(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】プラズマリアクタ
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20220927BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220927BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20220927BHJP
F01N 3/028 20060101ALI20220927BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F01N3/08 C
F01N3/28 301U
F01N3/28 311J
F01N3/28 311N
F01N3/28 301P
F01N3/023 E
F01N3/028
B01J19/08 E
(21)【出願番号】P 2018084335
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】河尻 史和
(72)【発明者】
【氏名】今泉 潤哉
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伸介
(72)【発明者】
【氏名】相澤 勇人
(72)【発明者】
【氏名】清水 雅樹
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174619(JP,A)
【文献】特開2012-246759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00
B01J 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが流入する前面、ガスが流出する後面、及び、前記前面と前記後面との間に位置する側面を有し、放電電極を有する複数の電極パネルを積層した構造を有し、前記前面側から前記後面側にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるプラズマパネル積層体と、
前記プラズマパネル積層体が収容される筒状のケースと、
前記ケース及び前記プラズマパネル積層体の間に介在され、前記プラズマパネル積層体を前記ケースに保持するマットと
を備えるプラズマリアクタであって、
前記マットは、前記側面に接触する側面側マット部と、前記後面に接触する後面側マット部とを含んで構成され、
積層体保持状態において、
後押え板により前記後面側マット部を介して前記プラズマパネル積層体の前記後面が前記前面側の方向に押圧されている
ことを特徴とするプラズマリアクタ。
【請求項2】
前記後面側マット部は前記後面の外周部を押圧していることを特徴とする請求項1に記載のプラズマリアクタ。
【請求項3】
前記後面側マット部は、前記後面と前記側面との境界部分に位置する前記プラズマパネル積層体の角部を覆っていることを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマリアクタ。
【請求項4】
前記マットは、前記前面に接触する前面側マット部をさらに含んで構成され、
前記積層体保持状態において、前記前面側マット部を介して前記プラズマパネル積層体の前記前面が前記後面側の方向に押圧されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
【請求項5】
前記前面側マット部は前記前面の外周部を押圧していることを特徴とする請求項4に記載のプラズマリアクタ。
【請求項6】
前記マットは、前記側面側マット部、前記前面側マット部及び前記後面側マット部を一体形成することにより構成されていることを特徴とする請求項4または5に記載のプラズマリアクタ。
【請求項7】
前記側面側マット部の一部に突片が突設され、前記突片は、折り返されて前記後面に接触することにより、前記後面側マット部を構成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
【請求項8】
前記プラズマパネル積層体は、セラミック材料からなる前記複数の電極パネルを積層することにより略直方体状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマリアクタに関するものであり、特には、内燃機関(エンジン)の排ガスを浄化するための装置に好適なプラズマリアクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンや焼却炉の排ガスをプラズマ場に通すことにより、排ガス中に含まれているCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)及びPM(Particulate Matter:粒子状物質)などの有害物質を処理するプラズマリアクタが提案されている。
【0003】
例えば、放電電極を有する複数の電極パネルを積層し、隣接する電極パネル間に電圧を印加して誘電体バリア放電による低温プラズマ(非平衡プラズマ)を発生させることにより、電極パネル間を流れる排ガス中のPMを酸化して除去するプラズマリアクタが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載のプラズマリアクタは、電極パネルを積層してなるプラズマパネル積層体を収容するためのケースや、ケース及びプラズマパネル積層体の間に介在されるマットなどを備えている。マットは、プラズマパネル積層体をケースに保持するためのものである。また、マットを用いて収容物をケースに保持する構造として、ケース内に第1排気浄化装置と第2排気浄化装置とを直列に収容し、第1排気浄化装置を、上流側及び下流側のマットで挟み込んだ状態でケースに保持するものも開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の従来技術では、プラズマリアクタを車両等に搭載して使用する際に、プラズマリアクタに高温の排ガスが流れるため、プラズマリアクタの内部は排ガスによって急激に加熱される。その結果、プラズマリアクタの内部にあるプラズマパネル積層体(電極パネル)に排ガスが直接接触し、電極パネルは、温度上昇に伴って膨張する。しかしながら、プラズマパネル積層体を保持するマットは、排ガスが直接接触する訳ではなく、しかもプラズマリアクタの外部を流れる走行風によって冷却されるようになっている。つまり、マットは、電極パネルのようには加熱されないため、電極パネルのように膨張する訳ではない。この場合、熱膨張に起因する電極パネルの変形がマットにより阻害されるため、電極パネルに大きな応力が作用してしまい、電極パネルに割れ等が生じて破損してしまう虞がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、電極パネルの破損を抑制することにより、信頼性を向上させることが可能なプラズマリアクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、ガスが流入する前面、ガスが流出する後面、及び、前記前面と前記後面との間に位置する側面を有し、放電電極を有する複数の電極パネルを積層した構造を有し、前記前面側から前記後面側にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるプラズマパネル積層体と、前記プラズマパネル積層体が収容される筒状のケースと、前記ケース及び前記プラズマパネル積層体の間に介在され、前記プラズマパネル積層体を前記ケースに保持するマットとを備えるプラズマリアクタであって、前記マットは、前記側面に接触する側面側マット部と、前記後面に接触する後面側マット部とを含んで構成され、積層体保持状態において、後押え板により前記後面側マット部を介して前記プラズマパネル積層体の前記後面が前記前面側の方向に押圧されていることを特徴とするプラズマリアクタがある。
【0008】
従って、上記手段1に記載の発明では、プラズマパネル積層体の後面を後面側マット部を介して前面側の方向に押圧している。この場合、後面側マット部によってプラズマパネル積層体が確実に保持されるため、側面側マット部を介してプラズマパネル積層体の側面に作用する圧力を低減することが可能となる。その結果、熱膨張に起因する電極パネルの変形がマットに阻害されにくくなるため、マットから電極パネルに対して大きな応力が作用しにくくなり、電極パネルの割れ等による破損が抑制される。ゆえに、プラズマリアクタの信頼性を向上させることができる。
【0009】
上記プラズマリアクタを構成するプラズマパネル積層体は、放電電極を有する複数の電極パネルを積層した構造を有する。放電電極の形成材料としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、酸化ルテニウム(RuO2)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)などを挙げることができる。また、プラズマパネル積層体は、セラミック材料からなる複数の電極パネルを積層することにより略直方体状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、プラズマパネル積層体の外表面に側面側マット部や後面側マット部を接触させやすくなる。なお、セラミック材料としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化イットリウム(Y2O3)等のセラミックやそれらの混合物を挙げることができる。
【0010】
上記プラズマリアクタを構成するマットは、ケース及びプラズマパネル積層体の間に介在される。ここで、マットの形成材料としては、例えば、セラミック繊維、金属繊維、発泡金属等の絶縁材料を挙げることができる。また、マットは、プラズマパネル積層体の側面に接触する側面側マット部と、プラズマパネル積層体の後面に接触する後面側マット部とを含んで構成される。ここで、後面側マット部は後面の外周部を押圧していることが好ましい。このようにした場合、後面側マット部は、後面において外周部よりも内側にあるガスの流出部分を塞ぐことなく、後面を押圧することができる。さらに、後面側マット部は、後面と側面との境界部分に位置するプラズマパネル積層体の角部を覆っていることが好ましい。このようにすれば、プラズマパネル積層体の角部を保護できるため、プラズマリアクタの信頼性がよりいっそう向上する。
【0011】
なお、マットは、前面に接触する前面側マット部をさらに含んで構成され、積層体保持状態において、前面側マット部を介してプラズマパネル積層体の前面が後面側の方向に押圧されていてもよい。このようにすれば、プラズマパネル積層体が前面側マット部と後面側マット部とに挟み込まれた状態で保持されるため、プラズマパネル積層体をより確実に保持できるとともに、側面側マット部を介してプラズマパネル積層体の側面に作用する圧力をよりいっそう小さくすることができる。その結果、電極パネルの破損を確実に防止できるため、プラズマリアクタの信頼性がよりいっそう向上する。なお、前面側マット部は前面の外周部を押圧していることが好ましい。このようにした場合、前面側マット部は、前面において外周部よりも内側にあるガスの流入部分を塞ぐことなく、前面を押圧することができる。
【0012】
さらに、マットは、側面側マット部、前面側マット部及び後面側マット部を一体形成することにより構成されていることが好ましい。このようにすれば、側面側マット部、前面側マット部及び後面側マット部を接合することによりマットを構成する場合に比べて、マットを容易に作製することができる。また、プラズマパネル積層体が後面側の方向に押圧される際において、後面側マット部が後面を押圧する力だけでなく、側面側マット部とプラズマパネル積層体の側面との間に生じる摩擦力によっても、プラズマパネル積層体が保持される。このため、プラズマパネル積層体の後面側への位置ずれを確実に防止することができる。
【0013】
また、側面側マット部の一部に突片が突設され、突片は、折り返されて後面に接触することにより、後面側マット部を構成するものであってもよい。このようにすれば、突片によってもプラズマパネル積層体の後面が押圧されるため、プラズマパネル積層体の後面側への位置ずれをより確実に防止できる。また、側面側マット部に突片を接合する場合に比べて、後面側マット部を容易に形成することができる。しかも、突片の折り返し部分によって、プラズマパネル積層体の後面と側面との境界部分に位置する角部を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態におけるプラズマリアクタを示す概略断面図。
【
図2】プラズマパネル積層体、マット及び後押え板の配置態様を示す概略断面図。
【
図4】プラズマパネル積層体、クランプ、電源供給端子、マット及び後押え板を示す斜視図。
【
図5】プラズマパネル積層体、クランプ及びマットを示す斜視図。
【
図6】プラズマパネル積層体、電源供給端子及びマットを示す後面図。
【
図7】プラズマパネル積層体、クランプ及び電源供給端子を示す斜視図。
【
図9】第2実施形態において、プラズマパネル積層体、マット、前押え板及び後押え板の配置態様を示す概略断面図。
【
図10】プラズマパネル積層体、クランプ、電源供給端子、マット、前押え板及び後押え板を示す斜視図。
【
図11】他の実施形態において、マットを示す展開図。
【
図14】他の実施形態において、マットの固定態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明のプラズマリアクタ1を具体化した第1実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
図1~
図3に示されるように、本実施形態のプラズマリアクタ1は、自動車のエンジン(図示略)の排ガスに含まれているPMを除去する装置であり、排気管2に取り付けられている。プラズマリアクタ1は、電源3、ケース10及びプラズマパネル積層体20を備えている。
【0017】
ケース10は、例えばステンレス鋼を用いて矩形筒状に形成されている。ケース10の第1端部(
図1,
図2では左端部)には第1コーン部11が接続され、ケース10の第2端部(
図1,
図2では右端部)には第2コーン部12が接続されている。さらに、第1コーン部11は、排気管2の上流側部分4(エンジン側の部分)に接続され、第2コーン部12は、排気管2の下流側部分5(エンジン側とは反対側の部分)に接続されている。なお、エンジンからの排ガスは、排気管2の上流側部分4から第1コーン部11を介してケース10内に流入し、ケース10内を通過した後、第2コーン部12を介して排気管2の下流側部分5に流出する。
【0018】
図1,
図2,
図4~
図7に示されるように、プラズマパネル積層体20は、ケース10内に収容されており、排ガスが流入する前面21と、排ガスが流出する後面22と、4つの側面23,24,25,26とを有する略直方体状を成している。前面21及び後面22は、プラズマパネル積層体20において互いに反対側に位置している。各側面23~26は、前面21と後面22との間に位置している。詳述すると、側面23は、前面21側から後面22側に流れる排ガスの通過方向F1(第1コーン部11から第2コーン部12に向かう方向)から見たときに、上面となる面である(
図4,
図7参照)。同様に、側面24は、通過方向F1から見たときに右面となる面であり、側面25は、通過方向F1から見たときに下面となる面であり、側面26は、通過方向F1から見たときに左面となる面である。
【0019】
また、プラズマパネル積層体20は、複数の電極パネル30を積層した構造を有している。各電極パネル30は、通過方向F1と平行に配置されており、互いに隙間(本実施形態では、0.5mmの隙間)を有するように配置されている。詳述すると、プラズマパネル積層体20は、隣接する電極パネル30間に、排ガスが通過するガス流路27(
図1,
図2参照)を有している。そして、ガス流路27は、前面21及び後面22において開口する開口部28を備えている。
【0020】
図1に示されるように、各電極パネル30には、プラズマパネル積層体20の厚さ方向に沿って第1の配線6及び第2の配線7が交互に電気的に接続されている。第1の配線6は、電源3の第1の端子に電気的に接続され、第2の配線7は、電源3の第2の端子に電気的に接続されている。
【0021】
図1,
図8に示されるように、本実施形態の電極パネル30は、第1主面31及び第2主面32を有し、縦100mm×横200mmの略矩形板状を成している。さらに、電極パネル30は、矩形板状の誘電体33に放電電極34(厚さ10μm)を内蔵してなる構造を有している。本実施形態において、誘電体33はアルミナ(Al
2O
3)等のセラミックからなり、放電電極34はタングステン(W)からなる。また、誘電体33は、第2主面32にて開口する凹部35を有している。凹部35は、電極パネル30の横方向に延びており、電極パネル30の両端面にて開口している。本実施形態のプラズマパネル積層体20では、凹部35の内側面と下層側に隣接する電極パネル30の第1主面31との間に、上記したガス流路27が構成される。なお、プラズマパネル積層体20を構成する最下層の電極パネル30には、下層側に電極パネル30が存在しないため、凹部35は形成されていない。
【0022】
そして、
図8に示されるように、電極パネル30における凹部35の片側部分(具体的には、側面24側の部分)には、第1主面31側と第2主面32側とを導通させる一対の電気取出部41,42が設けられている。各電気取出部41,42は、ガス流路27を流れる排ガスの通過方向F1に沿って離間配置されている。詳述すると、各電気取出部41,42は、スルーホール導体43、第1取出電極44及び第2取出電極45を備えている。スルーホール導体43は、電極パネル30を厚さ方向に貫通している。そして、一方の電気取出部41に設けられたスルーホール導体43は、放電電極34から外周側に延出する延出部36を貫通している。また、第1取出電極44は、第1主面31に形成されており、スルーホール導体43の第1主面31側端部に対して電気的に接続されている。一方、第2取出電極45は、第2主面32に形成されており、スルーホール導体43の第2主面32側端部に対して電気的に接続されている。なお、第1取出電極44及び第2取出電極45は、それぞれ長方形状を成しており、表面にNi等のめっきが施されている。
【0023】
図4,
図5,
図7に示されるように、プラズマリアクタ1は、各電極パネル30(プラズマパネル積層体20)を側面24側から挟み込んで固定する3つの第1クランプ51,52,53と、各電極パネル30を側面26側から挟み込んで固定する3つの第2クランプ54,55,56とを備えている。各クランプ51~56は、金属板(例えば、SUS430等の材料からなるステンレス板)を折り曲げることによって形成されている。また、第1クランプ51~53は、側面24において、排ガスの通過方向F1に沿って等間隔に配置され、第2クランプ54~56は、側面26において、排ガスの通過方向F1に沿って等間隔に配置されている。
【0024】
なお、側面24の上流側部分に配置された第1クランプ51、及び、側面26に配置された第2クランプ54~56は、各電極パネル30を積層方向に挟み込む機能のみを有している。一方、側面24の中央部分及び下流側部分に配置された第1クランプ52,53は、各電極パネル30を積層方向に挟み込む機能に加えて、放電電極34に電気的に接続する機能を有している。
【0025】
図4,
図5,
図7に示されるように、各クランプ51~56は、板部材57及び押え板58を備えている。板部材57は、電極パネル30の積層方向に延びている。押え板58は、板部材57と一体に形成され、板部材57の両端部に配置されている。両押え板58は、弾性を有しており、折り返し構造を有する板ばねである。なお、両押え板58は、プラズマパネル積層体20の側面23と側面25とにそれぞれ圧接している。そして、第1クランプ52,53を構成する両押え板58は、側面23(最上層の電極パネル30の第1主面31)に形成された第1取出電極44と、側面25(最下層の電極パネル30の第2主面32)に形成された第2取出電極45とにそれぞれ圧接している。
【0026】
図3,
図4,
図6,
図7に示されるように、プラズマリアクタ1は、一対の電源供給端子61,62を備えている。本実施形態の電源供給端子61,62は、スパークプラグと同様の構造を有している。詳述すると、電源供給端子61,62は、外部接続部、金属粉末を含む導電性シール、絶縁体、主体金具、滑石、パッキン類等を備えている。外部接続部は、導電性シールを介して中心軸63に接続されている。中心軸63は、片側の端部が絶縁体内に配置されている。なお、電源供給端子は、本実施形態のものに限定される訳ではなく、絶縁体によって外部接続部とケース10との間が絶縁されている構造であれば、他の構造であってもよい。
【0027】
また、電源供給端子61は、基端部(中心軸63)が第1クランプ52の板部材57に電気的に接続され、先端部がケース10から露出している。同様に、電源供給端子62は、基端部(中心軸63)が第1クランプ53の板部材57に電気的に接続され、先端部がケース10から露出している。そして、各電源供給端子61,62は、互いに同一方向に突出している。なお、本実施形態では、電源供給端子61の先端部が第1の配線6(
図1参照)に接続されるとともに、電源供給端子62の先端部が第2の配線7(
図1参照)に接続されるようになっている。
【0028】
図1,
図2,
図4~
図6に示されるように、ケース10とプラズマパネル積層体20との間には、排ガスの通過方向F1から見たときに矩形環状を成すマット71が介在されている。マット71は、プラズマパネル積層体20をケース10に固定する機能を有している。また、マット71は、プラズマパネル積層体20の外表面の略全体を覆っている。詳述すると、マット71は、側面23に接触する略矩形板状の第1側面側マット部72と、側面24に接触する略矩形板状の第2側面側マット部73と、側面25に接触する略矩形板状の第3側面側マット部74と、側面26に接触する略矩形板状の第4側面側マット部75とを含んで構成されている。さらに、本実施形態のマット71は、プラズマパネル積層体20の後面22に接触する後面側マット部76を含んで構成されている。マット71は、各マット部72~76を、必要に応じて、接着テープ等を用いて互いに接合することにより構成される。ここで、マット部72~76は、それぞれ同じ材料(本実施形態では、セラミック繊維からなる絶縁材料)を用いて形成されている。
【0029】
図4,
図5に示されるように、本実施形態のマット71には、同マット71を厚さ方向に貫通する2つの切欠部81,82が形成されている。切欠部81の内側領域には第1クランプ52が位置しており、切欠部82の内側領域には第1クランプ53が位置している。詳述すると、切欠部81,82は、第2側面側マット部73を厚さ方向に貫通する溝部83と、側面側マット部72,74をそれぞれ厚さ方向に貫通する一対の凹部84とからなっている。溝部83は、電極パネル30の積層方向に沿って延びており、第2側面側マット部73を分断している。一方、凹部84は、側面側マット部72,74の外周部の一部のみに形成されており、側面側マット部72,74を分断しないようになっている。なお、溝部83内には、第1クランプ52,53の板部材57と電源供給端子61,62の中心軸63とが配置され、凹部84内には、第1クランプ52,53の押え板58が配置されている。
【0030】
また、
図2,
図4~
図6に示される後面側マット部76は、積層体保持状態(即ち、プラズマパネル積層体20をケース10に保持している状態)において、プラズマパネル積層体20の後面22を前面21側の方向に押圧するためのものである。後面側マット部76は、第1側面側マット部72の後面22側の端面に接触する第1接触部91と、第2側面側マット部73の後面22側の端面に接触する第2接触部92と、第3側面側マット部74の後面22側の端面に接触する第3接触部93と、第4側面側マット部75の後面22側の端面に接触する第4接触部94とからなる矩形環状を成している。また、後面側マット部76には、同後面側マット部76を厚さ方向に貫通する矩形状の貫通孔95を有している。後面側マット部76における貫通孔95付近の領域は、後述する矩形板状を成す金属製の後押え板101によって押圧され、後押え板101の形状に沿う形状に変形している。このため、貫通孔95は、後面22から離間するのに伴って徐々に内径が大きくなるテーパ状を成している。
【0031】
図2,
図6に示されるように、本実施形態の後面側マット部76では、第1~第4接触部91~94のうち、第2,第4接触部92,94のみが後面22を押圧するようになっている。具体的に言うと、第2接触部92は、後面22の外周部のうち、プラズマパネル積層体20の側面24寄りの領域であって、開口部28を有しない領域を押圧するようになっている。第4接触部94は、後面22の外周部のうち、プラズマパネル積層体20の側面26寄りの領域であって、開口部28を有しない領域を押圧するようになっている。
【0032】
さらに、
図2に示されるように、後面側マット部76の第2接触部92は、後面22と側面24との境界部分に位置するプラズマパネル積層体20の角部96を覆うようになっている。同様に、後面側マット部76の第4接触部94は、後面22と側面26との境界部分に位置するプラズマパネル積層体20の角部97を覆うようになっている。
【0033】
なお、本実施形態では、積層体保持状態において、第2側面側マット部73や第4側面側マット部75に作用する圧力をP1とし、第1側面側マット部72や第3側面側マット部74に作用する圧力をP2とし、後面側マット部76に作用する圧力をP3としたとき、P1+P2>P3の関係を満たすとともに、P2<P1の関係を満たすようになっている。また、積層体保持状態において、各側面側マット部72~75の厚さは15mmとなっており、後面側マット部76の(最大)厚さは10mmとなっている。さらに、積層体保持状態において、マット部72~75の圧縮率は、0%以上50%以下、具体的には、10%以上40%以下(本実施形態では約32%)となっている。なお、積層体保持状態におけるマット部76の圧縮率は、部位によって異なるが、0%以上50%以下、本実施形態では10%以上40%以下となっている。
【0034】
なお、各マット部72~76の圧縮率は、互いに等しくなくてもよい。例えば、側面23,25を覆うマット部(側面側マット部72,74)の圧縮率、側面24,26を覆うマット部(側面側マット部73,75)の圧縮率、及び、後面22を覆うマット部(後面側マット部76)の圧縮率は、互いに等しくなくてもよい。つまり、プラズマパネル積層体20の耐圧力を考慮したうえで、マット部の圧縮率を設定することにより、破損に強いプラズマリアクタ1を得ることができる。
【0035】
図2,
図4に示されるように、ケース10内におけるプラズマパネル積層体20の下流側位置には、矩形板状を成す金属製の後押え板101が配置されている。後押え板101は、積層体保持状態において、後面側マット部76を押圧することにより、後面側マット部76を後押え板101とプラズマパネル積層体20との間に挟み込んだ状態に固定するためのものである。後押え板101は、矩形環状を成す押え板本体102と、押え板本体102の前面103からプラズマパネル積層体20の後面22側に突出する突出部104とを備えている。押え板本体102の前面103は、後面側マット部76の後面105に面接触するようになっている。また、突出部104は、後面22に接近するのに伴って徐々に外径(幅)が小さくなるテーパ状を成している。そして、突出部104の外側面は、後面側マット部76側の貫通孔95の内側面(テーパ面)に面接触可能となっている(
図2参照)。また、突出部104には、後押え板101を厚さ方向に貫通する矩形状の貫通孔106が設けられている。貫通孔106は、後面側マット部76側の貫通孔95よりも大きい内側形状(凹部35で形成される流路の開口部よりも大きい寸法)をなしている。
【0036】
なお、
図1に示されるように、本実施形態のプラズマリアクタ1は、例えば、排ガスに含まれているPMを除去するために用いられる。この場合、プラズマパネル積層体20の前面21側から後面22側に排ガスが流れている状態で、電源3から互いに隣接する電極パネル30間にパルス電圧(例えば、ピーク電圧:5kV(5000V)、パルス繰返し周波数:200~1000Hz)が印加されると、誘電体バリア放電が生じ、放電電極34間に誘電体バリア放電によるプラズマが発生する。そして、プラズマの発生により、ガス流路27を流れる排ガスに含まれるPMが酸化(燃焼)されて除去される。
【0037】
次に、プラズマリアクタ1の製造方法を説明する。
【0038】
まず、アルミナ粉末を主成分とするセラミック材料を用いて、誘電体33となる第1~第3のセラミックグリーンシートを形成する。なお、セラミックグリーンシートの形成方法としては、テープ成形や押出成形などの周知の成形法を用いることができる。そして、各セラミックグリーンシートに対してレーザ加工を行い、スルーホール導体43用の貫通孔を形成する。なお、貫通孔の形成を、パンチング加工、ドリル加工等によって行ってもよい。
【0039】
次に、従来周知のペースト印刷装置(図示略)を用いて、スルーホール導体43用の貫通孔に導電性ペースト(本実施形態では、タングステンペースト)を充填し、スルーホール導体43となる未焼成のスルーホール導体部を形成する。
【0040】
次に、第1のセラミックグリーンシートを支持台(図示略)に載置する。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第1のセラミックグリーンシートの裏面上に導電性ペーストを印刷する。その結果、第1のセラミックグリーンシートの裏面上に、放電電極34となる厚さ10μmの未焼成電極が形成される。なお、第1のセラミックグリーンシートに対する未焼成電極の印刷方法としては、スクリーン印刷などの周知の印刷法を用いることができる。
【0041】
そして、導電性ペーストの乾燥後、未焼成電極が印刷された第1のセラミックグリーンシートの裏面上に、第2のセラミックグリーンシート及び第3のセラミックグリーンシートを順番に積層し、シート積層方向に押圧力を付与する。その結果、各セラミックグリーンシートが一体化され、セラミック積層体が形成される。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第1のセラミックグリーンシートの主面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第1取出電極44を形成するとともに、第3のセラミックグリーンシートの裏面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第2取出電極45を形成する。なお、第3のセラミックグリーンシートは、凹部35の形状に合わせた打抜加工を施した後に積層される。
【0042】
次に、周知の手法に従って乾燥工程や脱脂工程などを行った後、セラミックグリーンシート及び未焼成電極をアルミナ及びタングステンが焼結しうる所定の温度(例えば、1400℃~1600℃程度)に加熱する同時焼成を行う。その結果、セラミックグリーンシート中のアルミナ、及び、導電性ペースト中のタングステンが同時焼結し、誘電体33、放電電極34、スルーホール導体43、取出電極44,45が同時焼成によって形成され、第1~第3のセラミックグリーンシートが電極パネル30となる。
【0043】
その後、積層工程を行い、得られた電極パネル30を積層して、プラズマパネル積層体20を形成する。次に、クランプ51~56を用いて、複数の電極パネル30を積層方向に挟み込んで固定する。このとき、第1クランプ52,53を構成する一対の押え板58が、第1取出電極44と第2取出電極45とに圧接する。さらに、溶接等を行うことにより、第1クランプ52を構成する板部材57に電源供給端子61の中心軸63を電気的に接続するとともに、第1クランプ53を構成する板部材57に電源供給端子62の中心軸63を電気的に接続する。
【0044】
次に、プラズマパネル積層体20の外表面を覆うようにマット71を取り付ける。具体的には、側面23を覆うように第1側面側マット部72を取り付け、側面24を覆うように第2側面側マット部73を取り付け、側面25を覆うように第3側面側マット部74を取り付け、側面26を覆うように第4側面側マット部75を取り付ける。また、プラズマパネル積層体20の後面22を覆うように後面側マット部76を取り付ける。次に、各側面側マット部72~75の外表面を覆うようにケース10を取り付ける。さらに、ケース10内に後押え板101を挿入し、挿入した後押え板101を後面側マット部76に接触させる。その後、電源供給端子61の先端部に第1の配線6を接続するとともに、電源供給端子62の先端部に第2の配線7を接続する。以上のプロセスを経て、プラズマリアクタ1が完成する。
【0045】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0046】
(1)ところで、プラズマパネル積層体20は、ガス流路27を通過方向F1に沿って流れる排ガスの圧力により、通常、後面22側の方向に押圧される。そこで、本実施形態のプラズマリアクタ1では、プラズマパネル積層体20の後面22を後面側マット部76を介して前面21側の方向に押圧している。この場合、後面側マット部76によってプラズマパネル積層体20の後面22側への移動が抑制されるため、側面側マット部72~75を介してプラズマパネル積層体20の側面23~26に作用する圧力を小さくすることも可能となる。その結果、高温の排ガスの流入時において、熱膨張に起因する電極パネル30の変形が生じたとしても、電極パネル30の変形がマット71に阻害されにくくなる。従って、マット71から電極パネル30に対して大きな応力が作用しにくくなるため、電極パネル30の割れ等による破損が抑制される。ゆえに、プラズマリアクタ1の信頼性を向上させることができる。
【0047】
(2)さらに、本実施形態では、後面側マット部76だけでなく、後押え板101によっても、プラズマパネル積層体20の後面22が押圧されている。この場合、プラズマパネル積層体20の後面22側への移動がより確実に抑制されるため、側面側マット部72~75を介してプラズマパネル積層体20の側面23~26に作用する圧力をよりいっそう小さくすることができる。その結果、電極パネル30に作用する応力がいっそう小さくなるため、プラズマリアクタ1の信頼性がよりいっそう向上する。
【0048】
(3)本実施形態の後押え板101では、押え板本体102の前面103が後面側マット部76(後面105)に面接触するだけでなく、突出部104の外側面も後面側マット部76(貫通孔95の内側面)に面接触するようになっている。その結果、後押え板101と後面側マット部76との接触面積が大きくなるため、後押え板101によって後面側マット部76を安定的に保持することができる。
【0049】
(4)本実施形態のプラズマリアクタ1は、第1コーン部11及び第2コーン部12を介して排気管2に取り付けられている。その結果、排気管2の上流側部分4→第1コーン部11→プラズマリアクタ1→第2コーン部12→排気管2の下流側部分5の順番に排ガスが流れる排ガス流路内の抵抗が低減されるため、排ガス流路内における圧力損失を抑えることができる。ひいては、圧力損失に伴うエンジンの出力低下も防止することができる。
【0050】
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、前記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。本実施形態は、プラズマパネル積層体の保持構造が前記第1実施形態とは異なる形態である。
【0051】
図9,
図10に示されるように、本実施形態のプラズマリアクタ111が備えるマット112は、プラズマパネル積層体113の前面114に接触する前面側マット部115をさらに含んで構成されている。マット112は、第1側面側マット部72、第2側面側マット部73、第3側面側マット部(図示略)、第4側面側マット部75、後面側マット部76及び前面側マット部115を、接着テープ等を用いて互いに接合することにより構成される。
【0052】
また、前面側マット部115は、積層体保持状態において、プラズマパネル積層体113の前面114を後面120側の方向に押圧するためのものである。前面側マット部115は、後面側マット部76と略同様の構成を有している。即ち、前面側マット部115は、第1側面側マット部72の前面114側の端面に接触する第1接触部121と、第2側面側マット部73の前面114側の端面に接触する第2接触部122と、第3側面側マット部の前面114側の端面に接触する第3接触部123と、第4側面側マット部75の前面114側の端面に接触する第4接触部124とからなる矩形環状を成している。また、前面側マット部115には、同前面側マット部115を厚さ方向に貫通する矩形状の貫通孔125を有している。前面側マット部115における貫通孔125付近の領域は、後述する矩形板状を成す金属製の前押え板131によって押圧され、前押え板131の形状に沿う形状に変形している。このため、貫通孔125は、前面114から離間するのに伴って徐々に内径が大きくなるテーパ状を成している。
【0053】
図9に示されるように、本実施形態の前面側マット部115では、第1~第4接触部121~124のうち、第2,第4接触部122,124のみが前面114を押圧するようになっている。具体的に言うと、第2接触部122は、前面114の外周部のうち、プラズマパネル積層体113の側面126寄りの領域であって、開口部127(
図10参照)を有しない領域を押圧するようになっている。第4接触部124は、前面114の外周部のうち、プラズマパネル積層体113の側面128寄りの領域であって、開口部127を有しない領域を押圧するようになっている。
【0054】
さらに、前面側マット部115の第2接触部122は、前面114と側面126との境界部分に位置するプラズマパネル積層体113の角部129を覆うようになっている。同様に、前面側マット部115の第4接触部124は、前面114と側面128との境界部分に位置するプラズマパネル積層体113の角部130を覆うようになっている。
【0055】
なお、本実施形態では、積層体保持状態において、第2,第4側面側マット部73,75に作用する圧力をP1、第1,第3側面側マット部72に作用する圧力をP2、前面側マット部115や後面側マット部76に作用する圧力をP3としたとき、P1+P2>P3の関係やP2<P1の関係を満たすようになっている。また、積層体保持状態において、前面側マット部115及び後面側マット部76の(最大)厚さは10mm、前面側マット部115の圧縮率はマット部76の圧縮率と等しくなっている。なお、各マット部72~76,115の圧縮率は、互いに等しくなくてもよい。
【0056】
図9,
図10に示されるように、ケース10内におけるプラズマパネル積層体113の上流側位置には、矩形板状を成す金属製の前押え板131が配置されている。前押え板131は、積層体保持状態において、前面側マット部115を押圧することにより、前面側マット部115を前押え板131とプラズマパネル積層体113との間に挟み込んだ状態に固定するためのものである。前押え板131は、後押え板101と略同様の構成を有している。即ち、前押え板131は、矩形環状を成す押え板本体132と、押え板本体132の後面133からプラズマパネル積層体113の前面114側に突出する突出部134とを備えている。押え板本体132の後面133は、前面側マット部115の前面135に面接触するようになっている。また、突出部134は、プラズマパネル積層体113の前面114に接近するのに伴って徐々に外径(幅)が小さくなるテーパ状を成している。そして、突出部134の外側面は、前面側マット部115側の貫通孔125の内側面(テーパ面)に面接触可能となっている(
図9参照)。また、突出部134には、前押え板131を厚さ方向に貫通する矩形状の貫通孔136(
図10参照)が設けられている。貫通孔136は、前面側マット部115側の貫通孔125よりも大きい内側形状(凹部35で形成される流路の開口部よりも大きい寸法)をなしている。
【0057】
従って、本実施形態によれば、上記第1実施形態に記載の効果に加え、さらに以下の効果を得ることができる。
【0058】
(5)本実施形態のマット112は、前面114に接触する前面側マット部115をさらに含んで構成され、積層体保持状態において、プラズマパネル積層体113の前面114が前面側マット部115を介して後面120側の方向に押圧されている。この場合、プラズマパネル積層体113が、前面側マット部115と後面側マット部76とに挟み込まれた状態で保持されるため、プラズマパネル積層体113をより確実に保持できるとともに、第1~第4側面側マット部72~75を介してプラズマパネル積層体113の側面に作用する圧力をよりいっそう小さくすることができる。その結果、熱膨張に起因する電極パネル30の破損を確実に防止できるため、プラズマリアクタ111の信頼性がよりいっそう向上する。
【0059】
(6)さらに、本実施形態では、前面側マット部115だけでなく、前押え板131によっても、プラズマパネル積層体113の前面114が押圧されている。この場合、プラズマパネル積層体113の前面114側への移動がより確実に抑制されるため、第1~第4側面側マット部72~75を介してプラズマパネル積層体113の側面に作用する圧力をよりいっそう小さくすることができる。その結果、電極パネル30に作用する応力がいっそう小さくなるため、プラズマリアクタ111の信頼性がよりいっそう向上する。
【0060】
(7)本実施形態の前押え板131では、押え板本体132の後面133が前面側マット部115(前面135)に面接触するだけでなく、突出部134の外側面も前面側マット部115(貫通孔125の内側面)に面接触するようになっている。その結果、前押え板131と前面側マット部115との接触面積が大きくなるため、前押え板131によって前面側マット部115を安定的に保持することができる。
【0061】
なお、上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
【0062】
・上記第1実施形態のマット71は、第1~第4側面側マット部72~75及び後面側マット部76を互いに接合することによって構成されていた。しかし、マット71は、第1~第4側面側マット部72~75及び後面側マット部76を一体形成することにより構成されていてもよい。同様に、上記第2実施形態のマット112は、第1~第4側面側マット部72~75、前面側マット部115及び後面側マット部76を互いに接合することによって構成されていた。しかし、マット112は、第1~第4側面側マット部72~75、前面側マット部115及び後面側マット部76を一体形成することにより構成されていてもよい。
【0063】
なお、マットが、複数のマット部を一体形成することにより構成される場合、マット141は、例えば
図11に示されるシート140を破線部分で折り曲げた後、第1の端部(
図11では右端部)に形成された凸部142を第2の端部(
図11では左端部)に形成された凹部143に嵌合させることにより、矩形環状に形成される。なお、破線は、隣接する側面側マット部144の境界部分を示している。そして、マット141内には、プラズマパネル積層体145が収容されるようになる(
図12,
図13参照)。
【0064】
また、複数の側面側マット部144の一部に突片146を突設してもよい。なお、突片146は、折り返されてプラズマパネル積層体145の後面147に接触することにより、後面側マット部148を構成するようになっている(
図12,
図13参照)。このようにすれば、突片146によってプラズマパネル積層体145の後面147が押圧されるため、プラズマパネル積層体145の後面147側への位置ずれを確実に防止することができる。また、側面側マット部144に突片146を接合する場合に比べて、後面側マット部148を容易に形成することができる。
【0065】
・上記各実施形態では、後面側マット部76が、後押え板101に押圧されることにより、後押え板101とプラズマパネル積層体20,113との間に挟み込まれた状態に固定されるようになっていた。さらに、上記第2実施形態では、前面側マット部115が、前押え板131に押圧されることにより、前押え板131とプラズマパネル積層体113との間に挟み込まれた状態に固定されるようになっていた。しかし、後面側マット部及び前面側マット部は、押え板のような部材を用いずに固定されるものであってもよい。例えば、
図14に示されるように、コーン部151の開口端部(ケース152との接続部分)に、コーン部151の内周側に突出するフランジ153を形成し、フランジ153によってマット部154(後面側マット部または前面側マット部)を押圧することにより、マット部154をフランジ153とプラズマパネル積層体155との間に挟み込んだ状態に固定してもよい。また、フランジ153の代わりに突起を形成してもよいし、フランジ153や突起をケース152側に設けてもよい。即ち、コーン部151やケース152のような元々ある部材を加工することにより、マット部154の固定構造を形成するようにしてもよい。
【0066】
・上記各実施形態の電極パネル30は、誘電体33に放電電極34を内蔵することによって構成されていた。しかし、誘電体33の表面に放電電極34を形成することによって電極パネルを形成してもよい。
【0067】
・上記各実施形態のプラズマリアクタ1は、自動車のエンジンの排ガス浄化に用いられていたが、例えば、船舶等のエンジンの排ガス浄化に用いてもよい。また、プラズマリアクタ1は、プラズマ処理を行うものであればよく、排ガスの処理を行うものでなくてもよいし、浄化に用いるものでなくてもよい。
【0068】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0069】
(1)上記手段1において、前記マットは、前記前面に接触する前面側マット部をさらに含んで構成され、前記前面側マット部は、前記前面と前記側面との境界部分に位置する前記プラズマパネル積層体の角部を覆っていることを特徴とするプラズマリアクタ。
【0070】
(2)上記手段1において、前記ケース内における前記プラズマパネル積層体の下流側位置に後押え板が配置され、積層体保持状態において、前記後面側マット部が前記後押え板に押圧されることにより、前記後面側マット部が前記後押え板と前記プラズマパネル積層体との間に挟み込まれた状態に保持されることを特徴とするプラズマリアクタ。
【0071】
(3)上記手段1において、前記マットは、前記前面に接触する前面側マット部をさらに含んで構成され、前記ケース内における前記プラズマパネル積層体の上流側位置に前押え板が配置され、積層体保持状態において、前記前面側マット部が前記前押え板に押圧されることにより、前記前面側マット部が前記前押え板と前記プラズマパネル積層体との間に挟み込まれた状態に保持されることを特徴とするプラズマリアクタ。
【0072】
(4)上記手段1において、前記プラズマパネル積層体は、セラミック材料からなる前記複数の電極パネルを積層することにより略直方体状に形成され、前記前面側から前記後面側に流れるガスの通過方向から見たときに上面、下面、左面及び右面となる面を、前記側面として有しており、積層体保持状態において、前記左面及び前記右面に接触する前記側面側マット部に作用する圧力をP1とし、積層体保持状態において、前記上面及び前記下面に接触する前記側面側マット部に作用する圧力をP2とし、積層体保持状態において、前記前面側マット部及び前記後面側マット部に作用する圧力をP3としたときに、P1+P2>P3の関係を満たすことを特徴とするプラズマリアクタ。
【0073】
(5)技術的思想(4)において、P2<P1の関係を満たすことを特徴とするプラズマリアクタ。
【符号の説明】
【0074】
1,111…プラズマリアクタ
10…ケース
20,113,145,155…プラズマパネル積層体
21,114…前面
22,120,147…後面
23,24,25,26,126,128…側面
30…電極パネル
34…放電電極
71,112,140…マット
72…側面側マット部としての第1側面側マット部
73…側面側マット部としての第2側面側マット部
74…側面側マット部としての第3側面側マット部
75…側面側マット部としての第4側面側マット部
76,148…後面側マット部
96,97…角部
115…前面側マット部
144…側面側マット部
146…突片
154…マット部(後面側マット部または前面側マット部)