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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】示温固体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20220927BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20220927BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
A61K47/44
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018179390
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020048715
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 悠人
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-506415(JP,A)
【文献】特開2005-291825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
A61K 47/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分を含有する固体製剤と、
前記固体製剤の表面に形成され、可食性を有する材料によって形成される温度検知画像層と、
を備え、
前記温度検知画像層を形成する示温インクは、少なくとも示温色材を含有し、
前記示温色材の融点が50℃以上であり、
前記示温インクは、溶媒をさらに含み、
前記溶媒に対して前記示温色材が分散状態で存在し、
前記示温色材は、パーム極度硬化油、豚脂極度硬化油、コメ極度硬化油、ハイエルシン菜種極度硬化油、牛脂極度硬化油、大豆極度硬化油、菜種極度硬化油、ライスワックス、粉末ライスワックス、およびカルナバワックスのうちの一種以上を含み、
前記示温インクに対する前記示温色材の含有量が、35質量%以上70質量%以下であり、
前記温度検知画像層は、前記有効成分が失活する温度以上で変色すること
を特徴とする示温固体製剤。
【請求項2】
請求項1に記載の示温固体製剤であって、
前記固体製剤の表面と前記温度検知画像層の間に、可食性を有する材料によって形成される温度情報画像層をさらに備えることを特徴とする示温固体製剤。
【請求項3】
請求項2に記載の示温固体製剤であって、
前記温度情報画像層を形成するインクが、潜像用インクであることを特徴とする示温固体製剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の示温固体製剤であって、
前記示温色材は、パーム極度硬化油および/またはカルナバワックスであることを特徴とする示温固体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある一定の温度以上の高温条件下に曝された固体製剤かを判別可能な示温固体製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬には使用期限が設定されており、当該使用期限は、薬としての効果を十分に発揮することが保証される期間を指している。というのも、薬は時間の経過とともに、有効成分(有効成分)が分解されることにより失活したり、変質したりするからである。そのため、使用期限を超過した薬の服用は、十分な効果を期待できなかったり、却って体にとって有害な影響を与える可能性さえもある。現状では、薬の包装や薬そのもの(特許文献1)に対して使用期限を印刷等することで、使用期限の管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001―64160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の薬の使用期限とは、指定された保管条件を守っている場合に有効な期間である。薬の保管条件によっては、使用期限内であっても、有効成分の失活や変質が発生する場合がある。例えば、多くの薬は光(紫外線)によって分解されやすくなる。また、高温下で保管された場合、分解速度は速くなる。すなわち、光(紫外線)や温度に起因して有効成分の失活が早まる。また、湿度によって変色を起こしたりやカビが発生する。そのため、薬局等では、各薬の最適な保管条件に合わせた保管が徹底されている。
【0005】
しかし、服用者の手に渡った後においては、保管条件を管理することは難しく、特に、温度による影響を制御することが難しいとされている。医薬品の規格基準書である「日本薬局方」では、薬の保存方法における室温とは1℃~30℃と定められている。ところが、車内等に薬を放置した場合、夏場であると50℃~80℃もの高温になることがあり、前述の「日本薬局方」における室温の範囲を大きく上回っている。一般的に、温度が10℃上がる毎に反応速度は2~3倍になるといわれており、夏場の車内に放置された薬の失活や変質がどれだけ進んでいるかは容易に想像し得る。
【0006】
服用者の中には、手持ちの薬の使用期限等を確かめるために、薬局に薬を持ち込む場合がある。その場合、薬局側は、上述のような保管温度についての履歴は知ることができないため、薬の包装や薬そのものへの印刷情報から知り得る使用期限を教える他なく、十分な効果を期待できない薬や、服用者にとって有害となる可能性のある薬を回収することなく、再提供してしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、医薬品や食品等の固体製剤が、ある一定の温度以上の高温条件下に曝された固体製剤かを判別可能な示温固体製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本願の第1発明は、有効成分を含有する固体製剤と、前記固体製剤の表面に形成される温度検知画像層と、を備え、前記温度検知画像層は、前記有効成分が失活する温度以上で変色することを特徴とする示温固体製剤である。
【0009】
本願の第2発明は、第1発明の示温固体製剤であって、前記固体製剤の表面と前記温度検知画像層の間に温度情報画像層をさらに備える。
【0010】
本願の第3発明は、第2発明の示温固体製剤であって、前記温度情報画像層を形成するインクが、潜像用インクである。
【0011】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれか1発明の示温固体製剤であって、前記温度検知画像層を形成する示温インクは、少なくとも示温色材を含有し、前記示温色材の融点が50℃以上である。
【0012】
本願の第5発明は、第4発明の示温固体製剤であって、前記示温インクは、溶媒をさらに含み、前記溶媒に対して前記示温色材が分散状態で存在する。
【0013】
本願の第6発明は、第4発明または第5発明の示温固体製剤であって、前記示温色材は、パーム極度硬化油および/またはカルナバワックスである。
【0014】
本願の第7発明は、第4発明から第6発明までのいずれか1発明の示温固体製剤であって、前記示温インクに対する前記示温色材の含有量が、30質量%以上である。
【発明の効果】
【0015】
本願の第1発明~第7発明によれば、固体製剤の表面に形成された温度検知画像層が、ある一定の温度以上になると変色する。これにより、固体製剤がある一定の温度以上で保管された履歴があるかを判別することができる。その結果、十分な効果を期待できない薬や、服用者にとって有害となる可能性のある薬を判別し、破棄や回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る示温固体製剤が室温条件下で保管されている状態概略的に示す平面図である。
図2】第1実施形態に係る示温固体製剤が高温条件下に曝された後の状態を概略的に示す平面図である。
図3】第2実施形態に係る示温固体製剤が室温条件下で保管されている状態概略的に示す平面図である。
図4】第2実施形態に係る示温固体製剤が高温条件下に曝された後の状態を概略的に示す平面図である。
図5】示温色材でコーティングされた錠剤の室温条件下での錠剤表面と、各示温色材の融点以上の温度に加熱し、25℃まで冷却した後の錠剤表面の様子を示した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る示温固体製剤について、添付される図面を参照しながら以下に説明する。
【0018】
尚、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化がなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。
【0019】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能についても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0020】
1.第1実施形態
図1および図2は、示温固体製剤1の構成の一例を概略的に示す平面図である。示温固体製剤1は、固体製剤本体11と、固体製剤本体11の表面に形成された温度検知画像層12と、固体製剤本体11の表面と温度検知画像層12との間に形成され、温度検知画像層12に完全に覆われている温度情報画像層13と、固体製剤本体11の表面の温度検知画像層12が形成されていない領域に形成された製剤情報画像層14を備えている。図1は、室温条件下で保管されている状態の示温固体製剤1を例示したものであり、変色前の温度検知画像層12を一点鎖線で示している。尚、図1の状態において温度情報画像層13は、温度検知画像層12で隠れており、目視で確認することはできないが、説明をわかりやすくするために、点線で仮想的に示してある。図2は、高温条件下に曝された後の示温固体製剤1を例示したものであり、温度検知画像層12が変色(ここでは透明色)し、目視可能となった温度情報画像層13を黒塗りで示している。尚、図2では変色後の温度検知画像層12を二点鎖線で仮想的に示してある。
【0021】
固体製剤本体11は、例えば、素錠、FC(Film Coating)錠、OD(Oral Disintegration)錠または糖衣錠等の錠剤である。固体製剤本体11は、医薬品用途の錠剤に限られるものではなく、食品用途の錠剤であってもよい。食品用途の錠剤の例としては、サプリメント等の健康食品が挙げられる。
【0022】
固体製剤本体11は、示温固体製剤1の本来的な効能を発揮するための成分(以下、有効成分とする。)を含んでいる。固体製剤本体11は、当該有効成分を含んだ製剤材料が一定の形状に圧縮および/または成形されることにより製造される。固体製剤本体11は、例えば、円盤状の形状を有している。ただし、固体製剤本体11は必ずしも円盤形状である必要はなく、任意の形状を有していてもよい。
【0023】
温度検知画像層12、温度情報画像層13、および製剤情報画像層14は、示温固体製剤1が人に経口投与される点から、可食性を有する材料によって形成されることが好ましい。ここでいう「可食性」とは、人による摂取が認められていることを意味し、より具体的には、薬事法等の法律によって医薬品もしくは医薬品添加物として認められているもの、および/または、食品衛生法等の法律によって食品もしくは食品添加物として認められているものを意味する。
【0024】
温度検知画像層12、温度情報画像層13、および製剤情報画像層14は、固体製剤本体11の表面に対して印刷が行われることで形成される。印刷方法としては特に限定されず、一般的な印刷方法であるインクジェット印刷、スタンプ印刷、およびグラビア印刷等が適用される。
【0025】
温度検知画像層12の形成に用いられるインクは示温インクである。ここでいう「示温」とは、ある一定の温度以上で不可逆的に変色することを意味する。示温インクは、少なくとも示温色材および溶媒を含んでいる。
【0026】
示温色材としては、示温インクの溶媒中に分散状態で存在し、融点が50℃~100℃、かつ、可食性を有するものであれば特に限定はされない。そのような示温色材としては、例えば、パーム極度硬化油(融点58.6℃)、豚脂極度硬化油(融点58.8℃)、コメ極度硬化油(融点60℃~64℃)、ハイエルシン菜種極度硬化油(融点60.7℃)、牛脂極度硬化油(融点61.2℃)、大豆極度硬化油(融点68.2℃)、菜種極度硬化油(融点68.4℃)、ライスワックス(融点75.6℃)、粉末ライスワックス(融点78℃~80℃)、カルナバワックス(融点82.8℃)等が挙げられる。示温色材は、有効成分の失活温度に合わせて適宜選択することができる。本実施の形態の示温色材は、市販品を用いることが可能であり、例えば、上記で挙げた示温色材の例については、山桂産業株式会社製のものを用いることができる。
【0027】
示温色材は、溶媒に分散させて存在させることで、示温色材に対する光の乱反射によって、温度検知画像層12の下に形成されている温度情報画像層13の隠蔽性を確保する。そして、示温色材が融点以上の温度になると、温度検知画像層12に含まれる示温色材が融解することで光を透過するようになり、温度検知画像層12の見え方が変化する。具体的には、温度検知画像層12が透明になり、温度情報画像層13が視認可能となる。
【0028】
示温色材の含有量は、示温インクの全質量に対し、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、35質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上60質量%以下であることが特に好ましい。示温色材の含有量を30質量%以上とすることにより、温度情報画像層13の隠蔽性の確保を図ることができる。また、示温色材の含有量を70質量%以下とすることにより、溶媒に対して分散させることができる。
【0029】
溶媒としては、薬事法等の基準に該当するものであれば特に限定されず、水や、水と水溶性有機溶媒の混合溶液が挙げられる。水としては、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等のイオン性不純物を除去したものを用いるのが好ましい。特に、紫外線照射又は過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間にわたってカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。また、水と水溶性有機溶媒の混合溶液の場合、水溶性有機溶剤としては薬事法等の基準に該当し、示温色材が溶解しないものであれば特に限定されない。具体例としては、エチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。
【0030】
溶媒の含有量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。また、溶媒として、水と水溶性有機溶媒の混合溶液を用いる場合、当該水溶性有機溶媒の配合量は特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
【0031】
示温インク中には、色材を良好に分散させるための分散剤が含有されていることが好ましい。分散剤は、分散媒としての溶媒中での色材の分散性を向上させる。分散剤としては、色材の分散性を向上させることができ、かつ、可食性を有するものであれば特に限定はされない。そのような分散剤としては、例えば、界面活性剤が挙げられる。界面活性剤としては、例えば、デカグリセリンモノエステル、ヘキサグリセリンモノエステル、テトラグリセリンモノエステル等のグリセリンモノエステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等のポリオキシエチレンアクリルエーテル等が挙げられる。また、分散剤としては、界面活性剤の他に、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、多糖類、ゼラチン、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー、酢酸ビニル等を用いてもよい。
【0032】
分散剤の含有量は、示温インクの全質量に対し、3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。分散剤の含有量を3質量%以上にすることにより、示温色材の分散性の維持が図れる。その一方、分散剤の含有量を30質量%以下にすることにより、分散剤が過剰に存在することによる示温色材の分散安定性の低下を抑制することができる。
【0033】
尚、温度検知画像層12は、必ずしも前述の示温インクによる印刷で形成される必要はなく、示温色材を直径20μm程度に粉砕した粉で温度情報画像層を被覆することで形成されても良い。
【0034】
温度情報画像層13は、示温固体製剤1が、ある一定の温度以上の環境に曝されたかを判別可能な情報が印刷される。図1では、例として、「HEAT」の文字列が印刷されている。尚、温度情報画像層13は、文字列である必要はなく、図形や線等でもよい。
【0035】
製剤情報画像層14は、固体製剤本体11の持つ固有の情報が印刷される。図1では、例として、製品名である「TABLET A」の文字列と、有効成分の含有量を示す「200mg」の文字列とが印刷されている。
【0036】
温度情報像層13と製剤情報画像層14の形成には同じインクが用いられる。インクは、少なくとも色材および溶媒を含んでいる。色材は、インクの溶媒中に溶け込む染料であってもよく、あるいは、インクの溶媒中に分散される顔料であってもよい。染料が採用される場合、温度情報画像層13と製剤情報画像層14は、固体製剤本体11の表面からインクが染み込んだ部分に相当する。顔料が採用される場合、温度情報画像層13と製剤情報画像層14は、固体製剤本体11の表面上でインクが乾燥した乾燥被膜に相当する。インクには、色材および溶媒の他、適宜に、分散剤、表面張力調整剤、湿潤剤、水溶性樹脂、界面活性剤、pH(水素イオン指数)調整剤、キレート化剤、防腐剤、粘度調整剤および消泡剤の少なくともいずれか一つが含まれていてもよい。
【0037】
尚、温度情報画像層13と製剤情報画像層14の形成に用いられるインクは同じものである必要はなく、異なるインクを用いてもよい。
【0038】
2.第2実施形態
続いて、本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下では、上記の第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同等の点については、重複説明を省略する。
【0039】
図3および図4は、示温固体製剤の構成の第2実施形態を概略的に示す平面図である。示温固体製剤1Aは、固体製剤本体11と、固体製剤本体11の表面に形成された温度検知画像層22と、固体製剤本体11の表面の温度検知画像層22が形成されていない領域に形成された製剤情報画像層14とを備えている。本実施形態では、温度検知画像層22そのものが温度情報画像を表しており、温度情報画像層13を有さない点が第1実施形態と相違する。尚、温度検知画像層22は、第1実施形態での温度検知画像層12と同等であるので、説明を省略する。
【0040】
図3は、室温条件下で保管されている状態の示温固体製剤1Aを例示したものであり、変色前の温度検知画像層22を破線で示している。図4は、高温条件下に曝された後の示温固体製剤1Aを例示したものであり、温度検知画像層22が変色した状態を黒塗りで示している。
【0041】
第2実施形態においても、温度検知画像層22が変色することで、示温固体製剤1が高温条件下に曝されたことを判別可能である。
【0042】
以上、本発明の主たる実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外にも種々の変更を行うことが可能である。
【0043】
例えば、温度情報画像層13を形成するインクとして、潜像用インクを用いることができる。ここでいう「潜像」とは、可視光(例えば波長域400nm~760nm)が照射された環境下において肉眼での識別(つまり視認)が困難であり、かつ、特定の条件下において顕像化する画像を意味する。温度情報画像層13を潜像とすることで、服用者には温度情報画像層13を視認させることなく、薬局等での検査でのみ、温度情報画像層13を確認することができる。
【0044】
3.実験例
染料インクで文字列が印刷された錠剤の表面を、示温色材としてのパーム極度硬化油(融点58.6℃、山桂産業株式会社製)の粉末でコーティングしたものと、示温色材としてのカルナバワックス(融点82.8℃、東亜化成株式会社製)の粉末でコーティングしたものを用意し、各示温色材の融点以上の温度に加熱した。図5は、室温条件下での錠剤表面と、各示温色材の融点以上の温度に加熱し、25℃まで冷却した後の錠剤表面の様子を示した画像である。
【0045】
図5の結果より、室温条件下では、錠剤の表面に印刷された文字列を視認することができないが、各錠剤を各示温色材の融点以上の温度に加熱した後では、各示温色材でコーティングされた領域が変色(透明色になり)し、錠剤の表面に印刷された文字列を視認することができるようになっていることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5