IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図1
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図2
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図3
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図4
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図5
  • 特許-鋼管杭と鉄筋の定着方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】鋼管杭と鉄筋の定着方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 1/00 20060101AFI20220927BHJP
   E01D 15/24 20060101ALI20220927BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20220927BHJP
   E02D 27/12 20060101ALI20220927BHJP
   E04C 5/12 20060101ALI20220927BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
E01D1/00 F
E01D15/24
E01D21/00 Z
E02D27/12 Z
E04C5/12
E04G21/12 105E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018117855
(22)【出願日】2018-06-21
(65)【公開番号】P2019218780
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 涛
(72)【発明者】
【氏名】谷口 修
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-002492(JP,A)
【文献】特開2009-155804(JP,A)
【文献】特開2014-231673(JP,A)
【文献】特開2016-089550(JP,A)
【文献】特開2003-193480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00
E01D 15/24
E01D 21/00
E02D 27/12
E04C 5/12
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の鋼管杭の外側面に第1の鍔状のプレートを固着し、前記第1の鋼管杭と隣接する第2の鋼管杭の外側面に第2の鍔状のプレートを固着する工程と、
孔を有する第1のクランプが一方の端部に固着され、孔を有する第2のクランプが他方の端部に固着された鉄筋を、前記第1のクランプの孔と前記第1の鍔状のプレートの孔とが連通するように配置し、当該連通した孔に第1のボルトの軸を刺し通し、前記第1のボルトの軸に第1のナットをねじ込み締め付ける工程と、
前記第2の鍔状のプレートに対して、前記第2のクランプの孔と連通する位置に穿孔を行い、前記鉄筋を、穿孔された前記第2の鍔状のプレートの孔と前記第2のクランプの孔とが連通するように配置し、当該連通した孔に第2のボルトの軸を刺し通し、前記第2のボルトの軸に第2のナットをねじ込み締め付ける工程と
を備える鋼管杭と鉄筋の定着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭と鉄筋の構造及び定着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
桟橋、鉄道高架橋等の構造には、地盤に打設された複数の鋼管杭と、それらの鋼管杭の杭頭部間に配置された鉄筋コンクリートの梁を備えるものがある。そのような構造において、杭頭部と梁を構成する鉄筋を定着させる方法として、従来、鋼管杭の杭頭部の外側面に鍔(つば)状のプレートを対向する鋼管杭に向けて溶接し、当該プレートに鉄筋を溶接する方法(以下、「従来方法」という)が広く用いられている。
【0003】
上述した従来方法による場合、現場で多数の溶接が行われるため、多大な手間と時間を要する。また、現場の天候によって作業の進捗が左右されやすい。また、溶接機を用いた作業領域の確保が難しい場合がある。
【0004】
上述した従来方法の不都合を解消する方法として、例えば特許文献1には、鋼管杭の周囲に環状部材を遊嵌し、当該環状部材に設けられた定着孔に鉄筋のネジ部を挿通し、鉄筋のネジ部をナットにより定着した後、鉄筋が鋼管杭に直接定着していない状態で、環状部材と鉄筋と鋼管杭とをコンクリートにより一体化する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-342684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来方法による鋼管杭と鉄筋の定着における作業の負担を軽減する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明は、第1の鋼管杭の外側面に第1の鍔状のプレートを固着し、前記第1の鋼管杭と隣接する第2の鋼管杭の外側面に第2の鍔状のプレートを固着する工程と、孔を有する第1のクランプが一方の端部に固着され、孔を有する第2のクランプが他方の端部に固着された鉄筋を、前記第1のクランプの孔と前記第1の鍔状のプレートの孔とが連通するように配置し、当該連通した孔に第1のボルトの軸を刺し通し、前記第1のボルトの軸に第1のナットをねじ込み締め付ける工程と、前記第2の鍔状のプレートに対して、前記第2のクランプの孔と連通する位置に穿孔を行い、前記鉄筋を、穿孔された前記第2の鍔状のプレートの孔と前記第2のクランプの孔とが連通するように配置し、当該連通した孔に第2のボルトの軸を刺し通し、前記第2のボルトの軸に第2のナットをねじ込み締め付ける工程とを備える鋼管杭と鉄筋の定着方法を提供する。
【0012】
本発明の鋼管杭と鉄筋の定着方法によれば、鉄筋をプレートに定着させる作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係る鋼管杭と鉄筋の定着構造の構成を示した図。
図2】一実施形態に係るプレートの構成を示した図。
図3】一実施形態に係るプレートが固着された状態の鋼管杭を示した図。
図4】一実施形態に係るクランプの構成を示した図。
図5】一実施形態に係る鉄筋とプレートに固着された状態のクランプを示した図。
図6】一実施形態に係る鉄筋をプレートに定着させるための作業の手順を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る鋼管杭と鉄筋の定着構造1を説明する。図1は、鋼管杭と鉄筋の定着構造1の構成を示した図である。図1(A)は斜め上から定着構造1を見た図であり、図1(B)は斜め下から定着構造1を見た図である。
【0015】
鋼管杭と鉄筋の定着構造1は、複数の鋼管杭11(図1においては1本のみ図示)と、複数の鋼管杭11の各々の杭頭部に固着されたプレート12と、互いに隣接する2本の鋼管杭11の間に配置された複数の鉄筋13と、鉄筋13の端部に固着されたクランプ14と、クランプ14及びプレート12に設けられた孔に刺し通されたボルト15と、ボルト15の軸にねじ込まれたナット16を備える。
【0016】
鋼管杭11は円筒形状であり、地盤に打設されている。プレート12は鍔状であり、鋼管杭11の杭頭部の外側面上に対向する鋼管杭11に向けて固着された板状の部材である。プレート12は鋼管杭11に、例えば溶接によって固着されている。
【0017】
鉄筋13の端部の外側面上にはネジ山が切られている。このネジ山は、クランプ14との固着に用いられる。
【0018】
クランプ14は、プレート12と鉄筋13を固着するための部材である。クランプ14の構成については後述する。
【0019】
図2は、プレート12の構成を示した図である。1個の鋼管杭11に4枚のプレート12を用いる構成となっている。各々のプレート12には複数の孔121が設けられている。
【0020】
プレート12の内側面122は、鋼管杭11の外側面に沿う曲面となっている。また、プレート12の外側面123は、鋼管杭11の半径方向に垂直な平面となっている。
【0021】
図3は、外側面上に鍔状の4枚のプレート12が固着された状態の鋼管杭11を示した図である。
【0022】
図4は、クランプ14の構成を示した図である。クランプ14は、ネジ受け軸141と保持部142を有する。ネジ受け軸141は内側面上にネジ谷が切られた円筒状の部材である。ネジ受け軸141は、外側面上にネジ山が切られた鉄筋13の端部を受容する。
【0023】
保持部142は図4の側方から見た場合、「コ」の字形状を成す部材であり、互いに対向するプレート1421とプレート1422を有する。プレート1421には1423が設けられている。また、プレート1422には孔1424が設けられている。孔1423の孔1424と対向する面と、孔1424の孔1423と対向する面には、凹凸が設けられている。
【0024】
図5は、鉄筋13がネジ受け軸141にねじ込まれ、孔1211が孔1423と孔1424に連通するように保持部142にプレート12が挟まれた状態で連通されたそれらの孔にボルト15が刺し通され、ボルト15とナット16とによりクランプ14とプレート12とが締め付けられた状態を示した図である。
【0025】
図5に示す状態で、ボルト15の軸にナット16が強くねじ込まれると、クランプ14の保持部142がプレート12を挟み込んだ状態で締め付ける。その結果、プレート12とプレート1421の接触部分、及び、プレート12とプレート1422の接触部分に強い摩擦力が生じ、クランプ14を介してプレート12に対し鉄筋13が定着される。なお、プレート1421及びプレート1422のプレート12に接する面に設けられた凹凸は、プレート12とクランプ14の接触部分における摩擦力を増大させる役割を果たす。
【0026】
図6は、鉄筋13をプレート12に定着させるための作業の手順を示した図である。作業の前提として、鋼管杭と鉄筋の定着構造1に用いられる全ての鋼管杭11が地盤に打設されているものとする。また、鋼管杭と鉄筋の定着構造1に用いられる全てのプレート(孔の設けられていないプレートであり、以下「無孔プレート」という)と、鉄筋13と、クランプ14とが用意されているものとする。まず、作業者は、半数の無孔プレートに穿孔し、孔121を設ける(ステップS01)。すなわち、図4に示したプレート12(有孔プレート)を作製する。続いて、作業者は、鋼管杭11に対し作製したプレート12を溶接により固着する(ステップS02)。このとき、ある鋼管杭11にプレート12を固着した場合、その鋼管杭11と隣接する鋼管杭11にはプレート12を固着しない。このようにして、半数の鋼管杭11にプレート12が固着される。
【0027】
作業者は、ステップS01~S02と並行して、ステップS02でプレート12を固着しない鋼管杭11に対し無孔プレートを溶接により固着する(ステップS03)。この結果、プレート12と無孔プレートとが対向して配置される。
【0028】
作業者は、ステップS01~S03と並行して、鋼管杭と鉄筋の定着構造1に用いられる全ての鉄筋13の両端に対するクランプ14の取り付けを行う(ステップS04)。
【0029】
続いて、作業者は、打設された鋼管杭11に固着されているプレート12と無孔プレートの各々に関し、以下のステップS05~S10の作業を行う。
【0030】
まず、作業者は、隣接する鋼管杭11のプレート12(有孔プレート)と無孔プレートとに対し鉄筋13を配置し、鉄筋13の両端のクランプ14の各々が、プレート12と無孔プレートとを挟み込むように仮置きする(ステップS05)。続いて、作業者は、プレート12を挟み込んでいるクランプ14の孔1423及び孔1424がプレート12の孔121と連通するようにクランプ14の位置決めを行う(ステップS06)。
【0031】
続いて、作業者は、連通した孔121、孔1423及び孔1424にボルト15の軸を刺し通し、連通したそれらの孔に刺し通されたボルト15の軸にナット16をねじ込み締め付ける(ステップS07)。
【0032】
続いて、作業者は、鉄筋13の他端側のクランプ14が挟み込んでいる無孔プレートに対して穿孔する作業を行う(ステップS08)。無孔プレートに対して、クランプ14の孔1423及び孔1424と連通するような位置に穿孔を行う。続いて、作業者は、穿孔された孔とクランプ14の孔1423及び孔1424とが連通するようにクランプ14の位置決めを行う(ステップS09)。続いて、作業者は、穿孔した孔と孔1423及び孔1424にボルト15の軸を刺し通し、連通したそれらの孔に刺し通されたボルト15の軸にナット16をねじ込み締め付ける(ステップS10)。以上により、鉄筋13の一端側のクランプ14が鋼管杭11のプレート12に定着され、鉄筋13の他端側のクランプ14が鋼管杭11の無孔プレート(作業中に穿孔される)に定着される。
【0033】
上述した定着方法は、鋼管杭11と鉄筋13との定着に溶接を用いないため、従来方法と比較し、要する溶接の数が格段に少ない。従って、上述した定着方法によれば、従来方法による場合と比較し、手間と時間が大幅に軽減され、天候が作業の進捗に与える影響が低下し、作業領域の確保が容易となる。
【0034】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形することができる。以下のそれらの変形の例を示す。なお、上述した実施形態及び以下に示す変形例は適宜組み合わされてもよい。
【0035】
(1)上述の実施形態においては、1個の鋼管杭11に対して4枚のプレート12(あるいは4枚の無孔プレート)を固着して構成されるものとしたが、プレート12(あるいは無孔プレート)の枚数は4枚に限られない。
【0036】
(2)上述の実施形態においては、クランプ14のプレート12に接する部分に凹凸を設けるものとしたが、これに代えて、もしくは加えて、プレート12のクランプ14に接する部分に凹凸を設けてもよい。
【0037】
(3)上述の実施形態においては、鋼管杭11に対しプレート12(あるいは無孔プレート)が溶接により固着されるものとしたが、鋼管杭11に対するプレート12(あるいは無孔プレート)の固着の方法は溶接に限られない。例えば、プレート12(あるいは無孔プレート)を、鋼管杭11の外側面に沿って延伸するフランジを有する形状とし、当該フランジにネジ孔を設けるとともに、鋼管杭11にもネジ孔を設けて、それらのネジ孔にボルトを刺し通しナットで締め付けることで、プレート12(あるいは無孔プレート)を鋼管杭11に固着する方法が採用されてもよい。
【0038】
(4)上述の実施形態においては、鉄筋13の端部をクランプ14のネジ受け軸141にねじ込むことによって鉄筋13に対しクランプ14が固着されるものとしたが、鉄筋13に対するクランプ14の固着の方法はねじ込みに限られない。例えば、クランプ14がネジ受け軸141に代えて内側面上に凹凸の設けられた円筒状の受け軸を有し、外側面上にネジ山に代えて凹凸の設けられた鉄筋13の端部がクランプ14の受け軸に差し込まれた状態でクランプ14の受け軸を直径方向に押し潰して変形させることによって、鉄筋13にクランプ14が固着されてもよい。
【0039】
(5)上述した実施形態においては、鋼管杭11が地盤に打設された後で、プレート12(あるいは無孔プレート)の鋼管杭11への固着が行われるものとしたが、これらの順序は逆転してもよい。例えば、鋼管杭11を打設する機械により、プレート12(あるいは無孔プレート)が取り付けられた状態の鋼管杭11を打設することが可能な場合、各々の鋼管杭11にプレート12(あるいは無孔プレート)の固着が行われた後に、鋼管杭11の打設が行われてもよい。
【0040】
(6)上述した実施形態においては、隣接する鋼管杭11の一方にプレート12(有孔プレート)を固着し、他方に無孔プレートを固着することとしたが、クランプ14の孔とプレート12の孔との位置ずれが許容誤差範囲に抑えられるのであれば、両方とも有孔プレートを固着してもよい。この場合、クランプ14や鉄筋13の構成により、クランプ14の孔とプレート12の孔との位置ずれを補正することとしてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1…定着構造、11…鋼管杭、12…プレート、13…鉄筋、14…クランプ、15…ボルト、16…ナット、121…孔、122…内側面、123…外側面、141…ネジ受け軸、142…保持部、1421…プレート、1422…プレート、1423…孔、1424…孔。
図1
図2
図3
図4
図5
図6