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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】水栓用ハンドル及び水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220927BHJP
   F16K 31/60 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
E03C1/042 C
F16K31/60 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018197462
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063636
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000242378
【氏名又は名称】株式会社KVK
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰仁
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-214481(JP,A)
【文献】特開2001-214482(JP,A)
【文献】特開2017-048644(JP,A)
【文献】特開2013-007247(JP,A)
【文献】特開2001-227012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/042
F16K 31/60
A47K 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾動させることにより吐出状態を変更する操作軸に取り付けて用いられる水栓用ハンドルにおいて、
上面側に凹部を有するハンドル本体と、
前記凹部内に設けられる挿通孔を通じて、前記ハンドル本体を前記ハンドル本体の下面側の前記操作軸に固定する固定部材とを備え、
前記ハンドル本体は、前記凹部と前記ハンドル本体の下面側とを連通する水抜き孔を有するとともに、前記ハンドル本体の下面側には、前記水抜き孔を通過した液体を前記操作軸から離れる方向に誘導する誘導部が設けられていることを特徴とする水栓用ハンドル。
【請求項2】
前記誘導部は、横長に構成され、長手方向に直交する断面がU字状の溝形状を有する請求項1に記載の水栓用ハンドル。
【請求項3】
前記誘導部は、前記ハンドル本体とは別体の誘導部材で構成されている請求項1又は2に記載の水栓用ハンドル。
【請求項4】
前記ハンドル本体の下面側に着脱可能に取り付けられて前記操作軸を保持する保持部を有し、前記誘導部材は、前記ハンドル本体の下面と前記保持部との間に挟持されている請求項3に記載の水栓用ハンドル。
【請求項5】
傾動させることにより吐出状態を変更する操作軸を有する水栓本体と、請求項1~4のいずれか一項に記載された水栓用ハンドルとを備えた水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水栓用ハンドル及び水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水栓用ハンドルについて記載されている。
図13に示すように、水栓用ハンドル90は、ネジ(図示省略)とキャップ91を取り付ける凹入した装着部92が設けられたハンドル本体93を備えている。装着部92には、ネジ孔92aと係止孔92bとが設けられており、ネジ孔92aにネジを挿通させた状態で、ハンドル本体93は、ハンドル本体93の下面側の操作軸(図示省略)に固定される。また、キャップ91の係止片91aが装着部92の係止孔92bに係止することによって、キャップ91は装着部92に取り付けられる。ネジ孔92aと係止孔92bの周囲は隔壁94で囲まれており、この隔壁94によって、ネジ孔92aと係止孔92bに液体が浸入することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-48644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水栓用ハンドル90では、キャップ91と隔壁94の隙間から係止孔92bに液体が浸入した場合、液体は、係止孔92bを通過して下方の弁装置(セラミックカートリッジ)に浸入する虞があった。弁装置に液体が浸入することにより、操作軸の操作が重くなる虞があった。本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水栓本体に取り付けて用いた際に、セラミックカートリッジに液体が浸入することを抑制することができる水栓用ハンドルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための水栓用ハンドルは、傾動させることにより吐出状態を変更する操作軸に取り付けて用いられる水栓用ハンドルにおいて、上面側に凹部を有するハンドル本体と、前記凹部内に設けられる挿通孔を通じて、前記ハンドル本体を前記ハンドル本体の下面側の前記操作軸に固定する固定部材とを備え、前記ハンドル本体は、前記凹部と前記ハンドル本体の下面側とを連通する水抜き孔を有するとともに、前記ハンドル本体の下面側には、前記水抜き孔を通過した液体を前記操作軸から離れる方向に誘導する誘導部が設けられていることを要旨とする。
【0006】
この構成によれば、水抜き孔を通過した液体を操作軸から離れる方向に誘導する誘導部が設けられていることにより、ハンドル本体の下方に位置するセラミックカートリッジに液体が浸入することを抑制することができる。そのため、セラミックカートリッジに液体が浸入することによって操作軸の操作が重くなることを抑制することができる。
【0007】
上記水栓用ハンドルについて、前記誘導部は、横長に構成され、長手方向に直交する断面がU字状の溝形状を有することが好ましい。この構成によれば、誘導部によって、水抜き孔を通過した液体をより確実に操作軸から離れる方向に誘導することができる。
【0008】
上記水栓用ハンドルについて、前記誘導部は、前記ハンドル本体とは別体の誘導部材で構成されていることが好ましい。この構成によれば、ハンドル本体に対して誘導部材を後付けすることが可能になるため、誘導部を効率良く設けることができる。
【0009】
上記水栓用ハンドルについて、前記ハンドル本体の下面側に着脱可能に取り付けられて前記操作軸を保持する保持部を有し、前記誘導部材は、前記ハンドル本体の下面と前記保持部との間に挟持されていることが好ましい。この構成によれば、誘導部材をハンドル本体に容易に取り付けることができる。
【0010】
傾動させることにより吐出状態を変更する操作軸を有する水栓本体と、上記水栓用ハンドルとを備えた水栓であることが好ましい。この構成によれば、上記水栓用ハンドルの効果を奏する水栓とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水栓用ハンドルによれば、セラミックカートリッジに液体が浸入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水栓の斜視図。
図2】水栓の側面側部分断面図。
図3図2の3-3線部分断面図。
図4】ハンドル本体の平面図。
図5】ハンドル本体の底面図。
図6】蓋部材の斜視図。
図7】保持部の(a)は斜視図、(b)は(c)のb-b線断面図、(c)は底面図。
図8】誘導部材の(a)は斜視図、(b)は側面図。
図9】水が通過した状態における水栓の側面側部分断面図。
図10】水が通過した状態における水栓の正面側部分断面図。
図11】変更例の誘導部材の斜視図。
図12】別の変更例の誘導部材の斜視図。
図13】従来技術の水栓用ハンドルの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
水栓用ハンドルの実施形態を説明する。
図1、2に示すように、水栓10は、洗面化粧台のデッキ面を構成する壁部11に設置されている。水栓10は、水栓本体20と水栓本体20の上部に取り付けられた水栓用ハンドル30とを備えており、水栓用ハンドル30を操作することによって、水栓本体20の操作軸21を傾動させることができるように構成されている。水栓本体20の操作軸21を傾動させることにより、吐水管(図示省略)から吐出される水の吐出状態を変更することができるように構成されている。
【0014】
水栓本体について説明する。
図2に示すように、水栓本体20は、円筒状のカバー22と、カバー22内に配置されたセラミックカートリッジ23とを備える。カバー22は、上端側の端部に、カバー22の軸方向中央側よりも外径が小さい縮径部22aを有するとともに、上端側の端部に開口22bを有している。縮径部22aを有することによって、水栓用ハンドル30を操作した際に、後述する水栓用ハンドル30の筒体部31が、水栓本体20のカバー22に干渉することが抑制されている。セラミックカートリッジ23は、弁部材(図示省略)と、弁部材に連結された操作軸21とを備える。操作軸21は、先端側が角柱状に構成されており、先端側の端面に後述する固定部材としてのネジ40と螺合するネジ孔21aが設けられている。セラミックカートリッジ23がカバー22内に配置された状態において、操作軸21の先端側は、カバー22の上端側の開口22bから突出している。
【0015】
水栓用ハンドル30について説明する。
図2、3に示すように、水栓用ハンドル30は、円筒状の筒体部31と、天板部60と、レバー部32とを有するハンドル本体50を備えている。筒体部31、天板部60及びレバー部32は、一体に構成されており、レバー部32は、天板部60から斜め上方に突出した状態で設けられている。また、水栓用ハンドル30は、天板部60の上面60a側に取り付けられる蓋部材33と、天板部60の下面60b側に取り付けられる保持部としての保持部材70と、ハンドル本体50を水栓本体20に固定する固定部材としてのネジ40とを備えている。
【0016】
ここで、「上面60a側」及び「下面60b側」は、鉛直方向に沿った天板部60の上面側及び下面側に限定されない。すなわち、天板部60が傾斜しており、天板部60の上面60a側及び下面60b側が、鉛直方向に対して傾斜している態様を含むものとする。
【0017】
水栓用ハンドル30を構成するハンドル本体50、蓋部材33、ネジ40及び保持部材70の材質は特に限定されず、金属や樹脂を採用することができる。樹脂を採用する場合、表面にメッキを施すことによって、意匠性を向上させることができる。
【0018】
ハンドル本体50の天板部60について説明する。
図4、5に示すように、天板部60は、円板状に構成されている。天板部60の上面60a側には、天板部60の下面60b側に向かって窪んだ凹部61が形成されている。この凹部61は、略長方形状の開口部61aを有し、凹部61の深さ方向に沿って略同一形状に構成されている。凹部61の深さは、天板部60の厚さよりも大きく構成されている。そのため、天板部60の下面60b側には、上面60a側に形成された凹部61に由来する凸部62が形成されている。凹部61の底を構成する底壁61bの上面61cは平面で構成されており、中央部に円形状の挿通孔63が設けられている。この挿通孔63にネジ40が挿通されて、操作軸21のネジ孔21aに螺合することによって、水栓用ハンドル30は、水栓本体20に固定される。
【0019】
図4、5に示すように、凹部61の底壁61bには、断面矩形状の貫通孔64が設けられている。この貫通孔64は、開口部61aの長手方向における凹部61の一端側に設けられており、開口部61aの短手方向に沿って2個並設されている。この貫通孔64は、天板部60の下面60b側に連通しており、凹部61内に浸入した水等の液体を抜く水抜き孔として機能する。水抜き孔で抜く液体は、水に限定されず、液状の石鹸や洗剤等であってもよい。
【0020】
図2に示すように、貫通孔64は、ハンドル本体50の筒体部31の軸方向に沿って延びており、凹部61の底壁61bの上面61cから下面61dに至る経路中に、筒体部31の径方向外側に屈曲する屈曲部64aを有する。この屈曲部64aに、後述する蓋部材33の係合片33bが係合することによって、蓋部材33は凹部61を覆う位置に取り付けられる。そのため、貫通孔64の屈曲部64aは、蓋部材33の係合部が係合する被係合部としても機能する。
【0021】
図2、5に示すように、凹部61の底壁61bの下面61dには、筒体部31の軸方向に延びるとともに、挿通孔63を挟んで対向する対向壁65が設けられている。対向壁65は、開口部61aの長手方向に沿って並設されるとともに、互いの壁面が略平行となるように配置されている。
【0022】
凹部61の底壁61bの下面61dには、挿通孔63の周囲に窪み66が4個設けられている。この窪み66は、底壁61bの上面61c側に向かって窪むように構成されており、後述する保持部材70の突起71cが挿入する被挿入部として機能する。
【0023】
図3、5に示すように、ハンドル本体50の筒体部31の内周には、挿通孔63を挟んで対向する位置に筒体部31の径方向内側に突出した突出壁31aが2個設けられている。この突出壁31aは、後述する保持部材70の腕部73が係止する被係止部として機能する。
【0024】
蓋部材33について説明する。
図6に示すように、蓋部材33は、略長方形状の板材で構成される被覆部33aと、被覆部33aの長手方向一端側の端部から被覆部の厚さ方向に突出する板状の係合片33bを有する。係合片33bは、被覆部33aの短手方向に沿って2個並列している。各係合片33bの先端には、係合片33bの厚さ方向である被覆部33aの長手方向一端側に突出した爪部33cが設けられている。この爪部33cが、天板部60の凹部61の貫通孔64に設けられた屈曲部64aに係合することにより、蓋部材33は、天板部60の凹部61を覆う位置に取り付けられる。そのため、係合片33bと爪部33cとによって係合部が構成されている。蓋部材33が取り付けられた状態において、蓋部材33の被覆部33aが、天板部60の凹部61を被覆した状態となる。この状態で、蓋部材33の全体が天板部60の凹部61に収容された状態となり、被覆部33aの上面が、天板部60の上面60aと略面一となるように構成されている。
【0025】
図6に示すように、蓋部材33の被覆部33aにおける長手方向一端側の端部には、被覆部33aの長手方向他端側に向かって凹んだ切欠き部33dが形成されている。この切欠き部33dは、ハンドル本体50の天板部60から蓋部材33を取り外す際に、取り外し用の工具を挿入する挿入口として機能する。
【0026】
保持部材70について説明する。
図7(a)に示すように、保持部材70は、柱状の本体部71を有している。本体部71の上面71a中央部には、円形状の外形を有する周壁71bが突出した状態で設けられている。周壁71bの内部には、本体部71を軸方向である上下方向に貫通する孔部72が設けられている。周壁71bの外径は、天板部60の挿通孔63の内径よりも若干小さく構成されている。また、周壁71bの高さは、天板部60の凹部61における底壁61bの厚さと略等しく構成されている。本体部71の上面71aの四隅には、上方に突出した突起71cが形成されている。
【0027】
本体部71の上面71aにおける孔部72を挟んだ両側には、本体部71の斜め上方に延びる腕部73が設けられている。各腕部73は、互いに離間する方向に延びている。各腕部73の先端側は、本体部71の上面71a側に近づく方向に湾曲する湾曲部73aを備えている。
【0028】
図7(b)、(c)に示すように、本体部71の下面71d中央部には、矩形状の開口孔74が設けられている。この開口孔74は、本体部71の上面71a側に向かって延びている。この開口孔74は、本体部71の軸方向中央側において、上面71a側から延びる孔部72に連通している。この開口孔74に、操作軸21の角柱状部分が挿入されることによって、操作軸21は保持部材70に保持される。
【0029】
保持部材70の取り付け方法について説明する。
図2、5、7に示すように、保持部材70の本体部71における上面71aの周壁71bを、天板部60の挿通孔63に挿入する。この際、本体部71の上面71aの四隅の突起71cを、底壁61bの4個の窪み66に挿入して本体部71を位置決めする。この状態で、保持部材70の本体部71は、底壁61bに設けられた2枚の対向壁65の間に配置された状態となる。さらに、保持部材70の各腕部73の湾曲部73aが、ハンドル本体50の筒体部31内周に設けられた突出壁31aに係止することによって、抜け落ちが抑制された状態で保持部材70は取り付けられる。
【0030】
誘導部材80について説明する。
図8(a)、(b)に示すように、誘導部としての誘導部材80は、横長の長方形状を有する縦壁部81と、縦壁部81の下端部に接続するとともに、縦壁部81に対して交差する方向に延びる横壁部82とを有する。また、誘導部材80は、横壁部82における縦壁部81側とは反対側の端部に接続するとともに、横壁部82に対して斜め上方に傾斜する斜壁部83を有する。斜壁部83の先端側は先細形状となっている。具体的には、斜壁部83は、台形状となるように構成されている。縦壁部81の上端部には、縦壁部81の厚さ方向であって、横壁部82が延びる方向とは反対方向に延びた鍵爪部84が設けられている。鍵爪部84は、縦壁部81の長手方向中央側において、所定の間隔をおいて2個設けられている。縦壁部81、横壁部82、及び、斜壁部83の基端側の長さ、すなわち、誘導部材80の長手方向の長さTは、水栓本体20のカバー22における開口22bの内径S(図3参照)と同じ長さか、もしくは若干長くなるように構成されている。誘導部材80の長手方向の長さTは、水栓本体20のカバー22における上端側の端部における外径、すなわち、縮径部22aの外径と同じ長さか、もしくは若干長くなるように構成されていることがより好ましい。
【0031】
図8(b)に示すように、斜壁部83は、横壁部82に対する傾斜角度θ1が42°となっており、縦壁部81に対する傾斜角度θ2が312°となっている。縦壁部81、横壁部82及び斜壁部83が上述のような角度で配置されていることにより、誘導部材80は、長手方向に直交する断面がU字状の溝形状を有したものとなる。ここで、「断面がU字状の溝形状」には、上方が開放された溝を有する形状が含まれるものとし、例えば、V字状や、上方が開放されたコ字状等が含まれるものとする。
【0032】
誘導部材80の取り付け方法について説明する。
図2、7、8に示すように、保持部材70の上面71aに誘導部材80の鍵爪部84を引掛ける。この状態で、上述のように保持部材70をハンドル本体50の天板部60に取り付けると、天板部60の凹部61における底壁61bの下面61dと、保持部材70の上面71aとの隙間に鍵爪部84が挟持された状態となる。さらに、誘導部材80の縦壁部81は、ハンドル本体50の底壁61bに設けられた対向壁65の一方と、保持部材70の本体部71との間に挟持されて、ハンドル本体50の筒体部31の軸方向に沿った状態となる。以上の方法により、誘導部材80は、抜け落ちが抑制された状態でハンドル本体50の天板部60に取り付けられる。さらに、天板部60の凹部61の挿通孔63にネジ40を挿通させ、保持部材70に保持された操作軸21のネジ孔21aに螺合させることによって、水栓用ハンドル30は、誘導部材80が設けられた状態で水栓本体20に固定される。この状態において、水抜き孔である貫通孔64の下方に、誘導部材80が配置された状態となる。
【0033】
本実施形態の作用について説明する。
図9、10に示すように、誘導部材80が斜壁部83を有することにより、図中矢印で示すように、貫通孔64を通過した液体を斜壁部83で受けることができる。また、斜壁部83の先端が先細形状であることにより、ハンドル本体50の筒体部31の内周に沿って、斜壁部83を配置することができる。そのため、より確実に液体を受けることが可能になる。さらに、斜壁部83の先端が斜め上方に傾斜していることにより、水栓用ハンドル30の操作時に誘導部材80が水栓本体20に干渉することが抑制されている。
【0034】
また、斜壁部83の傾斜角度θ2が312°であることにより、水栓用ハンドル30のレバー部32を手前側の下方(図9における下側)に操作しても、斜壁部83の壁面は、先端側が斜め上方に傾斜した状態が維持される。そのため、斜壁部83の先端側から水が排出されることが抑制される。すなわち、斜壁部83の傾斜角度θ2は、水栓用ハンドル30の傾きに対して、常に先端側が斜め上方に傾斜した状態が維持される角度であることが好ましい。
【0035】
また、誘導部材80が、断面がU字状の溝形状を有することにより、誘導部材80で受けた液体をより確実に誘導部材80の長手方向両端80a側へ誘導することができる。
図10に示すように、誘導部材80は、誘導部材80の長手方向中央側が、水栓本体20の操作軸21に近接するように配置されている。そのため、図中矢印で示すように、誘導部材80で受けた液体が誘導部材80の長手方向両端80a側へ誘導される方向は、操作軸21から離れる方向となる。言い換えれば、誘導部材80は、貫通孔64を通過した液体を、ハンドル本体50の外周側に向かって誘導する。誘導部材80の長手方向の長さTが、水栓本体20のカバー22における上端側の開口22bの内径Sと同じ長さか、もしくは若干長いことにより、水栓用ハンドル30の傾きに関わらず、誘導部材80の長手方向両端80a側から排出された液体は、水栓本体20のカバー22における上端側の開口22bよりも外方に排出されるように構成されている。
【0036】
本実施形態の効果について説明する。
(1)ハンドル本体50は、天板部60の凹部61における底壁61bの上面61c側と下面61d側とを連通する貫通孔64を有するとともに、底壁61bの下面61d側には、貫通孔64を通過した液体を操作軸21から離れる方向に誘導する誘導部材80が設けられている。
【0037】
貫通孔64を通過した液体を操作軸21から離れる方向に誘導する誘導部材80が設けられていることにより、ハンドル本体50の下方に位置するセラミックカートリッジ23に液体が浸入することを抑制することができる。したがって、セラミックカートリッジ23に液体が浸入することによって操作軸21の操作が重くなることを抑制することができる。
【0038】
(2)誘導部材80は、横長に構成され、長手方向に直交する断面がU字状の溝形状を有する。したがって、誘導部材80によって、貫通孔64を通過した液体をより確実に操作軸21から離れる方向に誘導することができる。
【0039】
(3)誘導部材80は、ハンドル本体50とは別体で構成されている。したがって、ハンドル本体50に対して誘導部材80を後付けすることが可能になるため、誘導部材80を効率良く設けることができる。
【0040】
(4)ハンドル本体50の天板部60における下面60b側に着脱可能に取り付けられて操作軸21を保持する保持部材70を有し、誘導部材80は、天板部60の凹部61における底壁61bの下面61dと保持部材70の上面71aとの間に挟持されている。したがって、誘導部材80をハンドル本体50に容易に取り付けることができる。
【0041】
(5)従来技術の水栓用ハンドルでは、ネジ孔の周囲に貫通孔が設けられていないため、ネジ孔の周囲に液体が浸入した場合、ネジが液体に浸かった状態となる虞があった。これに対し、本実施形態の水栓用ハンドル30は、ネジ40を挿通する挿通孔63と水抜き孔としての貫通孔64とが同じ凹部61内に設けられているため、ネジ40が液体に浸かった状態となることを抑制することができる。
【0042】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・水栓用ハンドル30の筒体部31は、円筒状に限定されない。例えば、角筒状や楕円筒状に構成されていてもよい。同様に、水栓用ハンドル30の天板部60も、円板状に限定されず、矩形状や楕円状に構成されていてもよい。
【0043】
・水栓用ハンドル30の保持部材70は、天板部60の凹部61における底壁61bに着脱可能に取り付けられた構成に限定されない。例えば、保持部材70は、天板部60に一体に形成された保持部として設けられていてもよい。また、保持部材70は、天板部60とは別体で形成されたうえで、天板部60の凹部61における底壁61bに取り外しができないように接合されていてもよい。
【0044】
・固定部材はネジ40に限定されない。ハンドル本体50を水栓本体20に固定することができる部材を適宜採用することができる。例えば、操作軸21の内部に無理嵌め状態で嵌め込まれることによって、ハンドル本体50を水栓本体20に固定することができる部材を用いてもよい。
【0045】
・固定部材を挿通させる挿通孔63の位置は、天板部60の凹部61における底壁61bに限定されない。挿通孔63の位置は、天板部60の凹部61内で適宜選択することができ、例えば、凹部61の側壁に設けられていてもよい。
【0046】
・本実施形態では、天板部60の凹部61における底壁61bに設けられた貫通孔64は、蓋部材33を係合する被係合部としての機能を有していたが、被係合部としての機能を有さなくてもよい。すなわち、天板部60の凹部61における底壁61bに、水抜き孔としての貫通孔64と、蓋部材33を係合する被係合部としての孔とを個別に設けてもよい。
【0047】
・蓋部材33は、省略されていてもよい。
・誘導部材80を取り付ける箇所は、天板部60の凹部61における底壁61bの下面61dと、保持部材70の上面71aとの隙間に限定されない。例えば、接着剤を用いて、ハンドル本体50の筒体部31の内周や、天板部60の底壁61bにおける対向壁65に接合してもよい。保持部材70の側面に設けられていてもよい。
【0048】
・誘導部材80は、ハンドル本体50と別体で構成された態様に限定されない。誘導部材80は、ハンドル本体50に一体に形成された誘導部として構成されていてもよい。
・誘導部材80の長手方向の長さTは、水栓本体20のカバー22における上端側の開口22bの内径Sより短くてもよい。すなわち、水栓本体20のカバー22を軸方向から見て、誘導部材80がカバー22の中心から外れた位置に配置されており、誘導部材80の長手方向両端80aが水栓本体20の開口22bよりも外側に位置する範囲において、誘導部材80の長手方向の長さTを開口22bの内径Sより短くすることができる。
【0049】
また、水栓用ハンドル30を操作して操作軸21を傾動させると、誘導部材80も傾斜する。誘導部材80の傾斜にともない、誘導部材80の長手方向の端部は、水栓本体20の開口22bの縁部に近づく方向に移動する。そのため、誘導部材80が傾斜した状態で、誘導部材80の長手方向の端部が水栓本体20の開口22bの外方に位置する範囲においても、誘導部材80の長手方向の長さTを開口22bの内径Sより短くすることができる。
【0050】
・誘導部材80は、縦壁部81、横壁部82、斜壁部83及び鍵爪部84を有する構成に限定されない。貫通孔64を通過した液体を受けて、操作軸21から離れる方向に誘導することができる形状を適宜採用することができる。例えば、横壁部82が省略されており、縦壁部81の下端部に斜壁部83が直接接続された形状であってもよい。縦壁部81、横壁部82及び斜壁部83が湾曲した一つの面で構成されていてもよい。
【0051】
・本実施形態では、誘導部材80の斜壁部83は台形状に構成されていたが、この態様に限定されない。例えば、斜壁部83は矩形状に構成されていてもよい。また、ハンドル本体50の筒体部31の内周に沿うように、先端側が曲線状に構成されていてもよい。
【0052】
・本実施形態では、誘導部材80の縦壁部81は長方形状に構成されていたが、この態様に限定されない。縦壁部81は、部分的に切欠きが設けられていてもよい。
図11に示すように、誘導部材80は、横壁部82の両端部に、斜め下方に垂れ下がった矩形状の耳部85が形成されていてもよい。耳部85が形成されていることにより、溝形状部分を流通した液体が、液体の表面張力によって誘導部材80に滞留することを抑制することができる。すなわち、耳部85が形成されていることにより、液体をスムーズに排出することができる。また、耳部85を、ハンドル本体50の筒体部31の内周に接触させて、筒体部31の内周を伝って液体が排出されるように構成してもよい。
【0053】
図12に示すように、誘導部材80は、縦壁部81の下端部に、斜め下方に傾斜した斜壁部86が接続されることによって構成されていてもよい。この構成では、図中矢印で示すように、斜壁部86で受けた液体は、斜壁部86の傾斜に沿って、操作軸21から離れる方向に誘導されつつ、斜壁部86の先端側からも排出されるように構成されている。
【0054】
・水栓用ハンドル30のハンドル本体50は、円筒状の筒体部31と、天板部60と、レバー部32とを有する構成に限定されない。例えば、ハンドル本体50は、筒体部31を有してなく、天板部60と、レバー部32とで構成されていてもよい。また、ハンドル本体50は、レバー部32を有していなくてもよい。すなわち、天板部60がレバー部32としての機能を兼ねていれば、レバー部32を省略することができる。
【符号の説明】
【0055】
21…操作軸、30…水栓用ハンドル、50…ハンドル本体、61…凹部、63…挿通孔、40…ネジ(固定部材)、64…貫通孔(水抜き孔)。
図1
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