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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/435 20180101AFI20220927BHJP
   F21S 45/33 20180101ALI20220927BHJP
   F21V 31/03 20060101ALI20220927BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20220927BHJP
   F21V 29/67 20150101ALI20220927BHJP
   F21V 29/74 20150101ALI20220927BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20220927BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20220927BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20220927BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220927BHJP
【FI】
F21S45/435
F21S45/33
F21V31/03 100
F21V29/503
F21V29/67
F21V29/74
F21S41/143
F21W102:13
F21W103:55
F21Y115:10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018112694
(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公開番号】P2019046788
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2017170381
(32)【優先日】2017-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】會澤 大輔
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-058547(JP,A)
【文献】特開2014-232607(JP,A)
【文献】特開2012-084527(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013208(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 45/435
F21S 45/33
F21V 31/03
F21V 29/503
F21V 29/67
F21V 29/74
F21S 41/143
F21W 102/13
F21W 103/55
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に照射される光を出射する光源と、前記光源で生じる熱を放熱するヒートシンクと、を有し、互いに並べられる複数の灯具と、
送風機と、
前記複数の灯具及び前記送風機が収容されるランプハウジングと、
を備え、
前記複数の灯具は、前記送風機が送風する送風方向に配置される第1の灯具と、前記第1の灯具を経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具と、を有し、
前記送風機は、前記第2の灯具を経由して流れる空気を吸気する吸気スペースを有し
前記第2の灯具における前記ヒートシンクの一部は、前記送風機において最も第1の灯具側の位置を通り車両の左右方向に平行な面よりも後側に位置する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記送風機は、前記吸気スペースに流入する空気を前記送風方向に導く整流部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記ランプハウジングは、前方に開口が形成されるハウジング本体と、前記開口を塞ぐように前記ハウジング本体に取り付けられるフロントカバーと、を有し、
前記送風機は、前記ハウジング本体に固定される
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記送風機は、羽根車と、前記羽根車を支持する支持フレームと、前記ハウジング本体に固定され、前記支持フレームに連結される脚部と、を有し、
前記吸気スペースは、前記脚部と前記ハウジング本体とにより形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記ハウジング本体における前記送風機の後方の位置には呼吸孔が形成される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関し、具体的には、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制し得る車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表する車両用前照灯は、夜間に前方を照らすためのロービーム用の光源の他に、当該ロービームよりも遠方を照らすためのハイビーム用の光源や、昼間に車両の存在を示すためのデイタイムランニングランプ(DRL)等を搭載したものが知られている。ハイビームやデイタイムランニングランプからの光は、ロービームよりも上方に照射される光を含んでいる。このためハイビームは上記のようにロービームよりも遠方を照らし、デイタイムランニングランプからの光はロービームよりも高い位置から視認することができる。また、車両用前照灯には、意匠性の観点等から複数の灯具が並べられたものがある。
【0003】
下記特許文献1には、車両の左右方向に並べられた3つのLEDモジュールを灯室内に備えた車両用前照灯が開示されている。下記特許文献1の車両用前照灯では、3つのLEDモジュールのうち左側に位置するLEDモジュール部分の具体的な構成が開示されている。具体的には、光源であるLEDモジュールと、LEDモジュールを支持する支持部と、LEDモジュールの熱を拡散させる放熱部とが備えられている。放熱部はヒートシンクとして機能すると記載され、当該放熱部と支持部とは一体に形成されていることから、下記特許文献1の車両用前照灯では、光源とヒートシンクを有する灯具が開示されていると理解し得る。また、下記特許文献の灯室内には、灯具の他に、送風機としての電動ファンが備えられている。電動ファンは放熱部の後端位置に配置されており、電動ファンによって放熱部側に送られる空気はその放熱部に形成されるダクトを通じてLEDモジュールに流される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-262903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1の車両用前照灯では、車両の左右方向に並べられた3つのLEDモジュールのうち真ん中のLEDモジュール部分と右側のLEDモジュール部分との具体的な構成は開示されていない。仮に、真ん中のLEDモジュール部分と右側のLEDモジュール部分が、上記のように灯具と送風機とが備えられた構成である場合、当該灯具ごとに送風機が必要になるため大型化する傾向にある。
【0006】
また、上記特許文献1の車両用前照灯では、少なくとも左側のLEDモジュールには電動ファンにより空気が流されている。この空気はLEDモジュールの熱により暖められ前方に流れているが、当該熱分布が灯室内で偏在してしまうことが懸念される。
【0007】
そこで、本発明は、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制し得る車両用前照灯を提供しようとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の達成のため、本発明の車両用前照灯は、前方に照射される光を出射する光源と、前記光源で生じる熱を放熱するヒートシンクと、を有し、互いに並べられる複数の灯具と、送風機と、前記複数の灯具及び前記送風機が収容されるランプハウジングと、を備え、前記複数の灯具は、前記送風機が送風する送風方向に配置される第1の灯具と、前記第1の灯具を経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具と、を有し、前記送風機は、前記第2の灯具を経由して流れる空気を吸気する吸気スペースを有することを特徴とする。
【0009】
このような車両用前照灯では、送風機によって第1の灯具に送風される空気がその第1の灯具を経由して第2の灯具に流れ、第2の灯具を経由する。第2の灯具を経由した空気は送風機の吸気スペースから吸気され、第1の灯具に再び送風される。このように本発明の車両用前照灯によれば、1つの送風機でランプハウジング内の空気を循環させることができ、当該循環によって熱分布がランプハウジング内で偏在することを抑制することができる。こうして、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制することができる。
【0010】
また、前記送風機は、前記吸気スペースに流入する空気を前記送風方向に導く整流部を有することが好ましい。
【0011】
この場合、吸気スペースに流入する空気が送風方向に導かれない場合に比べて、ランプハウジング内の空気の循環を促進し得る。従って、ランプハウジング内の熱分布の偏在をより一段と抑制することができる。
【0012】
また、前記ランプハウジングは、前方に開口が形成されるハウジング本体と、前記開口を塞ぐように前記ハウジング本体に取り付けられるフロントカバーと、を有し、前記送風機は、前記ハウジング本体に固定されることが好ましい。
【0013】
灯具は光源から出射する光のエイミングを調整する機構を有する場合があり、そのような灯具に送風機が固定されるとエイミングの調整によって送風機の風向きが変わることが懸念される。これに対し、送風機がハウジング本体に固定された場合、ランプハウジングと送風機との相対的位置が一定となる。従って、灯具がエイミングを調整する機構を有しているか否かにかかわらず送風機の送風方向が一定になるので、ランプハウジング内の空気の循環を一定に保持し得る。
【0014】
また、前記送風機は、羽根車と、前記羽根車を支持する支持フレームと、前記ハウジング本体に固定され、前記支持フレームに連結される脚部と、を有し、前記吸気スペースは、前記脚部と前記ハウジング本体とにより形成されることが好ましい。
【0015】
この場合、ハウジング本体の形状が変更されても、そのハウジング本体に吸気スペースを形成させつつ固定し易くなり、汎用性を向上し得る。
【0016】
また、前記ハウジング本体における前記送風機の後方の位置には呼吸孔が形成されることが好ましい。
【0017】
この場合、送風機によって呼吸孔からランプハウジング内に外気を取り込み、その外気をランプハウジング内で循環させることが可能となる。従って、ランプハウジング内の空気だけをそのランプハウジング内で循環させる場合に比べると、ランプハウジング内の冷却効果を高め得る。
【0018】
また、前記第2の灯具における前記ヒートシンクの一部は、前記送風機において最も第1の灯具側の位置を通り車両の左右方向に平行な面よりも後側に位置することが好ましい。
【0019】
この場合、上記の面よりも前側に第2の灯具におけるヒートシンクの一部が位置している場合に比べて第2の灯具が送風機に近くなる。このため、送風機は第2の灯具を経由して流れる空気を吸気スペースからより多く吸い込むことができる。従って、ランプハウジング内の空気の循環を促進し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によれば、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制し得る車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。
図2図1の車両用前照灯の拡大した概念図である。
図3図2のI-I線における断面図である。
図4】ハウジング本体に固定された送風機を示す図である。
図5】吸気モード時にランプハウジング内を流れる空気の様子を示す概念図である。
図6】排気モード時にランプハウジング内を流れる空気の様子を示す概念図である。
図7】本発明の変形例における車両用前照灯を図2と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る車両用前照灯を実施するための形態が添付図面とともに例示される。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、以下の実施形態から変更、改良することができる。
【0023】
まず、本実施形態の灯具の構成について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態における車両用前照灯を備える車両の概略を示す正面図である。図1に示すように車両100は、前方の左右方向のそれぞれに一対の車両用前照灯1を備える。すなわち、それぞれの車両用前照灯1は、車両100の中心よりも左右方向の外側に配置されている。また、車両100に備わる一対の車両用前照灯1は、互いに左右方向に対称な形状とされる。本実施形態の車両用前照灯1は、左右方向に並べられる複数の灯具1a,1b,1cを備え、灯具1cが車両100の最も外側に配置され、灯具1bが車両100の最も中心側に配置され、灯具1aが灯具1bと灯具1cとの間に配置される。
【0025】
図2図1の車両用前照灯1の拡大した概念図である。図2に示すように、車両用前照灯1は、複数の灯具1a~1cと、ランプハウジング10と、送風機50とを備える。複数の灯具1a~1cと送風機50とはランプハウジング10内に収容されている。なお、図2では、車両100の右側の車両用前照灯1を示している。車両100の右側は、図1では紙面左側であり図2では紙面右側である。図2に示す車両用前照灯1では、左右方向に並べられる3つの灯具1a~1cが車両100の右前から左後の方向に斜めに配置される。なお、左側の車両用前照灯1では、図示しないが、左右方向に並べられる3つの灯具1a~1cが車両100の左前から右後の方向に斜めに配置される。
【0026】
図3は、図2のI-I線における断面図である。図3に示すように、ランプハウジング10は、ハウジング本体11とフロントカバー12とを主な構成要素として備える。ハウジング本体11の前方には開口11Xが形成されており、当該開口11Xを塞ぐようにフロントカバー12がハウジング本体11に取り付けられている。このフロントカバー12は、ハウジング本体11に対して着脱可能とされる。
【0027】
ハウジング本体11の後方壁には呼吸孔BHが設けられている。この呼吸孔BHは、ランプハウジング10の内外の空気を出し入れするための孔であり、本実施形態では送風機50の後方に位置している。また本実施形態では、ハウジング本体11の後方壁のうち、呼吸孔BHが設けられている壁部分が筒状の呼吸部13として形成されている。この呼吸部13は、ハウジング本体11の後方壁のうち呼吸部13以外の他の壁部分よりも後方に突出する筒状とされる。筒状の呼吸部13における側壁の一部は、灯室LR側の開口から後方に向かって先細りとなるように傾斜している。従って、呼吸部13の内空である呼吸孔BHの断面積は、灯室LR側の開口から後方に向かうほど小さくなっている。呼吸部13における灯室LR側の開口とは逆側の開口には、その逆側の開口を塞ぐようにキャップ14が取り付けられている。このキャップ14に形成される貫通孔14Hを通じて、呼吸孔BHが外部と連通する。なお、キャップ14の貫通孔14Hにおける外部側の開口は通気性及び防水性を有する被膜15により覆われる。
【0028】
このようなハウジング本体11と、当該ハウジング本体11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12とによって形成される空間は灯室LRである。この灯室LRには複数の灯具1a~1cと送風機50とが配置される。
【0029】
複数の灯具1a~1cは前方に光を照射する器具であり、本実施形態ではそれぞれ同じ構成とされる。従って、複数の灯具1a~1cの構成は、主に灯具1aについて説明する。灯具1aは、光源41と、ヒートシンク42と、投影レンズ43とを有する。
【0030】
光源41は、前方に照射される点灯用の光を出射するものであり、ヒートシンク42に設けられる。なお、本実施形態では光源41が1つであるが、当該光源に41に加えて1又は2以上の他の光源がヒートシンク42に設けられていても良い。他の光源として、例えば、DRL用の光を出射する光源、あるいは、歩行者や障害物等の検知用の光を出射する光源などが挙げられる。光源41は、図示しない制御ユニットに接続されており、当該制御ユニットから与えられる制御信号に基づいて点灯又は消灯する。光源41は、制御信号に基づいて点灯すると、点灯用の光を出射する。本実施形態の光源41は、車両の前方に向けて光を照射するようヒートシンク42に設けられている。
【0031】
ヒートシンク42は金属製のベース板42Aを有し、当該ベース板42Aの一方の面側には複数の放熱フィン42Bがベース板42Aと一体に設けられ、ベース板42Aの他方の面側には支持フレーム42Cがベース板42Aに固定される。ベース板42Aのうち放熱フィン42Bが設けられている側とは逆側の面には光源41が固定される。放熱フィン42Bは車両の前後方向に沿って延在しており、当該放熱フィン42Bの前端はベース板42Aに連結され後端は開放端とされる。灯具1aにおける複数の放熱フィン42Bのうち少なくとも一部の後端は送風機50と対向している。本実施形態の場合、図2に示すように、複数の灯具1a~1cのうち車両100の最も後方に位置する灯具1bでは、ヒートシンク42の放熱フィン42Bの一部が、送風機50の前面よりも後側に位置する。なお、送風機50の前面は、送風機50において最も灯具1a側の位置を通り車両100の左右方向に平行な面である。
【0032】
また、ベース板42Aにはブラケット31が結合されている。このブラケット31には複数のエイミング調整用の調整ネジ32が螺合しており、ランプハウジング10に支持されている。なお、図2では、便宜上、ブラケット31及び調整ネジ32が省略されている。調整ネジ32の他端である頭部32Aは灯室LR外に露出されている。この頭部32Aが回動されることで、ブラケット31が螺合されて傾動し、灯具1aにおける上下左右方向のエイミングの調整が可能となる。
【0033】
投影レンズ43は非球面平凸レンズであり、支持フレーム42Cによりベース板42A上に固定される。この投影レンズ43では、光源41から前方に出射される光が入射する側の面である入射面43Aが平面状とされ、当該光が出射する側の面である出射面43Bが出射方向に膨らむ凸面状とされる。つまり、本実施形態の灯具1aでは、PES(Projector Ellipsoid System)光学系が採用されている。
【0034】
送風機50は、空気を送り出す機器である。図4は、ハウジング本体11に固定された送風機50を示す図である。図4に示すように、本実施形態の送風機50は、プロペラ型とされ、羽根車51と支持フレーム52と脚部53と整流部54とを有する。
【0035】
羽根車51は、回転軸の周囲に所定間隔で複数の羽を設けたものである。この羽根車51は、図示しない制御ユニットに接続されており、当該制御ユニットから与えられる制御信号に基づいて回転する。本実施形態の制御ユニットは、吸気モードと排気モードとを有しており、吸気モードの場合には吸気モードの制御信号を羽根車51に与え、排気モードの場合には排気モードの制御信号を羽根車51に与える。羽根車51は、吸気モードの制御信号を受けた場合には順方向に回転し、車両100の前方に空気を送風する。また、羽根車51は、排気モードの制御信号を受けた場合には順方向とは逆の方向に回転し、車両100の後方に空気を送風する。なお、羽根車51が接続される制御ユニットは、上記のように光源41が接続される制御ユニットと同じであっても異なっていても良い。
【0036】
支持フレーム52は、羽根車51を支持するものである。本実施形態の支持フレーム52は円環状とされており、当該支持フレーム52の内側に配置される羽根車51の回転軸が支持フレーム52に軸支される。
【0037】
脚部53は、ハウジング本体11の後方壁と支持フレーム52とに間隔をあけた状態で、その後方壁の前方に支持フレーム52を定置するものである。この脚部53によって、ハウジング本体11の後方壁と支持フレーム52との間には空間が形成されており、当該空間は支持フレーム52に支持される羽根車51の吸気スペースSPとされる。従って、吸気スペースSPは、脚部53とハウジング本体11の後方壁とにより形成されると理解し得る。本実施形態の脚部53は、支持フレーム52の後方側の周囲の一部分を囲うように配置され、当該脚部53の前方側が支持フレーム52に連結されるとともに、脚部53の後方側がハウジング本体11の後方壁にねじで固定される。また、支持フレーム52の後方側の周囲の一部分を囲う脚部53の一部に開口53Xが形成されており、当該開口53Xを隔てて吸気スペースSPが脚部53の外側の灯室LRに連通される。なお、開口53Xは、送風機50の側方であり、羽根車51よりも後側に位置している。
【0038】
整流部54は、吸気スペースSPに流入する空気を送風機50の送風方向に導くものである。本実施形態の整流部54は、羽根車51の回転軸を基準として脚部53の開口53Xとは逆側に配置されている。また、本実施形態の整流部54は、脚部53と一体に形成されており、後方壁の前方に支持フレーム52を定置する脚部53の一部を兼ねている。
【0039】
次に、送風機50によって送風される空気の流れについて説明する。
【0040】
吸気モードにおいて、送風機50は、制御ユニットの制御に基づいて光源41の点灯時に羽根車51を順方向に回転する。ただし、光源41の点灯時以外に送風機50が羽根車51を順方向に回転するようにしても良い。図5は、吸気モード時にランプハウジング10内を流れる空気の様子を示す概念図である。なお、図5では、空気の流れは一点鎖線により示されている。
【0041】
図5に示すように、送風機50における羽根車51の順方向の回転により羽根車51の後方側の空気が前方に送風され、その送風方向に配置される灯具1aに流れる。灯具1aでは光源41の点灯によりその光源41で生じる熱がベース板42A及び放熱フィン42Bに伝達され、当該熱は灯具1aに流れる空気により冷却される。
【0042】
また、灯具1aに流れる空気の少なくとも一部は灯具1aを経由して車両100の前方に流れ、ランプハウジング10のフロントカバー12に当たり、そのランプハウジング10の内壁に沿って流れる。
【0043】
ランプハウジング10の内壁に沿って車両100の左側に流れる空気は灯具1bに向かう。灯具1bでは光源41の点灯によりその光源41で生じる熱がベース板42A及び放熱フィン42Bに伝達され、当該熱は灯具1bに流れる空気により冷却される。灯具1bに流れる空気の少なくとも一部は灯具1bを経由して送風機50に向かう。上記のように送風機50では羽根車51の順方向の回転によってその羽根車51の後方の吸気スペースSPでは負圧が生じており、その負圧によって送風機50に向かう空気が送風機50の脚部53に形成される開口53Xから吸気スペースSPに取り込まれる。吸気スペースSPに取り込まれた空気は整流部54によって送風機50の羽根車51に導かれ、その羽根車51の順方向の回転により再び車両100の前方に再び送風され、ランプハウジング10内を循環する。上記のように、ハウジング本体11における送風機50の後方の位置には呼吸孔BHが設けられている。このため、吸気スペースSPで生じる負圧によって呼吸孔BHから外気が吸気スペースSPに取り込まれ、上記のようにランプハウジング10内を循環する。従って、本実施形態では、光源41で生じる熱で暖められたランプハウジング10内の空気が外気によって冷却される。
【0044】
このように本実施形態の複数の灯具1a~1cは、送風機50が送風する送風方向に配置される第1の灯具1aと、第1の灯具1aを経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具1bとを有している。また、送風機50は、第2の灯具1bを経由して流れる空気を吸気スペースSPから吸気するようになっている。
【0045】
また、ランプハウジング10の内壁に沿って車両100の右側に流れる空気は灯具1cに向かう。灯具1cでは光源41の点灯によりその光源41で生じる熱がベース板42A及び放熱フィン42Bに伝達され、当該熱は灯具1cに流れる空気により冷却される。灯具1cに流れる空気の少なくとも一部は、灯具1cを経由して送風機50の整流部54の外壁面に向かう。整流部54の外壁面に当たった空気の少なくとも一部は、その外壁面によって送風機50における羽根車51の前方に導かれ、ランプハウジング10内を循環する。
【0046】
このように本実施形態の整流部54は、吸気スペースSPに流入する空気を整流部54の内壁面により羽根車51の後方側から送風方向に導くとともに、当該整流部54の外壁面に流れる空気をその外壁面により羽根車51の側方から送風方向に導くようになっている。
【0047】
一方、排気モードにおいて、送風機50は、制御ユニットの制御に基づいて光源41の消灯時に羽根車51を順方向とは逆方向に回転する。ただし、光源41の消灯時以外に送風機50が羽根車51を順方向とは逆方向に回転するようにしても良い。図6は、排気モード時にランプハウジング10内を流れる空気の様子を示す概念図である。なお、図6では、空気の流れは一点鎖線により示されている。
【0048】
図6に示すように、送風機50における羽根車51の順方向とは逆方向の回転により羽根車51の前方側の空気が後方に送風され、その送風機50の後方に形成される呼吸部13の呼吸孔BHを経由してランプハウジング10内の空気が外部に排出される。上記のように呼吸孔BHの断面積は、灯室LR側の開口から後方に向かうほど小さくなっている。このため、灯室LR側の開口から流入した空気は旋回するように後方に向かう傾向となり、その旋回の中心部に負圧が生じ易くなる。従って、灯室LR側の開口から呼吸孔BHに流入した空気を外部に排出することが促進される。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の車両用前照灯1では、前方に照射される光を出射する光源41と、その光源41で生じる熱を放熱するヒートシンク42とを有する複数の灯具1a~1cが互いに並べられる。これら灯具1a~1cと送風機50とはランプハウジング10に収容されている。
【0050】
上記のように本実施形態の複数の灯具1a~1cは、送風機50が送風する送風方向に配置される第1の灯具1aと、第1の灯具1aを経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具1bとを有している。送風機50は、第2の灯具1bを経由して流れる空気を吸気する吸気スペースSPを有している。
【0051】
このような車両用前照灯1では、送風機50によって第1の灯具1aに送風される空気がその第1の灯具1aを経由して第2の灯具1bに流れ、第2の灯具1bに向かう。第2の灯具1bを経由した空気は送風機50の吸気スペースSPから吸気され、第1の灯具1aに再び送風される。このように本実施形態の車両用前照灯1によれば、1つの送風機50でランプハウジング10内の空気を循環させることができ、当該循環によって熱分布がランプハウジング10内で偏在することを抑制することができる。こうして、車両用前照灯1によれば、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制することができる。
【0052】
また本実施形態の場合、送風機50は、吸気スペースSPに流入する空気を送風方向に導く整流部54を有している。このため、吸気スペースSPに流入する空気が送風方向に導かれない場合に比べて、ランプハウジング10内の空気の循環を促進し得る。従って、ランプハウジング10内の熱分布の偏在をより一段と抑制することができる。
【0053】
また本実施形態の場合、ランプハウジング10は、前方に開口11Xが形成されるハウジング本体11と、当該開口11Xを塞ぐようにハウジング本体11に取り付けられるフロントカバー12とを有する。このハウジング本体11に送風機50が固定されている。
【0054】
灯具1aは光源41から出射する光のエイミングを調整する機構として調整ネジ32を有しており、そのような灯具1aに送風機50が固定されるとエイミングの調整によって送風機50の風向きが変わることが懸念される。これに対し、本実施形態のように送風機50がハウジング本体11に固定された場合、ランプハウジング10と送風機50との相対的位置が一定となる。従って、灯具1aが調整ネジ32を有しているか否かにかかわらず送風機50の送風方向が一定になるので、ランプハウジング10内の空気の循環を一定に保持し得る。
【0055】
また本実施形態の場合、送風機50は、羽根車51と、羽根車51を支持する支持フレーム52と、ハウジング本体11に固定され支持フレーム52に連結される脚部53とを有する。この脚部53とハウジング本体11とにより吸気スペースSPが形成されている。このため、ハウジング本体11の形状が変更されても、そのハウジング本体11に吸気スペースSPを形成させつつ固定し易くなり、汎用性を向上し得る。
【0056】
また本実施形態の場合、送風機50の後方におけるハウジング本体11には呼吸孔BHが設けられている。このため、送風機50によって呼吸孔BHからランプハウジング10内に外気を取り込み、その外気をランプハウジング10内で循環させることが可能となる。従って、ランプハウジング10内の空気だけをそのランプハウジング10内で循環させる場合に比べると、ランプハウジング10内の冷却効果を高め得る。
【0057】
また本実施形態の場合、第2の灯具1bにおけるヒートシンク42の放熱フィン42Bの一部は、送風機50の前面よりも後側に位置する。このため、送風機50の前面よりも前側に第2の灯具1bにおけるヒートシンクの一部が位置している場合に比べて第2の灯具1bが送風機50に近くなる。このため、送風機50は第2の灯具1bを経由して流れる空気を吸気スペースSPからより多く吸い込むことができる。従って、ランプハウジング10内の空気の循環を促進し得る。
【0058】
以上、本発明について、実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
例えば、上記実施形態では、車両用前照灯が送風機50の送風方向に配置される第1の灯具1aと、第1の灯具1aを経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具1bと、灯具1aを境として灯具1bが配置される側とは逆側に配置される第3の灯具1cとを有していたが、当該第3の灯具1cは省略されていても良い。また、3つの灯具1a~1cとは別に他の灯具が設けられていても良い。また、上記実施形態では、灯具1a~1cが左右方向に沿って斜めに並べられたが、複数の灯具の並びかたはこれに限らず、上下方向に並べられても良く、左右方向に平行に並んでも良く、コ字状に並べられても良い。要するに、車両用前照灯は、少なくとも、送風機50の送風方向に配置される第1の灯具1aと、第1の灯具1aを経由して流れる空気の流路上に配置される第2の灯具1bとを有していれば良い。
【0060】
また、上記実施形態では、複数の灯具1a~1cのそれぞれが光源41とヒートシンク42とを有するものとされたが、当該光源41とヒートシンク42とに加えてリフレクタ等の他の部材を有していても良い。また、投影レンズ43は必須の構成ではない。例えば、上記実施形態のPES型の灯具1a~1cに代えて、直射型の灯具、あるいは、パラボナ型の灯具等が適用可能である。なお、本実施形態におけるヒートシンク42の放熱フィン42Bは車両100の前後方向に延在していたが、上下方向に延在していても良く、斜めに延在していても良く、これら以外の方向に延在していても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、送風機50がハウジング本体11に固定されたが、灯具1aに固定されていても良い。ただし、上記のようにランプハウジング10と送風機50との相対的位置が一定にする場合には、送風機50がハウジング本体11に固定されることが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態では、ハウジング本体11における送風機50の後方の位置に呼吸孔BHが設けられたが、当該送風機50の後方以外の位置に設けられていても良く、省略されていても良い。図7は、本発明の変形例における車両用前照灯を図2と同様に示す図である。本変形例における車両用前照灯1は、呼吸孔BH及びキャップ14が設けられていない点、及びハウジング本体11における送風機50の後方の灯室LR側の面が滑らかな面とされる点において、上記実施形態における車両用前照灯1と異なる。このような場合、ランプハウジング10内の空気だけがランプハウジング10内で循環することになる。なお、本変形例のハウジング本体11における送風機50の後方の位置とは異なる位置に呼吸孔が形成されても良い。このような構成にすることで、当該呼吸孔により灯室LR内と灯室LR外とにおける圧力差を緩和することができる。この呼吸孔は、上記実施形態のキャップ14の貫通孔14Hと同様に、通気性及び防水性を有する被膜により覆われることが好ましい。ただし、上記のように送風機50によって呼吸孔BHからランプハウジング10内に外気を取り込んでランプハウジング10内の冷却効果を高める場合には、ハウジング本体11における送風機50の後方の位置に呼吸孔BHが設けられることが好ましい。
【0063】
また、上記実施形態では、送風機50が羽根車51と支持フレーム52と脚部53と整流部54を有するプロペラ型の構成とされたが、例えばシロッコ型の構成とされても良く、当該プロペラ型やシロッコ型以外の構成が採用されていても良い。なお、整流部54は省略されていても良い。また、上記実施形態では、脚部53の後方側をハウジング本体11の後方壁に固定するねじの軸部は、ハウジング本体11を貫通していた。しかし、ねじの軸部は、図7に示すように、ハウジング本体11を貫通していなくても良い。この場合、ハウジング本体11に貫通孔を設けなくても良いため、ねじとハウジング本体11との隙間から水が灯室LRに侵入することを抑制できる。また、脚部53はねじ以外、例えばクランプ等でハウジング本体11に固定されても良い。
【0064】
また、上記実施形態では、第2の灯具1bにおけるヒートシンク42の一部が送風機50の前面よりも後側に位置していたが、当該ヒートシンク42の全体が送風機50の前面よりも前側に位置していても良い。ただし、第2の灯具1bを経由して流れる空気を送風機50が吸気スペースSPからより多く吸い込む場合には、第2の灯具1bにおけるヒートシンク42の一部が送風機50の前面よりも後側に位置していることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、小型化しつつ熱分布が偏在することを抑制し得る車両用前照灯が提供され、自動車等の車両用前照灯の分野などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1・・・車両用前照灯
1a~1c・・・灯具
10・・・ランプハウジング
11・・・ハウジング本体
12・・・フロントカバー
41・・・光源
42・・・ヒートシンク
42A・・・ベース板
42B・・・放熱フィン
50・・・送風機
51・・・羽根車
52・・・支持フレーム
53・・・脚部
54・・・整流部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7