(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/66 20060101AFI20220927BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220927BHJP
B26D 5/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B41J11/66
B41J2/01 301
B41J2/01 303
B41J2/01 401
B26D5/00 F
(21)【出願番号】P 2018227794
(22)【出願日】2018-12-05
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸好
(72)【発明者】
【氏名】山本 真也
(72)【発明者】
【氏名】今泉 清将
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-214769(JP,A)
【文献】特開2017-202634(JP,A)
【文献】特開2013-244449(JP,A)
【文献】特開2018-176538(JP,A)
【文献】特開2006-347045(JP,A)
【文献】特開2002-29113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00 - 11/70
B41J 2/01 - 2/215
B41J 19/00 - 19/98
B65H 7/00 - 7/20
B65H 43/00 - 43/08
B05C 7/00 - 21/00
G02B 5/20 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が載置される載置台と、
前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドが搭載され、主走査方向に移動可能な第1キャリッジと、
前記載置台に載置された前記記録媒体を切断するカッターを有するカッティングヘッドと、
前記カッティングヘッドが搭載され、前記主走査方向に関して前記第1キャリッジの側方に配置され、前記主走査方向に移動可能な第2キャリッジと、
前記第1キャリッジおよび前記第2キャリッジを前記主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構と、
前記第1キャリッジの位置を検出する第1検出装置と、
前記第2キャリッジの位置を検出する第2検出装置と、
前記インクヘッド周辺の温度である環境温度を測定する温度測定装置と、
前記インクヘッド、前記カッティングヘッドおよび前記キャリッジ移動機構を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記温度測定装置によって測定された前記環境温度の前回の温度である第1環境温度と、前記記録媒体に印刷される所定の画像の画像データと、前記所定の画像の周囲に設定されかつ前記カッターによって切断されるカット線のカットデータとを記憶する記憶部と、
前記画像データおよび前記第1検出装置によって検出される前記第1キャリッジの位置に基づいて前記キャリッジ移動機構および前記インクヘッドを制御する印刷制御部と、
前記温度測定装置によって測定された前記環境温度の今回の温度である第2環境温度が、前記第1環境温度と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する判定部と、
前記第2環境温度が前記第1環境温度と比べて前記所定の温度範囲内にないと判定された場合に、前記第1キャリッジを前記主走査方向に所定の距離だけ移動させたときの前記第1検出装置によって検出された前記第1キャリッジの位置に対する前記第2キャリッジを前記主走査方向に前記所定の距離だけ移動させたときの前記第2検出装置によって検出された前記第2キャリッジの位置の割合である補正率を算出する算出部と、
前記補正率に基づいて前記カットデータを補正し、補正後カットデータを作成する作成部と、
前記補正後カットデータおよび前記第2検出装置によって検出される前記第2キャリッジの位置に基づいて、前記キャリッジ移動機構および前記カッティングヘッドを制御するカット制御部と、を備えている、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記キャリッジ移動機構は、前記第1キャリッジおよび前記第2キャリッジを前記主走査方向に移動させるキャリッジモータを有し、
前記第1検出装置は、所定の間隔で前記主走査方向に並ぶ複数のスリットが形成され、前記主走査方向に延びるスケールと、前記スリットを検出するセンサと、を有し、
前記第2検出装置は、前記キャリッジモータに設けられたロータリエンコーダにより構成されている、請求項1に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記スケールは、樹脂材料から形成されている、請求項2に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インクヘッドによって前記記録媒体にインクが吐出される印刷が完了した後に、前記カッティングヘッドの前記カッターによって前記記録媒体を切断する場合、前記算出部は、前記印刷が完了した後に前記補正率を算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記カッティングヘッドの前記カッターによって前記記録媒体を切断した後に、前記インクヘッドによって前記記録媒体にインクが吐出される印刷を行う場合、前記算出部は、前記記録媒体を切断する前に前記補正率を算出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記第1環境温度が測定されてから所定の時間が経過したとき、前記算出部は、前記補正率を算出する、請求項1から5のいずれか一項に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記カッターによって印刷開始位置を設定した場合、前記算出部は、前記インクヘッドによって前記記録媒体にインクが吐出される印刷を行う前に前記補正率を算出し、
前記作成部は、前記補正率に基づいて前記画像データを補正し、補正後画像データを作成し、
前記印刷制御部は、前記補正後画像データおよび前記第1検出装置によって検出される前記第1キャリッジの位置に基づいて、前記キャリッジ移動機構および前記インクヘッドを制御する、請求項1から6のいずれか一項に記載のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カッティングヘッド付きインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録媒体が載置される載置台と、記録媒体にインクを吐出するインクヘッドとを備えたインクジェットプリンタが知られている。また、シート状や板状等の記録媒体を切断するカッターを有するカッティングヘッドを備えたカッティング装置が知られている。さらに、記録媒体に画像の印刷を行うインクヘッドと、記録媒体に印刷された画像の周囲を切断するカッティングヘッドとを備えたカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタと称する場合もある。)が知られている。例えば、特許文献1には、このようなカッティングヘッド付きインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したカッティングヘッド付きインクジェットプリンタでは、印刷の際にはインクヘッドの位置を検出しながら記録媒体にインクを吐出し、切断の際にはカッティングヘッドの位置を検出しながら記録媒体をカッターによって切断する。インクヘッドおよびカッティングヘッドは、それぞれ同一の移動機構によって移動される。インクヘッドによる印刷の精度を高めると共に、カッティングヘッドによる切断の精度を高めるために、プリンタには、インクヘッドの位置を検出する第1検出装置とカッティングヘッドの位置を検出する第2検出装置とが設けられている。
【0005】
ここで、第1検出装置および第2検出装置として使用される検出装置には、例えば、プリンタ周辺の温度(例えばインクヘッド周辺の温度)に依存して、検出位置に誤差が生じうるものがある。即ち、インクヘッドおよびカッティングヘッドをそれぞれ所定の距離だけ移動させたときに、プリンタ周辺の温度によっては第1検出装置および第2検出装置によって検出される検出位置に誤差が生じることがある。このため、従来は、プリンタの電源投入時において、第1検出装置および第2検出装置による検出位置の誤差を補正する処理が行われていた。しかしながら、プリンタの電源投入後プリンタの使用を続けることによって、プリンタ周辺の温度が変化することがあり、第1検出装置および第2検出装置による検出位置に誤差が発生する場合があることが分かった。即ち、記録媒体に画像が印刷された後に記録媒体を切断する場合や、記録媒体を切断した後に記録媒体に画像が印刷される場合に、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体が切断されない虞がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体を切断することができるカッティングヘッド付きインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタは、記録媒体が載置される載置台と、前記載置台に載置された前記記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、前記インクヘッドが搭載され、主走査方向に移動可能な第1キャリッジと、前記載置台に載置された前記記録媒体を切断するカッターを有するカッティングヘッドと、前記カッティングヘッドが搭載され、前記主走査方向に関して前記第1キャリッジの側方に配置され、前記主走査方向に移動可能な第2キャリッジと、前記第1キャリッジおよび前記第2キャリッジを前記主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構と、前記第1キャリッジの位置を検出する第1検出装置と、前記第2キャリッジの位置を検出する第2検出装置と、前記インクヘッド周辺の温度である環境温度を測定する温度測定装置と、前記インクヘッド、前記カッティングヘッドおよび前記キャリッジ移動機構を制御する制御装置と、を備えている。前記制御装置は、前記温度測定装置によって測定された前記環境温度の前回の温度である第1環境温度と、前記記録媒体に印刷される所定の画像の画像データと、前記所定の画像の周囲に設定されかつ前記カッターによって切断されるカット線のカットデータとを記憶する記憶部と、前記画像データおよび前記第1検出装置によって検出される前記第1キャリッジの位置に基づいて前記キャリッジ移動機構および前記インクヘッドを制御する印刷制御部と、前記温度測定装置によって測定された前記環境温度の今回の温度である第2環境温度が、前記第1環境温度と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する判定部と、前記第2環境温度が前記第1環境温度と比べて前記所定の温度範囲内にないと判定された場合に、前記第1キャリッジを前記主走査方向に所定の距離だけ移動させたときの前記第1検出装置によって検出された前記第1キャリッジの位置に対する前記第2キャリッジを前記主走査方向に前記所定の距離だけ移動させたときの前記第2検出装置によって検出された前記第2キャリッジの位置の割合である補正率を算出する算出部と、前記補正率に基づいて前記カットデータを補正し、補正後カットデータを作成する作成部と、前記補正後カットデータおよび前記第2検出装置によって検出される前記第2キャリッジの位置に基づいて、前記キャリッジ移動機構および前記カッティングヘッドを制御するカット制御部と、を備えている。
【0008】
本発明のカッティングヘッド付きインクジェットプリンタによると、制御装置の判定部は、温度測定装置によって測定された第2環境温度が、記憶部に記憶された第1環境温度と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する。ここで、インクヘッド周辺の温度である環境温度の温度変化が所定の範囲内にある場合には、インクヘッドを搭載する第1キャリッジおよびカッティングヘッドを搭載する第2キャリッジを主走査方向に所定の距離だけ移動させたときに、第1検出装置によって検出される第1キャリッジの位置(即ちインクヘッドの位置)と第2検出装置によって検出される第2キャリッジの位置(即ちカッティングヘッドの位置)とにはほとんど誤差が生じない。即ち、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体を切断することができる。一方、上記環境温度の温度変化が所定の範囲内にない場合には、第1キャリッジおよび第2キャリッジを主走査方向に所定の距離だけ移動させたときに、第1検出装置によって検出される第1キャリッジの位置と第2検出装置によって検出される第2キャリッジの位置に誤差が生じ得る。即ち、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体を切断することができない。そこで、作成部は、算出部によって算出された補正率に基づいて記憶部に記憶されているカットデータを補正し、補正後カットデータを作成する。そして、カット制御部は、作成された補正後カットデータおよび第2検出装置によって検出される第2キャリッジの位置に基づいて、キャリッジ移動機構およびカッティングヘッドを制御する。これにより、上記環境温度の温度変化が所定の範囲内にない場合であっても、第1検出装置によって検出される第1キャリッジの位置と第2検出装置によって検出される第2キャリッジの位置にはほとんど誤差が生じない。即ち、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体を切断することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、印刷される画像に対して適切な位置で記録媒体を切断することができるカッティングヘッド付きインクジェットプリンタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3A】インクヘッドユニットおよびカッティングヘッドユニットの正面図である。
【
図3B】インクヘッドユニットおよびカッティングヘッドユニットの正面図である。
【
図4】一実施形態に係るプリンタの制御系のブロック図である。
【
図5】記録媒体への印刷後に記録媒体を切断する手順を示すフローチャートである。
【
図6】記録媒体の切断後に記録媒体へ印刷する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るカッティングヘッド付きインクジェットプリンタ100(以下、プリンタ100とする。)について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るプリンタ100は、記録媒体5に対して印刷および切断(カッティング)が可能ないわゆるプリント&カット機である。
【0012】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ100の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ100から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0013】
記録媒体5は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体5は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体5には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。本実施形態の記録媒体5は、例えば、ポリ塩化ビニルシート材である。ポリ塩化ビニルシート材は、例えば、普通紙から形成された台紙(基材)と、ポリ塩化ビニルから形成された剥離紙と、台紙と剥離紙との間に配置された接着剤とから構成されている。剥離紙にはインクヘッド22(
図2参照)から吐出されたインクが定着する。なお、台紙および剥離紙の材料は上記のものに限定されないが、基材および剥離紙は典型的には相互に異なる材料から形成されている。本明細書において「切断」、「カッティング」とは、記録媒体5の厚み方向の全体を切断する場合(例えば、シール材の台紙および剥離紙の両方を切断する場合)と、記録媒体5の厚み方向の一部を切断する場合(例えば、シール材の台紙は切断せず、剥離紙のみを切断する場合)とが含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ100は、プリンタ本体100aと、脚11と、操作パネル12と、記録媒体5が載置されるプラテン16と、インクヘッドユニット20と、カッティングヘッドユニット30と、キャリッジ移動機構40と、媒体移動機構55と、制御装置80とを備えている。プリンタ本体100aは、主走査方向Yに延びたケーシングを有する。脚11は、プリンタ本体100aを支持するものであり、プリンタ本体100aの下面に設けられている。操作パネル12は、例えばプリンタ本体100aの右側の前面に設けられている。ただし、操作パネル12の位置は特に限定されない。操作パネル12は、例えば、作業者が印刷や切断に関する操作を行うものである。図示は省略するが、操作パネル12には、例えば、解像度、インクの濃さなどの印刷に関する情報や、印刷中や切断中のプリンタ100のステータスなどが表示される表示部、および、印刷や切断に関する情報を入力するための入力部などが備えられている。
【0015】
プラテン16は、記録媒体5への印刷および記録媒体5を切断する際、記録媒体5を支持するものである。プラテン16には、記録媒体5が載置される。記録媒体5は、記録媒体5に印刷をする前にプラテン16に載置される。また、記録媒体5への印刷が完了した後、一度記録媒体5をプラテン16から取り外して再度記録媒体5をプラテン16に載置することがある。プラテン16は、載置台の一例である。記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断は、プラテン16上で行われる。
図1に示すように、プラテン16は主走査方向Yに延びている。プラテン16は、プリンタ本体100aに支持されている。
【0016】
図1に示すように、プリンタ100は、主走査方向Yおよび上下方向に延びる中央壁14を備えている。中央壁14は、プリンタ本体100aに支持されている。中央壁14は、プラテン16の上方に配置されている。中央壁14とプラテン16との間には、記録媒体5が通過可能な間隙が形成されている。ず2に示すように、プリンタ100は、ガイドレール15を備えている。ガイドレール15は、主走査方向Yに延びる。ガイドレール15は、中央壁14に設けられている。ガイドレール15は、プラテン16の上方に配置されている。
【0017】
図3Aに示すように、インクヘッドユニット20は、第1キャリッジ21と、複数のインクヘッド22と、を備えている。第1キャリッジ21は、ガイドレール15に係合している。第1キャリッジ21は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。インクヘッド22は、プラテン16に載置された記録媒体5にインクを吐出するノズル(図示せず)を有する。インクヘッド22は、記録媒体5に所定の画像を印刷する。インクヘッド22は、第1キャリッジ21に搭載されている。インクヘッド22は、第1キャリッジ21の移動に伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
図3Aに示すように、ここでは、5つのインクヘッド22が第1キャリッジ21に搭載されている。ただし、インクヘッド22の個数は5個に限定されない。
【0018】
図3Aに示すように、カッティングヘッドユニット30は、第2キャリッジ31と、カッティングヘッド38とを備えている。カッティングヘッド38は、ソレノイド32と、カッター33とを備えている。第2キャリッジ31は、ガイドレール15に係合している。第2キャリッジ31は、主走査方向Yに関して第1キャリッジ21の側方(ここでは左方)に配置されている。第2キャリッジ31は、ガイドレール15に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。カッティングヘッド38は、第2キャリッジ31に搭載されている。カッター33は、プラテン16に載置された記録媒体5を切断する。ソレノイド32は、制御装置80(
図1参照)によって制御される。ソレノイド32がON/OFFされると、カッター33は上下方向に移動して記録媒体5に接触し、あるいは記録媒体5から離反する。カッター33は、第2キャリッジ31の移動に伴って、主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0019】
キャリッジ移動機構40は、プラテン16に載置された記録媒体5に対してインクヘッドユニット20の第1キャリッジ21およびカッティングヘッドユニット30の第2キャリッジ31を相対的に主走査方向Yに移動させる機構である。キャリッジ移動機構40は、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31を主走査方向Yに移動させる。なお、キャリッジ移動機構40の構成は特に限定されない。
図1に示すように、キャリッジ移動機構40は、第1プーリ41と、第2プーリ42と、無端状のベルト43と、キャリッジモータ44とを備えている。第1プーリ41は、ガイドレール15の左端側に設けられている。第2プーリ42は、ガイドレール15の右端側に設けられている。ベルト43は、第1プーリ41と第1プーリ42とに巻き掛けられている。ベルト43は、第2キャリッジ31(
図3A参照)の背面上部に固定されている。第2プーリ42には、キャリッジモータ44が接続されている。ただし、キャリッジモータ44は、第1プーリ41に接続されていてもよい。ここでは、キャリッジモータ44が駆動して、第2プーリ42が回転することで、第1プーリ41と第2プーリ42との間においてベルト43が走行する。これにより、第2キャリッジ31は主走査方向Yに移動する。即ち、キャリッジモータ44は、第2キャリッジ31を主走査方向Yに移動させる。後述するように、第1キャリッジ21は、第2キャリッジ31の移動に伴って主走査方向Yに移動する。キャリッジモータ44は、第2キャリッジ31を介して第1キャリッジ21を間接的に主走査方向Yに移動させる。キャリッジモータ44は、制御装置80に制御される。
【0020】
図3Aに示すように、第1キャリッジ21の左側部分には、磁石によって構成される第1連結部材24が設けられている。第2キャリッジ31の右側部分には、磁石によって構成される第2連結部材34が固定されている。第1連結部材24は、第2連結部材34に対し、着脱自在に連結する。本実施形態では、第1連結部材24および第2連結部材34は、磁力を利用するものである。ただし、第1連結部材24および第2連結部材34は磁力を利用するものに限られず、係合部材等の他の構成を備えたものであってもよい。第1キャリッジ21の右側には、L字状に形成された第1受け金具25が設けられている。
【0021】
図3Aに示すように、プラテン16の左方および右方には、それぞれ左サイドフレーム7Lおよび右サイドフレーム7Rが配置されている。右サイドフレーム7Rには、インクヘッドユニット20を待機位置にロックするためのロック装置35が設けられている。ロック装置35は、第1受け金具25に引っ掛けられる第2受け金具36と、第2受け金具36をロック位置(
図3B参照)と非ロック位置(
図3A参照)との間で移動させるロック用ソレノイド37(
図4参照)とを備えている。ロック用ソレノイド37は、制御装置80によって制御される。
【0022】
図3Aに示すように、インクヘッド22によって記録媒体5に所定の画像を印刷する際には、第2受け金具36が非ロック位置に設定される。カッティングヘッドユニット30の第2キャリッジ31が右方に移動し、第2連結部材34と第1連結部材24とが接触すると、第2キャリッジ31と第1キャリッジ21とが連結される。その結果、インクヘッドユニット20は、カッティングヘッドユニット30と共に主走査方向Yに移動可能となる。即ち、キャリッジモータ44が駆動することで、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31が主走査方向Yに移動する。一方、カッター33によって記録媒体5を切断する際には、
図3Bに示すように、インクヘッドユニット20が待機位置に位置付けられ、ロック装置35の第2受け金具36がロック位置に設定される。これにより、インクヘッドユニット20の主走査方向Yの移動が阻止される。第2キャリッジ31が左方へ移動すると、第2連結部材34と第1連結部材24とが離反し、第2キャリッジ31と第1キャリッジ21との連結が解除される。その結果、インクヘッドユニット20が待機位置に待機した状態で、カッティングヘッドユニット30のみが主走査方向Yに移動可能となる。即ち、キャリッジモータ44が駆動することで、第2キャリッジ31のみが主走査方向Yに移動する。
【0023】
媒体移動機構55は、プラテン16に載置された記録媒体5をインクヘッド22およびカッティングヘッド38に対して副走査方向Xに相対的に移動させるものである。媒体移動機構55は、プラテン16に載置された記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。
図1に示すように、媒体移動機構55は、グリットローラ57と、フィードモータ58(
図4参照)と、ピンチローラ60と、保持シャフト64と、を備えている。
【0024】
図1に示すように、グリットローラ57は、プラテン16に設けられている。グリットローラ57は、グリットローラ57の上部が外部に露出するようにプラテン16に埋設されている。グリットローラ57は、主走査方向Yに並列している。グリットローラ57は、ピンチローラ60の下方に配置されている。グリットローラ57は、ピンチローラ60との間に記録媒体5を挟み込む。フィードモータ58(
図4参照)は、グリットローラ57に接続されている。フィードモータ58は、制御装置80に制御される。即ち、グリットローラ57は、制御装置80に制御される。グリットローラ57とピンチローラ60との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ58が駆動してグリットローラ57が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0025】
図1に示すように、ピンチローラ60は、プラテン16より上方に配置されている。ピンチローラ60は、ガイドレール15より下方に配置されている。ピンチローラ60は、グリットローラ57と対向する位置に配置されている。ピンチローラ60は、プラテン16に載置された記録媒体5を上から押さえる。
【0026】
図1に示すように、保持シャフト64は、主走査方向Yに延びる。保持シャフト64は、ピンチローラ60を保持する。保持シャフト64が軸周りに回転することによって、ピンチローラ60をグリットローラ57に接近させたり、グリットローラ57から離反させたりすることができる。保持シャフト64は、プリンタ本体100aに回転可能に支持されている。
【0027】
図2に示すように、プリンタ100は、第1検出装置71を備えている。第1検出装置71は、第1キャリッジ21の位置を検出する。第1検出装置71は、例えば、リニアエンコーダである。第1検出装置71の構成は特に限定されないが、ここでは光電式(透過型)のリニアエンコーダである。第1検出装置71は、スケール71Aと、センサ71Bと、を有している。スケール71Aは、主走査方向Yに延びる。スケール71Aは、中央壁14に設けられている。スケール71Aは、ガイドレール15の上方に配置されている。スケール71Aには、所定の間隔で主走査方向Yに並ぶ複数のスリットまたは目盛りが形成されている。スケール71Aは、例えば、樹脂材料から形成されている。樹脂材料としては、例えば、セロファンが挙げられる。センサ71Bは、スケール71Aに形成されたスリットを検出する。センサ71Bは、キャリッジ21に設けられている。センサ71Bは、インクヘッド22より後方に配置されている。センサ71Bは、スケール71Aを挟み込むように配置されている。センサ71Bに検出されたスケール71Aのスリットに基づいて、第1キャリッジ21の位置を検出することができる。
【0028】
図4に示すように、プリンタ100は、第2検出装置75を備えている。第2検出装置75は、第2キャリッジ31の位置を検出する。第2検出装置75は、キャリッジモータ44に設けられている。第2検出装置75は、例えば、ロータリエンコーダである。第2検出装置75の構成は特に限定されないが、ここでは光電式のロータリエンコーダである。第2検出装置75は、発光素子75Aと、受光素子75Cと、発光素子75Aと受光素子75Cとの間に配置され、複数のスリットが形成された格子円盤75Bと、を有している。格子円盤75Bは、キャリッジモータ44のモータ軸(図示せず)に連結されている。キャリッジモータ44の回転位置が定まると、第2キャリッジ31の位置は一義的に定まる。そのため、キャリッジモータ44の位置に基づいて、第2キャリッジ31の位置を検出することができる。
【0029】
図2に示すように、プリンタ100は、温度測定装置78を備えている。温度測定装置78は、第1キャリッジ21に搭載されている。温度測定装置78は、インクヘッド22より前方に配置されている。温度測定装置78は、プリンタ100の環境温度を測定する。本実施形態では、環境温度とは、インクヘッド22周辺の温度である。温度測定装置78は、例えば、サーミスタである。サーミスタは、例えば、ダイオードセンサや金属薄膜センサ等の温度センサである。
【0030】
図4に示すように、プリンタ100の全体の動作は、制御装置80によって制御されている。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図1に示すように、制御装置80は、プリンタ本体100aの内部に設けられている。ただし、制御装置80はプリンタ本体100aの内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置80は、プリンタ本体100aの外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置80は、有線または無線を介してプリンタ100と通信可能に接続されている。
【0031】
図4に示すように、制御装置80は、インクヘッド22、ソレノイド32、ロック用ソレノイド37、フィードモータ58、キャリッジモータ44、第1検出装置71、第2検出装置75および温度測定装置78と通信可能に接続している。制御装置80は、インクヘッド22、ソレノイド32、ロック用ソレノイド37、フィードモータ58およびキャリッジモータ44を制御する。即ち、制御装置80は、キャリッジ移動機構40および媒体移動機構55を制御する。
【0032】
図4に示すように、制御装置80は、記憶部82と、判定部84と、算出部86と、作成部88と、印刷制御部90と、カット制御部92とを備えている。制御装置80の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置80の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0033】
記憶部82は、記録媒体5に印刷される所定の画像の画像データおよびカット線のカットデータを記憶する。画像データは、例えば、ラスター形式のデータである。画像データは、例えば、プリンタ100とは別体に設けられたコンピュータにインストールされたソフトウェアを用いて作成される。カット線は、所定の画像の周囲に設定される。カット線は、カッター33によって切断される線である。カットデータは、例えば、ベクター形式のデータである。記憶部82は、温度測定装置78によって測定された環境温度を記憶する。記憶部82に記憶されている環境温度は、温度測定装置78によって測定された環境温度の前回の温度である第1環境温度T1である。なお、温度測定装置78によって新たに環境温度が測定されると、後述する補正率Aが算出された後に、記憶部に記憶される第1環境温度T1が更新される。
【0034】
判定部84は、第2環境温度T2が記憶部82に記憶された第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する。第2環境温度T2は、温度測定装置78によって測定された環境温度の今回の温度である。即ち、第2環境温度T2は、温度測定装置78によって測定された環境温度のうち最新の環境温度である。所定の温度範囲とは、例えば、-3℃~+3℃(例えば-1℃~+1℃)の範囲である。例えば、所定の温度範囲が-3℃~+3℃でありかつ第2環境温度が30℃でありかつ第1環境温度が25℃の場合、判定部84によって第2環境温度30℃は所定の温度範囲内にないと判定される。
【0035】
算出部86は、判定部84によって第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にないと判定された場合に、補正率Aを算出する。補正率Aとは、第1キャリッジ21を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときの第1検出装置71によって検出された第1キャリッジ21の位置L1に対する第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときの第2検出装置75によって検出された第2キャリッジ31の位置L2の割合(即ちA=L2/L1)である。例えば、位置L1が998mmでありかつ位置L2が1000mmの場合、補正率Aは凡そ1.002である。算出された補正率Aは、記憶部82に記憶される。インクヘッド22によって記録媒体5にインクが吐出される印刷が完了した後に、カッティングヘッド38のカッター33によって記録媒体5を切断する場合、算出部86は、印刷が完了した後に補正率Aを算出する。なお、算出部86は、判定部84によって第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にあると判定された場合に、新たに補正率Aを算出しない。このとき、通常は、第1検出装置71のスケール71Aに新たな伸縮が生じていないため、位置L2が1000mmの場合には、位置L1は1000mmあるいは1000mmのほぼ近傍になる。
【0036】
作成部88は、算出部86によって算出された補正率Aに基づいて記憶部82に記憶されたカットデータを補正し、補正後カットデータを作成する。作成された補正後カットデータは、記憶部82に記憶される。例えば、カットデータがベクター形式のデータである場合には、位置情報(例えばXY座標値)に補正率Aを乗じることによって補正後のカットデータ(即ち補正後の位置情報)が作成される。
【0037】
印刷制御部90は、記録媒体5への所定の画像の印刷を制御する。印刷制御部90は、記憶部82に記憶された画像データおよび第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置に基づいてキャリッジ移動機構40およびインクヘッド22を制御する。即ち、印刷制御部90は、画像データおよび第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置に基づいて第1キャリッジ21の移動を制御する。なお、本実施形態では、第1キャリッジ21は第2キャリッジ31と共に移動するため、印刷制御部90は、第2キャリッジ31の移動を制御することによって第1キャリッジ21の移動を制御している。印刷制御部90は、インクヘッド22のインク吐出を制御する。なお、印刷制御部90は、記憶部82に記憶された画像データに基づいて媒体移動機構55を制御する。
【0038】
カット制御部92は、カッター33による記録媒体5の切断を制御する。カット制御部92は、作成部88によって補正後カットデータが作成された場合には、補正後カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。一方、カット制御部92は、作成部88によって補正後カットデータが作成されていない場合には、カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。カット制御部92は、補正後カットデータまたはカットデータに基づいて第2キャリッジ31の移動を制御する。カット制御部92は、ソレノイド32を制御してカッター33を上下方向に移動させる。なお、カット制御部92は、補正後カットデータまたはカットデータ基づいて媒体移動機構55を制御する。
【0039】
図5は、記録媒体5への印刷後に記録媒体5をカッター33によって切断する手順を示すフローチャートである。
【0040】
まず、ステップS10において、印刷制御部90は、記憶部82に記憶された画像データに基づいて、記録媒体5へ所定の画像を印刷する。
【0041】
ステップS20において、温度測定装置78は、インクヘッド22周辺の温度である環境温度(即ち第2環境温度T2)を測定する。温度測定装置78によって測定された第2環境温度T2は、記憶部82に記憶される。
【0042】
ステップS30において、判定部84は、温度測定装置78によって測定された第2環境温度T2が記憶部82に記憶された第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する。第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にある場合には、ステップS40に進む。一方、第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にない場合には、ステップS50に進む。
【0043】
ステップS40において、判定部84によって第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にあると判定されたため、カット制御部92は、カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。これにより、所定の画像が印刷された記録媒体5は、カット線に沿ってカッター33によって切断される。このようにして、記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断が完了する。
【0044】
ステップS50において、判定部84によって第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にないと判定されたため、算出部86は補正率Aを算出する。
【0045】
ステップS60において、作成部88は、補正率Aに基づいてカットデータを補正し、補正後カットデータを作成する。
【0046】
ステップS70において、カット制御部92は、補正後カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。これにより、所定の画像が印刷された記録媒体5は、カット線に沿ってカッター33によって切断される。このようにして、記録媒体5への印刷および記録媒体5の切断が完了する。なお、ステップS70では、カットデータではなく補正後カットデータを用いて記録媒体5を切断しているため、印刷された所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5が切断される。
【0047】
以上のように、本実施形態のプリンタ100では、制御装置80の判定部84は、温度測定装置78によって測定された第2環境温度T2が、記憶部82に記憶された第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にあるかを判定する。ここで、インクヘッド22周辺の温度である環境温度の温度変化が所定の範囲内にある場合には、インクヘッド22を搭載する第1キャリッジ21およびカッティングヘッド38を搭載する第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときに、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置(即ちインクヘッド22の位置)L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置(即ちカッティングヘッド38の位置)L2とにはほとんど誤差が生じない。即ち、印刷される所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5をカット線に沿って切断することができる。一方、上記環境温度の温度変化が所定の範囲内にない場合には、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときに、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2に誤差が生じ得る。即ち、印刷される所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5を切断することができない。そこで、作成部88は、算出部86によって算出された補正率Aに基づいて記憶部82に記憶されているカットデータを補正し、補正後カットデータを作成する。そして、カット制御部92は、作成された補正後カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。これにより、上記環境温度の温度変化が所定の範囲内にない場合であっても、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2にはほとんど誤差が生じない。即ち、印刷される所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5を切断することができる。
【0048】
本実施形態のプリンタ100によれば、第1検出装置71は、所定の間隔で主走査方向に並ぶ複数のスリットが形成され、主走査方向Yに延びるスケール71Aと、スリットを検出するセンサ71Bと、を有している。これにより、第1キャリッジ21をより精度よく移動させることができ、インクヘッド22から記録媒体5により正確にインクを吐出することができる。また、第2検出装置75は、キャリッジモータ44に設けられたロータリエンコーダにより構成されている。これにより、第2キャリッジ31をより精度よく移動させることができ、記録媒体5をカッター33によってより正確に切断することができる。
【0049】
本実施形態のプリンタ100によれば、スケール71Aは、樹脂材料から形成されている。樹脂材料(例えばセロファン)から形成されたスケール71Aは、インクヘッド22周辺の温度変化に伴い少なくとも主走査方向Yに伸縮する性質を有する。このため、インクヘッド22を搭載する第1キャリッジ21およびカッティングヘッド38を搭載する第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときに、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2とには誤差が生じやすい。しかしながら、本実施形態では、カット制御部92は、補正後カットデータおよび第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2に基づいて、キャリッジ移動機構40およびカッティングヘッド38を制御する。このため、伸縮しやすいスケール71Aを用いる場合であっても、印刷される所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5を切断することができる。
【0050】
本実施形態のプリンタ100によれば、インクヘッド22によって記録媒体5にインクが吐出される印刷が完了した後に、カッティングヘッド38のカッター33によって記録媒体5を切断する場合、算出部86は、印刷が完了した後に補正率Aを算出する。これにより、インクヘッド22を搭載する第1キャリッジ21およびカッティングヘッド38を搭載する第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときに、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2との間に誤差が発生していたとしても、印刷完了後であってかつ記録媒体5の切断前にその誤差を補正することができ、カッター33によって記録媒体5をより正確に切断することができる。
【0051】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0052】
上述した実施形態では、記録媒体5への印刷後であってかつ記録媒体5の切断前に、算出部86によって補正率Aを算出していたが、これに限定されない。
図6は、記録媒体5をカッター33によって切断した後に記録媒体5への印刷を行う手順を示すフローチャートである。
図6に示すように、カッティングヘッド38のカッター33によって記録媒体5を切断した後に、インクヘッド22によって記録媒体5にインクが吐出される印刷を行う場合には、算出部86は、記録媒体5を切断する前に補正率Aを算出してもよい。このように、記録媒体5への印刷の前に記録媒体5を切断する場合であっても、算出部86によって予め補正率Aを算出することによって、印刷される所定の画像に対して適切な位置で記録媒体5を切断することができる。なお、
図6に示す各工程は、
図5に示す各工程と同じであるため、同じ符号を付している。即ち、ステップS10において、印刷制御部90は、記憶部82に記憶された画像データに基づいて、カッター33によって切断された記録媒体5へ所定の画像を印刷する。このようにして、記録媒体5の切断および記録媒体5への印刷が完了する。
【0053】
上述した実施形態では、算出部86は、判定部84によって第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の温度範囲内にないと判定された場合に、補正率Aを算出していたが、これに限定されない。例えば、第1環境温度T1が測定されてから所定の時間(例えば1時間~6時間)が経過したとき、算出部86は、補正率Aを算出してもよい。第1環境温度T1が測定されてから所定の時間が経過したときには、インクヘッド22周辺の温度に変化(即ち環境温度の上昇または下降)が起きている可能性が高い。このため、上述のような場合には、温度測定装置78によって測定された第2環境温度T2に関わらず、算出部86は補正率Aを算出してもよい。なお、この場合には、温度測定装置78によって第2環境温度T2を測定することなく、算出部86は補正率Aを算出してもよい。
【0054】
本実施形態のプリンタ100によれば、カッター33によって印刷開始位置を設定した場合、算出部86は、インクヘッド22によって記録媒体5にインクが吐出される印刷を行う前に補正率Aを算出してもよい。作成部88は、補正率Aに基づいて記憶部82に記憶された画像データを補正し、補正後画像データを作成してもよい。印刷制御部90は、補正後画像データおよび第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置に基づいて、キャリッジ移動機構40およびインクヘッド22を制御してもよい。記録媒体5において印刷開始位置を決定するとき、作業者にとってはカッター33の刃先が指し示す記録媒体5上の点またはプラテン16上の点を印刷開始位置として決定するのが簡単であり好ましい。しかしながら、カッター33を有するカッティングヘッド38を搭載する第2キャリッジ31の位置L2は第2検出装置75によって検出されるのに対し、インクヘッド22を搭載する第1キャリッジ21の位置L1は第1検出装置71によって検出される。このため、第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の範囲内にない場合には、第1キャリッジ21および第2キャリッジ31を主走査方向Yに所定の距離LLだけ移動させたときに、第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1と第2検出装置75によって検出される第2キャリッジ31の位置L2とに誤差が生じ得る。そこで、作成部88は、算出部86によって算出された補正率Aに基づいて記憶部82に記憶されている画像データを補正し、補正後画像データを作成する。そして、印刷制御部90は、作成された補正後画像データおよび第1検出装置71によって検出される第1キャリッジ21の位置L1に基づいて、キャリッジ移動機構40およびインクヘッド22を制御してもよい。これにより、第2環境温度T2が第1環境温度T1と比べて所定の範囲内にない場合であっても、記録媒体5の適切な位置にインクヘッド22からインクを吐出することができる。
【符号の説明】
【0055】
21 第1キャリッジ
22 インクヘッド
31 第2キャリッジ
33 カッター
38 カッティングヘッド
40 キャリッジ移動機構
71 第1検出装置
75 第2検出装置
78 温度測定装置
80 制御装置
82 記憶部
84 判定部
86 算出部
88 作成部
90 印刷制御部
92 カット制御部
100 プリンタ(カッティングヘッド付きインクジェットプリンタ)