(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】UV熱硬化型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 163/10 20060101AFI20220927BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220927BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220927BHJP
C09J 179/02 20060101ALI20220927BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220927BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20220927BHJP
【FI】
C09J163/10
C09J4/02
C09J11/06
C09J179/02
C09J11/04
G02B7/02 Z
(21)【出願番号】P 2018028205
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名取 稔城
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/118191(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/073548(WO,A1)
【文献】特開平05-295087(JP,A)
【文献】特開2016-094579(JP,A)
【文献】特開2009-141406(JP,A)
【文献】特開2018-067676(JP,A)
【文献】特開2016-210849(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181421(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
G03F
G02B7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラモジュール組み立て用UV熱硬化型接着剤組成物であって、
(a)
エポキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂、
(b)(メタ)アクリル酸エステル、
(c)熱硬化剤、及び
(d)光重合開始剤
を含み、
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)が、(メタ)アクリロイル基を
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
(a)全体に対して20重量%以上含み、かつ
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)が、30/70~70/30であ
り、
前記(メタ)アクリル酸エステル(b)が、ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルであり、かつ
前記熱硬化剤(c)が、第一級及び第二級アミンを含むポリアミン型熱硬化剤である、
UV熱硬化型接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)が、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である、請求項1又は2に記載の
カメラモジュール組み立て用UV熱硬化型接着剤組成物。
【請求項3】
前記熱硬化剤(c)が、ポリアミンである、請求項1
又は2に記載の
カメラモジュール組み立て用UV熱硬化型接着剤組成物。
【請求項4】
さらに、
(e)無機フィラー
を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
カメラモジュール組み立て用UV熱硬化型接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はUV熱硬化型接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等に搭載される小型カメラモジュールは、レンズと、それを保持する筒型のレンズホルダと、レンズが集光した光を電気信号へと変換する、基板上に固定された撮像素子とを有する。この小型カメラモジュールの組み立てにおいては、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを強固に接着する必要がある。この接着のため、接着剤が使用されている(特許文献1)。
【0003】
レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着するに際しては、レンズと撮像素子との間の距離が正確に保たれるようにする必要がある。具体的には、レンズと撮像素子の受光面との距離を、レンズの焦点距離と一致させる必要がある。この目的のため、UV硬化型接着剤を用いることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-184801号公報
【文献】特開2009-141406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、カメラモジュール組み立てにおいては、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着した後、基板を加熱する工程が含まれることがあり、そのような場合においては、従来の接着剤を使用した場合、加熱工程においてレンズと撮像素子との距離が変化することがあることを見出した。
【0006】
また、本発明者は、UV硬化型接着剤を用いることにより、加熱工程におけるレンズと撮像素子との距離の変化を防ぐことができるが、UV硬化型接着剤を使用した場合には、UV照射が届かない部位の硬化が不十分となるという問題があることを見出した。この場合、硬化が不十分な箇所において気泡が発生し、又は苛酷環境下で接着が維持されない、といった問題が生じる。
【0007】
本発明は、カメラモジュール組み立てにおいてレンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着させるに際し、接着剤硬化時にUV照射が届かない部位であっても十分に硬化させることができ、かつ、レンズと撮像素子との距離の、加熱工程における変化を抑制できる接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行ったところ、(a)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、(b)(メタ)アクリル酸エステル、(c)熱硬化剤、及び(d)光重合開始剤を含み、前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)が、(メタ)アクリロイル基を樹脂全体に対して20重量%以上含み、かつ前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)が、30/70~70/30である、UV熱硬化型接着剤組成物を用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいてさらに検討を加えることにより完成したものであり、以下の態様を含む。
【0009】
項1.
UV熱硬化型接着剤組成物であって、
(a)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂、
(b)(メタ)アクリル酸エステル、
(c)熱硬化剤、及び
(d)光重合開始剤
を含み、
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)が、(メタ)アクリロイル基を樹脂全体に対して20重量%以上含み、かつ
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)が、30/70~70/30である、
UV熱硬化型接着剤組成物。
項2.
前記(メタ)アクリル酸エステル(b)が、ホモポリマーのTgが60℃以上となる(メタ)アクリル酸エステルである、項1に記載のUV熱硬化型接着剤組成物。
項3.
前記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)が、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である、項1又は2に記載のUV熱硬化型接着剤組成物。
項4.
前記熱硬化剤(c)が、ポリアミンである、項1~3のいずれか一項に記載のUV熱硬化型接着剤組成物。
項5.
さらに、
(e)無機フィラー
を含む、項1~4のいずれか一項に記載のUV熱硬化型接着剤組成物。
項6.
カメラモジュール組み立てのために用いられる、項1~5のいずれか一項に記載のUV熱硬化型接着剤組成物。
【発明の効果】
【0010】
カメラモジュール組み立てにおいて、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物を用いて、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着させることにより、接着剤の硬化時にUV照射が届かない部位であっても十分に接着部位を硬化させることができ、かつ、レンズと撮像素子との距離の、加熱工程における変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で行った、LCP(液晶ポリマー)への接着強度の測定試験の手順を模式的に表した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(a)エポキシ(メタ)アクリレート樹脂
本発明で用いるエポキシ(メタ)アクリレート樹脂は、(メタ)アクリル酸とエポキシ樹脂とを反応させることにより得られうるものが挙げられる。かかる反応は常法に従って塩基性触媒の存在下で行うことができる。
【0013】
とりわけ、硬化物の耐湿性に優れることからエポキシメタクリレート樹脂が好ましい。
【0014】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル及び(メタ)アクリロイル基とは、アクリレート若しくはメタクリレート、アクリル若しくはメタクリル、並びにアクリロイル基若しくはメタクリロイル基をそれぞれ意味する。
【0015】
上記エポキシ(メタ)アクリレート樹脂を製造する際に原料となりうるエポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、及びビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0016】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020(いずれも新中村化学工業社製)、エベクリル860、エベクリル3200、エベクリル3201、エベクリル3412、エベクリル3600、エベクリル3700、エベクリル3701、エベクリル3702、エベクリル3703、エベクリル3800、エベクリル6040、エベクリルRDX63182(いずれもダイセルサイテック社製)、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0017】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)は、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート樹脂である。
【0018】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を樹脂全体に対して20重量%以上含む。これにより、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、十分なUV硬化性を発揮する。この点で、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)は、(メタ)アクリロイル基を樹脂全体に対して30重量%以上含むものであれば好ましい。また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)は、硬化後のガラス転移温度(Tg)が十分に高くなり、初期及び信頼性試験後の接着性に優れたものとなるという点で、(メタ)アクリロイル基を樹脂全体に対して、通常、80重量%以下含有し、好ましくは60重量%以下含有する。
【0019】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、好ましくは、300~1000であり、より好ましくは400~800である。なお、本明細書において、重量平均分子量Mwは、テトラヒドロフラン等の溶媒を溶離液としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として求められる値を指す。
【0020】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
(b)(メタ)アクリル酸エステル
本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、さらに(メタ)アクリル酸エステルを含有する。(メタ)アクリル酸エステルは、単官能(メタ)アクリル酸エステルであってもよいし、多官能(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステル(b)は、ホモポリマーのTgが、好ましくは60℃以上である。これにより、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、硬化後のガラス転移温度(Tg)が十分に高くなり、初期及び信頼性試験後の接着性に優れたものとなる。この点で、(メタ)アクリル酸エステル(b)は、ホモポリマーのTgが、より好ましくは90℃以上である。なお、(メタ)アクリル酸エステル(b)は、ホモポリマーのTgが、通常は、250℃以下であり、好ましくは200℃以下である。
【0023】
単官能メタクリレートの具体例として、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、イソボロニルメタアクリレート(例えば、製品名「IBXA」、大阪有機化学産業)、2-メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、2-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシメチルジエトキシシラン、4-メタクリロキシブチルトリメトキシシラン、4-メタクリロキシブチルトリエトキシシラン、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(例えば、製品名「FA-512M」、日立化成社製)、ジシクロペンタニルメタクリレート(例えば、製品名「FA-513M」、日立化成社製)、ペンタメチルピペリジルメタクリレート(例えば、製品名「FA-711MM」、日立化成社製)、テトラメチルピペリジルメタクリレート(例えば、製品名「FA-712HM」、日立化成社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(例えば、日立化成社製)、ベンジルメタクリレート(例えば、製品名「FA-BZM」、日立化成社製)、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート(例えば、製品名「ライトエステルG-201P」、共栄化学社製)、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸(例えば、製品名「CB-1」、新中村化学工業社製)、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、フェノキシエチレングリコールメタクリレート(例えば、製品名「PHE-1G」、新中村化学工業社製)、ステアリルメタクリレート(例えば、製品名「S」、新中村化学工業社製)、2-メタクリロイルオキシエチルサクシネート(例えば、製品名「SA」、新中村化学工業社製)、及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート(例えば、製品名「サイクロマーM100」、ダイセル社製)などが挙げられる。
【0024】
2官能メタクリレートの具体例として、ジプロピレングリコールジアクリレート(例えば、製品名「APG-100、新中村化学工業)、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(例えば、製品名「A-DCP」、新中村化学工業)、1,4-ブタンジオールジメタクリレート(例えば、製品名「FA-124M」、日立化成社製)、ネオペンチルグリコ-ルジメタクリレ-ト(例えば、製品名「FA-125M」、日立化成社製)、ポリエチレングリコ-ル#200ジメタクリレ-ト(例えば、製品名「FA-220M」、日立化成社製)、EO変性ビスフェノ-ルAジメタクリレ-ト(例えば、製品名「FA-321M」、日立化成社製)、EO変性ポリプロピレングリコ-ル#700ジメタクリレート(例えば、製品名「FA-023M」、日立化成社製)、エチレングリコールジメタクリレート(例えば、製品名「1G」、新中村化学工業社製)、ジエチレングリコールジメタクリレート(例えば、製品名「2G」、新中村化学工業社製)、トリエチレングリコールジメタクリレート(例えば、製品名「3G」、新中村化学工業社製)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(例えば、新中村化学工業社製)、2,2-ビス[4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン(例えば、製品名「BPE-80N」、新中村化学工業社製)、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(例えば、新中村化学工業社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(例えば、製品名「DCP」、新中村化学工業社製)、1,10-デカンジオールジメタクリレート(例えば、製品名「DOD-N」、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート(例えば、製品名「HD-N」、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジメタクリレート(例えば、製品名「NOD-N」、新中村化学工業社製)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(例えば、製品名「NPG」、新中村化学工業社製)、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート(例えば、新中村化学工業社製)、グリセリンジメタクリレート(例えば、製品名「701」、新中村化学工業社製)、及びポリプロピレングリコールジメタクリレート(例えば、新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0025】
3官能以上の多官能メタクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリメタクリレート(例えば、製品名「TMPT」、新中村化学工業社製)等が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル(b)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)は、30/70~70/30である。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)の割合が30%以上であることにより、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、初期及び信頼試験後の接着性が十分なものとなる。また、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)の割合が70%以下であることにより、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、粘度が適度な範囲内となりハンドリングが容易となる。これらの点で、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)は、好ましくは40/60~60/40である。
【0028】
エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、(メタ)アクリル酸エステル(b)との合計含有割合は、UV熱硬化型接着剤組成物の全体に対して、好ましくは30~70重量%であり、より好ましくは40~60重量%である。
【0029】
(c)熱硬化剤
熱硬化剤(c)は、好ましくはポリアミン型熱硬化剤である。熱硬化剤(c)は、より好ましくは、第一級及び第二級アミンを含むポリアミン型熱硬化剤である。
【0030】
熱硬化剤(c)は、製品寿命が長くなるという点で融点が、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。また、熱硬化剤(c)は、通常の熱硬化温度、典型的には80℃、における熱硬化性が十分なものとなるという点で、融点が、80℃以下であり、より好ましくは70℃以下である。
【0031】
ポリアミン型熱硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、フジキュアFXR-1020、FXR-1030、FXR-1050及びFXR-1080(富士化成工業製)、並びにアデカハードナーEH-4357S、EH-5057P及びEH-5057PK(ADEKA製)等が挙げられる。
【0032】
熱硬化剤(c)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
熱硬化剤(c)の含有割合は、UV熱硬化型接着剤組成物の全体に対して、好ましくは10~40重量%であり、より好ましくは20~30重量%である。
【0034】
(d)光重合開始剤
光重合開始剤(d)としては、特に限定されず、当該技術分野において通常使用されるものを使用できる。
【0035】
光重合開始剤(d)のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE 651(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン)、IRGACURE 184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)、DAROCUR 1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン)、IRGACURE 2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン)、IRGACURE 127(2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン}、IRGACURE 907(2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン)、IRGACURE 369(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1)、IRGACURE 379(2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド)、IRGACURE819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド)、IRGACURE784(ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム)、IRGACUREOXE01(1.2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)])、IRGACUREOXE02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム))、IRGACURE754(オキシフェニル酢酸、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)、LucirinTPO、LR8893、LR8970(以上、BASF・ジャパン社製)、DETX-S(2,4-ジエチルチオキサントン)(日本化薬社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0036】
光重合開始剤(d)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
光重合開始剤(d)の含有割合は、UV熱硬化型接着剤組成物の全体に対して、好ましくは0.5~5重量%であり、より好ましくは1~2重量%である。
【0038】
(e)無機フィラー
本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、さらに無機フィラー(e)を含有していてもよく、それにより、UV熱硬化型接着剤組成物の線膨張係数を制御することができる。無機フィラー(e)としては、コロイダルシリカ、疎水性シリカ、微細シリカ及びナノシリカ等のシリカフィラー、並びにアクリルビーズ、ガラスビーズ、ウレタンビーズ、ベントナイト、アセチレンブラック及びケッチェンブラック等が挙げられる。
【0039】
無機フィラー(e)の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、特に限定されず、0.01μm以上であれば、UV熱硬化型接着剤組成物がハンドリングに優れるものとなるという点で好ましい。また、無機フィラー(e)の平均粒径(粒状でない場合は、その平均最大径)は、50μm以下であれば、UV熱硬化型接着剤組成物中に均一に分散されるという点で好ましい。なお、本発明において、無機フィラーの平均粒径は、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計により測定するものとする。
【0040】
無機フィラー(e)の市販品としては、高純度合成球状シリカ(製品名「SO-E5」、アドマテックス製、平均粒径:2μm;製品名「SO-E2」、アドマテックス製、平均粒径:0.6μm)、シリカ(製品名「FB7SDX」、龍森製、平均粒径:10μm)、及びシリカ(製品名「TS-10-034P」、マイクロン製、平均粒径:20μm)等が挙げられる。
【0041】
無機フィラー(e)は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(f)その他の成分
本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、さらに他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、接着剤助剤として、シラン、チタネート等の各種カップリン剤及びヒュームドシリカ等のレオロジー調整剤、が挙げられる。
【0043】
用途
本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、好ましくは、カメラモジュール組み立てのために用いられる。より具体的には、本発明のUV熱硬化型接着剤組成物は、好ましくは、カメラモジュール組み立てにおいて、レンズホルダと、撮像素子が固定化された基板とを接着するために用いられる。上記において、カメラモジュールは、特に限定されず、例えば、スマートフォン等に使用される小型カメラモジュールである。
【実施例】
【0044】
表1に示す組成比で各成分を混合することにより比較例1~3及び実施例1~3の接着剤組成物をそれぞれ調製した。具体的には、粉末の熱硬化剤、無機フィラー及び光重合開始剤を溶解させたエポキシアクリレートと、アクリル酸エステル樹脂とを3本ロールを用いてよく分散させ、得られた混合物とその他の添加剤等とをプラネタリーミキサーを用いて混合し、さらに真空脱泡を行って接着剤組成物を得た。
【0045】
各物性の評価はそれぞれ以下の通りに行った。評価結果を表1に示す。
<硬化Tg>
厚さ300μmになるよう接着剤組成物を剥離フィルム上に塗布し、365nm-LEDを照射(2.5J/cm2)した後、熱風循環式オーブンを用いて、80℃、60分の条件で硬化させた。得られた硬化物の熱分析をTMA(熱機械分析装置)を用いて行い、Tgを測定した。
【0046】
<LCP(液晶ポリマー)への接着強度>
図1に示す通り行った。具体的には、以下の通りである。15mm×15mmのセラミック基板上に接着剤組成物を5mm×5mmのロの字の形状で、3.5mg程度の重量になる様ディスペンスし、その後7mm×7mmの形状のLCPチップをマウントし、接着剤の厚みが100μmになるよう調整した。周囲4方向から365nm-LEDを500mW/cm
2×2秒の条件で照射し、仮硬化させた。その後、熱風循環式オーブンを用いて、80℃、60分の条件で熱硬化させたサンプルを、Dage製4000万能型ボンドテスターを用いて、シェアスピード200μm/s、シェア高さ120μmの条件で測定した。
【0047】
信頼性試験の条件は、85℃/85%RH、250時間とした。
【0048】
実施例1~3の接着剤組成物は、UV照射によって迅速に硬化し、さらに熱硬化によって、最終的に硬化Tgが85℃以上となった。また、初期及び信頼性試験後の接着性に優れていたが、これは、熱硬化剤として第一級及び第二級アミンを有するポリアミンが含まれ、熱による付加反応が進行するためと考えられる。
【0049】
一方、熱硬化剤としてイミダゾールを含む比較例1ではアクリル樹脂が熱硬化せず、初期及び信頼試験後の接着性が不十分であった。
【0050】
また、比較例2においては、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)における、(メタ)アクリロイル基の樹脂全体に対する含有割合が低く(10重量%)、硬化Tgが低かった。
【0051】
さいごに、比較例3においては、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)と、前記(メタ)アクリル酸エステル(b)との重量比(a)/(b)が、8/92となり、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂(a)の含量が低すぎるため、初期及び信頼試験後の接着性が不十分であった。
【0052】