(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機及びガス圧縮システム
(51)【国際特許分類】
F04C 29/04 20060101AFI20220927BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20220927BHJP
F04C 28/12 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
F04C29/04 C
F04C18/16 Q
F04C28/12
(21)【出願番号】P 2018118586
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187908
【氏名又は名称】山本 康平
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】天野 靖士
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 浩史
(72)【発明者】
【氏名】林 雅人
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-299584(JP,A)
【文献】特開2003-227469(JP,A)
【文献】特開2011-196272(JP,A)
【文献】特開2012-097645(JP,A)
【文献】特表2017-504754(JP,A)
【文献】特開2009-197777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/04
F04C 18/16
F04C 28/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと
、前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、
を有するスクリュー圧縮機と、
前記スクリュー圧縮機から吐出された圧縮ガス中の油を分離して回収する油回収器と、
前記油回収器で回収した油を前記ケーシングに戻すオイル供給管と、
を備え、
前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられ
、
前記加温流体用通路に接続され、前記油回収器で油が分離された後の圧縮ガスを前記加温流体として前記加温流体用通路に導入するガス導入経路を更に備えている、
ガス圧縮システム。
【請求項2】
前記加温流体用通路は、前記スクリューロータの下部よりも下側において前記吸込側空間に開口することを特徴とする、請求項1に記載の
ガス圧縮システム。
【請求項3】
前記ガス導入経路に設けられ、前記ガス導入経路から前記加温流体用通路への前記加温流体の導入を制御する弁をさらに備えることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の
ガス圧縮システム。
【請求項4】
前記オイル供給管を有し、前記スクリューロータが収容される前記ケーシング内の空間に油を供給す
る油供給ユニットをさらに備え
、
前記油供給ユニットは、前記オイル供給管を流れる前記油の一部を前記加温流体として前記加温流体用通路に導入する油導入経路を有することを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載の
ガス圧縮システム。
【請求項5】
前記吸込口から前記ケーシング内に流入するガスの温度が予め定められた基準温度より低いことに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備えることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の
ガス圧縮システム。
【請求項6】
軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、
前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、
前記スクリューロータの軸方向にスライドすることにより、前記スクリューロータの圧縮容量を調整するスライド弁と、
前記軸方向における前記スライド弁の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられ、
前記位置検出部により検知された前記スライド弁の位置と前記スライド弁の指示位置との差が予め定められた基準値を超えることに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備えることを特徴とする
、スクリュー圧縮機。
【請求項7】
軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、
前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、を備え、
前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられ、
前記ケーシングとの間で油を循環させる容器内における前記油の液面高さが予め定められた基準高さよりも低いことに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備えることを特徴とする
、スクリュー圧縮機。
【請求項8】
軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、
前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、
前記ケーシングの振動数を検知する振動検知部と、
を備え、
前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられ、
前記振動検知部により検知された前記振動数と前記ケーシングの固有振動数との差が予め定められた基準値以上であることに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備えることを特徴とする
、スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機及びガス圧縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されるように、雄雌一対のスクリューロータを備えたスクリュー圧縮機について知られている。このスクリュー圧縮機は、雄ロータ及び雌ロータがケーシング内において互いに噛み合うように配置されたものであり、両ロータを軸周りに回転させることによってガスを所定の圧力になるまで昇圧する。
【0003】
特許文献1には、液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)のタンク内で発生したボイルオフガスを所定の供給圧力まで昇圧して需要先に供給するボイルオフガス処理装置において、当該ボイルオフガスの昇圧にスクリュー圧縮機を用いることについて記載されている。この公報では、スクリュー圧縮機にボイルオフガスを導くための経路の途中に熱交換器が設置されており、圧縮機へ導入される前のボイルオフガスを当該熱交換器において加温することが可能とされている。また同公報が開示するスクリュー圧縮機は、主に圧縮熱の除去を目的として油を供給する油冷式のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された油冷式スクリュー圧縮機において、LNGタンク内で発生するボイルオフガスといった極低温(約-160℃)のガスが導入されると、ケーシング内の油が極度に冷やされて凍結することがある。これにより、ケーシング内におけるスクリューロータの回転が阻害され、圧縮機の正常な運転動作が妨げられることがある。これに対し、特許文献1では、圧縮機へ導入される前のボイルオフガスが熱交換器において予め加温される構成となっているが、この場合、熱交換器の設置に伴う設備の複雑化が避けられない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、圧縮機へのガスの導入経路における設備の複雑化を防ぎつつ、低温ガスの圧縮用途においてもケーシング内での油の凍結を防止することが可能なスクリュー圧縮機及びガス圧縮システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一局面に係るガス圧縮システムは、軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、を有するスクリュー圧縮機と、前記スクリュー圧縮機から吐出された圧縮ガス中の油を分離して回収する油回収器と、前記油回収器で回収した油を前記ケーシングに戻すオイル供給管と、を備えている。前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられている。前記ガス圧縮システムは、前記加温流体用通路に接続され、前記油回収器で油が分離された後の圧縮ガスを前記加温流体として前記加温流体用通路に導入するガス導入経路を更に備える。
【0008】
このガス圧縮システムによれば、加温流体用通路を通じてケーシングの吸込側空間に加温流体を導入することにより、当該空間に滞留した油を加温することができる。これにより、油の凝固点よりも温度が低いガスが吸込口を通じて当該吸込側空間に導入された場合でも、加温流体によって加温することにより油の凍結を防止することができる。このガス圧縮システムによれば、ケーシング内での油の凍結を防止するに際して、従来のように圧縮機へのガスの導入経路に加温設備などを設ける必要がないため、設備の複雑化を防ぐこともできる。したがって、本発明によれば、スクリュー圧縮機へのガスの導入経路における設備の複雑化を防ぎつつ、低温ガスの圧縮用途においてもケーシング内での油の凍結を防止することが可能なガス圧縮システムを提供することができる。また、スクリュー圧縮機による圧縮後のガスを加温流体として利用することにより、ガスの圧縮熱によってケーシング内の油を効果的に加温することができる。
【0009】
上記ガス圧縮システムにおいて、前記加温流体用通路は、前記スクリューロータの下部よりも下側において前記吸込側空間に開口していてもよい。
【0010】
この構成によれば、吸込側空間におけるスクリューロータの下部よりも下側の領域に加温流体を導入することができる。一方、吸込側空間にある油は、スクリューロータの下部よりも下側にあるものが、スクリューロータに吸い込まれずに滞留する。したがって、上記構成によれば、吸込側空間に滞留した油に対して加温流体を直接供給することができるため、油の凍結をより確実に防止することができる。
【0013】
上記ガス圧縮システムは、前記ガス導入経路に設けられ、前記ガス導入経路から前記加温流体用通路への前記加温流体の導入を制御する弁をさらに備えていてもよい。
【0014】
この構成によれば、弁の開閉の切り替えや弁開度の調整により、加温流体用通路への加温流体(圧縮ガス)の導入を容易に制御することができる。
【0015】
上記ガス圧縮システムは、前記オイル供給管を有し、前記スクリューロータが収容される前記ケーシング内の空間に油を供給する油供給ユニットをさらに備えていてもよい。前記油供給ユニットは、前記油の一部を前記加温流体として前記加温流体用通路に導入する油導入経路を有してもよい。
【0016】
この構成によれば、スクリューロータの潤滑などに利用される油の一部を加温流体として利用することができるため、油供給ユニット以外の加温流体の供給機構を別途設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。
【0017】
上記ガス圧縮システムは、前記吸込口から前記ケーシング内に流入するガスの温度が予め定められた基準温度より低いことに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備えていてもよい。
【0018】
この構成によれば、吸込ガスの温度が低く、油の凍結が起こり易い適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができるため、油の凍結をより確実に防止することができる。
【0019】
本発明の一局面に係るスクリュー圧縮機は、軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、前記スクリューロータの軸方向にスライドすることにより、前記スクリューロータの圧縮容量を調整するスライド弁と、前記軸方向における前記スライド弁の位置を検出する位置検出部と、を備える。前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられる。前記スクリュー圧縮機は、前記位置検出部により検知された前記スライド弁の位置と前記スライド弁の指示位置との差が予め定められた基準値を超えることに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備える。
【0020】
スライド弁の実際の位置(位置検出部による検出位置)とスライド弁の指示位置(設定位置)との差が大きい場合は、ケーシング内での油の凍結によってスライド弁の正常の動作が阻害されていると考えることができる。上記構成によれば、両位置の差が大きく、ケーシング内で油が凍結していると考えられる適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。
【0021】
本発明の一局面に係るスクリュー圧縮機は、軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、を備える。前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられる。前記スクリュー圧縮機は、前記ケーシングとの間で油を循環させる容器内における前記油の液面高さが予め定められた基準高さよりも低いことに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備える。
【0022】
上記容器内における油の液面高さが低い場合には、ケーシング内で油が凍結することにより、ケーシングから容器への油の流れが阻害されていると考えることができる。上記構成によれば、容器内の油の液面高さが低く、ケーシング内での油の凍結が予測される適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。
【0023】
本発明の一局面に係るスクリュー圧縮機は、軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータと、前記スクリューロータを回転自在に収容すると共にガスの吸込口が設けられたケーシングであって、前記吸込口から前記ケーシング内に流入すると共に前記スクリューロータに吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間が設けられた前記ケーシングと、前記ケーシングの振動数を検知する振動検知部と、を備える。前記ケーシングには、前記吸込側空間に滞留した油を加温するように前記吸込側空間に加温流体を導入するための加温流体用通路が設けられる。前記スクリュー圧縮機は、前記振動検知部により検知された前記振動数と前記ケーシングの固有振動数との差が予め定められた基準値以上であることに基づいて、前記加温流体用通路に前記加温流体を導入する制御を行う制御部をさらに備える。
【0024】
ケーシングの振動数がその固有振動数から大きく外れる場合には、ケーシング内における油の凍結をその原因として考えることができる。上記構成によれば、ケーシングの振動数の固有振動数からのずれが大きく、ケーシング内で油が凍結している可能性が高い適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、圧縮機へのガスの導入経路における設備の複雑化を防ぎつつ、低温ガスの圧縮用途においてもケーシング内での油の凍結を防止することが可能なスクリュー圧縮機及びガス圧縮システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機が適用されるガス圧縮システムの系統を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機の構成を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の実施形態3に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の実施形態3に係るスクリュー圧縮機における加温流体の導入タイミングを説明するためのフローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態4に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図7】本発明の実施形態4に係るスクリュー圧縮機における加温流体の導入タイミングを説明するためのフローチャートである。
【
図8】本発明の実施形態5に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図9】本発明の実施形態5に係るスクリュー圧縮機における加温流体の導入タイミングを説明するためのフローチャートである。
【
図10】本発明の実施形態6に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の実施形態6に係るスクリュー圧縮機における加温流体の導入タイミングを説明するためのフローチャートである。
【
図12】本発明の実施形態7に係るスクリュー圧縮機の構成を説明するための模式図である。
【
図13】本発明のその他実施形態に係るスクリュー圧縮機を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0028】
(実施形態1)
まず、本発明の実施形態1に係るスクリュー圧縮機1及び当該スクリュー圧縮機1が適用されるガス圧縮システム100Aの構成について、
図1及び
図2を参照してそれぞれ説明する。
図1は、本実施形態におけるガス圧縮システム100Aの系統を模式的に示している。
図2は、スクリュー圧縮機1の部分断面を模式的に示している。なお、
図1及び
図2は、ガス圧縮システム100A及びスクリュー圧縮機1における主要な構成要素のみを示しており、ガス圧縮システム100A及びスクリュー圧縮機1は、
図1及び
図2に示されていない他の任意の構成要素を備え得る。
【0029】
ガス圧縮システム100Aは、例えば、タンク内に貯蔵されたLNGの一部が蒸発することにより発生したボイルオフガスを、所定の供給圧力まで昇圧した後、需要先に供給するためのシステムである。
図1に示すように、ガス圧縮システム100Aは、ボイルオフガスを所定の供給圧力まで昇圧するスクリュー圧縮機1と、スクリュー圧縮機1にボイルオフガスを導くための吸込経路2と、スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮後のボイルオフガスが流れる吐出経路3と、圧縮ガス中の油を分離する油回収器4と、油分離後の圧縮ガスを需要先に導くための供給経路5と、を主に備えている。
【0030】
スクリュー圧縮機1は、軸周りに回転することによりボイルオフガスを圧縮するスクリューロータ10と、スクリューロータ10を軸周りに回転自在に収容するケーシング30と、スクリューロータ10を軸周りに回転させるための駆動力を発生する駆動部であるモータ20と、を有する。
図1に示すように、ケーシング30には、圧縮前のガスの吸込口31A及び圧縮後のガスの吐出口32Aが軸方向両側にそれぞれ設けられている。スクリュー圧縮機1の詳細な構成については後述する。
【0031】
吸込経路2は、上流端が図略のLNGタンクに接続されると共に、下流端がケーシング30の吸込口31Aに接続されている。これにより、LNGタンク内で発生したボイルオフガスを、吸込経路2を通じてケーシング30内に導くことができる。ここで、吸込経路2には、圧縮前のガスを加温するための設備(例えば、熱交換器など)が設置されていない。このため、LNGタンクから流出したボイルオフガスは、低温状態を維持したままケーシング30内に導入される。
【0032】
吐出経路3は、上流端がケーシング30の吐出口32Aに接続されると共に、下流端が油回収器4の入口に接続されている。これにより、スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮ガスを、吐出経路3を通じて油回収器4に導くことができる。なお、吐出経路3には、圧縮ガスの逆流を防ぐ逆止弁3Aが設けられていてもよいが、これに限定されない。
【0033】
油回収器4は、スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮ガス中の油を分離して回収するためのものである。油回収器4は、圧縮ガスから分離した油を溜める容器4Bと、容器4B内に配置されると共に微細繊維などからなるフィルターである分離エレメント4Aと、を有する。
【0034】
スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮ガスは、吐出経路3を通じて容器4B内に流入し、分離エレメント4Aを通過する。これにより、圧縮ガス中の油が分離される。分離エレメント4Aを通過したガスは、容器4Bの外に流出する。一方、分離エレメント4Aにより捕捉された油は、容器4Bの底に溜まる。
【0035】
供給経路5は、上流端が油回収器4の出口に接続されると共に、下流端が需要先に接続されている。これにより、油回収器4から流出した圧縮ガス(油分離後の圧縮ガス)を、供給経路5を通じて需要先に供給することができる。
【0036】
次に、スクリュー圧縮機1の構成について、
図2を参照してより詳細に説明する。
図2に示すように、スクリュー圧縮機1は、軸方向に延びる形状のスクリューロータ10と、スクリューロータ10の軸方向一端面(吸込側端面)に接続された吸込側軸部11と、スクリューロータ10の軸方向他端面(吐出側端面)に接続された吐出側軸部12と、吸込側軸部11に外嵌された吸込側軸受41と、吐出側軸部12に外嵌された吐出側軸受49と、これらを収容するケーシング30と、を主に備えている。
【0037】
スクリューロータ10は、雄雌一対のロータを有している。雄ロータ及び雌ロータは、それぞれ軸方向に延びる形状を有し、且つ外周面に螺旋状の歯部が形成されている。雄ロータ及び雌ロータは、歯部同士が互いに噛み合うようにケーシング30内に収容されており、軸方向一端側(
図2中の左端側)から吸い込んだガスを、軸周りの回転によって圧縮し、圧縮されたガスを軸方向他端側(
図2中の右端側)から吐出する。
【0038】
吸込側軸部11は、スクリューロータ10と同軸回転可能に接続されており、一端がケーシング30の外側面30Aよりも外側に突出している。この突出端にモータ20が取り付けられており、モータ20を駆動させることによりスクリューロータ10を軸周りに回転させることができる。なお、吸込側軸部11がケーシング30の外側に突出する場合に限定されず、モータ20がケーシング30内に収められていてもよい。
【0039】
吸込側軸受41は、ラジアル軸受(例えば、ころ軸受)であり、吸込側軸部11の外周面とケーシング30の内面30Bとの間に装着されている。この吸込側軸受41により、吸込側軸部11は軸周りにおいて回転可能に支持される。
【0040】
吐出側軸部12は、吸込側軸部11と同様に、スクリューロータ10と同軸回転可能に接続されている。本実施形態において、吐出側軸受49は、第1~第3軸受要素42,43,44を含む。第1~第3軸受要素42~44は、吐出側軸部12に外嵌されたラジアル軸受(例えば、ころ軸受や玉軸受)であって、吐出側軸部12の外周面とケーシング30の内面30Bとの間に装着されている。これにより、吐出側軸部12は、軸周りにおいて回転可能に支持される。なお、吐出側軸受49を構成する軸受要素の数は特に限定されない。
【0041】
ケーシング30には、上面31側に開口する吸込口31Aと、下面32側に開口する吐出口32Aと、がそれぞれ設けられている。なお、吸込口31A及び吐出口32Aの位置は、
図2に示す位置に限定されない。
【0042】
ケーシング30の内部空間は、内面30Bによって規定される。この内部空間は、スクリューロータ10が収容されるロータ収容空間S1と、吸込口31Aからケーシング30内に流入すると共にスクリューロータ10に吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間S2と、スクリューロータ10から吐出された圧縮ガスが流れる吐出側空間S3と、を含む。
【0043】
吸込側空間S2は、スクリューロータ10よりも軸方向一方側に設けられており、吸込口31Aから流入したガスをスクリューロータ10に導く。吐出側空間S3は、スクリューロータ10よりも下側に設けられており、スクリューロータ10から吐出された圧縮ガスを吐出口32Aに導く。なお、吐出側空間S3の位置は、スクリューロータ10の下側に限定されない。
図2に示すように、ケーシング30の内面30Bは、スクリューロータ10の下部10Aよりも下側(下面32側)に位置する底面34を含む。この底面34は、吸込側空間S2に臨む面である。
【0044】
スクリュー圧縮機1は、スクリューロータ10の圧縮容量を調整するスライド弁45を備えている。
図2に示すように、スライド弁45には、ピストンロッド46の先端が接続されている。ピストン48は、油圧シリンダ47内に作動油を供給することにより水平移動し、それに伴ってスライド弁45をスクリューロータ10の軸方向にスライドさせることができる。これにより、スクリューロータ10から吐出側空間S3に吐出されるガスの圧力を調整することができる。なお、スライド弁45は、本発明のスクリュー圧縮機における必須の構成要素ではなく、省略されてもよい。
【0045】
スクリュー圧縮機1は、ケーシング30内で生じる圧縮熱を油によって除去する油冷式のものであり、油回収器4で回収した油をケーシング30に戻す油供給ユニット50を備えている。
【0046】
図1に示すように、油供給ユニット50は、オイル供給管51と、オイル供給管51に配置されたオイルクーラ52、オイルポンプ53及びオイルフィルタ54と、を有する。オイル供給管51は、油回収器4で回収した油をケーシング30に戻すための配管である。オイル供給管51の一端は、容器4Bに溜まった油を配管内に取り込むため、容器4Bの底部近傍に位置している。一方、オイル供給管51の他端51Aは、スクリューロータ10、軸受41,49或いはスライド弁45が収容される空間内に油を供給可能なようにケーシング30に接続されている。
【0047】
オイルクーラ52は、オイル供給管51内を流れる油を冷却する。オイルポンプ53は、容器4Bに溜まった油をオイル供給管51に汲み上げるためのものであり、オイルクーラ52の後段に配置されている。オイルフィルタ54は、油に含まれる異物などを除去するためのものであり、オイルポンプ53の後段において並列に配置されている。本実施形態においては、ケーシング30の後段に持ち出された油を油回収器4で回収し、その回収した油を油供給ユニット50によってケーシング30に戻すことができる。つまり、ケーシング30と油回収器4の容器4Bとの間で油を循環させることができる。なお、油供給ユニット50は省略されてもよい。
【0048】
ここで、
図2に示すように、ケーシング30の吸込側空間S2には、油O1が滞留することがある。具体的には、スクリューロータ10の下部10Aよりも下側に位置する底面34上にある油O1は、スクリューロータ10に吸い込まれないため、吸込側空間S2で滞留する。
【0049】
そして、極低温のボイルオフガスが吸込口31Aから吸込側空間S2内に流入すると、底面34上に滞留した油O1が凍結してしまう。このような問題に対し、本実施形態に係るスクリュー圧縮機1は、ケーシング30の吸込側空間S2に加温流体を導入可能な構成となっており、この加温流体によって油を加温することで凍結を防止することができる。
【0050】
ケーシング30には、吸込側空間S2に滞留した油O1を加温するように当該吸込側空間S2に加温流体を導入するための加温流体用通路33(以下、単に「通路33」とも称する)が設けられている。この通路33は、吸込側空間S2の下側に位置するケーシングの下壁部を厚さ方向に貫通する孔により構成されている。
【0051】
図2に示すように、加温流体用通路33は、ケーシング30の外側に開口する入口33Aと、吸込側空間S2に開口する出口33Bと、を有する。入口33Aはケーシング30の下面32に設けられ、出口33Bはケーシング30の底面34に設けられている。したがって、この通路33は、底面34において、すなわちスクリューロータ10の下部10Aよりも下側において吸込側空間S2に開口している。
【0052】
図1及び
図2に示すように、スクリュー圧縮機1は、当該スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮ガスを加温流体として通路33に導入するガス導入経路6(加温流体導入経路)と、ガス導入経路6に設けられた弁7と、を備えている。ガス導入経路6は、一端が供給経路5に接続されると共に(
図1)、他端が通路33の入口33Aに接続されている(
図2)。弁7は、図略の制御部により開閉制御されるものであり、ガス導入経路6内におけるガスの流通及び遮断を切り替えることにより、ガス導入経路6から通路33への加温流体の導入を制御する。なお、弁7は、手動で開閉状態を切り替えるものでもよい。また弁7は、ON/OFF弁であってもよいがこれに限定されず、例えば流量調整弁であってもよい。
【0053】
上記構成によれば、弁7を開くことにより、供給経路5内を流れる油分離後の圧縮ガスを、ガス導入経路6を通じて加温流体として加温流体用通路33に導入し、当該通路33から吸込側空間S2に圧縮ガスを導入することができる。これにより、吸込側空間S2の底面34上に滞留した油O1を加温して凍結を防止し、また凍結した油O1を融解させることができる。なお、弁7が省略され、供給経路5から一定量の圧縮ガスが通路33に常時導入される構成でもよい。
【0054】
ここで、上記の通り説明した実施形態1に係るスクリュー圧縮機1の特徴及び作用効果について列記する。
【0055】
スクリュー圧縮機1は、軸周りに回転することによりガスを圧縮するスクリューロータ10と、スクリューロータ10を回転自在に収容すると共にガスの吸込口31Aが設けられたケーシング30であって、吸込口31Aからケーシング30内に流入すると共にスクリューロータ10に吸い込まれる前のガスが流れる吸込側空間S2が設けられたケーシング30と、を備えている。ケーシング30には、吸込側空間S2に滞留した油O1を加温するように吸込側空間S2に加温流体を導入するための加温流体用通路33が設けられている。
【0056】
上記スクリュー圧縮機1によれば、加温流体用通路33を通じてケーシング30の吸込側空間S2に加温流体を導入することにより、吸込側空間S2に滞留した油O1を加温することができる。これにより、油O1の凝固点よりも低温のガスが吸込口31Aから吸込側空間S2に導入された時でも、加温流体によって油O1を加温することにより凍結を防止することができる。また既に油O1が凍結している場合には、それを融解させることができる。このスクリュー圧縮機1によれば、ケーシング30内での油O1の凍結を防止するに際して、吸込経路2にガスの加温設備などを設ける必要がないため、設備の複雑化を防ぐこともできる。したがって、このスクリュー圧縮機1によれば、圧縮機へのガスの導入経路における設備の複雑化を防ぎつつ、低温ガスの圧縮用途においてもケーシング30内での油O1の凍結を防止することができる。
【0057】
上記スクリュー圧縮機1において、加温流体用通路33は、スクリューロータ10の下部10Aよりも下側において吸込側空間S2に開口する。これにより、吸込側空間S2におけるスクリューロータ10の下部10Aよりも下側の領域に加温流体を導入することができる。一方、吸込側空間S2にある油O1は、スクリューロータ10の下部10Aよりも下側にある場合に、スクリューロータ10に吸い込まれずに滞留する。したがって、上記構成によれば、吸込側空間S2に滞留した油O1に対して加温流体を直接供給することができるため、油O1の凍結をより確実に防止することができる。
【0058】
上記スクリュー圧縮機1は、当該スクリュー圧縮機1から吐出された圧縮ガスを加温流体として加温流体用通路33に導入するガス導入経路6と、ガス導入経路6に設けられると共にガス導入経路6から加温流体用通路33への加温流体の導入を制御する弁7と、を備えている。このように、スクリュー圧縮機1による圧縮後のガスを加温流体として利用することにより、ガスの圧縮熱によってケーシング30内の油O1を効果的に加温することができる。また弁7の開閉の切り替えや弁7の開度調整によって、加温流体用通路33への加温流体の導入を容易に制御することができる。
【0059】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2に係るスクリュー圧縮機1Aについて、
図3を参照して説明する。実施形態2に係るスクリュー圧縮機1Aは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、加温流体として油が用いられる点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0060】
図3に示すように、実施形態2における油供給ユニット50では、オイル供給管51の他端(油回収器4内に位置する一端と反対側の端部)は、主経路56と油導入経路55(加温流体導入経路)とに分かれている。
【0061】
主経路56は、油回収器4で回収した油をスクリューロータ10、軸受或いはスライド弁などが収容される空間内に供給可能なようにケーシング30に接続されている。一方、油導入経路55は、実施形態1のガス導入経路6と同様に、加温流体用通路33の入口33A(
図2)に接続されている。油導入経路55には、当該経路内における油の流通及び遮断を切り替える弁55Aが設けられている。
【0062】
実施形態2に係るスクリュー圧縮機1Aでは、弁55Aを開くことにより、油回収器4の容器4Bからスクリューロータ10が収容される空間に供給される油の一部を、油導入経路55を通じて加温流体として加温流体用通路33(
図2)に導入することができる。このように、スクリューロータ10の潤滑などに利用される油の一部を加温流体として利用することができるため、油供給ユニット50以外の加温流体の供給機構を別途設ける必要がなく、装置を簡素化することができる。しかし、実施形態1のガス導入経路6と実施形態2の油導入経路55とが併用される態様でもよい。
【0063】
(実施形態3)
次に、本発明の実施形態3に係るスクリュー圧縮機1Bについて、
図4及び
図5を参照して説明する。実施形態3に係るスクリュー圧縮機1Bは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、吸込ガスの温度に基づいて加温流体の導入タイミングを制御する点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0064】
図4に示すように、吸込経路2には、当該経路内を流れるガスの温度を検知する温度センサ2Aが設けられている。この温度センサ2Aにより、吸込口31Aからケーシング30内に流入するガスの温度(吸込ガスの温度)を検知することができる。
【0065】
スクリュー圧縮機1Bは、温度センサ2Aによる検知結果を受信し、それに基づいて弁7の開閉を制御する制御部100を備えている。実施形態3では、吸込側空間S2への加温流体の導入タイミングが、吸込ガスの温度に基づいて以下の通り制御される。
【0066】
図5のフローチャートに示すように、まず、スクリュー圧縮機1Bを起動する(ステップS51)。この起動時には、弁7は閉じた状態となっている。そして、圧縮機の起動後、温度センサ2Aによる吸込ガスの温度測定を開始し、その実測値Tsが吸込ガスについて予め定められた基準温度Ts
0よりも低いか否かについて、制御部100が判定する(ステップS52)。この基準温度Ts
0としては、例えば油の凝固点を用いることができるが、特に限定されない。
【0067】
吸込ガスの温度の実測値Tsが基準温度Ts0よりも低い場合には(ステップS52のYES)、制御部100からの指令によって弁7が開かれる(ステップS53)。これにより、ガス導入経路6から加温流体用通路33に圧縮ガスが加温流体として導入され、当該加温流体がケーシング30の吸込側空間S2に導入される。
【0068】
一方、吸込ガスの温度の実測値Tsが基準温度Ts0以上である場合には(ステップS52のNO)、制御部100は弁7を開かず、ケーシング30の吸込側空間S2に加温流体が導入されない。この場合、S52の判定ステップが繰り返される。
【0069】
実施形態2に係るスクリュー圧縮機1Bでは、吸込ガスの温度が低く、油の凍結が起こり易い適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。このため、ケーシング30の吸込側空間S2における油の凍結をより確実に防止することができる。なお、本実施形態では、加温流体が圧縮ガスである場合について説明したが、加温流体が油である場合(実施形態2)でも、本実施形態で説明した加温流体の導入タイミングの制御を同様に適用することができる。
【0070】
(実施形態4)
次に、本発明の実施形態4に係るスクリュー圧縮機1Cについて、
図6及び
図7を参照して説明する。実施形態4に係るスクリュー圧縮機1Cは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、スライド弁45の位置に基づいて加温流体の導入タイミングを制御する点で実施形態1と異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0071】
図6に示すように、実施形態4に係るスクリュー圧縮機1Cは、スクリューロータ10の軸方向(スライド弁45のスライド方向)におけるスライド弁45の位置を検知するセンサである位置検出部49Aを備えている。この位置検出部49Aによる検知結果は、制御部100に送信される。実施形態4では、スライド弁45の位置に基づいて、以下のように加温流体の導入タイミングが制御される。
【0072】
図7のフローチャートに示すように、まず、スクリュー圧縮機1Cを起動する(ステップS71)。この起動時において、弁7(
図6)は閉じた状態となっている。そして、圧縮機の起動後、温度センサ2Aにより吸込ガスの温度測定を開始し、その実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低いか否かについて、制御部100が判定する(ステップS72)。吸込ガスの温度の実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低い場合には(ステップS72のYES)、次のステップS73に移行する。一方、実測値Tsが基準温度Ts
0以上である場合には(ステップS72のNO)、ステップS72の判定が繰り返される。
【0073】
ステップS73では、スライド弁45をスクリューロータ10の軸方向にスライドさせることにより、スライド弁45の開度を変更する。スクリュー圧縮機1Cでは、スライド弁45のロータ軸方向の位置を変更することによって、スクリューロータ10からのガスの吐出圧が調整される。次のステップS74では、ステップS73で入力したスライド後のスライド弁45の指示位置Posiと、位置検出部49Aにより検知されたスライド後のスライド弁45の実際の位置Posaとを比較する。そして、両者の差(絶対値)が、予め定められた基準値A0を超えるか否かについて制御部100が判定する。
【0074】
両者の差が基準値A0を超える場合には(ステップS74のYES)、制御部100が弁7を開く(ステップS75)。これにより、ガス導入経路6から加温流体用通路33に圧縮ガスが加温流体として導入され、当該加温流体がケーシング30の吸込側空間S2に導入される。一方、両者の差が予め定められた基準値A0以下である場合には(ステップS74のNO)、制御部100は弁7を開かず、ケーシング30の吸込側空間S2に加温流体が導入されない。この場合、S72の判定ステップに戻る。
【0075】
スライド弁45の開度を変更した場合において、変更後のスライド弁45の実際の位置(位置検出部49Aによる検出位置)とスライド弁45の指示位置(設定位置)との差が大きい場合は、ケーシング30内での油の凍結によってスライド弁45の正常の動作が阻害されていると考えられる。実施形態3に係るスクリュー圧縮機1Cによれば、両位置の差が大きく、ケーシング30内で油が凍結していると考えられる適切なタイミングで加温流体を導入することができる。また吸込ガスを基準温度と比較するステップS72は省略されてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、加温流体が圧縮ガスである場合について説明したが、加温流体が油である場合(実施形態2)でも、本実施形態で説明した加温流体の導入タイミングの制御を同様に適用することができる。また本実施形態で説明したスライド弁45の位置に基づく制御は、実施形態3で説明した吸込ガス温度に基づく制御と組み合わされてもよい。
【0077】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態5に係るスクリュー圧縮機1Dについて、
図8及び
図9を参照して説明する。実施形態5に係るスクリュー圧縮機1Dは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、油回収器4内における油の液面高さに基づいて加温流体の導入タイミングを制御する点で異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0078】
図8に示すように、油回収器4の容器4Bには、レベルセンサー4Cが設けられている。このレベルセンサー4Cは、容器4B内における油の液面高さが予め定められた基準高さよりも低いか否かを検知するものであり、その検知結果をスクリュー圧縮機1Dの制御部100に送信する。実施形態5では、容器4B内における油の液面高さに基づいて、以下のように加温流体の導入タイミングが制御される。
【0079】
図9のフローチャートに示すように、まず、スクリュー圧縮機1Dを起動する(ステップS91)。この起動時において、弁7は閉じた状態となっている。そして、圧縮機の起動後、温度センサ2Aにより吸込ガスの温度測定を開始し、その実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低いか否かについて制御部100が判定する(ステップS92)。吸込ガスの温度の実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低い場合には(ステップS92のYES)、次のステップS93に移行する。一方、実測値Tsが基準温度Ts
0以上である場合には(ステップS92のNO)、S92の判定ステップが繰り返される。なお、この判定ステップS92は省略されてもよい。
【0080】
ステップS93では、容器4B内における油の液面高さLが予め定められた基準高さL0よりも低いか否かについて制御部100が判定する。そして、液面高さLが基準高さL0より低い場合には(ステップS93のYES)、制御部100が弁7を開く(ステップS94)。これにより、ガス導入経路6から加温流体用通路33に圧縮ガスが加温流体として導入され、当該加温流体がケーシング30の吸込側空間S2に導入される。一方、液面高さLが基準高さL0以上である場合には(ステップS93のNO)、制御部100は弁7を開かず、ケーシング30の吸込側空間S2に加温流体が導入されない。この場合、S92の判定ステップに戻る。
【0081】
油回収器4の容器4B内における油の液面高さが低い場合には、ケーシング30内で油が凍結することにより、ケーシング30から容器4Bへの油の流れが阻害されていると考えられる。実施形態5に係るスクリュー圧縮機1Dによれば、容器4B内の油の液面高さが低く、ケーシング30内での油の凍結が予測される適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。
【0082】
なお、本実施形態では、加温流体が圧縮ガスである場合について説明したが、加温流体が油である場合(実施形態2)でも、本実施形態で説明した加温流体の導入タイミングの制御を同様に適用することができる。また本実施形態で説明した油の液面高さに基づく制御は、実施形態3の吸込ガス温度に基づく制御や実施形態4のスライド弁45の位置に基づく制御と組み合わされてもよい。
【0083】
(実施形態6)
次に、本発明の実施形態6に係るスクリュー圧縮機1Eについて、
図10及び
図11を参照して説明する。実施形態6に係るスクリュー圧縮機1Eは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、ケーシング30の振動数に基づいて加温流体の導入タイミングを制御する点で異なっている。以下、実施形態1と異なる点についてのみ説明する。
【0084】
図10に示すように、スクリュー圧縮機1Eは、ケーシング30の振動数を検知するセンサである振動検知部34Aを備えている。この振動検知部34Aは、ケーシング30における一方の外側面30A(吸込側空間S2に近い方の外側面)に取り付けられているが、取付位置は特に限定されない。例えば、ケーシング30の上面31、下面32又は他方の外側面に取り付けられていてもよい。実施形態6では、ケーシング30の振動数に基づいて、以下のように加温流体の導入タイミングが制御される。
【0085】
図11のフローチャートに示すように、まず、スクリュー圧縮機1Eを起動する(ステップS110)。この起動時において、弁7は閉じた状態となっている。そして、圧縮機の起動後、温度センサ2Aにより吸込ガスの温度測定を開始し、その実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低いか否かについて制御部100が判定する(ステップS111)。吸込ガスの温度の実測値Tsが基準温度Ts
0よりも低い場合には(ステップS111のYES)、次のステップS112に移行する。一方、実測値Tsが基準温度Ts
0以上である場合には(ステップS111のNO)、S111の判定ステップが繰り返される。なお、この判定ステップS111は省略されてもよい。
【0086】
ステップS112では、振動検知部34Aにより検知されたケーシング30の振動数とケーシング30の固有振動数とを比較し、両者の差が予め定められた基準値以上であるか否かについて制御部100が判定する。そして、両者の差が基準値以上である場合(ステップS112のNG)、制御部100が弁7を開く(ステップS113)。これにより、ガス導入経路6から加温流体用通路33に圧縮ガスが加温流体として導入され、当該加温流体がケーシング30の吸込側空間S2に導入される。一方、両者の差が基準値未満である場合には(ステップS112のOK)、制御部100は弁7を開かず、ケーシング30の吸込側空間S2に加温流体が導入されない。この場合、S111の判定ステップに戻る。
【0087】
ケーシング30の振動数がその固有振動数から大きく外れる場合には、ケーシング30内における油の凍結が影響していることが考えられる。実施形態6に係るスクリュー圧縮機1Eによれば、ケーシング30の振動数の固有振動数からのずれが大きく、ケーシング30内で油が凍結している可能性が高い適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。
【0088】
なお、本実施形態では、加温流体が圧縮ガスである場合について説明したが、加温流体が油である場合(実施形態2)でも、本実施形態で説明した加温流体の導入タイミングの制御を同様に適用することができる。また本実施形態で説明したケーシング30の振動数に基づく制御は、実施形態3の吸込ガス温度に基づく制御、実施形態4のスライド弁45の位置に基づく制御或いは実施形態5の油の液面高さに基づく制御と組み合わされてもよい。
【0089】
(実施形態7)
次に、本発明の実施形態7に係るスクリュー圧縮機1Fについて、
図12を参照して説明する。実施形態7に係るスクリュー圧縮機1Fは、基本的に実施形態1に係るスクリュー圧縮機1と同様の構成を備え、且つ同様の効果を奏するが、ケーシング30の温度に基づいて加温流体の導入タイミングを調整する点で異なっている。
【0090】
図12に示すように、ケーシング30の外面には、当該ケーシング30の温度(外面温度)を測定する温度センサ110が設けられている。温度センサ110の取付位置は特に限定されないが、吸込側空間S2の近くに取り付けられることが好ましく、例えば吸込側空間S2を規定するケーシング壁の外面に取り付けることができる。
【0091】
実施形態7に係るスクリュー圧縮機1Fでは、温度センサ110により検知されたケーシング温度に基づいて、加温流体の導入タイミングが制御される。即ち、実施形態3における吸込ガス温度に代えてケーシング温度を採用し、上述した実施形態3の制御フロー(
図5)と同じ流れで加温流体の導入タイミングが制御される。これにより、ケーシング温度が低く、油の凍結が起こり易い適切なタイミングで加温流体を導入して油を加温することができる。なお、実施形態7のタイミング制御は、実施形態3~6で説明したタイミング制御と組み合わされてもよい。
【0092】
(その他実施形態)
最後に、本発明のその他実施形態について説明する。
【0093】
上記実施形態1では、加温流体用通路33がケーシング30の下壁を貫通する孔により構成される場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ケーシング30の側壁を貫通する孔により構成されていてもよい。また加温流体用通路33は、スクリューロータ10の下部10Aよりも下側において吸込側空間S2に開口する場合に限定されず、スクリューロータ10の下部10Aよりも上側において吸込側空間S2に開口していてもよい。
【0094】
上記実施形態1,2では、圧縮ガス又は油を加温流体として用いる場合についてのみ説明したがこれに限定されず、これら以外の加温流体の供給設備を別途設けてもよい。
【0095】
上記実施形態1では、一つのスクリューロータ10のみを備える単段式のスクリュー圧縮機1について説明したがこれに限定されず、2段以上のスクリューロータを備える多段式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。
【0096】
上記実施形態1では、スクリュー圧縮機1が、LNGタンク内で発生したボイルオフガスを圧縮するために使用される場合について説明したが、圧縮用途はこれに限定されない。例えば、水素や空気などの他種類のガスの圧縮用途においても、本発明を適用することができる。
【0097】
上記実施形態1では、ガス導入経路6が供給経路5に接続される場合について説明したが、これに限定されない。
図13に示すように、ガス導入経路6が吐出経路3に接続され、油分離前の圧縮ガスが加温流体としてケーシング30の吸込側空間S2に導入されてもよい。しかし、このように油を含む圧縮ガスを加温流体としてケーシング30に戻す場合、弁7を気液混合流体に適した設計にするのが難しいこともある。このため、実施形態1で説明した通り、油分離後の圧縮ガスを加温流体としてケーシング30に戻すことが好ましい。
【0098】
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1,1A~1F スクリュー圧縮機
6 ガス導入経路
7 弁
10 スクリューロータ
10A 下部
30 ケーシング
31A 吸込口
33 加温流体用通路
34A 振動検知部
45 スライド弁
49A 位置検出部
50 油供給ユニット
O1 油
S2 吸込側空間