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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】入庫支援装置と方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 6/18 20060101AFI20220927BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
E04H6/18 601A
H04N7/18 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018210184
(22)【出願日】2018-11-08
(65)【公開番号】P2020076249
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】中矢 豪
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢貴
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-109186(JP,A)
【文献】特開2012-001041(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0332573(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲と、
前記入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶する記憶装置と、
前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影するカメラと、
前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成する画像処理装置と、
前記車両の運転者が視認できる位置に設けられ前記合成画像を表示するディスプレイ装置と、を備え
前記実画像は、前記入庫可能範囲の外縁を含む、入庫支援装置。
【請求項2】
機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲と、
前記入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶する記憶装置と、
前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影するカメラと、
前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成する画像処理装置と、
前記車両の運転者が視認できる位置に設けられ前記合成画像を表示するディスプレイ装置と、を備え
前記記憶装置は、複数の前記シルエット画像を記憶するデータベースを有する、入庫支援装置。
【請求項3】
前記カメラは、前記入庫可能範囲の前方、後方、側方、又は上方に設置される、請求項1に記載の入庫支援装置。
【請求項4】
機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲と、
前記入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶する記憶装置と、
前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影するカメラと、
前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成する画像処理装置と、
前記車両の運転者が視認できる位置に設けられ前記合成画像を表示するディスプレイ装置と、を備え
前記合成画像は、前記入庫可能範囲を、前方から撮影し左右を反転させたミラー画像、後方から撮影した背面画像、側方から撮影した側面画像、又は、上方から撮影した俯瞰画像を含む、入庫支援装置。
【請求項5】
前記ディスプレイ装置は、前記ミラー画像、前記背面画像、前記側面画像、又は、前記俯瞰画像から選択された1又は複数の前記合成画像を表示する、請求項に記載の入庫支援装置。
【請求項6】
前記入庫可能範囲の外縁からはみ出す前記車両のはみ出し部を検出する検出センサーを備える、請求項1に記載の入庫支援装置。
【請求項7】
前記ディスプレイ装置は、モニタ又は画像投影機である、請求項1に記載の入庫支援装置。
【請求項8】
機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲と、
前記入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶する記憶装置と、
前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影するカメラと、
前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成する画像処理装置と、
前記車両の運転者が視認できる位置に設けられ前記合成画像を表示するディスプレイ装置と、を備え
前記画像処理装置は、前記実画像のうち前記シルエット画像の外側に位置するはみ出し部を検出し強調表示する、入庫支援装置。
【請求項9】
機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両を撮影した実画像からシルエット画像を作成し、
記憶装置により、前記所定位置に位置する前記車両の前記シルエット画像を記憶し、
カメラにより、前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の前記実画像をリアルタイムに撮影し、
画像処理装置により、前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成し、
前記車両の運転者が視認できる位置のディスプレイ装置により、前記合成画像を表示する、入庫支援方法。
【請求項10】
前記入庫可能範囲へ進入中に前記車両を撮影した前記実画像から前記シルエット画像を作成する、請求項に記載の入庫支援方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械式駐車装置の入庫位置に運転者が車両を運転して入庫する際の入庫支援装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械式駐車装置(例えば、エレベータ式駐車装置)は、入庫室内の入庫位置に搬器を有し、運転者が車両(例えば乗用車)を運転して搬器上に車両を駐車し、その後、装置が作動して搬器により無人の車両を格納場所へ搬送する。
搬器は、例えばパレットを載せたケージ、或いはコンベア装置であり、いずれの場合も、車両の格納効率を高めるため、搬器上の入庫可能範囲は、必要最小限に設定されている。
【0003】
そのため、運転者は、搬器上に車両を運転して駐車する際に、車両の外側全体を搬器上の駐車領域の内側に入れる必要があり運転がし難いことがある。
そこで従来から駐車領域の前方に大型の鏡を設け、鏡に映る自車の位置を運転者が確認できるようにすることで、入庫時の運転操作の支援が図られていた。
【0004】
しかし、入庫時の駐車領域がうす暗い場合や鏡が見難い場合には、搬器上への駐車は車幅感覚等のカンに頼る運転技術に依存することとなり、初心者にとって困難であった。特に、車路幅の狭い搬器(パレット)に対して、タイヤ外幅の広い車両の入庫が困難であった。
【0005】
そこで、搬器上に入庫時の運転を支援する手段として、特許文献1~3が既に提案されている。
【0006】
特許文献1の「駐車設備の車両ガイドインシステム」は、駐車設備の車両乗入れスペース(入庫可能範囲)に乗り入れた車両を上方から撮像するテレビカメラを車両乗入れスペースの乗入れ方向上方に設ける。さらにモニタテレビを車両乗入れスペースの乗入れ方向前方に設け、モニタテレビにより車両乗入れスペースに対する車両の停止許容範囲を示す車両停止ラインと共に車両の画像を表示する、ものである。
【0007】
特許文献2の「機械式駐車設備の車両乗入れ部における停止位置案内装置」は、入庫室の車両乗入れフロア(入庫可能範囲)の上方にテレビカメラを設け、車両乗入れフロアに乗り入れた入庫車両をテレビカメラで上方から撮像する。さらに車両乗入れフロアの車両乗入れ方向奥部正面にモニタテレビを設け、テレビカメラで撮像された画像を入庫車両の運転者が運転しながら視認可能なようにモニタテレビに映す、ものである。
【0008】
特許文献3の「乗込場の車両誘導モニタ装置」は、立体駐車装置の乗込場の最適な位置に車両を搭載可能な移載台を備える。移載台は、車両を乗入れる移載範囲枠線(入庫可能範囲)を有する。さらに、移載範囲枠線内に誘導する画像を撮るカメラを乗込場の正面・側面・上面の壁面に備え、カメラの撮る映像を表示するモニタを乗込場の車両が進行する方向の正面に備える。車両が乗込場に進行する過程でモニタに車体画像、タイヤ位置画像、及び誘導文字画像を表示する、ものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平06-193305号公報
【文献】特開平08-105235号公報
【文献】特開2014-109186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の入庫支援手段は、車両毎の最適位置への入庫支援ができない、という問題点があった。
すなわち従来の入庫支援手段は、車両が入庫可能範囲の内側に位置するように支援している。そのため、入庫可能範囲に対して余裕のある車両(例えば軽自動車や小型車)の場合、入庫可能範囲内で左右又は前後にずれた位置に駐車することがあり、搬送時の負荷がアンバランスとなる。
また、例えば電気自動車では、搬送中又は搬送後の充電のため、入庫可能範囲の中心から左右又は前後にずれた位置に駐車させる場合がある。しかし、従来の入庫支援手段では、電気自動車に適した最適位置への入庫支援ができなかった。
【0011】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、車両毎の入庫可能範囲内の所定位置(最適位置)に対し運転者が自車の現在位置を目視で確認することができ、かつ所定位置からの自車のはみ出し部を目視で確認することができる入庫支援装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲と、
前記入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶する記憶装置と、
前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影するカメラと、
前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成する画像処理装置と、
前記車両の運転者が視認できる位置に設けられ前記合成画像を表示するディスプレイ装置と、を備える、入庫支援装置が提供される。
【0013】
また本発明によれば、記憶装置により、機械式駐車装置の入庫室に設けられた車両の入庫可能範囲内の所定位置に位置する前記車両のシルエット画像を記憶し、
カメラにより、前記入庫可能範囲へ進入する前記車両の実画像をリアルタイムに撮影し、
画像処理装置により、前記実画像に前記シルエット画像をオーバラップした合成画像を作成し、
前記車両の運転者が視認できる位置のディスプレイ装置により、前記合成画像を表示する、入庫支援方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の構成によれば、車両の運転者が視認できる位置に設けられたディスプレイ装置に、車両の実画像にシルエット画像をオーバラップした合成画像を表示する。シルエット画像は、入庫可能範囲内の所定位置(最適位置)に位置する車両の静止画像であり、実画像は現在の車両位置をリアルタイムに表示する。
【0015】
従って、入庫室内の入庫可能範囲に運転者が車両を運転して入庫する際に、シルエット画像と実画像を比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
また、実画像のうちシルエット画像の外側に位置するはみ出し部を目視できるので、
所定位置からの自車のはみ出し部をリアルタイムに目視で確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による入庫支援装置を備えた機械式駐車装置を示す正面図である。
図2図1のA-A矢視図であり、入庫室の平面図である。
図3図2のB-B矢視図であり、入庫室の側面図である。
図4】本発明による入庫支援方法を示す全体フロー図である。
図5図4のステップS8の説明図である。
図6】合成画像の例(ミラー画像と背面画像)を示す図である。
図7】合成画像の別の例(側面画像と俯瞰画像)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明による入庫支援装置を備えた機械式駐車装置100を示す正面図である。
この例において、機械式駐車装置100はエレベータ式駐車装置であるが、本発明はこれに限定されず、その他の機械式駐車装置であってもよい。
【0019】
図1において、1は車両(例えば、乗用車)、2は車両1を載せるパレット、3は昇降路、4は格納棚、5は昇降路3を昇降する搬器、6は本体フレーム、7は本体フレーム6の上部に設置されたトラクション方式(摩擦駆動式)の巻上機である。
【0020】
複数の格納棚4は、車両1をそれぞれ収容する格納空間である。格納棚4は、例えばレール4aを有し搬器5との間で車両1を移載できるようになっている。
【0021】
搬器5は、格納棚4との間で車両1を移載する移載装置(図示せず)を有する。すなわち、この例で、搬器5は、車両1が載るパレット2を水平に移動する横行機構を有し、車両1を載せたパレット2を格納棚4と搬器5の間で横行させるようになっている。
【0022】
図1において、機械式駐車装置100は、さらに車両1が入出庫する入庫室8を有する。
入庫室8には、車両1が外部から入庫する。なおこの例で、入庫室8は、車両1が外部から入庫し外部に出庫する入出庫室であるが、入庫専用であってもよい。
また入出庫室は、外部と連通する入出庫口(図示せず)を有する。入出庫口には開閉可能な入出庫扉9(図2参照)が設けられている。
搬器5は、入庫室8と格納棚4との間で車両1を昇降する。
なお、この例で、入庫室8は機械式駐車装置100の最下段に設けられている。しかし、入庫室8は最下段に限定されず、中間でも最上段でもよい。
【0023】
図2は、図1のA-A矢視図であり、入庫室8の平面図である。また、図3は、図2のB-B矢視図であり、入庫室8の側面図である。
【0024】
図2において、搬器5に載るパレット2の上面に車両1の入庫可能範囲Aが設定されている。入庫可能範囲Aをこの図において太線の矩形で示す。入庫可能範囲Aは、その外縁又はその内側が容易に視認できるように、着色されていることが好ましい。
図2において入庫可能範囲Aの外縁は、前端a1、後端a2、右端a3、及び左端a4からなる。
【0025】
図2図3において、本発明による入庫支援装置10は、カメラ12、記憶装置14、画像処理装置16、及びディスプレイ装置18を備える。
記憶装置14、画像処理装置16、及びディスプレイ装置18は、好ましくは全体として単一のコンピュータである。
【0026】
この例で、カメラ12及びディスプレイ装置18は、機械式駐車装置100の入庫室8に設けられ、記憶装置14及び画像処理装置16は、入庫室8の外部に設置されている。
なお入庫支援装置10の全体を入庫室8に設けてもよい。
【0027】
カメラ12は、動画及び静止画を撮影可能なデジタルカメラ又はデジタルビデオカメラであり、車両1の入庫可能範囲Aへ進入する車両1の実画像Cをリアルタイムに撮影する。
以下、「リアルタイム」とは、短い制御サイクル(例えば10~100ms)で繰り返し実施することを意味し、実質的に時間差がないことを意味する。
【0028】
カメラ12は、この例では、入庫可能範囲Aの前方(図2の上側)、後方、側方、及び上方に設置され、搬器上の入庫可能範囲Aを前方、後方、側方、又は上方からリアルタイムに撮影する。
すなわちカメラ12は、この例において、前方から撮影する前方カメラ12a、後方から撮影する後方カメラ12b、右側から撮影する右側カメラ12c、左側から撮影する左側カメラ12d、及び、上方から撮影する上方カメラ12e(図3参照)とからなる。
なおカメラ12は、この例に限定されず、その他に設けてもよい。また逆に、上述のカメラの一部を省略してもよい。
【0029】
図2図3において、前方カメラ12aは、入庫可能範囲Aの前方(図2の上側)の正面上部に斜め下向きに設置され、車両1の前部と共に、入庫可能範囲Aの前端a1と右端a3及び左端a4を撮影する。
この構成により、前方カメラ12aの画像(実画像C)が入庫可能範囲Aの外縁(前端a1と右端a3及び左端a4)を含むので、車両1の運転者は実画像Cから車両1の前部と外縁との位置関係を目視で認識することができる。
【0030】
図2図3において、後方カメラ12bは、入庫可能範囲Aの後方(図2の下側)の背面上部に斜め下向きに設置され、車両1の後部と共に、入庫可能範囲Aの後端a2と右端a3及び左端a4を撮影する。
この構成により、後方カメラ12bの画像(実画像C)が入庫可能範囲Aの外縁(後端a2と右端a3及び左端a4)を含むので、車両1の運転者は実画像Cから車両1の後部と外縁との位置関係を目視で認識することができる。
【0031】
図2において、3台の右側カメラ12cは、入庫可能範囲Aの右方に前後方向に間隔を隔てて斜め下向きに設置され、全体として車両1の右側面と共に、入庫可能範囲Aの右端a3の全部と前端a1及び後端a2の少なくとも一部を撮影する。この場合、隣接する2台の右側カメラ12cの撮影範囲は重複することが好ましい。
3台の左側カメラ12dは、入庫可能範囲Aの左方(図2の左側)に前後方向に間隔を隔てて斜め下向きに設置され、全体として車両1の左側面と共に、入庫可能範囲Aの左端a4の全部と前端a1及び後端a2の少なくとも一部を撮影する。この場合、隣接する2台の左側カメラ12dの撮影範囲は重複することが好ましい。
【0032】
この構成により、隣接する2台の右側カメラ12cの画像の重複部分を用いて、画像のマッチング処理により、車両1の全長を含む画像(側面画像)を作成することができる。
また、作成された側面画像が入庫可能範囲Aの外縁(右端a3の全部と前端a1及び後端a2の少なくとも一部)を含むので、車両1の運転者は側面画像から車両1の側面と外縁との位置関係を目視で認識することができる。
左側カメラ12dによる効果も同様である。
【0033】
図3において、4台の上方カメラ12eは、入庫可能範囲Aの四隅の外側にそれぞれ斜め下向きに設置され、入庫可能範囲Aの四隅の外縁の一部と車両1の四隅の一部をそれぞれ撮影する。
この構成により上方カメラ12eを搬器5の昇降に支障のない箇所に設置することができる。
【0034】
また4台のうち2台の上方カメラ12eが、入庫可能範囲Aの前端a1及び後端a2を含む鉛直平面上にそれぞれ位置し、他の2台の上方カメラ12eが、入庫可能範囲Aの右端a3及び左端a4を含む鉛直平面上にそれぞれ位置することが好ましい。
【0035】
この構成により、入庫可能範囲Aの外縁(前端a1、後端a2、右端a3及び左端a4)は4台の上方カメラ12eの画像中心にそれぞれ位置する。従って、車両1の運転者は4台の上方カメラ12eの実画像Cから自車の外面と入庫可能範囲Aの外縁との位置関係を目視で認識することができる。
また、実画像Cの画像処理により、入庫可能範囲Aの外側に位置する車両1のはみ出し部Dを容易に検出することができる。
はみ出し部Dを検出した場合、運転者が認識しやすい色(例えば赤色)で表示するのがよい。さらに、はみ出し部Dの表示を点滅させ、かつ警報と警告文字を併用するのがよい。
【0036】
また、前後又は左右に隣接する2台の上方カメラ12eの撮影範囲はそれぞれ重複することが好ましい。
この構成により、前後又は左右に隣接する2台の上方カメラ12eの画像の重複部分を用いて、画像のマッチング処理により、車両1の全体を含む画像(俯瞰画像)を作成することができる。
【0037】
記憶装置14は、車両1の入庫可能範囲A内の所定位置に位置する車両1のシルエット画像Bを記憶する。また記憶装置14は、複数のシルエット画像Bを記憶するデータベース14aを有することが好ましい。
【0038】
「所定位置」は、車両毎に設定された最適位置である。例えば電気自動車に対し、搬送中又は搬送後の充電のため、入庫可能範囲Aの中心から左右又は前後にずれた位置に所定位置を設定してもよい。また、入庫可能範囲Aに対して余裕のある車両(例えば軽自動車や小型車)の場合、所定位置を車両1の重心位置が入庫可能範囲Aの中心に位置するように設定してもよい。
なお、入庫可能範囲Aに対して余裕のない車両、及び最適位置が不明な車両の場合、入庫可能範囲Aの全周内側に余裕ができるように、所定位置は、車両1の前後左右の中心位置が入庫可能範囲Aの中心に位置するように設定するのがよい。
【0039】
シルエット画像Bは、車両1の実際の色に対し識別しやすい色(例えば補色)であるのが好ましい。しかし、シルエット画像Bは運転者が視認しやすい色である限り、その他の色、又は無彩色であってもよい。
【0040】
画像処理装置16は、カメラ12により撮影した画像(実画像Cと呼ぶ)にシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17を作成する。
この場合、画像処理により、実画像Cに含まれる入庫可能範囲Aの所定位置(最適位置)にシルエット画像Bが位置するように、合成画像17を作成する。
【0041】
合成画像17は、入庫可能範囲Aを、前方から撮影し左右を反転させたミラー画像17a、後方から撮影した背面画像17b、側方から撮影した側面画像17c、又は、上方から撮影した俯瞰画像17dを含むことが好ましい。
【0042】
また画像処理装置16は、実画像Cのうちシルエット画像Bの外側に位置するはみ出し部Dを検出し強調表示する。この強調表示は、画像処理によりはみ出し部Dを抽出し、運転者が認識しやすい色(例えば黄色)で表示するのがよい。
さらに、はみ出し部Dの表示を点滅させ、かつ警報と警告文字を併用するのがよい。
【0043】
ディスプレイ装置18は、モニタ又は画像投影機であり、車両1の運転者が視認できる位置に設けられ合成画像17を表示する。この例でディスプレイ装置18は、入庫可能範囲Aの正面前方(図2の上側)に鉛直に設置されている。
ディスプレイ装置18は、好ましくは全幅が車両1の車幅より大きい大型の液晶ディスプレイであるのがよい。
ディスプレイ装置18は、ミラー画像17a、背面画像17b、側面画像17c、又は、俯瞰画像17dから選択された1又は複数の合成画像17を表示する。合成画像17の表示の順序は、予め設定されたタイミングで順に行うことが好ましいが、ランダムであってもよい。
【0044】
図2図3において、本発明による入庫支援装置10は、さらに入庫可能範囲Aの外縁からはみ出す車両1のはみ出し部Dを検出する検出センサー20を備える。
検出センサー20は、この例では光電センサであり、入庫可能範囲Aの前端a1、後端a2、右端a3、左端a4を含む鉛直平面上を水平又は傾斜して通る検出ビーム光20aを有する。
この構成により、検出センサー20により入庫可能範囲Aからの車両1のはみ出し部Dを検出することができる。
はみ出し部Dを検出した場合、警報と警告文字を併用して運転者に警告するのがよい。
【0045】
図4は、本発明による入庫支援方法を示す全体フロー図である。この図において、入庫支援方法は、S1~S10の各ステップ(工程)からなる。
【0046】
入庫室8に設けられた入庫可能範囲Aに車両1を入庫する場合、運転者は、入庫を指示し(ステップS2)、入庫室8に進入し(ステップS4)、次いで入庫可能範囲Aに進入し(ステップS6)、所定位置に駐車(ステップS9)した後に、入庫室8から退出して入庫が完了する。
【0047】
ステップS1は、対象とする車両1の入庫開始前に予め実施することが好ましい。
ステップS1において、記憶装置14により車両1の入庫可能範囲A内の所定位置(最適位置)に位置する車両1のシルエット画像Bを記憶する。
車両1が例えば契約車両であり予め既知の場合、入庫可能範囲A内の最適位置に位置する車両1を予め撮影した実画像Cからシルエット画像Bを作成してデータベース14aに記憶するのがよい。
この場合、契約車両が入庫する際に、車両番号又はID番号などでその車両1を特定し、データベース14aからその車両1のシルエット画像Bを用いることができる。
【0048】
なお、ステップS1は必須ではなく、車両1は非契約車両であってもよい。
この場合、車両1のシルエット画像Bは、後述するステップS8で撮影し、データベース14aに車両番号又はID番号と共に記憶する。
【0049】
車両1の入庫開始後、ステップS2において、運転者は車両番号又はID番号と共に入庫を指示する。次いで入出庫扉9が開き(ステップS3)、車両1の運転者は、車両1を運転して入出庫扉9を通って入庫室8に進入する(ステップS4)。
【0050】
車両1が入庫室8に進入すると、車両1の実画像Cの撮影が開始される(ステップS5)。この撮影はリアルタイムに実施され、ステップS10まで継続する。
なお、実画像撮影のタイミングはこの例に限定されず、適宜変更してもよい。また連続撮影に限定されず、適宜中断してもよい。
【0051】
車両1の運転者は、入庫室8内において、入庫可能範囲Aに車両1を進入させる(ステップS6)。
この後、車両1が所定位置に駐車する(ステップS9)までの間、画像処理装置16により車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17を作成し、ディスプレイ装置18により合成画像17を表示する(ステップS7)。
この表示は、ミラー画像17a、背面画像17b、側面画像17c、又は、俯瞰画像17dをそれぞれ予め設定した順序で実施するのがよい。
なお本発明はこの表示に限定されず、これらから選択された複数の合成画像17を同時に表示してもよく、ランダムに表示してもよい。
【0052】
図5は、図4のステップS8の説明図である。
車両1が契約車両である場合、データベース14aにシルエット画像Bが記憶されているため、ステップS8を省略することができる。
一方、車両1が非契約車両である場合、車両1のシルエット画像Bはデータベース14aに記憶されていない。この場合、入庫可能範囲Aへ進入中に車両1を撮影した実画像Cからシルエット画像Bを作成し、データベース14aに記憶する。
【0053】
例えば、図5に示すように車両1の全体が入庫室8に進入した時点で、前方カメラ12aにより車両1の前部を撮影し、右側カメラ12cにより車両1の右側面を撮影し、左側カメラ12dにより車両1の左側面を撮影する。
前方カメラ12aにより撮影した実画像Cは、撮影距離の相違を加味して正面のシルエット画像Bを抽出する。右側カメラ12c又は左側カメラ12dにより撮影した実画像Cは、画像の重複部分を用いて、画像のマッチング処理により、車両全長の側面画像のシルエット画像Bを抽出する。
次いで、抽出したシルエット画像Bは、データベース14aに記憶すると共に、ミラー画像17a及び側面画像17cの合成画像17の作成に用いられる。
【0054】
また、車両1が非契約車両である場合、車両毎の最適位置は不明である。そのため、シルエット画像Bの入庫可能範囲内の所定位置(最適位置)は、原則として入庫可能範囲Aの中心に設定するのがよい。
なお、車両1の型式などから車両毎の最適位置が明らかな場合には、最初からシルエット画像Bを最適位置に設定してもよい。
【0055】
図4において、車両1が所定位置に駐車する(ステップS9)と、実画像Cの撮影を終了し(ステップS10)、車両1の入庫が完了する。
なお、車両1が非契約車両である場合、車両1が所定位置に駐車(ステップS9)した際に、所定位置を最適位置とみなして、車両1を撮影した実画像Cからシルエット画像Bを作成してデータベース14aに記憶するのがよい。
これにより、非契約車両であっても、次回の入庫の際に契約車両と同様に、ステップS8を省略することができる。
【0056】
車両1の運転者は、パレット2の上の入庫可能範囲Aに車両1を駐車した後、入庫室8の外に退室する。
機械式駐車装置100は、運転者が入庫室8の外に退室した後、装置が作動して無人の車両1を格納場所へ搬送し、入庫動作が完了する
【0057】
図6は、合成画像17の例を示す図である。この図において、(A)はミラー画像17a、(B)は背面画像17bである。
【0058】
図6(A)のミラー画像17aは、従来から設けられていた大型の鏡と同様のミラー画像を表示する。ミラー画像17aを表示することで、従来と同様に、自車の現在位置を運転者が確認することができる。
また、ミラー画像17aは、車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17であるので、シルエット画像Bと実画像Cを比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像B)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
【0059】
図6(B)の背面画像17bは、車両1を後から直接見ているように、運転者が自車の現在位置を確認することができ、左右の位置関係を目視で容易に把握できる。
また、背面画像17bは、車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17であるので、シルエット画像Bと実画像Cを比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像B)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
【0060】
図7は、合成画像17の別の例を示す図である。この図において、(A)は側面画像17c、(B)は俯瞰画像17dである。
【0061】
図7(A)の側面画像17cにより、車両1を横(この例で左側)から見ているように、運転者が自車の現在位置を確認することができ、前後の位置関係を目視で容易に把握できる。
また、側面画像17cは、車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17であるので、シルエット画像Bと実画像Cを比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像B)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
【0062】
図7(B)の俯瞰画像17dにより、車両1を上から見ているように、運転者が自車の現在位置を確認することができ、車両1の左右と前部(又は後部)の位置関係を目視で容易に把握できる。
また、俯瞰画像17dは、車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17であるので、シルエット画像Bと実画像Cを比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像B)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
【0063】
上述した本発明の実施形態によれば、車両1の運転者が視認できる位置に設けられたディスプレイ装置18に、車両1の実画像Cにシルエット画像Bをオーバラップした合成画像17を表示する。シルエット画像Bは、入庫可能範囲内の所定位置(最適位置)に位置する車両1の静止画像であり、実画像Cは現在の車両位置をリアルタイムに表示する。
【0064】
従って、入庫室内の入庫可能範囲Aに運転者が車両1を運転して入庫する際に、シルエット画像Bと実画像Cを比較することで、車両毎の最適位置(シルエット画像B)に対する自車の現在位置をリアルタイムに目視で確認することができる。
また、実画像Cのうちシルエット画像Bの外側に位置するはみ出し部Dを目視できるので、所定位置からの自車のはみ出し部Dをリアルタイムに目視で確認することができる。
【0065】
さらに本発明は、以下の付随する効果を有する。
(1)4台の上方カメラ12eの実画像Cの画像処理により、入庫可能範囲Aの外側に位置する車両1のはみ出し部Dを検出し、認識しやすい色(例えば赤色)、色の点滅、警報、又は警告文字で運転者に知らせることができる。
またこの場合、入庫可能範囲Aの外側に車両1がはみ出しているので、検出が解除されるまで機械式駐車装置100の作動を停止させるのがよい。
(2)画像処理装置16により、実画像Cのうちシルエット画像Bの外側に位置するはみ出し部Dを検出し、認識しやすい色(例えば黄色)、色の点滅、警報、又は警告文字で運転者に知らせることができる。
この場合、入庫可能範囲Aの外側には車両1がはみ出していないので、機械式駐車装置100の作動を停止させる必要はない。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
A 入庫可能範囲、a1 前端、a2 後端、a3 右端、a4 左端、
B シルエット画像、C 実画像、D はみ出し部、1 車両(乗用車)、
2 パレット、3 昇降路、4 格納棚、5 搬器、6 本体フレーム、
7 巻上機、8 入庫室、9 入出庫扉、10 入庫支援装置、
12 カメラ、12a 前方カメラ、12b 後方カメラ、
12c 右側カメラ、12d 左側カメラ、12e 上方カメラ、
14 記憶装置、14a データベース、16 画像処理装置、
17 合成画像、17a ミラー画像、17b 背面画像、
17c 側面画像、17d 俯瞰画像、18 ディスプレイ装置、
20 検出センサー、20a 検出ビーム光、
100 機械式駐車装置(エレベータ式駐車装置)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7