(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220927BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/304 622J
(21)【出願番号】P 2018104895
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】奥野 長平
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231011(JP,A)
【文献】特開2008-034710(JP,A)
【文献】特開2006-114643(JP,A)
【文献】特開2010-103426(JP,A)
【文献】特開2008-282989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送過程と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に保持部材が接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持過程と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離過程と、
を備え
、
前記剥離過程は、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着部材で吸着することにより、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項2】
ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送過程と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に保持部材が接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持過程と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離過程と、
を備え、
前記剥離過程は、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に第1気体供給機構により前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項3】
請求項2に記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記剥離過程は、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着部材で吸着することにより、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項4】
請求項1
ないし請求項3のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記保持過程は、
前記ワークの周縁部に接触した前記保持部材の各々が、前記ワークに対して前記ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させることにより前記ワークが保持される
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項5】
請求項4に記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記保持過程は、
前記保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御しつつ、前記ワークを前記剥離位置に保持させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項6】
請求項1ないし
請求項5のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記保持部材は弾性体を備えており、
前記保持過程は、
前記弾性体が前記ワークの周縁部に接触して弾性変形することによって前記ワークを保持する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項7】
請求項1ないし
請求項6のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記保持部材は、
前記ワークの周縁部に接触する保持位置と、前記ワークから剥離される前記粘着テープとの接触を回避できる回避位置とを適宜に移動可能に構成され、
前記剥離過程は、
複数の前記保持部材の位置を前記保持位置と前記回避位置とに適宜切り換えつつ、前記粘着テープを前記ワークから剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記剥離過程は、
前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に吸引機構により前記ワークを非接触の状態で吸引し、前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の粘着テープ剥離方法であって、
前記剥離過程は、
前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に第2気体供給機構により前記ワークに気体を吹き付け、前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とする粘着テープ剥離方法。
【請求項10】
ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送機構と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持部材と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離機構と、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着し、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸着部材と、
を備えることを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項11】
ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送機構と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持部材と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離機構と、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する第1気体供給機構と、
を備えることを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項12】
請求項11に記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着し、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸着部材を備える
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項13】
請求項10
ないし請求項12のいずれかに記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークの周縁部に接触した前記保持部材の各々から前記ワークに対して前記ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させ、前記ワークを保持させる加圧機構を備える
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項14】
請求項13に記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御する制御機構を備える
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項15】
請求項10ないし
請求項14のいずれかに記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記保持部材は弾性体を備えており、
前記弾性体が前記ワークの周縁部に接触して弾性変形することによって前記ワークを保持する
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項16】
請求項10ないし
請求項15のいずれかに記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記保持部材を、前記ワークの周縁部に接触する保持位置と、前記ワークから剥離される前記粘着テープとの接触を回避できる回避位置とを適宜移動させる駆動機構を備え、
前記駆動機構が複数の前記保持部材の位置を前記保持位置と前記回避位置とに適宜切り換えつつ、前記剥離機構は前記粘着テープを前記ワークから剥離させる
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項17】
請求項10ないし請求項16のいずれかに記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に前記ワークを非接触の状態で吸引し、前記剥離機構が前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸引機構を備える
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【請求項18】
請求項10ないし請求項17のいずれかに記載の粘着テープ剥離装置であって、
前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離機構が前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する第2気体供給機構を備える
ことを特徴とする粘着テープ剥離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)に貼り付けられている、回路保護用の保護テープを例とする粘着テープを剥離するための粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターンが形成された後、回路保護用の粘着テープ(保護テープ)が回路面に貼り付けられ、バックグラインド工程によってウエハの裏面を研削する。バックグラインド工程が完了すると、保護テープをウエハから剥離させ、さらにダイシング工程によって当該ウエハを多数のチップ部品に分断する。この場合、ダイシング工程でチップ部品が飛散することを防ぐため、ダイシング工程の前に支持用の粘着テープ(支持テープ)をリングフレームとウエハの裏面とにわたって貼り付けて一体化させる。
【0003】
保護テープや支持テープを例とする粘着テープをウエハから剥離させるための従来の方法としては、一例として次のように実施されている。すなわち、粘着テープが貼り付けられている面を上向きにしてウエハを保持テーブルに吸着保持する。次に貼付けローラを転動させながら、粘着テープ上に剥離用の粘着テープ(剥離テープ)を貼り付ける。その後、先細り板状のエッジ部材で剥離テープを反転剥離させていくことにより、剥離テープに接着された粘着テープを一体にしてウエハの上面から剥離させる(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
当該方法において、ウエハの下面全体が保持テーブルに当接されて吸着保持される。一方で、ウエハの回路面を下向きにした状態でウエハの非回路面に貼り付けられている粘着テープを剥離するような場合、ウエハの上面から粘着テープを剥離する際に、下向きとなっているウエハの回路面に対して保持テーブルなどが物理的に接触する事態を避けることが好ましい。
【0005】
ウエハの回路面に対する物理的接触を回避しつつウエハを保持する方法としては以下のような方法が挙げられる。すなわち、保持テーブルは環状の凸部からなるウエハ保持部を備え、ウエハの下面のうち外周部に対して当該ウエハ保持部を当接させて吸着する。一般的にウエハの外周部には回路が形成されていないので、ウエハ保持部を介してウエハ下面の外周部を吸着保持することにより、回路に対する影響を抑えつつウエハを安定に保持できる(例えば、特許文献2を参照)。
【0006】
【文献】特開2002-124494号公報
【文献】特開2016-46437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。
【0008】
すなわち、従来の構成において環状凸部を備える保持テーブルにウエハを載置させる際に、予定の位置からずれる場合がある。この場合、ウエハの下面のうち回路が形成されている部分が予定外に保持テーブルの環状凸部と物理的に接触し、回路が損傷を受けるという事態が懸念される。このように、従来の構成ではウエハの上面から粘着テープを剥離する際に、ウエハの下面に対する物理的接触を確実に回避することが困難である。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、ウエハの一方の面に対する物理的接触を確実に回避しつつ、ウエハの他方の面に貼り付けられている粘着テープを好適に剥離できる粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送過程と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に保持部材が接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持過程と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離過程と、
を備え、
前記剥離過程は、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着部材で吸着することにより、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とするものである。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離方法であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送過程と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に保持部材が接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持過程と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離過程と、
を備え、
前記剥離過程は、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に第1気体供給機構により前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する
ことを特徴とするものである。
【0011】
(作用・効果)この構成によれば、剥離位置へワークを搬送させた後、ワークの周縁部に保持部材が接触することによってワークを剥離位置に安定な状態で保持する。このとき、ワークの上面および下面に保持部材などが物理的に直接接触することを回避できる。そしてワークの周縁部を保持部材で保持した状態で、ワークに貼り付けられている粘着テープに剥離テープを貼り付け、粘着テープを剥離テープと一体にして剥離する。
【0012】
すなわち、粘着テープが貼り付けられていないワークの面に保持部材などが接触していなくとも、ワークを安定に保持した状態で粘着テープをワークから剥離することができる。従って、粘着テープの剥離時において、ワークの面に保持部材などが物理的に接触することに起因する不具合が発生することを確実に回避できる。
【0013】
また、上述した発明において、前記保持過程は、前記ワークの周縁部に接触した前記保持部材の各々が、前記ワークに対して前記ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させることにより前記ワークが保持されることが好ましい。
【0014】
(作用・効果)この構成によれば、保持部材の各々がワークに対して、ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させることによりワークが保持される。この場合、ワークの中央部に向けて作用する力の各々により、ワークはより安定に保持される。従って、ワークの面に物理的接触が行われなくとも粘着テープの剥離過程においてワークが位置ズレすることをより確実に回避できる。
【0015】
また、上述した発明において、前記保持過程は、前記保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御しつつ、前記ワークを前記剥離位置に保持させることが好ましい。この場合、保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御される。そのため、過剰な力の作用によるワークの変形や、作用する力の不足に起因してワークを落とすといった、ワークの保持過程における不具合の発生をより確実に回避できる。
【0016】
また、上述した発明において、前記保持部材は弾性体を備えており、前記保持過程は、前記弾性体が前記ワークの周縁部に接触して弾性変形することによって前記ワークを保持することが好ましい。
【0017】
(作用・効果)この構成によれば、保持部材に設けられている弾性体がワークの周縁部に接触して弾性変形することによってワークは保持される。このとき、弾性体はワークの周縁部の形状に応じて弾性変形するので、保持部材とワークの周縁部と接触する部分はより広くなる。従って、保持部材はワークをより安定に保持することができる。
【0018】
また、上述した発明において、前記保持部材は、前記ワークの周縁部に接触する保持位置と、前記ワークから剥離される前記粘着テープとの接触を回避できる回避位置とを適宜に移動可能に構成され、前記剥離過程は、複数の前記保持部材の位置を前記保持位置と前記回避位置とに適宜切り換えつつ、前記粘着テープを前記ワークから剥離させることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、保持部材は保持位置と回避位置とを適宜移動できる。保持位置において保持部材はワークの周縁部に接触し、回避位置において保持部材はワークから剥離される粘着テープとの接触を回避できる。そして保持部材の位置を保持位置と回避位置とに適宜切り換えつつ粘着テープをワークから剥離させる。
【0020】
すなわち、粘着テープがワークから剥離される位置においては保持部材を回避位置へと移動させて粘着テープと保持部材との接触を回避しつつ、粘着テープがワークから剥離される位置以外における保持部材については保持位置へと移動させることができる。よって、粘着テープをワークから剥離する際に、保持位置に移動している保持部材によってワークを安定に保持しつつ、ワークから剥離される粘着テープと保持部材との接触に起因する剥離エラーの発生を確実に防止できる。
【0021】
また、上述した発明において、前記剥離過程は、前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着部材で吸着することにより、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止することが好ましい。
【0022】
(作用・効果)この構成によれば、剥離テープを粘着テープに貼り付ける際に、粘着テープを吸着部材で吸着する。当該吸着により、剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因するワークの変形が防止される。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に防止できる。
【0023】
また、上述した発明において、前記剥離過程は、前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に第1気体供給機構により前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止することが好ましい。
【0024】
(作用・効果)この構成によれば、剥離テープを粘着テープに貼り付ける際に、第1気体供給機構によりワークに気体を吹き付ける。気体を吹き付けることにより、剥離テープを貼り付ける際においてワークが変形することを防止できる。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に回避できる。
【0025】
また、上述した発明において、前記剥離過程は、前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に吸引機構により前記ワークを非接触の状態で吸引し、前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止することが好ましい。
【0026】
(作用・効果)この構成によれば、粘着テープをワークから剥離する際に、吸引機構によりワークを非接触の状態で吸引する。当該吸引により、粘着テープをワークから剥離する際において発生する力に起因するワークの変形が防止される。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に防止できる。
【0027】
また、上述した発明において、前記剥離過程は、前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に第2気体供給機構により前記ワークに気体を吹き付け、前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止することが好ましい。
【0028】
(作用・効果)この構成によれば、粘着テープをワークから剥離する際に、第2気体供給機構によりワークに気体を吹き付ける。気体を吹き付けることにより、粘着テープをワークから剥離する際においてワークが変形することを防止できる。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に回避できる。
【0029】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送機構と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持部材と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離機構と、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着し、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸着部材と、
を備えることを特徴とするものである。
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
すなわち、ワークに貼り付けられた粘着テープを剥離する粘着テープ剥離装置であって、
前記ワークを剥離位置へ搬送する搬送機構と、
前記剥離位置へ搬送された前記ワークの周縁部に接触することによって前記ワークを剥離位置に保持する保持部材と、
剥離部材によって剥離テープを前記粘着テープに貼り付けて折り返しながら当該剥離テープを剥離することによって、前記剥離位置に保持されている前記ワークから前記粘着テープを前記剥離テープと一体にして剥離する剥離機構と、
前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する第1気体供給機構と、
を備えることを特徴とするものである。
【0030】
(作用・効果)この構成によれば、搬送機構が剥離位置へワークを搬送させた後、ワークの周縁部に保持部材が接触することによってワークを剥離位置に安定な状態で保持する。このとき、ワークの上面および下面に保持部材などが物理的に直接接触することを回避できる。そしてワークの周縁部を保持部材で保持した状態で、剥離機構はワークに貼り付けられている粘着テープに剥離テープを貼り付け、粘着テープを剥離テープと一体にして剥離する。
【0031】
すなわち、粘着テープが貼り付けられていないワークの面に保持部材などが接触していなくとも、ワークを安定に保持した状態で粘着テープをワークから剥離することができる。従って、粘着テープの剥離時において、ワークの面に保持部材などが物理的に接触することに起因する不具合が発生することを確実に回避できる。
【0032】
また、上述した発明において、前記ワークの周縁部に接触した前記保持部材の各々から前記ワークに対して前記ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させ、前記ワークを保持させる加圧機構を備えることが好ましい。
【0033】
(作用・効果)この構成によれば、保持部材の各々からワークに対して、ワークの周縁部から中央部に向けて力を作用させる加圧機構を備える。この場合、ワークの中央部に向けて加圧機構が作用させる力の各々により、ワークはより安定に保持される。従って、ワークの面に物理的接触が行われなくとも粘着テープの剥離過程においてワークが位置ズレすることをより確実に回避できる。
【0034】
また、上述した発明において、前記保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御する制御機構を備えることが好ましい。この場合、制御機構により、保持部材の各々が前記ワークの周縁部から中央部に向けて作用させる力の大きさを適切な大きさとなるように制御される。そのため、過剰な力の作用によるワークの変形や、作用する力の不足に起因してワークを落とすといった、ワークの保持過程における不具合の発生をより確実に回避できる。
【0035】
また、上述した発明において、前記保持部材は弾性体を備えており、前記弾性体が前記ワークの周縁部に接触して弾性変形することによって前記ワークを保持することが好ましい。
【0036】
(作用・効果)この構成によれば、保持部材に設けられている弾性体がワークの周縁部に接触して弾性変形することによってワークは保持される。このとき、弾性体はワークの周縁部の形状に応じて弾性変形するので、保持部材とワークの周縁部と接触する部分はより広くなる。従って、保持部材はワークをより安定に保持することができる。
【0037】
また、上述した発明において、前記保持部材を、前記ワークの周縁部に接触する保持位置と、前記ワークから剥離される前記粘着テープとの接触を回避できる回避位置とを適宜移動させる駆動機構を備え、前記駆動機構が複数の前記保持部材の位置を前記保持位置と前記回避位置とに適宜切り換えつつ、前記剥離機構は前記粘着テープを前記ワークから剥離させることが好ましい。
【0038】
(作用・効果)この構成によれば、駆動機構によって、保持部材は保持位置と回避位置とを適宜移動できる。保持位置において保持部材はワークの周縁部に接触し、回避位置において保持部材はワークから剥離される粘着テープとの接触を回避できる。そして駆動機構によって保持部材の位置を保持位置と回避位置とに適宜切り換えつつ、粘着テープをワークから剥離させる。
【0039】
すなわち、粘着テープがワークから剥離される位置においては保持部材を回避位置へと移動させて粘着テープと保持部材との接触を回避しつつ、粘着テープがワークから剥離される位置以外における保持部材については保持位置へと移動させることができる。よって、粘着テープをワークから剥離する際に、保持位置に移動している保持部材によってワークを安定に保持しつつ、ワークから剥離される粘着テープと保持部材との接触に起因する剥離エラーの発生を確実に防止できる。
【0040】
また、上述した発明において、前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記粘着テープを吸着し、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸着部材を備えることが好ましい。
【0041】
(作用・効果)この構成によれば、剥離テープを粘着テープに貼り付ける際に、粘着テープを吸着部材で吸着する。当該吸着により、剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因するワークの変形が防止される。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に防止できる。
【0042】
また、上述した発明において、前記剥離テープを前記粘着テープに貼り付ける際に前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離機構が前記剥離テープを貼り付ける際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する第1気体供給機構を備えることが好ましい。
【0043】
(作用・効果)この構成によれば、剥離テープを粘着テープに貼り付ける際に、第1気体供給機構によりワークに気体を吹き付ける。気体を吹き付けることにより、剥離テープを貼り付ける際においてワークが変形することを防止できる。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に回避できる。
【0044】
また、上述した発明において、前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に前記ワークを非接触の状態で吸引し、前記剥離機構が前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する吸引機構を備えることが好ましい。
【0045】
(作用・効果)この構成によれば、粘着テープをワークから剥離する際に、吸引機構によりワークを非接触の状態で吸引する。当該吸引により、粘着テープをワークから剥離する際において発生する力に起因するワークの変形が防止される。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に防止できる。
【0046】
また、上述した発明において、前記粘着テープを前記ワークから剥離する際に前記ワークに気体を吹き付け、前記剥離機構が前記粘着テープを剥離する際に発生する力に起因する前記ワークの変形を防止する第2気体供給機構を備えることが好ましい。
【0047】
(作用・効果)この構成によれば、粘着テープをワークから剥離する際に、第2気体供給機構によりワークに気体を吹き付ける。気体を吹き付けることにより、粘着テープをワークから剥離する際においてワークが変形することを防止できる。従って、ワークの品質低下や粘着テープの剥離エラーが発生することをより確実に回避できる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の粘着テープ剥離方法および粘着テープ剥離装置によれば、ウエハの周縁部を保持部材で保持することによりウエハは剥離位置に安定な状態で保持される。そしてウエハが当該剥離位置に保持された状態で、ウエハに貼り付けられている粘着テープを剥離する。従って、ウエハの一方の面に対する物理的接触を確実に回避しつつ、ウエハの他方の面に貼り付けられている粘着テープを好適に剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の基本構成を示す平面図である。
【
図2】実施例1に係る保持機構および剥離機構の基本構成を示す正面図である。
【
図3】実施例1に係る保持機構および剥離機構の基本構成を示す平面図である。
【
図4】実施例1に係る保持機構の構成を示す図である。(a)は保持部材が回避位置に移動している状態を示す縦断面図であり、(b)は保持部材が保持位置に移動している状態を示す縦断面図であり、(c)は回避位置に移動している保持部材と保持位置に移動している保持部材との位置関係を示す平面図である。
【
図5】実施例1に係る保持部材の位置パターンを示す平面図である。(a)は第1のパターンを示す平面図であり、(b)は第2のパターンを示す平面図であり、(c)は第3のパターンを示す平面図であり、(d)は第4のパターンを示す平面図である。
【
図6】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す正面図である。(a)はウエハ供給部に搬送機構を移動させている状態を示す正面図であり、(b)はウエハ保持部の位置合わせピンが初期位置から移動し、ウエハ保持部に保持されたウエハの位置合わせを行っている状態を示す正面図である。
【
図7】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)はウエハをアライナに搬送した状態を示す正面図であり、(b)は位置合わせピンによってウエハの位置合わせを行う状態を示す正面図である。
【
図8】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)はウエハを保持機構に搬送した状態を示す縦断面図であり、(b)は保持部材をウエハの周縁部に接触させてウエハを保持する状態を示す縦断面図であり、(c)はウエハに接触した保持部材からウエハに対して、周縁部から中央部に向かう力を作用させ、ウエハをより安定に保持させる状態を示す縦断面図である。
【
図9】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)は可動テーブルが剥離開始位置へ移動している状態における、保持部材の配置パターンを示す平面図であり、(b)は剥離テープを粘着テープに貼り付ける状態を示す縦断面図であり、(c)は剥離テープを粘着テープに貼り付ける状態における、保持部材および剥離ユニットの位置関係を示す平面図である。
【
図10】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)は剥離ユニットが剥離テープと一体として粘着テープを剥離する状態を示す縦断面図であり、(b)は(a)の状態における、保持部材の位置関係およびウエハ上で粘着テープが残っている範囲を示す平面図である。
【
図11】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF1の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(b)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF1から離れた場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(c)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF2の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(d)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF2から離れた場合における、保持部材の位置関係を示す平面図である。
【
図12】実施例1に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF3の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(b)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がウエハの左端近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(c)は粘着テープが完全にウエハから剥離された状態を示す縦断面図である。
【
図13】実施例2に係る粘着テープ剥離装置の動作を示す図である。(a)は剥離テープを粘着テープに貼り付ける状態における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(b)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF1の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(c)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF2の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図であり、(d)は剥離前の粘着テープと剥離後の粘着テープとの境界線がF3の近傍にある場合における、保持部材の位置関係を示す平面図である。
【
図14】変形例に係る保持部材の構成を示す図である。(a)は一様な太さである保持部材が回避位置に配置されている状態を示す縦断面図であり、(b)は一様な太さである保持部材が保持位置に移動してウエハを保持する状態を示す縦断面図であり、(c)は凹部を備える保持部材が回避位置に配置されている状態を示す縦断面図であり、(d)は凹部を備える保持部材が保持位置に移動してウエハを保持する状態を示す縦断面図である。
【
図15】変形例に係る保持部材の構成を示す図である。(a)は保持部材の斜視図であり、(b)は保持部材が回避位置に配置されている状態を示す縦断面図であり、(c)は保持部材の弾性体がウエハの周縁部に当接している状態を示す縦断面図であり、(d)は保持部材の弾性体がウエハの周縁部に当接してさらに弾性変形している状態を示す縦断面図である。
【
図16】変形例に係る粘着テープ剥離装置を説明する図である。(a)は剥離テープを粘着テープに貼り付ける際に、気体流路を介してウエハの下面に気体を吹き付ける状態を示す縦断面図であり、(b)は剥離テープと一体として粘着テープを剥離する際に、気体流路を介してウエハの下面を吸引する状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0050】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1の基本構成を示す平面図である。なお粘着テープ貼付け装置1を示す図において、各種構成を支持する支持手段、および各種構成を駆動させる駆動手段などについては適宜図示を省略している。
【0051】
実施例1に係る粘着テープ剥離装置1は、ワークから粘着テープを剥離する構成の例として、粘着テープTが裏面に貼り付けられている半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」と略称する)から当該粘着テープTを剥離する構成を挙げて説明する。すなわち実施例1において、ウエハWが本発明におけるワークに相当する。なお、ウエハWの表面には回路パターンが形成されているものとする。
【0052】
<全体構成の説明>
本実施例に係る粘着テープ剥離装置1は
図1に示すように、ウエハ供給部2、ウエハ回収部3、ウエハ搬送機構4、アライナ5、保持機構6、および剥離機構7を備えている。
【0053】
ウエハ供給部2には、カセットC1が装填されている。カセットC1には、粘着テープTが裏面に貼り付けられている状態のウエハWが、裏面を上向きにして多段に水平姿勢で差し込み収納されている。ウエハ収納部3には、カセットC2が装填されている。カセットC2には、粘着テープTが裏面から剥離された状態のウエハWが、裏面を上向きにして多段に水平姿勢で差し込み収納される。
【0054】
ウエハ搬送機構4に備えられているロボットアーム4aは、水平に進退移動可能に構成されるとともに、全体が旋回移動および昇降移動を可能とするように構成されている。ロボットアーム4aの先端には、馬蹄形をしたウエハ保持部4bが備えられている。ウエハ保持部4bは、好ましい例としてベルヌーイチャックであり、ウエハWの裏面を非接触で懸垂保持する。
【0055】
具体的には
図6に示すように、ウエハ保持部4bの下面には複数の気体供給パッド4cが設けられている。気体供給パッド4cは図示しない気体供給機構と連通接続されている。気体供給パッド4cを介して、上向きとなっているウエハWの裏面にウエハ保持部4bから気体が吹き付けられることにより、ウエハWとウエハ保持部4bとの間に負圧領域が形成され、ウエハ保持部4bはウエハWの裏面を非接触で懸垂保持する。
【0056】
また、ウエハ保持部4bの下面には位置合わせピン4dが所定の円周上に複数立設されている。位置合わせピン4dの各々は、ウエハ保持部4bの中心部に向けて往復移動可能に構成される。位置合わせピン4dは、後述する保持部材9との干渉を回避できるように、所定の円周上における配設位置が調整される。なお平面視において、位置合わせピン4dがウエハWの周縁部と接触する位置の一例を、
図3において点線Rで示している。
【0057】
アライナ5は、水平なステージ5aと、気体供給パッド5bと、位置合わせピン5cとを備えており、ウエハ供給部2から搬送されたウエハWの位置合わせを行う。気体供給パッド5bはステージ5aの表面に形成されており、図示しない気体供給機構と連通接続されている。アライナ5へ搬送されたウエハの下面に対して、気体供給パッド5bを介して気体を吹き付けることにより、ウエハWとステージ5aとの間に負圧領域を形成し、ベルヌーイ効果によりウエハを浮遊させてステージ5a上に保持する。
【0058】
位置合わせピン5cはステージ5aにおける所定の円周上に等間隔をおいて立設されている。各々の位置合わせピン5cは、ステージ5aの外周部からステージ5aの中心部に向けて往復移動可能に構成される。浮遊状態でステージ5a上に保持されているウエハWは、位置合わせピン5cによって、点線P1で示される位置に位置合わせされる。
【0059】
保持機構6は、可動ステージ8と、複数の保持部材9と、気体供給パッド10とを備えている。可動ステージ8は
図2に示すように、左右方向(x方向)へ水平に配備されたレール11に沿って、左右方向へスライド移動可能に支持されている。可動ステージ8は、モータ13によって正逆駆動されるネジ軸15によってネジ送り駆動されるようになっている。レール11に沿ってスライド移動することにより、可動ステージ8は
図1または
図2において実線で示されている初期位置と、
図1または
図2において点線で示されている剥離開始位置との間を往復移動するように構成されている。
【0060】
保持部材9は実施例1において棒状の構成を有しており、可動ステージ8における所定の円周上に立設されている。そして保持部材9の各々がウエハWの周縁部Wbに接触することにより、ウエハWは可動ステージ8の上において、下面Waに物理的接触が行われることなく安定に保持される。詳細な保持部材9の構成については後述する。
【0061】
気体供給パッド10は、
図1に示すように、可動ステージ8の上面に設けられている。気体供給パッド10の各々が配設される位置は、保持機構6へ搬送されたウエハWの下方となるように予め調整される。気体供給パッド10は、図示しない気体供給装置と接続されており、剥離テープTsとともに粘着テープTをウエハWから剥離する際に、ウエハWの下面へと気体を供給するように構成される。気体供給パッド10からの気体供給により、ウエハWと気体供給パッド10との間に負圧領域が形成され、ベルヌーイ効果によってウエハWに対する下向きの力が発生する。
【0062】
剥離機構7は、
図1および
図2に示すように、可動ステージ8の初期位置と可動ステージ8の剥離開始位置との間に配設されている。剥離機構7は、テープ供給部17と、テープ回収部19と、剥離ユニット20とを備えている。テープ供給部17は、原反ロールに装填されている剥離テープTsを繰り出す。繰り出された剥離テープTsは、図示しない案内ロールによって剥離ユニット20へと案内される。テープ回収部19は、剥離ユニット20から送り出された剥離テープTsを巻き取り回収する。
【0063】
次に、剥離ユニット20の構成について説明する。
図2に示すように、装置基台に立設された左右一対の縦フレーム21に亘って、アルミ引き抜き材などからなる支持フレーム22が固定されている。この支持フレーム22の左右中央部位に箱形の基台23が連結されている。また、基台23に設けられた左右一対の縦レール24を介してスライド昇降可能に支持された昇降台25がモータ26により連結駆動されるボール軸によって昇降される。剥離ユニット20は、昇降台25に装備されている。
【0064】
昇降台25は、上下に貫通した中抜き枠状に構成されている。剥離ユニット20は、昇降台25の左右に備えられた側板27の内側下部に設けられている。両側板27に亘って支持フレーム28が固定されている。
【0065】
支持フレーム28の中央には剥離部材29が装着されている。剥離部材29は、ウエハWの直径よりも短い板状であり、かつ、先端に向かって先細りのテーパ状に形成されている。当該剥離部材29は、斜め下がり傾斜姿勢で固定されている。
【0066】
また、剥離ユニット20は、側板27の後方に供給用のガイドローラ31が遊転自在に軸支されている。また、剥離ユニット20の上方には複数本の回収用のガイドローラ32、ニップローラ33およびテンションローラ34が配備されている。
【0067】
回収用のガイドローラ32は、遊転自在に軸支されている。テンションローラ34は遊転自在に支持アーム35に設けられており、当該支持アーム35を介して揺動可能に配備されている。したがって、テンションローラ34は、案内巻回された剥離テープTsに適度の張力を与える。
【0068】
これら回収用のガイドローラ32およびテンションローラ34は、ウエハWの直径より大きい長さの幅広ローラに構成されるとともに、その外周面がフッ素樹脂コーティングされた難接着面になっている。供給用のガイドローラ31は、剥離テープTsの幅よりも長く、かつ、ウエハWの直径よりも短い幅狭ローラとなるように構成されている。
【0069】
剥離機構7はさらに、吸着部材37を備えている。吸着部材37は剥離部材29の左右すなわち粘着テープ剥離装置1の全体から見て剥離部材29の手前側と奥側とに一対設けられている。吸着部材37は、一例として板状の部材であり、昇降台25と独立して昇降移動可能に構成されている。吸着部材37は図示しない真空装置と連通接続されており、剥離ユニット20が粘着テープTに剥離テープTsを貼り付ける際に、粘着テープTを表面側から吸着するように構成されている。
【0070】
剥離部材29が粘着テープTの表面に剥離テープTsを押圧して貼り付ける際に、ウエハWに対して下向きの力J1が作用する一方、吸着部材37が粘着テープTの表面を吸着することにより、ウエハWに対して上向きの力J2が作用する。そのため、力J1と逆向きの力J2を吸着部材37の吸着によって作用させることにより、剥離テープTsを粘着テープTに貼り付ける際にウエハWへ作用する力J1に起因するウエハWの変形を防止できる。
【0071】
なお、粘着テープ剥離装置1は、さらに制御部40と入力部50とを備えている。制御部40はCPU(中央演算処理装置)などを備えており、粘着テープ剥離装置1の各種動作を統括制御する。各種動作の例としては、後述するシリンダ43の伸縮動作や、可動テーブル8の水平移動、ウエハ搬送装置4の動作などが挙げられる。
【0072】
入力部50の例としてはコンソールパネルやキーボードなどが挙げられ、オペレータは入力部50を用いて各種指示を入力できる。入力部50に入力された指示内容は制御部40に送信され、制御部40は当該指示に沿って各種統括制御を行うことができる。
【0073】
<保持機構の構成>
ここで、保持機構6の構成について詳細に説明する。実施例1において、10本の保持部材9が保持機構6の可動ステージ8に立設されている。
図2および
図4(a)などに示すように、各々の保持部材9の側面には楔形の溝部41が形成されている。溝部41は保持部材9のうち、可動ステージ8の中央部に近い側に形成されており、溝部41において保持部材9の各々はウエハWの周縁部Wbと接触する。ウエハWの周縁部を介してウエハWを安定に保持できる限りにおいて、保持部材9の数および配置は適宜変更してよい。保持部材9の構成材料としては、金属やプラスチックなどを例とする一定の堅さを有する材料が挙げられる。
【0074】
保持部材9は
図3などに示すように、可動ステージ8上において、可動ステージ8の外周部から可動ステージ8の中央部に向かう軌跡に沿って水平移動できるように構成されている。すなわち、保持部材9の各々は、
図3において実線で示されている回避位置と、
図3において点線で示されている保持位置との間を往復移動可能に構成されている。言い換えれば、可動ステージ8の中央部8xを中心とする放射線状の軌跡に沿って、保持部材9の各々は水平移動する。
【0075】
保持部材9の保持位置は、保持機構6へ搬送されたウエハWと保持部材9が接触して保持部材9によるウエハWの保持が可能となる位置となるように定められる。一方、保持部材9の回避位置とは、保持機構6へ搬送されたウエハWより外側に離れた位置であって、後述するようにウエハWから剥離される粘着テープTと保持部材9との接触や、剥離機構7と保持部材9との接触を回避できる位置となるように定められる。
【0076】
保持部材9の各々が保持位置と回避位置とを相互に移動する構成について説明する。
図4(a)および
図4(b)に示すように、保持部材9の各々に対して、それぞれ別のシリンダ43が接続されている。シリンダ43の各々は
図4(c)に示すように、可動ステージ8の中央部8xを中心とする放射状の軌跡に沿って伸縮動作するよう配置されている。
【0077】
保持部材9に接続されているシリンダ43の伸縮動作により、保持部材9はレール45に沿って水平移動する。当該水平移動により、保持部材9は
図4(a)に示されるような回避位置に配置されている状態、または
図4(b)に示されるような保持位置に配置されている状態に適宜切り換えられる。各々のシリンダ43の伸縮動作は、制御部40によって適宜制御される。なお説明の便宜上、
図4の各図および
図8の各図を除く図面において、可動テーブル8におけるシリンダ43およびレール45の記載を省略している。
【0078】
保持機構6にウエハWが搬送されている状態で保持部材9が保持位置へ移動することにより、当該保持部材9の溝部41にウエハWの周縁部Wbが接触する。少なくとも3以上の保持部材9が保持位置へ移動することにより、ウエハWの周縁部Wbは保持部材9の溝部41と接触し、ウエハWの下面Waが物理的接触を受けることなく、ウエハWは可動ステージ8上で安定に保持される。一例として、
図4(c)では10本の保持部材9のうち、網点で示されている3本の保持部材9が保持位置へと移動している状態を示している。この場合、P2で示される位置へ搬送されたウエハWは、当該3本の保持部材9によって挟まれるような状態で保持される。
【0079】
本発明において、ウエハWの周縁部Wbとは、ウエハWの側面における上端から下端までを含む部分とする。実施例1では
図4(b)に示すように、保持部材9はウエハWの側面の上端および下端と溝部41を介して接触することによって、ウエハWを側方から保持している。
【0080】
実施例1では好ましい構成として、保持部材9が保持位置へと移動してウエハWの周縁部に接触している状態で、制御部40は保持部材9がさらに可動テーブル8の中心部へ移動するようにシリンダ43の動作を制御する。当該動作制御により、保持部材9からウエハWに対して、ウエハWの周縁部WbからウエハWの中心部Wxへ向かう方向に力J3が加えられる。保持位置に移動している保持部材9の各々からウエハWの中心部に向けて力J3が加えられることにより、ウエハWが保持部材9から離れて落下する事態をより確実に回避できる。
【0081】
力J3の大きさは、シリンダ43が伸縮する距離に応じて変化する。制御部40はシリンダ43の伸縮距離を制御することにより、ウエハWの厚みや大きさ、材質などを例とする各種条件に応じて力J3の大きさを適宜調整する。力J3の大きさを適宜調整することにより、保持部材9がウエハWを保持する際に保持部材9からウエハWに対して過剰な大きさの力J3が作用し、ウエハWが変形するという事態を防止できる。
【0082】
次に、保持部材9の位置を切り換える制御を行う機構について説明する。実施例1において、10本の保持部材9は2つのグループに分けられ、グループごとに保持位置から回避位置へと切り換える制御を受けるように構成される。すなわち
図5(a)に示すように、保持部材9は、第1のグループに属する4本の保持部材9pと、第2のグループに属する6本の保持部材9sとに分けられる。
図5(a)以降の各図において、保持部材9pを斜線で塗って示し、保持部材9sを白塗りで示すことによって両者を区別する。
【0083】
そして、保持部材9pの各々に接続されている4つのシリンダ43の伸縮動作は、制御部40によって同期的に制御される。また、保持部材9sの各々に接続されている6つのシリンダ43の伸縮動作は、制御部40によって同期的に制御される。また、保持部材9pに接続されるシリンダ43の制御と、保持部材9sに接続されているシリンダ43の制御とは制御部40によって独立に行われる。当該同期的な制御を2グループについて独立に行うことにより、可動ステージ8上における保持部材9の配置は4つのパターンに分けられる。
【0084】
第1のパターンでは
図5(a)に示すように、保持部材9pおよび9sがいずれも回避位置に移動する。第2のパターンでは
図5(b)に示すように、保持部材9pおよび9sがいずれも保持位置に移動し、保持部材9pおよび9sによってウエハWが保持される。
【0085】
第3のパターンでは
図5(c)に示すように、保持部材9pの各々が保持位置へ移動する一方、保持部材9sの各々は回避位置に移動する。第3のパターンでは保持部材9pによってウエハWが保持される。第4のパターンでは
図5(d)に示すように、保持部材9sの各々が保持位置へ移動する一方、保持部材9pの各々は回避位置に移動する。第4のパターンでは保持部材9sによってウエハWが保持される。
【0086】
実施例1では粘着テープTをウエハWから剥離する際に、保持部材9の配置パターンについて上記4つのパターンを適宜切り換える。保持部材9の位置を回避位置と保持位置との間で適宜切り換えることにより、ウエハWの側方から接触することでウエハWを安定に保持するとともに、ウエハWから剥離される粘着テープTと保持部材9とが干渉する事態を回避できる。
【0087】
<粘着テープ剥離工程の概要>
ここで、粘着テープ剥離装置1を用いて粘着テープTをウエハWから剥離する工程について、一連の基本動作を説明する。粘着テープを剥離する工程を開始するにあたり、保持機構6の可動ステージ8は、
図1に示す初期位置に移動しており、可動ステージ8上の保持部材9は、それぞれ
図1に示すように回避位置に移動している。
【0088】
剥離動作を開始する指令が出されると、まず、搬送機構4のロボットアーム4aが作動し、ウエハ供給部2のカセットC1に向けて移動する。そして
図6(a)に示すように、ロボットアーム4aの先端に設けられているウエハ保持部4bが、カセットC1に収納されているウエハW同士の隙間に挿入される。ウエハ保持部4bの下面に設けられている気体供給パッド4cの各々からウエハWに対して気体が吹きつけられ、ベルヌーイ効果によってウエハ保持部4bはウエハWを非接触で保持する。
【0089】
また、
図6(b)に示されるように、点線で示されている初期位置に配置されている位置合わせピン4dが、ウエハ保持部4bの中央部へ向けて移動する。位置合わせピン4dの移動により、ウエハWの側面と位置合わせピン4dとが接触する。当該接触により、ウエハ保持部4bに非接触で保持されているウエハWの位置合わせが行われる。すなわち、ウエハ保持部4bの保持面に対してウエハWが水平方向に移動することが、位置合わせピン4dによって抑制される。
【0090】
ウエハ保持部4bがウエハWを非接触で保持するとともに位置合わせピン4dによるウエハWの位置合わせが行われた後、搬送機構4はウエハWをアライナ5へと搬送してウエハWの位置合わせを行う。すなわち
図7(a)に示すように、ウエハ保持部4bはステージ5aの上方へとウエハWを移動させる。このとき、ステージ5aに設けられている気体供給パッド5bからウエハWの下面に向けて気体が吹き付けられ、ベルヌーイ効果によりウエハWはステージ5aの上で浮遊する。
【0091】
その後、気体供給パッド4cの動作を停止させるとともに、位置合わせピン4dをウエハ保持部4bの中央部から外周部に向けて移動させ、初期位置へと復帰させる。そしてウエハ保持部4bをアライナ5から退避させ、位置合わせピン5cによるウエハWの位置合わせを行う。
図7(b)に示すように、位置合わせピン5cの各々はステージ5aの外周部からステージ5aの中心5xへ向かう方向へ移動する。
【0092】
位置合わせピン5cの移動により、ウエハWの側面と位置合わせピン5cの側面とが接触し、ウエハWはステージ5aの中心5xへと押されるように変位する。その結果、ウエハWの中心Wxとステージ5aの中心5xが平面視で一致するようにウエハWの位置が合わせられる。アライナ5によって位置合わせされるウエハWの位置は
図1において符号P1で示される。
【0093】
ウエハWの位置合わせが行われた後、ウエハWを保持機構6の上で保持する工程を行う。ロボットアーム4aは再度アライナ5へと移動し、ウエハ保持部4bによってウエハWは非接触で保持される。すなわち、気体供給パッド4cが作動してウエハWに対して気体が吹き付けられてベルヌーイ効果を発生させるとともに、位置合わせピン4dが初期位置からウエハ保持部4bの中央部へ向けて移動し、ウエハWの側面に接触してウエハWの位置合わせを行う。そしてウエハWはアライナ5から保持機構6へと搬送される。すなわち
図8(a)に示すように、ウエハWはウエハ保持部4bによって可動ステージ8の上方へと搬送される。このときウエハWが搬送される位置は、
図1において符号P2で示される位置である。
【0094】
そしてロボットアーム4aは適宜下降し、ウエハWの高さを保持部材9に設けられている溝部41の高さに合わせる。このとき、保持部材9の位置は
図5(a)に示すような第1のパターンとなっている。すなわち、保持部材9はいずれも回避位置に移動している。
【0095】
ウエハWの高さを溝部41の高さに合わせた後、制御部40は各々のシリンダ43の伸縮動作を制御し、保持部材9の各々を回避位置から保持位置へと移動させる。制御部40の制御により、保持部材9の各々の位置は、第1のパターンから
図5(b)に示すような第2のパターンへと変更される。
【0096】
すなわち
図8(b)に示すように、保持部材9の各々が保持位置へと移動し、各々の溝部41がウエハWの周縁部Wbと咬合するように接触する。当該接触によりウエハWは保持部材9によって保持される。
【0097】
このとき、ウエハの周縁部Wbに対して物理的接触が行われているので、下向きとなっているウエハWの回路面Waに対する物理的接触がない状態で、ウエハWを可動ステージ8の上で安定に保持できる。実施例1では保持部材9によって囲まれる領域が、本発明における剥離位置に相当する。
【0098】
なお、ウエハ保持部4bにおいて水平方向におけるウエハWの位置ズレを防止するため、ウエハWの周縁部Wbには位置合わせピン4dが接触した状態となっている。しかし、位置合わせピン4dの配設位置と保持部材9の保持位置とは周縁部Wbの円周上において異なる位置となるように予め調整されている。そのため、保持位置に移動した保持部材9が位置合わせピン4dに干渉することを抑制できるので、保持部材9によるウエハWの保持過程にエラーが発生することを回避できる。また説明の便宜上、
図8の各図において、位置合わせピン4dの記載を省略している。
【0099】
実施例1ではウエハWをより安定に保持すべく、さらに制御部40はシリンダ43をウエハの中心Wxへ向けて収縮するように制御する。当該制御により、
図8(c)に示すように、保持位置に移動している保持部材9の各々からウエハWに対して力J3が作用する。
【0100】
力J3の各々は、ウエハWの周縁部Wbから中心Wxへ向かう方向の力であるので、力J3が作用することにより、ウエハWの周縁部Wbが保持部材9の溝部41から離れてウエハWが落下する事態を防止できる。よって、保持部材9から力J3を作用させることにより、下向きとなっている回路面Waに物理的接触がない状態であっても、ウエハWをより安定に保持できる。
【0101】
保持部材9がウエハWの周縁部Wbを保持した後、ウエハ保持部4bにおける気体供給パッド4cの動作を停止させて搬送機構4によるウエハWの保持を解除し、ロボットアーム4aを保持機構6から退避させる。
【0102】
ロボットアーム4aを保持機構6から退避させた後、粘着テープTを剥離する工程を開始する。まず、制御部40はモータ13の回転を制御することによって、可動ステージ8は初期位置から剥離開始位置へと移動する(
図1および
図2を参照)。
【0103】
可動ステージ8が剥離開始位置へ移動した後、可動テーブル8を剥離開始位置から初期位置へと移動させる。可動テーブル8を初期位置へと移動させる間に、剥離ユニット20により、剥離テープTsを粘着テープTの表面に貼り付ける工程と、剥離テープTsと一体として粘着テープTをウエハWから剥離する工程とが行われる。
【0104】
ここで、剥離テープTsは図において粘着テープTの右端部分に貼り付けられる。そのため、保持部材9が全て保持位置に移動していると、保持部材9のうち
図9(a)において点線M1で囲まれる保持部材9sが、剥離ユニット20による剥離テープ貼付け動作の妨げとなる。
【0105】
そこで剥離テープTsを粘着テープTに貼り付ける動作を行う前に、保持部材9のうち保持部材9sを回避位置へと移動させる。すなわち制御部40は保持部材9のうち保持部材9sに接続されている6つのシリンダ43を制御し、保持部材9sの位置を保持位置から回避位置に切り換える。
【0106】
保持部材9sの位置が切り換えられることにより、保持部材9の位置パターンは
図5(b)に示す第2のパターンから、
図5(c)に示す第3のパターンに変化する。この場合、ウエハWは4本の保持部材9pによって安定に保持されている。そして、点線M1で囲まれる保持部材9sはウエハWから離れて回避位置へと移動しているので、剥離ユニット20と保持部材9sとが干渉して剥離過程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0107】
保持部材9sを回避位置に退避させた後、テープ供給部17から剥離テープTsが繰り出し供給され、剥離ユニット20を用いて剥離テープTsを粘着テープTに貼り付ける。すなわち
図9(b)に示すように、モータ26が制御部40によって作動して剥離ユニット20が所定の高さまで下降する。なお説明の便宜上、
図9(b)において、ウエハWを保持している保持部材9pの記載を省略している。
【0108】
そして剥離部材29に巻き掛けられている剥離テープTsが、ウエハW上における粘着テープTの右端部に押圧されて貼り付けられる。剥離テープTsを貼り付ける際における押圧により、ウエハWに対して下向きの力J1が作用する。
【0109】
そこで力J1によるウエハWの変形を防ぐべく、粘着テープTに剥離テープTsを貼り付ける動作と同期的に、吸着部材37による粘着テープTおよびウエハWの吸着が行われる。すなわち
図9(b)に示すように、剥離部材29の下降と独立して吸着部材37が所定の高さまで下降する。
【0110】
そして図示しない真空装置を作動させ、吸着部材37は当該所定の高さにおいて粘着テープTおよびウエハWを吸着する。当該吸着により、ウエハWに対して上向きの力J2が作用する。上向きの力J2によって、下向きの力J1がウエハWに与える影響は低減される。従って、吸着部材37による吸着を行うことにより、力J1によってウエハが変形する事態を回避できる。このとき、平面視における吸着部材37、剥離部材29、および剥離テープTsなどの位置関係は
図9(c)に示す通りである。
【0111】
剥離テープTsを粘着テープTに貼り付ける動作の完了と同期して、吸着部材37による吸着を解除させる。そして可動テーブル8はさらに初期位置に向かって、図面における右方向へと移動していく。このとき、剥離部材29によって剥離テープTsを折り返しながら粘着テープTを剥離テープTsと一体にしてウエハWの裏面から剥離していく(
図10(a))。ウエハWから剥離された粘着テープTが貼り付いている剥離テープTsは、テープ回収部19によって巻き取り回収されていく。なお
図10(a)において、ウエハWを保持している保持部材9の記載を説明の便宜上省略している。
【0112】
上向きとなっているウエハWの裏面から粘着テープTを剥離することにより、粘着テープTを剥離する際に、ウエハWには上向きの力J4が作用する。そこで力J4によるウエハWの変形を防ぐべく、粘着テープTを剥離する動作と同期的に、気体供給パッド10による気体の供給が行われる。すなわち
図10(a)に示すように、可動ステージ8の表面に設けられている気体供給パッド10から、ウエハWの下面に向けて気体が吹き付けられる。
【0113】
気体が吹き付けられることにより可動ステージ8とウエハWの下面との間に負圧領域が発生し、ベルヌーイ効果によりウエハWに対して下向きの力J5が発生する。下向きの力J5によって、上向きの力J4がウエハWに与える影響は低減される。従って、気体供給パッド10を用いて気体を吹きつけることにより、力J4によってウエハが変形する事態を回避できる。
【0114】
粘着テープTがウエハWから剥離されるにつれて、ウエハWに貼り付けられている粘着テープTとウエハWから剥離された粘着テープTとの境界線Nは、ウエハWの右端から左方向へと移動する(
図10(b))。境界線NがウエハWの右端から離れることにより、符号M1で囲まれる保持部材9sが保持位置に移動しても剥離ユニット20や粘着テープTと干渉する事態は回避される。
【0115】
そこで、境界線NがウエハWの右端から符号F1までの位置にある際に、制御部40は保持部材9sに接続されているシリンダ43を制御し、保持部材9sの各々を保持位置へと移動させる。当該制御により、保持部材9の位置パターンは第3のパターンから第2のパターンに変更され、保持部材9pおよび9sによってウエハWが保持される(
図10(b))。
【0116】
剥離ユニット20によって、さらに粘着テープTがウエハWから剥離されていき、境界線Nは
図9(a)において符号F1で示される位置へと近づいていく。このとき、点線M2で囲まれている保持部材9pが保持位置に配置されていると、ウエハWから剥離される粘着テープTが当該保持部材9pに接触するなどの原因によって、剥離エラーが発生する事態が懸念される。
【0117】
そこで、境界線Nが符号F1の位置に近づくと、制御部40は保持部材9pに接続されているシリンダ43の伸縮動作を制御して、保持部材9pの各々を保持位置から回避位置へと移動させる。当該制御により、保持部材9の位置パターンは第2のパターンから
図5(d)に示されるような第4のパターンに変更される。保持部材9pの位置を回避位置へと切り換えることにより、境界線Nが位置F1を通過しても粘着テープTの剥離エラーが発生する事態を確実に回避できる(
図11(a))。このとき、ウエハWは保持部材9sによって保持されている。
【0118】
可動テーブル8をさらに初期位置に向けて移動させて粘着テープTを剥離するにつれて、境界線Nはさらに左方向へと移動する。境界線Nが位置F1を通過すると、制御部40はシリンダ43を制御して保持部材9pの各々を回避位置から保持位置へと移動させる。その結果、保持部材9の位置パターンは第1のパターンに変更され、保持部材9pおよび9sによってウエハWが保持される(
図11(b))。
【0119】
さらに粘着テープTの剥離過程が進行して境界線Nが位置F2に近づく。このとき、点線M3で囲まれている2本の保持部材9sが保持位置に移動していると、当該保持部材9sが粘着テープTを剥離する動作の妨げとなる。そこで境界線Nが位置F2に近づくと、制御部40はシリンダ43を制御して保持部材9sの各々を回避位置へと移動させ、ウエハWから剥離される粘着テープTと保持部材9sとが干渉する事態を回避させる。このとき、保持部材9の位置パターンは第3のパターンとなっており、ウエハWの周縁部が4本の保持部材9pの溝部41に接触することによって、ウエハWは安定に保持される(
図11(c))。
【0120】
可動テーブル8をさらに初期位置へ向けて移動させて剥離過程を進行させる。境界線Nが左方向へ進行して位置F2を通過すると、再び保持部材9sを回避位置から保持位置へと移動させる。すなわち、保持部材9の位置パターンは第3のパターンから第1のパターンへと変更され、ウエハWの周縁部Wbが保持部材9pの溝部41と保持部材9sの溝部41の各々に接触することによって、回路面Waが非接触の状態でウエハWを保持する(
図11(d))。
【0121】
さらに粘着テープTの剥離過程が進行すると、境界線Nは位置F2から位置F3に近づく。このとき、点線M4で囲まれている2本の保持部材9pが保持位置に移動していると、当該保持部材9pが粘着テープTを剥離する動作の妨げとなる。そこで、制御部40はシリンダ43を制御して保持部材9pの位置を保持位置から回避位置へと切り換え、保持部材9の位置パターンを第4のパターンに変更させる(
図12(a))。境界線Nが位置F3を通過すると、制御部40は保持部材9pを保持位置へと移動させ、保持部材9の位置パターンを第1のパターンに変更させる。
【0122】
境界線NがウエハWの左端に近づくと、点線M5で囲まれている2本の保持部材9sが粘着テープTを剥離する動作の妨げとなる。そのため、制御部40は保持部材9sの位置を保持位置から回避位置へと切り換え、保持部材9の位置パターンを第3のパターンに変更させる(
図12(b))。さらに剥離過程を進めることにより、上向きとなっているウエハWの裏面から粘着テープTが完全に剥離される(
図12(c))。そして可動テーブル8は初期位置へと復帰する。粘着テープTがウエハWから完全に剥離されることにより、気体供給パッド10の動作を停止させる。
【0123】
粘着テープTの剥離が完了して可動テーブル8が初期位置に復帰すると、搬送機構4のロボットアーム4aを保持機構6へと移動させる。そしてベルヌーイチャックであるウエハ保持部4bによって、粘着テープTが剥離されたウエハWを非接触で保持する。その後、搬送機構4はウエハWを保持機構6からウエハ回収部3へと搬送し、カセットC2にウエハWを差し込み収納させる。
【0124】
以上で実施例1に係る粘着テープ剥離装置1を用いた一巡の動作が完了し、以後、所定枚数に達するまで同じ動作が繰り返される。
【0125】
実施例1に係る粘着テープ剥離装置1では、剥離機構へと非接触で搬送されたウエハWの周縁部に保持部材が接触することによってウエハWを保持する。そして保持部材がウエハWの周縁部を保持している状態で、ウエハの上面に貼り付けられている粘着テープTに剥離テープTsを貼り付け、剥離テープTsと一体にして粘着テープTをウエハWから剥離する。
【0126】
このとき、ウエハWの周縁部すなわち側面の上端から下端までの範囲に対して保持部材による物理的接触を受けている。言い換えれば、ウエハWの下面は物理的接触を受けることなく、ウエハWは安定に保持される。そのため、ウエハWの下面が回路面である場合など、ウエハWの下面に対して保持テーブルなどの部材が物理的に接触することが不適当である場合であっても、ウエハWに不具合を起こすことなくウエハWを安定に保持できる。よって、粘着テープTをウエハWの上面から精度良く剥離できる。
【0127】
従来の装置では、少なくともウエハの下面の一部を保持テーブルが支持する必要があるので、ウエハの位置ズレにより保持テーブルがウエハ下面のうち意図しない部分に対して接触する不具合が発生していた。一方、実施例1に係る構成では保持テーブルを例とするウエハ下面に接触する部材を省略している。そのため、剥離装置へウエハを搬送する際にウエハの位置ズレが発生した場合であっても、ウエハの下面が物理的接触を受ける事態を確実に排除できる。
【0128】
また実施例1では保持部材9を、保持部材9pと保持部材9sとの2つのグループに分け、各々のグループごとに回避位置と保持位置との間で適宜変位させる制御を行う。すなわち第1のグループに属する保持部材9pの各々の位置は、制御部40によって同期的に回避位置と保持位置との間で切り換えられる。
【0129】
そして保持部材9pの位置制御とは独立して、第2のグループに属する保持部材9sの位置制御を一括して行う。すなわち、保持部材9pの同期的制御と独立して、保持部材9sの各々の位置は回避位置と保持位置との間で同期的に切り換えられる。この場合、保持部材9を多数備える構成であっても、保持部材9の位置制御は2つのラインに限定できるので、制御部40による位置制御の演算を単純化できる。
【実施例2】
【0130】
次に、本発明の実施例2を説明する。なお、実施例1に係る粘着テープ貼付け装置と同一構成については同一符号を付すに留め、異なる構成部分である保持部材9の制御方法について詳述する。
【0131】
実施例1では複数の保持部材9について2つのグループ、すなわち保持部材9pと保持部材9sとに分け、保持部材9pの各々について位置制御を一括して行うとともに、保持部材9sの各々については保持部材9pと独立して、位置制御を一括して行う。一方、実施例2では、保持部材9の一つ一つについて、独立して位置制御を行うように構成されている。
【0132】
ここで、実施例2に係る粘着テープ剥離工程において、粘着テープTをウエハWから剥離する際に保持部材9の位置を切り換える制御方法について説明する。実施例2において、保持部材9の本数は実施例1と同様に10本とし、各々の保持部材9については
図13(a)などに示すように、符号9a~9jを付して区別する。
【0133】
アライナ5で位置合わせされ、保持機構6へとウエハWが搬送された後、制御部40は保持部材9a~9jの各々を回避位置から保持位置へと移動させる。保持位置へと移動することにより、保持部材9a~9jの各々に設けられている溝部41にウエハ周縁部Wbが接触し、ウエハWは側方から保持される。すなわち、実施例1と同様にウエハWの下面に対する物理的接触を回避しつつ、ウエハWを可動ステージ8の上で安定に保持できる。
【0134】
保持部材9の各々によってウエハWが保持された後、可動ステージ8を初期位置から剥離開始位置へと移動させる。そして可動ステージ8を剥離開始位置から初期位置へと移動させつつ、粘着テープTをウエハWから剥離させる動作を行う。
【0135】
まず、実施例1と同様に、ウエハWの右端部分が剥離部材29の下方となる位置へ可動ステージ8が移動すると、剥離ユニット20が下降されて剥離テープTsが粘着テープTの右端に押圧して貼り付けられる。このとき、保持部材9cおよび9dが保持位置に配置されていると、保持部材9cおよび9dが剥離ユニット20と干渉することによって、剥離テープTsを貼り付ける動作が阻害される。
【0136】
そこで制御部40はシリンダ43を制御して保持部材9cおよび9dの位置を保持位置から回避位置へと切り換え、剥離ユニット20との干渉を回避させる(
図13(a))。保持部材9cおよび9dを回避位置へ移動させた後、剥離テープTsが粘着テープTの右端部分に貼り付けられ、粘着テープTは右端部分から剥離テープTsと一体として剥離されていく。このとき、保持部材9cおよび9dは回避位置に移動しているので、剥離されていく粘着テープTと保持部材9cおよび9dとが接触して剥離エラーが起こる事態を防止できる。
【0137】
可動テーブル8をさらに初期位置へ向けて移動させつつ、剥離テープTsを剥離部材29で折り返していくことにより、剥離テープTsと一体として粘着テープTがウエハWから剥離されていく。粘着テープTの剥離が進むにつれ、剥離後の粘着テープTと剥離前の粘着テープTとの境界線NはウエハWの右端部分から左方向へと移動していく。
【0138】
境界線NがウエハWの右端から離れて位置F1に近づくと、制御部40は保持部材9cおよび9dを回避位置から保持位置へと移動させつつ、保持部材9bおよび9eを保持位置から回避位置へと移動させる(
図13(b))。保持部材9bおよび9eを回避位置へ退避させることにより、位置F1において粘着テープTと保持部材9とが接触するなどの不具合に起因して粘着テープTの剥離エラーが発生することを防止できる。
【0139】
剥離工程が進行し、境界線Nが位置F1から位置F2へと近づくと、制御部40は保持部材9bおよび9eを回避位置から保持位置へと移動させつつ、保持部材9aおよび9fを保持位置から回避位置へと移動させる(
図13(c))。さらに境界線Nが位置F2から離れて位置F3へと近づくと、制御部40は保持部材9aおよび9fを回避位置から保持位置へと移動させつつ、保持部材9gおよび9jを保持位置から回避位置へと移動させる(
図13(d))。
【0140】
最後に、境界線Nが位置F3から離れてウエハWの左端部分に近づくと、制御部40は保持部材9gおよび9jを回避位置から保持位置へと移動させつつ、保持部材9hおよび9iを保持位置から回避位置へと移動させる。そして保持部材9hおよび9iを保持位置から回避位置へと移動させた状態で、粘着テープTはウエハWの上面から完全に剥離される(
図12(c)を参照)。なお、実施例2において粘着テープTを剥離する一連の動作は、保持部材9の各々の位置を保持位置と回避位置との間で切り換える制御方法を除いて実施例1と共通している。
【0141】
実施例2に係る構成では、保持部材9の各々について、それぞれ独立して保持位置と回避位置との間で切り換え可能に構成される。そして、境界線Nの位置すなわち粘着テープTをウエハWから剥離する動作が実行されている位置に近い保持部材9を選択的に回避位置へと変位させ、保持位置が境界線Nから離れている保持部材9については保持位置へと移動させる。
【0142】
この場合、境界線Nに保持位置が近い保持部材9については回避位置へと移動させることにより、ウエハWから剥離される粘着テープTと当該保持部材9との接触に起因する剥離エラーの発生を確実に回避できる。そして境界線Nと保持位置とが離れている保持部材9は全て保持位置へと移動してウエハWの周縁部Wbを保持する。従って、ウエハWの周縁部Wbに対してより多くの保持部材9が接触するので、ウエハWをより安定に保持することができる。
【0143】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0144】
(1)各実施例において、保持部材9は溝部41を備える構成に限られない。すなわちウエハの周縁部Wbに接触することによってウエハWを安定に保持できる限りにおいて、保持部材9の形状は適宜変更してよい。その一例として、
図14(a)に示すように保持部材9は一様な太さの棒状であってもよい。
【0145】
この場合、保持部材9が回避位置から保持位置へと移動することにより、
図14(b)に示すように、保持部材9の平坦な側面がウエハ周縁部Wbに接触して中心方向へと押しつけられる。そしてウエハの中心部Wxへ向かう方向の力J3がウエハWに作用するので、ウエハWは下面Waが非接触の状態で安定に保持される。
【0146】
また
図14(c)に示すように、保持部材9は溝部41の代わりに、ウエハWの周縁部Wbに応じた形状の凹部42を備えてもよい。少なくとも3カ所においてウエハWの周縁部Wbが保持部材9の凹部42に当接することにより、ウエハWは側方から挟み込まれるように保持される。また、保持部材9がウエハWを保持する場合、
図14(d)に示すように、ウエハWの周縁部Wbは保持部材9の凹部42に嵌合している。
【0147】
そのため、保持部材9が溝部41を備える場合と同様に、ウエハWに対して上下方向の力が作用しても、ウエハWの周縁部Wbが凹部42から外れてウエハWが落下するという事態を防止できる。よって、保持部材9によるウエハWの保持力をより向上させることができる。
【0148】
(2)実施例および変形例の各々において、保持部材9は弾性体を備えてもよい。すなわち
図15(a)に示すように、保持部材9は少なくともウエハWの周縁部Wbと接触する部分に弾性体47を備えている。弾性体47を構成する材料の例としては、ゴムなどのエラストマーが挙げられる。なお、当該変形例において、保持部材9の全体が弾性体で構成されていてもよい。
【0149】
変形例(2)に係る保持部材9でウエハWの保持を行う場合、各実施例と同様にシリンダ43の伸縮動作を制御し、保持部材9をレール45に沿って回避位置から保持位置へと移動させる。保持部材9の位置が回避位置である場合、保持部材9はウエハの周縁部Wbから離れている(
図15(b))。また、実施例2において、保持部材9の保持位置は、保持部材9がウエハWに接する位置D1に定めてもよい。ただし、当該位置D1よりもやや内側となる位置D2を保持位置として定めることがより好ましい。
【0150】
保持部材9が回避位置D0から保持位置D2へ向けて移動すると、保持部材9に設けられている弾性体47がウエハの周縁部Wbに接触し(
図15(c))、さらにウエハの周縁部Wbの形状に応じて弾性体47が弾性変形する(
図15(d))。
【0151】
弾性体47が弾性変形しながらウエハの周縁部Wbと接触することにより、ウエハの周縁部Wbの形状によらず保持部材9は周縁部Wbの全体にわたってウエハWと接触する。すなわちウエハWの周縁部Wbと保持部材9との接触面積がより広くなるので、ウエハの下面Waに対する物理的接触を回避しつつウエハWをより安定に保持できる。
【0152】
また、保持位置D2へと移動する保持部材9がウエハWに押しつけられて弾性体47が弾性変形することにより、保持部材9からウエハWに対して、周縁部Wbから中央部Wxに向かう方向に力J3が作用する。力J3が作用することにより、ウエハWが保持部材9から離れて落下する事態をより確実に回避できる。よって、保持位置を位置D2に定めることにより、保持位置を位置D1に定める場合と比べてウエハWをより安定に保持できる。
【0153】
(3)実施例および変形例の各々において、剥離テープTsを貼り付ける際にウエハWへ作用する力J1や、剥離テープTsとともに粘着テープTをウエハWから剥離する際にウエハWへ作用する力J4の影響を低減させる構成として、吸着部材37および気体供給パッド10を備えているがこれに限られない。すなわち、吸着部材37および気体供給パッド10を省略してもよいし、力J1およびJ4の影響を低減させる限りにおいて、吸着部材37および気体供給パッド10の代替となる構成を備えてもよい。
【0154】
吸着部材37および気体供給パッド10の代替となる構成の例として、変形例(3)に係る保持機構6は、
図16(a)に示すように、気体流路49を備えている。気体流路49は可動ステージ8に埋設されており、可動ステージ8の下部において纏められている。気体流路49は、電磁バルブ51を介して気体供給装置53と連通接続されている。また気体流路49は、電磁バルブ55を介して吸引装置57と連通接続されている。このような構成を備えることにより、気体流路49は可動ステージ8の表面に設けられている複数の孔を介して気体の供給または吸引を行う。
【0155】
変形例(3)に係る構成では、剥離テープTsを貼り付ける際に、制御部40は気体供給装置53を作動させるとともに電磁バルブ51を開放し、気体流路49を介して気体VをウエハWの下面に吹き付けさせる。気体VがウエハWの下面Waへ吹き付けられることにより、ウエハWは気体Vによって押し上げられるので、ウエハWに対して上向きの力J6が発生する。その結果、剥離テープTsを貼り付ける際にウエハWへ作用する下向きの力J1による影響は、上向きの力J6によって低減される。
【0156】
一方、剥離テープTsとともに粘着テープTをウエハWから剥離する場合は
図16(b)に示すように、制御部40は吸引装置57を作動させるとともに電磁バルブ55を開放し、気体流路49を介してウエハWの下面を吸引する。ウエハWを下方から吸引することにより、ウエハWは孔52が設けられている下方へ引き寄せられるので、ウエハWに対して下向きの力J7が作用する。その結果、粘着テープTをウエハWから剥離する際にウエハWへ作用する上向きの力J4による影響は、下向きの力J7によって低減される。このように、気体流路51を介して気体の供給および吸引を行う構成によっても、力J1または力J4に起因するウエハWの変形を回避できる。
【0157】
(4)実施例および変形例の各々において、粘着テープTが貼り付けられている裏面を上向きにした状態で、下向きとなっている回路面が非接触の状態で粘着テープTを剥離する構成を例示したが、これに限られない。本発明は、ウエハWの一方の面に対する物理的接触を確実に回避しつつ、ウエハWの他方の面に貼り付けられている粘着テープTを剥離する構成について適宜用いることができる。
【0158】
一方の面を非接触としつつ、他方の面から粘着テープを剥離することが要求される構成の一例としては、以下のような場合が挙げられる。ウエハWの表面に回路パターンが形成された後、回路保護用の粘着テープが表面に貼り付けられ、さらにウエハWの裏面に対してバックグラインド処理が施されて薄型化する。ウエハWを薄型化した後、保護用の粘着テープを表面から剥離しつつ、ウエハWの裏面に対してコーティング処理など各種処理がなされる場合がある。
【0159】
この場合、ウエハの表面から粘着テープを剥離する際に保持テーブルなどがウエハの裏面に接触していると、保持テーブル上の塵埃や研磨屑などに起因して、その後のコーティング処理などに不具合が発生することが懸念される。そこで、本発明の構成を適用することにより、ウエハWの裏面を下向きにした状態で保持部材9をウエハWの周縁部Wbに当接させつつ、上向きとなっているウエハWの表面から保護用の粘着テープを剥離できる。その結果、ウエハWの裏面に物理的接触が行われることなくウエハWを安定に保持できるので、精度良く粘着テープをウエハWの表面から剥離できるとともに、その後の裏面処理における不具合の発生を防止できる。
【0160】
(5)実施例および変形例の各々において、ウエハWをワークとして当該ワークに貼り付けられている粘着テープTを剥離する装置を例示したが、ワークはウエハWに限られない。ワークとして用いられる構成としては、ガリウムや砒素の化合物またはシリコンなど各種材料からなるウエハWの他に、リングフレーム、ガラス基板、セラミック基板、FPCを例とする有機材料基板など種々の物品が挙げられる。
【0161】
(6)実施例および変形例の各々において、剥離機構7の位置を固定とし、保持機構6がx方向へ水平移動することによって粘着テープTをウエハWから剥離する構成を例示しているが、保持機構6を移動させる構成に限られない。保持機構6を剥離機構7に対して相対的に移動させる構成であれば、保持機構6を固定として剥離機構7が水平移動する構成であってもよいし、両者が移動する構成であってもよい。
【0162】
(7)実施例および変形例の各々において、ウエハ保持部4bはベルヌーイチャックを用いる構成を例示したが、これに限ることはない。特に粘着テープTが貼り付けられているウエハWを保持機構6に搬送する際において、ウエハ保持部4bは粘着テープTの表面を吸着保持した状態で搬送してもよい。
【符号の説明】
【0163】
1 … 粘着テープ剥離装置
2 … ウエハ供給部
3 … ウエハ回収部
4 … 搬送機構
5 … アライナ
6 … 保持機構
7 … 剥離機構
8 … 可動ステージ
9 … 保持部材
10 … 気体供給パッド
17 … テープ供給部
19 … テープ回収部
20 … 剥離ユニット
29 … 剥離部材
31 … ガイドローラ
40 … 制御部
41 … 溝部
43 … シリンダ
45 … レール
T … 粘着テープ
W … 半導体ウエハ
Wa … ウエハの下面
Wb … ウエハの周縁部