(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】密封防水手袋
(51)【国際特許分類】
A61F 13/00 20060101AFI20220927BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20220927BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
A61F13/00 F
A41D19/00 C
A41D19/00 P
A41D19/00 K
A41D19/015 140
(21)【出願番号】P 2018139170
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-05-25
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】512258344
【氏名又は名称】榎本 貴子
(72)【発明者】
【氏名】榎本貴子
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-103116(JP,A)
【文献】特開昭49-019969(JP,A)
【文献】特開2013-096024(JP,A)
【文献】特開2004-156155(JP,A)
【文献】特表2010-515840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D19/00-19/04
A41D13/08
A61F13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
前記防水手袋において、前記円環弾性体がシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、または合成ゴムで形成され、前記固定円環ゴムバンドの手袋との接触面側に
円環凸部を設け、
前記円環弾性体と前記固定円環ゴムバンドは装着状態では設定された径に復元する圧力が内側に働き、前記手首皮膚面と前記円環弾性体、前記円環弾性体と前記手袋最内層フィルムとが、それぞれ密着し、
前記手袋最内層フィルムの段差を圧着し密封性を保持する事を特徴とする請求項1に記載の密封防水手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は 手指に怪我をした人がキッチン、シャワー、入浴等水作業で患部を水分に触れさせない為に着用するお湯、水分等の浸入を防ぐ密封性が高い防水手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
手指に裂傷、骨折等の怪我をした場合薬剤を塗布しコットン等で保護し、包帯か絆創膏で固定し治癒するまで待つことになる。その間長期間に渡りその状態を維持する必要があり 水分等で濡れることは避けなければならない。しかし主婦にはキッチンでの洗い物があり、誰もがシャワー、入浴はしなければ成らす、どうしても患部を濡らしていまい再度消毒して包帯を巻き直したり、浸水した患部が細菌等に犯される危険性が生じる。
【0003】
従来は傷を負って包帯をした状態でシャワーを浴びたり、入浴や洗濯をする場合は患部を水に濡らさない為に損傷部を食品用ラップやビニール袋等で包み込み、粘着テープで固定する方法等が用いられていたが、一人で取付ける作業は難しく、手間と時間が掛かり、装着状態が悪いと水が浸入してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【0005】
特許文献1の防水式手保護カバーは、手に薬を塗ったり包帯をしたままの状態でシャワー、入浴、炊事等水作業が出来る様に手首部と親指挿入部と親指以外の指挿入部からなるポリエチレン製のカバー本体で、手首部の下端寄りに設けたファスナーと両端部に面ファスナーを設けた長尺帯状の固定帯で締め付けて水が入らないようにして水作業ができるとしている。
【0006】
しかし特許文献1の防水式手は保護用カバーは、カバー本体が薄くて柔軟性に優れたポリエチレンを使用し、手首部に設けた面ファスナーと両端部に面ファスナーを設けた長尺帯状の固定帯によりしっかり締め付けて水が入らないようにしているが、カバーの手首部分の重なり合う部分に皺が発生し段差が生じ、又長尺帯状の固定帯も手首部に設けた面ファスナーと重なり合う部分、長尺帯状固定帯の両端が重なり合う部分にも段差が生じる。水作業中に浸入する水分は、このカバー本体に発生するポリエチレンフィルムの皺と接する手首表皮に生じる隙間、長尺状固定帯に重なり合う部分に発生する隙間、カバーへの押し圧が弱くなる箇所を通って浸入する可能性が高くなり、さらに毛細管現象により僅かな隙間であってもカバー内に水分が浸入する事が考えられる。これを防ぐ為に長尺状固定帯の締め付ける力を上げなくては成らないが、締め付ける力が強くなると手首へ大きな負担が掛かることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこでこの発明は、手指に怪我をした人がキッチン、シャワー、入浴等水作業を行う時に 簡単に防水カバーが出来なかったり、防水対策をしても患部を水分で濡らしてしまったりする事を防ぎ、一人で簡単に着脱が出来、水中に患部を沈めても水分が手袋の中に浸入しない密封構造を有した手袋を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、手袋着用前に手首に合成ゴムを使用した円環弾性体を装着し、続いて手袋を着用したその上からゴムバンドを使って固定することで手の皮膚面と円環弾性体、円環弾性体と手袋内層がそれぞれ密着し、なお且つ円環弾性体と接する手袋内層に極薄素材を配置し、手袋を着用して密封する時に発生する皺、段差の発生を吸収して高い密封性を実現する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、防水性に優れた薄く柔らかい素材を使用した手袋を2層構造に形成し、内層に極薄フィルムを配置し、手袋着用前に手首に合成ゴムを使用した円環弾性体を装着し、手袋着用後にその上から円環状のゴムバンドで固定して得られる密封性により確実な防水性が実現し、シャワー、入浴、キッチンで怪我をしている手指患部を濡らすこと無く安心して水作業が出来、手袋の着脱も一人で簡単に出来る様になる。本発明は手、腕を該当箇所をとしているが、足、足首、脚部でも同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】防水手袋装着図 A 円環弾性体装着図 B 手袋装着図 C 固定円環ゴムバンド装着図(使用状態)
【
図4】固定円環ゴムバンド A 外観図 B 断面図
【
図7】密着部断面図 A 固定円環ゴムバンド未装着断面図 B 固定円環ゴムバンド装着断面図
【0011】
以下本発明の実施形態の説明を図面を参照に行う。
図1は、防水手袋1の外観を表している。手袋は2層以上で構成され、手袋外層材質は オレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ナイロン、合成ゴム、生ゴム等柔軟で防水性,耐熱性を備え、簡単に破れたり 孔が開かない薄いが強靱な材質で形成されている。又水分等が浸入してきた場合に手袋の内部が見えるよう透明性があった方が良く、手袋をしたまま作業する場合の作業性を損なわない為の柔軟性を備える。手袋の形状は親指と他の4本(人差し指、中指、薬指、小指)が分かれたミトン形状を形成している。指同士を包帯でまとめる場合等怪我の状況に対応し易い形状で、細かい作業も親指と他の4本指で行うことが出来るが、通常の5本に分かれた指先形状であっても構わない。最内層は極薄フィルムで オレフィン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ナイロン、合成ゴム、生ゴム等柔軟で防水性,耐熱性を備え、簡単に破れたり孔が開かない強靱な材質であり、厚みは30μ以下に設定される。最内層フィルムは、手袋を密封する時に重なり合ったり皺になったりして段差、隙間が発生するが、固定円環ゴムバンドの押し圧により最内層フィルムが円環弾性体に圧着され、最内層フィルムの薄さと柔らかさにより段差、隙間が吸収される。最内層フィルムの配置は防水手袋1の全体であるが、手首から開口部迄の一部(密封密着部周辺)であっても構わない。又手袋に手を挿入する間口部1aは手指の装着時に患部が触れにくいよう大きく設定すると良い。
【0012】
図2は、防水手袋着用において、Aは先に円環弾性体6を手首に装着した状態、Bはその後防水手袋1を着用した状態、Cは更に手袋上から固体円環ゴムバンド7で固定した状態を表している。手首の表皮と円環弾性体6及び最内層フィルム3が上から装着された円環固定ゴムバンド7の圧力で密着固定され、水の浸入を完全に遮断できる状態を成している。密着固定箇所は1ヶ所以上で 万が一に不具合で1カ所の密着固定箇所に異常が生じた場合の予備で複数ヶ所設置しても良い。
【0013】
図3は、円環弾性体6の全体斜視
図Aと断面
図Bである。円環弾性体6は、柔軟性と復元性と伸縮性のあるシリコーンゴム、ポリウレタンゴム、合成ゴムで形成され、手首皮膚表面の凹凸、毛、傷等により発生する段差、隙間に密着する。寸法設定は、手首より径を小さく設定し、素材の伸縮性により手のひらより大きく広がり、設定寸法より2倍以上伸びて簡単に装着出来、装着すれば元の径に復元する力で手首に圧着する。円環状弾性体6の手首と接する内側は凹部6a形状を成し、円環状弾性体6と固定ゴムバンド7の押し圧で潰れ真空状態になり吸盤機能により密封性を高める。又手手袋の上から装着する固定円環ゴムバンド7により上から強く押し圧され、袋の最内層フィルム3と円環弾性体6は強く密着し、手袋の内面最内層フィルムに出来る皺、重なりにより発生する段差、隙間が密着し密封性を保持できる。
【0014】
図4は、円環固定ゴムバンド7の全体斜視
図Aと断面
図Bである。固定円環ゴムバンド7は 手袋の上から装着し手袋最内層フィルム3と円環弾性体6と手首表面皮膚を密着させる力で押し圧出来る弾力と伸縮性と強度を有し、手袋と接する面側に凸部7aを数カ所円周状に配置することで円環弾性体6に凸部7aが強く押し込まれ、凸部7aのエッジ部7bが手袋最内層フィルム3と円環弾性体6に発生した段差、皺、隙間を遮断し水の浸入を防ぐことができる。円環固定ゴムバンド7は手首より小さい径で設定され、伸縮性で大きく広がり簡単に手袋の上から装着出来、元の寸法に戻ろうとする復元力で強く押し圧する。固定円環ゴムバンド7の材質は 押し圧力が得られる生ゴム、合成ゴム、合成樹脂で形成される。
【0015】
図5は、防水手袋1の全体斜視
図Aと断面
図Bである。2層構造になっており人の肌に触れる側の最内層フィルム3には 合成樹脂フィルム、合成ゴム、生ゴム等の極薄フィルムが配置され、外層フィルム2にはある程度の厚みと強度のある素材を使用し、手袋の形状維持と破れ難い強度,突き刺し等による破損がおきにくい生ゴム、合成ゴム、樹脂フィルム等が使用され、2層以上の構成であっても良い。最内層フィルム3は極薄フィルムで、 厚みは30μ以下で更に毛細管現象の防ぐ為10μ以下の厚みであることが望ましい。外層フィルム2と最内層フィルム3は、外周端と手袋開口部端で接着部4を形成し、後は分離し分離部5を形成している。外層フィルム2と最内層フィルム3の外周端の接着部4は、外周全部或いは手袋の形成に支障のない範囲の一部であっても構わない。円環弾性体6と接する最内層フィルム3は外層フィルム2と分離しているので、最内層フィルム3の薄さ、柔らかさで段差、皺の隙間に密着し密封状態が保てる。外層フィルム2と最内層フィルム3の外周端の接着は、手首部分(密封密着部周辺)に未接着部4aを設定すると、接着部分に妨げられず内層フィルム2の動きが解放され、固定円環ゴムバンド圧着時の密着状態の向上ができる。又外層フィルム2と最内層フィルム3を分離するとその間に密封された空気スペースが出来るので空気層により手袋内部に温度差により発生する結露を防止する事が出来る。
【0016】
図6は、防水手袋1を装着し固定円環ゴムバンド7で固定した状態の断面図である。極薄最内層フィルム3は重なりあって弾円環弾性体6との接触面に段差、皺が発生するが、厚みが薄いので段差,皺の隙間は小さく円環弾性体6に固定円環ゴムバンド7の圧力により沈み込み潰れ密着する。円環弾性体6は 柔らかく、伸縮性、復元性のあるシリコーンゴム、ウレタンゴム,合成ゴムを使用し、設定寸法に復元する圧力で手首皮膚に圧着し手首表面の凸凹を吸収する。更に手袋の上から固定円環ゴムバンド7を装着固定し、上からの圧力により手首表皮と円環弾性体、円環弾性体と最内層フィルムを強く圧着する。固定円環ゴムバンド7の手袋に向く内側に凸部7a形状を形成し、固定円環ゴムバンド7の圧力で手袋の上から固定円環ゴムバンド7の凸部7aが手袋最内層フィルム3と共に円環弾性体6まで押し込まれることで凸部7aのエッジ部7bが円環弾性体に食い込み、縦方向に発生し易い段差,隙間を遮断して密封状態を保つ事が出来る。
【0017】
図7は、手首表皮と円環弾性体6と防水手袋1と固定円環ゴムバンド7の密着密封部の断面図である。Aは固定円環ゴムバンド7を装着する前であり、Bは固定円環ゴムバンド7を装着した状態を示している。固定円環ゴムバンド7の凸部7aが手袋の上から押し圧し、手袋の外層フィルム2と最内層フィルム3を柔らかい円環弾性体6の中に押し込んで固定されている。固定円環ゴムバンド7のコーナー及び凸部7aの10ヶ所のエッジ部7bが最内層フィルム3と円環弾性体6を強く押し圧し、密着し、極薄最内層フィルム3に発生する段差、皺等隙間を吸収し密着し密封状態を保っている。又固定円環ゴムバンド7の押し圧により、円環弾性体6の手首表皮側の凹部6aが潰れ、真空状態を形成し密封状態を高める。
【符号の説明】
【0018】
1 防水手袋
1a 開口部
2 外層フィルム
3 最内層フィルム
4 接着部(外層フィルムと最内層フィルム)
4a 未接着部
5 分離部(外層フィルムと最内層フィルム)
6 円環弾性体
6a 凹部
7 固定円環ゴムバンド
7a 凸部
7b エッジ部