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特許7146429紫外線吸収剤含有組成物とそれを含有する化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】紫外線吸収剤含有組成物とそれを含有する化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220927BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220927BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20220927BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/49
A61K8/37
A61Q17/04
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018070205
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178126
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紘平
(72)【発明者】
【氏名】小原 妙
【審査官】寺▲崎▼ 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041665(JP,A)
【文献】国際公開第2014/185317(WO,A1)
【文献】特開2012-031125(JP,A)
【文献】特開2014-201569(JP,A)
【文献】特開2015-205832(JP,A)
【文献】特開2016-017050(JP,A)
【文献】国際公開第2017/216981(WO,A1)
【文献】特開2011-126832(JP,A)
【文献】特開2008-179628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)~(c)
(a)25℃で固型状の有機紫外線吸収剤
(b)フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル
(c)IOB値が0.1~0.5の油剤
を含有する水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記成分(b)に対する前記成分(a)の含有質量比(a)/(b)が0.15~100であり、前記成分(c)に対する前記成分(a)と前記成分(b)との合計含有質量比{(a)+(b)}/(c)が0.02~20であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(a)25℃で固型状の有機紫外線吸収剤を含有する水中油型乳化化粧料において、成分(b)フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル及び(c)IOB値が0.1~0.5の油剤を含有せしめることを特徴とする成分(a)25℃で固型状の有機紫外線吸収剤の結晶析出を抑制する方法。
【請求項4】
前記成分(b)に対する前記成分(a)の含有質量比(a)/(b)が0.15~100であり、前記成分(c)に対する前記成分(a)と前記成分(b)との合計含有質量比{(a)+(b)}/(c)が0.02~20である請求項3に記載の結晶析出を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機紫外線吸収剤を含有する油性組成物に関し、さらに詳細には、多糖脂肪酸エステルを用いることにより、難溶性有機紫外線吸収剤の結晶析出を抑制することができる油性組成物であり、さらに該油性組成物を含有する化粧料は、安定性や感触に優れるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、日焼け止め化粧料の需要は高まっており、使用目的に応じて様々な日焼け止め化粧料が開発されてきた。特にUVA(波長320~400nmの長波長紫外線)の肌への影響が理解されるにつれて、UVB(波長290~320nmの中波長紫外線)を防ぐだけでなく、UVAを防ぐことも重要な因子となっている。しかしながら、UVA吸収剤は、室温において固体で難溶性(水にも非極性油にも難溶)のものが多く、特に低温域における結晶析出により、経時での製剤安定性が損われたり、有効成分の凝集により、期待する紫外線防御効果が得られない等の問題が生じることがあった。そのため、難溶性の有機紫外線吸収剤の安定配合に関し、種々の検討がなされてきた(例えば、特許文献1~3参照)が、油剤や界面活性剤の含有量が増えることにより、べたつきなどを生じやすく、使用感の点では満足のいかない場合があった。
【0003】
また日焼け止め化粧料においても、従来とは違った感触が求められ、一般的であった油中水型乳化化粧料だけではなく、水中油型乳化化粧料や、油性(固形)状化粧料、エアゾールスプレー型等、剤型が多様化してきている経緯があり、高いUVA、UVB防御機能だけではなく、需要に合わせた様々な剤型の日焼け止め化粧料を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-235046号公報
【文献】特開2014-118383号公報
【文献】特開2009-091307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明では、難溶性の有機紫外線吸収剤を配合しながらも、結晶析出がなく、べたつきもない優れた使用感の化粧料と、様々な剤型への応用が可能な、有機紫外線吸収剤を含有する油性組成物とを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる実情に鑑み、本発明者らは鋭意検討した結果、難溶性の有機紫外線吸収剤を溶解する際に、多糖脂肪酸エステルとIOB値0.1~0.5の油剤とを混合溶解した油性組成物とすることにより、難溶性の有機紫外線吸収剤の結晶析出が顕著に抑制され、それを配合した化粧料の安定性が向上するという知見を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明は、次の成分(a)~(c):
(a)25℃で固型状の紫外線吸収剤
(b)多糖脂肪酸エステル
(c)IOB値0.1~0.5の油剤
を含有する油性組成物、または、該油性組成物を含有する化粧料、さらには、該油性組成物を用いた、難溶性有機紫外線吸収剤を含有する化粧料の結晶析出を抑制する方法、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の油性組成物は、難溶性紫外線吸収剤の結晶の析出を抑制することができる。また、該油性組成物は、様々な剤型の化粧料に容易に配合することが可能であり、紫外線吸収剤を安定に配合できるため、紫外線防御効果の高い化粧料を提供することができる。さらには、該化粧料の長期的安定性を容易に推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の(評価方法2:結晶析出抑制)における評価基準である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0011】
(油性組成物)
本発明における油性組成物とは、成分(a)25℃で固型状の有機紫外線吸収剤、成分(b)多糖脂肪酸エステル、及び成分(c)IOB値0.1~0.5の油剤、を混合溶解した(半)固体状又は液状の組成物であり、有機紫外線吸収剤の結晶が析出しない限り、他の成分を含有していてもよい。また、混合溶解する方法は、特に限定されないが、例えば、成分(a)~(c)に揮発性溶媒を一定量添加して加熱処理した後、蒸発乾固させるか、あるいは、溶媒を用いずに混合溶融する。
【0012】
本発明に用いられる成分(a)25℃で固型状の紫外線吸収剤は、紫外線から肌を防御するためのものであり、25℃において固型状であれば特に限定されないが、例えば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラアミノ安息香酸エチル、ベンゾフェノン-1、ベンゾフェノン-3、ベンゾフェノン-6、ベンゾフェノン-9、エチルヘキシルトリアゾン、ジオクチルブタミドトリアゾン、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール等が挙げられ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。これらの中でも、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが、UVAの防御効果が高いため好ましい。
【0013】
成分(a)の市販品としては、UVINUL A PLUS GRANULAR(ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル;BASF社製)、TINOSORB S(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン;BASF社製)、UVINUL T150(エチルヘキシルトリアゾン;BASF社製)、TINOSORB M(メチレンビズベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール;BASF社製、大日本化成社製)などを挙げることができる。
【0014】
本発明における成分(a)の含有量は、特に限定されないが、油性組成物中の0.5~50質量%(以下単に「%」と略す)が好ましく、特に好ましくは、2~35%である。この範囲であると、結晶析出を抑制することができるため好ましい。
【0015】
本発明に用いられる成分(b)多糖脂肪酸エステルは、多糖と脂肪酸のエステル化物であり、好ましい例としては、ショ糖脂肪酸エステル、デキストリン脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖脂肪酸エステル等を挙げることができ、これらの一種又は二種以上を用いることができる。
【0016】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、炭素数6~32、好ましくは炭素数8~24の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とショ糖とのエステルで、その平均置換度が3以上のものが好ましい。複数エステルの場合は、脂肪酸は単一でも異なっていてもよく、例えば、炭素数8~24及び炭素数2~4の飽和又は不飽和脂肪酸とショ糖とのエステル等が挙げられる。市販品としては、シュガーワックスS-10E(第一工業製薬社製)、シュガーワックスA-10E(第一工業製薬社製)、サーフホープSECOSME C-1800(三菱化学フーズ社製)等が挙げられる。
【0017】
デキストリン脂肪酸エステルとしては、炭素数6~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とデキストリンとのエステルで、その平均置換度が一単糖あたり1.5以上のものが好ましく、デキストリンの糖平均重合度は、10~50のものが好ましい。具体例としては、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリン等が挙げらる。市販品としては、ミリスチン酸デキストリンであるレオパールMKL2(千葉製粉社製)、パルミチン酸デキストリンであるレオパールKL2、レオパールTL2(いずれも千葉製粉社製)、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリンであるレオパールTT2(千葉製粉社製)等が挙げられる。
【0018】
フラクトオリゴ糖エステルとしては、炭素数6~32の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和脂肪酸とフラクトオリゴ糖とのエステルで、その平均置換度が一単糖あたり1~3のものが好ましく、フラクトオリゴ糖の糖平均重合度は、10~60のものが好ましい。尚、フラクトオリゴ糖の糖平均重合度の測定法は、例えばL.De Leenheer,Starch 46(5),p193-196(1994)、Carbohydrates as Organic Raw Materials,Vol.III,p67-92(1996)に記載されている。本発明において、フラクトオリゴ糖とは、フルクトースを主要構成糖とするオリゴ糖をいう。フラクトオリゴ糖は、いろいろな植物、例えばキク科、イネ科及びユリ科の根、茎、葉、種子等に含まれており、その構造は、主鎖の結合様式が2→1結合のものと、2→6結合のものとの2種類がある。2→1結合のものとしてはイヌリン、アスパラゴシン、アスホデラン、トリチカン、クリテザン、バクモンドウ由来のフラクトオリゴ糖等が、2→6結合のものとしてはフレアン、レバン、セラカン等が挙げられる。これらの中でも、イヌリン及び/又は加水分解イヌリンが好ましい。イヌリンは、β-1、2結合したフラノイドフルクトース単位の鎖から成り、還元末端において蔗糖結合したα-D-グルコースを有する構造のもので、フラノイドフルクトース単位が2~60程度のものが好ましい。市販品としては、ステアリン酸イヌリンであるレオパールISK2、レオパールISL2(いずれも千葉製粉社製)が挙げられる。
【0019】
本発明における成分(b)の含有量は、特に限定されず、成分(a)、(c)の選択によっても異なるが、0.1~20%が好ましく、0.5~10%がより好ましい。この範囲であると、成分(a)の結晶析出を抑制でき、油性組成物のハンドリングも良好で、化粧料への配合も容易となるため好ましい。
【0020】
本発明に用いられる成分(c)IOB値が0.1~0.5の油剤は、IOB値が0.1~0.5の範囲であれば、その分子構造や性状等に制限はない。IOB値とは、有機化合物の極性の度合いを、無機性(inorganic)と有機性(organic)のバランスで示す指標であり、IOB値=無機性値/有機性値として表され、この値が大きい化合物ほど、より親水性の化合物と言える。本発明において、IOB値が0.1以下の油剤は成分(a)の溶解性に劣り、IOB値が0.5以上の油剤は、極性が高く親水性に偏りすぎる為、油性組成物としての安定性に懸念が生じる。
【0021】
また成分(c)は、本発明においては、成分(a)(b)との相溶性が良く、油性組成物の安定性やハンドリングの面において、融点が30℃以下のものが好ましく、例えば、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(IOB=0.28)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、メチルフェニルポリシロキサン(IOB=0.28)、トリエチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.36)、シクロメチコン(IOB=0.44)等が特に好ましい。
【0022】
上記(c)の市販品としては、UVINUL MC80(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル;BASF社製)、CRODAMOL OSU-LQ-(JP)(コハク酸ジエチルヘキシル;クローダジャパン社製)、ニッコールPDD(ジカプリン酸PG;日本サーファクタント社製)、KF-56(メチルフェニルポリシロキサン;信越化学工業社製)、FINSOLV TN(安息香酸アルキル(C12~C15);INNOSPEC ACTIVE CHEMICAL社製)、KF-995(シクロメチコン;信越化学工業社製)、MYRITOL GTEH(トリエチルヘキサン酸グリセリル)等が挙げられる。
【0023】
本発明における成分(c)の含有量は、特に制限されないが、3~80%が好ましく、更に好ましくは5~15%である。この範囲であると、成分(a)の結晶析出を抑制でき、(b)との溶解性も良く、安定な油性組成物となるため好ましい。
【0024】
本発明において、成分(b)に対する成分(a)の含有質量比(a)/(b)は、好ましくは0.15~100であり、より好ましくは0.5~60であり、さらに好ましくは1.5~20である。また、成分(c)に対する成分(a)と成分(b)との合計含有質量比{(a)+(b)}/(c)は、0.01~3であり、好ましくは0.03~2であり、特に好ましくは0.1~1である。この範囲であると、各成分の溶解性が良好となるため好ましい。
【0025】
(化粧料)
本発明の化粧料は、上記の油性組成物を含有するものである。また製造方法は、特に限定されず、剤型に応じて常法により調製されるが、例えば前記油性組成物を予め調整し、そのまま化粧料の油相として用いても良く、あるいは他の油溶性成分と混合溶解して用いることもできる。化粧料中における、前記油性組成物の含有割合は、特に限定されるものではなく、化粧料の剤型により異なるが、全化粧料中における成分(a)の含有量として0.5~30%、好ましくは5~15%である。
【0026】
本発明の化粧料には、上記の油性組成物以外に、通常の化粧料に使用される成分、例えば、成分(a)~(c)以外の油性成分、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、水、水溶性高分子、多価アルコール、低級アルコール等の水性成分、抗菌剤、防腐剤、pH調整剤、清涼剤、粉体、ビタミン類、アミノ酸類等の美容成分、香料等を、本発明の効果を損なわない範囲で適宜含有することができる。
【0027】
本発明の化粧料は、例えば液状、乳液状、クリーム状、固形状、ゲル状、ペースト状等、種々な形態にて実施することができる。また、本発明の化粧料は、油性系、油中水型乳化系、水中油型乳化系等、その剤形は特に制限されず、乳液、クリーム、美容液、化粧油、リップクリーム、日焼け止め料などのスキンケア化粧料、ファンデーション、メイクアップ下地、ほほ紅、アイシャドウ、口紅、リップグロス等のメイクアップ化粧料、ヘアクリーム、整髪料等の頭皮又は毛髪用の化粧料等、種々の化粧料にて実施することができる。また、その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法、噴霧剤、エアゾール剤として使用する方法等が挙げられる。
【実施例
【0028】
以下、実施例、試験例等を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0029】
[実施例1~5及び比較例1~3:油性組成物]
表1に示す組成および下記製造方法にて油性組成物を調製した。得られた油性組成物について、結晶析出の有無を、下記の方法により評価し、結果と併せて表1に示した。
【0030】
【表1】
【0031】
(製造方法)
A:成分1~10を90℃まで加熱し、均一に溶解する。
B:Aを室温まで放置冷却する。
【0032】
(評価方法:結晶析出抑制)
前記の各試料について、-20℃の恒温槽にて3日静置したものを室温に1日静置した後、倍率40倍、露光時間1/200秒にて正立型顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、偏光下にて観察した。ガラスプレートに試料を少量乗せ、適量のシクロメチコンで希釈した後にプレパラートを重ね、顕微鏡観察のサンプルとした。難溶性紫外線吸収剤が油性組成物中に結晶として存在する場合、偏光下では不定形の光輝物として観察されるため、光輝物の有無を、以下の判定基準に従って評価した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :全く紫外線吸収剤又は基剤の結晶光輝物が観察されない。
○ :紫外線吸収剤又は基剤の光輝物が観察されるが、肌塗布時には結晶を感じることは無い。
× :明瞭な紫外線吸収剤又は基剤の結晶光輝物が観察される。
【0033】
[実施例6~15及び比較例4~6:日焼け止め化粧料(水中油乳化型)]
表2に示す日焼け止め化粧料を下記の製法により調整した。得られた日焼け止め化粧料について、下記の評価項目を下記の方法により評価し、結果と併せて表2に示した。
【0034】
【表2】
【0035】
(製造方法)
A:成分4~18を90℃まで加熱し、混合溶解する。
B:成分1~3を室温にて均一に混合し、75℃まで加熱する。
C:BにAを加え、乳化する。
D:Cを50℃まで冷却したのちに、成分19~20までを順次添加し、均一混合して日焼け止め化粧料を得た。
【0036】
(評価項目)
(イ)着手のみずみずしさ
(ロ)後肌のべたつきの無さ
(ハ)結晶析出抑制
(二)乳化安定性
(ホ)紫外線防御効果
【0037】
(評価方法1:官能評価)
化粧品評価専門パネル10名に、前記の各日焼け止め化粧料を、使用してもらい、(イ)着手のみずみずしさ、(ロ)後肌のべたつきの無さの各項目について、以下の評価基準1aに従って5段階に官能評価し、更に全パネルの評点の平均点を以下の判定基準1bに従って判定した。
<評価基準1a>
(評価) :(評点)
良好 : 5点
やや良好 : 4点
普通 : 3点
やや不良 : 2点
不良 : 1点
<判定基準1b>
(判定):(評点の平均点)
◎ : 4.0以上
○ : 3.0以上4.0未満
△ : 2.0以上3.0未満
× : 2.0未満
【0038】
(評価方法2:結晶析出抑制(油性組成物))
前記の実施例6~15及び比較例4~6について、表2の成分4~16までを加温溶解した試料を作成し、-20℃の恒温槽にて3日静置し、室温に1日静置した後、倍率40倍、露光時間1/200秒にて正立型顕微鏡(オリンパス社製)を用いて、偏光下にて観察した。ガラスプレートに試料を少量乗せ、適量のシクロメチコンで希釈し、プレパラートを重ねて、顕微鏡観察のサンプルとした。難溶性有機紫外線吸収剤が油性組成物中に結晶として存在する場合、偏光下では不定形の光輝物として観察されるため、光輝物の有無を、以下の判定基準2に従って評価した。
<判定基準2>
(判定):(評価)
◎ :全く紫外線吸収剤又は基剤の結晶光輝物が観察されない。
○ :紫外線吸収剤又は基剤の光輝物が観察されるが、肌塗布時には結晶を感じることは無い。
× :明瞭な紫外線吸収剤又は基剤の結晶光輝物が観察される。
【0039】
(評価方法3:乳化安定性)
前記の実施例6~15及び比較例4~6の各試料を、ガラス製の規格びんに入れ、外観を目視にて観察した。室温で2週間保管した後の状態を観察し、充填直後の外観と比較し、下記判定基準3を用いて判定した。
<判定基準3>
(判定):(評価)
◎ :室温2週間経過しても、分離、沈殿、結晶等が確認できない。
○ :室温2週間経過し、わずかな分離等が見られるが、使用には問題ない。
△ :充填直後は問題ないが、室温2週間で分離や沈殿や結晶等が確認される。
× :製造直後、充填時から、分離や沈殿、結晶等が確認される。
【0040】
(評価方法4:紫外線防御効果(SPF))
PMMA板(Helio screen社製)に、前記の各サンプルを1.3mg/cmとなるように塗布し、20分間乾燥した後、SPFアナライザー(Labsphere社製)にセットし、9点測定した平均値から算出した。
<判定基準4>
(判定):(評価)
◎ :SPFアナライザーの算出値が15以上
○ :SPFアナライザーの算出値が10以上15以下
△ :SPFアナライザーの算出値が5以上10以下
× :SPFアナライザーの算出値が5以下
【0041】
表1の結果からも明らかなように、実施例6~15の日焼け止め化粧料は、有機紫外線吸収剤の結晶を抑制することができ、乳化化粧料としての安定性も良好であるため、紫外線防御効果を十分に発揮させることが可能であり、また着手のみずみずしさ、後肌のべたつきの無さにも優れる日焼け止め化粧料であった。一方、成分(b)を配合しない比較例1は、有機紫外線吸収剤が製造直後に析出してしまい、乳化安定性に問題を生じる結果となった。また成分(c)に換えて、IOB値が0.1以下であるスクワラン(IOB値=0)及び0.5を超えるジプロピレングリコール(IOB値=1.8)を用いた比較例2、3は、油性組成物としても有機紫外線吸収剤の結晶析出を抑制することができず、また乳化化粧料としての安定性にも劣るものであった。
【0042】
実施例16:クリーム
(成分) (%)
1.N-ステアロイルーN-メチルタウリンナトリウム 0.1
2.リン脂質・コレステロール混合物 2.2
3.グリセリン 10.5
4.1,3-ブチレングリコール 5.0
5.ジグリセリン 1.0
6.ショ糖脂肪酸エステル 2.0
7.エチルヘキサン酸セチル 3.0
8.メトキシケイ皮酸エチルヘキシル 5.0
9.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルエステル 1.0
10.油溶性甘草エキス 0.1
11.コメ胚芽油 0.02
12.トコフェロール 0.01
13.精製水 残量
14.キサンタンガム 0.1
15.カルボマー 0.5
16.水酸化ナトリウム 適量
17.エタノール 6.5
18.防腐剤 適量
19.トレハロース 0.05
20.海藻エキス 0.01
21.クエン酸 0.02
22.リン酸一水素ナトリウム 0.15
23.ヒドロキシプロリン 0.05
24.カワラヨモギエキス 0.05
【0043】
(製造方法)
A:成分1~5および13を70℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分6~12を80℃に加熱し、均一に混合する。
C:AにBを加え撹拌する。
D:Cに、70℃に加熱した成分14~24を加え乳化する。
E:Dを室温まで撹拌しながら冷却し、クリームを得た。
【0044】
実施例16のクリームは、難溶性紫外線吸収剤の結晶を抑制することができ、難溶性紫外線吸収剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
【0045】
実施例17:シェーキング型日焼け止め料(油中水型)
(成分) (%)
1.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.5
2.パラメトキシケイ皮酸エチルエステル 7.5
3.(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン 1.5
4.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 3.0
5.コハク酸ジエチルヘキシル 3.5
6.ポリシリコーン15 3.0
7.メチルポリシロキサン 0.5
8.サフラワー油 0.1
9.シリル化処理無水ケイ酸 4.0
10.酸化亜鉛 7.0
11.マイカ 2.0
12.ポリヒドロキシステアリン酸 1.0
13.シクロメチコン 5.0
14.軽質イソパラフィン 4.0
15.エタノール 7.0
16.防腐剤 適量
17.香料 適量
18.精製水 残量
19.加水分解ヒアルロン酸 0.01
20.加水分解コラーゲン 0.01
【0046】
(製造方法)
A:成分1~8を80℃に加熱し、均一に混合する。
B:成分9~14を、均一にローラー混合する。
C:AにBを加え、均一に混合する。
D:Cに成分15~17を加え、均一に混合する。
E:Dに18~20を加え、乳化する。
F:Eを室温に冷却し、シェーキング型日焼け止め料を得た。
【0047】
実施例17のシェーキング型日焼け止め料は、難溶性紫外線吸収剤の結晶を抑制することができ、難溶性紫外線吸収剤の有する紫外線防御機能を十分に発揮させることが可能であり、また乳化安定性に優れる化粧料であった。
図1