(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】食肉製品の製造方法及び食肉製品
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20220927BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L13/00 Z
(21)【出願番号】P 2018168169
(22)【出願日】2018-09-07
【審査請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】302061325
【氏名又は名称】米久かがやき株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】大熊 誠
(72)【発明者】
【氏名】田代 幸弘
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-159042(JP,A)
【文献】特開2008-048617(JP,A)
【文献】特開平07-255426(JP,A)
【文献】特開平04-293473(JP,A)
【文献】特開昭60-262574(JP,A)
【文献】特表2001-527411(JP,A)
【文献】特許第3068826(JP,B1)
【文献】米国特許第06187362(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)細長形状を有する原料肉を準備する工程;
(b)準備された原料肉を捻る工程;
(c)捻られた原料肉をケーシングに充填する工程;及び
(d)ケーシングに充填された原料肉を加熱する工程
を含む、食肉製品の製造方法。
【請求項2】
工程(a)で準備された原料肉が、第1側縁部及び第2側縁部を有し、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ、原料肉の長手方向に延在する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが2箇所以上で交差するように、原料肉が捻られている、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが3箇所以上で交差するように、原料肉が捻られている、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ螺旋状となるように、原料肉が捻られている、請求項2~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出している、請求項2~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
工程(c)において、又は、工程(c)の後であって工程(d)の前に、原料肉をケーシングの底部に向けて押圧する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が20%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が10%以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
工程(d)の後に、ケーシングから内容物を取り出す工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
食肉製品がハムである、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉製品の製造方法及び食肉製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、細長形状の原料肉(例えば、バラ肉等)をU字状にした後、ケーシングに充填し、加熱することにより、食肉製品(例えば、ハム等)を製造する方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ケーシングに充填された原料肉において、原料肉の離間する部分同士(例えば、細長形状の長手方向の両側に位置する側縁部同士)は、肉接合部により接合される。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、原料肉の離間する部分同士を接着する肉接着部が形成される。
【0004】
しかしながら、従来の製造方法では、ケーシングに充填された原料肉において、原料肉の離間する部分同士(例えば、細長形状の長手方向の両側に位置する側縁部同士)の接合が不十分な肉接合部が存在し、このような肉接合部からは、原料肉の離間する部分同士の接着が不十分な肉接着部が形成される。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、タンパク質変性により筋原繊維が収縮するため、原料肉の離間する部分同士の接着が不十分な肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しやすくなる。食肉製品のスライス時に肉接着部が剥離すると、スライス断面に身割れが生じる。スライス断面に生じた身割れは、食肉製品の美観、食感等を損ね、商品価値に悪影響を与える。
【0005】
そこで、本発明は、食肉製品のスライス時にスライス断片の身割れを防止することができる食肉製品の製造方法及び食肉製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の食肉製品の製造方法及び食肉製品を提供する。
【0007】
[1]以下の工程:
(a)細長形状を有する原料肉を準備する工程;
(b)準備された原料肉を捻る工程;
(c)捻られた原料肉をケーシングに充填する工程;及び
(d)ケーシングに充填された原料肉を加熱する工程
を含む、食肉製品の製造方法。
[2]工程(a)で準備された原料肉が、第1側縁部及び第2側縁部を有し、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ、原料肉の長手方向に延在する、[1]に記載の製造方法。
[3]工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが2箇所以上で交差するように、原料肉が捻られている、[2]に記載の製造方法。
[4]工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが3箇所以上で交差するように、原料肉が捻られている、[2]に記載の製造方法。
[5]工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する時、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ螺旋状となるように、原料肉が捻られている、[2]~[4]のいずれか一つに記載の製造方法。
[6]工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出している、[2]~[5]のいずれか一つに記載の製造方法。
[7]工程(c)において、又は、工程(c)の後であって工程(d)の前に、原料肉をケーシングの底部に向けて押圧する工程をさらに含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の製造方法。
[8]食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が20%以下である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の製造方法。
[9]食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が10%以下である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の製造方法。
[10]工程(d)の後に、ケーシングから内容物を取り出す工程をさらに含む、[1]~[9]のいずれか一つに記載の製造方法。
[11]食肉製品がハムである、[1]~[10]のいずれか一つに記載の製造方法。
[12]表面に露出した螺旋状の肉接着部を有する食肉製品。
[13]食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が20%以下である、[12]に記載の食肉製品。
[14]食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生するスライス断片の割合が10%以下である、[12]に記載の食肉製品。
[15]食肉製品がハムである、[12]~[14]のいずれか一つに記載の食肉製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、食肉製品のスライス時にスライス断片の身割れを防止することができる食肉製品の製造方法及び食肉製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、工程(a)で準備される原料肉の一実施形態を示す平面図である。
【
図3】
図3は、ケーシングへの充填を開始する際の原料肉の一実施形態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、ケーシングへの充填を開始する際の原料肉の別の実施形態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、ケーシングへの充填を開始する際の原料肉のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【
図6】
図6は、ケーシングに充填された原料肉の一実施形態を示す平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す原料肉がケーシングの底部に向けて押圧された状態の一実施形態を示す平面図である。
【
図8】
図8は、実施例において、原料肉を捻った状態を示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施例において、ケーシングへの充填を開始する時の原料肉の状態を示す平面図である。
【
図10】
図10は、実施例において、ケーシングへの充填が完了した時の原料肉の状態を示す平面図である。
【
図11】
図11は、実施例において、ケーシングに充填された原料肉をケーシングの底部に向けて押圧した後、ケーシングを結紮して調製された原料肉の充填原木を示す平面図である。
【
図12】
図12は、実施例において得られた食肉製品の原木を示す平面図である。
【
図13】
図13は、原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する肉接着部が剥離しておらず、身割れが生じていないスライス断片の一例を示す平面図である。
【
図14】
図14は、原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する肉接着部が剥離しておらず、身割れが生じていないスライス断片の別の例を示す平面図である。
【
図15】
図15は、原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する肉接着部が剥離しており、身割れが生じているスライス断片の一例を示す平面図である。
【
図16】
図16は、比較例において、U字状に折り畳んだ原料肉の状態を示す平面図である。
【
図17】
図17は、比較例において、ケーシングへの充填を開始する時の原料肉の状態を示す平面図である。
【
図18】
図18は、比較例において、ケーシングへの充填が完了した時の原料肉の状態を示す平面図である。
【
図19】
図19は、比較例において、ケーシングに充填された原料肉をケーシングの底部に向けて押圧した後、ケーシングを結紮して調製した原料肉の充填原木を示す平面図である。
【
図20】
図20は、比較例において得られた食肉製品の原木を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について説明する。
【0011】
本発明に係る食肉製品の製造方法は、以下の工程:
(a)細長形状を有する原料肉を準備する工程;
(b)準備された原料肉を捻る工程;
(c)捻られた原料肉をケーシングに充填する工程;及び
(d)ケーシングに充填された原料肉を加熱する工程
を含む。
【0012】
本発明に係る食肉製品の製造方法において、工程(a)~(d)は順次実施される。
【0013】
食肉製品は、原料肉をケーシングに充填する工程及びケーシングに充填された原料肉を加熱する工程を経て製造される食肉製品である限り限定されるものではなく、食品衛生法で規定される「乾燥食肉製品」、「非加熱食肉製品」、「特定加熱食肉製品」及び「加熱食肉製品」のいずれも包含される。
【0014】
「乾燥食肉製品」は、乾燥させた食肉製品であって、乾燥食肉製品として販売するものをいう。「非加熱食肉製品」は、食肉を塩漬けした後、くん煙し、又は乾燥させ、かつ、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法による加熱殺菌を行っていない食肉製品であって、非加熱食肉製品として販売するもの(但し、乾燥食肉製品を除く。)をいう。「特定加熱食肉製品」は、その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法以外の方法による加熱殺菌を行った食肉製品(但し、乾燥食肉製品及び非加熱食肉製品を除く。)をいう。「加熱食肉製品」は、乾燥食肉製品、非加熱食肉製品及び特定加熱食肉製品以外の食肉製品、すなわち、食品衛生法で規定された方法(その中心部の温度を63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法)による加熱殺菌を行った食肉製品をいう。
【0015】
食肉製品としては、例えば、サラミソーセージ、ビーフジャーキー、ラックスハム(生ハム)、ボンレスハム、プレスハム、ロースハム、ベーコン、ソーセージ等が挙げられる。なお、サラミソーセージ及びビーフジャーキーは乾燥食肉製品に該当し、ラックスハム(生ハム)は非加熱食肉製品に該当し、ボンレスハム、プレスハム、ベーコン、ロースハム及びソーセージは加熱食肉製品に該当する。
【0016】
好ましい実施形態において、食肉製品はハムである。
【0017】
工程(a)
工程(a)は、細長形状を有する原料肉を準備する工程である。
【0018】
原料肉は、食肉製品の原料肉として一般的に使用されるものの中から適宜選択することができる。原料肉としては、例えば、牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉、合鴨肉、馬肉等の畜肉が挙げられる。原料肉としては、例えば、生肉、保存肉(例えば、冷蔵保存肉、冷凍保存肉等)等が挙げられる。保存肉としては、例えば、と畜後24時間以内に4℃以下に冷却され、かつ、冷却後4℃以下で保存された肉等が挙げられる。冷凍保存肉は、必要に応じて解凍した後、原料肉として使用することができる。
【0019】
原料肉は、肉塊である。なお、「肉塊」とは、食品衛生法で定義される通り、食肉(内臓を除く。)の単一の塊を意味する。
【0020】
原料肉は、細長形状を有する。「細長形状」とは、平面に載置された原料肉を平面視及び側面視したとき、原料肉の平面視形状の輪郭線を含み、かつ、面積が最小である外接矩形(以下「平面視外接矩形」という)が長方形であり、かつ、原料肉の側面視形状の輪郭線を含み、かつ、面積が最小である外接矩形(以下「側面視外接矩形」という)が長方形であることを意味する。平面視外接矩形の長辺の長さと側面視外接矩形の長辺の長さとは、通常、同一である。原料肉を平面に載置する際、原料肉は、真っ直ぐな状態で(すなわち、原料肉の中心線が直線状となるように)、扁平となるように、平面に載置される。平面視外接矩形及び側面視外接矩形は、それぞれ、原料肉の平面視形状及び側面視形状の輪郭線との接点を有する。平面視外接矩形の長辺の長さは、平面視外接矩形の短辺の長さの、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上、さらに一層好ましくは5倍以上である。側面視外接矩形の長辺の長さは、側面視外接矩形の短辺の長さの、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは4倍以上、さらに一層好ましくは5倍以上である。平面視外接矩形及び側面視外接矩形の長辺が延在する方向は、原料肉の長手方向に相当し、平面視外接矩形の短辺が延在する方向は、原料肉の短手方向に相当し、側面視外接矩形の短辺が延在する方向(原料肉が載置される平面に垂直な方向)は、原料肉の厚み方向に相当する。原料肉は、第1側縁部及び第2側縁部を有し、第1側縁部及び第2側縁部はそれぞれ、原料肉の長手方向に延在する。
【0021】
原料肉の平面視形状及び側面視形状としては、例えば、長方形、長方形が変形した形状等が挙げられる。長方形が変形した形状としては、例えば、長方形の角部が丸みを帯びた形状、長方形の少なくとも一辺の一部又は全体が曲線である形状、長方形の一方の長辺の長さと他方の長辺の長さが異なる形状、長方形の一方の短辺の長さと他方の短辺の長さが異なる形状、これらの変形の1種又は2種以上が組み合わさった形状等が挙げられる。
【0022】
平面視外接矩形及び側面視外接矩形の長辺の長さ(原料肉の長さ)は、通常20cm~60cm、好ましくは30cm~60cm、さらに好ましくは40cm~60cmである。
【0023】
平面視外接矩形の短辺の長さ(原料肉の幅)は、通常5cm~30cm、好ましくは10cm~30cm、さらに好ましくは15cm~30cmである。
【0024】
側面視外接矩形の短辺の長さ(原料肉の厚み)は、通常1cm~10cm、好ましくは3cm~10cm、さらに好ましくは5cm~10cmである。
【0025】
図1は、工程(a)で準備される原料肉の一実施形態を示す平面図である。
図2は、
図1に示す原料肉の側面図である。なお、
図1及び
図2において、図の見やすさの点から、平面視外接矩形及び側面視外接矩形が、それぞれ、原料肉の平面視形状及び側面視形状の輪郭線から若干離れて記載されているが、実際には、平面視外接矩形及び側面視外接矩形は、それぞれ、原料肉の平面視形状及び側面視形状の輪郭線との接点を有する。
【0026】
図1及び
図2に示すように、一実施形態に係る原料肉1は、細長形状を有する。
図1及び
図2において、原料肉1は、真っ直ぐな状態で(すなわち、原料肉1の中心線Lが直線状となるように)、扁平となるように、平面に載置され、平面視及び側面視されている。
図1に示すように、原料肉1の平面視形状の輪郭線を含み、かつ、面積が最小である平面視外接矩形S1は長方形であり、平面視外接矩形S1の長辺の長さは、平面視外接矩形S1の短辺の長さの3倍以上である。
図2に示すように、原料肉1の側面視形状の輪郭線を含み、かつ、面積が最小である側面視外接矩形S2は長方形であり、側面視外接矩形S2の長辺の長さは、側面視外接矩形S2の短辺の長さの3倍以上である。平面視外接矩形S1及び側面視外接矩形S2の長辺が延在する方向は、原料肉1の長手方向Xに相当し、平面視外接矩形S1の短辺が延在する方向は、原料肉1の短手方向Yに相当し、側面視外接矩形S2の短辺が延在する方向(原料肉1が載置される平面に垂直な方向)は、原料肉1の厚み方向Zに相当する。
図1及び
図2に示すように、原料肉1は、第1側縁部11及び第2側縁部12を有し、第1側縁部11及び第2側縁部12はそれぞれ、原料肉1の長手方向Xに延在する。第1側縁部11及び第2側縁部12は、原料肉1の中心線を挟んで原料肉1の両側に位置する。
【0027】
工程(b)
工程(b)は、準備された原料肉を捻る工程である。
【0028】
「捻る」には、細長形状を有する原料肉の両端部(長手方向の一方側に位置する一端部及び長手方向の他方側に位置する他端部)を互いに逆の方向に力を加えて回す実施形態、及び、細長形状を有する原料肉の一方の端部(長手方向の一方側に位置する一端部)を固定し、細長形状を有する原料肉の他方の端部(長手方向の他方側に位置する他端部)を一定の方向に力を加えて回す実施形態が含まれる。工程(b)は、ヒトの手で実施してもよいし、機械で実施してもよい。
【0029】
工程(c)
工程(c)は、捻られた原料肉をケーシングに充填する工程である。
【0030】
ケーシングは、開口部(原料肉の充填口)及び底部を有する筒状の容器である。ケーシングは、例えば、円筒状である。ケーシングのサイズは、原料肉を収容可能である限り特に限定されず、原料のサイズ、所望される食肉製品のサイズ等に応じて適宜調整することができる。例えば、ケーシングの長さは、原料の長さ、所望される食肉製品の長さ等に応じて適宜調整することができる。また、ケーシングの内径は、原料の体積、所望される食肉製品の体積等に応じて適宜調整することができる。ケーシングは、食肉製品の製造に使用される公知のケーシングの中から適宜選択することができる。ケーシングとしては、例えば、ファイブラスケーシング(ハム類等を充填する不織布タイプの植物繊維ケーシング)、プラスチックケーシング(魚肉ソーセージタイプ、皮なしソーセージ等に使用されるケーシング)等の非可食ケーシング、天然腸、膀胱(羊、豚、牛等)、コラーゲンケーシング(人工コラーゲン)等の可食ケーシング等が挙げられる。
【0031】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は捻られていればよく、工程(b)において捻られた際の原料肉の形状を保持している必要はない。原料肉は、ある程度の弾性を有しているので、工程(b)において原料肉を捻った後、捻るために加えられていた力が取り除かれると、原料肉に加えられていた捻りがある程度緩む場合がある。
【0032】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが1箇所以上で交差するように、捻られている。これにより、ケーシングに充填された原料肉において、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接合する肉接合部が形成される。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接着する肉接着部が形成される。したがって、ケーシングに充填された原料肉を加熱し、タンパク質変性により筋原繊維が収縮しても、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しにくくなる。このため、食肉製品のスライス時に、スライス断片の身割れを防止することができる。平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所の数は、好ましくは、原料肉の長さ20cm~60cmあたり1箇所以上、さらに好ましくは、原料肉の長さ30cm~60cmあたり1箇所以上、さらに一層好ましくは、原料肉の長さ40cm~60cmあたり1箇所以上である。
【0033】
「平面視において第1側縁部と第2側縁部とが1箇所以上で交差する」という条件は、捻られた原料肉をある方向から平面視した時に成立すればよい。「ある方向」は、例えば、
図1における平面視と同じ方向である。「ある方向」は、例えば、捻られた原料肉の長さが最も長く見える方向である。上記条件は、捻られた原料肉をある方向から平面視した時に成立することに加えて、捻られた原料肉を、当該方向とは反対の方向から平面視した時にも成立することが好ましい。
【0034】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが2箇所以上で交差するように、捻られていることが好ましく、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが3箇所以上で交差するように、捻られていることがさらに好ましい。これにより、ケーシングに充填された原料肉において、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接合する肉接合部が形成される。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接着する肉接着部が形成される。したがって、ケーシングに充填された原料肉を加熱し、タンパク質変性により筋原繊維が収縮しても、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しにくくなる。このため、食肉製品のスライス時に、スライス断片の身割れを防止することができる。平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所の数が2箇所以上である実施形態において、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所の数は、好ましくは、原料肉の長さ20cm~60cmあたり2箇所以上、さらに好ましくは、原料肉の長さ30cm~60cmあたり2箇所以上、さらに一層好ましくは、原料肉の長さ40cm~60cmあたり2箇所以上である。平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所の数が3箇所以上である実施形態において、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所の数は、好ましくは、原料肉の長さ20cm~60cmあたり3箇所以上、さらに好ましくは、原料肉の長さ30cm~60cmあたり3箇所以上、さらに一層好ましくは、原料肉の長さ40cm~60cmあたり3箇所以上である。
【0035】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ螺旋状となるように、捻られていることが好ましい。これにより、工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出する。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、螺旋状の肉接合部は、螺旋状の肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接着する螺旋状の肉接着部が形成される。したがって、ケーシングに充填された原料肉を加熱し、タンパク質変性により筋原繊維が収縮しても、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しにくくなる。このため、食肉製品のスライス時に、スライス断片の身割れを防止することができる。
【0036】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉の平面視において第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所が増加するほど、工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ螺旋状となりやすくなる。かかる点から、工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが2箇所以上で交差するように、捻られていることが好ましく、平面視において第1側縁部と第2側縁部とが3箇所以上で交差するように、捻られていることがさらに好ましい。
【0037】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、ケーシングへ充填された原料肉は、ケーシングへの充填を開始する際の原料肉の形状をほぼ保持している。但し、ケーシングへ充填された原料肉は、その自重により、ケーシングの底部に向けて圧縮された状態となっている。
【0038】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出していることが好ましい。第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出していることは、ケーシングに充填された原料肉において、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接合する肉接合部が形成されていること、及び、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接着する肉接着部が形成されることを示す。したがって、ケーシングに充填された原料肉を加熱し、タンパク質変性により筋原繊維が収縮しても、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しにくくなる。このため、食肉製品のスライス時に、スライス断片の身割れを防止することができる。原料肉は、通常、赤身及び脂身を有するので、肉接合部が螺旋状であるか否かは、原料肉の赤身及び脂身が描く形状に基づいて判別することができる。
【0039】
工程(c)において原料肉のケーシングへの充填を開始する際、第1側縁部及び第2側縁部がそれぞれ螺旋状となるように、原料肉が捻られていることにより、工程(c)において原料肉のケーシングへの充填が完了した時、第1側縁部と第2側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出している実施形態を実現することができる。
【0040】
肉接合部は、原料肉の第1側縁部の一部と、原料肉の第2側縁部の一部とを接合する部分である。肉接合部は、原料肉の第1側縁部の一部と、原料肉の第2側縁部の一部とを繋いでいればよく、両者を接着している必要はない。肉接合部により接合される第1側縁部の一部と第2側縁部の一部とは、工程(a)で準備された原料肉において離間して存在する。肉接合部は、原料肉の第1側縁部の一部と原料肉の第2側縁部の一部とが直接接合することにより形成されていてもよいし、原料肉の第1側縁部の一部と原料肉の第2側縁部の一部とが原料肉のその他の部分を介して接合することにより形成されていてもよいし、これらの接合態様が組み合わされることにより形成されていてもよい。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部が形成される。肉接合部に関する上記説明は、「肉接合部」を「肉接着部」に読み替えて、肉接着部にも適用される。
【0041】
図3は、工程(c)においてケーシングへの充填を開始する際の原料肉の第1実施形態を示す平面図である。第1実施形態では、
図3に示すように、原料肉1が、平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが1箇所(符号A1で示される箇所)で交差するように、捻られている。なお、第1側縁部11及び第2側縁部12のうち、平面視において交差する部分は、原料肉1を捻る際に手、機械の部材等により把持されない部分である。
【0042】
第1実施形態において、「平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが1箇所で交差する」という条件は、ある方向から原料肉1を平面視した時に成立すればよい。「ある方向」は、例えば、
図1における平面視と同じ方向である。「ある方向」は、例えば、捻られた原料肉1の長さが最も長く見える方向である。第1実施形態において、上記条件は、捻られた原料肉1をある方向から平面視した時に成立することに加えて、捻られた原料肉1を、当該方向とは反対の方向から平面視した時にも成立することが好ましい。
【0043】
図4は、工程(c)においてケーシングへの充填を開始する際の原料肉の第2実施形態を示す平面図である。第2実施形態では、
図4に示すように、原料肉1が、平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが2箇所(符号B1及びB2で示される箇所)で交差するように、捻られている。なお、第1側縁部11及び第2側縁部12のうち、平面視において交差する部分は、原料肉1を捻る際に手、機械の部材等により把持されない部分である。
【0044】
第2実施形態において、「平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが2箇所で交差する」という条件は、ある方向から原料肉1を平面視した時に成立すればよい。「ある方向」は、例えば、
図1における平面視と同じ方向である。「ある方向」は、例えば、捻られた原料肉1の長さが最も長く見える方向である。第2実施形態において、上記条件は、捻られた原料肉1をある方向から平面視した時に成立することに加えて、捻られた原料肉1を、当該方向とは反対の方向から平面視した時にも成立することが好ましい。
【0045】
第2実施形態では、
図4に示すように、原料肉1が、第1側縁部11及び第2側縁部12が螺旋状となるように、捻られている。
【0046】
図5は、工程(c)においてケーシングへの充填を開始する際の原料肉の第3実施形態を示す平面図である。第3実施形態では、
図5に示すように、原料肉1が、平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが3箇所(符号C1、C2及びC3で示される箇所)で交差するように、捻られている。なお、第1側縁部11及び第2側縁部12のうち、平面視において交差する部分は、原料肉1を捻る際に手、機械の部材等により把持されない部分である。
【0047】
第3実施形態において、「平面視において第1側縁部11と第2側縁部12とが3箇所で交差する」という条件は、ある方向から原料肉1を平面視した時に成立すればよい。「ある方向」は、例えば、
図1における平面視と同じ方向である。「ある方向」は、例えば、捻られた原料肉1の長さが最も長く見える方向である。第3実施形態において、上記条件は、捻られた原料肉1をある方向から平面視した時に成立することに加えて、捻られた原料肉1を、当該方向とは反対の方向から平面視した時にも成立することが好ましい。
【0048】
第3実施形態では、
図5に示すように、原料肉1が、第1側縁部11及び第2側縁部12が螺旋状となるように、捻られている。
【0049】
図6は、工程(c)においてケーシングに充填された原料肉の一実施形態を示す平面図である。この実施形態では、
図6に示すように、原料肉1の第1側縁部11及び第2側縁部12を接合する螺旋状の肉接合部13が、ケーシング2に充填された原料肉1の表面に露出している。この実施形態において、肉接合部13は、原料肉1の第1側縁部11の一部と原料肉1の第2側縁部12の一部とが原料肉1のその他の部分を介して接合することにより形成されている。肉接合部13の一部又は全体は、原料肉1の第1側縁部11の一部と原料肉1の第2側縁部12の一部とが直接接合することにより形成されていてもよい。原料肉は、通常、赤身及び脂身を有するので、肉接合部が螺旋状であるか否かは、原料肉の赤身及び脂身が描く形状に基づいて判別することができる。
【0050】
原料肉をケーシングに充填する際、又は、原料肉をケーシングに充填した後であってケーシングに充填された原料肉を加熱する前に、ケーシングに充填された原料肉をケーシングの底部に向けて押圧することが好ましい。これにより、ケーシングに充填された原料肉において、第1側縁部と第2側縁部とを十分に接合する肉接合部が形成される。ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、ケーシングに充填された原料肉を加熱すると、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部が形成される。したがって、ケーシングに充填された原料肉を加熱し、タンパク質変性により筋原繊維が収縮しても、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部は、食肉製品のスライス時に剥離しにくくなる。このため、食肉製品のスライス時に、スライス断片の身割れを防止することができる。
【0051】
原料肉のケーシングへの充填が完了した後、ケーシングの開口部(充填口)は結紮される。
【0052】
図7は、
図6に示す原料肉1がケーシング2の底部21に向けて押圧された状態の一実施形態を示す平面図である。この実施形態では、
図7に示すように、原料肉1の第1側縁部11及び第2側縁部12を接合する螺旋状の肉接合部13が、ケーシング2に充填された原料肉1の表面に露出している。原料肉1がケーシング2の底部21に向けて押圧されたことにより、原料肉1はケーシング2の底部に向けて圧縮されている。このため、平面視における肉接合部13の傾きは、押圧前よりも緩やかとなっている(すなわち、平面視における肉接合部13の傾きは、押圧前よりも水平方向(ケーシング2の長手方向に垂直な方向)に近づいている)。原料肉は、通常、赤身及び脂身を有するので、肉接合部が螺旋状であるか否かは、原料肉の赤身及び脂身が描く形状に基づいて判別することができる。
図7に示すように、ケーシング2の開口部(充填口)は、結紮部22により結紮されている。
【0053】
工程(d)
工程(d)は、ケーシングに充填された原料肉を加熱する工程である。
【0054】
工程(d)における加熱により、肉接合部は、肉接着部に変化する。すなわち、工程(d)において、第1側縁部と第2側縁部とを接着する肉接着部が形成される。
【0055】
加熱温度、加熱時間等の条件は、食肉製品の種類に応じて適宜決定することができる。例えば、食肉製品が特定加熱食肉製品である場合、55℃で97分、56℃で64分、57℃で43分、58℃で28分、59℃で19分、60℃で12分、61℃で9分、62℃で6分又は63℃で瞬時加熱する方法、あるいは、これと同等以上の効力を有する方法を使用することができる。また、食肉製品が加熱食肉製品である場合、63℃で30分間加熱する方法又はこれと同等以上の効力を有する方法を使用することができる。なお、ここでの温度は、いずれも、加熱工程に供される原料肉の中心部の温度である。
【0056】
本発明に係る食肉製品の製造方法は、工程(d)の後、ケーシングから内容物(食肉製品の原木)を取り出す工程をさらに含むことが好ましい。
【0057】
本発明に係る食肉製品の製造方法は、原料肉に対して実施されるその他の処理、例えば、テンダライズ(食肉の原型を保ったまま、針状の刃を用いて筋及び繊維を短く切断する処理)、ポーションカット(結着処理)(肉塊又は挽肉を金属製容器にきつく詰め、凍結して形を整えた後、一定の厚みに切る処理)、タンブリング(食肉に調味液を機械的に浸透させる処理)、インジェクション(食肉に調味液を機械的に注入する処理)、ミキシング(食肉に調味料を加え、ミキサーで揉みほぐす処理)、タレかけ(食肉を容器包装に入れた後、調味液を加える処理)、漬け込み(食肉に調味液を加え、漬け込む処理)等のうちの1種又は2種以上の処理を含むことができる。テンダライズ又はポーションカット(結着処理)、タンブリング、ミキシング、タレかけ又は漬け込みは、工程(a)の前、工程(a)の間、工程(a)の後であって工程(b)の前に実施することができる。
【0058】
本発明の食肉製品の製造方法により製造される食肉製品は、表面に露出した螺旋状の肉接着部(
図7における肉接合部13に対応する部分)を有する。食肉製品は、通常、赤身及び脂身を有するので、肉接着部が螺旋状であるか否かは、食肉製品の赤身及び脂身が描く形状に基づいて判別することができる。
【0059】
本発明に係る食肉製品の製造方法により製造される食肉製品を3mm厚でスライスした時、全スライス断片のうち身割れが発生したスライス断片の割合は20%以下であることが好ましく、15%以下であることがさらに好ましく、10%以下であることがさらに一層好ましく、9%以下であることがさらに一層好ましく、8%以下であることがさらに一層好ましく、7%以下であることがさらに一層好ましく、6%以下であることがさらに一層好ましい。
【実施例】
【0060】
〔実施例1〕
長さ45cm、幅15cm、厚み5cmのバラ肉を原料肉として準備した。なお、長さは原料肉の最大長さ、幅は原料肉の最大幅、厚みは原料肉の最大厚みである。
【0061】
準備された原料肉を捻った。原料肉を捻った状態を
図8に示す。
図8に示すように、原料肉は、平面視において原料肉の一方の側縁部と他方の側縁部とが2箇所で交差するように、捻られていた。
【0062】
カラス口を使用して原料肉の捻られた状態を維持しながら、捻られた原料肉をケーシングに充填した。ケーシングとしては、長さ65cm、内径7.7cmの円筒状のファイブラスケーシングを使用した。
【0063】
ケーシングへの充填を開始する時の原料肉の状態を
図9に示す。
図9に示すように、原料肉のケーシングへの充填を開始する際、原料肉は、平面視において原料肉の一方の側縁部と他方の側縁部とが2箇所で交差するように、捻られていた。
【0064】
ケーシングへの充填が完了した時の原料肉の状態を
図10に示す。
図10に示すように、ケーシングへの充填が完了した時、原料肉は、
図9に示す捻りをほぼ保持していた。
図10に示すように、ケーシングへの充填が完了した時、原料肉の一方の側縁部と他方の側縁部とを接合する螺旋状の肉接合部が、ケーシングに充填された原料肉の表面に露出していた。
【0065】
ケーシングに充填された原料肉をケーシングの底部に向けて押圧した後、ケーシングを結紮し、原料肉の充填原木を調製した。原料肉の充填原木を
図11に示す。
図11に示すように、原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接合する螺旋状の肉接合部が、原料肉の充填原木の表面に露出していた。原料肉がケーシングの底部に向けて押圧されたことにより、原料肉はケーシングの底部に向けて圧縮されていた。このため、肉接合部の傾きは、押圧前よりも緩やかとなっていた(すなわち、肉接合部の傾きは、押圧前よりも水平方向(ケーシングの長手方向に垂直な方向)に近づいていた)。
【0066】
原料肉の充填原木を85℃で2時間加熱した。加熱は、スチームハウスにより行った。加熱により、肉接合部は、肉接着部に変化し、原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する螺旋状の肉接着部が形成された。
【0067】
加熱後、ケーシングから内容物を取り出し、食肉製品(ハム)の原木を得た。得られた食肉製品の原木を
図12に示す。
図12に示すように、食肉製品の原木の表面に空隙(孔)は観察されなかった。
【0068】
食肉製品の原木(2本)を3mm厚でスライスし、全スライス断片のうち身割れが発生したスライス断片の割合を算出した。
【0069】
原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する肉接着部が剥離しておらず、身割れが生じていないスライス断片の例を
図13及び
図14に示す。
図13及び
図14に示すように、食肉製品の原木には、中実である部分(
図13)と、中空である部分(
図14)とが存在する。
【0070】
原料肉の一方の側縁部及び他方の側縁部を接着する肉接着部が剥離しており、身割れが生じているスライス断片の例を
図15に示す。
【0071】
全スライス断片の数は176枚、これらのうち身割れが発生したスライス断片の数10枚(その他は身割れが生じてない良品)であり、全スライス断片のうち身割れが発生したスライス断片の割合は5.68%であった。
【0072】
〔比較例1〕
長さ45cm、幅15cm、厚み5cmのバラ肉を原料肉として準備した。なお、長さは原料肉の最大長さ、幅は原料肉の最大幅、厚みは原料肉の最大厚みである。
【0073】
準備された原料肉をU字状に折り畳んだ。U字状に折り畳んだ原料肉の状態を
図16に示す。
【0074】
カラス口を使用して原料肉のU字状を維持しながら、原料肉をケーシングに充填した。ケーシングとしては、長さ65cm、内径7.7cmの円筒状のファイブラスケーシングを使用した。
【0075】
ケーシングへの充填を開始する時の原料肉の状態を
図17に示す。
【0076】
ケーシングへの充填が完了した時の原料肉の状態を
図18に示す。
【0077】
ケーシングに充填された原料肉をケーシングの底部に向けて押圧した後、ケーシングを結紮し、原料肉の充填原木を調製した。原料肉の充填原木を
図19に示す。
【0078】
原料肉の充填原木を85℃で2時間加熱した。加熱は、スチームハウスにより行った。
【0079】
加熱後、ケーシングから内容物を取り出し、食肉製品(ハム)の原木を得た。得られた食肉製品の原木を
図20に示す。
図20に示すように、食肉製品の原木の表面に空隙(孔)が観察された。
【0080】
食肉製品の原木(2本)を3mm厚でスライスし、全スライス断片のうち身割れが発生したスライス断片の割合を算出した。
【0081】
全スライス断片の数は178枚、これらのうち身割れが発生したスライス断片の数43枚(その他は身割れが生じてない良品)であり、全スライス断片のうち身割れが発生したスライス断片の割合は24.16%であった。
【符号の説明】
【0082】
1・・・原料肉
11・・・原料肉の第1側縁部
12・・・原料肉の第2側縁部
13・・・原料肉の第1側縁部と第2側縁部とを接合する肉接合部
2・・・ケーシング
21・・・ケーシングの底部
22・・・ケーシングの結紮部
A1・・・平面視において原料肉の第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所
B1,B2・・・平面視において原料肉の第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所
C1,C2,C3・・・平面視において原料肉の第1側縁部と第2側縁部とが交差する箇所