立遺伝子、またはHLA-DP対立遺伝子を欠くように改変することができる。場合によっては、HLA対立遺伝子はヒトの病態、例えば自己免疫病などに関連する。例えば、HLA-B27対立遺伝子は関節炎及びぶどう膜炎に関連付けられ、HLA-DR2対立遺伝子は全身性エリテマトーデスに関連付けられ、HLA-DR3対立遺伝子は21ヒドロキシラーゼ欠損症に関連付けられ、HLA-DR4は関節リウマチ及び1型糖尿病に関連付けられている。例えばHLA-B27対立遺伝子を欠く改変γδT細胞は、被検者の免疫系に容易に認識されることなく関節炎を患っている被検者に投与することができる。場合によっては、1つ以上のHLA遺伝子座の欠失により、任意のHLAハプロタイプを有する任意の被検者に対して万能ドナーである改変γδT細胞が得られる。
【0055】
場合によっては、γδT細胞の改変はγδT細胞ゲノムの一部の欠失を必要とする。場合によっては、ゲノムの欠失させる部分はMHC遺伝子座(複数可)の一部を含む。場合によっては、改変γδT細胞は野生型ヒトγδT細胞に由来し、MHC遺伝子座はHLA遺伝子座である。場合によっては、ゲノムの欠失させる部分はMHC複合体中の一部に対応する遺伝子の一部を含む。場合によっては、ゲノムの欠失させる部分はβ2ミクログロブリン遺伝子を含む。場合によっては、ゲノムの欠失させる部分は免疫チェックポイント遺伝子、例えばPD-1、CTLA-4、LAG3、ICOS、BTLA、KIR、TIM3、A2aR、B7-H3、B7-H4、及びCECAM-1などを含む。場合によっては、改変γδT細胞はT細胞活性化及び細胞傷害性を強化する活性化ドメインを発現するように設計することができる。改変γδT細胞によって発現させることのできる活性化ドメインの非限定例としては、CD2、ICOS、4-1 BB(CD137)、OX40(CD134)、CD27、CD70、CD80、CD86、DAP、CD122、GITR、FceRIgが挙げられる。
【0056】
改変γδT細胞のゲノムの任意の部分を欠失させて内因性γδT細胞遺伝子の発現を破壊することができる。γδT細胞のゲノムにおいて欠失または破壊することができるゲノム領域の非限定例としては、プロモーター、アクティベーター、エンハンサー、エキソン、イントロン、ノンコーディングRNA、マイクロRNA、核内低分子RNA、可変数タンデムリピート(VNTR)、ショートタンデムリピート(STR)、SNPパターン、超可変領域、ミニサテライト、ジヌクレオチドリピート、トリヌクレオチドリピート、テトラヌクレオチドリピートまたは単純反復配列が挙げられる。場合によっては、ゲノムの欠失部分は1核酸~約10核酸、1核酸~約100核酸、1核酸~約1,000核酸、1核酸~約10,000核酸、1核酸~約100,000核酸、1核酸~約1,000,000核酸の範囲、または他の好適な範囲である。
【0057】
改変γδT細胞におけるHLA遺伝子発現は、当該技術分野において公知の様々な技術によって破壊することもできる。場合によっては、大きな遺伝子座の遺伝子編集技術を用いて改変γδT細胞ゲノムから遺伝子を除去する、または改変γδT細胞における少なくとも1つのHLA遺伝子座の遺伝子発現を破壊する。改変γδT細胞のゲノム上の所望の遺伝子座を編集するために用いることのできる遺伝子編集技術の非限定例としては、クラスター化等間隔短回文反復配列(CRISPR)-Cas、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、及びメガヌクレアーゼ技術が挙げられるが、これらはWO201409370、WO2003087341、WO2014134412、及びWO2011090804にそれぞれ記載されており、それぞれの全内容を参照により本明細書に援用する。
【0058】
改変γδT細胞は、腫瘍認識部分をすでに発現している単離した非改変γδT細胞から改変され得る。改変γδT細胞には、単離した野生型γδT細胞によって内因的に発現される腫瘍細胞認識部分を残すことができる。場合によっては、改変γδT細胞腫瘍細胞認識部分で野生型γδTCRを置換する。
【0059】
γδT細胞は、1つ以上のホーミング分子、例えばリンパ球ホーミング分子などを発現するように改変することができる。ホーミング分子は例えばリンパ球ホーミング受容体または細胞接着分子とすることができる。ホーミング分子は、改変γδT細胞を被検者に投与した際に、改変γδT細胞が標的固形腫瘍をはじめとする固形腫瘍に遊走して浸潤するのを助けることができる。ホーミング受容体の非限定例としては、CCRファミリーのメンバー、例えばCCR2、CCR4、CCR7、CCR8、CCR9、CCR10、CLA、CD44、CD103、CD62L、E-セレクチン、P-セレクチン、L-セレクチン、インテグリン、例えばVLA-4及びLFA-1などが挙げられる。細胞接着分子の非限定例としては、ICAM、N-CAM、VCAM、PE-CAML1-CAM、ネクチン(PVRL1、PVRL2、PVRL3)、LFA-1、インテグリンαXβ2、αVβ7、マクロファージ1抗原、CLA-4、糖タンパク質IIb/IIIaが挙げられる。細胞接着分子の別の例としては、カルシウム依存性分子、例えばT-カドヘリンなど、及びマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、例えばMMP9またはMMP2などに対する抗体が挙げられる。
【0060】
T細胞の成熟、活性化、増殖、及び機能に関与するステップは免疫チェックポイントタンパク質による共刺激及び阻害シグナルを介して調節され得る。免疫チェックポイントは免疫系に本来備わっている共刺激及び阻害要素である。免疫チェックポイントは、自己寛容を維持し、生理的免疫応答の持続時間及び強度を調節して、免疫系が病状、例えば細胞悪性転換または感染などに反応する際に組織に対する傷害を防止するのに役立つ。γδ及びαβT細胞のいずれかからの免疫応答を制御するのに用いられる共刺激シグナルと阻害シグナルとの間の平衡は、免疫チェックポイントタンパク質によって調節され得る。免疫チェックポイントタンパク質、例えばPD1及びCTLA4などはT細胞の表面上に存在し、免疫応答の「オン」または「オフ」を切り替えるために用いられ得る。腫瘍は、特に腫瘍抗原に特異的であるT細胞に対する免疫耐性機構としてチェックポイントタンパク質機能を調節不全とし得る。本開示の改変γδT細胞は、1つ以上の免疫チェックポイント遺伝子座(複数可)、例えばPD-1、CTLA-4、LAG3、ICOS、BTLA、KIR、TIM3、A2aR、CECAM-1、B7-H3、及びB7-H4などを欠くようにさらに改変することができる。あるいは、本開示の改変γδT細胞における内因性免疫チェックポイントの発現を遺伝子編集技術によって破壊することができる。
【0061】
免疫チェックポイントは、本開示の改変γδT細胞において阻害シグナル伝達経路を調節する分子(CTLA4、PD1、及びLAG3によって例示される)または刺激シグナル伝達経路を調節する分子(ICOSによって例示される)であり得る。広範な免疫グロブリンスーパーファミリーのいくつかのタンパク質を免疫チェックポイントに対するリガンドとすることができる。免疫チェックポイントリガンドタンパク質の非限定例としては、B7-H4、ICOSL、PD-L1、PD-L2、MegaCD40L、MegaOX40L、及びCD137Lが挙げられる。場合によっては、免疫チェックポイントリガンドタンパク質は腫瘍によって発現される抗原である。場合によっては、免疫チェックポイント遺伝子はCTLA-4遺伝子である。場合によっては、免疫チェックポイント遺伝子はPD-1遺伝子である。
【0062】
PD1はCD28/CTLA4ファミリーに属する阻害受容体であり、活性化Tリンパ球、B細胞、単球、DC、及びT-reg上で発現される。PD1に対してPD-L1及びPD-L2という2つのリガンドが公知であり、T細胞、APC、及び悪性細胞上で発現され、自己反応性リンパ球を抑制し、TAA特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエフェクタ-機能を阻害するように機能する。したがって、PD1を欠く改変γδT細胞は、腫瘍細胞によるPD-L1及びPD-L2の発現にかかわらず、細胞傷害活性を保持することができる。場合によっては、本開示の改変γδT細胞はPD-1遺伝子の遺伝子座を欠く。場合によっては、改変γδT細胞におけるPD-1遺伝子の発現を遺伝子編集技術によって破壊する。
【0063】
CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)はCD152(分化抗原群152)としても知られている。CTLA4は共刺激分子CD28と配列相同性及びリガンド(CD80/B7-1及びCD86/B7-2)を共有するが、CTLA4を受容体として発現しているT細胞に阻害シグナルを送達することで異なる。CTLA4の方が両方のリガンドに対する全体的な親和性がはるかに高く、リガンド密度が限られている場合の結合についてはCD28に勝る。CTLA4は多くの場合、CD8エフェクタ-T細胞の表面上に発現され、ナイーブT細胞及びメモリーT細胞の初期活性化段階において機能的な役割を果たす。T細胞活性化の初期段階において、CTLA4はCD80及びCD86に対する高い親和性によりCD28の活性を打ち消す。CTLA4の主な機能としては、ヘルパーT細胞の下方調節及び調節性T細胞免疫抑制活性の強化が挙げられる。場合によっては、本開示の改変γδT細胞はCTLA4遺伝子を欠く。場合によっては、改変γδT細胞におけるCTLA4遺伝子の発現を遺伝子編集技術によって破壊する。
【0064】
LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)は活性化した抗原特異的細胞傷害性T細胞上で発現され、調節性T細胞の機能を強化し、独立してCD8エフェクタ-T細胞活性を阻害することができる。LAG3はMHCクラスIIタンパク質に結合する親和性が高いCD-4様ネガティブ調節性タンパク質であり、いくつかの上皮癌において上方制御されており、T細胞増殖及びホメオスタシスの寛容につながる。LAG-3-IG融合タンパク質を用いたLAG-3/クラスII相互作用の低下により抗腫瘍免疫応答が強化され得る。場合によっては、本開示の改変γδT細胞はLAG3遺伝子の遺伝子座を欠く。場合によっては、改変γδT細胞におけるLAG3遺伝子の発現を遺伝子編集技術によって破壊する。
【0065】
改変γδT細胞の表現型
改変γδT細胞は被検者の体内の特定の身体的部位にホーミングし得る。改変γδT細胞の遊走及びホーミングは、特定のケモカイン及び/または接着分子の発現及び作用の組合せに依存し得る。改変γδT細胞のホーミングはケモカインとその受容体との間の相互作用によって制御することができる。例えば、限定はしないがCXCR3(そのリガンドはIP-10/CXCL10及び6Ckine/SLC/CCL21に代表される) CCR4+ CXCR5+(RANTES、MIP-1α、MIP-1βに対する受容体) CCR6+及びCCR7をはじめとするサイトカインは、改変γδT細胞のホーミングに影響を及ぼし得る。場合によっては、改変γδT細胞は炎症及び傷害の部位、ならびに疾患細胞にホーミングして機能の修復を行い得る。場合によっては、改変γδT細胞は癌にホーミングすることができる。場合によっては、改変γδT細胞は胸腺、骨髄、皮膚、喉頭、気管、胸膜、肺、食道、腹部、胃、小腸、大腸、肝臓、膵臓、腎臓、尿道、膀胱、精巣、前立腺、精管、卵巣、子宮、乳腺、副甲状腺、脾臓または被検者の体内の別の部位にホーミングし得る。改変γδT細胞は1つ以上のホーミング部分、例えば特定のTCR対立遺伝子及び/またはリンパ球ホーミング分子などを発現することができる。
【0066】
改変γδT細胞は特定の表現型を有する場合があり、表現型は細胞表面マーカー発現の観点から記述することができる。様々な種類のγδT細胞を本明細書に記載のように改変することができる。好ましい実施形態において、改変γδT細胞はヒトに由来するが、改変γδT細胞は異なる起源、例えば哺乳類または合成細胞などに由来してもよい。
【0067】
抗原
本明細書に開示の本発明は、疾患特異的エピトープを認識する抗原認識部分を発現する改変γδT細胞を提供する。抗原は免疫応答を誘発する分子であり得る。この免疫応答は抗体産生、特定の免疫担当細胞の活性化のいずれか、または両方を伴い得る。抗原は例えばペプチド、タンパク質、ハプテン、脂質、炭水化物、細菌、病原体、またはウイルスであり得る。抗原は腫瘍抗原であり得る。腫瘍エピトープはMHC IまたはMHC II複合体によって腫瘍細胞の表面上に提示され得る。エピトープは細胞表面上に発現されて腫瘍認識部分によって認識される抗原の一部とすることができる。
【0068】
改変γδT細胞によって認識される抗原の非限定例としては、CD-19、CD-30、CD-22、CD37、CD38、CD-33、CD-138、CD-123、CD-79b、CD-70、CD-75、CA6、GD2、αフェトプロテイン、癌胎児性抗原、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、メソテリン、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、SLTRK6、gp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原、MAGEA、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MICA及びMICB、または病態に関連する別の抗原が挙げられる。改訂リストのCD19、CD30、CD22、CD37、CD38、CD56、CD33、CD30、CD138、CD123、CD79b、CD70、CD75、CA6、GD2、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、RON、CEACAM5、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、PLIF、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、メソテリン、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質/受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、SLTRK6、gp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、MAGEAファミリー遺伝子(例えばMAGE3A、MAGE4Aなど)、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MHCクラスI鎖関連分子A(MICA)、またはMHCクラスI鎖関連分子B(MICB)、HPV、CMVを参照。
【0069】
抗原は細胞の細胞内または細胞外区画で発現される場合があり、改変γδT細胞は細胞内または細胞外腫瘍抗原を認識することができる。場合によっては、改変γδT細胞におけるαβTCRは細胞内または細胞外腫瘍抗原のいずれかに由来するペプチドを認識する。例えば、抗原はウイルスに感染した細胞によって細胞内または細胞外で産生されるタンパク質、例えばHIV、EBV、CMV、またはHPVタンパク質などであり得る。抗原は癌細胞によって細胞内または細胞外で発現されるタンパク質であってもよい。
【0070】
抗原認識部分は危険な状態の細胞由来の抗原、例えば癌細胞またはウイルスに感染した細胞などを認識し得る。例えば、ヒトMHCクラスI鎖関連遺伝子(MICA及びMICB)は染色体6のHLAクラスI領域内に位置する。MICA及びMICBタンパク質はヒト上皮における「ストレス」のマーカーであると考えられており、一般的なナチュラルキラー細胞受容体(NKG2D)を発現している細胞に対するリガンドとして機能する。ストレスマーカーとして、MICA及びMICBは癌細胞から高度に発現され得る。改変γδT細胞はMICAまたはMICB腫瘍エピトープを認識することができる。
【0071】
腫瘍認識部分はある一定のアビディティーで抗原を認識するように改変され得る。例えば、TCRまたはCAR構築体によってコードされる腫瘍認識部分は、少なくとも10fM、少なくとも100fM、少なくとも1ピコモーラー(pM)、少なくとも10pM、少なくとも20pM、少なくとも30pM、少なくとも40pM、少なくとも50pM、少なくとも60pM、少なくとも7pM、少なくとも80pM、少なくとも90pM、少なくとも100pM、少なくとも200pM、少なくとも300pM、少なくとも400pM、少なくとも500pM、少なくとも600pM、少なくとも700pM、少なくとも800pM、少なくとも900pM、少なくとも1ナノモーラー(nM)、少なくとも2nM、少なくとも3nM、少なくとも4nM、少なくとも5nM、少なくとも6nM、少なくとも7nM、少なくとも8nM、少なくとも9nM、少なくとも10nM、少なくとも20nM、少なくとも30nM、少なくとも40nM、少なくとも50nM、少なくとも60nM、少なくとも70nM、少なくとも80nM、少なくとも90nM、少なくとも100nM、少なくとも200nM、少なくとも300nM、少なくとも400nM、少なくとも500nM、少なくとも600nM、少なくとも700nM、少なくとも800nM、少なくとも900nM、少なくとも1μM、少なくとも2μM、少なくとも3μM、少なくとも4μM、少なくとも5μM、少なくとも6μM、少なくとも7μM、少なくとも8μM、少なくとも9μM、少なくとも10μM、少なくとも20μM、少なくとも30μM、少なくとも40μM、少なくとも50μM、少なくとも60μM、少なくとも70μM、少なくとも80μM、少なくとも90μM、または少なくとも100μMの解離定数で抗原を認識し得る。
【0072】
場合によっては、腫瘍認識部分は、多くとも10fM、多くとも100fM、多くとも1ピコモーラー(pM)、多くとも10pM、多くとも20pM、多くとも30pM、多くとも40pM、多くとも50pM、多くとも60pM、多くとも7pM、多くとも80pM、多くとも90pM、多くとも100pM、多くとも200pM、多くとも300pM、多くとも400pM、多くとも500pM、多くとも600pM、多くとも700pM、多くとも800pM、多くとも900pM、多くとも1ナノモーラー(nM)、多くとも2nM、多くとも3nM、多くとも4nM、多くとも5nM、多くとも6nM、多くとも7nM、多くとも8nM、多くとも9nM、多くとも10nM、多くとも20nM、多くとも30nM、多くとも40nM、多くとも50nM、多くとも60nM、多くとも70nM、多くとも80nM、多くとも90nM、多くとも100nM、多くとも200nM、多くとも300nM、多くとも400nM、多くとも500nM、多くとも600nM、多くとも700nM、多くとも800nM、多くとも900nM、多くとも1μM、多くとも2μM、多くとも3μM、多くとも4μM、多くとも5μM、多くとも6μM、多くとも7μM、多くとも8μM、多くとも9μM、多くとも10μM、多くとも20μM、多くとも30μM、多くとも40μM、多くとも50μM、多くとも60μ、M、多くとも70μM、多くとも80μM、多くとも90μM、または多くとも100μMの解離定数で抗原を認識するように改変され得る。
【0073】
γδT細胞の単離
いくつかの態様において、本開示は、被検者から単離したγδT細胞の遺伝子改変のための方法を提供する。γδT細胞は被検者の複合サンプルから単離することができる。複合サンプルは、末梢血サンプル、臍帯血サンプル、腫瘍、幹細胞前駆体、腫瘍生検、組織、リンパであってもよく、もしくは外部環境に直接接している被検者の上皮部位由来でもよく、または幹前駆細胞に由来してもよい。γδT細胞は、例えば1つ以上の細胞表面マーカーを発現するγδT細胞(複数可)をフローサイトメトリー法でソーティングすることによって、被検者の複合サンプルから直接単離され得る。野生型γδT細胞は、γδT細胞(複数可)に関連し得る多数の抗原認識、抗原提示、共刺激、及び接着分子を呈する。1つ以上の細胞表面マーカー、例えば特定のγδTCR、抗原認識、抗原提示、リガンド、接着分子、または共刺激分子などが、複合サンプルから野生型γδT細胞を単離するために用いられ得る。γδT細胞に関連する、またはγδT細胞によって発現される様々な分子が、複合サンプルからγδT細胞を単離するために用いられ得る。場合によっては、本開示は、Vδ1、Vδ2、Vδ3細胞の混合集団またはこれらの任意の組合せの単離のための方法を提供する。
【0074】
末梢血単核細胞は、例えばFicoll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare)システムをはじめとするアフェレーシス機器、または別の好適なデバイス/システムで被検者から収集することができる。γδT細胞(複数可)、またはγδT細胞(複数可)の所望の亜集団は、収集したサンプルから例えばフローサイトメトリー法で精製することができる。被検者の出産中に臍帯血から臍帯血細胞を得ることもできる。
【0075】
収集したγδT細胞(複数可)上で発現される細胞表面マーカーのポジティブ及び/またはネガティブセレクションを用いて、被検者の末梢血サンプル、臍帯血サンプル、腫瘍、腫瘍生検、組織、リンパ、または上皮サンプルからγδT細胞、または類似の細胞表面マーカーを発現しているγδT細胞(複数可)の集団を直接単離することができる。例えば、CD2、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD44、Kit、TCRα、TCRβ、TCRγ、TCRδ、NKG2D、CD70、CD27、CD30、CD16、CD337(NKp30)、CD336(NKp46)、OX40、CD46、CCR7、及び他の好適な細胞表面マーカーのポジティブまたはネガティブ発現に基づいてγδT細胞を複合サンプルから単離することができる。
【0076】
γδT細胞はインビトロで培養した複合サンプルから単離され得る。いくつかの実施形態において、全PBMC集団を、特定の細胞集団、例えば単球、αβT細胞、B細胞、及びNK細胞などの前除去なしで活性化及び増殖させることができる。他の実施形態では、富化γδT細胞集団をその特異的な活性化及び増殖の前に生成することができる。いくつかの態様において、γδT細胞の活性化及び増殖を天然または改変APCの非存在下で行う。いくつかの態様において、腫瘍試料からのγδT細胞の単離及び増殖は、γδTCRに特異的な抗体を含めた固定化γδT細胞分裂促進因子、及びレクチンをはじめとする他のγδTCR活性化剤を用いて行うことができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、γδT細胞(複数可)は1つ以上の抗原との接触に反応して急速に増殖することができる。いくつかのγδT細胞(複数可)、例えばVγ9Vδ2γδT細胞(複数可)などは、組織培養中にプレニルピロリン酸、アルキルアミン、及び代謝産物または微生物抽出物のようないくつかの抗原との接触に反応してインビトロで急速に増殖する。さらに、いくつかの野生型γδT細胞(複数可)、例えばVγ2Vδ2γδT細胞(複数可)などは、特定の種類のワクチン接種(複数可)に反応してヒト生体内で急速に増殖する。刺激されたγδT細胞は、複合サンプルからのγδT細胞(複数可)の単離を容易にすることができる多数の抗原提示、共刺激、及び接着分子を呈することができる。複合サンプル中のγδT細胞(複数可)は、少なくとも1種の抗原によりインビトロで1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、または別の好適な期間刺激することができる。好適な抗原でのγδT細胞の刺激により、γδT細胞集団をインビトロで増殖させることができる。
【0078】
インビトロで複合サンプルからのγδT細胞(複数可)の増殖を刺激するために用いられ得る抗原の非限定例としては、プレニルピロリン酸、例えばイソペンテニルピロリン酸(IPP)など、アルキルアミン、ヒト微生物病原体の代謝産物、共生細菌の代謝産物、メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸(2M3B1PP)、(E)-4-ヒドロキシ-3-メチル-ブタ-2-エニルピロリン酸(HMB-PP)、エチルピロリン酸(EPP)、ファルネシルピロリン酸(FPP)、ジメチルアリルリン酸(DMAP)、ジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)、エチルアデノシン三リン酸(EPPPA)、ゲラニルピロリン酸(GPP)、ゲラニルゲラニルピロリン酸(GGPP)、イソペンテニル-アデノシン三リン酸(IPPPA)、モノエチルリン酸(MEP)、モノエチルピロリン酸(MEPP)、3-ホルミル-1-ブチル-ピロリン酸(TUBAg1)、X-ピロリン酸(TUBAg2)、3-ホルミル-1-ブチル-ウリジン三リン酸(TUBAg3)、3-ホルミル-1-ブチル-デオキシチミジン三リン酸(TUBAg4)、モノエチルアルキルアミン、アリルピロリン酸、クロトイル(crotoyl)ピロリン酸、ジメチルアリル-γ-ウリジン三リン酸、クロトイル(crotoyl)-γ-ウリジン三リン酸、アリル-γ-ウリジン三リン酸、エチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、イソアミルアミン及び窒素含有ビスホスホネートが挙げられる。
【0079】
γδT細胞の活性化及び増殖は、特定のγδT細胞増殖及びパーシスタンス集団を誘発する本明細書に記載の活性化及び共刺激剤を用いて行うことができる。いくつかの実施形態において、異なる培養からのγδT細胞の活性化及び増殖により、異なるクローンまたは混合多クローン集団サブセットを得ることができる。いくつかの実施形態において、異なるアゴニスト剤を用いて特定のγδ活性化シグナルをもたらす作用物質を同定することができる。一態様において、特定のγδ活性化シグナルをもたらす作用物質は、γδTCRを対象とする異なるモノクローナル抗体(MAb)とすることができる。一態様において、MAbはγTCR及び/またはδTCRの定常または可変領域上の異なるエピトープに結合することができる。一態様において、MAbは汎γδTCR MAbを含むことができる。一態様において、汎γδTCR MAbは、δ1及びδ2細胞集団を含む両方における異なるγ及びδTCRによって共有されるドメインを認識し得る。一態様において、抗体は5A6.E9(Thermo scientific)、B1(Biolegend)、IMMU510及び/または11F12(Beckman Coulter)であり得る。一態様において、MAbは、γ鎖の可変領域に特有の特異的ドメイン(Vγ9 TCRなどを対象とする7A5 Mab(Thermo Scientific #TCR1720))、またはVδ1可変領域上のドメイン(Mab TS8.2(Thermo scientific #TCR1730;MAb TC1、MAb R9.12(Beckman Coulter))、またはVδ2鎖(MAb 15D(Thermo Scientific #TCR1732))を対象とすることができる。これらのMAbが単一集団Vδ1またはVδ2細胞サブセットを特異的に活性化及び増殖させる能力を試験した(図4)。図4は、血清含有培地(R2:RPMI+10%FBS)及び無血清培地(AIMV+ウシアルブミン;CTS無血清サプリメントを含むCTS Optimizer無血清培地)中でのδ2T細胞成長を示す。すべての培地は100IU/mLのIL-2、2mMのグルタミン及び1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有する。0日目に1、5及び20μMのゾレドロン酸で細胞を刺激した。ゾレドロン酸のさらなる添加はなしで2~3日ごとに培地を補充した。13日後の10PBMCから増殖した全δ2T細胞及び増殖倍率を各条件について示す。いくつかの実施形態において、γδTCRの異なるドメインに対する抗体(汎抗体及びサブセット集団上の特定の可変領域エピトープを認識する抗体)を組み合わせて、それらのγδT細胞の活性化を強化する能力を評価することができる。いくつかの実施形態において、γδT細胞アクティベーターとしては、γδTCR結合剤、例えばMICAなど、NKG2Dに対するアゴニスト抗体、MICAの(Fcタグ)融合タンパク質、ULBP1、ULBP3(R&D systems Minneapolis, MN)ULBP2、またはULBP6(Sino Biological Beijing, 中国)を挙げることができる。いくつかの実施形態において、細胞アネルギー及びアポトーシスを引き起こすことなく特異的γδT細胞増殖の誘発を補助する併用共刺激剤を同定することができる。こうした共刺激剤としては、γδ細胞上で発現される受容体、例えばNKG2D、CD161、CD70、JAML、DNAXアクセサリー分子1(DNAM-1)ICOS、CD27、CD137、CD30、HVEM、SLAM、CD122、DAP、及びCD28-などに対するリガンドを挙げることができる。いくつかの態様において、共刺激剤はCD2及びCD3分子上の特有のエピトープに特異的な抗体とすることができる。CD2及びCD3はαβまたはγδT細胞(複数可)上で発現された際に異なる配座構造を有することができ、場合によっては、CD3及びCD2に対する特異的抗体はγδT細胞の異なる活性化をもたらすことができる。
【0080】
γδT細胞(複数可)の改変前にγδT細胞(複数可)の集団をエクスビボ増殖させる場合がある。インビトロでのγδT細胞集団の増殖を促進するために用いることのできる試薬の非限定例としては、抗CD3もしくは抗CD2、抗CD27、抗CD30、抗CD70、抗OX40抗体、IL-2、IL-15、IL-12、IL-9、IL-33、IL-18、もしくはIL-21、CD70(CD27リガンド)、フィトヘムアグルチニン(PHA)、コンカバリン(concavalin)A(ConA)、ポークウィード(PWM)、タンパク質ピーナッツアグルチニン(PNA)、大豆アグルチニン(SBA)、Les Culinarisアグルチニン(LCA)、Pisum Sativumアグルチニン(PSA)、Helix pomatiaアグルチニン(HPA)、Vicia gramineaレクチン(VGA)、またはT細胞増殖を刺激可能な別の好適な分裂促進因子が挙げられる。γδT細胞(複数可)の遺伝子改変は、腫瘍認識部分、例えばαβTCR、γδTCR、抗体、その抗原結合断片、またはリンパ球活性化ドメインをコードするCARなど、エクスビボ及びインビボでのT細胞増殖、生存、及び機能を向上させるサイトカイン(IL-15、IL-12、IL-2、IL-7、IL-21、IL-18、IL-19、IL-33、IL-4、IL-9、IL-23、IL1β)を発現する構築体を単離したγδT細胞(複数可)のゲノム中に安定的に組み込むことを含み得る。単離したγδT細胞の遺伝子改変は、単離したγδT細胞のゲノム中の1つ以上の内因性遺伝子、例えばMHC遺伝子座(複数可)などからの遺伝子発現を除去または破壊することをさらに含み得る。
【0081】
改変γδT細胞のエクスビボ増殖
他の態様では、本開示は、養子移入療法のための改変γδT細胞集団のエクスビボ増殖方法を提供する。本開示の改変γδT細胞はエクスビボ増殖させられ得る。本開示の改変γδT細胞は、APCによる活性化なしで、またはAPC及びアミノホスフェートとの共培養なしでインビトロ増殖させることができる。
【0082】
本発明の方法は、様々なγδT細胞(複数可)集団、例えばVγ1、Vγ2、Vγ3γδT細胞集団などを増殖させることができる。場合によっては、36日未満、35日未満、34日未満、33日未満、32日未満、31日未満、30日未満、29日未満、28日未満、27日未満、26日未満、25日未満、24日未満、23日未満、22日未満、21日未満、20日未満、19日未満、18日未満、17日未満、16日未満、15日未満、14日未満、13日未満、12日未満、11日未満、10日未満、9日未満、8日未満、7日未満、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満でγδT細胞集団をインビトロ増殖させることができる。
【0083】
いくつかの態様において、γδT細胞を活性化剤と接触させることによって、改変及び非改変γδT細胞を含めた様々なγδT細胞を増殖させるための方法を提供する。場合によっては、活性化剤はγδT細胞の細胞表面受容体上の特定のエピトープに結合する。活性化剤は抗体、例えばモノクローナル抗体などとすることができる。活性化剤は1種以上のγδT細胞、例えばδ1、δ2、またはδ3細胞集団などの成長を特異的に活性化することができる。いくつかの実施形態において、活性化剤はδ1細胞集団の成長を特異的に活性化する。他の場合では、活性化剤はδ2細胞集団の成長を特異的に活性化する。
【0084】
活性化剤は速い成長速度で改変及び非改変γδT細胞の増殖を刺激し得る。例えば、30時間未満に1回の細胞分裂、29時間未満に1回の細胞分裂、28時間未満に1回の細胞分裂、27時間未満に1回の細胞分裂、26時間未満に1回の細胞分裂、25時間未満に1回の細胞分裂、24時間未満に1回の細胞分裂、23時間未満に1回の細胞分裂、22時間未満に1回の細胞分裂、21時間未満に1回の細胞分裂、20時間未満に1回の細胞分裂、19時間未満に1回の細胞分裂、18時間未満に1回の細胞分裂、17時間未満に1回の細胞分裂、16時間未満に1回の細胞分裂、15時間未満に1回の細胞分裂、14時間未満に1回の細胞分裂、13時間未満に1回の細胞分裂、12時間未満に1回の細胞分裂、11時間未満に1回の細胞分裂、10時間未満に1回の細胞分裂、9時間未満に1回の細胞分裂、8時間未満に1回の細胞分裂、7時間未満に1回の細胞分裂、6時間未満に1回の細胞分裂、5時間未満に1回の細胞分裂、4時間未満に1回の細胞分裂、3時間未満に1回の細胞分裂、2時間未満に1回の細胞分裂の平均速度でγδT細胞集団の増殖を刺激する作用物質。
【0085】
場合によっては、活性化剤は、約4時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約5時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約6時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約7時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約8時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約9時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約10時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約11時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約12時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約13時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約14時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約15時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約16時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約17時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約18時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約19時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約20時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約21時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約22時間ごとに約1回の分裂の速度、約23時間ごとに約1回の分裂の速度、約24時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約25時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約26時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約27時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約28時間ごとに約1回の分裂の速度、約29時間ごとに約1回の分裂の速度、約30時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約31時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約32時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約33時間ごとに約1回の分裂の平均速度、約34時間ごとに約1回の分裂の速度、約35時間ごとに約1回の分裂の速度、約36時間ごとに約1回の分裂の平均速度で改変及び非改変γδT細胞の増殖を刺激し得る。
【0086】
活性化剤は異なる成長速度で改変及び非改変γδT細胞の亜集団の増殖を刺激し得る。例えば、作用物質は、1日~90日の培養期間にかけて、別のγδT細胞集団、例えばδ2もしくはδ3集団または別のγδ亜集団などよりも10倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1,000倍、10,000倍、100,000倍または1,000,000倍を超える増殖となるような速い速度でδ1細胞集団の成長を刺激し得る。他の場合では、作用物質は、1日~90日の培養期間にかけて、δ1T細胞集団または別のγδT細胞亜集団などよりも10倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1,000倍、10,000倍、100,000倍または1,000,000倍を超える増殖となるような速い速度でδ2またはδ3集団の成長を刺激し得る。他の場合では、作用物質は、1日~90日の培養期間にかけて、δ1T細胞集団、δ3T細胞集団または別のγδT細胞亜集団などよりも10倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1,000倍、10,000倍、100,000倍または1,000,000倍を超える増殖となるような速い速度でδ2集団の成長を刺激し得る。
【0087】
いくつかの態様において、本開示は、急速な速度で、例えば1時間ごとに約1回の細胞分裂の速度またはそれより速い速度などでγδT細胞集団の増殖を刺激する作用物質によって、γδT細胞集団の増殖が活性化されるγδT細胞集団を提供する。場合によっては、作用物質はδ1、δ2、またはδ3T細胞のいずれかの増殖を選択的に刺激する。γδT細胞集団はある量の非改変γδT細胞及びある量の改変γδT細胞を含むことができる。場合によっては、γδT細胞集団は異なるパーセンテージのδ1、δ2、及びδ3T細胞を含む。改変または非改変γδT細胞集団は、例えば90%未満のδ1T細胞、80%未満のδ1T細胞、70%未満のδ1T細胞、60%未満のδ1T細胞、50%未満のδ1T細胞、40%未満のδ1T細胞、30%未満のδ1T細胞、20%未満のδ1T細胞、10%未満のδ1T細胞、または5%未満のδ1T細胞を含むことができる。あるいは、改変または非改変γδT細胞集団は、5%超のδ1T細胞、10%超のδ1T細胞、20%超のδ1T細胞、30%超のδ1T細胞、40%超のδ1T細胞、50%超のδ1T細胞、60%超のδ1T細胞、70%超のδ1T細胞、80%超のδ1T細胞、または90%超のδ1T細胞を含むことができる。
【0088】
改変または非改変γδT細胞集団は、例えば90%未満のδ2T細胞、80%未満のδ2T細胞、70%未満のδ2T細胞、60%未満のδ2T細胞、50%未満のδ2T細胞、40%未満のδ2T細胞、30%未満のδ2T細胞、20%未満のδ2T細胞、10%未満のδ2T細胞、または5%未満のδ2T細胞を含むことができる。あるいは、改変または非改変γδT細胞集団は、5%超のδ2T細胞、10%超のδ2T細胞、20%超のδ2T細胞、30%超のδ2T細胞、40%超のδ2T細胞、50%超のδ2T細胞、60%超のδ2T細胞、70%超のδ2T細胞、80%超のδ2T細胞、または90%超のδ2T細胞を含むことができる。
【0089】
改変または非改変γδT細胞集団は、例えば90%未満のδ3T細胞、80%未満のδ3T細胞、70%未満のδ3T細胞、60%未満のδ3T細胞、50%未満のδ3T細胞、40%未満のδ3T細胞、30%未満のδ3T細胞、20%未満のδ3T細胞、10%未満のδ3T細胞、または5%未満のδ3T細胞を含むことができる。あるいは、改変または非改変γδT細胞集団は、5%超のδ3T細胞、10%超のδ3T細胞、20%超のδ3T細胞、30%超のδ3T細胞、40%超のδ3T細胞、50%超のδ3T細胞、60%超のδ3T細胞、70%超のδ3T細胞、80%超のδ3T細胞、または90%超のδ3T細胞を含むことができる。
【0090】
1種以上の活性化剤をγδT細胞と接触させることができ、その後、共刺激分子をγδT細胞と接触させてさらなる刺激を与え、γδT細胞を増殖させることができる。いくつかの実施形態において、活性化剤及び/または共刺激剤は、植物及び非植物起源のレクチン、γδT細胞を活性化するモノクローナル抗体、及び非レクチン/非抗体作用物質とすることができる。他の場合では、植物レクチンはコンカナバリンA(ConA)とすることができるが、他の植物レクチン、例えばフィトヘムアグルチニン(PHA)などを用いてもよい。レクチンの他の例としては、タンパク質ピーナッツアグルチニン(PNA)、大豆アグルチニン(SBA)、les culinarisアグルチニン(LCA)、pisum sativumアグルチニン(PSA)、Helix pomatiaアグルチニン(HPA)、Vicia gramineaレクチン(VGA)が挙げられる。
【0091】
活性化剤及び共刺激分子の非限定例としては、5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、γ3.20、7A5、IMMU510、R9.12、11F2などの抗体、またはこれらの組合せが挙げられる。活性化剤及び共刺激分子の他の例としては、ゾレドロネート、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(TPA)、メゼレイン、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、連鎖球菌プロテインA、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0092】
他の場合では、活性化剤及び/または共刺激剤は、αTCR、βTCR、γTCR、δTCR、CD277、CD28、CD46、CTLA4、ICOS、PD-1、CD30、NKG2D、NKG2A、HVEM、4-1 BB(CD137)、OX40(CD134)、CD70、CD80、CD86、DAP、CD122、GITR、FceRIg、CD1、CD16、CD161、DNAX、アクセサリー分子1(DNAM-1)、SLAM、コクサッキーウイルス及びアデノウイルス受容体に対する抗体もしくはリガンドまたはこれらの組合せとすることができる。
【0093】
エピトープ同定
一態様において、本開示は速い成長速度で改変及び非改変γδT細胞の増殖を刺激する作用物質のエピトープを同定するための方法を提供する。エピトープは固有の空間的構造をした少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸を含むことができる。エピトープは隣接アミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並んだ非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されるエピトープは一般に変性溶媒にさらされても維持され得る一方で、三次フォールディングによって形成されるエピトープは一般に変性溶媒で処理すると失われ得る。
【0094】
エピトープマッピングを行い、対象とする活性化剤、例えば5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、3.20、IMMU510、R9.12、11F2及び7A5などによって認識される直線または非直線不連続アミノ酸配列(複数可)、すなわちエピトープを同定することができる。エピトープマッピングのための一般的アプローチは、一般に異種発現系における、対象とする抗体またはリガンドによって認識される全長ポリペプチド配列、及び様々な断片、すなわちポリペプチド配列の切断型の発現を必要とし得る。次に、こうした様々な組換えポリペプチド配列またはその断片(例えばN末端タンパク質(例えばGFP)との融合)を用いて、対象とする抗体またはリガンドがポリペプチド配列の切断型の1つ以上に結合可能であるかどうかを判定することができる。繰り返し切断を用いて部分的に一致するアミノ酸領域を有する組換えポリペプチド配列を生成することにより、対象とする抗体によって認識されるポリペプチド配列の領域を特定することが可能である(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66, Glenn E. Morris, Ed (1996)を参照)。この方法は作用物質、例えば対象とする抗体などの、エピトープライブラリー、例えば膜支持体上の合成ペプチドアレイ、コンビナトリアル・ファージディスプレイペプチドライブラリーに由来するエピトープライブラリーなどから再現された配列に結合する能力に依存する。そして、エピトープライブラリーは抗体に対してスクリーニングされる可能性の範囲を提供する。加えて、エピトープの1つ以上の残基を標的とする部位特異的変異導入、またはランダムAlaスキャンを行い、エピトープの同一性を確認することができる。
【0095】
エピトープのライブラリーは、様々な可能なγδT細胞受容体(γδTCR)の組換えをcDNA構築体として合成的に設計し、好適な系で発現させることによって作製することができる。例えば、そのJδ領域において異なっている複数のVδ1遺伝子セグメントを合成的に設計することができ、これにはJδ1、Jδ2及びJδ3遺伝子セグメントが挙げられる。あるいは、Vδ2Jδ1及びVδ3Jδ1鎖を合成遺伝子として取り寄せ、好適なベクターにクローニングすることもできる。複数の合成的にクローニングしたδTCR鎖、例えばVδ1Jδ1、Vδ1Jδ2、Vδ1Jδ3、Vδ1Jδ4、Vδ2及びVδ3鎖などを、合成的にクローニングしたγTCR鎖、例えばVγ2、Vγ3、Vγ4、Vγ5、Vγ8、Vγ9及びVγ10合成設計遺伝子セグメントなどとともに宿主系に共形質移入することができる。他の場合では、δTCR鎖、例えばVδ1Jδ1、Vδ1Jδ2、Vδ1Jδ3、Vδ1Jδ4、Vδ2及びVδ3鎖などは、ヒトPBMCまたはヒト正常及び悪性組織から単離したγδT細胞から抽出した全RNAから増幅することができる。
【0096】
宿主系は任意の好適な発現系、例えば293細胞、昆虫細胞など、または好適なインビトロ翻訳系とすることができる。宿主系に形質移入される合成設計γδT細胞セグメントの複数の様々な可能な組換えにより、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90を超える可能なペアの組合せのγδTCRを得ることができる。前述のライブラリー中のエピトープのうちの1つに対する作用物質の結合は、標識化抗体、例えばTS-1、5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、γ3.20、R9.12、7A5などをライブラリーのエピトープと接触させ、標識からのシグナルを検出することによって検出することができる。
【0097】
エピトープマッピングについて、計算アルゴリズムも開発されており、立体構造的不連続エピトープをマッピングすることが示されている。立体構造的エピトープは、例えばX線結晶構造解析及び二次元核磁気共鳴を含めた方法でアミノ酸の空間的構造を決定することによって同定することができる。いくつかのエピトープマッピング方法、例えば抗原:抗体複合体の結晶のX線解析などにより、エピトープの原子分解能を得ることができる。他の場合では、エピトープマッピングのための計算的コンビナトリアル方法を用いて、抗体、例えばTS-1抗体またはTS8.2抗体などの配列に基づいて可能性のあるエピトープをモデリングすることができる。そのような場合において、抗体の抗原結合部分を配列決定し、計算モデルを用いて抗体の可能性のある結合部位を再構築及び予測する。
【0098】
場合によっては、本開示はγδT細胞受容体のエピトープの決定方法を提供するが、この方法は(a)γδT細胞受容体からエピトープのライブラリーを調製すること;(b)エピトープのライブラリーを抗体と接触させること;及び(b)エピトープのライブラリー中の、抗体が結合した少なくとも1つのエピトープのアミノ酸配列を同定することを含む。場合によっては、抗体は、5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、R9.12、11F2及び7A5抗体からなる群から選択される。ある場合において、抗体は固体支持体に付着している。エピトープのライブラリーは、T細胞受容体、例えばγTCRまたはδTCRなどの連続及び不連続エピトープに対応する配列を含むことができる。場合によっては、エピトープのライブラリーは、約10アミノ酸長~約30アミノ酸長、約10アミノ酸長~約20アミノ酸長、または約5アミノ酸長~約12アミノ酸長の範囲のγδT細胞受容体からの断片を含む。場合によっては、抗体を標識化し、標識は放射性分子、発光分子、蛍光分子、酵素、またはビオチンである。
【0099】
治療方法
本明細書に記載の改変γδT細胞を含有する医薬組成物は、予防的及び/または治療的処置のために投与され得る。治療用途において、すでに疾患または病態を患っている被検者に、疾患または病態の症状を治療する、または少なくとも部分的に抑えるのに十分な量で組成物を投与することができる。改変γδT細胞は、病態の発症、罹患、または悪化の可能性を低下させるために投与することもできる。治療用途に有効な改変γδT細胞集団の量は、疾患もしくは病態の重症度及び経過、それまでの治療法、被検者の健康状態、体重、及び/または薬剤への反応、及び/または治療する医師の判断に応じて変化し得る。
【0100】
本開示の改変γδT細胞は病態の治療を必要とする被検者を治療するために用いることができる。病態の例としては、癌、感染症、自己免疫障害及び敗血症が挙げられる。被検者は、ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、及び他の類人猿ならびにサル種など;家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなど;家庭動物、例えばウサギ、イヌ及びネコなど;げっ歯類、例えばラット、マウス及びモルモットなどをはじめとする実験動物などとすることができる。被検者はあらゆる年齢とすることができる。被検者は、例えば、高齢者、成人、青年、少年少女、小児、幼児、乳児とすることができる。
【0101】
γδT細胞で被検者の病態(例えば病気)を治療する方法は、被検者に治療有効量の改変γδT細胞を投与することを含み得る。本開示のγδT細胞は、様々なレジメン(例えば時期、濃度、投与量、治療の間隔、及び/または製剤形態)で投与され得る。本開示の改変γδT細胞を与える前に、例えば化学療法、放射線、または両方の組合せによって被検者を前処置することもできる。治療の一部として、第1レジメンで改変γδT細胞が被検者に投与され、被検者は、第1レジメンでの治療が所与のレベルの治療有効性を満たすかどうか判定するために監視され得る。場合によっては、同じ改変γδT細胞または別の改変γδT細胞が第2レジメンで被検者に投与され得る。図2は被検者の治療方法を概略的に示す。第1処理201において、所与の病態(例えば癌)を有する、または有すると疑われる被検者に少なくとも1種の改変γδT細胞を投与する。改変γδT細胞は第1レジメンで被検者に投与され得る。第2処理202において、被検者は例えば医療提供者(例えば治療する医師または看護師)によって監視され得る。いくつかの例では、被検者の病態の治療における改変γδT細胞の有効性を判定または測定するために被検者を監視する。場合によっては、被検者におけるγδT細胞集団のインビボ増殖を判定するために被検者を監視してもよい。次に、第3処理203において、第2レジメンで被検者に少なくとも1種の他の改変γδT細胞を投与する。第2レジメンは第1レジメンと同じであってもよく、第1レジメンと異なっていてもよい。場合によっては、例えば、第1処理201における改変γδT細胞の投与が有効である(例えば一巡の投与が病態を治療するのに十分であり得る)と判明した場合、第3処理203は行わない。そのアロジェニック及び万能ドナー特性のために、改変γδT細胞の集団はMHCハプロタイプが異なる様々な被検者に投与され得る。改変γδT細胞は被検者に投与される前に凍結またはクライオ保存され得る。
【0102】
改変γδT細胞の集団も被検者に投与される前に凍結またはクライオ保存され得る。改変γδT細胞の集団は、同一の腫瘍認識部分、異なる腫瘍認識部分、または同一及び異なる腫瘍認識部分の組合せを発現する2種以上の細胞を含むことができる。例えば、改変γδT細胞の集団は、異なる抗原、または同一抗原の異なるエピトープを認識するように設計された複数の異なる改変γδT細胞を含むことができる。例えば、黒色腫を患っているヒト細胞はNY-ESO-1癌遺伝子を発現することができる。ヒト体内の感染細胞は、NY-ESO-1癌タンパク質を小さな断片にプロセシングし、NY-ESO-1タンパク質の様々な部分を抗原認識のために提示することができる。改変γδT細胞の集団は、NY-ESO-1タンパク質の異なる部分を認識するように設計された異なる腫瘍認識部分を発現する様々な改変γδT細胞を含むことができる。図3は、黒色腫抗原NY-ESO-1の異なるエピトープを認識する改変γδT細胞の集団で被検者を治療するための方法を概略的に示す。第1処理301において、同一抗原の異なるエピトープを認識する改変γδT細胞の集団を選択する。例えば、改変γδT細胞の集団は、NY-ESO-1タンパク質の異なる部分を認識する異なる腫瘍認識部分を発現する2種以上の細胞を含み得る。第2処理302において、改変γδT細胞の集団が第1レジメンで被検者に投与され得る。第2処理303において、被検者は例えば医療提供者(例えば治療する医師または看護師)によって監視され得る。
【0103】
本開示のγδT細胞は様々な病態を治療するために用いられ得る。場合によっては、本開示の改変γδT細胞は固形腫瘍及び血液悪性腫瘍を含む癌を治療するために用いられ得る。癌の非限定例としては、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質癌、AIDS関連癌、AIDS関連リンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、神経芽細胞腫、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、例えば小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫など、乳癌、気管支腺腫、バーキットリンパ腫、原発不明癌、中枢神経系リンパ腫、小脳星細胞腫、子宮頸癌、小児癌、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、大腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮体癌、上衣腫、食道癌、ユーイング肉腫、胚細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸間質腫瘍、神経膠腫、毛様細胞性白血病、頭頸部癌、心臓癌、肝細胞(肝臓)癌、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、口唇及び口腔癌、脂肪肉腫、肝臓癌、肺癌、例えば非小細胞及び小細胞肺癌など、リンパ腫、白血病、マクログロブリン血症、骨悪性線維性組織球腫/骨肉腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、原発不明転移性扁平上皮性頸部癌、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、口咽頭癌、骨肉腫/骨悪性線維性組織球腫、卵巣癌、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓癌、膵島細胞癌、副鼻腔及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、形質細胞腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管移行上皮癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、皮膚メルケル細胞癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞癌、胃癌、T細胞リンパ腫、咽喉癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、栄養膜腫瘍(妊娠性)、原発部位不明癌、尿道癌、子宮肉腫、膣癌、外陰癌、ワルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0104】
場合によっては、本開示の改変γδT細胞は感染症を治療するために用いられ得る。感染症は例えば病原性細菌またはウイルスによって引き起こされ得る。様々な病原性タンパク質、核酸、脂質、またはこれらの断片が疾患細胞によって発現され得る。抗原提示細胞は、例えば、食作用または受容体媒介エンドサイトーシスによってそのような病原性分子を内在化することができ、適切なMHC分子に結合した抗原の断片を提示する。例えば、病原性タンパク質の様々な9マー断片がAPCによって提示され得る。本開示の改変γδT細胞は、病原性細菌またはウイルスの様々な抗原及び抗原断片を認識するように設計され得る。病原性細菌の非限定例は、a)Bordetella属、例えばBordetella pertussis種など;b)Borrelia属、例えばBorrelia burgdorferi種など;c)Brucelia属、例えばBrucella abortus、Brucella canis、Brucela meliterisis、及び/またはBrucella suis種など;d)Campylobacter属、例えばCampylobacter jejuni種など;e)Chlamydia及びChlamydophila属、例えばChlamydia pneumonia、Chlamydia trachomatis、及び/またはChlamydophila psittaci種など;f)Clostridium属、例えばClostridium botulinum、Clostridium difficile、Clostridium perfringens、Clostridium tetani種など;g)Corynebacterium属、例えばCorynebacterium diphtheria種など;h)Enterococcus属、例えばEnterococcus faecalis、及び/またはEnterococcus faecium種など;i)Escherichia属、例えばEscherichia coli種など;j)Francisella属、例えばFrancisella tularensis種など;k)Haemophilus属、例えばHaemophilus influenza種など;l)Helicobacter属、例えばHelicobacter pylori種など;m)Legionella属、例えばLegionella pneumophila種など;n)Leptospira属、例えばLeptospira interrogans種など;o)Listeria属、例えばListeria monocytogenes種など;p)Mycobacterium属、例えばMycobacterium leprae、mycobacterium tuberculosis、及び/またはmycobacterium ulcerans種など;q)Mycoplasma属、例えばMycoplasma pneumonia種など;r)Neisseria属、例えばNeisseria gonorrhoeae及び/またはNeisseria meningitidia種など;s)Pseudomonas属、例えばPseudomonas aeruginosa種など;t)Rickettsia属、例えばRickettsia rickettsii種など;u)Salmonella属、例えばSalmonella typhi及び/またはSalmonella typhimurium種など;v)Shigella属、例えばShigella sonnei種など;w)Staphylococcus属、例えばStaphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、及び/またはStaphylococcus saprophyticus種など;x)Streptpcoccus属、例えばStreptococcus agalactiae、Streptococcus pneumonia、及び/またはStreptococcus pyogenes種など;y)Treponema属、例えばTreponema pallidum種など;z)Vibrio属、例えばVibrio choleraなど;及び/またはaa)Yersinia属、例えばYersinia pestis種などに見出すことができる。
【0105】
場合によっては、本開示の改変γδT細胞は感染症を治療するために用いられ、感染症はウイルスによって引き起こされ得る。ウイルスの非限定例は、以下のウイルスの科に見出すことができ、代表的な種を例示する:a)Adenoviridae科、例えばアデノウイルス種など;b)Herpesviridae科、例えば単純ヘルペス1型、単純ヘルペス2型、水痘帯状疱疹ウイルス、エプスタイン・バールウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス8型種など;c)Papillomaviridae科、例えばヒト乳頭腫ウイルス種など;d)Polyomaviridae科、例えばBKウイルス、JCウイルス種など;e)Poxviridae科、例えば天然痘種など;f)Hepadnaviridae科、例えばB型肝炎ウイルス種など;g)Parvoviridae科、例えばヒトボカウイルス、パルボウイルスB19種など;h)Astroviridae科、例えばヒトアストロウイルス種など;i)Caliciviridae科、例えばノーウォークウイルス種など;j)Flaviviridae科、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)、黄熱ウイルス、デングウイルス、ウエストナイルウイルス種など;k)Togaviridae科、例えば風疹ウイルス種など;l)Hepeviridae科、例えばE型肝炎ウイルス種など;m)Retroviridae科、例えばヒト免疫不全ウイルス(HIV)種など;n)Orthomyxoviridaw科、例えばインフルエンザウイルス種など;o)Arenaviridae科、例えばグアナリトウイルス、フニンウイルス、ラッサウイルス、マチュポウイルス、及び/またはサビアウイルス種など;p)Bunyaviridae科、例えばクリミア・コンゴ出血熱ウイルス種など;q)Filoviridae科、例えばエボラウイルス及び/またはマールブルグウイルス種など;Paramyxoviridae科、例えば麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヘンドラウイルス及び/またはニパウイルス種など;r)Rhabdoviridae属、例えば狂犬病ウイルス種など;s)Reoviridae科、例えばロタウイルス、オルビウイルス、コルチウイルス及び/またはバンナウイルス種など。いくつかの例では、ウイルス科に属していないウイルスもあり、例えばD型肝炎などである。
【0106】
場合によっては、本開示の改変γδT細胞は免疫疾患、例えば自己免疫疾患などを治療するために用いられ得る。自己免疫疾患は、炎症性疾患を含め、B細胞障害に関連する疾患の分類でもある。本明細書に開示の改変γδT細胞で治療することができる自己免疫病態をはじめとする免疫疾患または病態の例としては、関節リウマチ、リウマチ熱、多発性硬化症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、乾癬、ぶどう膜炎、真性糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、湿疹、強皮症、多発性筋炎/強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、潰瘍性直腸炎、重症複合免疫不全症(SCID)、ディジョージ症候群、毛細血管拡張性運動失調症、季節性アレルギー、通年性アレルギー、食物アレルギー、アナフィラキシー、肥満細胞症、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、脾機能亢進症、白血球接着不全症、X連鎖リンパ増殖性疾患、X連鎖無ガンマグロブリン血症、選択的免疫グロブリンA欠損症、高IgM症候群、HIV、自己免疫性リンパ増殖症候群、ウィスコット・アルドリッチ症候群、慢性肉芽腫症、分類不能型免疫不全症(CVID)、高免疫グロブリンE症候群、橋本甲状腺炎、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シデナム舞踏病、重症筋無力症、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、連鎖球菌感染後腎炎、結節性紅斑、多形性紅斑、gA腎症、高安動脈炎、アジソン病、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、慢性活動性肝炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫症、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄癆、巨細胞性動脈炎/多発筋痛症、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、線維化肺胞炎、及び癌が挙げられる。
【0107】
本開示のγδT細胞での治療は、病態の臨床的発症の前、その間、及びその後に被検者に提供され得る。治療は、疾患の臨床的発症の後、1日、1週、6か月、12か月、または2年後に被検者に提供され得る。治療は、疾患の臨床的発症の後、1日、1週、1か月、6か月、12か月、2年、3年、4年、5年、6年、7年、8年、9年、10年またはこれよりも長い間、被検者に提供され得る。治療は、疾患の臨床的発症の後、1日、1週、1か月、6か月、12か月、または2年未満の間、被検者に提供され得る。治療は臨床試験でヒトを治療することも含み得る。治療は被検者に本開示の改変γδT細胞を含む医薬組成物を投与することを含むことができる。
【0108】
場合によっては、被検者への本開示の改変γδT細胞の投与は被検者の体内の内因性リンパ球の活性を調節する。場合によっては、被検者への改変γδT細胞(複数可)の投与は内因性T細胞に抗原を与え、免疫応答を増強し得る。場合によっては、メモリーT細胞はCD4T細胞である。場合によっては、メモリーT細胞はCD8T細胞である。場合によっては、被検者への改変γδT細胞(複数可)の投与は別の免疫細胞の細胞傷害性を活性化する。場合によっては、この別の免疫細胞はCD8+T細胞である。場合によっては、この別の免疫細胞はナチュラルキラーT細胞である。場合によっては、被検者への改変γδT細胞(複数可)の投与は調節性T細胞を抑制する。場合によっては、調節性T細胞はFox3+Treg細胞である。場合によっては、調節性T細胞はFox3-Treg細胞である。本開示の改変γδT細胞によってその活性を調節することのできる細胞の非限定例としては、造血幹細胞;B細胞;CD4;CD8;赤血球;白血球;樹状抗原提示細胞を含む樹状細胞;白血球;マクロファージ;メモリーB細胞;メモリーT細胞;単球;ナチュラルキラー細胞;好中球、ヘルパーT細胞;及びキラーT細胞が挙げられる。
【0109】
ほとんどの骨髄移植において、被検者の免疫系による移植組織中の造血幹細胞(HSC)の拒絶反応を防止するために、シクロホスファミドと全身放射線照射との組合せが従来用いられている。場合によっては、ドナー骨髄中のキラーリンパ球の生成を亢進するために、エクスビボでのインターロイキン2(IL-2)によるドナー骨髄のインキュベーションが行われる。インターロイキン2(IL-2)は野生型リンパ球の成長、増殖、及び分化に必要なサイトカインである。ヒトへのγδT細胞の養子移入の現在の研究では、γδT細胞及びインターロイキン2の共投与を必要としている場合がある。しかし、IL-2の低投与量及び高投与量の両方とも毒性が高い副作用を有する恐れがある。IL-2毒性は複数の器官/系で現れ得るが、心臓、肺、腎臓、及び中枢神経系で最も著しい。場合によっては、本開示は、サイトカイン、例えばIL-2、IL-15、IL-12、IL-21などの共投与なしで改変γδT細胞を被検者に投与する方法を提供する。場合によっては、IL-2との共投与なしで改変γδT細胞を被検者に投与することができる。場合によっては、IL-2との共投与なしで、手術、例えば骨髄移植などの間に改変γδT細胞を被検者に投与する。
【0110】
投与方法
1種または複数の改変γδT細胞(複数可)を任意の順序でまたは同時に被検者に投与することができる。同時の場合、複数の改変γδT細胞(複数可)は、単一の一体化された形態、例えば静脈内注射など、または複数の形態、例えば複数の静脈内注入、s.c、注射または丸薬として提供することができる。改変γδT細胞(複数可)は、単一パッケージまたは複数のパッケージに一緒にまたは別々に充填することができる。1種またはすべての改変γδT細胞(複数可)は複数回投与で与えることができる。同時ではない場合、複数回投与の間のタイミングは様々であり、約1週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または約1年にもなり得る。場合によっては、改変γδT細胞(複数可)は、被検者への投与後に被検者の体内でインビボ増殖することができる。改変γδT細胞(複数可)は、複数回治療用の細胞に同一の細胞調製を行うために凍結することができる。本開示の改変γδT細胞(複数可)、及びこれを含む医薬組成物はキットとしてパッケージ化することができる。キットは改変γδT細胞(複数可)及びこれを含む組成物の使用についての指示(例えば説明書)を含み得る。
【0111】
場合によっては、癌の治療方法は、治療有効量の改変γδT細胞(複数可)を被検者に投与することを含み、投与により癌が治療される。いくつかの実施形態において、治療有効量の改変γδT細胞(複数可)を少なくとも約10秒、30秒、1分、10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、1週、2週、3週、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、または1年間投与する。いくつかの実施形態において、治療有効量の改変γδT細胞(複数可)を少なくとも1週間投与する。いくつかの実施形態において、治療有効量の改変γδT細胞(複数可)を少なくとも2週間投与する。
【0112】
本明細書に記載の改変γδT細胞(複数可)は、疾患または病態の発症前、その間、またはその後に投与することができ、改変γδT細胞を含有する医薬組成物を投与するタイミングは様々であり得る。例えば、改変γδT細胞を予防薬として用いることができ、病態または疾患にかかる傾向のある被検者に、疾患または病態の発症の可能性を低下させるために継続的に投与することができる改変γδT細胞(複数可)は症状の発症の間またはその後で可能な限り早く被検者に投与することができる。改変γδT細胞(複数可)の投与は、症状の発症中すぐに、症状発症の最初の3時間以内、症状発症の最初の6時間以内、症状発症の最初の24時間以内、症状発症の48時間以内、または症状発症から任意の時間以内に開始することができる。最初の投与は、本明細書に記載の任意の製剤形態を用いて任意の実用的な経路を介して、例えば本明細書に記載の任意の経路などによって行うことができる。いくつかの例では、本開示の改変γδT細胞の投与は静脈内投与である。1つまたは複数の投与量の改変γδT細胞は、癌、感染症、免疫疾患、敗血症の発症後、または骨髄移植において実施可能な限り早く、かつ、免疫疾患の治療に必要な期間、例えば約24時間~約48時間、約48時間~約1週間、約1週間~約2週間、約2週間~約1か月、約1か月~約3か月などの間投与することができる。癌の治療については、1つまたは複数の投与量の改変γδT細胞は、癌の発症の数年後で他の治療の前または後に投与することができる。いくつかの例では、少なくとも約10分、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも3か月、少なくとも4か月、少なくとも5か月、少なくとも6か月、少なくとも7か月、少なくとも8か月、少なくとも9か月、少なくとも10か月、少なくとも11か月、少なくとも12か月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、または少なくとも5年の間、改変γδT細胞(複数可)を投与することができる。治療の長さは被検者それぞれに対して異なり得る。
【0113】
投与量
本明細書に開示の改変γδT細胞(複数可)は正確な投与量の単回投与に適した単位剤形に製剤化され得る。場合によっては、単位剤形は別のリンパ球を含む。単位剤形では、1種以上の化合物の適切な量を含有する単位投与量に製剤を分割する。単位投与量は製剤の個々の量を含有するパッケージの形態とすることができる。非限定例は包装された錠剤またはカプセル、及びバイアルまたはアンプル中の粉末である。水性懸濁液組成物は単回投与量の再封不可能な容器に入れることができる。複数回投与量の再封可能な容器を、例えば保存剤とともに、または保存剤なしで用いることができる。いくつかの例では、医薬組成物は保存剤を含まない。腸管外注入用の製剤は、単位剤形、例えば、アンプルで、または保存剤を含む複数回投与量の容器で提供することができる。
【0114】
本明細書に記載の改変γδT細胞は、少なくとも5細胞、少なくとも10細胞、少なくとも20細胞、少なくとも30細胞、少なくとも40細胞、少なくとも50細胞、少なくとも60細胞、少なくとも70細胞、少なくとも80細胞、少なくとも90細胞、少なくとも100細胞、少なくとも200細胞、少なくとも300細胞、少なくとも400細胞、少なくとも500細胞、少なくとも600細胞、少なくとも700細胞、少なくとも800細胞、少なくとも900細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも2×10細胞、少なくとも3×10細胞、少なくとも4×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも6×10細胞、少なくとも7×10細胞、少なくとも8×10細胞、少なくとも9×10細胞、少なくとも1×10細胞、またはこれより多い量で組成物中に存在し得る。
【0115】
本発明の改変γδT細胞の治療有効量は、約1細胞~約10細胞、約1細胞~約100細胞、約1細胞~約10細胞、約1細胞~約20細胞、約1細胞~約30細胞、約1細胞~約40細胞、約1細胞~約50細胞、約1細胞~約60細胞、約1細胞~約70細胞、約1細胞~約80細胞、約1細胞~約90細胞、約1細胞~約100細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、約1細胞~約1×10細胞、約1細胞~約2×10細胞、約1細胞~約3×10細胞、約1細胞~約4×10細胞、約1細胞~約5×10細胞、約1細胞~約6×10細胞、約1細胞~約7×10細胞、約1細胞~約8×10細胞、約1細胞~約9×10細胞、または約1細胞~約1×10細胞とすることができる。
【0116】
場合によっては、本発明の改変γδT細胞の治療有効量は、約1×10細胞~約1細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、約1×10細胞~約1×10細胞、約1×10細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、約1×10細胞~約1×10細胞、約1×10細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、約1×10細胞~約1×10細胞、約1×10細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、約1×10細胞~約1×10細胞、約1×10細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、約1×10細胞~約1×10細胞、約1×10細胞~約2×10細胞、約1×10細胞~約3×10細胞、約1×10細胞~約4×10細胞、約1×10細胞~約5×10細胞、約1×10細胞~約6×10細胞、約1×10細胞~約7×10細胞、約1×10細胞~約8×10細胞、約1×10細胞~約9×10細胞、または約1×10細胞~約1×10細胞とすることができる。
【0117】
保存
いくつかの実施形態において、γδT細胞は凍結培地中で製剤化され、少なくとも約1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、1年、2年、3年、または少なくとも5年の長期保存のために低温保存装置、例えば液体窒素冷凍装置(-195℃)または超低温冷凍装置(-65℃、-80℃または-120℃)などに入れられ得る。凍結培地は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及び/または塩化ナトリウム(NaCl)、及び/またはデキストロース、及び/または硫酸デキストラン及び/またはヒドロイエチルデンプン(hydroyethyl starch)(HES)を、約6.0~約6.5、約6.5~約7.0、約7.0~約7.5、約7.5~約8.0または約6.5~約7.5のpHを維持するための生理的pH緩衝剤とともに含有することができる。凍結保存γδT細胞は、解凍して本明細書に記載の抗体、タンパク質、ペプチド、及び/またはサイトカインでの刺激によってさらに処理することができる。凍結保存γδT細胞は、解凍して本明細書に記載のウイルスベクター(レトロウイルス及びレンチウイルスベクターを含む)または非ウイルス手段(RNA、DNA及びタンパク質を含む)で遺伝子組換えすることができる。改変γδT細胞をさらに凍結保存して、凍結培地中1mL当たり少なくとも約10、10、10、10、10、10、10、10、10、または少なくとも約1010細胞で少なくとも約1,5,10、100、150、200、500バイアルの量の細胞バンクを作製することができる。凍結保存細胞バンクはその機能を保持し得、解凍してさらに刺激及び増殖させることができる。いくつかの態様において、解凍した細胞を好適な密閉容器内、例えば細胞培養バッグ及び/またはバイオリアクターなどで刺激及び増殖させて、アロジェニック細胞製品としての細胞の量を生成することができる。凍結保存γδT細胞は、低温保存条件下で少なくとも約6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、13か月、15か月、18か月、20か月、24か月、30か月、36か月、40か月、50か月、または少なくとも約60か月間その生物学的機能を維持することができる。いくつかの態様において、製剤に保存剤を用いない。凍結保存γδT細胞は、アロジェニック汎用細胞製品として解凍して複数の患者に注入することができる。
【0118】
本発明は以下の実施例を参照することによってより深く理解され得るが、実施例により特許請求の範囲を限定する意図はない。
【実施例
【0119】
実施例1.一次細胞単離
アフェレーシス機器を用いて一次ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を健康なドナーから収集する。PBMCをFicolll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences AB, Uppsala, スウェーデン)システムまたは類似のシステムで精製する。その後、細胞を適切な成長培地に再懸濁する。
【0120】
あるいは、末梢血、臍帯血、骨髄、健康組織、または疾患を患っている組織、例えば癌組織などから一次ヒト細胞を収集する。
【0121】
実施例2.健康なドナー由来の組織
健康なドナー由来の新鮮組織をCooperative Human Tissue Network(CHTN)から入手し、RPMI-1640培地に入れ実験室に輸送する。組織をメスで1~3mm断片に切断する。GlutaMAX、25mM HEPES pH7.2、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシン及び10%ヒトAB血清ならびに100IU/mlのrhIL-2を追加した2mLのRPMI-1640中の2~5断片/ウェルを24ウェルプレート(Costar)に入れるか、または後述のように消化する。プレートを37℃、空気中5%COで加湿インキュベーター内でインキュベートする。1日おきに培養物を検査してリンパ球の増殖を監視する。培養開始後7日ごとにすべてのウェルで培地の半分を交換する。密集したリンパ球のカーペットが断片の周りを覆うか、または後述のように消化した組織に由来するリンパ球集団が適切な濃度に達したら、リンパ球を収集する。
【0122】
実施例3.組織の酵素消化
健康なドナー由来の新鮮組織サンプルをCooperative Human Tissue Network(CHTN)から入手し、RPMI-1640培地に入れ実験室に輸送した。Liberase(商標)DL Research Grade(Sigma Aldrich Co., St. Louis, MO)、またはLiberase(商標)TM Research Grade(Sigma Aldrich Co., St. Louis, MO)の2つの酵素ブレンドを用いて、リンパ球を酵素消化によって単離した。組織を2~3mmの断片に切断し、37℃、5%CO2で1時間消化した。消化した細胞懸濁液を40μmフィルターに通し、スピンダウンしてRPMI-1640培地で洗浄した。細胞を計数し、10%ヒトAB血清(Corning)及び100IU/mlのrhIL-2を追加したRPMI培地(GIBCO BRL)に再懸濁した。収集した細胞集団を24ウェル組織培養プレートに0.5~1×10細胞/mlで接種した。細胞が1.5×10細胞/mlの濃度を超えた場合、細胞をRPMI-IL2含有培地に分割した。
【0123】
実施例4.腫瘍検体の培養
結腸、乳房、腎臓、頭頚部、口腔、膵臓及び肝臓のものを含む原発性及び転移性癌の患者由来の新鮮腫瘍検体をCooperative Human Tissue Network(CHTN)から入手し、RPMI培地に入れ実験室に輸送した。腫瘍検体をメスで1~3mm断片に切断した。GlutaMAX、25mM HEPES pH7.2、100U/mlペニシリン、100U/mlストレプトマイシン及び10%ヒトAB血清ならびに100IU/mlのrhIL-2を追加した2mlのRPMI-1640中の2~5断片/ウェルを24ウェルプレート(Costar)に入れた。プレートを37℃、空気中5%COで加湿インキュベーター内でインキュベートした。1日おきに培養物を検査してリンパ球の増殖を監視した。培養開始後7日ごとにすべてのウェルで培地の半分を交換した。密集したリンパ球のカーペットが断片の周りを覆ったら、リンパ球を収集した。
【0124】
実施例5.新鮮腫瘍検体の酵素消化
結腸、乳房、腎臓、頭頚部、口腔、膵臓及び肝臓のものを含む原発性及び転移性癌の患者由来の新鮮腫瘍検体をCooperative Human Tissue Network(CHTN)から入手し、RPMI培地に入れ実験室に輸送した。Liberase(商標)DL Research Grade(Sigma Aldrich Co., St. Louis, MO)、またはLiberase(商標)TM Research Grade(Sigma Aldrich Co., St. Louis, MO)の2つの酵素ブレンドを用いて、リンパ球を酵素消化によって単離した。組織を2~3mmの断片に切断し、37℃、空気中5%COで1時間消化した。消化した細胞懸濁液を40μmフィルターに通し、スピンダウンしてRPMI-1640培地で洗浄した。細胞を計数し、10%ヒトAB血清(Corning)及び100IU/mlのrhIL-2を追加したRPMI培地(GIBCO BRL)に再懸濁した。収集した細胞集団を24ウェル組織培養プレートに0.5~1×10細胞/mlで接種した。細胞が1.5×10細胞/mlの濃度を超えた場合、細胞をRPMI-IL2含有培地に分割した。
【0125】
実施例6.例示的な血清添加培地での一次細胞の培養
Ficoll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences PA, 米国)を用いて健康なドナーに由来するバフィーコートから分離することによってPBMC集団を得た。24ウェル組織培養プレートにおいて、10%ウシ胎児血清(Gibco)、2mmol/L L-グルタミン、100U/mL ペニシリン、100U/mL ストレプトマイシン、及び100rhIL-2/mlを追加したRPMI-1640(Corning CellGro)中で、1×10細胞/mLでPBMCを培養した。
【0126】
末梢血、臍帯血、骨髄、健康組織、または疾患を患っている組織、例えば前述の癌組織などから収集した一次細胞を成長させるために、類似の培養条件を用いることができる。
【0127】
実施例7.例示的な無血清培地での一次細胞の培養
Ficoll-Paque(商標)PLUS(GE Healthcare Bio-Sciences PA, 米国)を用いて健康なドナーに由来するバフィーコートから分離することによってPBMC集団を得た。24ウェル組織培養プレートにおいて、CTS-OpTmizerサプリメントを含むCTS無血清培地中で、1×10細胞/mLでPBMCを培養した。
【0128】
末梢血、臍帯血、骨髄、健康組織、または疾患を患っている組織、例えば前述の癌組織などから収集した一次細胞を成長させるために、類似の培養条件を用いることができる。
【0129】
実施例8:接着性単球及びマクロファージの除去
PMBCを前述のアフェレーシス法で収集し、低張処理またはFicoll勾配遠心分離を用いた密度分離によって赤血球を除去する。赤血球不含PBMCをラージスケール組織培養容器中、例えば10スタックまたは40スタックCell Factory(Nunc)、ローラーボトル(Nunc)などでインキュベートする。マクロファージ及び単球を含む接着性集団は一般に細胞培養容器の表面に付着したままとなる。懸濁集団中で成長した細胞集団はγδT細胞が豊富である。およそ10、10または1010PBMCをCD4及びCD8でコーティングされた鉄含有マイクロビーズ(例えばMiltenyi Biotechマイクロビーズ)でインキュベートする。インキュベートした細胞集団を磁場中に流し通すと、CD4及びCD8T細胞がそこに留まる。「フロースルー」細胞集団はγδT細胞が豊富である。
【0130】
実施例9:単球及びマクロファージの除去
PMBCを前述のアフェレーシス法で収集し、低張処理またはFicoll勾配遠心分離を用いた密度分離によって赤血球を除去する。赤血球不含PBMCをラージスケール組織培養容器中、例えば10スタックまたは40スタックCell Factory(Nunc)、ローラーボトル(Nunc)などでインキュベートする。赤血球除去PBMCをグラスウール充填カラムに流すことによって単球及びマクロファージを除去する。「フロースルー」細胞集団はさらなる処理のためのγδT細胞が豊富である。
【0131】
実施例10:γδT細胞の富化
PMBCを前述のアフェレーシス法で収集し、低張処理またはFicoll勾配遠心分離を用いた密度分離によって赤血球を除去する。赤血球不含PBMCをラージスケール組織培養容器中、例えば10スタックまたは40スタックCell Factory(Nunc)、ローラーボトル(Nunc)などでインキュベートする。実施例8または実施例9に記載した方法のいずれかによって単球及びマクロファージを除去する。およそ10、10または1010PBMCをCD4及びCD8でコーティングされた鉄含有マイクロビーズ(例えばMiltenyi Biotechマイクロビーズ)でインキュベートする。インキュベートした細胞集団を磁場中に流し通すと、CD4及びCD8T細胞がそこに留まる。「フロースルー」細胞集団はγδT細胞が豊富である。不要な細胞、例えばNK、γδT細胞、B細胞、単球及びマクロファージなどは、不要な細胞型を対象とする抗体のカクテルを用いた免疫磁気ビーズ分離(例えばMiltenyi Biotech AutoMACSシステム)によって除去する。
【0132】
あるいは、NK、abT細胞、B細胞、単球及びマクロファージ上の表面受容体を対象とする四量体抗体複合体または二重特異性抗体を用いることによって、不要な細胞型を除去する。
【0133】
実施例11.抗体による一次細胞からのγδT細胞の単離
一実施例では、細胞表面マーカーのポジティブ(すなわちγδTCR)またはネガティブ(すなわちαβTCR、CD4、CD8、CD56)発現に基づいて、フローサイトメトリーソーティングで一次培養物から天然γδT細胞を単離する。
【0134】
実施例12.原発性腫瘍からのγδT細胞の単離
新たに採取された腫瘍検体をNCI Cooperative Human Tissue Network(CHTN)から入手した。肝臓転移結腸腺癌(TIL1)及び腎腫瘍(TIL2)がRPMI-1640培地に入れて輸送された。平刃を用いて腫瘍組織を2mmの大きさの小片に細断し、その後、RPMI及び3000ユニットのDNase中2mLのLiberase酵素カクテル(Sigma Chemical Co., St. Louis, MO)で記載したように消化した。消化後に腫瘍を滅菌ガーゼ40μmナイロンメッシュに通して濾過し、RPMI-1640で2回洗浄した。細胞を計数し、L-グルタミン、及び100U/mLのrhIL-2を追加した10%ヒトAB血清を含有するRPMI-1640中1×10/mlとして24ウェルプレートで培養した。培養6日後に腫瘍浸潤リンパ球を収集した。フローサイトメトリー抗δ1TCR(FITC結合抗Vδ1TS8.2(Thermo Fisher)及び抗Vδ2 B6(Biolegend)によってγδTリンパ球の存在を分析した。データはFlowJoソフトウェアで分析した。
【0135】
図4は、肝臓転移結腸腺癌(TIL1)及び腎腫瘍(TIL2)から単離したγδ1及びγδ2リンパ球の成長を図示するグラフを示す。これらのリンパ球はCCR4及びCCR7を発現することがわかっている。図4に示すように、Vδ1サブセットが両タイプの腫瘍から単離された主な集団であった。
【0136】
実施例13.γδT細胞の刺激及び増殖
サイトカイン(IL-2、IL-4、IL-7、IL-15、IL-12、IL-21、IL-23またはIL-33)、成長因子(インスリン及びトランスフェリン、インスリン様成長因子)、アルブミン、脂質(コレステロール、脂質溶液、脂質前駆体)、ビタミン、銅、鉄、セレン、タンパク質加水分解物、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、及び剪断保護剤(Pluronic F-68)を含有する無血清培地、例えばEx-Vivo10、Ex-Vivo15、Ex-Vivo20、AIMV培地、Optimizer CTSなどの中でγδT細胞を刺激して増殖させる。
【0137】
γδT細胞の生物学的機能を維持すると同時に、懸濁培養(例えばWAVEバイオリアクター)において10~2×10細胞/mLの高い細胞密度のγδT細胞の成長を補助するために、この実施例に記載の無血清培地に添加剤を追加することができる。
【0138】
実施例14.無血清培地中でのロバストなγδT細胞成長をもたらす添加剤
ロバストなγδT細胞成長をもたらす追加の添加剤には、塩化カルシウム、無水物、硝酸カルシウム、硫酸第二銅、五水和物、クエン酸第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、及び/またはプトレシンが含まれていた。
【0139】
血清の代わりとなる低濃度の元素成分を供給するために無血清培地に微量金属を添加したが、これにはパラモリブデン酸アンモニウム、バナジウム、マンガン、ニッケル、亜セレン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、九水和物、塩化第一スズ、塩化アルミニウム、酢酸バリウム、塩化カドミウム、塩化第二クロム、コバルト、二酸化ゲルマニウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化ルビジウム、硝酸銀、フッ化ナトリウム、及び/または塩化ジルコニルが含まれる。
【0140】
細胞培養培地に添加される他の成分でγδT細胞のロバストな成長を補助するものは、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、ベタインタウリン、フォリン酸、エタノールアミン、リノール酸、オレイン酸ヒドロコルチゾン、ピルビン酸、植物加水分解物、酵母加水分解物、及び/またはベータ-メルカプトエタノールである。
【0141】
ロバストなγδT細胞成長を促進するために添加されるビタミンとしては、ビオチン(B7)、D-パントテン酸カルシウム(B5)、塩化コリン、シアノコバラミン(B12)、葉酸(B9)、i-イノシトール(ミオイノシトール)、ナイアシンアミド(B3)、ピリドキサール、一塩酸塩、ピリドキシン、一塩酸塩(B6)、リボフラビン(B2)、チアミン、及び/または一塩酸塩(B1)が挙げられる。
【0142】
実施例15:増殖したγδT細胞の同定:免疫表現型
異なる集団を区別する細胞表面マーカーに対するFACS染色によって増殖したT細胞集団を同定する。2%ウシ胎児血清を含有するHEPES緩衝生理食塩水(HBSS)中で細胞を1回洗浄し、4℃で30分間適量のMAbとともにインキュベートしてHBSSで再び洗浄した。簡潔に述べると、CD2、CD3(BioLegend、クローンOKT3)、CD4(BioLegend、クローンOKT4)、CD7、CD8(BioLegend、クローンRPAT8)、CD11a、CD16、CD18、CD19、CD27、CD28、CD38、CD45RA、CD56、CD57、CD69、CD71、CD95、CD107、ICAM-1、MICA/B、NKG2D DR5、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5 CCR6、CCR7、CCR10、CXCR1、CXCR2、CXCR3、CXCR5、CXCR5、CXCR6、CXCR7、IL-2R、IL-7R、Ki67、L-セレクチン、VLA-4、JAML、PD1、PDL1、CTLA-4、Ox40、TCR Vδ1(ThermoFisher Scientific、クローンTS8.2)、またはTCR Vδ2(BioLegend、クローンB6)を対象とするフルオロイソチオシアネート(FITC)またはフィコエリスリン(PE)結合MAbを含有する100ulの量のFACS染色培地(FSM;2%ウシ胎児血清を含有するHBSS)中で1×10細胞を染色する。
【0143】
表面マーカーに加えて、サイトカイン分泌、細胞内サイトカイン及び/または膜結合型サイトカインを同定し、これらにはTNF-α IFN-γ、GM-CSF、IL-1、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-17、またはIL-21が含まれる。
【0144】
zombie violet(BioLegend)アミン染色色素の不在または少ない取り込みによって生細胞を判定した。各抗原の表面表現のポジティブ及びネガティブのゲート境界線を定めるために蛍光マイナスワン(FMO)対照を用いる。Sony SH800サイトメーターで染色細胞を収集し、FlowJo v10.1を用いてデータを分析する。フローサイトメトリーデータをドットプロットとして可視化する。
【0145】
実施例16.血清含有培地及び無血清培地でのδ2T細胞増殖
血清含有培地(R2:RPMI+10%FBS)及び無血清培地(AIMV+ウシアルブミン;CTS無血清サプリメント)において、異なるδ2T細胞の成長及び増殖速度を評価した。図5はδ2T細胞の成長を図示するグラフを示す。本実験に用いたすべての培地は100IU/mLのIL-2、2mMのグルタミン及び1×ペニシリン/ストレプトマイシンを含有していた。さらに、0日目に1、5及び20μMのゾレドロン酸で細胞を刺激した。ゾレドロン酸のさらなる添加はなしで2~3日ごとに培地を補充した。13日の期間の後の各処理の10PBMCから増殖したδ2T細胞の総数及び増殖倍率を図5に示す。
【0146】
実施例17.抗γδTCR抗体の遮断及び競合アッセイ
図6及び図7は抗γδTCR抗体遮断実験を図示するグラフを示し、図8及び図9は抗体競合アッセイを示す。図6及び図7は遮断実験の結果を示すが、この実験ではPBMCを様々な抗体、すなわち5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B3、B6、TS-1、γ3.20、IMMU510、または11F2でプレインキュベートした。その後、細胞を洗浄して二次TS8.2-FITC(δ1特異的)またはB6-PE(δ2特異的)抗体で染色した。フローサイトメトリーによってPBMCサンプルを分析した。幾何平均蛍光強度(gMFI)の低下を用いて遮断の程度を評価した。TS8.2-FITC(図6)及びB6-PE(図7)に対して阻害のレベルを示す。
【0147】
1、2または10μgの非標識競合抗体(IgG1、5A6.E9、B1、TS8.2、TS-1、R9.12、IMMU510、または11F2)及び0.2μgのFITC結合抗Vδ1TCRクローンTS8.2(図8)または抗Vδ1TCRクローンTS-1(図9)で同時に、氷上で30分間1×10細胞をインキュベートすることによって、γδ1TCR発現細胞株BE13上への結合に対するMAb TS-1及びTS8.2と抗体5A6.E9、B1、IMMU510、R9.12-2、または11F2との間の競合調査を行った。幾何平均蛍光の最大変化で割った幾何平均蛍光の変化によって競合率(%)を計算した。図9に示すように、TS-1抗体はTS8.2抗体自身と同じくらい効果的にTS8.2の細胞への結合と競合した。他の抗体はどれもTS8.2結合と競合することができなかった。TS8.2抗体はTS-1の細胞への結合と競合したが、TS-1抗体自身ほど効果的ではなかった。ある程度のTS-1結合との競合が11F2抗体についても観察された。これらの結果は、TS-1及びTS8.2抗体は両方ともγδ1と結合するが、おそらく同一エピトープではないことを示す。
【0148】
実施例18.腫瘍検体の酵素消化及び特異的γδエピトープに対する抗体でのγδT細胞増殖
24ウェルプレートを0.5~1μgの抗γδTCR抗体でコーティングした。消化した腫瘍組織から実施例10に記載したように単離した細胞を計数し、10%ヒトAB血清及びrhIL-2(100IU/mL)を追加したRPMI1640培地中0.5~1×10細胞/mlで抗体でコーティングしたウェルに接種した。培養物を37℃、5%COで74~21日間インキュベートした。
【0149】
実施例19.腫瘍検体の酵素消化及び特異的γδエピトープに対する抗体でのγδT細胞増殖
実施例5に記載したように消化した腫瘍組織から単離した細胞を計数し、10%ヒトAB血清及びrhIL-2(100IU/mL)を追加したRPMI1640培地中0.5~1×10細胞/mlで、三次元細胞培養プレート(Corning(登録商標)Costar(登録商標)超低接着マルチウェルプレート)の抗体でコーティングしたウェルに接種した。培養物を37℃、5%COで74~21日間インキュベートした。
【0150】
実施例20.PBMC由来のγδT細胞の活性化及び増殖
活性化剤は、可溶性作用物質、または培養ウェルに固定化した作用物質のいずれかとして試験した。1×10細胞/mlの細胞密度で24ウェルプレート中で培養したヒトPBMCに、可溶性抗原及び抗体を0.1~5μg/mlの最終濃度で添加した。あるいは、24ウェル培養プレートのウェルをコーティングすることによって、抗γδTCR抗体を固定化した。抗γδTCR抗体は0.1~10μg/mlの濃度で添加した。PBSでウェルを2回洗浄し、その後、PBMCをプレートに移して、上記のようにRPMI-1640、AIM-VまたはCTS-OpTmizer培地のいずれかで培養した。培養培地には100IU/mLのrhIL-2を追加した。
【0151】
実施例21.PBMC由来のγδT細胞の活性化及び増殖
ドナーB3由来の100万PBMCを、24ウェルプレートに1ウェル当たり0.5、1、及び2μgで固定化した様々な抗体で0日目に刺激した。試験した抗体は、マウスIgG1アイソタイプ対照クローンMG1-45(Bio Legend)、UCHT-1、5A6.E9、B1、TS8.2、15D、B6、B3、TS-1、γ3.20、7A5、及びゾレドロネートであった。図10及び図11は、それぞれPBMC由来のδ1及びδ2T細胞の活性化及び増殖を図示するグラフを示す。細胞は、10%FBS、100IU/mL rhIL-2、グルタミン及び1×ペニシリン ストレプトマイシンを含むRPMIを含有する培地中で活性化及び増殖させた。最初の刺激後7日目に、細胞を新鮮な培地に継代し、同一濃度の同一抗体で新たにコーティングした24ウェルプレートに入れた。再刺激した培養物の培地は13日目まで2~3日ごとに補充し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0152】
図12は成長及び増殖の13日後のδ1T細胞の総数を示し、図13は成長及び増殖の13日後のδ2T細胞の総数を示す。γδT細胞の総数は、δ1及びδ2T細胞のパーセンテージ(それぞれTS8.2-FITC及びB6-PEを用いたフローサイトメトリーによって求めた)に全生細胞数を掛け、非特異的マウスIgG MG1-45によって活性化したδ1及びδ2T細胞からの陰性対照の値を引くことによって計算した。
【0153】
抗体を培養プレートに固定化した場合のみ細胞増殖のための活性化が得られ、これらの抗体を可溶性形態で培養物に加えた場合には、全PBMC細胞集団における場合を含め、増殖は検出されなかった(データは図示せず)。汎γδTCR MAb 5A6.E9及びB1はδ1及びδ2細胞集団両方の成長を活性化した。MAb 15D及びB6はδ2細胞集団の選択的成長を誘発した。MAb TS8.2及びTS-1はδ1細胞集団の選択的成長を誘発した。興味深いことに、MAb TS-1及びTS8.2は細胞表面TCRへの結合において互いに競合するにもかかわらず、TS-1誘発増殖は3倍高かった。同様に、異なる程度のδ2細胞集団増殖誘発が抗体B1、5A6.E9、15D、B6、及びB3の間で検出された。このデータは、γδ細胞集団の特異的かつロバストな増殖を誘発するためには独特のエピトープが必要であることを示す。
【0154】
実施例22.活性化γδTCR MAbのエピトープマッピング
【0155】
γδTCR上の特異的活性化エピトープを以下に記載するようにTS-1 MAbについて同定する。同様のステップを行い、本明細書に記載の他のγδ活性化抗体の活性化エピトープを同定する。
【0156】
まず、TS-1によって認識される特異的γδ組換えを同定する。ヒトT細胞急性リンパ芽球性白血病γδ細胞株MOLT-13(Brenner et al., US005260223A)でのマウスの免疫化によってTS-1抗体(Thermo Fisher Scientific)を生成した。本発明者らはMOLT-13 γδTCR鎖を配列決定し、Vδ1Dδ3Jδ1遺伝子セグメントからなる特異的δ鎖再構成を同定した。TS-1結合特異性がVδ1の可変領域に対するものであるか、または結合部位がVδ1-Jδ1接合部を含むTCR CDR3領域に及ぶのか判定するために、及びエピトープ認識におけるγ鎖の役割を評価するために、γ及びδ鎖の広範囲に及ぶセットをpCI発現ベクター(Promega)中にクローニングする。異なる設計のγ及びδTCR鎖をIDTから合成gBlocksとして取り寄せた。NheI-NotIで消化した合成遺伝子をpCI-neoベクター中にクローニングする。個々の細菌コロニー由来のプラスミドDNAの配列をシーケンシングによって確認する。
【0157】
Jδ領域において異なっている3つのVδ1遺伝子セグメントを設計する(Jδ1、Jδ2及びJδ3)。さらに、Vδ2Jδ1及びVδ3Jδ1鎖を合成遺伝子として取り寄せ、同様にクローニングした。Vγ2、Vγ3、Vγ4、Vγ5、Vγ8、Vγ9及びVγ10遺伝子セグメントを用いてγTCR鎖と共形質移入する5つのδTCR鎖(Vδ1Jδ1、Vδ1Jδ2、Vδ1Jδ3、Vδ2及びVδ3)。35組の可能なペアの組合せのγδTCRを形質移入して293形質移入細胞の表面上に発現させる。Lipofectamine2000(Invitrogen)を用いて、γδ鎖をコードするpCIベクターでの293細胞の一過性形質移入を行う。様々な特異性の抗γδTCR抗体のセットを用いたフローサイトメトリーによって、形質移入293細胞をγδTCR発現について同定する。FACSCantoフローサイトメーター(BD Biosciences)でFACS分析を行い、FlowJoソフトウェア(Tree Star)を用いて分析する。TS-1 mAbによって認識される特異的γδTCR鎖ペアを同定したら、特異的結合エピトープが直線状であるか、または立体構造エピトープであるか特徴を明らかにする。
【0158】
変性または天然TCRに結合する抗体の能力をウェスタンブロット解析によって確認する。プロテアーゼインヒビターのカクテルを含む氷冷改質RIPA溶解バッファー(Sigma)中でのホモジナイゼーションによって、TCRを発現している細胞の細胞ライセートを調製する。ブラッドフォードアッセイ(Bio-Radタンパク質アッセイ、マイクロプレート標準アッセイ)によってタンパク質濃度を測定する。5%b-メルカプトエタノールを含有する1×SDSローディングバッファー(50mM トリス-HCl pH6.8、12.5%グリセロール、1%ドデシル硫酸ナトリウム、0.01%ブロモフェノールブルー)中で細胞ライセートを5分間煮沸し、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を行う。電気泳動後、分離された分子をPVDF膜上に転写する。次に、膜をブロッキングして抗体とともにインキュベートする。蛍光イメージングシステムによる検出のために二次蛍光標識抗体を用いる。
【0159】
δ鎖への結合がウェスタンブロット解析によって検出された場合、反応鎖のポリペプチド配列に由来する合成による膜に結合した部分的に一致する一連のペプチドを用いる。(JPT peptide technology GmbH ドイツ)。ペプチドアレイは、1残基ずつずれてVδ1配列全体をカバーする部分的に一致する12マーペプチドからなる。スポットスキャン分析を以下のように行う。TBSで膜を3回洗浄し、ブロッキングバッファー(TBST(TBS中0.05%Teewn20)中5%低脂肪乳)で一晩ブロッキングする。TBSで膜を洗浄し、ブロッキングバッファーで1μg/mlに希釈したTCS-1 MAbとともに室温で3時間インキュベートする。
【0160】
TBSで膜を3回洗浄した後、ブロッキングバッファーで希釈したHRP結合ヤギ抗マウスIgG(Jackson immunReaserch)で結合したMAbを室温で2時間検出する。最後にTBSで膜を3回洗浄し、シグナル発生溶液でインキュベートする。室温で10~40分間呈色反応を生じさせる。結合部位は陽性ペプチドスポットの配列で表される。
【0161】
実施例23.立体構造エピトープのエピトープマッピング
抗体の結合エピトープの適切なフォールディング/組立てにジスルフィド結合の形成を必要とするエピトープは、立体構造エピトープとして知られている。重要な結合残基の特定は、反応性Vデルタ鎖の部位特異的変異誘発によって行うことができる。変異鎖を特異的抗体に対する反応性の喪失について試験する。結合部位に包含される残基は、さもなければ非反応性である鎖における重要な残基の変異誘発によってTS-1抗体の結合が復元されることとなる場合に特定することができる。
【0162】
反応性TCR鎖のランダムAlaスキャンを用いて、TS-1 mAbによる結合親和性の変化、認識の喪失、または親和性の増加を評価することができる。
【0163】
実施例24.γδT細胞活性化及び増殖の新規調節因子のエピトープマッピング
CD2エピトープ:
【0164】
CD2分子は2つの細胞外免疫グロブリンスーパーファミリードメインのIg様V型ドメイン及びIg様C型ドメインからなるが、これについて3つの主要な免疫原性領域が記載されている(Davis et al., Immunol Today 1996; 17: 177-187)。領域1及び2は第1ドメインに位置し、領域3は第2ドメインに位置している。領域1を認識するモノクローナル抗体(MAb)は休止及び活性化T細胞の両方に結合し、CD58のCD2への結合を強く阻害することができる。領域2を認識するモノクローナル抗体は同様の結合特性を有するが、CD58結合の遮断には効果的ではない。領域3を認識するモノクローナル抗体は活性化T細胞上のCD2のみを認識し、CD58結合を遮断しない。
【0165】
CD2の天然リガンドであるCD58に対する競合アッセイ及び活性化アッセイによって、CD2アゴニストMAbの結合エピトープのマッピングを行う。さらに、CD58の結合の喪失につながる重要なCD2結合残基の部位特異的変異誘発を、MAb結合について試験する。変異の例としては、CD2配列の67位(KからR)、70位(QからK)、110位(YからD)及び111位(DからH)における変異誘発が挙げられる。結合エピトープのマッピングのための構築体を設計するために、VectorNTI(Thermo Fisher)を用いたヒト及びマウスCD2の配列アラインメントを行う。アラインメントによりヒトとマウスとの間で50%の配列相同性が示される。ヒトCD2の細胞外ドメインに結合するMAbはマウスCD2と交差反応しないと予想される。結合エピトープを同定するために、本発明者らはマウス/ヒトキメラCD2構築体のドメインスワッピングを生じさせる。そのような構築体において、CD2の細胞外ドメインを発現する発現ベクター中で、ヒトN末端Ig様V型ドメイン(残基25~128)をマウス残基(23~121)で置換する。キメラcDNA種をCHOまたは293細胞に一過性形質移入する。ヒト野生型CD2及びヒトマウスキメラ構築体をCHO細胞の表面上に発現させる。キメラCD2細胞表面発現をFACScantoによって分析する。キメラ分子への結合または結合の喪失をフローサイトメトリーによって検出し、活性化アッセイによって確認する。
【0166】
NKG2Dエピトープ:
【0167】
NKG2Dに対する活性化MAbのエピトープマッピングを、そのリガンド(MICA/MICB)の1つ以上とのNKG2D相互作用を減少もしくは遮断する抗hNKG2D抗体の能力によって、またはhNKG2Dリガンド相互作用を遮断することが知られている抗体との競合によって試験する。NKまたはT細胞のNKG2D媒介活性化を減少させる能力によってアゴニストMAbを同定する。これは、典型的な細胞傷害性アッセイ、リガンド遮断抗体の添加、またはMICA発現腫瘍細胞のγδT細胞媒介死滅の投与量依存的な遮断によって評価することができる。
【0168】
CD27エピトープ:
【0169】
CD27に対するアゴニスト抗体のエピトープマッピングを、機能アッセイ及びヒトCD27とその天然リガンドのヒトCD70との間の相互作用を遮断する能力によって行う。CD27発現細胞を5μgのMAbとともに4℃で30分間インキュベートし、その後、1μgのビオチン化CD70をチューブに添加する。混合物を4℃でさらに15分間インキュベートした後洗浄する。次に、ストレプトアビジン-PEの混合物(CD70リガンド結合の検出のため)とともに細胞を30分間インキュベートし、その後、複数の洗浄ステップ及びFACSを用いた分析を行う。CD70結合の遮断は、MAb及びCD70が同一エピトープを共有することを示す。
【0170】
実施例25:増殖したγδT細胞集団のTCR Vδレパートリーの同定
個々のドナー由来の増殖したγδT細胞のクローン多様性をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で評価する。健康なドナー由来の新たに単離したPBMCのクローン多様性を、抗TCR特異的抗体、リガンド、及びレクチンを含む本明細書に記載の異なる活性化剤で7及び13日間刺激した培養物のクローン多様性と比較する。
【0171】
上述のγδT細胞由来のRNAを抽出し、cDNAに逆転写し、Vδ1、Vδ2、及びVδ3特異的プライマーペアを用いてPCRによって増幅する。Vδ1フォワードプライマー(5’ATGCTGTTCTCCAGCCTGCTGTGTGTATTT3’;配列番号1)、Vδ2フォワードプライマー(5’ATGCAGAGGATCTCCTCCCTCATCCATCT3’;配列番号2)及びVδ3フォワードプライマー(5’ATGATTCTTACTGTGGGCTTTAGCTTTTTG3’;配列番号3)をCδリバースプライマー(5’CTTGGGGTAGAATTCCTTCACCAGACAAGC3’;配列番号4)と併せて用いて500bpのDNA断片を増幅した。
【0172】
γ鎖は、Vγ2、Vγ3、Vγ4、及びVγ5(5’GGTGCTTCTAGCTTTCCTGTCTCCTGC3’)、Vγ8(5’ATGCTGTTGGCTCTAGCTCTGCTTCTA3’)及びVγ9(5’ATGCTGTCACTGCTCCACACATCAACG3’)を増幅するためのVγ特異的プライマーを用いて分離RT-PCR反応で増幅した。VγプライマーはCγリバースプライマー(5’GGAAGAAAAATAGTGGGCTTGGGGGAA3’)とペアにする。γリバースプライマーはCγ1及びCγ2のコンセンサス配列を基にした。PCR断片をクローニングし、80種の独立したVγインサートのヌクレオチド配列を得る。Vδ、Dδ及びJδ接合配列をCDR3配列アラインメントとともに解析する。
【0173】
実施例26:γδT細胞の改変のためのMAb及び関連するターゲティング構築体
ヒトCD20遺伝子をcDNAクローン(Origene Technologies, Inc., 6 Taft Court, Suite 100, Rockville, Md. 20850)から得る。フォワードプライマー(5’ATGACAACACCCAGAAATTCAGTAAATGG3’)及びリバースプライマー(5’TCAAGGAGAGCTGTCATTTTCTATTGGTG3’)を用いてCD20遺伝子を増幅する。増幅したCD20cDNAを哺乳類細胞用の高発現ベクターとしてのpCDNA3.4(Thermo Fisher Scientific)に組み込み、宿主細胞としてのCHO細胞に形質移入する。細胞表面上に高いレベルでCD20分子を発現する組換えCHO細胞(CD20/CHO細胞)をFACS分析によって同定する。
【0174】
CD20/CHO細胞を用いて、Jakobovits及びBornstein(Jakobovits Curr. Opin. Biotechnol. 1995 6:561-6; Bornstein et al., Invest New Drugs. 2010 28:561-74.)に記載の完全ヒト抗体を産生するように改変されたBALB/Cマウスまたは遺伝子導入マウスを免疫化する。ヒトCD20への高い親和性及び特異性を有する抗体をFACSアッセイによってスクリーニングする。マウス抗体はCDR移植によってヒト化する(Kim and Hong Methods Mol Biol. 2012;907:237-45)。ヒト重鎖シングルドメイン抗体を産生するように改変したマウスまたはラットからヒトシングルドメインCD20抗体も生成する(Janssens et al., PNAS 2006 vol. 103:15130)。
【0175】
上記の高親和性/特異性CD20抗体をコードする遺伝子を、MSGV1レトロウイルスベクターバックボーンまたはpCAGレンチウイルスベクターにクローニングする。選択したMAbを発現するマウスハイブリドーマまたはヒト化抗体鎖のいずれかからVH及びVLドメインをクローニングする。ここに記載のCD20 MAbでγδT細胞を改変する。
【0176】
実施例27:γδT細胞の改変のためのTCR構築体
NY-ESO-1-MHC特異的ペプチド複合体を発現するTリンパ球から、高反応性αβTCR鎖の配列を含むTCRを発現する構築体を単離する。NY-ESO-1-MHC特異的ペプチド複合体は、様々なNYESO-1発現腫瘍に対する強力なインビトロ及びインビボ抗腫瘍活性を誘発する。
【0177】
高反応性αβTCR鎖は、黒色腫、肉腫患者、またはヒト黒色腫もしくは肉腫から得た患者由来異種移植片を有するマウスから単離する。あるいは、TCRは、NY-ESO-1ペプチドまたはNYESO-1ペプチド複合体を発現するヒト化免疫系を有するように改変したマウスから得る(Gonzales et al., Immunol Res. 2013 57: 326-334; Boucherma etal., J Immuno. 2013. 191; 583-593; Liang-PingL. Et al., Nature Med. 2010, 16:1029-1035を参照)。優性クラスI対立遺伝子HLA-A*02(例えばペプチドSLLMWITQC残基157~167)及び優性HLA-A*01関連ペプチドとの関連でNY-ESO-1のエピトープを認識するT細胞を同定する。
【0178】
1ステップRT-PCRキット(Qiagen Hilden ドイツ)を製造業者の推奨に従って用いた逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって、TCRα及びTCRβ転写物の配列を生成する。第1鎖cDNAを反応性T細胞から単離したRNAから生成する。CTLクローンからTRIzol全RNA単離試薬(Invitrogen Life Technologies)で全RNAを抽出する。34及び35アミノ酸位(カバットナンバリング)のトリプトファン-チロシン残基を中心とするTCRα及びβ鎖V領域の高度保存領域に結合することができ、α及びβ定常領域リバースプライマー(Moonka and Loh Journal of Immunological Methods 169 (1994) 41-51)と併せて用いる一連の縮重プライマーによってTCRα及びβ鎖の増幅を行う。増幅したPCR断片をゲル精製して直接配列決定する。配列情報を用いて個々の全長cDNAのクローニングに適したPCRプライマーを設計する。
【0179】
TCR遺伝子をクローニングしてMSGVベースのレトロウイルスベクターに挿入し、選択したT細胞から全長cDNAを増幅する。MSGV1バックボーンを用いて野生型NY-ESO-1反応性ヒトTCRのα及びβ鎖両方をコードするレトロウイルスベクターを構築する。1つの構築体において内部リボソーム進入部位(IRES)要素を介して、または切断可能なピコロウイルス(picorovirus)ペプチド配列を用いた分離によってTCRα及びTCRβ鎖の連結を行う。
【0180】
前述のLipofectamine2000(Invitrogen)を用いて、またはNucleofector(Lonza)を用いたエレクトロポレーションによって、MMLV gag及びpolタンパク質を安定発現した293細胞に、各MSGV1 TCRベクター及び内因性ウイルスレトロウイルスエンベロープタンパク質をコードするベクターを共形質移入することによってレトロウイルス上清を生成する。形質移入後2日目及び3日目に上清を収集し、10%FCSを含有する新鮮なDMEMで1:1に希釈した。さらなる操作を一切行うことなく、改変γδT細胞はTCRα及びβ鎖をコードする遺伝子を発現することができる。
【0181】
実施例28.αβTCR構築体を有するγδT細胞の改変
標準的な技術を用いて所望の抗原に対して特異的であるものを選択したT細胞から、αβTCR(腫瘍認識部分)を含むポリヌクレオチドをクローニングする。腫瘍認識部分をコードする発現カセットを含むレトロウイルスまたはレンチウイルスによる感染前に、単離した内因性野生型γδT細胞を前述の実施例に記載の方法で少なくとも6×10細胞に成長させる。ウイルス感染の標準的手順を用いてベクター系を野生型γδT細胞に導入することができる。選択マーカーの発現を用いて形質移入に成功した細胞を選択する。
【0182】
改変αβTCRの発現は、フローサイトメトリー及び/または定量的QRT-PCR、ならびに標的細胞での細胞傷害性及びサイトカイン分泌についての機能アッセイによって評価することができる。改変活性化ドメインの発現もフローサイトメトリー及び/または定量的qRT-PCRによって評価することができる。目的の細胞表面マーカーを発現する改変γδT細胞の数をフローサイトメトリーによって測定する。本明細書に記載の好適な方法、例えばCRISPR-Cas、talen、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガー、またはスリーピングビューティートランスポゾン技術などで改変γδT細胞をさらに改変して、HLA遺伝子またはβ2M遺伝子に関連するエキソンを欠失させる。
【0183】
実施例29:CAR及びTCR構築体を有するγδT細胞の改変
腫瘍細胞を特異的に認識し、活性化してこれを死滅させるように改変γδT細胞を誘導することができる標的化部分を発現するレトロまたはレンチウイルスベースのベクターを、γδT細胞に形質導入する。形質導入される標的化部分は、腫瘍特異的表面タンパク質または腫瘍特異的細胞内ペプチドを対象とするMAbを含む。γδT細胞は、ペプチド-MHC複合体を対象とする高親和性TCRによっても改変する。
【0184】
あるいは、非ウイルスベクターでの形質導入によって細胞を改変することができる。
【0185】
実施例30:標的化部分を有する単離γδT細胞の改変
CAR構築体設計は異なる主な機能ドメインを含み、腫瘍細胞に掲示された目的のタンパク質またはMHC結合ペプチドを認識する標的部分、細胞外受容体標的化要素を膜貫通ドメインに連結する短いスペーサーがあり、膜貫通ドメインは細胞膜を横断し、細胞内活性化シグナル伝達ドメインに連結する。
【0186】
γδT細胞の表面上に発現される標的部分受容体は、癌細胞上で発現される標的タンパク質に特異的に結合するように設計される。腫瘍認識部分は、CD19、CD30、CD22、CD37、CD38、CD56、CD33、CD30、CD138、CD123、CD79b、CD70、CD75、CA6、GD2、αフェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、CEACAM5、CA-125、MUC-16、5T4、NaPi2b、ROR1、ROR2、5T4、PLIF、Her2/Neu、EGFRvIII、GPMNB、LIV-1、糖脂質F77、線維芽細胞活性化タンパク質、PSMA、STEAP-1、STEAP-2、メソテリン、c-met、CSPG4、ネクチン4、VEGFR2、PSCA、葉酸結合タンパク質/受容体、SLC44A4、クリプト、CTAG1B、AXL、IL-13R、IL-3R、及びSLTRK6を含む白血病標的に対して設計される。
【0187】
標的部分受容体は、腫瘍細胞の表面上に発現される腫瘍糖タンパク質に特異的な抗体の一部に由来することができるか、または代替として、改変受容体は、公知の特異性を有するTCR受容体、もしくはgp100、MART1、チロシナーゼ、SSX2、SSX4、NYESO-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、MAGEAファミリー遺伝子(例えばMAGE3A、MAGE4Aなど)、KKLC1、変異ras、βraf、p53、MHCクラスI鎖関連分子A(MICA)、MHCクラスI鎖関連分子B(MICB)、HPV、もしくはCMVを含めた、MHC複合体と共同して表面上に提示される細胞内腫瘍特異的抗原に由来する特異的ペプチド配列を認識する抗体に由来することができる。腫瘍認識部分のようなこうした高親和性T細胞受容体は高度な特異性でペプチド-MHC複合体を認識することになる。
【0188】
実施例31:スペーサー及び膜貫通ドメインを有する標的化部分構築体
癌細胞に対する改変T細胞の効力を最適化するために、様々なスペーサーが腫瘍認識部分構築体中に改変されるであろう。各スペーサーのサイズは、標的タンパク質のサイズ、受容体によって認識されるエピトープ、改変腫瘍認識部分のサイズ及び受容体の親和性に応じて異なることになる。立体構造変化に適応することのできるスペーサーは、ヒトIgG、CD8a及びCD4ヒンジ領域の配列を含む。
【0189】
試験するスペーサーは、キメラ受容体に結合親和性の向上をもたらすために異なる長さ(19~9残基)で用いるGly、Ser、及びThrアミノ酸からなる。各構築体のヒンジ及び膜貫通部分は、CD8a配列(ヒトCD8aの残基117~178)、または代替として、CD28膜貫通ドメイン(残基153~179)を有するヒトIgG1ヒンジ-Fc cDNAに由来する。
【0190】
実施例32:共刺激ドメインを有する標的化部分構築体
様々な共刺激ドメインが腫瘍認識部分を含む構築体中に改変されることになる。CD28、4-1BB、CD2、CD27、NKG2D、CD161、CD30、JAML、CD244を含む共刺激ドメインまたはCD100共刺激シグナル伝達ドメインをγδT細胞中に改変して、キメラ受容体を介した活性化を増幅する「二次シグナル」を模倣するが、これによってよりロバストなシグナルがもたらされ、増殖して癌細胞を死滅させる。
【0191】
細胞質領域は、CD28(残基180~220)、CD137(残基214~225)、ICOS(残基165~199)、CD27(残基213~260)、NKG2D(残基1~51)、JAML(残基297~394)、CD2(残基236~351)、CD30(残基408~595)、OX40(残基1~23)、HVEM(残基224~283)、またはCD46分子を含むαβ及び/またはγδT細胞共刺激分子のエンドドメインから誘導する。細胞傷害性の誘発における改変γδT細胞集団の活性化の程度、ならびにインビトロ及びインビボでのサイトカイン分泌の程度に基づいて最適な構築体を選択する。
【0192】
実施例33:CD3ζ活性化ドメインを含む標的化部分
3つのITAMドメイン(ITAM1:APAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKR、(配列番号5);ITAM2:PQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGM、(配列番号6);及びITAM3:ERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQ、(配列番号7))を含む細胞内CD3ζ(残基52~164)をクローニングした。
【0193】
プライマー5’AGAGTGAAGTTCAGCAGGAGCGCA-3’(配列番号8)及びリバースプライマー5’CTCGAGTGGCTGTTAGCCAGA-3’(配列番号9)を用いて、TCRζの細胞内ドメインを増幅した。
【0194】
CAR構築体をマルチステップオーバーラップ伸長PCRによって生成する。オーバーラップ伸長ポリメラーゼ連鎖反応プロトコールを用いて、Platinum Taq DNAポリメラーゼ高忠実性キット(Invitrogen)を結合させたプライマーによって誘発される別のPCR反応で生成物を融合した。全長構築体をコードするDNAをMSGV1レトロウイルスベクター中に連結した。この構築体によりCD3ζ活性化ドメインを含むCAR標的化部分が得られる。
【0195】
実施例34:2つ以上の認識部分を有するγδT細胞の改変
同一の細胞内腫瘍特異的タンパク質を対象とするTCR及びMAbを含めた腫瘍認識部分を含む2つ以上の構築体をγδT細胞に形質導入する。異なるMHCハプロタイプ、例えばA2及びA1などとの関連で特異的ペプチドを認識するように各構築体を選択し、同一腫瘍細胞上に発現される異なる標的を対象とする抗体または同一標的上の異なるエピトープを対象とする抗体である。
【0196】
実施例35.改変γδT細胞のインビトロ増殖
適切な組織培養培地、例えば前述の実施例に記載の組織培養培地などで改変γδT細胞を成長及び増殖させる。外部抗原による刺激有りまたは無しで、かつAPCまたはアミノホスフェートとの共培養なしで、5%COインキュベーター中、37℃で約1×10まで指数関数的に改変γδT細胞を成長させる。
【0197】
実施例36:活性化した改変γδT細胞及び非改変γδT細胞によって放出されるサイトカインの機能特性評価
IFN-γ、TNF-α(R&D Systems)、IL-1β、IL-2、(Biosource International)、IL-12(Diaclone Research)、及びIL-18の発現は、市販の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットを用いて測定される。酵素結合免疫吸着アッセイは製造者の指示に従って実施される。サイトカインの量は、0.05M炭酸水素ナトリウムバッファー中1μg/mlの濃度で一晩4℃で、ヒトサイトカインに対するモノクローナルマウスIgG1でコーティングしたポリスチレン96ウェルプレート(Maxisorb、Nunc)中で、異なる時点(24~72時間)において測定される。Tween20を含有するPBSで洗浄した後、プレートをPBST中3%ウシ血清アルブミン(BSA、重量/体積、Sigma)で1時間37℃でブロッキングする。標準試料(R&Dから入手できる組換えヒトサイトカイン)及びγδ培養物サンプルからの上清を添加し、プレートを室温で2時間インキュベートする。組換えヒトサイトカイン標準試料に対して対応する抗体ペアで検出。
【0198】
実施例37.共刺激剤の同定
全PBMCまたは富化改変及び非改変γδT細胞集団に共刺激剤を添加することによって、改変及び非改変γδT細胞の活性化、増殖及び生存力を補助する様々な共刺激剤の能力を試験する。抗γδTCR特異的MAbを含む様々な活性化剤に共刺激剤を可溶性または固定化形態で添加する。前述の実施例に記載の健康なドナーのバフィーコートから精製されたヒトPBMCまたは組織から単離されたリンパ球を、24ウェルフラットボトム組織中で100IU/mL rhIl-2を追加した1mLの完全RPMI-1640培地中に2×10で、2~10μgの抗γδTCR抗体とともに、CD2、CD27、CD28、CD30、CD137、ICOS、CD161、CD122、CD244、及びNKG2Dに対する可溶性もしくは固定化アゴニスト抗体、またはCD70-FC(CD27に対するリガンド)、MICA、MICB及びULBP(NKG2Dに対するリガンド)、4-1BB(CD137に対するリガンド)、ならびにPilar9(CD161に対するリガンド)を含む刺激リガンドの存在下または非存在下で培養する。
【0199】
実施例38.サイトカイン補助活性化
全PBMCまたは富化改変及び非改変γδT細胞集団にサイトカインを添加することによって、改変及び非改変γδT細胞の活性化、増殖及び生存力を補助する様々なサイトカインの能力を試験する。サイトカイン活性化補助を試験するために、様々なサイトカインを3日ごとに100IU/mLで別々の細胞培養物に個別に添加する。試験するサイトカインにはIL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-33、IL-21、IL-18、IL-19、IL-4、IL-9、IL-23、及びIL1βが含まれる。選択した期間の終了後、細胞のサンプルを採取し、細胞集団の組成、すなわちγδT細胞、αβT細胞、B細胞、及びNK細胞のパーセンテージをフローサイトメトリーによって測定する。
【0200】
細胞の培養を継続し、14日目及び21日目に選択した集団の増殖を調べる。
【0201】
実施例39:インビトロでの改変及び非改変γδT細胞のインビトロ細胞傷害性アッセイ
改変または非改変γδ-T細胞のインビトロ細胞傷害性アッセイは、4つの異なる細胞傷害性アッセイ:1)腫瘍細胞溶解;2)活性化T細胞によるサイトカイン放出;3)LDHアッセイ;及び4)CD107a発現の活性化によって測定される。限定はしないが結腸、乳房、卵巣、腎臓、頭頚部、口腔、膵臓及び肝臓癌に由来する様々なヒト腫瘍細胞株またはヒト腫瘍由来細胞(患者由来異種移植片腫瘍株)を標的細胞として用いる。正常ヒト乳腺上皮細胞(HMEC)を陰性対照として用いる。簡潔に述べると、増殖させる標的細胞を96ウェルプレートに1ウェル当たり1×10細胞で接種する。24時間後、培地を除去し、活性化T細胞をRPMI培地(Corningから入手できるRPMI-1640、10%Hycloneウシ胎児血清、2mmol/L L-グルタミン、100U/mLペニシリン、100U/mLストレプトマイシン)中に、20:1または40:1のエフェクタ-対標的比で添加して、5%COの加湿雰囲気中、37℃で5時間インキュベートする。改変及び非改変γδ-T細胞によって放出されるサイトカインは、このインキュベーションの後、共培養上清を収集し、市販のELISAキット(BioLegend)を用いてIFN-γ、IL2、TNFα、IL-6及びIL1βを含むサイトカインの分泌を定量化することによって測定する。LDH細胞傷害性検出キット(Roche)を製造業者の指示に従って用いてLDHアッセイを実施する。最後に、標的細胞へのγδ-T細胞の添加後、Cy7PE(BioLegend)に結合したCD107a抗体5ulを添加することによってCD107a発現を測定する。プレートを短時間遠心分離し、5%COの加湿雰囲気中、37℃で1時間インキュベートし、その後、1:50希釈のGolgi stop BD Biosciences(BD)8.5μLを添加する。5%COの加湿雰囲気中、37℃でさらに2時間細胞をインキュベートする。このインキュベーションの後、細胞を氷上で収集し、冷HBSSで1回洗浄し、1ulのzombie aqua(BioLegend)アミン染色色素で染色して100ulのHBSS中の生細胞集団を測定する。細胞をFACS染色培地(FSM;2%ウシ胎児血清を含有するHBSS)で洗浄し、FITCに結合したVδ1抗体(ThermoFisherから入手できるクローンTS8.2)及びPEに結合したVδ2抗体(BioLegendから入手できるクローンB6)を含めた、飽和量の抗体を含有する100ulのFSMに再懸濁する。抗体を細胞とともに氷上で30分間インキュベートし、その後、過剰量のHBSSで洗浄する。染色された集団をBD FACSCanto IIで収集し、FlowJo v10.1ソフトウェアを用いて解析する。
【0202】
実施例40:インビトロでの増殖したγδT細胞の抗腫瘍活性
様々な腫瘍細胞株及び原発性腫瘍細胞に対する細胞傷害性活性を1:1~40:1のエフェクタ-対標的比で試験する。細胞内酵素である乳酸脱水素酵素の放出を検出することによって、腫瘍細胞株及び原発性腫瘍細胞の溶解を測定する。培養物中の改変腫瘍認識部分を発現しているγδT細胞のパーセンテージをフローサイトメトリー、ELISA及び/またはELISPOTアッセイによって測定する。
【0203】
実施例41:インビボ抗腫瘍活性
ヒト腫瘍異種移植片を移植した免疫不全マウス、もしくはhuPBMC-NOG(Taconic)マウス、または前述のヒト化免疫系を有するマウスのコホートに、結腸、乳房、腎臓、頭頚部、前立腺、膀胱、口腔、膵臓及び肝臓の癌を含む患者由来腫瘍または腫瘍細胞株に由来する細胞を皮下または同所注入して、100mmの平均サイズに到達させる。富化または単離したナイーブまたは改変いずれかのγδ-T細胞をある範囲の投与量でマウスに静脈内注入するか、または腫瘍に直接注入する。腫瘍退縮は、未治療及び特定の適応症に対する標準治療と比較したγδ-T細胞投与後の腫瘍体積の減少と定義される。いくつかの実験において、ナイーブまたは改変γδT細胞をGFPまたはルシフェラーゼで標識し、腫瘍保有マウスに注入してそのパーシスタンス及びホーミングを追跡する。研究の最後に、腫瘍を採取してフローサイトメトリー及び免疫組織化学によってGFP陽性細胞を分析した。
【0204】
実施例42.さらなる処理用の細胞バンクを作製するための凍結培地中でのγδT細胞の凍結保存
非改変γδT細胞を長期保存のために凍結培地中で製剤化し、低温保存装置、例えば液体窒素冷凍装置(-195℃)または超低温冷凍装置(-65℃、-80℃または-120℃)などに入れる。凍結培地は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、塩化ナトリウム(NaCl)、デキストロース、硫酸デキストランまたはヒドロイエチルデンプン(hydroyethyl starch)(HES)を6.5~7.5の範囲の生理的pH緩衝剤とともに含有することになるであろう。
【0205】
凍結保存γδT細胞は解凍されて抗体、タンパク質、ペプチド、及びサイトカインでの刺激によってさらに処理される。凍結保存γδT細胞は解凍され、本出願において前述したように遺伝子組換えされる。改変γδT細胞はさらに凍結保存され、凍結培地中1mL当たり10~10細胞で10、100、200バイアルの量の細胞バンクが作製される。
【0206】
実施例43.さらなる処理用の細胞バンクを作製するための凍結培地中でのγδT細胞の代替的凍結保存
他の凍結保護物質を前述の実施例に記載の凍結保存担体に加え、栄養維持ならびに凍結及び解凍プロセス中の溶解に対する生物物理的細胞保護をもたらす。これらとしては、D-グルコース、マンニトール、スクロース、アデニン、グアノシン、組換えヒトアルブミン、シトレート、抗凝固剤、ベンゾナーゼ、DNase、プロピレングリコール、エチレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールが挙げられる。高細胞密度凍結製品に緩衝能を付与するように意図された追加の添加剤としては、無機リン酸塩、炭酸水素ナトリウム及びHEPESが挙げられる。
【0207】
実施例44.さらなる処理用の細胞バンクを作製するための凍結培地中でのγδT細胞の凍結保存
速度制御冷凍装置(例えばCryoMedコントロールレートフリーザー)、または所望の凍結速度をもたらす適切に断熱されたラッキングシステムを備える機械式-70℃冷凍装置を用いて、1分当たり-0.1℃~-0.5℃の凍結速度を達成するように意図した温度制御傾斜でγδT細胞の最初の凍結を行う。最大30~60日の短期保存のために凍結細胞を-70℃冷凍装置に入れる。前述の節に記載の方法によって測定した場合に劣化を示すことなく、γδT細胞数及び細胞機能を維持したまま最大12、24、36及び48か月で長期保存するためには、液体N貯蔵タンクに凍結細胞を入れる。
【0208】
この実施例に記載の凍結保存細胞を解凍し、好適な密閉容器中、例えば細胞培養バッグ及び/またはバイオリアクターなどでさらに刺激及び増殖させて、被検者への投与に適した量の改変γδT細胞を生成する。
【0209】
実施例45.患者への直接注入用のγδT細胞の製剤
遠心分離及び/または膜透析濾過によって、凍結保護添加剤を含有する生理緩衝液中5×10細胞/mL~10細胞/mLまで改変γδT細胞を濃縮し、長期保存のために低温保存装置、例えば液体窒素、または超低温冷凍装置などに入れる。
【0210】
実施例46.癌を患っているヒト被検者の治療
新鮮なまたは凍結した改変γδT細胞をベッドサイドで解凍し、ヒト被検者に静脈内注入する。約1細胞/kg~約1×1010細胞/kgの改変γδT細胞を30~60分間かけてヒト被検者に注入する。改変γδT細胞は、共刺激サイトカインIL-2または他のサイトカインの補助有りまたは無しで投与する。任意により、処置を繰り返す。被検者におけるγδT細胞のインビボ増殖をフローサイトメトリーによって測定する。
【0211】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に提示及び記載したが、そのような実施形態は例示のみを目的として提供されていることが当業者には明らかであろう。当業者は今や本発明から逸脱することなく多数の変形、変更、及び置換を容易に考え付くであろう。本明細書に記載の発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明を実施するにあたって採用され得ると理解すべきである。以下の請求項が本発明の範囲を規定し、それによってこれらの請求項の範囲内の方法及び構成ならびにそれらの均等物が網羅されることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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