IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鴻池組の特許一覧 ▶ 日本基礎技術株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図1
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図2
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図3
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図4
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図5
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図6
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図7
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図8
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図9
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図10
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図11
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図12
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図13
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図14
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図15
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図16
  • 特許-動的注入装置及び動的注入工法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】動的注入装置及び動的注入工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20220927BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018079285
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019183586
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390036515
【氏名又は名称】株式会社鴻池組
(73)【特許権者】
【識別番号】000230788
【氏名又は名称】日本基礎技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100151002
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 剛之
(74)【代理人】
【識別番号】100201673
【弁理士】
【氏名又は名称】河田 良夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 満
(72)【発明者】
【氏名】後藤 宇
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和成
(72)【発明者】
【氏名】横井 勉
(72)【発明者】
【氏名】秋本 浩平
(72)【発明者】
【氏名】橋本 正信
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210717(JP,A)
【文献】特開2004-197305(JP,A)
【文献】特開2010-223418(JP,A)
【文献】特開昭61-274176(JP,A)
【文献】特開2013-079705(JP,A)
【文献】特開2015-004251(JP,A)
【文献】実開昭59-065044(JP,U)
【文献】特開2010-106627(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0042364(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を改良するための薬液の送出速度又は送出圧力に脈動を付加した状態で前記薬液を送り出す送出手段と、
前記送出手段により送り出された前記薬液の流路を複数回切り替えることで、前記地盤の複数の位置の各々に対して前記薬液の注入及び中断を繰り返す切替部材と、
を有し、
前記薬液は、混合することでグラウト材となる第1薬液と第2薬液を含み、
前記送出手段は、
前記第1薬液を送り出す第1流路と前記第2薬液を送り出す第2流路とに接続しており、
前記第1薬液と前記第2薬液それぞれに対して送出速度又は送出圧力に脈動を付加し、前記第1薬液を前記第1流路に前記第2薬液を前記第2流路にそれぞれ交互に送り出すように構成され、
前記流路は、前記第1流路と前記第2流路とが合流した流路である
ことを特徴とする動的注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動的注入装置において、
前記送出手段は、
前記第1流路と前記第2流路それぞれに対応して設けられ、前記第1薬液又は前記第2薬液の送出速度又は送出圧力への脈動の付加を防止するエアチャンバと、前記エアチャンバの作動を無効化する無効化手段と、
を有する注入ポンプである
ことを特徴とする動的注入装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動的注入装置において、
前記無効化手段は、前記第1流路と前記第2流路それぞれと、前記第1流路と前記第2流路それぞれに対応した前記エアチャンバと、の間を開閉するバルブであることを特徴とする動的注入装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の動的注入装置において、
前記切替部材は、
前記薬液が送り込まれる送込口と、前記複数の位置に対応して設けられ、前記送込口から流入した前記薬液を送出する複数の送出口とを有する本体と、
前記本体の内部に配置され、前記送込口と連通する送入路と、前記複数の送出口のいずれかと連通して、送り込まれた前記薬液を前記複数の送出口のいずれかに送り出す送出路とからなる薬液流路を有するボール弁と、
を有するバルブである
ことを特徴とする動的注入装置。
【請求項5】
請求項4に記載の動的注入装置において、
前記ボール弁は、前記薬液流路に連通して、前記ボール弁が一方向に回転したときに前記薬液が送り出された送出口に連通することで、前記薬液流路に送り込まれる前記薬液に付加される圧力を低減する逃がし流路を有する
ことを特徴とする動的注入装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の動的注入装置において、
前記送出手段は、非ニュートン性の前記グラウト材となる前記薬液を送り出すことを特徴とする動的注入装置。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の動的注入装置を用いて、薬液を地盤の複数の注入位置に同時に注入することを特徴とする動的注入工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砂質土層や埋土層からなる軟弱地盤に対してグラウト材(薬液)を注入する動的注入装置及び動的注入工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良の際に地盤に対してグラウト材と呼ばれる薬液を注入する方法として、例えば薬液が地盤に浸透注入されるように、低圧で且つ静的に薬液を地盤に注入する静的注入の他、薬液を地盤に注入するときの注入圧力又は注入速度を特定の周波数で、或いは数種類の周波数を持つ脈動圧力を重畳させて薬液を地盤に注入する動的注入が挙げられる。
【0003】
例えば動的注入については、特許文献1から特許文献3について開示されている。特許文献1は、例えば亀裂性岩盤にセメント、ベントナイト系の薬液を注入する際に、注入圧力に5~30Hzの周波数域から選択された特定の周波数を持つ脈動圧力を重畳的に付加して、薬剤の構成粒子を励起させて浸透性を向上させることを開示している。また、特許文献2は、亀裂性岩盤および鉛直・水平方向に均一な砂質地盤に薬液を注入するグラウチングにおいて、注入圧力に、0.04~0.08Hzの長波と1~6Hzの短波の複合波による脈動圧力を重畳的に付加して、薬液の構成粒子を励起させて浸透性を向上させることを開示している。さらに、特許文献3は、7~15秒の周期で注入速度を増減変化させ、注入速度の増減を繰返す度に注入圧力の最大値及び最小値を増加させていくことにより、注入位置から放射状に薬液が注入される割裂注入の発生を抑制して目的の範囲に薬液を効率良く浸透させることを開示している。
【0004】
近年では、動的注入の他に、薬液の注入を所定時間中断した後、薬液を再度注入する工程を繰り返すことで、薬液を注入したときに生じる注入圧力を消散させて割裂注入の発生を抑制するインチング注入についても考案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3096244号公報
【文献】特許第5089430号公報
【文献】特許第3757400号公報
【文献】特開2015-25293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1は、油圧サーボアクチュエータと、油圧サーボアクチュエータにより駆動される容積型のポンプ(例えばピストンポンプ)と、を有し、発振器による二次高周波を薬液に与えて圧力変動させる脈動圧発生部を用いている。このような脈動圧発生部は、装置が大掛かりとなり、また、脈動圧力の振幅制御において、熟練を有するサーボユニットの再調整が必要となるという問題がある。また、特許文献2は、薬液の注入圧力に高周波を与える装置として、複数の透過孔が所定角度間隔で設けられた回転盤と、回転盤を回転させるモータとを有する二次高周波発生器を用いている。特許文献2に開示される二次高周波発生器は、特許文献1に開示される脈動圧発生部に比べて、装置が簡素化される利点がある。しかしながら、特許文献2に開示される二次高周波発生器を用いる場合、薬液の流路に設けられたバイパス路に設置された調整弁の開度を調整して、圧力振幅及び流量振幅が過度に大きくなることを防止する必要がある。さらに、これら特許文献1及び特許文献2に開示される注入工法は、亀裂性岩盤に対して薬液を注入する場合を想定しており、砂質土層や埋土層からなる軟弱地盤を対象としたときには、薬液が拡散しやすく、ほぼ球状の改良体を地盤中に造成することは難しい。
【0007】
また、特許文献3や特許文献4では、割裂注入の発生を抑制し、また、目的の浸透範囲に薬液を浸透させることができるが、例えばセメント系グラウト材以外の非ニュートン性の流体である薬液を用いた地盤改良を行う際に、更なる浸透性に優れた注入工法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の動的注入装置は、地盤を改良するための薬液の送出速度又は送出圧力に脈動を付加した状態で前記薬液を送り出す送出手段と、前記送出手段により送り出された前記薬液の流路を複数回切り替えることで、前記地盤の複数の位置の各々に対して前記薬液の注入及び中断を繰り返す切替部材と、を有し、前記薬液は、混合することでグラウト材となる第1薬液と第2薬液を含み、前記送出手段は、前記第1薬液を送り出す第1流路と前記第2薬液を送り出す第2流路とに接続しており、前記第1薬液と前記第2薬液それぞれに対して送出速度又は送出圧力に脈動を付加し、前記第1薬液を前記第1流路に前記第2薬液を前記第2流路にそれぞれ交互に送り出すように構成され、前記流路は、前記第1流路と前記第2流路とが合流した流路であることを特徴とする。
【0009】
また、前記第1流路と前記第2流路それぞれに対応して設けられ、前記第1薬液又は前記第2薬液の送出速度又は送出圧力への前記脈動の付加を防止するエアチャンバと、前記エアチャンバの作動を無効化する無効化手段と、を有する注入ポンプであることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記無効化手段は、前記第1流路と前記第2流路それぞれに対応して設けられ、前記第1薬液又は前記第2薬液の送出速度又は送出圧力への脈動の付加を防止するエアチャンバと、の間の流路を開閉するバルブであることが好ましい。
【0011】
また、前記切替部材は、前記薬液が送り込まれる送込口と、前記複数の注入位置に対応して設けられ、前記送込口から流入した前記薬液を送出する複数の送出口とを有する本体と、前記本体の内部に配置され、前記送込口と連通する送入路と、前記複数の送出口のいずれかと連通して、送り込まれた前記薬液を前記複数の送出口のいずれかに送り出す送出路とからなる薬液流路を有するボール弁と、を有するバルブであることを特徴とする。
【0012】
この場合、前記ボール弁は、前記薬液流路に連通して、前記ボール弁が一方向に回転したときに前記薬液が送り出された送出口に連通することで、前記薬液流路に送り込まれる前記薬液に付加される圧力を低減する逃がし流路を有することが好ましい。
【0013】
なお、前記薬剤は、非ニュートン性の薬液であることを特徴とする。
【0014】
なお、前記送出手段は、非ニュートン性の前記グラウト材となる前記薬液を送り出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、砂質土層や埋土層などの軟弱地盤に対して薬液を広範囲に効果的に注入することができ、また、該軟弱地盤中に良好な改良体を造成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態の施工システムの構成の一例を示す図である。
図2】(a)は注入ポンプの正面図、(b)は注入ポンプの右側面図である。
図3】(a)はA液を送出したときのA液送出部の断面図、(b)はA液送出部においてA液を送出したときのB液送出部の断面図、(c)エアチャンバに貯留されたA液を送出したときのA液送出部の断面図、(d)は、エアチャンバに貯留されたA液を送出したときのB液送出部の断面図である。
図4】切替バルブの模式図である。
図5】切替バルブのボール弁の構造を示す斜視図である。
図6】グラウト材を送出する流路を切り替えるときのボール弁の動作を示す断面図である。
図7】本発明の施工システムに用いる注入管の構成の一例を示す斜視図である。
図8】本発明の動的注入における流量変化を示す図である。
図9】グラウト材の注入試験を行った位置を示す模式図である。
図10】グラウト材の注入試験を行った地盤の構成について示す図である。
図11】本発明の動的注入を用いてグラウト材を注入するまでの流れを示す図である。
図12】(a)動的注入を行ったときの第1パッカにおけるグラウト材の圧力変化を示す図、(b)動的注入を行ったときの第2パッカにおけるグラウト材の圧力変化を示す図である。
図13】動的注入を行ったときの第1パッカにおけるグラウト材の圧力変化及びグラウト材の流量の変化を示す図である。
図14】グラウト材を静的注入するまでの流れを示す図である。
図15】静的注入を行ったときのグラウト材の流量と圧力との変化を示す図である。
図16】注入位置近傍の地盤強度を示す図である。
図17】(a)グラウト材の粘度の変化を示す図、(b)は、(a)における500~1000秒間を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を用いて、本実施形態を説明する。
図1に示すように、薬液注入を行う施工システム10は、ミキサー15,16、注入ポンプ17、流量・圧力検出装置18、切替バルブ19、注入管20、記録装置21及び管理装置22を有する。施工システム10は、混合することで薬液(以下、グラウト材)となる2つの混合液を、注入ポンプ17により送出しながら混合し、混合されたグラウト材を対象となる地盤の複数位置に交互に注入するシステムである。なお、地盤の複数位置とは、地盤表面上において同一の位置で、且つグラウト材を注入する深度が異なる複数の位置であってもよいし、地盤表面上において複数の位置で、深度が同一又は異なる複数の位置であってもよい。なお、図1においては、信号の伝達経路を二点鎖線で示し、混合液の送出経路を実線で示している。なお、図1では、施工システムの例を挙げているが、図1に示す施工システムを実現するための薬液注入装置としてもよい。
【0018】
ミキサー15,16は、2つの混合液のうちのいずれか一方の混合液を各々攪拌して、混合液の分離を防止する装置である。ここで、ミキサー15にて攪拌される混合液をA液、ミキサー16にて攪拌される混合液をB液と称する。なお、混合液であるA液及びB液については後述する。
【0019】
注入ポンプ17は、ミキサー15,16において混合されるA液及びB液を交互に切替バルブ19に向けて送出する。注入ポンプ17は、例えば二液等量ポンプが挙げられる。なお、注入ポンプ17として二液等量ポンプではなく、混合液の送出量(吐出量)が同一となる2つの注入ポンプを用いることも可能であるが、2つの注入ポンプを用いた場合には、各注入ポンプにおける混合液の送出タイミングを調整する必要がある。したがって、本実施形態では、注入ポンプ17として二液等量ポンプを用いることで、混合液(A液及びB液)の送出タイミングの調整を行わなくとも、同一量の混合液を交互に送出することが可能となる。なお、注入ポンプ17は、管理装置22によって駆動制御される。
【0020】
図2及び図3に示すように、二液等量ポンプである注入ポンプ17は、2つの送出部25,26、駆動モータ27及び駆動部28を有する。以下、2つの送出部25,26のうち、A液を送出する送出部をA液送出部25、B液を送出する送出部をB液送出部26と称する。
【0021】
A液送出部25は、注入ポート31、送出ポート32、エアチャンバ33及び本体34を有する。注入ポート31は、ミキサー15から延出されるホース35(図1参照)を接続する。また、送出ポート32は、流量・圧力検出装置18に向けて設置されるホース36(図1参照)を接続する。
【0022】
エアチャンバ33は、後述するプランジャ51が本体34が有する貯留空間34aに向けて移動したときに、貯留空間34aから送り出されるA液の一部を貯留する。また、エアチャンバ33は、プランジャ51が貯留空間34aから離れる方向に移動したときに、貯留されたA液を送出ポート32に向けて送り出す。エアチャンバ33を備えることで、送り出されるA液の送出圧力又は送出速度に脈動が重畳されることが抑止される。
【0023】
符号37は、エアチャンバ33の開閉を行うバルブである。バルブ37は、一例としてボールバルブである。バルブ37は、エアチャンバ33の内部と流路34cとを遮断する閉じ状態と、エアチャンバ33の内部と流路34cとを連通する開き状態との間で切り替わる。バルブ37が閉じ状態となる場合には、エアチャンバ33の機能(作用)を無効化する。ここで、符号37aは、作業者による操作でバルブ37を閉じ状態と、開き状態との間で切り替えるレバーであり、作業者によるレバー33aの操作でバルブ37の状態を切り替える。なお、作業者のレバー37aの操作によりバルブ37の開閉を切り替えているが、バルブ37の開閉を自動で切り替えるようにしてもよい。また、エアチャンバ33の機能を無効化する方法としては、バルブ37を閉じ状態にすることの他に、エアチャンバ33を取り外すことも可能である。
【0024】
本体34は、貯留空間34a、注入ポート31と貯留空間34aとを結ぶ流路34b、貯留空間34aと送出ポート32とを結ぶ流路34cを有する。つまり、グラウト材は、流路34b、貯留空間34a及び流路34cの順で流れる。また、流路34b及び流路34cは、逆止弁38,39を備える。
【0025】
B液送出部26は、A液送出部25と同様に、注入ポート41、送出ポート42、エアチャンバ43及び本体44を有する。注入ポート41は、ミキサー16から延出されるホース45(図1参照)を接続する。また、送出ポート42は、流量・圧力検出装置18に向けて設置されるホース46(図1参照)を接続する。
【0026】
エアチャンバ43は、後述するプランジャ52が本体44が有する貯留空間44aに向けて移動したときに、貯留空間44aから送り出されるB液の一部を貯留する。また、エアチャンバ43は、プランジャ52が貯留空間44aから離れる方向に移動したときに、貯留空間44aに貯留されたB液を送出ポート42に向けて送り出す。エアチャンバ43を備えることで、送り出されるB液の送出圧力又は送出速度に脈動が重畳されることが抑止される。
【0027】
符号47は、エアチャンバ43の開閉を行うバルブである。バルブ47は、一例としてボールバルブである。バルブ47は、エアチャンバ43の内部と流路44cとを遮断する閉じ状態と、エアチャンバ43の内部と流路44cとを連通する開き状態との間で切り替わる。バルブ47が閉じ状態となる場合には、エアチャンバ43の機能(作用)を無効化する。ここで、符号47aは、作業者による操作でバルブ47を閉じ状態と、開き状態との間で切り替えるレバーであり、作業者のレバー47aの操作によりバルブ47の状態を切り替えている。なお、作業者のレバー47aの操作によりバルブ47の開閉を切り替えているが、バルブ47の開閉を自動で切り替えるようにしてもよい。また、エアチャンバ43の機能を無効化する方法としては、バルブ47を閉じ状態にすることの他に、エアチャンバ43を取り外すことも可能である。
【0028】
本体44は、貯留空間44a、注入ポート41と貯留空間44aとを結ぶ流路44b、貯留空間44aと送出ポート42とを結ぶ流路44cを有する。つまり、グラウト材は、流路44b、貯留空間44a及び流路44cの順で流れる。なお、流路44b及び流路44cは、逆止弁48,49を備える。
【0029】
図3(a)から図3(d)に示すように、駆動部28は、プランジャ(ピストン)51,52、運動変換部(コンロッド)53,54、クランクシャフト55及びクランクケース56を有する。プランジャ51,52は、クランクケース56に並列して設けたシリンダ57,58内に各々配置され、クランクシャフト55の回転により、シリンダ57,58内を往復動する。
【0030】
運動変換部53,54は、クランクシャフト55の回転時に、プランジャ51,52を往復動させる。運動変換部53は、一端がピンによりプランジャ51に回転自在に軸支され、他端がクランクシャフト55のクランクピン55aに回転自在に軸支される。同様にして、運動変換部54は、一端がピンによりプランジャ51に回転自在に軸支され、他端がクランクシャフト55のクランクピン55bに回転自在に軸支される。ここで、クランクシャフト55の軸方向に直交する面において、クランクシャフト55のクランクピン55a及びクランクピン55bは、クランクシャフト55の回転中心から所定量偏心し、また、クランクピン55aとクランクピン55bとは、180°間隔を空けて設けられる。
【0031】
なお、クランクケース56において、シリンダ57は、通路59を介して、A液送出部25の本体34が有する貯留空間34aと連通される。また、シリンダ58は、通路60を介して、B液送出部26の本体44が有する貯留空間44aと連通される。
【0032】
なお、上述した貯留空間34a及び貯留空間44aにダイヤフラムを配置して、往復動するプランジャによってダイヤフラムを、貯留空間に液体を引き込む動作や貯留空間に貯留された液体を送り出すようにしてもよい。
【0033】
次に、注入ポンプ17の各部の動作について説明する。以下、プランジャ51がA液送出部25の貯留空間34aに最も近接した位置に、プランジャ51がB液送出部26の貯留空間34aから最も離れた位置にある場合を例に挙げて説明する。
【0034】
駆動モータ27が駆動すると、クランクシャフト55が図3(a)中C方向に回転する。回動するクランクピン55aにより運動変換部53の一端が引っ張られ、プランジャ51が図3(a)中D1方向に移動する。プランジャ51の図3(a)中D1方向への移動により、プランジャ51及びシリンダ57の先端側(図中左側)に形成される空間及び該空間に連通する貯留空間34aの圧力が低下する。その結果、流路34bに設けた逆止弁38が開放され、A液が流路34bを介して貯留空間34aに送入される。このとき、エアチャンバ33の内部に貯留されているA液は送出ポート32に向けて送出される。なお、流路34cに設けた逆止弁39は閉じられているので、A液は貯留空間34aに向けて逆流することはない。
【0035】
回動するクランクピン55aにより運動変換部53の一端が引っ張られ、プランジャ51が図3(a)中D1方向に移動する一方で、プランジャ52は、回動するクランクピン55bにより運動変換部53の一端が押し出される。したがって、プランジャ52が図3(b)中E1方向へ移動する。プランジャの図3(b)中E1方向への移動により、プランジャ51及びシリンダ57の先端側(図中左側)に形成される空間及び該空間に連通する貯留空間34aの圧力が上昇する。その結果、送出ポート42に連通する流路44cに設けた逆止弁49が開放され、貯留空間44aに貯留されたB液が流路44cに送り出される。なお、B液が流路44cに送り出されると、B液は送出ポート42に向けて送り出されるともに、エアチャンバ43の内部に向けて送り込まれる。一方、流路44bに設けた逆止弁48は閉じられている。したがって、貯留空間44aから流路44bへとB液が逆流することはない。
【0036】
クランクシャフト55の回転によりプランジャ51が貯留空間34aから最も離れた位置まで移動すると、回動するクランクピン55aにより運動変換部53の一端が押し出される。運動変換部53の一端が押し出されることで、プランジャ51が図3(c)中D2方向へ移動する。プランジャ51が図3(c)中D2方向へ移動すると、シリンダ57及び貯留空間34aの圧力が増加する。その結果、送出ポート32に連通する流路34cに設けた逆止弁39が開放され、A液が貯留空間34aから流路34cに送り出される。なお、貯留空間34aから送り出されたA液は、送出ポート32に向けて送り出されるとともに、エアチャンバ33の内部に向けて送り込まれる。一方、流路34bに設けた逆止弁38は閉じられている。したがって、貯留空間34aから流路34bへとA液が逆流することはない。
【0037】
回動するクランクピン55aにより運動変換部53の一端が押し出される一方で、運動変換部54の一端は、回動するクランクピン55bにより引っ張られる。その結果、プランジャ52は図3(d)中E2方向へ移動する。プランジャ52が図3(d)中E2方向へ移動すると、シリンダ58及び貯留空間44aの内部の圧力が低下する。したがって、注入ポート41に連通する流路44bに設けた逆止弁48が開放され、貯留空間44aにB液が送入される。このとき、エアチャンバ43の内部に挿入されているB液は送出ポート42に送出される。なお、流路44cに設けた逆止弁49は閉じられているので、B液は貯留空間44aに逆流することはない。
【0038】
したがって、バルブ37,47を開き状態とした場合、A液送出部25及びB液送出部26は、駆動部28の駆動によりプランジャ51,52の往復動による混合液の送出とエアチャンバ33,43に貯留された混合液の送出とを交互に行う。つまり、A液送出部25及びB液送出部26から送出される混合液の送出圧力や送出速度に、脈動が付加(重畳)されることが抑止される。
【0039】
一方、バルブ37,47を閉じ状態とした場合、A液送出部25及びB液送出部26において、駆動部28の駆動によりプランジャ51,52の往復動による混合液の送出のみが実行される。その結果、各送出部から送出される液体の送出圧力を測定すると脈動圧力が付与(重畳)されている。つまり、A液送出部25及びB液送出部26から送出される混合液の送出圧力や送出速度に、脈動が付加(重畳)される。
【0040】
本実施形態におけるグラウト材を注入する方法では、バルブ37,47を閉じ状態に保持して注入ポンプ17を駆動させて、グラウト材の注入圧力や注入速度に脈動を重畳させた状態でグラウト材を注入する。
【0041】
図1に戻って、流量・圧力検出装置18は、注入ポンプ17と、切替バルブ19との間に配置される。詳細には、流量・圧力検出装置18は、注入ポンプ17の送出ポート32,42に接続された各ホース36,46が合流された後のホース61に接続される。流量・圧力検出装置18は、グラウト材の流量圧力、瞬時流量、積算流量等の計測データを取得する。なお、取得された計測データは記録装置21に記憶される。
【0042】
切替バルブ19は、グラウト材の注入経路を、注入管20が有する2つの注入通路のいずれか一方に切り替えるために設けられる。切替バルブ19は、例えばボールバルブである。切替バルブ19は、流量・圧力検出装置18に接続されたホース62と接続される。また、切替バルブ19は、注入管20の注入内管が有する第1パッカ101にグラウト材を送出するホース63と、注入管20の注入内管が有する第2パッカ102にグラウト材を送出するホース64と接続される。
【0043】
図4から図6に示すように、切替バルブ19は、バルブ本体71、ボール弁72を有する。バルブ本体71はT字形状で、その端部に継手部71a,71b,71cを有する。これら継手部71a,71b,71cのうち、継手部71bと継手部71cとは、軸方向が同一方向となるように配置される。また、継手部71aは、継手部71b及び継手部71cの軸方向と直交するように配置される。継手部71aは、グラウト材を送り込むホース62の一端部に設けた嵌合部62aが螺合される。また、継手部71bはグラウト材を注入管20の注入内管92が有する第1パッカ101に送り込むホース63の一端部に設けた嵌合部63aが螺合される。さらに、継手部71cはグラウト材を注入管20の注入内管92が有する第2パッカに送り込むホース64の一端部に設けた嵌合部64aが螺合される。
【0044】
ボール弁72は、バルブ本体71の内部に配置される。このボール弁72は、図示を省略した駆動部により弁軸75を中心にして一方向に例えば180°毎に回転する。ボール弁72は、弁軸75が取り付けられる再頂部とは反対側の下端部から中心部分に向けて延出される流路76aと、該流路76aに対して直交するように延出される流路76bとが、ボール弁72の中心部分で連通されるL字状の流路76を有する。さらに、ボール弁72は、流路76a及び流路76bと各々直交する逃がし流路77を有する。なお、逃がし流路77の直径は、注入するグラウト材の注入圧力や注入速度に基づいて設定される。なお、ボール弁72は、バルブ本体71の内部において、弁座73,74に挟持された状態で保持される。
【0045】
ここで、ホース62に設けた嵌合部62aを継手部71aに螺合した状態では、L字状の流路76の流路76aは、嵌合部62aに有する流路(図示省略)と常時連通された状態となる。その一方で、L字状の流路76の流路76bは、継手部71bに螺合された嵌合部63aの流路81、又は継手部71cに螺合された嵌合部64aの流路82のいずれか一方と連通される。
【0046】
図6(a)は、例えば、ボール弁72が有するL字状の流路76の流路76bが、嵌合部63aの流路81と連通した状態で保持された場合を示す。この状態では、ホース62の内部で送り込まれるグラウト材は、ボール弁72が有するL字状の流路76を通過した後、ホース63の内部に送り込まれる。つまり、この状態では、グラウト材は、注入管20の注入内管が有する第1パッカ101に送出される。
【0047】
グラウト材を送出するために切替バルブ19を切り替えるときには、弁軸75を図5中L1方向へ回転させる。図6(b)に示すように、弁軸75を回転させると、ボール弁72は図6(b)中矢印の方向に回転する。ボール弁72の図6(b)中矢印方向への回転により、L字状の流路76を構成する流路76bは、ホース63の嵌合部63aに設けた流路81と連通された状態から退避していき、ホース63の嵌合部63aに設けた流路81は、ボール弁72の周壁面に遮断される。
【0048】
ボール弁72をさらに回転させると、図6(c)に示すように、ボール弁72が有する逃がし流路77がホース63の嵌合部63aに設けた流路81と連通した状態となる。ボール弁72をさらに回転させると、図6(d)に示すように、逃がし流路77とホース63の嵌合部63aに設けた流路81とが連通した状態が解除される。そして、ボール弁72を180°回転させると、図6(e)に示すように、流路76bは、ホース64の嵌合部64aに設けた流路82に連通した状態となる。したがって、この状態では、ホース62の内部で送り込まれるグラウト材は、ボール弁72が有するL字状の流路76を通過した後、ホース64の内部に送り込まれる。つまり、この状態では、グラウト材は、注入管20の注入内管92が有する第2パッカ102に送出される。なお、切替バルブ19により、グラウト材を注入管20の注入内管92が有する第2パッカ102に送出する状態から、注入管20の注入内管92が有する第1パッカ101に送出する状態に切り替える際には、L字状の流路76を構成する流路76bがホース64の嵌合部64aに設けた流路82と連通された状態から退避した後、逃がし流路77がホース64の嵌合部64aに設けた流路82と連通し、逃がし流路77がホース64の嵌合部64aに設けた流路82と連通した状態から退避した後で、L字状の流路76を構成する流路76bがホース63の嵌合部63aに設けた流路81と連通される。
【0049】
したがって、切替バルブ19によりグラウト材を送出する流路を切り替える際には、切り替え元の流路と逃がし流路77とが一端連通した状態が生み出される。その結果、注入されるグラウト材に必要以上の圧力が付加されることを防止でき、また、ボール弁72の破損を防止することができる。
【0050】
図7に示すように、注入管20は、注入外管91及び注入内管92を有する。注入外管91は、例えばダブルパッカ工法にて使用されるマンシェットチューブである。注入外管91は、長手方向の下端部に一定間隔(図中L1)を空けて吐出口95が設けられる。図7においては、一例として、吐出口95が注入外管の長手方向の4カ所に設けられた場合を示している。上述した一定間隔L1は、例えば600mmである。吐出口95は、注入外管91の外周面に例えば90度間隔を空けて配置される。注入外管91の長手方向の4カ所に設けられる吐出口95は、注入外管91に取り付けられたゴムスリーブ96により遮蔽される。図示は省略するが、ゴムスリーブ96は結束バンドにより注入外管の長手方向における一端側が固定される。
【0051】
ゴムスリーブ96は、注入されるグラウト材から受けた圧力によって弾性変形して、吐出口95とゴムスリーブ96の開放端部(結束バンドにより固定される一端とは反対側の端部)との間に隙間を生成する。この隙間が形成されることで、グラウト材が放射状に放出される。また、ゴムスリーブ96は、注入外管91の吐出口95を塞ぐことにより、外部からの圧力に対しては吐出口95に押圧されて密着し、外部からの注入外管91への逆流や水の侵入を防ぐ。
【0052】
注入内管92は、第1パッカ101、第2パッカ102、及びこれらパッカを連結する連結ロッド103を有する。第1パッカ101は、上パッカ部105、下パッカ部106及びノズル107を備える。上パッカ部105及び下パッカ部106は、エア用アダプタ108から流入する空気により膨出して、注入外管91の内壁面に当接される。ノズル107は、外周面に複数の吐出口109を有し、薬液用アダプタ110から送入されるグラウト材を吐出する。なお、薬液用アダプタ110は、例えばホース63に接続される。
【0053】
同様にして、第2パッカ102は、上パッカ部111、下パッカ部112及びノズル113を備える。上パッカ部111及び下パッカ部112は、エア用アダプタ108から流入する空気により膨出して、注入外管91の内壁面に当接される。ノズル113は、外周面に複数の吐出口114を有し、薬液用アダプタ115から送入されるグラウト材を吐出する。なお、薬液用アダプタ115は、例えばホース64に接続される。
【0054】
連結ロッド103は、上端側で第1パッカ101と連結され、下端側で第2パッカ102と連結される。図示は省略するが、連結ロッド103は、薬液用アダプタ115から送り込まれたグラウト材を、第2パッカ102のノズル113に向けて送り込む送込通路と、エア用アダプタ108から流入する空気を第2パッカ102の上パッカ部105、下パッカ部106の各々に空気を送り込む送込通路とを有する。
【0055】
次に、本実施形態に用いるグラウト材について説明する。グラウト材は、メタアクリル酸金属塩、多価金属塩化合物、還元剤、重合開始剤、骨材及び水を含有する非ニュートン性のグラウト材である。
【0056】
メタアクリル酸金属塩としては、例えば、(メタ)アクリル酸のリチウム塩、ナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩及びバリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マグネシウム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩等が挙げられ、これらの1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本実施形態では、35質量%濃度のアクリル酸マグネシウムを用いた場合を説明する。
【0057】
多価金属塩化合物は、メタアクリル酸金属塩以外の多価金属塩化合物であって、二価又は三価以上の多価金属塩化合物が用いられる。多価金属塩化合物は、例えば二価の金属としては、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等が挙げられる。また、三価以上の金属としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン及びセリウム等が挙げられる。なお、ゲル物の強度を制御し易い点から三価の金属塩化合物が好ましく、例えば塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、ミョウバン、ナトリウムミョウバン、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、ポリ硫酸塩化アルミニウム(塩基性硫酸塩化アルミニウム)、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、オキシ硫酸ジルコニウムなどのジルコニウム塩、塩化チタン及び硝酸セリウム等が挙げられる。多価金属塩化合物としては、これらの金属塩1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明では、多価金属塩化合物として、高塩基ポリ塩化アルミニウム(高塩基PAC)を用いた場合を説明する。
【0058】
還元剤は、チオ硫酸ナトリウム及びチオ硫酸カリウム等のチオ硫酸塩化合物、重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸カリウム等の重亜硫酸塩化合物、次亜硫酸ナトリウム及び次亜硫酸カリウム等の次亜リン酸化合物、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウム等の亜硫酸化合物、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム(ロンガリット)などのヒドロキシメタンスルフィン酸塩、アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸又はその塩、エリソルビン酸ナトリウムなどのエリソルビン酸又はその塩、第一鉄塩、二硫化チオ尿素のほか、硫酸銅、並びに、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジメチルアミノプロパノール、ピペラジン及びモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらの還元剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本発明では、還元剤として、チオ硫酸ナトリウムを用いた場合を説明する。
【0059】
重合開始剤は、メタアクリル酸金属塩を重合させる等のために添加され、メタアクリル酸に適用される各種公知の重合開始剤を用いることができる。例えば、可使時間、地盤注入後から硬化(ゲル化)までの硬化時間のコントロール等の観点から、アゾ開始剤、ペルオキソ二硫酸塩等の無機過酸化物、過カルボン酸類、ヒドロペルオキシド等の有機過酸化物などを用いることができる。無機過酸化物及び有機過酸化物を用いる場合には、適宜還元剤を併用することができる。なお、本発明では、重合開始剤として、t-アミルハイドロパーオキサイド(TAH)を用いた場合を説明する。なお、t-アミルハイドロパーオキサイド(TAH)は、パーオキサイドの含有量が85質量%のものが使用される。
【0060】
骨材は、本組成物の増量又は補強のために配合され、セメント、フライアッシュ、珪藻土、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、ベントナイト、パーライト、蛭石、高炉スラグ、石膏、珪砂、パルプ及び炭素粉等の粉体や各種繊維等を用いることができる。なお、本発明では、骨材として、塩化カルシウムを用いた場合を説明する。
【0061】
上記組成のグラウト材におけるアクリル酸マグネシウムの濃度は、5.5質量%に設定される。また、上記組成のグラウト材における高塩基PACの濃度は、2.5質量%に設定される。なお、上記組成のグラウト材は、ほぼ中性であり、また、浸透性又は耐久性に優れている。
【0062】
本実施形態では、上記組成のグラウト材400Lを調製するにあたり、各物質の混合量は以下の通りである。アクリル酸マグネシウム55L、チオ硫酸ナトリウム0.85kg、塩化カルシウム4.3kg、高塩基PAC35L、TAH0.42kg及び水305Lである。なお、グラウト材を地盤に注入する際には、アクリル酸マグネシウム55L、チオ硫酸ナトリウム0.85kg、塩化カルシウム4.3kg及び水140Lを調製した混合液をA液とし、高塩基PAC35L、TAH0.42kg及び水165Lを調製した混合液をB液とした。なお、A液のpHは、pH=6.6、B液のpHはpH=4.5である。
【0063】
本発明におけるグラウト材の注入方法は、図8に示すように、注入及び中断を繰り返すインチング注入における注入過程の際に、グラウト材の注入速度及び注入圧力に脈動を重畳(付加)した注入方法を採用した。以下、本発明におけるグラウト材の注入方法を動的注入と称して説明する。
【0064】
まず、動的注入及び静的注入を用いた平面土槽試験を行った。平面土槽試験は、硅砂7号を用い、相対密度が60%となる縦50cm×横50cm×厚み5cmの模型地盤を製作した。グラウト材は、アクリル酸マグネシウム(AAMg)、高塩基ポリ塩化アルミニウム、クエン酸及び水酸化ナトリウム及び水を調製したものである。グラウト材におけるアクリル酸マグネシウムの濃度は4重量%、高塩基ポリ塩化アルミニウムの濃度は2重量%、クエン酸の濃度は2.6重量%、水酸化ナトリウムの濃度は2.5重量%である。
以下、平面土槽試験の内容を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1において、試験番号1,2,5,7が静的注入、試験番号3、4,6,8が動的注入である。なお、これら試験において、グラウト材の注入時間を15分又は30分、グラウト材の注入量を1500mLを目標値として試験した。
【0067】
まず、静的注入を行ったときの注入時間及び注入速度について説明する。
試験番号1は、グラウト材の注入時間は16分、注入量は1,270mL、平均注入速度は79.4mL/minで、ゲルタイムは5分であった。なお、試験番号1においては、注入速度が遅く、目標の注入量を注入することができなかった。
試験番号5は、グラウト材の注入時間は29.3分、注入量は1,550mL、平均注入速度は52.9mL/minで、ゲルタイムは5分であった。
試験番号2は、グラウト材の注入時間は16分、注入量は1,530mL、平均注入速度は95.6mL/minで、ゲルタイムは30分であった。
試験番号7は、グラウト材の注入時間は30分、注入量は1,510mL、平均注入速度は50.3mL/minで、ゲルタイムは47分であった。
【0068】
動的注入を行ったときの注入時間及び注入速度について説明する。
試験番号3は、グラウト材の注入時間は16分、注入量は1,550mL、平均注入速度は96.9mL/minで、ゲルタイムは4分50秒であった。このとき、グラウト材を注入する周期(インチング周期)は1分、重畳させる脈動の周波数を5Hzとした。
試験番号6は、グラウト材の注入時間は29分、注入量は1,540mL、平均注入速度は53.1mL/min、ゲルタイムは5分であった。このとき、グラウト材を注入する周期(インチング周期)は1分、重畳させる脈動の周波数を2.5Hzとした。
試験番号4は、グラウト材の注入時間は15分、注入量は1,560mL、平均注入速度は104mL/minで、ゲルタイムは17分であった。このとき、グラウト材を注入する周期(インチング周期)は1分、重畳させる脈動の周波数を5Hzとした。
試験番号8は、グラウト材の注入時間は30分、注入量は1,510mL、平均注入速度は50.3mL/min、ゲルタイムは47分であった。このとき、グラウト材を注入する周期(インチング周期)は1分、重畳させる脈動の周波数を2.5Hzとした。
【0069】
まず、ゲルタイムが短く、また注入速度が速い場合である試験番号1と試験番号3との比較を表2に示す。表中の実測面積は、上記試験により実際に模型地盤中に形成された改良体の面積である。また、改良面積は、注入量から算出される改良体の面積である。なお、一軸圧縮強さは、模型地盤中に形成される改良体を所定の面積となるように分割した各々に対して実施した。
【0070】
【表2】
【0071】
試験番号1においては、実測面積/改良面積は0.7、一軸圧縮強さは、147,183,193kN/mであった。一方、試験番号3においては、実測面積/改良面積は0.86、一軸圧縮強さは、49,73,73kN/mであった。
【0072】
つまり、試験番号1に対して試験番号3は、実測面積/改良面積が20%程度向上するという結果が得られた。その一方で、一軸圧縮強さが低下するという結果が得られた。
次に、ゲルタイムが長く、注入速度が速い場合である試験番号2と試験番号4との比較を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
試験番号2においては、実測面積/改良面積は1.05、一軸圧縮強さは、62,120,126kN/mであった。一方、試験番号4においては、実測面積/改良面積は1.11、一軸圧縮強さは、90,111,120kN/mであった。
【0075】
つまり、試験番号2に対して試験番号4は、実測面積/改良面積が6%程度向上することがわかった。また、一軸圧縮強さは、試験番号2と試験番号4とは一部を除いて同等の結果が得られた。
【0076】
次に、ゲルタイムが短く、注入速度が遅い場合である試験番号5と試験番号6との比較を表4に示す。
【0077】
【表4】
【0078】
試験番号5においては、実測面積/改良面積は0.45、一軸圧縮強さは、110,137kN/mであった。一方、試験番号6においては、実測面積/改良面積は0.48、一軸圧縮強さは、108,133kN/mであった。
【0079】
つまり、試験番号5に対して試験番号6は、実測面積/改良面積が7%程度向上することがわかった。また、一軸圧縮強さは、試験番号5と試験番号6とは同等の結果が得られた。
【0080】
最後に、ゲルタイムが長く、注入速度が遅い場合である試験番号7と試験番号8との比較を表5に示す。
【0081】
【表5】
【0082】
試験番号7においては、実測面積/改良面積は0.77、一軸圧縮強さは、142,145,146kN/mであった。一方、試験番号8においては、実測面積/改良面積は0.78、一軸圧縮強さは、138,185kN/mであった。
【0083】
つまり、試験番号7に対して試験番号8は、実測面積/改良面積が1%程度向上することがわかった。また、一軸圧縮強さは、試験番号7と試験番号8とは同等の結果が得られた。
【0084】
上述した比較結果を考慮すると、本発明の動的注入では、より広範囲にグラウト材が浸透し、また、静的注入と同等の一軸圧縮強さが得られることがわかった。
【0085】
なお、上述した試験番号2においては、グラウト材の濃度が同一であるにも関わらず、改良体の一軸圧縮強さにばらつきが生じる。したがって、グラウト材が均等に注入されているかを調べるために改良体の有機体炭素量(wt%)を測定した。また、グラウト材に含まれるアクリル酸マグネシウム(AAMg)の反応が進んでいるかを調べるために改良体中の残留AAMg量(wt%)を測定した。なお、モールドで均一に作成したサンドゲルを比較対象として、改良体中の有機体炭素量や残留AAMg量を測定した。なお、以下に示す表6における試験体A、試験体B及び試験体Cは、上述した平面土槽試験により形成される改良体を分割することで得られる。
【0086】
【表6】
【0087】
モールドで均一に作成したサンドゲルは、一軸圧縮強さが160kN/mであった。このとき、改良体中の有機体炭素量は2.1wt%、改良体中の残留AAMg量は炭素換算で0.27wt%であった。
【0088】
上述したように、試験番号2における一軸圧縮強さは、126,120,62kN/mであった。例えば一軸圧縮強さが126kN/mとなる試験体Aでは、改良体中の有機体炭素量は、2.0wt%、改良体中の残留AAMg量は炭素換算で0.50wt%であった。また、一軸圧縮強さが120kN/mとなる試験体Bでは、改良体中の有機体炭素量は2.0wt%、改良体中の残留AAMg量は炭素換算で0.56wt%であった。さらに、一軸圧縮強さが120kN/mとなる試験体Cでは、改良体中の有機体炭素量は2.0wt%、改良体中の残留AAMg量は炭素換算で0.79wt%であった。試験体Cに含まれる有機体炭素量は、モールドで作成したサンドゲルに含まれる有機体炭素量の9割以上と十分に含まれている。その一方で、改良体中の残留AAMg量は他の試験体に比べて高い値となっている。つまり、試験体Cでは、グラウト材は十分に注入されているが、グラウト材中の反応が十分に進んでいないことがわかる。なお、測定結果については省略するが、試験番号3に関しても同様の結果が得られた。なお、アクリル酸マグネシウムは、時間経過とともに反応が進むので、養生日数が適切であれば、一軸圧縮強さは有機体炭素量に対応する。よって、最終的な一軸圧縮強さは、静的注入と動的注入とで相違ないことが推量される。
【0089】
以下、図9に示すように、表面に基礎コンクリート120が打設された地盤近傍において、本発明における動的注入を用いた注入試験を行った。また、比較対象として、一般的な静的注入を用いた注入試験、及び基礎コンクリートの下方となる領域に対して静的注入を用いた注入試験を行った。なお、本発明の動的注入を行う位置は、図9における位置P、位置P、位置P及び位置Pの4箇所である。また、静的注入は図9における位置P、位置P、位置P及び位置Pの4箇所である。さらに、基礎コンクリート120の下方への静的注入は、図9における位置P及び位置P10の2箇所である。なお、基礎コンクリート120の下方への静的注入は、斜め下方に削孔を行った後にグラウト材を注入している。これら試験では、地盤表面から深度2800mmとなる位置を中心にして、半径1.25mの球状の改良体を生成することを想定している。
【0090】
なお、上記試験を実施した地盤は以下の通りである。図10に示すように、地盤は、地盤表面から、盛土(砂礫)層(図10中符号S1)、盛土(礫混じり砂)層(図10中符号S2)、盛土(シルト混じり砂)層(図10中符号S3)、礫混じり砂層(図10中符号S4)、砂層(図10中符号S5)、砂質シルト層(図10中符号S6)、シルト層(図10中符号S7)で構成される。なお、地盤表面を0とした場合、盛土(砂礫)層は、深さ0~0.9m、盛土(礫混じり砂)層は深さ0.9~2m、盛土(礫混じり砂)層は、深さ2~2.35mに形成される層である。また、礫混じり砂層は、深さ2.35~3m、砂層は3~4.1m、砂質シルト層は深さ4.1~4.8mに形成される層である。さらに、シルト層は、深さ4.8m~6.5mに形成される層である。例えば各層に対する標準貫入試験により求まる地盤の工学的性質N値は、盛土(礫混じり砂)層は7~10、盛土層は7、礫混じり砂層は5~9である。また、砂層は1である。なお、砂質シルト層、シルト層に対する標準貫入試験では、打撃するハンマーが自沈したため、N値は0としている。
【0091】
なお、グラウト材の注入を行う深度1.5~2.3mにおける土質、及び深度3.0~3.9における土質は以下の通りである。
【0092】
【表7】
【0093】
位置P、位置P、位置P及び位置Pに対して実施される、本発明の動的注入の流れについて、図11を用いて説明する。図11(a)に示すように、削孔機に設置されたケーシングパイプ125と、先端に掘削ヘッド126を有するロッド127とを回転させながら、所定の深度まで垂直に削孔する。その後、ロッド127を引き上げる。ロッド127を引き上げた後、ケーシングパイプ125の内部に注入管128を挿入し、ゲル状のシール材129をケーシングパイプ125の内部に充填する(図11(b)参照)。そして、シール材129をケーシングパイプ125の内部に充填した後、注入外管91をケーシングパイプ125の内部に挿入する(図11(c)参照)。そして、ケーシングパイプ125を引き抜いて、シール材が硬化するまで養生する(図11(d)参照)。ここで、注入外管91に形成される吐出口95の位置は、地盤表面から深度2500mm及び深度3100mmに位置するように保持される。図11(e)に示すように、注入外管91の内部に注入内管92を挿入した後、注入ポンプ17を作動させてグラウト材を注入する。なお、グラウト材の注入において、動的注入を行う場合には、切替バルブ19によってグラウト材の注入経路を切り替えながら、2つの注入位置の各々に対してグラウト材を交互に注入する。なお、図12(a)は、第1パッカ101から送出されるグラウト材の圧力変化を、図12(b)は第2パッカ102から送出されるグラウト材の圧力変化の一例を示す。また、図13は、動的注入を行ったときのグラウト材の圧力変化及び流量変化の一例を示す。
【0094】
次に、位置P,位置P、位置P及び位置Pに対して実行される静的注入の手順について説明する。なお、静的注入の手順は、図11の動的方法の手順と同様にして、削孔を行う工程(図14(a)参照)及びシール材を充填する工程(図14(b)参照)が実施される。シール材129をケーシングパイプ125の内部に充填した後、注入外管130をケーシングパイプ125の内部に挿入する(図14(c)参照)。そして、ケーシングパイプ125を引き抜いて、シール材129が硬化するまで養生する(図14(d)参照)。このとき、注入外管130は、注入外管130が有する注入孔131が深度2800mmに位置するように保持される。そして、図14(e)に示すように、注入内管132を挿入して、グラウト材を静的注入により地盤に注入する。なお、符号133,134はパッカ、符号135は吐出口である。図15は、静的注入を行ったときのグラウト材の圧力変化及び流量変化の一例を示す。
【0095】
なお、位置P及び位置P10に対して実行される静的注入と、位置P,位置P,位置P及び位置Pに対して実行される静的注入との違いは、地盤表面に対して角度30°を傾斜させて削孔を行う点で相違する。
【0096】
以下、上述した注入試験の詳細を表7に示す。なお、上述した注入試験では、各位置において注入されるグラウト材の注入量(計画注入量)を2,000Lとした。また、グラウト材の注入時間を200分とし、グラウト材の注入速度を10L/minとした。
【0097】
【表8】
【0098】
なお、上述した位置Pから位置P10までの10箇所に対してグラウト材を注入したときに、図9に示す位置P11及びP12に設けた観測井戸において、地下水の水位変動は見られなかった。また、グラウト材の注入による水温の変化やpHの変化も見られなかった。また、図示は省略するが、動的注入及び静的注入を行った地盤表面に関しては、地盤表面に対して垂直となる方向及び地盤表面に対して水平となる方向の変位は、±2mmと小さく誤差程度の変動である。
【0099】
動的注入及び静的注入を行った地盤近傍に対して、強度発現のために十分な養生期間を経た後にSDS試験を行い、地盤強度であるN値を求めた。SDS試験は、スウェーデン式サウンディング試験に専用試験装置を取付け、ロッドに働く周面摩擦の影響を取り除いたトルク値を算定し地盤強度を推定するものである。なお、地盤強度N値は、動的注入を行った地盤に対しては、グラウト材を注入した位置Pから0.3m、0.625m、1.25m及び2.5m離れた位置を測定対象とした。同様にして、静的注入を行った地盤に対しては、グラウト材を注入した位置Pから0.3m、0.625m、1.25m及び2.5m離れた位置を測定対象とした。図16に示すように、静的注入においては、グラウト材を注入した深度(2.8m)よりもさらに深い深度(0.5m)でN値が増加していることがわかった。一方、動的注入においては、第1パッカ101の位置近傍(2.5~3.0m)でN値が上昇しており、第2パッカ102の位置近傍(3.1m)では、N値が増加していない。また、静的注入後の地盤のN値と、動的注入後の地盤のN値とを比較すると、動的注入は、静的注入よりもN値が上昇していることがわかった。
【0100】
また、図9に示す範囲a1,範囲a2に対して、改良体の確認を行った。これら範囲a1,a2における掘出深さは、深度2.5~3mである。ここで、範囲a1はグラウト材の静的注入を行った領域であり、範囲a2はグラウト材の動的注入を行った領域である。例えば範囲a1に対して掘り出しを行うと、改良体が形成されると想定される深度(以下、計画深度)には、岩塊・ガラが多数混在している。また、その空隙にグラウト材が逸走しており、掘り出した計画深度において、高強度の改良体が生成されていないことが確認された。
【0101】
その一方で、範囲a2に対して掘り出しを行うと、計画深度よりも30~50cm程度の深い深度に、注入したグラウト材が硬化することによる改良体の生成が確認された。なお、生成される改良体の範囲は1.5m程度であった。これによれば、軟弱地盤に対してグラウト材を、本発明による動的注入により注入することで地盤中に改良体を生成できることがわかった。
【0102】
例えば図17(a)は、ずり速度VaをVa=1(1/s)とし、ずり速度VbをVb=10(1/s)としてグラウト材を注入した場合のグラウト材の粘度の変化を示し、図17(b)は、図17(a)における500~1300秒間の詳細を示す。例えばずり速度が小さい場合には、ずり速度が大きい場合に比べて目的の粘土に到達するまでの時間が早く、また、増粘開始時間も早い。つまり、ずり速度が小さい場合には、メタアクリル酸金属塩の重合により発生するゲルが破壊されず、その結果、グラウト材の増粘につながることを意味している。一方、ずり速度が大きい場合には、上記ゲルが破壊され、ゲルが生成されるまで、グラウト材が増粘しない。したがって、本発明の動的注入を用いることで、グラウト材の増粘が遅延され、グラウト材が軟弱地盤であっても地盤中に広範囲に広がることがわかる。
【0103】
したがって、本発明の動的注入により、セメント系グラウト材以外の非ニュートン性流体であるグラウト材を用いた場合であっても、砂質土層や埋土層などの軟弱地盤に対して広範囲にグラウト材を注入でき、良好な改良体を地盤中に造成することができることがわかった。
【符号の説明】
【0104】
10…施工システム、17…注入ポンプ、19…切替バルブ、33,43…エアチャンバ、37,47…バルブ、72…ボール弁、76…L字状の流路、77…逃がし流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17